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都市圏の企業緑地の緑地認証取得動向と都心の企業緑地における企業の社員向け動植物の観察・体験会の試行

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研 究 報 告

都市圏の企業緑地の緑地認証取得動向と都心の企業緑地における

企業の社員向け動植物の観察・体験会の試行

小松 裕幸

1)

・伊東 浩司

1)

・坪山 明子

1)

・杉田 昌弥

2)

・新井 美央

2)

佐々木 岩見

2)

・伴 武彦

3)

・園田 陽一

4)

・湊 秋作

5)6)7) 1)清水建設株式会社・2)第一生命保険株式会社・3)株式会社ポリテック・エイディディ・4)株式会社地域環境計画・ 5)関西学院大学・6)ニホンヤマネ保護研究グループ・7)一般社団法人ヤマネ・いきもの研究所

Komatsu, H., Ito, K., Tsuboyama, A., Sugita, M., Arai, M., Sasaki, I., Ban, T., Sonoda, Y. and Minato, S. (2020) Trend of getting of greenery certification in company’s greenery in metropolitan areas and trial of observation and experience meeting of plants and animals for company employers at a company’s greenery in the central Tokyo. Jpn. J. Biol. Educ. 62(1): 12–22.

Key words: greenery certification, metropolitan area, wildlife observation meeting

Author for correspondence: Hiroyuki KOMATSU, Shimizu Corporation, 2-16-1 Kyobashi, Chuo-ku, Tokyo 104-8370, Japan

Ⅰ はじめに

2006年にブラジルのリオデジャネイロで開かれた生 物多様性条約第 8 回締結国会議(COP8)で,民間部門 に条約への参画を促す決議が採択された.これを受け, 環境省は,2007 年に「第三次生物多様性国家戦略」を 発行し(生物多様性センターウェブサイト),企業に生 物多様性に関する活動への参画を促した.また,2009 年には「生物多様性民間参画ガイドライン(第 1 版)」 を発行し,企業の生物多様性に向けた取り組みの動向・ 考え方を整理することにより,さらなる参画の促進を 図った(環境省 2009). こうした動きを受け,社団法人日本経済団体連合会の 関連組織である経団連自然保護協議会は,2008 年度, 2009年度に,生物多様性をメインのテーマとして,企 業の環境担当者や CSR 担当者の知識や企画立案能力の レベルアップを図ることを目的とし,環境教育の研修を 実施した(石原ら 2014).2018 年には,社団法人日本 経済団体連合会が 2009 年に発表した「経団連生物多様 性宣言」(社団法人日本経済団体連合会 2009)を改定し, その宣言の 7 番目に,2009 年の宣言には記載がなかっ た「環境教育」を位置づけた.また,この宣言の行動指 針には,従業員の自然環境教育を積極的に実施すること を明記し,会員企業のみならず,多くの企業にその推進 を 呼 び か け た( 一 般 社 団 法 人 日 本 経 済 団 体 連 合 会 2018).こうした動向により,企業は,生物多様性の教 育の推進を図ることが明確に求められるようになった. ところで,この「生物多様性」は,実感・理解が難し い概念とされ(五箇 2010,石原 2010),自然にはバーチャ ルだけでは知ることのできないことが多く存在するとの 指摘がある(岩間 2008).環境省(2012)は,生物多 様性の恵みを実感するためには,自然と触れ合うことが 重要とするなど,環境教育においては,野外での自然と の触れ合いを重要視する意見は少なくない.その一方で, 企業ではすでに多岐にわたる研修が行われており(田中 2007),多くの企業にとっては,業務多忙などの理由に よって,研修を含む人材育成の時間の確保が課題となっ ている(厚生労働省 2014).こうした中,自然観察につ いて,近場で実施することができれば,観察場所への移 動時間が不要となり,時間が節約できるほか,継続的に 観察ができるといった利点も期待できるとの指摘がある (鳥山 2001).多くの企業,人々にとって近場とは,現在, 事業所や人口が,東京・名古屋・大阪の三大都市圏に集 中している(岩倉ら 2010)という状況を踏まえれば, 都市圏であるといえるだろう.三大都市圏などの都市で は,緑地は減少傾向にあるものの(国土交通省 2006), 近年では民間建築物の緑化義務を課する法制度が整備・ 普及したことに伴い(御手洗・越澤 2006),企業が緑地 を整備する事例が出てきている(国土交通省 2006).こ [連絡先]〒 104-8370 東京都中央区京橋 2-16-1 清 水建設株式会社 次世代環境ソリューション部 小松 裕幸 E-mail: [email protected]

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うした企業等が所有,管理または使用する土地の緑地は, 「企業緑地」と呼ばれる(原口 2008, 2009, 2019).企業 緑地については,2000 年代後半以降,量だけでなく, 生物への配慮などの質や取り組みを評価することを目指 し,優れた企業緑地等に認証(以下,緑地認証という) を与える制度ができ,緑地の質について可視化が図られ るようになった(北脇ら 2017,古澤ら 2019,海老原ら 2018). こうした緑地認証を取得した都市の緑地は,企業に とって,身近な場所にある,生物への配慮が第三者によっ て評価された緑地といえ,今後こうした緑地が増加し, 多くの企業が動植物の体験・観察に活用できれば,近場 での観察・体験が伴う生物多様性の社員教育の普及につ ながる可能性が考えられる.また,その企業緑地が,社 員教育をする企業にとって,所有・管理・使用あるいは 設計・施工等で関連のある場所であれば,その企業にとっ ては,緑地の使用のための手続きの負担が軽減できるこ とも期待できる.これまでこうした緑地認証を取得した 緑地についての研究は,小松・伴(2018),北脇ら(2017), 増澤(2011),三輪(2011)などがあるが,都市圏での 認証取得動向は明らかになっていない.また,一般社団 法人日本経済団体連合会らがまとめた「生物多様性に関 する活動事例集」によれば,企業から挙げられた 608 事例中,企業が企業緑地で社員の環境教育を行っている 事例は 3 事例に過ぎず,これらはいずれも郊外の工場 での実施事例であり,都市の事例は挙げられていない(一 般社団法人日本経済団体連合会ら 2019). そこで著者らは,都市圏の緑地認証の動向について把 握することを試みるため,国内でも特に事業所や人口が 集中している三大都市圏での緑地認証の取得動向を中心 に把握すると共に,都心の企業緑地を活用し,企業の動 植物の観察・体験会(以下,観察・体験会という)を試 行した.本稿では,これらについて報告すると共に,観 察・体験会の参加者にアンケートを実施し,参加者の感 想や評価,今後の課題について把握を試みたので,その 結果について報告する.

Ⅱ 研究の方法

1.都市圏の緑地認証取得動向 全国規模で普及している緑地認証としては,「社会・ 環 境 緑 地 評 価 シ ス テ ム 」(Social and Environmental Green Evaluation System 以下,SEGES という),「ハ ビタット評価認証制度」(Japan Habitat Evaluation and Certification Program 以下,JHEP という),「いきも の 共 生 事 業 所 認 証 」( 以 下,ABINC と い う ABINC: Association for Business Innovation in harmony with Nature and Community)がある.このうち,生物の生息・ 生育場所としての緑地としての観点は,特に JHEP と ABINCで重視されているが,SEGES にもその評価項目 に生物多様性に関する内容が含まれている.このため, 本研究では,これらの SEGES,JHEP,ABINC を取得 した事例を対象とし,三大都市圏を中心に取得動向につ いて把握を試みた.これらの緑地認証の概要を表 1 に 示す.なお,我が国で取得事例のある緑地認証には,こ れら 3 つのほかにも,Green Building Certification Inc. の「SITES」や東京都環境局の「江戸のみどり登録緑地」 等があるが,前者は我が国での取得事例が 2020 年 1 月 1日現在で 2 事例のみであるため,後者は自治体独自の 制度であるため,本研究の対象から除外した.認証取得 事例は,それぞれの緑地認証の運用主体である,公益財 団法人都市緑化機構,公益財団法人日本生態系協会,一 般社団法人いきもの共生事業推進協議会の,2018 年 12 月 10 日時点のウェブサイトから収集した.SEGES には 「つくる緑」,「そだてる緑」,「都市のオアシス認証」の 3種類があり,「つくる緑」以外は 3 年ごとに,ABINC も 3 年ごとに,JHEP は 5 年ごとに更新が必要である. JHEPや ABINC のウェブサイトには,認証取得後に更 新をしなかった事例が掲載されているが,SEGES のウェ ブサイトには更新をしなかった事例は掲載されていな い.本研究では,3 つの緑地認証の取得事例数の推移に ついても把握するため,更新されなかった事例は対象か ら除外した.これらの認証取得事例に関し,以下の傾向 について把握を試みた. (1)認証取得事例数の推移・用途・立地 認証取得事例の数の推移,用途,立地について把握を 試みるため,認証取得事例数を年度,用途,都道府県別 に集計した.用途はそれぞれの緑地認証のウェブサイト (公益財団法人都市緑化機構,公益財団法人日本生態系 協会,一般社団法人いきもの共生事業推進協議会ウェブ サイト)のほか,各施設のウェブサイトを参照して分類 した.分類は,細分化を避けるため,事務所のほか商業 施設や宿泊施設等が付随する施設は,付随する用途を問 わず「複合」とし,老人ホームは「住宅」に含めた. (2)認証取得事例数と着工建築物数の比較 認証取得事例の用途や場所と,その用途や場所の建物 緑地認証 SEGES JHEP ABINC 運用主体 公益財団法人都市緑化機構 日本生態系協会公益財団法人 一般社団法人いきもの共生 事業推進協議会 目 的 企業による緑地 の保 全・創出活 動の評価と CSR の認定により,企 業の緑地に関す る活動意欲や取 組を高める.評 価項目には生物 多様性に関する 内容も含まれる 企業・団体によ る ハ ビ タ ッ ト (野生生物の生 息環境)の保全・ 創出活動を評価 する 企業による生物 多様性の保全・ 創出活動を評価 する 審査方法 書類審査,対面審査,現地審査 書類審査,現地審査 書類審査 申請費用 (万円) 33 ~ 118.8 非公開 33 ~ 44 開始時期 2008 年5月 2008 年 12 月 2011 年4月 表1 対象とした緑地認証の概要 北脇ら(2017),それぞれの緑地認証のウェブサイト(公益財団 法人都市緑化機構,公益財団法人日本生態系協会,一般社団法 人いきもの共生事業推進協議会のウェブサイト)をもとに作成

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の建設数との関係について把握を試みるため,用途・場 所ごとに,「建築着工統計調査」(総務省統計局ウェブサ イト)のうち,集計方法が同一の 2011 年から 2017 年 の着工数データと,認証取得事例数とを比較して統計的 に処理し,それぞれの傾向に差があるかどうかを見た. ただし,「建築着工統計調査」では,住宅には戸建住宅 が含まれており,2011 年から 2017 年の住宅の着工建 築物数は,他の用途に比べて 37 ~ 223 倍程度の大きな 値であるため,住宅については,この比較から除外した. 用途の分類は,「建築着工統計調査」の分類のままとし, 認証取得事例との比較は,「商業」は「店舗」と,「工場」 は「工場及び作業所」と行った.「複合」は,建築着工 統計調査の分類にはなく,いずれの建物にも事務所機能 があったため,認証取得事例数では「事務所」に含めて 比較した. 2.都心企業緑地での観察・体験会の試行 (1)観察・体験会の概要 観察・体験会は,不動産や建設の事業を通じて関わり のある清水建設株式会社(以下,SC という)と第一生 命保険株式会社(以下,DL という)の 2 社が協働し, それぞれの社員を対象として試行した.場所は,両社の 本社屋からのアクセスの良さ,両社のいずれかまたは双 方と関連がある建物という点を考慮し,東京都心の中央 区京橋地域に位置する「東京スクエアガーデン」と「京 橋第一生命ビルディング」とした.これらの建物は,互 いに都道を挟んで真向いに立地しており,移動が容易で あったため,これらの建物それぞれで,別のプログラム によって観察・体験会を試行した. 東京スクエアガーデンは,DL が建築主のうちの 1 社 であり,SC ほか 1 社が施工した,事務所や商業等の用 途からなる建物である.この建物は,SEGES の 1 つで ある「都市のオアシス認証」を取得しており,その地下 1階から地上 5 階にかけて,屋上や壁面が連続的に緑化 されている.この建物には,3 階にヤマボウシ(Cornus

kousa),イロハモミジ(Acer palmatum),ソヨゴ(Ilex

pedunculosa),ゴテンバサクラ(Prunusincisa x Prunus sp.)等の樹木が植栽された公開空地があり,ここで植 栽されている植物や飛来した動物の観察(以下,動植物 観察という)を試行することとした. また,京橋第一生命ビルディングは,DL が所有,管 理する建物である.この建物の屋上では,DL が,養蜂 を通して都市と自然環境との共生を目指す NPO 法人銀 座ミツバチプロジェクトと連携し,セイヨウミツバチ (Apis mellifera 以下,ミツバチという)で養蜂を行っ ている.建物の屋上には緑地がなく,この建物は緑地認 証を取得していないが,ここでもミツバチの生態や都市 緑地との関わりについて教育すると共に,観察,蜜の採 取などを通じたミツバチと触れ合う体験(以下,養蜂体 験という)を試行することで,こうした場所も,観察・ 体験会の場所として活用できる可能性があるか,把握を 試みた. (2)アンケート 観察・体験会を,参加者にとって楽しめるものとする ため,参加者からの評価・感想を集約しておくべきと考 え,参加者にアンケートを実施した.アンケートは観察・ 体験会終了時にアンケート用紙を配布し,記入してもら うことにより行った.属性に関する設問は,年齢層(30 歳 以 下・31 ~ 40 才・41 才 ~ 50 才・51 才 ~ 60 才・ 61才以上),性別(男性・女性),所属企業(SC・DL) とした.アンケートの設問を表 2 に示す.設問は,「設 問 A」と「設問 B」で構成した.設問 A は,観察・体験 会全体,動植物観察,養蜂体験のそれぞれについての感 想や評価に関する選択式設問と,動植物観察,養蜂体験 のよかった点・改善点それぞれについての自由回答とし た.これにより,参加者の評価・感想と,その要因につ いて明らかにすることを試みた.属性,設問 A につい ては,性別・所属企業は該当するものに 1,それ以外に 0,年齢層は 30 才以下:1,31 ~ 40 才:2,41 ~ 50 才: 3,51 ~ 60 才:4,61 才以上:5,設問 A の選択式設 問は,表 2 に示す選択肢の欄に示した内容について左 側を 5,右側を 1 として 5 ~ 1 のスコアを与えた.所属 する企業による属性,設問 A の回答の差を見るため, 所属する企業別の属性,設問 A の回答のスコアについ 設問 種類A 設問 選択式設問選択肢とスコア 自由回答 選択式設問と自由回答 観察・体験会 は楽しかった か 5. 大変楽しかった,4. 楽しかった, 3. 普通,2. あまり楽しくなかった, 1. 楽しくなかった - 動植物観察の 感想 5. とてもよいと思う,4. よいと思う, 3. 普通,2. あまりよいと思わない, 1. よいと思わない よ か っ た 点 , 改 善 点 を そ れ ぞ れ 回 答 養蜂体験の 感想 5. とてもよいと思う,4. よいと思う, 3. 普通,2. あまりよいと思わない, 1. よいと思わない B 複数回答可の選択式設問 今日の活動に 参加した 気づき ・体験をつうじて,豊かな自然に気づ くことができた ・植物と野鳥,昆虫などの関係を知る ことができた ・生物多様性の重要性を認識できた ・自然に関する新しい知識が得られた - 今日の活動を 機に,実行し てみたい行動 ・身近な自然や緑地を観察してみたい ・今後も観察会や植林・育林活動に 参加したい ・自宅の庭やベランダで,みどりを育 ていきものをよんでみたい ・SNSなどで,今日のような活動や観 察したいきものについて情報発信し たい ・生物多様性に配慮した商品を購入 したい オフィスビル や工場の企業 緑地は,どの ような効果が あると感じる か ・鳥や昆虫などの生息場所となり生態 系を守る ・いきものの観察の場として,子供たち をはじめとする環境教育の場となる ・身近に自然があることで創造性が向 上する ・散歩することにより,ストレス発散 やリラクゼーション効果がある ・街全体のイメージや価値を高めるの に役に立つ 表2 アンケートの設問

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て Wilcoxon の順位和検定を行った.設問 A の自由回答 については,テキストマイニングにより単語を抽出し, 設問ごとに類似の単語をコードとしてまとめた(コー ディング).そしてそれぞれのコードの単語の出現数を 集計し,そのコードの 1 人当たりの出現数の平均を算 出した.なお,1 つの回答に,複数のコードの単語が含 まれている場合は,それぞれのコードに出現数を付与し た.コードには,コーディングされた単語をもとに,そ のコードが意味すると類推される名称を与えた.コー ディングには,KH Corder 3.Alpha.17j を用いた.なお その際,「考える」,「思う」など,考えを述べる際に用 いられる動詞は除外した.これにより,観察・体験会の 評価・感想及びその要因について把握することを試みた. また設問 B は,観察・体験会を受講したことで,気 づいた点,参加を機に実行してみたい活動,企業緑地の 効果として感じたことに関する複数回答可の選択式設問 とした.これにより,観察・体験会後の参加者の気づき や考えについて把握を試みた.設問 B については,回 答数を集計の上,それぞれの設問内での回答結果の差を 見るため,Wilcoxon の順位和検定を行った.検定には R version3.6.1を用いた.

Ⅲ 結果

1.緑地認証の取得動向 (1)認証取得事例数の推移・用途・立地 本研究の対象事例を集計した結果,認証取得事例は, SEGES 88事 例,JHEP 40 事 例,ABINC 57 事 例, 計 185事例であった.認証取得事例数の累計の推移を図 1 に,用途別,都道府県別の認証取得事例数を表 3,図 2 に示す.認証取得事例数は,2018 年現在,増加してい る傾向が見られ,特に生物多様性を重視した ABINC の 取得事例数が大きく増えていた.用途別に見ると,住宅 (57 事例)が全体の 30.8%を占めて最も多く,商業(31 事例 16.8%),複合(31 事例 16.8%),工場(27 事例 14.6%)と続いた.都道府県別に見ると,東京都が 88 事例と全体の 47.6%を占めて最も多く,東京都近県の 埼玉県・千葉県・神奈川県も 3 県合計で 37 事例(20.0%) と多かった.このほか愛知県(14 事例 7.6%)や大阪府 (13 事例 7.0%)が多く,これらの三大都市圏に含まれ る 6 都府県だけで合計 152 事例となり,全国の認証取 得事例数の 82.2%を占めた.次にこれら 6 都府県につ いて,認証取得事例を用途別に集計した結果を図 3 に 示す.6 都府県での用途別の認証取得事例は,住宅(51 事例)が全体の 33.6%を占めて最も多く,複合(31 事 例 20.4%),商業(26 事例 17.1%),工場(11 事例 7.2%), 事務所(11 事例 7.2%)と続いた.非住宅系は 101 事 例 61.2%であった.また,6 都府県の認証取得事例数の 累計の推移を図 4 に示す.6 都府県に限っても,認証取 得事例数は増加傾向にあり,特に生物多様性を重視した ABINCの取得事例数が大きく増えていた. 図1 認証取得事例数の推移(累計) 用 途 都道府県 東京都 埼玉県・千葉県・ 神奈川県 愛知県 大阪府 その他 全国 合計 住 宅 30 15 2 4 6 57 商 業 18 4 2 2 5 31 複 合 27 1 0 3 0 31 工 場 1 6 4 0 16 27 事務所 7 2 0 2 5 16 その他 5 9 6 2 1 23 合 計 88 37 14 13 33 185 表3 都道府県別・用途別の認証取得事例数 図2 都道府県別の認証取得 事例数 図3 6 都府県※の用途別認証 取得事例数 ※東京都,埼玉県,千葉県,神奈川県,大阪府,愛知県 図4 6 都府県※の認証取得事例数の推移(累計) ※東京都,埼玉県,千葉県,神奈川県,大阪府,愛知県

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(2)認証取得事例数と着工建築物数の比較 2011年から 2017 年までの用途別の着工建築物数を 表4 に示す.認証取得事例は 6 都府県が 82.2%を占め たが,着工建築物数では,6 都府県が占めたのは 25.7% であった.また,認証取得事例が多かった事務所,商業 (店舗),工場(工場及び作業場)について,都道府県別 の認証取得事例数と着工建築物数とでカイ二乗検定をし た結果を表 5 に示す.これら 3 つの用途共に有意な差 が認められ(事務所と商業(店舗):p 値< 0.01,工場(工 場及び作業場):p 値< 0.05),6 都府県で認証取得事例 が多いのは,着工建築物数が多いためではないことが示 唆された. 2.都心企業緑地での観察・体験会の試行 (1)実施した観察・体験会の概要 実施した観察・体験会の概要を表 6 に示す.開催場 所を利用するための手続きでは,届出書に観察・体験会 の概要や,建物一般利用者の歩行者動線の図面への明示 等の記載を求められたが,煩雑なものではなかった.開 催時間は,歩行者動線確保の観点から,一般利用者が比 較的少ない 9:00 ~ 10:30 とした.講師は,東京スクエ アガーデンでの動植物観察は SC の社員(著者の小松)が, 養蜂体験は NPO 法人銀座ミツバチプロジェクトのメン バーが担当した. 東京スクエアガーデンでの動植物観察はフィールドビ ンゴを用いることで,参加者に動植物の観察を促すこと を意図した.「フィールドビンゴ」とは,身近な自然をテー マとしたビンゴゲームのことで(降旗 1995),自然から の発見を得ることを目的としたゲームである(社団法人 日本ネイチャーゲーム協会 1997).動植物観察で用いた フィールドビンゴの用紙を図 5 に示す.ビンゴは,緑 地に生息する動物の探索を促す内容(該当するビンゴ: 飛ぶ虫,ミツバチ,鳥の声,歩く虫),鳥や虫が飛来す る要因となる植栽樹木の樹液や実の観察を促す内容(該 当するビンゴ:実がなっている木,樹液の出ている木), 植栽樹木の葉や実の観察を促す内容(該当するビンゴ: 針葉樹,プロペラのある種),在来種の意義について考 用途 東京都 埼玉県・千葉県・ 神奈川県 愛知県 大阪府 その他 合計 事務所 5,3807.2% 11.8%8,840 3,9955.3% 3,152 53,538 74,905 4.2% 71.5% 100.0% 店舗 4,428 7.1% 12.7%7,918 4,664 7.5% 3,066 42,402 62,478 4.9% 67.9% 100.0% 工場及び 作業場 1.7%899 5,127 9.5% 3,356 6.2% 1,322 43,528 54,232 2.4% 80.3% 100.0% 倉庫 2,994 3.0% 10,962 11.1% 4,767 4.8% 3,021 77,238 98,982 3.1% 78.0% 100.0% 学校の 校舎 1,301 5.8% 12.4%2,768 1,056 4.7% 1,117 16,027 22,269 5.0% 72.0% 100.0% 病院・ 診療所 4.3%697 11.8%1,924 1,278 7.9% 4.3%694 11,664 16,257 71.7% 100.0% その他 12,299 4.7% 29,009 15,163 11,234 196,586 264,291 11.0% 5.7% 4.3% 74.4% 100.0% 合計 27,998 4.7% 66,548 34,279 23,606 440,983 593,414 11.2% 5.8% 4.0% 74.3% 100.0% 25.7% 表4 都道府県別・用途別の着工建築物数 (2011 ~ 2017 年の非住宅系建築物の合計) 上段は着工建築物数,下段は当該用途での全国合計に対する着 工建築物数の割合を意味する. 用途 事務所 商業(店舗) 工場(工場及び作業場) p 値 1.94E-07 3.35E-26 0.0299 東京都,埼玉県・千葉県・神奈川県,愛知県,大阪府,その他の 認証取得事例数・着工建築物について,カイ二乗検定を行った 表5 都道府県別の認証取得事例数と着工建築物数のカイ二乗 検定の結果 項 目 概  要 日 時 2018 年5月 22 日 9:00 ~ 10:30 天 候 晴れ プログラム 1.動植物観察 ・概要:フィールドビンゴによる動植物の観察とそれ に基づく動植物と緑地との関係に関する学習 ・場所:東京スクエアガーデン3階公開空地の緑地 ・講師:SC社員(著者の小松) ・時間:30分(フィールドビンゴ:15分,解説:15分) 2.養蜂体験 ・概要:ミツバチの観察,ミツバチの生態・都市緑地 との関わりに関する学習,蜜の採取体験 ・場所:京橋第一生命ビルディング屋上 ・講師:NPO法人銀座ミツバチプロジェクトのメンバー ・時間:30分(観察,学習:15分,蜜の採取体験:15分) 3.クロージング ・概要:試行した観察・体験会の振り返り,アンケー トの記入 ・場所:京橋第一生命ビルディング会議室 ・時間:30分 参加者 25 名(DL15 名,SC10 名) 表6 観察・体験会の概要 図5 フィールドビンゴの用紙

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えを促す内容(在来種の高木)で構成した.フィールド ビンゴを用いた動植物観察は 15 分間実施した. その後 15 分程度かけて,それぞれのビンゴが意味す る内容を踏まえ,植物には生育地を広げるための様々な 実の形があること,植栽された樹木の樹液や実によって, 虫や鳥が飛来しやすくなることなどについて解説した. また,この動植物観察で確認された主な動植物の生態に ついて解説すると共に,これらがそれぞれつながりを持 つことで,食物連鎖が形成されていることを説明した. 確認された動物は,昆虫類:トビイロケアリ(Lasius

japonicus),セイヨウミツバチ(Apis mellifera),アカホ シテントウ(Chilocorus rubidus),キバラヘリカメムシ (Plinachtus bicoloripes),ハムシ科の一種(Chrysomelidae sp.),ニクバエ科の一種(Sarcophagidae sp.),ユスリ カ科の一種(Chironomidae sp.),軟甲類:オカダンゴ ムシ(Armadillidium vulgare),クモ類:カベアナタカ ラダニ(Balaustium murorum),鳥類:スズメ(Passer

montanus),シジュウカラ(Parus minor)であった. これらを踏まえて,講師より参加者に,都市圏の緑地の 役割やあり方について考えることを促した.この観察会 では,参加者からは「これまで建物の緑地を観察してい なかったが,フィールドビンゴというゲーム形式だった ことで楽しく観察できた」といった,観察に関すること や,ゲーム形式をとったことに対する評価の声,「都心 や建物の緑地でも生物がいることに驚いた」という生物 の存在による驚きの声があった.その一方で,「もっと 生物が観察できるとよかった」といった,より多くの生 物の観察を求める声もあった. また,京橋第一生命ビルディングでの養蜂体験では, まず講師より,ミツバチと環境・周辺の緑地との関連の 観点から,15 分程度講義をした.ミツバチと環境との 関連の観点からは,ミツバチは農薬などの環境汚染に対 して敏感であるため,ミツバチは環境のバロメーターに なりうることについて説明した.また,ミツバチと周辺 の緑地との関連の観点からは,屋上で飼われているミツ バチが蜜を集めるためには,ミツバチの行動範囲内(半 径約 2 ~ 3 km(佐々木ら 1993))に蜜源となる植物が 多数必要であり,この実施場所の場合は,ミツバチは皇 居や浜離宮庭園などの植物から蜜を集めている可能性が あること,ミツバチは,これらの植物から蜜を集める際 に受粉を助け,植物の結実を助けていることなどについ て説明した.これにより,参加者にミツバチと周辺緑地 との関連性について認識することを促した. その後 15 分程度で,参加者は巣箱にいるミツバチを 直接観察し,蜜が蓄えられた枠(貯蜜枠)を遠心分離機 に入れて,蜜をとる作業(採蜜)を体験した.採取した 蜜については,その場で試食をした.参加者からは「ビ ルの屋上で養蜂ができるのは驚いた」,「甘い,おいしい」 といった驚きや感動の声が聞かれた. (2)アンケート 参加者 25 名中 1 名が観察・体験会終了時で退席し, アンケートの有効回答数は 24 であった.年齢層は 30 才 以 下:4 名(16.7 %),31 ~ 40 才:9 名(37.5 %) 41~ 50 才:8 名(33.3%),51 ~ 60 才:2 名(8.3%), 61才以上:1 名(4.2%)であった.所属別の属性・設 問 A の回答の平均を表 7 に,設問 A の選択式設問の結 果を図 6 に示す.観察・体験会全体,動植物観察,養 蜂体験のいずれについても,「とても楽しかった」(また は「とてもよい」),「楽しかった」(または「よい」)と 回答した人が 87.5 ~ 95.8%を占めた.Wilcoxon の順 位和検定の結果,所属企業よる年齢層,性別,設問 A の回答の平均値に有意な差はなかった. 設問 A の,動植物観察・養蜂体験それぞれの,よかっ た点・改善点に関する自由回答について,テキストマイ ニングして得られた抽出語数,コーディングして得られ たコード数,各設問で当該コードに含まれる抽出語数が 上位 3 つのコードと当該コードのコーディングに用い た単語,コーディングされた単語の 1 人当たりの出現 数の平均を表 8 に示す.動植物観察では,よかった点 のコードとしては,動植物の観察や発見ができたこと等 について言及した「観察・発見」が最も多く,そのほか 都市緑地を観察したこと等について言及した「都市緑 所 属 n 年齢層 性別(%) 設問 A の回答スコア平均 男性 女性 動植物観察・ 体験会は 楽しかったか 動植物観察 の感想 養蜂体験の感想 DL 15 2.36 57.1 42.9 4.86 4.64 4.79 SC 9 2.57 57.1 42.9 4.86 4.57 4.86 計 24 2.43 57.1 42.9 4.86 4.62 4.81 表7 所属別の属性・設問 A の回答のスコア平均 年齢層の値は 30 才以下:1,31 ~ 40 才:2,41 ~ 50 才:3, 51~ 60 才:4,61 才以上:5 を与えた平均 図6 設問 A の選択式設問の結果

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地」,フィールドビンゴを使用したこと等について言及 した「ゲーム・ビンゴ」が得られた.また,改善点のコー ドとしては,もっと学習のための説明があるとよかった こと等に言及した「学習・説明」,もっと生物が多いと よかったこと等について言及した「生物」,緑地や樹木 の案内板等があるとよかったこと等について言及した 「緑地・樹木」が得られた.また,養蜂体験では,よかっ た点のコードとしては,養蜂の体験や見学等について言 及した「体験・見学」が最も多く,ハチや生物多様性等 について言及した「ハチ・生物」,学ぶことがあったこ と等について言及した「学習・教育」が得られた.また, 改善点のコードとしては,日差しが強かったことに対す る懸念等について言及した「熱中症」,体験のための防 護方法や時間の工夫等について言及した「体験」,蜜の 販売希望,試食時間の延長等について言及した「蜜の活 用」が得られた. 設問 B の結果を図 7 に示す.「今日の活動に参加した 感想」の設問では,「体験をつうじて,豊かな自然に気 づくことができた」及び「自然に関する新しい知識が得 られた」の回答が最も多く,Wilcoxon の順位和検定の 結果,「植物と野鳥,昆虫などの関係を知ることができた」 より有意に多かった(p 値< 0.05).「今日の活動を機に 実行してみたい行動」の質問では,「身近な自然や緑地 を観察してみたい」の回答が最も多く,その他の回答よ りも有意に多かった(「今後も観察会や植林・育林活動 に参加したい」は p 値< 0.05,それ以外の選択肢は p 値< 0.01).「オフィスビルや工場の企業緑地は,どの ような効果があると感じるか」の質問では,「いきもの の観察の場として,子供たちをはじめとする環境教育の 場になる」の回答が最も多く,「身近に自然があること で創造性が向上する」,「街全体のイメージや価値を高め るのに役に立つ」より有意に多かった(いずれも p 値 < 0.01).

Ⅳ 考察

1.都市圏の緑地認証取得動向 緑地認証の取得事例数は,三大都市圏に含まれる 6 回答項目 動植物観察 養蜂体験 よかった点 改善点 よかった点 改善点 抽出語数 91 91 75 54 コード数 12 11 10 7 上位3つ のコード名 観察・発見 都市緑地 ゲーム ・ビンゴ 学習・説明 生物 緑地・樹木 体験・見学 ハチ・生物 学習・教育 熱中症 体験 蜜の活用 コーディングに 用いた 単語 観察 見る 発見 体験 見つける 注意 気づく 実感 緑 緑化 植栽 樹木 都会 都市 ビル ゲーム ビンゴ ビンゴゲーム フィールドビンゴ Field-Bingo 知る 知れる 学ぶ 分かる レクチャー 説明 教える 生き物 動物 鳥 植物 樹木 木 緑化 花 体験 経験 見る 直接 見学 実際 ハチ ミツバチ 蜜蜂 蜂 生きもの 生物 生態 生命 学べる 勉強 知る 教育 熱中 暑い 気温 日光 晴れる 体験 触る 実際 試食 美味しい 蜜 売れる 即売 1人当たり の出現数 の平均 0.67 0.43 0.43 0.33 0.29 0.29 0.76 0.48 0.38 0.38 0.29 0.24 表8 自由回答についてテキストマイニング結果(抽出語数,コード数,抽出語数が上位 3 つのコード,コーディングに用いた単語, コーディングされた単語の1 人当たりの出現数平均) 図7 設問 B の結果

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都府県で特に多く,年々増加していた.用途別に見ると, 非住宅系建築物が約 2/3 を占めており,これらの建築 物は住宅系建築物と異なり,住民のプライバシーに留意 する必要がないという点で,企業にとっては生物多様性 に関する教育に比較的利用しやすいと考えられる. 認証取得事例数と着工建築物数を比較した結果,6 都 府県で認証取得事例が多いのは,着工建築物数が多いた めではないことが示唆された.例えばアメリカの場合, LEEDという環境認証を取得した建物は,取得していな い建物に比べてテナント入居率が高いとされ(Miller et al. 2008),認証は,欧米を中心に入居者の募集等に活 用されている.6 都府県では,グローバル化の進展によっ て,質的にも配慮して整備した緑地について認証を取得 し,テナントや住民等の入居募集,集客のアピール等に 活用していると考えられ,グローバル化の一層の進展を 考えれば,こうした企業緑地の整備が続く可能性は十分 に考えられる.企業と生物多様性イニシアティブの「生 き物共生事業所推進ガイドライン第 2 版」では,日々 の活動で生物多様性に配慮した行動や本業へのフィード バックなどが期待できるとして,企業緑地を環境教育に 活用することを推奨している(一般社団法人企業と生物 多様性イニシアティブ持続的土地利用ワーキンググルー プ・東北大学生態適応グローバル COE 2013).企業緑 地を活用した生物多様性の教育の実践を積み重ね,効果 的な実施のための方策に関する知見を蓄積していくこと で,生物多様性の教育の場として活用されることが望ま れる. 2.都心企業緑地での観察・体験会の試行 都心で企業に対して動植物観察,養蜂体験を試行した ことについて,参加者にアンケートをした結果,回答者 の 9 割前後が好意的な評価をした.自由回答をコーディ ングした結果,動植物観察では,よかった点のコードと して「観察・発見」,「都市緑地」,「ゲーム・ビンゴ」が 得られ,フィールドビンゴを用いて都市の緑地を観察し たことで,参加者が動植物等を観察・発見できたことが 高い評価につながったことが示唆された.松川ら(2007) は,中学生を対象にした教育実践で,フィールドビンゴ には気づきを促す効果があったことを指摘している.本 実践では対象が大人ではあったが,同様の効果があった ことが示唆された. 養蜂体験では,よかった点のコードとして「体験・見 学」,「ハチ・生物」,「学習・教育」が得られ,体験・見 学を通じてハチや生物の学習をすることができたことが 参加者の評価につながったことが示唆された.石原ら (2014)は,企業の環境教育では,頭での理解を超えた 説得力が得られることが期待されるとして「体験」を重 視すべきとしているが,本実践では,参加者からも体験 による学習効果の認識が得られ,評価されたことが示唆 された. 複数回答可の設問 B では,「今日の活動に参加した感 想」の質問では,「体験をつうじて,豊かな自然に気づ くことができた」及び「自然に関する新しい知識が得ら れた」の回答が多かった.また,「今日の活動を機に実 行してみたい行動」の質問では,「身近な自然や緑地を 観察してみたい」の回答が最も多かった.設問 A の自 由回答のコーディングでは,動植物観察は,観察によっ て発見があったことが高い評価につながったことが示唆 されており,これらの回答が多かったのは,参加者が動 植物観察で,何らかの気づきや発見が得られたためと考 えられる.「オフィスビルや工場の企業緑地は,どのよ うな効果があると感じるか」の質問では,「いきものの 観察の場として,子供たちをはじめとする環境教育の場 になる」が最も多く,参加者は,試行した観察・体験会 は,環境教育に活用できると評価したことが示唆された. このほかアンケートの自由回答では,遠出をせずにこ のような体験ができるのは貴重,コスト面をクリアする よい仕組みといった言及があった.また,ファシリテー ターの質等に左右されるといった指摘もあったが,複数 企業の協働は,人材・フィールドの補完という点で,利 点があると考えられた. 3.課題等 アンケートの自由回答をコーディングした結果,動植 物観察では,「学習・説明」,「生物」,「緑地・樹木」のコー ドが得られ,生物についてもっと学習したかった,もっ と説明があるとよかった,緑地・樹木について学習でき るような樹名板・案内板がほしかったなどの意見が示唆 された.また,養蜂体験では,「熱中症」,「体験」,「蜜 の活用」のコードが得られ,日差しが強かったことに対 する懸念,体験のための防護方法や時間の工夫もっと防 護方法など体験について改善,蜜の販売希望,試食時間 の延長などの意見が示唆された.このように,参加者は, 改善すべき点が多々存在すると考えたことが明らかと なった.しかし,これらについては,それぞれ具体的な 改善策の検討が可能であり,十分に改善が図れると考え られる. また,本動植物観察・体験では,企業緑地に加え,養 蜂をしている場所も活用して行った.しかし,こうした 生物を通じた活動をしている場所は,都市圏では少数と 思われる.こうした場所を動植物観察・体験に活用する ためには,生物を通じた事例を都市圏で増やしていく必 要があるといえるだろう.また本試行では,企業緑地で 観察できた動物種は,昆虫類や少数の鳥類等に限られた. 試行した東京都中央区は,東京 23 区の中で最も緑被率 が低い(墨田区 2019).生物によっては,生息するため に単体の緑地だけでなく周辺にも生息地があることが必 要となり(橋本・夏原 2002),周辺と生態系のネットワー クが形成されていなければ,少数の生物しか観察できな い可能性がある.このため,現状都心で動植物の観察・ 体験を行う場合は,少数の生き物しか観察できなかった 場合も想定の上,参加者に生き物が少なかった理由等を 考えさせるなど,都市圏の生物多様性に関するプログラ ムについても,事前に検討しておくことが望ましいとい

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えるだろう. しかし,三大都市圏の 6 都府県(東京都,埼玉県・ 千葉県・神奈川県,愛知県,大阪府)では,緑地認証を 取得事例が増加傾向にあるなど,質の点でも配慮された 緑地の整備は進んでいる.近年では,富士通川崎工場や, 大阪守口・門真地区のパナソニックの事業所,三井住友 海上駿河台新館ビルのように,生態系のネットワークの 形成を考慮して,緑地が計画された事例も出てきている. このうち都心に立地する三井住友海上駿河台新館ビルで は,2005 年から 2010 年にかけて野鳥を観察した結果, 23種の鳥類が確認された(山田 2009,原口 2010).今 後都市圏で質の点でも配慮された緑地が増加すれば,生 態系のネットワークが形成されることで,補完的・一体 的に生物生息環境として機能することが期待できる(横 田ら 2013).飛来する生物が増えれば,動植物の観察・ 体験がしやすくなり,観察・体験ができる場の増加にも つながる可能性があるだろう.また,これによって企業 による生物多様性の教育の実施につながれば,より広く 生物多様性の重要性が認識され,生物多様性に配慮した 緑地が増加するといった,スパイラルアップの効果が期 待される.本観察・体験会で参加者の評価が高く,現在 の企業緑地の整備状況,これによって期待できる効果を 考えれば,実施に向けてより効果的な手法について検討 を重ねていくことは意義があるといえるだろう.

謝辞

動植物の観察・体験会に多大なるご尽力,ご参加頂い た第一生命保険株式会社の関係者の皆様,準備や当日の 運営にご尽力頂いた室井利夫氏をはじめとする清水建設 株式会社の関係者の皆様に心より感謝申し上げます.

文献

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本文中で参照した資料

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都市圏の企業緑地の緑地認証取得動向と都心の企業緑地における

企業の社員向け動植物の観察・体験会の試行

小松 裕幸1)・伊東 浩司1)・坪山 明子1)・杉田 昌弥2)・新井 美央2) 佐々木 岩見2)・伴 武彦3)・園田 陽一4)・湊 秋作5)6)7) 1)清水建設株式会社・2)第一生命保険株式会社・3)株式会社ポリテック・エイディディ・4)株式会社地域環境計画・ 5)関西学院大学・6)ニホンヤマネ保護研究グループ・7)一般社団法人ヤマネ・いきもの研究所 近年の生物多様性の保全の動向の高まりにより,企業は生物多様性の社員教育を推進することが明確に求められるよ うになった.企業は都市圏への集中が進んでいる.また,近年都市では企業が緑地を整備する事例が出てきており,生 物への配慮など質にも配慮した緑地では,緑地認証を取得する事例が出てきた.こうした緑地は,企業にとって身近な 場所に立地し,生物への配慮等が第三者によって評価された場所といえる.緑地認証の取得状況を調査した結果,三大 都市圏の 6 都府県(東京都,埼玉県・千葉県・神奈川県,愛知県,大阪府)ではその取得事例が多く,事例数は増加 傾向にあった.これは,これらの都府県はグローバル化に伴い,海外で認証が入居者募集等に利用されていることなど の影響を受けているためと考えられる.東京都心において,企業緑地での動植物の観察,建物の屋上での養蜂体験を試 行した結果,いずれも参加者の 9 割前後が「大変よい」または「よい」と回答したが,観察できる生物が少ない可能 性があるなどの課題も明らかになった.都市圏で質の点にも配慮された企業緑地が増加すれば,都市の生物多様性の向 上に寄与する可能性があるほか,生物多様性の教育を実施できる場が増加し,企業による生物多様性の教育への活用に つながる可能性がある.またこれによって,広く生物多様性の重要性が認識され,生物多様性に配慮した企業緑地が増 加するといった,スパイラルアップの効果が期待される.

参照

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