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文化財リストを用いた地域文化遺産情報の集約と連携

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研究論文

文化財リストを用いた地域文化遺産情報の集約と連携

Aggregation and Linking of Local Cultural Heritage Information

with the Use of Cultural Property Lists in Japan

三島大暉

1*

,宇陀則彦

2

Taiki MISHIMA

1*

, Norihiko UDA

2 1 筑波大学 図書館情報メディア研究科(現在,宮内庁三の丸尚蔵館)

Graduate School of Library, Information and Media Studies, University of Tsukuba (Currently, the Museum of the Imperial Collections, Sannomaru Shozokan)

〒305-8550 茨城県つくば市春日1-2(現在,〒100-8111 東京都千代田区千代田1-1) 2 筑波大学 図書館情報メディア系

Faculty of Library, Information and Media Science, University of Tsukuba 〒305-8550 茨城県つくば市春日1-2 *連絡先著者 Corresponding Author 2019年4月に改正文化財保護法が施行され,地域における文化遺産の活用が重視されるようにな った.しかし,地域で活用が期待される文化遺産の情報は発見されにくい現状がある.本研究では, そのような地域文化遺産情報の発見可能性の向上のため,市区町村がWebに公開する文化財リスト を地域文化遺産情報のコア情報として集約し,Linked Dataにより他の情報源との連携を可能とする メタデータモデルおよびシステムの機能要件を提案した.本メタデータモデルおよび機能要件に基 づき,「地域文化遺産情報発見支援システム」を構築して評価した結果,市区町村が刊行・公開する 書籍やWeb情報を含む信頼性の高い地域文化遺産情報を横断して発見できることを確認できた.

The Revised Law for the Protection of Cultural Properties in Japan came into force in April, 2019. In this revision, cultural heritages are expected to be utilized in local community. However, it is difficult to access such local cultural heritage information. In this research, we proposed metadata models and functions which suitable for aggregation cultural property lists published by local public bodies on the Web and linking to other resources with Linked Data in order to improve discoverability of local cultural heritage information. Based on this, we developed a system and evaluated it. The result showed that the system improved discoverability of reliable local cultural heritage information including books and web pages over local public bodies.

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キーワード: 文化遺産, 集約, リンクトデータ, メタデータ, 発見可能性

Cultural Heritage, Aggregation, Linked Data, Metadata, Discoverability

1 はじめに

2019年4月に改正文化財保護法が施行さ れた.その背景として,日本社会が過疎化 や少子高齢化等に向き合う中,日本各地に 所在する文化遺産を保護して継承するこ とが課題となっている状況がある.本改正 により,各市町村において文化財の保存と 活用に関する総合的な計画である「文化財 保存活用地域計画」を作成できるようにな るなど,地域における文化遺産の保存に加 えて,文化遺産の活用も重視されるように なった. 文化遺産の活用のためには,文化遺産の 情報が発見されることが重要である.しか し,地域に所在する文化遺産の情報は発見 されにくい現状がある.各市区町村におい て,文化財保護条例等で指定等を行った文 化財の情報が公開されているが,市区町村 を横断して発見できる仕組みは十分整備 されていない.文化庁と国立情報学研究所 が運営する「文化遺産オンライン」[1]と いう国内の文化遺産情報を横断検索可能 なポータルも存在するが,国指定等の文化 財の情報が中心であり,市区町村を横断し た文化遺産を十分発見できるとは言えな い.くわえて,検索エンジンを用いて地域 に所在する文化遺産の情報を見つけよう としても今日の膨大なWebの情報の中から 市町村が公開する信頼性の高い情報を発 見することは困難である. 一方,2019年2月に国の分野横断統合ポ ータルである「ジャパンサーチ」[2]の試 行版が公開され,地域のコンテンツもいず れ検索対象に加えられる予定であるが,現 状では地域に所在する文化遺産の情報の 集約と連携に適したメタデータモデルや システムの機能要件が明らかになってい ないため,地域に所在する文化遺産の情報 の発見可能性の向上は困難と考える. 本研究では,地域で活用が期待される未 指定の文化財を含むより広い意味での文 化的な遺産を地域文化遺産,地域文化遺産 に関する情報全般を地域文化遺産情報と 定義し,地域文化遺産情報の発見可能性向 上のため,地域文化遺産情報の集約と連携 に適したメタデータモデルおよびシステ ムの機能要件を明らかにすることを目的 とする. 研究手法として,まず東京都内の60市区 町村がWebに公開する,文化財保護条例等 によって指定等を行った文化財の一覧の 情報(以下,「文化財リスト」と言う.) に含まれるメタデータを対象として,地域 文化遺産情報のコア情報として集約を行 う.東京都内の市区町村の文化財リストを 研究対象に選定した理由は,人口や面積が 異なる規模の市区町村が存在すること,地 理的に山間部,沿岸部,島嶼部等様々な環 境が存在すること,旧石器時代から近代ま でと幅広い時代の文化遺産が見られるこ とから,文化遺産情報の特徴である不均質 性[3]を十分捉えたうえで研究を行うこと ができると考えたためである.そして,集 約した文化財リストのメタデータと,デー タの発見可能性と活用可能性の向上が期 待されるLinked Data[4]の仕組みを利用可

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能なメタデータモデルと機能要件を提案 し,「地域文化遺産情報発見支援システム」 (以下,「本システム」という.)の構築 と評価によりその有効性を検証する. 本論文では,2章で関連事例と関連研究, 3章で文化財リストの分析結果について述 べ,4章で地域文化遺産情報の集約と連携 に適したメタデータモデルと機能要件を 提案する.そして,5章で本システムの構 築,6章でその評価について述べる.最後 に,7章でまとめと今後の課題について述 べる.

2 関連事例と関連研究

2.1 関連事例

2.1.1 文化遺産オンライン公開前

国内の文化遺産を集約する初期の構想 としては,「全国文化財情報システム」構 想がある.これは文化財・美術品およびこ れらに関連する情報と,文化財保護行政に 関する情報を収集・整理・データベース化 する構想であり,1989年に文化庁にその調 査研究会が設置された[5].その背景とし て,1980年代以降,博物館・美術館・地方 公共団体の文化財調査によって作成され る文化財情報が膨大となり,その情報を収 集・整理・活用することが求められる状況 があったとされる[6]. 具体的に国内の文化遺産情報を集約す る試みとして,まず文化庁や国立博物館, 国立美術館,国立文化財研究所が収蔵する 文化財等の情報をデータベース化して公 開する「文化財情報システム」の整備が 1995年に開始された.しかし,Webサイト の開設が国内で急速に普及したことによ り全国規模の文化財等の情報を管理する ことが困難となり,「共通索引システム」 が構想された[7].「共通索引システム」 は1996年11月に試行版が公開され,全国の 公私立博物館や美術館がWebに公開する情 報を横断的に発見できるよう,収蔵品等の 情報に対する検索キー,検索結果の見出し, 情報の公開元のURLの3要素が集約された [8].

2.1.2 文化遺産オンラインの公開

2003年4月に文化庁から「文化遺産オン ライン」構想が示され,総務省と連携して 国や地方の有形・無形の文化遺産に関する 情報を積極的に公開することが目的とさ れた.「共通索引システム」は廃止され, 2004年4月に「文化遺産オンライン」の試 行版,2008年3月に正式版が公開された. 2011年にリニューアルされ,現在では時代, 分野,文化財体系といったカテゴリから全 国の文化遺産情報を検索できるほか,全国 の美術館・博物館情報を検索できる. 地域文化遺産情報に関しては,トップペ ージの特集コンテンツとして「地方の文化 財」が公開されており,都道府県単位で代 表的な文化遺産情報が掲載されている.ま た,地図と条件から文化遺産情報を検索す る機能では,地図上または選択肢から地方 公共団体を選択することで,地方の文化財 を発見できる.さらに,「文化遺産オンラ イン」に登録された情報を検索可能な文化 遺産データベースでは,4,518件の地方指 定文化財を発見できる(2020年2月8日時 点).しかし,文化庁が公開する地方指定 文化財の実存件数115,833件(2019年5月1 日時点)[9]と比較すると,「文化遺産オ ンライン」で検索可能な地方指定文化財の 件数は限定的である.

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2.2 Linked Dataを用いた関連研究

文 化 遺 産 情 報 の 集 約 と 連 携 に 関 し て Linked Dataを用いた関連研究としては, 「Europeana」[10]のEDMに影響を受けた研 究が見られる.例えば,EEXCESSプロジェ クトでのオントロジーモデルの構築に関 する研究[11]や韓国の文化遺産情報の統 合 を 目 指 し た KCHDM ( Korean Cultural Heritage Data Model)の構築に関する研 究[12]等がある. 国内では,2010年から行われた情報・シ ステム研究機構新領域融合研究センター の LODAC プ ロ ジ ェ ク ト の 一 環 の 「 LODAC Museum」が文化遺産情報の集約と連携に関 してLinked Dataを用いた関連研究となる. これは,Webに公開された博物館・美術館 の収蔵品情報等を統合し,Linked Dataと して公開・共有するものであった[13].ま た,地域文化遺産情報に関してLinked Data が用いられた関連研究としては,2014年に 報告されている地域の歴史資料の統合利 用を目的とした地域史資料のLinked Data 化に関する研究がある[14].これは,地域 文化遺産情報をLinked Data化によって地 域に密着した利活用を試みたものであっ た.

3 文化財リストの分析

3.1 分析の概要

文化財リストとは,本研究では地方公共 団体がWebに公開する,文化財保護条例等 によって指定等を行った文化財の一覧の 情報を意味する.文化財リストは,地域文 化遺産の保護を中心的に担う地方公共団 体が公開する情報という点で,信頼性の高 い地域文化遺産情報と言える.また,ほと んどの地方公共団体が文化財リストを公 開しており,地域文化遺産情報のコア情報 として用いることができると考える. 本研究の対象となる東京都内の市区町 村が公開する文化財リストについて,2018 年9月6日から2018年12月29日の期間で文 化財リストの有無を確認し,東京都内62市 区町村のうち60市区町村で文化財リスト を確認できた.

3.2 メタデータに関する分析

文化財リストのメタデータを集約する ため,文化財リストのメタデータ項目の調 査を行った結果,表1のとおりであった. 名称に関するメタデータは全ての市区 町村,種別,指定年月日,所在地に関する メタデータはほとんどの市区町村の文化 財リストに含まれていた.また,半数程度 の市区町村の文化財リストでは,所有者に 関するメタデータが含まれていた.これら を文化財リストの主要5項目とし,次のと おり集約と連携の観点で分析を行った.

3.2.1 名称

文化財の名称に関するメタデータは,市 区町村が指定・登録等した際に文化財に付 けられる名称のメタデータである.文化財 は,「紙本着色 神田明神祭礼絵巻 住吉 弘貴 筆 3巻」のように複数のものから メタデータ 項目 市区町村 数 メタデータ 項目 市区町村 数 名称 60 年代 4 種別 58 公開の有無 4 指定年月日 52 地区 2 所在地 51 見学の可否 1 所有者 29 掲載巻 1 番号 12 ふりがな 1 員数 8 表 1 文化財リストのメタデータ項目

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構成される場合があり,この例のように名 称に関するメタデータに員数が含まれて いる場合がある.また,「住吉神社水盤舎 (すみよしじんじゃすいばんしゃ)」のよ うにふりがなが含まれている場合がある. 名称の付け方に注目すると,先行研究でも 指摘されているとおり,文化財の名称は形 態名(name)と作品名(title)の2通りあ る[15][16].形態名による名称としては, 形態名そのものを用いた「庚申塔」や,形 態名に他の情報をくわえた「阿弥陀三尊来 迎図像庚申塔(正保四年二月吉日銘)」と いったものがある.また,作品名による名 称としては,「板絵墨絵「神竜図」 鴨下 晁湖筆」といったものがある. 上述したとおり,文化財の名称に関する メタデータには員数やふりがな等名称以 外の情報も含まれており,名称の項目から 切り離して他の項目とすることも可能で ある.しかし,名称に関するメタデータは 文化財の形態や市区町村によって様々で あり,メタデータの集約者側で一律に整理 することは困難である.また,文化財の名 称は市区町村で公的に利用される名称で あるため,その名称を利用しない場合,市 区町村が公開する地域文化遺産情報を発 見できなくなる可能性がある.そのため, 文化財の名称に関するメタデータは,文化 財リストに含まれるメタデータをそのま ま利用することが望ましい.

3.2.2 種別

文化財の種別に関するメタデータは,市 区町村が指定・登録等した文化財ごとに付 けられる文化財の指定・登録区分や文化財 の種類のメタデータである.「有形文化財」, 「建造物」のように文化財保護法や市区町 村の定める文化財保護条例等に記載され た共通する語彙も見られるが,市区町村に よって使用される語彙や語彙の粒度,記述 方法に関して次のとおり差異が見られた. 1つ目は文化財ごとに種別に関する記述を せず,例えば「有形文化財」に関する文化 財の一覧のように,特定の種別の文化財リ ストとして構成されている場合がある. 2つ目は文化財ごとに種別に関する記述を していても,「有形文化財」と「建造物」 のように項目を分けている場合,「有形文 化財(建造物)」のように項目を分けてい ない場合等,粒度の異なる種別を記述する 方法が異なる場合がある.3つ目は,例え ば,「建造物」という種別に関するメタデ ータしかなく,「有形文化財」という種別 に関するメタデータを有していない場合, その逆に「有形文化財」という種別に関す るメタデータしかない場合のように,文化 財リストに含まれる文化財の種別に関す るメタデータの粒度に差がある場合があ る.4つ目は「金石文」の上位の種別が大 田区では「有形文化財」,調布市では「有 形民俗文化財」であるように市区町村によ って上位の種別が異なる場合がある.5つ 目は「絵画・工芸品」や「歴史資料及び有 形民俗文化財」のように2つ以上の文化財 の種別に関するメタデータを有する場合 がある.博物館資料を対象とした先行研究 では,「分類を資料管理の基準とする場合, 一つの資料が同時に複数の分類に属する ことはない。」[16]と指摘されているが, 文化財リストに含まれる文化財の種別に 関するメタデータは当てはまらない. このように文化財の種別に関するメタ データは,市区町村によって使用される語 彙や粒度,記述方法の差異が見られるため,

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文化財リストの種別に関するメタデータ を集約して利用する場合は,複数の項目に 分かれていても1つの項目としてまとめて 利用することが望ましい.また,市区町村 を横断して類似する文化財を検索可能と するためには,元のメタデータとは別項目 で共通の語彙かつ記述方法の種別のメタ データを付けることが望ましい.

3.2.3 指定年月日

文化財の指定年月日に関するメタデー タは,市区町村が文化財を指定・登録等し た日付に関するメタデータである.このメ タデータも市区町村ごとに次のとおり差 異が見られた.1つ目は表記に関して,「平 成6年11月1日」といった和暦を用いた記述, 「1985年3月25日」といった西暦を用いた 記述,「H12.12.7」のといったJIS X 0301 を用いた記述が見られた.2つ目は粒度に 関して,年月日の記述のほか,「平成30 年」のように年のみの記述,「1992年6月」 のように年月のみの記述が見られた.3つ 目は年ではなく,「昭和58年度」といった 年度での記述や「平26」といった年と年度 のいずれか判断できない記述があった.4 つ目は日付にくわえて,「昭和62年4月1日 指定」のように指定や登録といった文字が 加えられた記述があった.5つ目は「2007 年10月26日/2017年4月1日区指定」のよう に登録文化財になった日付と指定文化財 になった日付が記述される場合や「1981年 4月10日/2017年4月名称・住所変更」のよ うに文化財の名称や住所等が変更された 日付が記述される場合のように,文化財の 指定・登録等の記録を記述するために日付 が複数記述される場合があった. このように市区町村によって差異があ るため,種別のメタデータと同様に元のメ タデータとは別項目で共通の記述方法の 日付情報を付けることが望ましい.

3.2.4 所在地

文化財の所在地に関するメタデータは, 市区町村が指定・登録等した文化財が所在 または保管されている場所のメタデータ である.都道府県名や市区町村名を除いた 住所の記述が多いが,市区町村ごとに記述 方法の違いが見られる.1つ目に「永田町 2-10-5」といったハイフンを用いた 記述,「向島一丁目4番5号」といった住居 表示を用いた記述,「南町6丁目32番地」 といった地番を用いた記述が見られる.2 つ目に,文化財の所在地が神社や資料館と いった周知の場所の場合は,「佃一丁目1 番14号 住吉神社」のように住所に続けて 場所の名称を加えている場合がある.3つ 目に,文化財の所有者が個人である場合, 「東大泉7丁目」のように個人の住宅等が 特定されない形で街区符号や住居番号の ない記述にしている場合や,そもそも記述 しない場合が多い.これは,個人情報の保 護や個人の財産の保護のためと考えられ る.4つ目に,無形民俗文化財の場合,そ の文化財の特性上,特定の住所ではなく, 「旭町地域」のように地域名で記述してい る場合や「西蓮寺:東京都八王子市石川町 13、御嶽神社:東京都八王子市石川町1」 のように複数の場所を記述している場合 がある. このように市区町村によって差異があ るため,種別や指定年月日のメタデータと 同様に元のメタデータとは別項目で共通 の記述方法の場所情報を付けることが望 ましい.

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3.2.5 所有者

文化財の所有者に関するメタデータは, 市区町村が指定・登録等した文化財を所有, 管理,保持する所蔵機関または人物や団体 のメタデータである.文化財を管理する市 区町村名,寺社名,その他法人名で記述さ れるほか,無形民俗文化財の場合は保存会 名が記述される場合がある.記述方法につ いては,宗教法人や国立大学法人といった 法人名称を加えている場合もある.また, 個人が所有する場合は個人氏名の記述で はなく,「個人」や「個人蔵」が用いられ ることがほとんどである.そのほか,「個 人(郷土の森博物館)」のように個人から の寄託等の情報が記述される場合がある. 先述したとおり,所有者に関するメタデ ータは半数程度の市区町村の文化財リス トにしか含まれておらず,さらに個人が所 有する文化財の場合は有用なメタデータ ではないことが多い.もちろん,寺社名等 で検索した際に関連する文化財の発見可 能性の向上が期待されるため集約するこ とが望ましいが,上述した名称,種別,指 定年月日,所在地に関するメタデータと比 較すると,活用可能性は低いと考える.

4 メタデータモデルと機能要件

4.1 システムの目的と要求する機能

地域文化遺産情報の集約と連携により 地域文化遺産情報の発見可能性の向上を 目的として,3章で分析した文化財リスト を地域文化遺産情報のコア情報として集 約し,データの発見可能性と活用可能性が 期待されるLinked Dataにより他の情報源 と連携可能な本システムを図1のとおり設 計した. このシステムが地域文化遺産情報の発 見可能性の向上に寄与するためには,次の 機能要件が求められると考える. (1)横断検索機能:市区町村を横断して文 化財リストのメタデータを検索させる (2)関連検索機能:発見した文化財と関連 する文化財の発見を支援する (3)書籍等発見支援機能:発見した文化財 と関連する書誌情報の発見を支援する (4)Webページ発見支援機能:発見した文化 財と関連するWeb情報の発見を支援す る (1)については,現状では十分に実現さ れていない,文化財リストに含まれる地域 文化遺産情報の市区町村を横断した発見 ができるようになると考える.(2)(3)(4) については,ある文化財リストで発見した 地域文化遺産情報と類似する地域文化遺 産情報や,発見した地域文化遺産情報に関 連する書籍等やWebページを発見できるこ とで,文化財リストに含まれていない,地 域文化遺産情報間の関係や地域文化遺産 の詳細な情報も発見できるようになると 考える. 図 1 「地域文化遺産情報発見支援システム」

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4.2 文化財リストを集約するメタデータモ

デル

4.2.1 メタデータモデルの構築

文化財リストを集約するメタデータモデ ルの構築にあたり,メタデータの相互運用 性を確保するため,「メタデータ情報共有 のためのガイドライン」[17]と,文化遺産 情報の集約と連携で実際に運用されてい るEDM[18]およびJPS利活用スキーマ[19] を参考にした.ただし,EDMやJPS利活用ス キーマでは文化財リストに特徴的な指定 年月日のメタデータを所在地のメタデー タ等と同様にリテラルとURIを空ノードで つなげて表現することが困難であり,また 文化財リストのメタデータのみでは文化 財に関係する行為者やイベント等を正確 に設定できないため,本研究ではオブジェ クト中心モデルを表現可能なDCMIスキー マを基本としたモデルを採用した(図2). なお,文化財オブジェクトのURIについて は,名称に関するメタデータを利用すると 「狛犬」といった一般名称の場合にURIが 重複するため(例えば,http://lcp/狛犬), 市区町村コード[20]の数字6桁と登録順の 数字4桁を組み合わせたもの(例えば, http://lcp/131113-0011)を利用すること とした. また,市区町村が公開する文化財リスト に含まれる元のメタデータを用いること で,市区町村が公開する地域文化遺産情報 の発見可能性の向上が期待されるため,メ タデータの集約に際しては,元のメタデー タを残しつつ,市区町村を横断した検索を 可能とし,かつLinked Dataとしても利用 できるように共通の記述方法のURIのメタ データを別に加えることとした.文化財リ ストに含まれる主要5項目(名称,種別, 指定年月日,所在地,所有者)のうち,URI の値をとることができる項目については, JPS利活用スキーマの構造を参考にし,空 ノードを用いて元のメタデータをリテラ ル,共通の記述方法のメタデータをURIで とれるよう構造化した.文化財リストに含 図 2 文化財リストを集約するメタデータモデル

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まれる主要5項目以外の項目については, 比較的文化財リストに含まれることが多 い番号に関するメタデータと,発見可能性 の向上に資するふりがなに関するメタデ ータを除き,文化財を説明するその他の記 述としてまとめた. くわえて,文化財リストを集約するメタ データモデルでは,文化財リストに含まれ るメタデータのほか,文化財リストからリ ンクする文化財を個別に紹介するWebペー ジが存在する場合,地域文化遺産情報の発 見可能性を向上させるために,そのURLに ついても集約できるようにした.さらに, 本システムで発見した文化財リストのメ タデータを二次利用する際に必要な文化 財リストの公開者(市区町村名と市区町村 コード),文化財リストのURL,文化財リ ストの更新日といった文化財リストの収 集に関するメタデータも集約できるよう にした.

4.2.2 利用するプロパティの選定

メタデータモデルで使用するプロパテ ィについては,メタデータの相互運用性を 考慮し,国内外で広く利用されているRDF ス キ ー マ [21] お よ び DCMI Metadata Terms[22]を優先して利用した.それらの プロパティで表現できない文化財の種別 に関するリテラルのメタデータは経済産 業省と情報処理推進機構が運用するIMI共 通語彙基盤コア語彙[23]の「ic:種別」を 利用し,ふりがなに関するメタデータは国 立国会図書館ダブリンコアメタデータ記 述(DC-NDL)[24]の「dcndl:transcription」 を利用した.

4.2.3 利用する項目語彙の選定

文化財リストで用いられる項目語彙は, 市区町村により異なる場合が多く,本メタ データモデルで市区町村の文化財リスト を集約する際の項目語彙を決定する必要 がある.その項目語彙の選定にあたり,文 化財リストをオープンデータ化する際に 参考とされる政府CIOポータル上の「オー プンデータ推奨データセット データ項目 定義書(文化財一覧)」[25]の項目語彙と, 既存の文化遺産情報を集約したシステム である「文化遺産オンライン」,「ジャパ ンサーチ」,「e国宝」[26]で用いられて いる項目語彙を調査した結果,「オープン データ推奨データセット データ項目定義 書(文化財一覧)」の項目語彙が文化財リ ストの項目語彙と最も近似しており,指定 年月日に関する項目が存在するため,本メ タデータモデルでは「オープンデータ推奨 データセット データ項目定義書(文化財 一覧)」の項目語彙を基本的に利用するこ ととした.ただし,文化財リストでは「文 化財分類」と「種類」,「場所名称」と「住 所」の項目が分かれていない場合が多く, 当該項目の語彙は「文化財分類および種 類」と「場所名称および住所」のように1 つの項目にまとめた.また,文化財リスト には指定文化財以外に登録文化財等も含 まれているため,「文化財指定日」に該当 する項目語彙は「文化財指定日等」とした.

4.2.4 メタデータ記述規則の定義

以上のメタデータモデル,プロパティ, 項目語彙を踏まえ,表2のとおり文化財リ ストに含まれるメタデータを集約する際 のメタデータ記述規則の定義を行った.ま た,表3のとおり文化財リストの収集に関 するメタデータ記述規則の定義を行った.

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4.3 文化財分類および種類のシソーラス

作成に向けたメタデータモデル

4.3.1 メタデータモデルの構築

3章で分析したとおり,文化財リストに 含まれる文化財分類および種類のメタデ ータは市区町村によって使用される語彙 やその粒度が異なる場合があり,市区町村 を横断して類似する地域文化遺産情報を 発見する際の妨げとなる.前節で構築した 文化財リストを集約するメタデータモデ ルでは,文化財リストの元のメタデータを リテラルとして保持しつつ,市区町村を横 断して共通する文化財分類および種類の URIを用いることとした.しかし,文化財 分類および種類のURIとして利用可能なシ ソーラスは現状Web上に存在しない. 本節では,文化財分類および種類のURI として利用可能な独自のシソーラスを構 築するために必要なメタデータモデルの 構築を行う.まず文化財分類および種類の メタデータを構造化し,有形文化財や無形 文化財といった第1分類,第1分類の下位の 分類として第2分類,第2分類の下位の分類 として第3分類とした. 次に,文化財分類および種類のメタデー タの構造化をもとに,図3のとおり文化財 分類および種類のメタデータモデルの構 築を行った.概念の関係を示すオントロジ ーを利用した方が正確な意味の語彙の関 係を推論できる一方で複雑化しやすい.市 区町村を横断した類似する地域文化遺産 情報の発見に利用可能な文化財分類およ び種類の語彙のシソーラスは,上位語彙と 下位語彙の関係で十分であるため,2つの 語彙の関係を表現可能なメタデータモデ ルとした.文化財分類および種類のメタデ 表 2 文化財リストのメタデータ集約に関するメタデータ記述規則 表 3 文化財リストの収集に関するメタデータ記述規則 図 3 文化財分類および種類のシソーラス作成に向けたメタデータモデル

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ータで使用される語彙は,「建造物」や「建 造物の部」のように市区町村によって異な る場合があるため,市区町村全体で最も使 用される語彙を優先語彙,その他の語彙を 代替語彙として表現できるようにした.ま た,文化財分類および種類のメタデータの 相互運用性を考慮し,「DBpedia日本語版」 [27]等で一部見られる文化財分類および 種類と関連する語彙を外部語彙として関 連付けられるようにした.

4.3.2 利用するプロパティの選定

文化財分類および種類のメタデータモ デルで使用するプロパティについては,上 位語彙,下位語彙,優先語彙,代替語彙, 外部語彙を簡易的に表現可能なSKOS[28] を利用した.SKOSはWeb標準のRDFと同様に W3Cにより定義され,Linked Dataとしても 利用されているため[29],本メタデータモ デルのプロパティとして適していると考 える.

4.3.3 メタデータ記述規則の定義

以上のメタデータモデル,プロパティを 踏まえ,表4のとおり文化財分類および種 類のシソーラス作成に向けたメタデータ 記述規則の定義を行った.

5 システムの構築

5.1 システムの全体構成

4章のメタデータモデルおよび機能要件 に基づき,東京都内の市区町村が公開する 文化財リストを対象に図4のとおり本シス テムを構築した.本システムでは,入力さ れた検索キーワードを用いてLinked Data 化された文化財リストの情報をSPARQLで 問い合わせ,市区町村を横断して地域文化 遺産情報を発見できる構成にした.また, 発 見 し た 地 域 文 化 遺 産 情 報 か ら Linked Data化された文化財分類および種類の情 報と「DBpedia日本語版」の隣接市区町村 の情報に対してSPARQLで連携することで, 市区町村を横断して類似する地域文化遺 産情報を発見できるようにした.くわえて, 発見した地域文化遺産情報から「ジャパン サーチ」上の書誌情報等をSPARQLで問い合 わせ,文化財リストのメタデータを用いて 検索エンジンを利用することで,地域文化 遺産情報に関連する書誌情報やWeb情報を 発見できるようにした.構築手順は,次節 以降に詳述する.

5.2 文化財リストのメタデータの変換と付

4章で定義した文化財リストのメタデー タを集約する際のメタデータ記述規則に 従って,文化財リストに含まれる文化財分 類および種類のリテラルのメタデータが 複数の項目に分かれている場合は1つの項 表 4 文化財分類および種類のシソーラス作 成に向けたメタデータ記述規則 図 4 「地域文化遺産情報発見支援システム」 の全体構成

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目に統合した.また,文化財分類および種 類のURIのメタデータは,リテラルのメタ データに含まれる最も下位の文化財分類 および種類の語彙を,次節で作成するURI を用いて付与した.場所名称および住所の URIのメタデータは「DBpedia日本語版」の 地方公共団体のURIを,文化財指定日等の URIのメタデータは「DBpedia日本語版」の 西暦のURIを付与した.

5.3 文化財分類および種類で利用されて

いる語彙の調査

文化財リストに含まれる文化財分類お よび種類のメタデータで利用される語彙 について調査したところ,表5のとおりと なった.

5.4 RDF化とRDFストアへの登録

4章で定義したメタデータ記述規則に従 って文化財リストのメタデータおよび文 化財分類および種類の語彙の関係につい て,RDF/Turtleファイルを作成してRDF化 を行った.なお,この作業にはOpenRefine 3.2[30] と そ の 拡 張 機 能 OpenRefine RDF extension 1.1.5[31]を利用した. また,このようにRDF化した文化財リス トのメタデータおよび文化財分類および 種類のシソーラスをLinked Dataとして利 用可能とするため,HTTPリクエストで問い 合わせ可能なSPARQLエンドポイントを提 供するApache Jena Fuseki 3.12.0[32]を RDF ス ト ア と し て 利 用 し , 作 成 し た RDF/Turtleファイルを格納した.なお, Apache Jena Fuseki 3.12.0はSPARQL 1.1 対応のため,本システムでもSPARQL 1.1を 用いることとした.

5.5 地域文化遺産情報の発見支援機能

の構築

5.5.1 文化財分類および種類のシソーラ

スと連携した発見支援機能

本システム上で発見した上位語彙のみ 有する地域文化遺産情報と類似する下位 語彙のみ有する地域文化遺産情報を発見 可能とするため,上位語彙で検索した際で も下位語彙を有する地域文化遺産情報を 発見できる機能を構築した.下位語彙のみ を有する地域文化遺産情報に含まれる文 化財分類および種類のメタデータに対し て,上位語彙のメタデータを付与する方法 でも対応できるが,文化財分類および種類 のメタデータを数倍付与する必要が生じ る.また,「金石文」といった市区町村に よって上位語彙が異なる語彙の場合,「金 石文」と同列に上位語彙を付与すると市区 町村で本来上位語彙ではない文化財分類 および種類のメタデータを付与すること になる.そのため,上位語彙の文化財分類 表 5 文化財リストに含まれる文化財分類お よび種類の語彙 ※〔〕は文化財保護法に記載のない語彙,()は文化財保護条例等に記載のない語彙を示す

(13)

および種類を有する地域文化遺産情報と 類似する地域文化遺産情報を探す場合,図 5のとおりLinked Dataの仕組みを用いて下 位語彙の文化財分類および種類のメタデ ータをSPARQLで問い合わせ,そのメタデー タを有する地域文化遺産情報を発見でき るようにした.また,この方法により文化 財分類および種類のメタデータに上位語 彙のメタデータを付与せずに,「有形文化 財」と「有形民俗文化財」のいずれからで も下位語彙の「金石文」を有する地域文化 遺産情報を発見できるようになった. 本機能におけるSPARQLで問い合わせる 仕組みとしては,図6のとおり探したい文 化財分類および種類のメタデータを最終 的な上位語彙に持つ(skos:broader)下位 語彙を文化財分類および種類のメタデー タとして有する(rdf:type)地域文化遺産 情報を文化財リストの情報から取り出す ものとした.

5.5.2 隣接市区町村の情報と連携した発

見支援機能

本システム上で発見した地域文化遺産 情報と類似する地域文化遺産情報につい て件数を絞って発見可能とするために,地 理的に関連する可能性が高い隣接する市 区町村の範囲内で類似する地域文化遺産 情報を発見できる機能を構築した.本機能 で 必 要 な 隣 接 す る 市 区 町 村 の 情 報 は 「DBpedia日本語版」の地方公共団体のURI からリンクする隣接自治体の情報を用い た.文化財リストのLinked Data化により, 場 所 情 報 お よ び 住 所 の メ タ デ ー タ に 「DBpedia日本語版」の地方公共団体のURI を利用しているため,発見した地域文化遺 産情報の当該メタデータを用いて図7のと おりLinked Dataの仕組みで隣接する地方 公共団体のURIをSPARQLで問い合わせ,そ れを場所情報および住所のメタデータと して有する地域文化遺産情報を発見でき るようにした. 本機能におけるSPARQLで問い合わせる 仕組みとしては,図8のとおり探したい文 化財分類および種類のメタデータを有し (rdf:type),かつ基準となる地域文化遺 産情報の場所情報および住所のメタデー タからリンクする隣接する市区町村の情 報(prop-ja:隣接自治体)を,場所情報お よ び 住 所 の メ タ デ ー タ と し て 有 す る (dcterms:spatial/rdf:value)地域文化 遺産情報を文化財リストの情報から取り 出すものとした. 図 5 文化財分類および種類のシソーラスと 連携した発見支援機能 図 6 文化財分類および種類のシソーラスへ SPARQL で問い合わせる仕組みの具体例 図 7 隣接市区町村の情報と連携した発見支援機能 図 8 隣接市区町村の情報へ SPARQL で問い合 わせる仕組みの具体例

(14)

5.5.3 関連する書誌情報の発見支援機能

本システムで発見した地域文化遺産情 報に関連する書誌情報を発見可能とする ため,文化財リストのメタデータを利用し て書誌情報を検索する機能を構築した.本 機能では,国立国会図書館が提供する「全 国書誌データ」をLinked Dataとして利用 可能な「ジャパンサーチ」のSPARQLエンド ポイントを利用して書誌情報を取得した. 市区町村が刊行する書籍に関する情報を 中心に発見可能とするため,図9のとおり 本システムで発見した地域文化遺産情報 に含まれる「名称」のメタデータを利用し た検索,または「文化財分類および種類」 と「場所名称および住所」のメタデータを 利用した検索により関連する書誌情報等 を発見できるようにした. 「名称」のメタデータを利用した検索で は,「ジャパンサーチ」のSPARQLエンドポ イントのリテラル値を全検索するSPARQL クエリを用いて(bif:contains),「名称」 のメタデータを含むリテラル値を有する 書誌情報等を取得できるようにした.「文 化財分類および種類」と「場所名称および 住所」のメタデータを利用した検索では, URIのメタデータをリテラルに変換した後, 同様にリテラル値を全検索するSPARQLク エリを用いて(bif:contains)書誌情報等 を取得できるようにした.

5.5.4 関連するWeb情報の発見支援機能

本システムで発見した地域文化遺産情 報に関連するWeb情報を発見可能とするた め,文化財リストのメタデータを利用して Web情報を検索する機能を構築した.本機 能で用いる検索エンジンは国内で最も利 用されているGoogleとした.市区町村が公 開するWeb情報を中心に発見可能とするた め,図10のとおり本システムで発見した地 域文化遺産情報に含まれる「名称」と「場 所名称および住所」のメタデータを利用し たGoogle検索により関連するWeb情報を発 見できるようにした.「名称」のメタデー タのみを利用した検索も可能であるが, 「狛犬」等一般名詞が「名称」となってい る場合に当該地域文化遺産情報に関連す るWeb情報の発見が困難になるため,「場 所名称および住所」のメタデータを組み合 わせることで当該地域文化遺産が所在す る市区町村名を加えて検索するようにし た.

5.6 利用画面

本システムのトップ画面には,図11のと おり文化財リストの主要5項目の「名称」, 「文化財分類および種類」,「場所名称お よび住所」,「文化財指定日等」,「所有 者等」をキーワードで検索できるようにし た.また,キーワードで検索した結果は, 図12のとおり市区町村を横断して文化財 リストの主要5項目と,文化財リストを公 開する地方公共団体名,文化財ごとのURI がリスト形式で表示されるようにした. 図 9 関連する書誌情報の発見支援機能 図 10 関連する Web 情報の発見支援機能

(15)

図 12 「地域文化遺産情報発見支援システム」の検索結果の例 図 13 「地域文化遺産情報発見支援システム」の文化財ごとの画面の例 図12の検索結果からURIをクリックすると, 図13のとおり当該文化財ごとに「文化財分 類および種類」,「場所名称および住所」, 「文化財指定日等」,「所有者等」のURIの メタデータと,「文化財個別のURL」,「文化 財リストのURL」,「文化財リストの公開者」 が表示されるようにした.また,この画面 より先述した地域文化遺産情報の発見支 援機能を利用できるようにした.

6 システムの評価

6.1 評価の概要

本研究で提案したメタデータモデルお よび機能要件の有効性を検証するため,5 章で構築したシステムの評価を行った.評 価手法の1つ目は本システムと既存の文化 遺産情報を集約するシステムを比較する 手法である.この手法の目的は,既存シス テムでは発見されにくい地域文化遺産情 報を本システムではどの程度発見できる か検証するためである. 図 11 「地域文化遺産情報発見支援システ ム」のトップ画面

(16)

評価手法の2つ目は実際に図書館のレフ ァレンスで行われた地域文化遺産に関す る質問に対して,本システムで作成した回 答と実際の回答を比較する手法である.こ の手法の目的は,実際の地域文化遺産に関 する質問に対して本システムを用いると 地域文化遺産情報をどのような形で提供 できるか検証するためである.

6.2 既存システムとの比較による評価

6.2.1 評価手順

本システムと比較する既存の文化遺産 情報を集約するシステムとして,市区町村 が指定等を行った文化財を検索できる点 で類似する「文化遺産オンライン」を利用 する.ただし,「文化遺産オンライン」は 本システムと目的が異なるため,市区町村 が指定等を行った文化財を網羅していな い.そのため,「文化遺産オンライン」に 多く登録されている小金井市の文化財を 起点として発見される,市内と隣接市内の 同分類の文化財件数を各システムで得て 比較する.なお,本システムでは「5.5.2 隣 接市区町村の情報と連携した発見支援機 能」で得られた文化財件数を取得し,「文 化遺産オンライン」では文化財各ページの 「連想された作品」に掲載された文化財件 数(最大3件)を取得する.

6.2.2 比較結果

比較結果は表6のとおりであった(2020 年11月3日時点).本研究で提案したメタ データモデルおよび機能を実装した本シ ステムでは,「文化遺産オンライン」と比 較して,地域文化遺産情報として市内と隣 接市内の同分類の文化財が漏れなく発見 できることが分かる.なお,値は起点とな る文化財を除いてシステムに登録済みの 文化財のうち何件の文化財を発見できる か示している.

6.3 地域文化遺産の質問に対する回答

内容の評価

6.3.1 評価手順

国立国会図書館が運営する図書館のレ ファレンス事例を集めた「レファレンス協 同データベース」[33]の東京都内の図書館 が登録したレファレンス事例の中から,地 域文化遺産に関するレファレンス事例と して,質問または回答に「文化財」という 単語を含むレファレンス事例を取得する. そして,取得した地域文化遺産に関するレ ファレンス事例の質問をテーマによって 次の4つに分類して本システムで回答を作 成し,回答内容を比較する. (1)特定の地域文化遺産に関する質問 (2)特定の地域にある特定の種類の地域文 化遺産に関する質問 起点とした文化財 市内 隣接市内 地域文化遺産情報 発見支援システム 文化遺産 オンライン 地域文化遺産情報 発見支援システム 文化遺産 オンライン 吉野家住宅(建造物) 18/18※ 2/2 55/55※ 0/3 鈴木英男家文書(歴史資料) 0/2 0/3 前原町3丁目出土板碑(考古資料) 3/7 0/4 国産ミショー型自転車(有形民俗文化財) 9/9 0/3 21/21 0/1 旧谷口家のオニイタヤ(天然記念物) 3/3 0/0 13/13 1/3 表 6 起点とした文化財から発見できる同分類の文化財件数(発見できる件数/登録済件数) ※「地域文化遺産情報発見支援システム」で収集した文化財リストでは,有形文化財という分類にまとめられている.

(17)

(3)上記以外の地域史に関する質問 (4)上記以外の質問

6.3.2 回答の作成

「レファレンス協同データベース」から 地域文化遺産に関するレファレンス事例 を取得したところ,各分類のレファレンス 事例数は,(1)特定の地域文化遺産に関す る質問が31,(2)特定の地域にある特定の 種類の地域文化遺産に関する質問が12, (3)上記以外の地域史に関する質問が9, (4)上記以外の質問が5であった. また,本システムで作成できた回答に含 まれる書籍等の数と,「レファレンス協同 データベース」の実際の回答に含まれる書 籍等の数は,図14のとおりであった.

6.3.3 レファレンスサービスによる回答内

容との比較と考察

まず本システムで作成した回答と「レフ ァレンス協同データベース」の実際の回答 に見られる回答方法について比較すると, 本システムの回答では,質問に関連する地 域文化遺産情報と,それに関連する書籍等 やWebページを回答する構成となっている. 一方,「レファレンス協同データベース」 の実際の回答では,質問に関連する書籍等 を回答するのみの場合と,関連する書籍等 やWebページを参考資料として用いて質問 に対して文章で回答する場合が見られた. 次に本システムで作成した回答と「レフ ァレンス協同データベース」の実際の回答 を比較した結果,図14のとおり本システム で質問に関連する地域文化遺産情報を発 見することができれば,実際のレファレン スサービスの回答に比べて量的に多くの 書籍を発見することができるとわかった. 一方,地域文化遺産情報のメタデータと関 連が見られないタイトルの書籍や『寺社の 装飾彫刻関東編上』といった特定の地域文 化遺産や特定の場所の地域文化遺産と直 接関連しないテーマの書籍については,本 システムでは発見できなかった. さらに,回答内容の信頼性について比較 すると,「レファレンス協同データベース」 の回答内容は図書館司書等が自らの経験 等を踏まえ適切な参考資料をもとに作成 している点で信頼性が高いと言える一方, 本システムで作成した回答内容について も,市区町村が公開する文化財リストや 5.5.3や5.5.4の機能どおり市区町村が刊 行・公開する書籍等やWebページ(市区町 村が公式Webサイトで当該地域文化遺産を 取り上げた際の広報や指定等を行った際 の市区町村の会議録等)を参照している点 で信頼性が高いと言える.

(18)

以上のことから,本研究で提案したメタ データモデルおよび機能要件をもとに構 築した本システムでは,地域文化遺産をシ ステム上で探す際は統制されたURIのメタ データ,Web上で探す際は市区町村が公開 する元のリテラルのメタデータを利用す ることで,地域文化遺産情報を「レファレ ンス協同データベース」とは別の観点から 信頼性の高い情報として多く提供できる と言える.

7 おわりに

本研究では,地域文化遺産情報の発見可 能性の向上のため,地域文化遺産情報の集 約と連携に適したメタデータモデルおよ びシステムの機能要件を明らかにするこ とを目的とした.具体的に市区町村がWeb で公開する文化財リストを地域文化遺産 情報のコア情報として集約し,データの発 見可能性と活用可能性の向上が期待され るLinked Dataにより他の情報源と連携可 能なメタデータモデルとシステムの機能 を設計し,それらをもとに本システムの構 築と評価を行った. その結果,本研究で提案したメタデータ モデルおよびシステムの機能要件が,次の ような地域文化遺産情報の発見に資する, 地域文化遺産情報の集約と連携に適した メタデータモデルおよびシステムの機能 であることが明らかになった. (1)市区町村を横断した,信頼性の高い地 域文化遺産情報の発見 (2)発見した地域文化遺産情報と類似する, 隣接市区町村を横断した地域文化遺産 情報の発見 (3)発見した地域文化遺産情報と関連する, 信頼性の高い書籍やWebページの発見 本研究の課題としては,東京都内の市区 町村が指定等を行った文化財の情報しか 文化財リストに含まれていない場合があ るため,本システムでは国指定等の文化財 や東京都指定等の文化財の情報を発見で きない点がある. また,同じ形態の文化遺産であっても文 化財リストのメタデータで使用される語 彙と粒度が市区町村によって異なるため, 類似する地域文化遺産情報の発見を困難 としている課題がある. さらに,実運用上の課題として,市区町 村が公開する文化財リストは文化財の指 定等による新規追加,文化財の所有者の変 更等による変更,文化財の指定解除等によ る削除で更新され続けており,また市区町 村が使用するCMSのシステム更新等による 文化財リストのURLや文化財個別のURLの 変更が発生するため,文化財リストの更新 に対応できる仕組みや体制を整備する必 要がある.また,文化財リストの情報をど のように利用できるか利用規約等で明示 する仕組みや体制も整備する必要がある. 本研究を発展させ,さらに地域文化遺産 情報の発見可能性を向上させるためには, 文化遺産情報の収集範囲を拡大するとと もに,本システム上で統制語彙のメタデー タが用いられる必要がある.本研究で構築 した文化財分類および種類の語彙に対す るシソーラスをさらに発展させることで 文化財語彙のKOS(Knowledge Organization System)[29]を構築する対応が考えられる. これにより文化財リストのメタデータで 使用される語彙と粒度が市区町村によっ て異なるという課題に対応できると考え る.

(19)

そしてKOSの構築および更新は,文化遺 産情報の集約者だけでなく,公開者(市区 町村等)も携わる必要があると考える.地 域文化遺産の活用がますます期待される 中,各地域の文化遺産情報の公開者自身が 独自の文化遺産に対する見方や価値付け を残しつつ,文化遺産情報の活用に適した 形で公開できるように,KOSを用いたメタ データ生成モデルの構築が求められると 考える.

参考文献

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[29] Zeng, Marcia Lei; Mayr, Philipp: “ Knowledge Organization Systems (KOS) in the Semantic Web: A Multi- Dimensional Review ” , International Journal on Digital Libraries,Vol.20, No.3,pp.209-230,2019.https://doi. org/10.1007/s00799-018-0241-2. [30] OpenRefine, http://openrefine. org/,(2020 年 2 月 16 日参照) . [31] grefine-rdf-extension,https:// github.com/stkenny/grefine-rdf-exten sion,(2020 年 2 月 16 日参照) . [32] Apache Jena Fuseki,https://jena. apache.org/documentation/fuseki2/ind ex.html,(2020 年 2 月 16 日参照) . [33] レファレンス協同データベース, https://crd.ndl.go.jp/reference/ , (2020 年 2 月 16 日参照) . (2020年 3月24日 受付) (2021年 1月28日 採択)

図 12  「地域文化遺産情報発見支援システム」の検索結果の例  図 13  「地域文化遺産情報発見支援システム」の文化財ごとの画面の例 図12の検索結果からURIをクリックすると,図13のとおり当該文化財ごとに「文化財分類および種類」,「場所名称および住所」,「文化財指定日等」,「所有者等」のURIのメタデータと,「文化財個別のURL」,「文化財リストのURL」,「文化財リストの公開者」が表示されるようにした.また,この画面より先述した地域文化遺産情報の発見支援機能を利用できるようにした.  6  システ

参照

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