科学的特性マップのデジタル化
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(2) 経済政策ジャーナル 第 17 巻第 2 号. 1.はじめに 日本では、使用済核燃料を再処理した後に生成される核分裂生成物を「高レベル放射性廃棄物」 と規定している。高レベル放射性廃棄物をガラス固化体へと成形したものは、2018 年 3 月末時 点で約 25,000 本になると推計されており、これらはいずれ安全な最終処分地へと搬出され、半 永久的に人々の生活圏を含む生物相から隔離する計画となっている。 高レベル放射性廃棄物(あるいは使用済核燃料)を半永久的に保管することになる最終処分地 を選定する作業は、原子力発電を行ってきた国々が共通して直面する課題であるが、その潜在的 危険性を住民が忌避するため処分先の決定は容易ではない。フィンランドの Olkiluodon、スウェ ーデンの Östhammar などは、処分地として合意が得られた例外的な存在である。 日本政府は、最終処分地の選定を加速するため、2000 年 6 月に「特定放射性廃棄物の最終処分 に関する法律」を制定し、2002 年 12 月には全国の市町村を対象とする公募を開始した。2003 年 から 2016 年までの間に最終処分施設の誘致に前向きな意思を表明した市町村は 20 団体あり、そ れらを一覧にしたものが表1である1。なお、ここでの誘致に対する意思表明、断念表明とは、私 たちが新聞報道などで確認した情報に基づくものである。 これら 20 団体の中で高知県東洋町だけは公式に応募手続きにまで進んだものの、町内外の反 対派の活動によって町長が辞職に追い込まれてしまい、出直し町長選挙で誘致反対派の対立候補 が勝利すると、東洋町からの応募は取り下げられてしまった。表1では、受け入れを検討した団 体の人口、面積、人口密度などが示されている。面積の違いに配慮して人口規模を比べるのであ れば、人口密度が便利な指標である。1つの目安として 2017 年度の値を考えると、全市町村の 人口密度の中位値が 204 人/m2、下位 25%点が 58 人/m2 であることから、表1に掲載された団体 の多くが相対的に人口密度の低い過疎的な地域であることがわかる。また、わが国では 2004 年 度から 2006 年度にかけて市町村合併( 「平成の大合併」 )が急激に進むが、このとき市町村合併 を選択した自治体の多くが財政的な自立の難しい団体であったことは一般に知られている。2006 年度以前に高レベル放射性廃棄物の誘致に動いた団体の多くが、その後に市町村合併に踏み切っ ていることは、衰退が予想される財政力の乏しい団体が現状打開策の一方策として処分施設誘致 の意思を表明したものと見立てても良いであろう。 視点を変えると、表1に含まれる団体のうち東通村、楢葉町、玄海町は、すでに原子力関連施 設を有する団体であるから、フィンランドの Olkiluodon やスウェーデンの Östhammar と同様に、 地域住民の原子力関連施設に対する心理的な抵抗(社会的な受容コスト)が相対的に小さい団体 と考えられる2。Greenberg[2009]では、関連施設を集中的に立地させる政策(CLAMP;concentrating locations at major plants)は、地権関係、労働供給、集約による便益などの理由から有力であると 論じられており、東通村、楢葉町、玄海町が候補地となるのは奇異ではない。 しかしながら、これら楢葉町と玄海町ですら、 (他の団体でも同様であるが)首長が処分施設 の受け入れを容認する姿勢を表明した後すぐに、首長が自らの発言を撤回する事態に追い込まれ 1. 1990 年から 2016 年 4 月までの朝日新聞での記事検索と、杤山[2017]を参考に筆者が把握できたものを整理し ている。 2 韓国国内では 2005 年に初めて中低レベル放射性廃棄物処分施設の立地先が Gyeongju に決定した。事前に候補 地となっていた 4 都市で実施された住民投票において、施設の受け入れに対する賛成票の割合が最も高かった (約 90%)ことが決定因であったとされている。Gyeongju には、4 基の原子力発電所が立地しており、さらに 2 基が建設中であるなど、原子力関連施設が集中している地域である。. 2 14.
(3) 研究ノート/科学的特性マップのデジタル化. ている。誘致表明を撤回するまでの期間の短さは、地域住民が高レベル放射性廃棄物に関する知 識を得て反対行動を起こすのに十分な長さであるとは思えない。幌延町の地層処分関連施設を扱 った滝川[1991、2001]と先述した東洋町の事例研究を行った西郷ほか[2010]や、原子力発電所に 関する事例を扱った北野[2005]と山秋[2007]では、地域外の有識者や活動家が地域住民と協力 する形で施設誘致に対する反対活動を強化していることが示されていることから、専門知識を有 する反対派の人々がまず反射的な行動を起こし、これに地域住民が呼応したものとみるのが妥当 であろう。 Sjoberg[2003]は、反対派の主張は肯定派よりも極端になりがちであると指摘しているが、原子 力政策の推進に反対する人々の活動を考える上では、経済学的に尤もらしい見立てともいえる。 すなわち、推進肯定派は、その主張が通って施設が完成すれば施策に関する費用と便益が実現す るので事前に行っていた主張の妥当性を検証される立場にあるため過剰な主張を控える動機が ある。これに対して、推進反対派は、その主張が通れば施設は建設されず施策に関する費用も便 益も実現しないため、事前に想定していた費用と便益の妥当性は検証され得ず、過剰な発言を控 える動機がないのである。こうした構造によって、反対派の主張は相対的に過剰なものとなりが ちとなり、地域住民からの支持を素早く取り付けることができるという側面もあるかもしれない。 他方では、2011 年に発生した福島第一発電所での事故からの影響も無視し得ない。原子力安全 システム研究所が実施している世論調査を考察した北田[2015]によれば、原子力発電を避けるべ きであると考える人の割合は、事故前の 2010 年 10 月には 11%程度に過ぎなかったが、事故後の 2011 年 7 月には 42%にまで上昇したのである。高レベル放射性廃棄物の処分施設は、原子力発 電施設とは異なる施設であるが、原子力政策そのものへの疑心暗鬼の広がりから負の影響を受け たであろう3。 日本政府は、福島での事故後に世論が落ち着きを取り戻すまでの間、高レベル放射性廃棄物に 関する言及を避けてきたように筆者には見えていたが、2014 年に閣議決定された「エネルギー基 本計画(第4次) 」では、これまでの方針を大きく転換し、各市町村が自発的に処分施設の受け 入れに手をあげてくれるのを待つだけではなく、国が前面に立って最終処分に向けた取組を進め ることとされた。これが具体化した動きの1つが、経済産業省・資源エネルギー庁が 2017 年 7 月に公表した「科学的特性マップ」の公開である4。科学的特性マップは、高レベル放射性廃棄物 の地層処分に関する科学的特性(不適な地質特性など)を全国地図の形で示したものであり、画 像ファイルとして提供されている。 科学的特性マップを作成した主目的が、地層処分について広く国民の理解を得ることであると するならば、地域の科学的特性だけではなく、人口規模の多寡、産業の立地状況などの社会的特 性に関する情報を重ね合わせるべきである。例えば、一般的な常識からすれば、地層処分施設を 都市部に立地させることは現実的な選択肢とはなり得ない。都市部では用地取得費は高騰するし、 3. Kato et. al.[2013]、Gallardo et.al.[2014]、Nishikawa et. al.[2016]は、日本でのアンケート調査に基づ いて、福島第一原子力発電所での事故後に原子力施策への嫌悪が強まった点を指摘している。Visschers and Siegrist[2013]や Siegrist et al. (2014)は、欧州においても福島事故後に高レベル放射性廃棄物への嫌悪が広 がったと指摘しているが、それがマイルドなものであったとしている。Bisconti[2018]は、アメリカにおける原 子力に対する態度が、チェルノブイリや福島での原子力事故を経てもなお、長期では肯定的になりつつあると指 摘している。 4 科学的特性マップについては、経済産業省エネルギー庁のウエッブサイトで閲覧できる (https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/nuclear/rw/kagakutekitokuseimap/ 最終 確認 2020.0528) 。. 3 15.
(4) 経済政策ジャーナル 第 17 巻第 2 号. ステークホルダーが多いために合意形成コストも高くなる。そして万が一事故が発生した場合に は、避難コストが拡大するほか、甚大な再建コストが必要になることも容易に想像されるからで ある。こうした一般常識(社会的特性)すら考慮せずに、科学的特性による安全性を比較するだ けで高レベル放射性廃棄物の立地先を検討することなど不可能である。また、科学的特性マップ は、使い勝手の悪い画像データの形で提供されているが、これでは第三者による二次利用(例え ば、社会的特性を考慮した考察)も期待しがたい。これら科学的特性マップに関する欠落点は、 先述した原子力政策の推進に反対する勢力の活動を政治的なリスク要因と捉える現職政治家が、 意図的に作り出したものと解釈すべきかもしれない。 私たちは、科学的特性マップの欠落点を補完するために、科学的特性マップを GIS のシェープ ファイルとして再現し、個々の科学者が社会的特性を考慮できるよう、これを公開することにし た。本稿の目的は、科学的特性マップを再現したシェープファイルの作成手順などを示し、その 利用を促進することを通じて、最終処分地の選定に関する合意形成へ貢献することにある。 表 1 地層処分施設の受け入れに対して前向きな姿勢を示した市町村. (注)新上五島町の活動は、長崎県知事が反対を表明して以降の報道情報が主要紙(朝日新聞、産経新聞、読売新 聞)で確認できなかった。. 2.科学的特性マップの再現 資源エネルギー庁が提供する科学的特性マップは、社会的特性を考慮していないし、社会的特 性を考慮したい研究者による利活用が困難な画像形式のデータが提供されるに止まっている。 我々は、研究者による科学的特性マップの利用を促進するため、画像データとして提供されてい 4 16.
(5) 研究ノート/科学的特性マップのデジタル化. る科学的特性マップをできるだけ忠実に再現し、これをデジタル化した情報として公開すること を目指した。我々が作成したデジタル版の地図を、科学的特性マップのオリジナル版と区別する ために「再現版」と呼ぶことにする。 2.1.「再現版」の作成手順. 経済産業省・総合資源エネルギー調査会から公表されている『地層処分に関する地域の科学的 な特性の提示に係る要件・基準の検討結果(地層処分技術WGとりまとめ) 』では、地層処分の 安全性を評価する視座(地質環境特性及びその長期安定性、地下施設・地上施設の建設・操業時 の安全性、放射性廃棄物の輸送時の安全性、事業の実現可能性)と、科学的特性マップの科学性 を担保する視座(信頼できる品質のデータ、全国規模で体系的に整備されており地域間比較が可 能、一般的に入手でき検証可能)とが示されている。 これら2つの視座から具体的に選定された 11 の項目(火山・火成活動、断層活動、隆起・浸 食、地熱活動、火山性熱水・深部流体、未固結堆積物、火砕流等、鉱物資源/油田・ガス田、鉱物 資源/炭田、鉱物資源/金属鉱物、輸送)については、 『 「科学的特性マップ」の説明資料』によって 選定理由や出典情報が明らかにされている。 「再現版」の作成にあたり、経度や緯度などの位置 情報が明らかな項目は、そのまま位置情報を使用して地図に反映し、経度や緯度などの位置情報 が明らかでない項目は、科学的特性マップとして提供されている「地域ブロック図」を利用して マップ上へトレースした。 なお、科学的特性マップで使用されているデータの中には、2019 年時点で既に新しいデータへ 更新されているなどの理由で、現時点での入手が困難なデータが含まれていた。 「再現版」では、 可能な限り説明資料が使用したデータを採用するものの、より最新のデータや代替的なデータが 利用可能な場合にはこれらを採用することにした。 「再現版」で使用したデータの出典は表2の 第3列に示している。地図作成には ArcGIS10.6 を使用し、ベースとなる日本地図は ESRI ジャパ ンの全国市区町村界データを用い5、発電施設、廃棄処理施設、火山データは国土数値情報ダウン ロードを用いた6。全国を網羅するデジタルデータ(シェープファイル)は、https://arcg.is/0aG4rP で公開している7。. ESRI ジャパン 全国市区町村界データ https://www.esrij.com/products/japan-shp/ 国土数値情報ダウンロード https://nlftp.mlit.go.jp/ksj/ 7 上記の URL を開くと「活断層」、「原子力発電施設」、「日本地図(japan_ver81)」が表示さ れる。他のデータをマップ上に表示させる場合は、[コンテンツ]をクリックして表示したいデ ータのチェックボックスをクリックすると表示される。なお、公開中のデータのうち活断層に関 するデジタル情報は共著者である髙橋朋一のオリジナルデータであり、学術研究を目的としない 無断利用を禁じる。 5 6. 5 17.
(6) 経済政策ジャーナル 第 17 巻第 2 号. 表 2 使用したデータの詳細情報 出所. 本稿での出所. 火山・火成活動. 基準. 日本の火山(第 3 版) (産業技術総合研究所地質調査総合センター,2013) ; 日本の第四紀火山カタログ(第四紀火山カタログ委員会,1999). 断層活動. 活断層データベース(産業技術総合研究所地質調査総合センターウェブサイ ト(2017 年 7 月 1 日時点のデータ) ) 日本列島と地質環境の長期安定性「付図 5 最近 10 万年間の隆起速度の分布」 (日本地質学会地質環境の長期安定性研究委員会編,2011) 全国地熱ポテンシャルマップ(産業技術総合研究所地質調査総合センター, 2009) 全国地熱ポテンシャルマップ(産業技術総合研究所地質調査総合センター, 2009) 日本列島における地下水賦存量の試算に用いた堆積物の地層境界面と層厚 の三次元モデル(第一版) (越谷・丸井,2012) 20 万分の 1 日本シームレス地質図(産業技術総合研究所地質調査総合セン ターウェブサイト(2017 年 7 月 1 日時点のデータ) ) 日本油田・ガス田分布図(第 2 版) (地質調査所,1976). 産 業 技 術 総 合 研 究 所 「 第 四 紀 火 山 」 < https://gbank.gsj.jp/volcano/Quat_Vol/index.html>(2019 年 2 月 19 日最終閲覧) 同左. 隆起・侵食 地熱活動 火山性熱水・深部流 体 未固結堆積物 火砕流等 鉱物資源/油田・ガス 田 鉱物資源/炭田 鉱物資源/金属鉱物 輸送. 日本炭田図(第 2 版) (地質調査所,1973) 国内の鉱床・鉱徴地に関する位置データ集(第 2 版) (内藤,2017) 国土数値情報行政区域データ 2017 年 1 月 1 日時点(国土交通省ウェブサイ ト) ;国土数値情報標高・傾斜度 3 次メッシュデータ(国土交通省ウェブサイ ト(2017 年 7 月 1 日時点). 産業技術総合研究所地質調査総合センター(2007) 「全国地熱 ポテンシャルマップ説明書」. 同左 同左 内藤(2017) 「国内の鉱床・鉱徴地に関する位置データ集(第2 版) 」 『地質調査総合センター速報』no.73,産業技術総合研究所 地質調査総合センター. 同左. (出所)経済産業省資源エネルギー庁「 「科学的特性マップ」の説明資料より筆者作成。. 「再現版」の活用例として 2.2 原子力発電所への適用:. 以下では、 「再現版」の活用事例として、既存の原子力発電所の立地団体の比較考察に利用し てみよう。科学的特性マップは、高レベル放射性廃棄物の処分先としての地質環境特性を考慮す るための資料であるため、高深度地下の状況を評価することにも力点が置かれているが、原子力 委員会が 1964 年に設けた『原子炉立地審査指針』が示唆する立地条件を具体化すれば、それは 高レベル放射性廃棄物の処分地が満たすべき安全性の条件と似たものになると想定してもよか ろう。 原子力発電所を有する 16 の市町村(表3を参照せよ)について、科学的特性マップで取り上 げられた 11 項目に該当するポイントデータ(緯度・経度が示す位置情報)の有無を確認し、表 3のように整理した。そこでは、高レベル放射性廃棄物(この節での文脈では原子力発電所)の 立地先として適当ではない地点がある場合には表中へ「●」をつけてある。ただし、輸送条件(海 岸線から 20km 圏内) は、 危険性を意味する指標ではないので、 該当する地点を有する場合に 「○」 をつけて区別したが、日本の原子力発電所は水冷式を採用し、すべてが海岸線から 20km 圏内に 位置している。 科学的特性マップにおける不適切な条件を満たす地点(●印)を有さないのは、茨城県東海村、 静岡県御前崎市、佐賀県玄海町のみであった。島根原発を有する松江市は、●印の数が4となり、 一覧表中で最大である。東日本大震災以降、断層の有無が議論の俎上に挙げられていることが多 いが、松江市はこの点においても該当地点を有している。松江市の住民感情からすれば、松江市 が科学的特性マップの示す 11 の条件のうち4つに該当しているという事実は、あたかも原子力 施設を有するのに相応しくないと理解されるかもしれない。. 6 18.
(7) 研究ノート/科学的特性マップのデジタル化. 表3 デジタル化した科学的特性マップを既存の原子力発電所に当てはめた結果 火山性熱水・ 未固結堆積 深部流体. 鉱 資源/ 火砕流等. 油 ・ガス. 鉱. 資源/. 炭. 鉱 資源/ 金属鉱. 輸送. 20㎞圏内人口. 住民基本台帳. 面積. 地方税収. 総歳入. (万人). 人口(人). (㎢). (億円). (億円). 2.86. 経常収支比. 率. 地熱活動. 物. 隆起・侵食. 田. 断層活動. 物. 活動. 物. 火山・火成. 田. 泊. 所属自治体. 物 田. 発電所. 物. 原子力. (%). 一人当たり. 一人当たり. 地方税. 歳入. (千円). (千円). 1,671. 82. 24. 41.4. 43. 1434. 2476. 6,601. 295. 24.5. 79.8. 82. 371. 1210. 9.4. 6,637. 65. 33. 614.5. 87. 498. 9259. 55.65. 38,405. 38. 115.4. 196.3. 87. 300. 511. 85,305. 442. 158. 490.5. 95. 185. 575. 4,715. 26. 24.3. 65.4. 79. 516. 1,386. 20,910. 247. 49.9. 141.4. 94. 239. 676. 66,558. 251. 132.4. 287.2. 93. 199. 431. 8.46. 9,710. 152. 28.9. 100.4. 91. 298. 1034. ○. 9.11. 10,558. 72. 40.6. 125.8. 90. 385. 1192. ○. 6.14. 8,296. 212. 43.6. 107.6. 83. 526. 1297 509. 北海道泊村. ●. -. -. -. -. -. -. -. ●. ●. ○. 東通. 青森県東通村. ●. -. -. -. -. -. -. -. -. ●. ○. 女川. 宮城県女川. -. -. -. -. -. -. -. -. -. ●. ○. -. -. -. -. -. -. -. -. -. -. ○. -. ●. -. -. -. -. -. ●. -. -. ○. 15.72. -. -. -. -. -. -. -. -. -. ●. ○. 8.12. -. ●. -. -. -. -. -. -. -. -. ○. 11.19. -. ●. -. -. -. -. -. -. -. -. ○. -. -. -. -. -. -. -. -. -. ●. -. -. -. -. -. -. -. -. -. ●. 1.84 1.78. 町. 東海第二 茨城県東海村 新潟県柏崎市 柏崎刈羽 新潟県刈羽村 町. 石川県志賀. 敦賀. 福井県敦賀市. 美浜. 福井県美浜. 高浜. 福井県高浜. 大飯. 福井県おおい. 浜岡. 静岡県御前崎市. 島根. 島根県松. 伊方. 愛媛県伊方. 町. 江. 市. 町. 玄. 海. 町. 佐賀県. 町. 玄. 海. 川内. 町. 志賀. 鹿児島県薩摩川内市. -. -. -. -. -. -. -. -. -. -. ○. 20.34. 33,192. 66. 77.9. 169. 84. 235. ●. ●. -. -. ●. -. -. -. -. ●. ○. 22.04 203,787. 573. 285.8. 987.8. 90. 140. 485. -. -. -. -. -. -. -. -. -. ●. ○. 5.78. 94. 28.8. 108.3. 85. 299. 1123. -. -. -. -. -. -. -. -. -. -. ○. 8.11. 5,731. 36. 28.7. 89.6. 96. 502. 1564. ●. ●. -. -. -. -. -. -. -. ●. ○. 8.87. 96,206. 683. 135.8. 582.5. 93. 141. 605. 9,645. (注)当該原発が所在する市町村が条件に該当する場合は「●」あるいは「〇」 、そうでない場合は「−」と記し た。東通村は原発所在地が 2 箇所登録されているため、20km 圏内人口は上段が大字白糠(東北電力所管)の値、 下段が大字小田野沢(東京電力所管)の値を示している。柏崎市と刈羽村の 20km 圏内人口は共通である。. 3.社会的特性 松江市にある島根原発は、松江市と合併する以前の鹿島町に立地していたものである。また、 現在の松江市の面積は 573km2であり、東京都の約四分の一の面積に相当する広さを有している ことから、さまざまな科学的特性に該当する地点が増えるのは奇異なことではない。むしろ、表 3にある数値のうち、原子力発電所から 20km 圏内(福島第一原子力発電所での事故の際、施設 から 20km 圏内の住民に国が避難指示を出した)に居住する人口をみると8、島根原発が約 22 万 人であるのに対して、東海原発は 55 万人にも達している。避難対象者の規模が大きくなると、 緊急時の輸送力や避難者の収容力に不安が生じるし、事後の経済的補償の金額も大きくなる。こ うした社会的特性に依存するコストは、科学的特性マップにおいてその射程外に置かれているが、 現実の意思決定で重要な検討材料になることは明白である。 また、合理的個人を念頭に置けば、リスクのある施設を受け入れるデメリットを甘受する代償 として、経済的補償あるいは精神的褒賞によるメリットを提供する必要がある9。ここでは、定量 的に測りやすい経済的補償に注目し、地方自治体を一つの意思決定主体として捉え、そこでの一 人当たり歳入を比較してみたい。原子力発電施設は、固定資産税の増加を通じて地方税を増やし、 雇用所得の増加を通じて住民税も増え、電源特会を通じて補助金の交付も増えるなど、地方自治 体の歳入増へ貢献する。地方自治体の歳入増は、公共サービスの充実や公共料金の負担軽減など に寄与することで住民に対して経済的便益をもたらす。表3で一人当たりの歳入額(2017 年度決 算)を自治体間で比較してみると、人口規模が小さい自治体ほど一人当たりの便益(歳入額)が 8. ESRI ジャパンの全国市区町村界データ(japan_ver81)を用いて算出した値。. 9. 原子力関連施設について、経済的補償の増額が受容性を高める(低下を抑制する)ことを指摘したもののう ち、日本のデータを使用したものとして Kato et. al.[2013]、Nishikawa et. al.[2016]がある。他方で、精神 的褒賞については、Nishikawa[2020]は、 「社会貢献への自負」がもたらす便益が大きいことを示唆している。. 7 19.
(8) 経済政策ジャーナル 第 17 巻第 2 号. 手厚くなっている傾向をみてとることができる。例えば、表3の中で最も人口の少ない北海道泊 村では一人当たり歳入が約 247.6 万円になっているのに対して、最も人口の多い松江市では 48.5 万円なのである10。 このように、原発が立地する団体間でも人口に応じて一人当たり歳入の多寡に違いが生じてい そうであるが、ここでの文脈からすれば、原子力発電所が立地する団体における一人当たり歳入 額の「増分」を原子力発電所を有さない他団体との比較で測るべきであろう。そこで、一つの簡 易的な考察として、 『市町村別決算状況調』 (2017 年度)の単年度データを使って日本の市町村に 関する回帰分析(分散不均一性を考慮した頑健推計)を行ってみた11。被説明変数を「一人当た り歳入額」とし、説明変数には「住民基本台帳人口」 、 「面積」 、 「原子力発電所ダミー(16 の立地 団体=1) 」 、そして「人口と原発ダミーの交差項」を選定し、回帰分析を行った結果の概要が表 4である。なお、表4中で括弧内の t 値で***が付されている変数は 1%水準で統計的に有意であ り、*が付されている変数の t 値は 10%水準で有意である。 この推定結果を利用して、ある任意の人口データの下で 1741 団体すべてについて一人当たり 歳入額を推計し、そこから原発のある場合と原発のない場合との差分の平均値(限界効果)を求 め、人口規模の変化に応じてシミュレーションした結果が図1として描かれている。この図が示 すところによれば、人口が 1 万人を下回るような自治体では、原子力発電所を有することで一人 当たり歳入額を 100 万円程度引き上げることができる。そのことは、定数項ダミーである「原子 力発電所ダミー」にかかる係数の値が 1180(千円)であることによっても確認できる。この財政 効果は人口が増えるに従って低下していき、10 万人程度の団体になると、一人当たり歳入の増分 はゼロ近傍になってしまう。つまり、原発のもたらす財政効果は、いわば固定的な要素であり、 人数が増えるほど一人当たりの取り分が薄くなる性質を有すると解釈できる。この特性を踏まえ て強調したい点は、人口規模が少ない自治体に原子力施設が立地するのは、一人当たりの経済的 補償額を手厚くし、リスク施設の受容者の厚生を保全するためでもあるという見解の妥当性であ る。こうした社会的特性を加味した情報を提供することで、立地先の選定作業はよりいっそう現 実的なものとなり、社会的に合意可能な帰結へと向かっていくことができるのではないか12。本 稿の主旨からすれば、こうした社会的特性の考察が、高レベル放射性廃棄物に関する研究で進展 10. 宮城県女川町の値は、原発に対する補助金と言うよりも、東日本大震災からの復興を支援する短期的な補助 金が顕著に大きくなっていることに主因がある。 11 個々の説明変数の VIF は 1.02 から 1.54 であり、この点からすると説明変数間に多重共線性が発生している 兆候はみられない。ここでの分析において空間的自己相関へ関心を持つ読者がいるかもしれないので、本稿の考 えに方を言明しておきたい。原子力発電施設が立地する基礎的自治体が原子力発電施設にまつわる固定資産税収 の増加(や国からの補助金交付)によって財政的な余剰を得たとする。仮に、当該団体がこの財政余剰を用いて 消防設備の拡充(消防費の増加)をさせたならば、近隣他団体がこれを「模倣」して消防費の上昇させることも 考えられるし、 「フリーライド」によって消防費を下落させることも考えられる。こうした経緯によって、近隣 団体において空間的自己相関が生じる可能性はある。さりながら、ある原子力施設の立地団体で歳入総額が増加 したとしても、それが近隣団体へ再分配されるわけではないので、消防費の増減は、他の費目の増減によって調 整されることになろう。つまり、原子力発電施設が立地する団体の近隣団体では、予算制約線上での予算配分の 見直しが起きたとしても、予算制約線は動かないものと考えられる。地方自治体における空間的自己相関は、外 生的な要素の強い予算規模(歳入総額)では発現し難いのである。このような認識に基づき、 (一人あたり)歳 入総額を被説明変数とする本稿の分析では、空間的自己相関については配慮していない。 12 日本の場合、人口規模が小さい団体ほど一人あたり歳入が増加する仕組みになっている。2017 年の市町村決 算データで一人あたり歳入の傾向をみると、人口 10 万人以上では、人口が増加しても一人あたり歳入は 40 万円 程度でほぼ一定になるのであるが、人口 10 万以下では、人口が減少するほど一人あたり歳入は逓増していき、 人口 1 万程度になるとその値は 130 万円程度にもなる。この一人当たり支出の手厚さによって、原子力施設がも たらす財政効果のインパクト(ありがたさ、必要度合い)は、いくばくか弱められてしまうかもしれない。. 8 20.
(9) 研究ノート/科学的特性マップのデジタル化. して欲しいと願うことになる。 表 4 回帰分析による分析結果 係数 住民基本台帳人口(人) 面積(km2) 原子力発電所ダミー(有=1) 人口 X 原子力発電所ダミー(交差項). t値. -0.00067. (-4.20). ***. 0.27921. (5.22). ***. 1180.5. (1.68). *. -0.01187. (-1.77). *. 753.0. (31.91). ***. 定数項 (注)被説明変数は一人当たり歳入額(千円).F 値は 10.34.. 3000. 限界効果. 2500. 95%信頼区間(下). 2000. 95%信頼区間(上). 1500 1000 500 0 -500 -1000 100000. 87500. 75000. 62500. 50000. 37500. 25000. 12500. 0. 原発の有無の限界 効果(千円/人). 図1 回帰分析の結果を使った予測:原子力施設に関する一人当たりの財政的便益. 自治体の人口規模(人). 4.おわりに 本稿では、高レベル放射性廃棄物の処分地選定を進めるに際して、社会的特性を考慮した検討 材料が必要である点を強調し、これを湧出させる基盤になり得るものとして、科学的特性マップ をデジタル化した「再現版」を紹介した。関心のある研究者は、ぜひ「再現版」を活用し、地層 処分施設の立地先の選定作業を前へ進めるために、自らの見識と信念とに従って有益な検討材料 を供給して欲しい13。なお、本稿の投稿後、修正中である 2020 年 10 月に北海道寿都町と神恵内 村が高レベル放射性廃棄物の処分地選定に向けた文献調査を受け入れることが明らかになった (NUMO へ応募書類が提出された) 。 「再現版」の具体的に活用することの必要性が高まったの ではないだろうか。. 13. 「再現版」のシェープファイルを希望者に対して広く提供したい。希望者は筆者まで連絡して欲しい。. 9 21.
(10) 経済政策ジャーナル 第 17 巻第 2 号. 巻末資料1:第3節での回帰分析で使用した変数の記述統計量. 参考文献 北田淳子[2015],「再稼働への賛否と原子力発電についての認識-2014 年の INSS 継続調査から」 , INSSJOURNAL22,pp.27-46。 北野進[2005],『珠洲原発・阻止へのあゆみ』 ,七ツ森書房。 西郷貴洋・小松崎俊作・堀井秀之[2010],「高知県東洋町における高レベル放射性廃棄物処分地決定に 係る紛争の対立要因と解決策」 『社会技術研究論文集』7,pp.87-98。 滝川康治[1991],『幌延−核のゴミ捨て場を拒否する』 ,技術と人間。 滝川康治[2001],『幌延・核に揺れる北の大地』 ,七つ森書房。 杤山修[2017],「高レベル放射性廃棄物の地層処分の実現に向けて」,第 6 回原産会員フォーラム配付資 料(2017 年 2 月 7 日) ,日本原子力産業協会。 山秋真(2007) 。 『ためされた地方自治』 ,桂書房。 Bisconti, Ann Stouffer [2018], “Changing public attitudes towards nuclear energy.” Progress in Nuclear Energy, 102, pp.103-113. Gallardo, Adrian H., Tomose Matsuzaki, and Hisashi Aoki [2014], “Geological storage of nuclear wastes: Insights following the Fukushima crisis.” Energy Policy 73, pp.391-400. Greenberg, MichaelR. [2009], “NIMBY, CLAMP, and the location of new nuclear-related facilities: U.S. national and 11 site-specific surveys.” Risk Analysis 29(9), pp.1242-1254. Kato, Takaaki, Shogo Takahara, Masashi Nishikawa,Toshimitsu Homma [2013], “A case study of economic incentives and local citizens’ attitudes toward hosting a nuclear power plant in Japan: Impacts of the Fukushima accident.” Energy Policy 59, pp.808-818. Nishikawa, Masashi, Takaaki Kato, Shogo Takahara, Toshimitsu Homma [2016], “Changes in risk perceptions before and after nuclear accidents: Evidence from Japan.” Environmental Science & Policy, Elsevier 55, pp.11-19. Nishikawa, Masashi [2020], " Swing voters worry about stigmata: In case of the site selection for HLW disposal facilities", MIMEO. Siegrist, M., Sütterlin, B., Keller, C. [2014], “Why have some people change their attitude toward nuclear power after the accident in Fukushima?" Energy Policy 69, 356–363. Sjoberg, Lennart [2003], “Attitudes and risk perceptions of stakeholders in a nuclear waste siting issue.” Risk Analysis, 23(4), pp.739-749. Visschers, Vivianne H. M., Siegrist Michael. [2013], “How a nuclear power plant accident influences acceptance of nuclear power: results of a longitudinal study before and after the Fukushima disaster.” Risk Analysis 33(2), pp.333-47. 10 22.
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