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箱庭療法と新型コロナウイルス

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Academic year: 2021

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(1)Archives of Sandplay Therapy. 2020 Vol. 33 No. 1 p. 1-2. 巻頭言. 箱庭療法と新型コロナウイルス 桑原知子. 京都大学名誉教授 放送大学教授. 日本箱庭療法学会第33回大会は,2019年11月16日,17日に,国立京都国際会館と京都大学を会場と して開催されました。京都大学が箱庭療法学会大会を主催するのは,1991年以来のこととなります。 また,2019年は,河合隼雄先生の十三回忌の年にもあたっておりました。そこで,今回の学会は「箱 庭療法と仏教」というテーマで開催され,初日のシンポジウムでは,中沢新一先生にご登壇いただき, 「河合隼雄と仏教」と題した基調講演を行っていただきました。 当日はとても多くの方にご来場いただき,中沢先生が解きほぐしてくださる仏教の世界に,皆が引 き込まれていきました。私自身は,河合先生が亡くなられたあと追悼式が執り行われたまさにその場 所で,あらためて先生が人生をかけて取り組んでこられた「課題」に想いを馳せておりました。 日本人の一人として,また,箱庭療法を学び,その本質を体感する人間の一人として,私がやれる ことを探していきたいと考えたりしておりました。 ところが,その後新型コロナウイルス感染症の問題が発生し,1000人を超える人たちが一堂に会し た昨年秋のシンポジウムのことが,まるで夢のように感じられます。 今回の新型コロナの問題は,私たちの生活や意識のもち方を大きく変化させ,また,私たちの暮ら しや心を「外側から」見るきっかけになったように思います。つまり,これまであまりにも当たり前 であらためて考えてこなかったようなことを,もう一度再考し,認識するきっかけになったように思 うのです。 中沢先生が解かれ,河合先生が関心を寄せておられた,仏教的な世界に生きる私たちにとって,今 の状況はどのような意味をもっているのでしょうか? 「あらゆるものがつながっていて個々の区別 などない,茫々とした世界」を特徴とするような華厳経の世界と, 「ソーシャルディスタンス」を基 本とする,私たちが今直面させられている「関係性」とは,どのように関わりあうのでしょうか? さらには, 「非個人的な関係がひらけゆく地平」である,箱庭療法とは何なのでしょうか? あまりにも大きな変化を「外から」強要された私たちは,問いを発せざるを得ないように思います。 しかし,これを考えることは,とても貴重な機会であるようにも思います。今後,多種多様な切り口 から,さまざまな考察がなされていくことでしょう。 ここでは,箱庭療法のことを少し考えてみましょう。現在大学の授業は,ほとんどon-lineで実施さ れていますが,さまざまな心理テストや心理臨床の手法を学ぶのに,on-lineでも可能なものと可能で ないものがあるように思います。箱庭療法がどうかというと,これはon-lineではもっとも学びにくい ものの一つではないでしょうか。なぜなのか。箱庭療法が, 「関係性」を重視し, 「場」を基本とし,また 「触れる」ということを通じた「身体性」あるいは「実体性」を有するからだと思います。これまで箱庭 療法の研究を通じてこうしたことは主張されてきましたが,まさに今回のことで実証されたように思 1◦.

(2) うのです。 箱庭療法における砂のもつ意味や, 「母性」との関わりも指摘されてきましたが,Zoomで子育てで きないことを考えるならば,箱庭療法をon-lineで実施できないことも,たやすく理解できるでしょう。 ただ,だからといって,箱庭療法が今後できなくなるということではないと思います。現在, 「切る」 あるいは「離れる」ことを強いられるからこそ,箱庭療法がもっている性質が浮かび上がってくるの ではないでしょうか。特に日本人がもっているこころの性質からして,私たちはより「つなぐ」機能 を発揮していくようにも思います。 今できること,今後していくべきことについて,これからも想いを馳せていきたいと思っています。. ⃝2.

(3)

参照

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