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訪問看護師が高齢者のフットケアについて感じていること ─実態調査の記述分析─

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(1)日本フットケア学会雑誌 2019: 17(4); 175–180. 〈原著〉. 訪問看護師が高齢者のフットケアについて感じていること ─実態調査の記述分析─ 平尾由美子 1)*,小笠原祐子 2) 仙台赤門短期大学 看護学科 1),和洋女子大学 看護学部看護学科 2). Yumiko HIRAO1)*,Yuko OGASAWARA2) Akamon College of Sendai, Department of Nursing1), Wayo Women’s University, Faculty of Nursing, Department of Nursing2). 【要旨】フットケア実施率向上への示唆を得ることを目的とし,訪問看護師による在宅療養高齢者へ のフットケアに関する実態調査(2016 年 9 月)の質問項目の 1 つである「在宅療養高齢者のフットケア について感じていること」の自由記述回答を分析した.全国 750 か所の訪問看護事業所に対して郵送 法により 245 施設 (32.7%)から返送され,上記質問には 122 人から回答があった(回答率 49.8%).質 的記述的に分析し,319 コードが得られ,【重要性・必要性】 (88 コード),【困難】 (231 コード)の 2 つ のコアカテゴリーに分けられた.コード数が 7 割を占めた【困難】は, 《療養者の要因》, 《看護師の要因》 , 《環境の要因》のカテゴリーで構成された.《療養者の要因》から,在宅療養高齢者の医療処置を含 むフットケアニーズの高まりが明らかとなった.在宅において,予防的フットケアの推進と同時に, 医療的フットケアが実施可能な環境の整備の必要性が示唆された. キーワード:フットケア,在宅療養高齢者,訪問看護,質的記述的調査,感じていること. 【緒言】. 行防止に寄与することが示唆される.. わが国の高齢者の少なくとも半数以上が足部に問題を. しかしながら,在宅療養高齢者の看護を担う訪問看護. 抱えているといわれているなか 1),要介護認定者の急. 師によるフットケアに関する調査では,90% 以上の看. 増 2)を背景に,高齢者を中心とした在宅療養者のフット. 護師が足・爪のケアに関して「観察」,「看護判断」,「ケ. ケアに関する研究報告が増加している 3).高齢者への. ア内容の選択」において困難性を抱えながらケアを行っ. フットケア介入による効果として,歩行バランスの改. ていた 8).また,訪問看護師の多くが利用者の足や足爪. 善 ,下肢筋力および身体機能の改善 ,活動性の向上. のトラブルを経験し,フットケアの必要性を感じていた. と転倒不安の軽減効果 ,さらに看護師による基本的な. が,自信をもってフットケアを実施している者はわずか. フットケアは高齢者の健康維持に有効であったことが報. 6.2% という報告がある 9).これらは訪問看護師による. 告されてきた 7).以上から,フットケアが高齢者の足部. フットケア実施が妨げられている状況を示しており,在. の問題に対処するのみではなく,ADL(Activities of Daily. 宅でのケアという特徴がもたらす困難さ,複雑さによる. Living) ,IADL(Instrumental Activity of Daily Living)遂行. さらなる阻害要因の存在が予測される.. 4). 5). 6). のための立位,歩行機能の維持・向上につながり全身の. そこで今回,訪問看護師を対象に,「在宅療養高齢者. 健康レベルの向上,ひいては介護予防および要介護度進. のフットケアについて感じていること」の自由記述回答 を分析し,フットケア実施率向上への取り組みへの示唆 を得ることを目的とした.. 受付日:2019 年 4 月 25 日 受理日:2019 年 9 月 24 日. 【1.方法】. * 問合せ先 仙台赤門短期大学 看護学科 〒 980-0845 宮城県仙台市青葉区荒巻字青葉 6-41 Tel:022-395-7750(代表) E-mail:[email protected]. 1)対象者. 訪問看護事業所に勤務する訪問看護師. 175. 原著-平尾.indd 175. 2019/12/04 14:08.

(2) 日本フットケア学会雑誌Vol.17 No. 4. 2)調査期間. 以下,コアカテゴリーごとに結果を示す.なおコアカ テゴリーは【 】,カテゴリーは《 》,サブカテゴリー. 2016 年 9 月~10 月 3)データ収集方法. は〈 〉,コードは「 」で示す.. 各県の 1 割以上の数の訪問看護事業所を厚生労働省の. (1) 【重要性・必要性】は,《重要性の認識》 , 《効果の実. 介護サービス情報公表システムから無作為抽出し,合計. 感》,《学習ニーズ》,《多職種連携の必要性》の 4 つのカ. 750 か所の訪問看護事業所(2016 年 4 月時点で全国の約. テゴリーで構成された(表 1). 《重要性の認識》は〈重要だと思う〉,〈実施している〉. 8%) に質問紙を送付し,郵送法にて回収した. 4)分析方法. の 2 つのサブカテゴリーで構成された.〈重要だと思う〉. 「在宅療養高齢者のフットケアについて感じているこ. は,「指導や援助が必要であることは理解している」や,. と」の自由記述部分は,グレッグら 10)の方法を参考に質. 「全身管理の一方法,一手段として大事である」など,. 的記述的分析を行った.すなわち,1 つの意味を含む句. フットケアが重要だとする記述であった.〈実施してい. や文章にコードをつけコード化し,意味内容ごとに分類. る〉では,「全身管理の一部,保清の一部として行ってお. し,サブカテゴリー,カテゴリー,コアカテゴリーと抽. り重要性を認識している」,「足浴や爪切りをよく行う」. 象度を上げて集約した.カテゴリー化した内容の妥当性. など,フットケアを業務のなかに位置づけ,すでに実施. は,研究者間で合意するまで繰り返し検討し,質的研究. しているケア内容や経験についての記述であった.. に精通した研究者のスーパービジョンを受けた.さらに. 《効果の実感》は〈病状・症状の改善〉, 〈介護予防〉 〈心 ,. 在宅看護実践者 (管理者)に分析結果を確認し了承を得. 理的効果〉,〈QOL の向上〉 ,〈情報が得られる〉の 5 つの. た.. カテゴリーで構成された. 〈介護予防〉は, 「歩行の安定や, 転倒リスク軽減効果があると思う」,「足が整えられると. 【2.倫理的配慮】. ADL 向上にもつながる」などの記述であった.〈心理的. 千葉県立保健医療大学の倫理審査委員会の承認を得. 効果〉は,「リラクゼーション効果が高い」 , 「気持ちいい. た.研究の趣旨および研究に当たっての任意性・プライ. と感じてもらえることが最大の効果である」などのコー. バシーの保護について文書を同封し,回答済の質問紙の. ドで構成された.〈QOL の向上〉は,「ケアによって生活. 返送をもって同意を確認した.質問紙は無記名とし,回. の質を上げることも可能だ」との記述であった. 〈情報が. 答内容は電子データ化し匿名性を確保した.データ処理. 得られる〉は,「足の観察をすることで全身状態や暮らし. は専用のパソコンを使用し電子ファイルはパスワードを. ぶりなど多くの情報が得られる」と,フットケアを通し. 付し,個人情報の保護に厳重を期した.. て療養者の心身および生活状況を把握していた. 《学習ニーズ》は〈研修を受けたい〉,〈学びたい〉の 2. 【3.結果】. つのサブカテゴリーで構成された. 〈研修を受けたい〉 は,. 1)回答率および回答者属性. 「適切な爪の切り方,処置の実技研修をしたい」 など,教. 750 か所へ質問紙を送付し,回収された 245 部(回収. えや指導を受けることへのニーズであり, 〈学びたい〉 は,. 率 32.7%)のうち, 「在宅療養高齢者のフットケアについ. 「フットケアに関する参考書を購入し,試行錯誤中であ. て感じていること」の自由記載のあった 122 名の記述を. る」など,自ら学ぶことを志向するものであった.. 分析対象とした(回答率 49.8%).回答者の平均年齢は. 《多職種連携の必要性》は, 〈身体的情報の共有が必要〉 ,. 46.4 歳(SD8.0)で,訪問看護経験年数は平均 7.5 年(SD7.1). 〈関係職種の意識向上が必要〉の 2 つのサブカテゴリーで. であった.フットケアに関係する資格保持者は,糖尿病. 構成された.〈身体的情報の共有が必要〉は,「心疾患の. 看護認定看護師 1 人,皮膚・排泄ケア認定看護師 1 人,. 場合は,マッサージの可否を主治医に確認した」という. 訪問看護認定看護師 4 人,日本フットケア学会認定の. 具体的な内容であった.〈関係職種の意識向上が必要〉 で. フットケア指導士 2 人,日本下肢救済・足病学会のフッ. は,「足のケアの大切さを全ての関わる職種が認識する. トケア認定師 2 人であった.また,フスフレーガー 2 人,. ことが必要」, 「ケアマネジャーにフットケアの意味を. フットケアセラピスト 1 人(いずれも民間資格)であっ. 知ってもらいたい」がコードとして挙げられた.. た.その他,日本糖尿病療養指導士 1 名,地域糖尿病療. (2) 【困難】は,《療養者の要因》,《看護師の要因》 , 《環. 養指導士 2 人,リフレクソロジスト 1 人であった.. 境の要因》の 3 つのカテゴリーで構成された (表 2).. フ ッ ト ケ ア の 研 修 を 受 け た 経 験 が あ る 者 は 43 人. 《療養者の要因》は,〈爪・足指の異常〉 , 〈難治性創〉 ,. (35.2%)で,受講回数の平均は 1.8 回であった.. 〈皮膚の異常〉, 〈易感染〉, 〈認知症〉, 〈理解・認識不足〉 , 〈セルフケア困難〉,〈通院困難〉,〈高齢者全般〉 の 9 つの. 2)在宅療養高齢者のフットケアについて感じていること. サブカテゴリーで構成された.〈爪・足指の異常〉 は, 「巻. 122 人の記述内容から,319 コードが得られた.それ. き爪や陥入爪」,「足の指関節が硬い」などのコードで構. らは, 【重要性・必要性】 (88 コード), 【困難】 (231 コード). 成された.〈難治性創〉は,「既にある創は難治なことが. の 2 つのコアカテゴリーに分けられた.. 多い」,「4 年以上潰瘍の処置を続けている」などであっ. 176. 原著-平尾.indd 176. 2019/12/04 14:08.

(3) 訪問看護師がフットケアで感じていること. 表1 訪問看護師が高齢者のフットケアについて感じていること 【重要性・必要性】88コード カテゴリー(コード数). サブカテゴリー (コード数). コード例. 重要だと思う (20). 指導や援助が必要であることは理解している 全身管理の一方法,一手段として大事である 足浴,マッサージなど十分に行いたいと思う. 実施している (22). 全身管理の一部,保清の一部として行っており重要性を認識して いる なるべく足を見て触れることを意識している 足浴や爪切りをよく行う. 重要性の認識(42). 病状・症状の改善 (3). 介護予防 (7) 効果の実感(19). 創の収縮がはかれた利用者がいた 浮腫が軽減し 「歩きやすくなった」 と言われた 歩行の安定や,転倒リスク軽減効果があると思う 足が整えられると ADL の向上にもつながる 介護予防に非常に役立つ技術だ 高齢者の足は予防的にみるようにしている. 心理的効果 (7). リラクゼーション効果が高い 気持ちいいと感じてもらえることが最大の効果である 本人や家族にも喜ばれるケアである. QOL の向上 (1). ケアによって生活の質を上げることも可能だ. 情報が得られる (1). 足の観察をすることで全身状態や暮らしぶりなど多くの情報が得 られる. 研修を受けたい (11). 研修があればもっと実践に生かせると思う フットケアの講習がほとんどないが,あれば行ってみたい 適切な爪の切り方,処置の実技研修をしたい. 学びたい (10). フットケアに関する学びを深めていく必要性を感じている 在宅看護向けのフットケアを勉強したい フットケアに関する参考書を購入し,試行錯誤中である. 学習ニーズ(21). 身体的情報の共有が必要 (2) 心疾患の場合は,マッサージの可否を主治医に確認した 多職種連携の必要性(6). 関係職種の意識向上が必要 (4). 足のケアの大切さを全ての関わる職種が認識することが必要 ケアマネジャーにフットケアの意味を知ってもらいたい. た.〈皮膚の異常〉は「白癬が多く治療されていない」, 「水. えない」など,ほとんどが爪のケアに関するコードで構. 虫から皮膚炎になっている」など,6 つのコード全てが. 成された.〈ケア方法がわからない〉は, 「足トラブルが. 白癬症に関わるものであった.〈易感染〉では「爪の変形. みられた場合の対処方法がわからない」, 「看護師として. から感染が多い」,「浮腫があるとすぐに感染してしまう. の業務範囲が不明」などであった.〈認識不足〉 は, 「フッ. 傾向がある」などが挙がった.〈認知症〉は「認知症の療養. トケアという形でケアを重要視した事はない」 , 〈知識不. 者はケアに拒否があり難しい」というものであった.〈理. 足〉は,「知識がないのでケアをうまくとり入れられな. 解・認識不足〉は, 「自分で足を見ていない人が多い」な. い」,〈観察不足〉は「観察不足のためか異常の発見が遅れ. ど,フットケアへの理解が低い状況が示された.〈セル. る」などが挙がった.〈危険だと思う〉は, 「陥入爪の爪切. フケア困難〉は,「視力低下,手の運動機能が低下,その. りは危険で手が出せない」,「研修を受けていない者は爪. うえ体が硬く足の爪が切れない」など主に加齢性変化に. 切りは行わない方が良いと考える」というものであった.. よるものであった.〈通院困難〉は「足のトラブルで歩行. 《環境要因》は,〈時間不足〉,〈主治医の理解・認識不. 困難な中の通院はかなり負担だ」など,移動が困難な状. 足〉,〈関係職種の理解・認識不足〉,〈家族の理解・認識. 態ゆえの困難であった.〈高齢者全般〉では,「ほとんど. 不足〉,〈介護力不足〉,〈専門家不足〉,〈器具不足〉 , 〈研. の高齢者に足トラブルが見られる」という実態が挙げら. 修不足〉, 〈報酬・経済的問題〉, 〈継続困難〉 , 〈啓発不足〉. れた.. の 11 のサブカテゴリーで構成された. 〈時間不足〉 のコー. 《看護師の要因》は〈技術が難しい〉,〈ケア方法がわか. ドは,「フットケアは時間がかかり,限られた訪問時間. らない〉,〈認識不足〉,〈知識不足〉,〈観察不足〉,〈危険. ではできない」, 「予防的ケアとしては時間を費やせない」. だと思う〉の 6 つのサブカテゴリーで構成された.〈技術. などであった.〈主治医の理解・認識不足〉は, 「内科医. が難しい〉は,「巻き爪の処置は技術が困難」,「肥厚爪や. なので診てもらえない」,「皮膚状態のことで相談しても. 陥入爪は研修を受けても思うように爪切りやヤスリが使. 返事が返ってこない」などであった.〈関係職種の理解・. 177. 原著-平尾.indd 177. 2019/12/04 14:08.

(4) 日本フットケア学会雑誌Vol.17 No. 4. 表2 訪問看護師が高齢者のフットケアについて感じていること 【困難】231コード カテゴリー (コード数). 療養者の要因 (61). 看護師の要因 (41). サブカテゴリ─ (コード数). コード例. 爪・足指の異常(16). 爪白癬などで厚肥している 巻き爪や陥入爪 足の指関節が硬い. 難治性創(10). 既にある創は難治なことが多い 4年以上潰瘍の処置を続けている. 皮膚の異常(6). 白癬が多く治療されていない 水虫から皮膚炎になっている. 易感染(4). 爪の変形から感染が多い 浮腫があるとすぐに感染してしまう傾向がある. 認知症(3). 認知症の療養者はケアに拒否があり難しい. 理解・認識不足(6). 自分で足を見ていない人が多い 本人が受け入れなければケアできない. セルフケア困難(6). 視力低下,手の運動機能が低下,そのうえ体が硬く足の爪が切れない. 通院困難(5). 足のトラブルで歩行困難な中の通院はかなり負担だ. 高齢者全般(5). ほとんどの高齢者に足トラブルが見られる. 技術が難しい(11). 巻き爪の処置は技術が困難 肥厚爪や陥入爪は研修を受けても思うように爪切りやヤスリが使えない 爪が硬いのでなかなか上手に切れない. ケア方法がわからない(7). 足トラブルがみられた場合の対処方法がわからない 看護師としての業務範囲が不明. 認識不足(8). フットケアという形でケアを重要視した事はない フットケアが後回しになることが多い. 知識不足(7). 知識がないのでケアをうまくとり入れられない 疾患によりどの程度のフットケアが必要か分からない. 観察不足(6). 観察不足のためか異常の発見が遅れる 靴下で見えないので,意識しないと見られない. 危険だと思う(2). 陥入爪の爪切りは危険で手が出せない 研修を受けていない者は爪切りは行わない方が良いと考える. 時間不足(23). フットケアは時間がかかり,限られた訪問時間ではできない 予防的ケアとしては時間を費やせない. 主治医の理解・認識不足(20). 内科医なので診てもらえない 皮膚状態のことで相談しても返事が返ってこない 主治医が関心を持たなければ治療にいたらない. 糖尿病や透析の外来でも足の状態は確認してもらうことが少ない 関係職種の理解・認識不足 (17) 入院中爪切りされていない 訪問入浴やデイサービス,ショートステイでも関心が低い. 環境の要因 (129). 家族の理解・認識不足(15). 寝たきりで歩行しないからフットケアは不必要という認識 目に見えるトラブルでないとケアに協力が得られない 足の爪くらいで病院に行かなくてもよいと言われる. 介護力不足(11). 老々介護,認知症介護,独居などではフットケアできる家族がいない 家族の負担が増すのでケアを勧められない. 専門家不足(10). 皮膚科の往診医が少なく,なかなか来てもらえない 専門医に繋がらない. 器具不足(10). 爪切り,ヤスリなどの器具が家にない. 研修不足(8). フットケアに特化した研修が少なく参加者が限られる. 報酬・経済的問題(11). 診療報酬の評価がないと,利用者の実費負担や事業所の持ち出しとなる 利用者の経済的負担になり,訪問日数が増やせない. 継続困難(3). 介入できる日が限定されるので継続したケアは難しい. 啓発不足(1). フットケアの重要性を一般にもっとアピールすることが必要. 178. 原著-平尾.indd 178. 2019/12/04 14:08.

(5) 訪問看護師がフットケアで感じていること. 認識不足〉は「糖尿病や透析の外来でも足の状態は確認し. は看護基礎教育においてフットケアを系統的に位置づけ. てもらうことが少ない」,「訪問入浴やデイサービス,. ることが有効であると考える.同時に現任教育として,. ショートステイでも関心が低い」などのコードであった.. 研修の機会を増やしていくことが重要である.フットケ. 〈家族の理解・認識不足〉は 「寝たきりで歩行しないから. アの学習ニーズは非常に高いことが本研究でも明らかで. フットケアは不必要という認識」,「目に見えるトラブル. あり,受講できる環境の整備はフットケア実施率の向上. でないとケアに協力が得られない」などであった.〈介護. に直結すると考える. また, 《環境の要因》では, 〈主治医の理解・認識不足〉 ,. 力不足〉は,「老々介護,認知症介護,独居などではフッ トケアできる家族がいない」などであった. 〈専門家不足〉. 〈関係職種の理解・認識不足〉が多数挙げられた.訪問看. では 「皮膚科の往診医が少なく,なかなか来てもらえな. 護は医師の指示書のもとに実施されるが,看護師は療養. い」, 〈器具不足〉では,「爪切り,ヤスリなどの器具が家. 者の看護上の問題を随時報告し,治療・介入方針を協議. にない」,〈研修不足〉では,「フットケアに特化した研修. する立場にある.フットケアが専門外であるとの理由で,. が少なく参加者が限られる」というコードが挙がった.. 主治医から相談の返事がもらえないという記述が複数み. 〈報酬・経済的問題〉は, 「診療報酬の評価がないと,利. られ,そのような事態が珍しくないことが示された.当. 用者の実費負担や事業所の持ち出しとなる」などであっ. 然ながら,医療処置は看護師単独の判断ではできない.. た. 〈継続困難〉は「介入できる日が限定されるので継続. 問題解決の方針が立たないまま時間が経過すれば,状態. したケアは難しい」,また,〈啓発不足〉として「フットケ. が悪化する可能性がある.在宅の場での医療を安全に的. アの重要性を一般にもっとアピールすることが必要」が. 確に進めるためには医師や専門職者の介入が不可欠であ. 挙がった.. り,各職種のフットケアへの意識改革と,確固とした連 携が急務である.. 【4.考察】. しかしながら〈専門家不足〉の状況は深刻であり,専門. 訪問看護師への調査において「在宅療養高齢者のフッ. 医の訪問診療の体制を作ることが対策として不可欠であ. トケアについて感じていること」の自由記述内容は,【重. る.それに加え,医師以外の職種が能力を高め,在宅で. 要性・必要性】と【困難】に集約された.. の医療処置を含むフットケアをフォローできることも重. 【困難】はコード数が全コードの 7 割以上を占めたこと. 要となる.平成 24 年度には,認定看護師や専門看護師. から,訪問看護師は高齢者へのフットケアに多くの困難. など,専門性の高い看護師が訪問看護師と共同で訪問看. を感じていることが明らかとなった.. 護することにより,診療報酬上の評価がされることと. 《療養者の要因》から浮き彫りとなったものは,医療. なった 14).このような病院にある専門的資源を活用し,. 的フットケアを要する療養者の存在である.近年,医療. 在宅での医療を後押しする制度は,在宅でのフットケア. 機関の機能分化と在宅復帰への取り組み推進のもと,在. 促進の糸口として発展させていけるものと考える.. 宅療養者の急増・重度化・多様化・複雑化 11)が進行し. 一方,調査では多くの看護師が【重要性・必要性】 を認. ており,高齢者の足の状態にも反映されていると推察さ. 識し,観察をはじめとした基本的なフットケアは比較的. れる.今回,《療養者の要因》に示されたのは,巻き爪. 実施し,《効果の実感》を得ていることが示された. 〈病. や陥入爪,爪白癬などの〈爪・足指の異常〉があり,難治. 状・症状の改善〉や〈心理的効果〉に加え, 〈介護予防〉と. 性創,感染など,医療処置を含むフットケアが必要な段. して足のケアが ADL の維持・向上に寄与することを経. 階にある高齢者である.さらに加齢性変化や認知症,歩. 験から理解している看護師の存在が示された.セルフケ. 行困難のため通院困難な状態にある.もはや創傷管理を. ア指導や基本的ケアを中心とした予防的フットケアは,. 含めた医療的フットケアニーズが在宅にあることを無視. 訪問看護業務に位置づけることが基本となる.同時に,. することはできないと考える.. 一層進行すると予測される在宅療養高齢者の重症化・多. 現在はその環境が未整備なため,訪問看護師は〈技術. 様化に伴い,足トラブルの進行を防ぐ医療処置を必要と. が難しい〉や〈ケア方法がわからない〉ことや, 〈知識不足〉. するフットケアに対応できる人的・物的環境の整備が,. を感じ,特に爪切りに関して積極的に手が出せない状況. 今後の在宅フットケアを推進する鍵となることが示唆さ. にある.看護基礎教育や職場で爪切りの教育を受ける機. れた.. 会は少ない現状から 12),多くの看護師は異常な爪のケ. 【結論】. アを実施する技術水準に達していないことが推測され る.また,爪切りによる侵襲の恐れから,爪のケアをす. 訪問看護師が「在宅療養高齢者のフットケアについて. .このような看護. 感じていること」は【重要性・必要性】,【困難】の 2 つの. ることが減ったともいわれている. 13). コアカテゴリーに分けられた. 【困難】は《療養者の要因》 ,. 師の “爪切り離れ” ともみえる状況は,療養者のケアを 受ける機会の狭小化につながることが危惧される.看護. 《看護師の要因》,《環境の要因》に集約された. 《療養者. 師はフットケアの具体的技術と前提となるアセスメント. の要因》から,在宅療養高齢者の医療処置を含むフット. 能力を身につける必要があり,そのためには,根本的に. ケアニーズの高まりが明らかとなった.在宅において,. 179. 原著-平尾.indd 179. 2019/12/04 14:08.

(6) 日本フットケア学会雑誌Vol.17 No. 4. 予防的フットケアの推進と同時に,医療的フットケアが. フットケアの効果の検討.日看研会誌.2010: 33 (1) ; 111-120 7)Ogasawara Y, Takayama K, Sate T, et al: Effectiveness of basic foot care for the elderly carried out by nurses.お茶の 水看誌.2014: 8 (2); 1-17 8) 内田恵美子,佐々木明子,高山かおる,他(2013) ,足・ 爪白癬のケアと治療に関する都市部在宅ケア連携支援 システムの開発.公益財団法人在宅医療助成 勇美記 念財団 2011 年度(後期)在宅医療研究助成 完了報告 書,2018 年 10 月 1 日,http://zaitakuiryo-yuumizaidan. com/data/file/data1_20130311021931.pdf 9)西脇友子:在宅看護におけるフットケアの現状と課題. 健康科学大紀.2015: 11 (1); 163-170 10)グレッグ美鈴,麻原きよみ,横山美江:よくわかる 質 的研究の進め方・まとめ方 看護研究のエキスパートを めざして.第 1 版,東京,医歯薬出版,2007 11)公益社団法人日本看護協会,公益財団法人日本訪問看 護財団,一般社団法人全国訪問看護事業協会(2013) , 訪問看護アクションプラン 2025 ,2-3,2019 年 8 月 19 日,https://www.jvnf.or.jp/2017/actionplan2025.pdf 12)大野美千代,岩崎紀久子:臨床看護師が行う入院患者 への爪切りの実態調査.淑徳大看栄紀.2015:(7) ; 3542 13)飯島滋明:「看護師爪ケアえん罪事件」から何を読み解 くか.名古屋学院大学論集.2012: 49(2); 105-116 14)福井トシ子,齋藤訓子:診療報酬・介護報酬のしくみ と考え方.第 3 版,東京,日本看護協会出版会,2016. 実施可能な環境の整備が必要である. 本研究は,平成 28 年度千葉県立保健医療大学学内共 同研究費の助成を受けたものである. 「利益相反なし」. 【文献】 1)西田佳世:健康な高齢者のフットケアに関する実態調 査.日医看教会誌.2008:(17); 44-51 2) 内閣府(2018),第 1 章 第 2 節 3 高齢者の健康・福祉 (2) 高齢者の介護 図 1-2-3-6 第 1 号被保険者の要介護度別 認定者数の推移,平成 29 年版高齢社会白書,2018 年 10 月 1 日検索,https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/ w-2017/html/zenbun/s1_2_3.html 3)平尾由美子,小笠原祐子:在宅療養者に対する訪問看 護師のフットケア─文献の動向─.第 15 回日本フット ケア学会年次学術集会プログラム・抄録集.2017; 171 4)野本洋平,川澄正史:高齢者の足爪の機能改善と歩行 能力評価指標の関係.ライフサポート.2007: 19(4) ; 154-161 5)山下和彦,野本洋平,梅沢 淳,他:転倒予防のため の高齢者の足部異常改善による身体機能の向上に関す る研究.東京医療保健大紀.2005: 1; 1-7 6)姫野稔子,小野ミツ:在宅高齢者の介護予防に向けた. Visiting Nurses’ Recognition of Foot Care for the Elderly - Analyzing Their Free Descriptions from a Status Survey Abstract Aiming at increasing the foot care rate, visiting nursesʼ free descriptions for “How do you recognize foot care for the elderly?”, one of the questions presented in a previous survey (September 2016) involving these nurses to clarify the status of foot care for the elderly receiving home care, were analyzed. In this survey, a questionnaire was mailed to 750 home-visit nursing service offices throughout Japan, and 245 of them returned their responses (response rate: 32.7%), including answers to the abovementioned question from 122 visiting nurses (49.8%). Through qualitative descriptive analysis of these answers, 319 codes were created and classified into 2 core categories: [importance/necessity] (88 codes) and [difficulty] (231 codes). [Difficulty] with 70% of all codes consisted of the following categories: {care-receiver-related factors}, {nurse-related factors}, and {environmental factors}. {Care-receiver-related factors} revealed an increasing need for foot care, covering medical care for the elderly receiving home care. The results suggest the necessity of establishing environments that enable medical foot care while promoting preventive foot care for the elderly receiving home care. Key Words:foot care, elderly receiving home care, home-visit nursing services, qualitative descriptive surveys, recognition. 180. 原著-平尾.indd 180. 2019/12/04 14:08.

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