企業倫理 で問われ る経営責任
ゴ.ンプ ライ ア ンス を越 え て
.
三■木.佳
光.
Administrative
Responsibility
Required
in Business
Ethics
Beyond
Compliance
Yoshimitsu
MIKI
Abstract
This study note refers to business ethics from the perspective of business administration as well
as theoretical assessment of management. Following to the incidents by Snow Brand Diary Inc
and Nippon Ham Inc, bribery to high officer of Mongolian government by Mitsui Industry Inc,
atomic power trouble by Tokyo Electronics Inc were found in 2002 August, both of which
incidentally happened and could not be prevented beforehand. One of critical points here in those
incidents is the attitude and behavioral norm that Japanese corporations are above all triiing to
hide negative incidents by all means to the public. Corporations should be judged not so much by
how they look as by what they are aware of. When CEO and employees
of corporation maintain
a high ethical awareness, and when its ethical norm is firmly preserved in each worker's mind,
business ethics can take into effect throughout the corporation only with a minimum systematic
reform of ethical standard. Ethical nature of corporation must represent the idea that while
business evaluation must basically be reflected in economic value of pursuit for efficiency and
profit, corporation must have, as an indispensable element for existence and growth of the
corporation., "expressed awareness" to emphasize on social value dictated by stakeholder
management.
◎ は じめ に
今 年(2003年).9月 上 旬 ∼ 社 会 資.本整 備 を事 業 領 域 と して い る東 証一 部 上 場 某 社 の取 締 役 人 事 部 長 が 求人 の 件 で 、 文 教大 学 湘 南 キ ャ ンパ ス就 職 委 員 長 で あ.る拙 宅 を訪 ね て き.た折、.雑談 で次 のよ うな こ とを 話 され た 。 「最 近 の若 手 社員 の 中 に.は"わ が社 の将 来 ビ ジ ョンの.具体 的 展 開 と も関係 して 、 われ わ れ 従 業 員 に 経 営幹 部 は何 を期 待 して い る ので す か"..とか"こ の会 社 に一 生 捧 げ て も後 悔 す る よ うな こ と はな い で し ょ うね""雪 印 のよ うな エ ク セ.レン トなブラ ン ドが消えて い くよ うな、 さ らに 日本ハ ム9日 本 フー ド偽 装 行 為 とい った こと が報 道 さ れて い ます が、 わ が社 に は企業 倫 理 に反 す る こ.とは絶 対 にな い といえ るの で し ょうね"と い った質 問 を、 なん の遠 慮 もな く投 げか けて き ま す。 こん な こ とを 聞 か れ て も、 企 業 の社 会 的責 任 で先 達 企 業 の 役 割 を 財 界 活 動 の 中 で果 た して き た東 京 電 力 で さえ 内 部 告 発 で原 発 ト ラ ブル 隠 しが発 覚 す るな ど、 わ が 社 で もな にが 発生 す る の か わ か らず不 安 です 。 不 祥 事 が な い と信 じ て いま す が 、 も しあ って発 覚 す る と、 途 方 もな い致 命傷 の痛 手 を 負 う こ とに な る今 日、 わ が 社 の企 業 理 念 や長 期 計画 が どん な に立 派 な もの で も、 社 員一 人 ひ と りが どん な に真 面 目 で優 秀 で あ っ て も、 会 社 の将 来 の こ とに私 自身 不 安 で 、 は っ き り した こ と もい え な い。 しか し、 経 営 幹 部 と して ま と もな 回 答 が で きな い よ うで は無 能 と いわ れ て も仕 方 が な い。 も っ と知 識 武 装 した知 的経 営 に徹 しな けれ ば い けな い で す ね。」 彼 は誠 実 で、 会 社 の発 展 の ため に骨 身 を 削 る よ うな献 身 的努 力 を捧 げ て き た有 能 で 勤 勉 な役 員 で あ る こ とを 筆 者 は承 知 して い るの で 、"知 識 武 装 した知 的 経 営"と い う言 葉 に強 い感銘 を受 け た。 以 下 の 論 及 は、 今 日の企 業 経 営 幹 部 に と って"企 業不 祥事 多発 の 時代 潮 流 と企 業 倫 理 の実 践 の知 識 武 装 と は い った い い か な る意 味 の もの な の か"に つ い て 、経 営学 も し くは経 営 管 理 論 ア プ ロ ー チか ら の 企 業倫 理 の考 察 で あ る。
1繰
り返 される企業 の不祥事
1失 敗 か ら学 ぶ姿 勢 の欠 如 世 界 で 初 め て企 業 倫 理 の必 要 性 が 明 確 な 形 で 指 摘 され た の は 、1970年 代 の米 国 に お いて で あ る。 こ れ に遅 れ る こ と約20年 、1990年 代 に 日本 で 、 企 業 倫 理 とか 、 コ ンプ ライ ア ンス とい う言 葉 が市 民 権 を 獲 得 し始 め る。 これ は ち ょ うどバ ブル 景 気 の崩 壊 と時 を 同 じ く して い る とい う意 味 で 、 き わ めて 感 銘 深 い とい うか 、興 味 深 い もの で あ る。1990年 代 に、 景 気 が 失 速 す る と と もに、 そ れ ま で世 界 的 に賞 賛 を 浴 び て いた 日本 的経 営 の影 の部 分 が 次 々 に 明 るみ に出 て きた 。 経 営 的 視 点 で は、 企 業 の責 任 は経 済 的 責 任 と社 会 的 責 任 か ら構 成 され、 企 業 倫 理 は企 業 の社 会 的責 任 と して 論 ず るの が通 常 で あ る。 経緕 的 責 任 は企 業 存 続 の ベ ー ス 、社 会 的責 任 は まず 基 礎 レベ ル が法 の 遵 守 と そ れ を担 保 す る情 報 公 開(企 業 倫 理)、 次 の レベ ル が 寄 付 や社 会 貢 献 活 動 、 最 終 レベ ル が ス テ ー ク ホル ダー マ ネ ジメ ン トを経 営 戦 略 と して実 現 す る こ とで あ る。 第2次 世 界 大 戦 後 の 日本 にお け る企 業 の社 会 的 責 任 の 系 譜 を み る と、 大 き く3回(注01)、2000年 の ス ノー ブ ラ ン ド崩壊 を含 あ る と4回 に な る。 企 業 不 祥 事 を 考 え て み て も、 証券 会 社 の損 失 補 填 、 金 融 業 界 の 不正 融 資 、建 設 業 界 の談 合 とか 、 政 治 献 金 、 住 宅 金 融 業 界 の 経 営 破 綻 、製 薬 業 界 の薬 害 、 百 貨 店 業 界 の総 会 屋 対 策 、 そ れ か ら軍 事 関連 企 業 の水 増 し請 求 等 が指 摘 で き る。 これ らは単一 企 業 で な くて 、 同一 産 業 内で の 複 合 企業 が そ うい う問題 を起 こ して い る と い う、 経 営 学 を 学 ぶ人 に は興 味 の尽 き な い 現 象 で あ る。 さ ら に、 医療 ミス、 エ ネル ギ ー分 野 で の 臨 界 事 故 、 廃 棄 物 処理 分 野 で の ダ イ オ キ シ ソ 等 、 安 全 を脅 か す もの に加 え て、 地 球 環 境 問題 に対 す る社 会 意 識 の 高 ま りが現 在 起 こ って き て い る。 これ に プ ラ ス アル フ ァ と してPL法 の 施行 、 株 主代 表 訴 訟 もあ る。 こ う い う こ とが 噴 出 して くる要 因 は、 や は り20世 紀 末 の産 業 規 模 の 広 が りを持 った企 業 の不 祥 事 の 多 発 と考 え られ る。 と同 時 に、 日本 的経 営 に対 す る 自信 と誇 りが 打 ち砕 か れ た こ と も無 視 で き な い。 1985年 ご ろ の 日本 的 経 営 のす ば ら しさ は今 ど こに行 って しま ったの か と い う こ とで、 失 わ れ た10年 と 言 って 、 既 に15∼6年 が経 って しま っ た。 企 業 の 不 祥 事 の 多 発 は何 も 日本 企 業 だ け の こ とで は な い。 米 国通 信 大 手 ワー ル ドコム の 巨額 の粉 飾 決 算 、 これ が2002年6月 に 明 るみ に 出 て、 ア メ リカ の資 本 主 義 が 揺 さぶ られ て い る。 エ ン ロ ン事 件 から半 年 しか経 って いな い。 エ ンロ ンは金 融技 術 を 使 って 巧 み に帳 簿 の 操 作 を した が、 大 手 ワー ル ドコ ム の実 態 は設備 投 資 のつ け替 え で あ る ので 、素 人 で も発 見 で き る よ うな会 計 処 理 の不正 を や って い た。 これ らを なぜ 発 見 で きな か った か と い う と、90年 代 後 半 に超 一 流 優 良 企 業 とい うお墨 付 き を得 て い た こ とに あ る。 この よ うな エ クセ レン トな 企業 が ま さか こん な こ とを す る こ とは な い とい う こと で発 覚 が遅 れ た ので あ る。 エ ンロ ンに端 を 発 して、 い わ ば会 計 不 信 に よ って 、米 国 で は株 式 会 社 そ の もの の 信 頼 性 を 失 っ て き て い る と い う由 々 しき事 態 で あ る。 また 、 企 業 倫 理 先 進 国(注02)にお け る倫 理 面 で の模 範 モ デ ル企 業 で あ った米 国 ゼ ロ ックス社 の粉 飾 疑 惑 もあ り、 超 一流 企 業 と言 わ れ る と ころで す ら、 こ うい うこ と をや って い る と い う こ とで、 企 業 倫 理 に つ い て い ろい ろな 問題 が 山積 ・噴 出 して い る。 最 近 、 日本 企 業 を 取 り巻 く社 会 環 境 は激 し く変 化 して き て い る。 国 際 ビ ジネ ス面 で は、 グ ロ ーバ リ ゼ ー シ ョ ンが 進 展 す る し、 日本 企 業 の グ ローバ ル ス タ ンダ ー ドへ の対 応 、 国 際市 場 ル ール へ の 対 応 が 急 が れ て い るの は ま ぎれ もな い 。2000年 に三 菱 自動 車 の30年 に及 ぶ リコー ル 隠 しが発 覚 し、 社 会 の激 しい批 判 を 受 けた 。 そ れ か ら三 菱 電 機 グ ル ー プ も太 陽光 発 電 パ ネ ル の 出力 に虚 偽 記 載 が あ った 等 、 そ こ らあ た りか ら急 激 に消 費 者 で あ るわ れ わ れ の意 識 は、 こ うい う不祥 事 とい う企 業 倫 理 問 題 に もの す ご く敏 感 にな って きた とい え る。1990年 代 に そ うい う芽 が どん どん 出 て き て、 雪 印事 件 が 起 き た2000 年 、21世 紀 の 初 め の 年 を 契 機 に、 企 業倫 理 に対 す る わ れ わ れ の 認 識 は新 た な展 開 を して きて い る と考 え られ る。 全 体 と して み た ら、 日本 企 業 は 、 経 営学 的観 点 か らす る と、 失 敗 か ら学 ぶ と い う姿 勢 が 余 りに もみ られ な い。 雪 印 の 衛 生 管 理 上 の 仕 組 み、 言 って しま え ば ル ー ル 無視 が起 こ した1万3000人 に も お よぶ 食 中毒 事 件 は、 ス ノー ブ ラ ン ドが 超一 流 で あ っ た が ゆ え の 自己 自信 過 剰 に よ る放 漫 経 営 が もた ら した もの と指 摘 で き る。 雪 印 の 場 合 、 何 回 も同 じよ うな こ とを起 こ して い る とい う意 味 で は、 失敗 か ら学 ぶ と い う姿 勢 が み られ な い 、 か な り深 刻 な事 態 で あ る。 2ス ノー ブ ラ ン ドを 崩 壊 させ た 内部 指 向の 企 業 体 質 創 業50年 の 歴 史 を 持 つ 上 場 企 業 雪 印乳 業 の 品質 管 理 問題 が 論議 され て い る と こ ろ に、BSE(牛 海綿 状 脳 症)不 安 を 無 視 して 牛 肉を す り替 え る とい う雪 印食 品事 件 が加 わ った。 ブ ラ ン ドは長 期 に 亘 る商 品 開 発 や企 業 行 動 を 通 じて 顧 客 の 中 に醸 成 さ れ て い く"顧 客 と企 業 との価 値 観 の共 振 現 象"(注03)で、 企 業 に関 係 す る経 営 者 、 株 主 、 従 業 員 、顧 客 が一 体 に な って 作 り上 げ て い く もの で もあ る。 ブ ラ ン ド ロ イ ヤ リテ ィを 決 定 す るの は企 業 評 価 で、 そ れ は主 に経 済 価 値 と社会 価 値 で形 成 され る と い う統 計分 析 に基 づ く一 つ の モ デ ル が あ る。 こ の モ デ ル で は企 業 倫 理 が企 業 価 値 の3割 弱 の 影 響 因 子(注04)であ る の で、 雪 印事 件 の 具 体 的 な 事 実 の経 緯(注05)をみ て い くと、 六 角 形 の 雪 の結 晶 の 中 に北 極 星 を配 し た ス ノ ー ブ ラ ン ドが 日本 の 消 費 者 か ら完全 に拒 絶 され て しま うで あ ろ う。 雪 印 乳業 と い う会 社 の 今 日の企 業 体質 の芽 は ワ ンマ ン社長 時代 が14年 間 も続 いた1980年 代 に既 に あ っ た といえ る。 当時 、 約1万 名 弱 の社 員 数 の会 社 で、 生 産 系 の 技 術 職、 い わ ゆ る現 在 の総 合 職 の 採 用 は 5名 程 度 で あ った。1965年 入 社 の社 員 数 を ピー クに した 菱 形 の年 齢構 成 で、 若 手 技 術 社 員 人 数 が 殆 ど い な い こ とか ら、 そ の時 点 で既 に年 齢 構 成 が歪 び つ に な って いて 、 技術 伝 承 とか、 技 術 社 員 に よ る顧 客 の満 足 等 、社 内 の い ろ い ろな 経 営事 項 の 総合 的 な調 整 が で き な くな りつ つ あ っ た。要 す る に、 ま ず、 顧 客 志 向 に徹 す る こ とが 出来 な い ことか ら倫 理 的 な 価 値 観 を 明 確 にで き ず、 社 員 の倫 理 へ の認 識 を高 め る こ とが で き な か った こ と、 次 に、 社 内 の み に社 員 の 眼 が 向 け られ て い た こ とか ら、 組 織 に直 接 関 与 す る外 部 環 境 の諸 問題 に対 して倫 理 的 側 面 か ら総 合 的 に掘 り起 こ した倫 理 的 な意 思 決 定 の判 断 基 準 を 明確 に確 立 で き な か った こ と、 これが 今 日の 雪 印 の 企 業 体 質 を形 成 して しま う芽 で あ った。
食 中毒 事 件 の被 害 者 や マ ス メデ ィア へ の 対 応 が躓 き続 けた の は組 織 全 体 が商 談 相 手 を 含 めて 顧 客 の 声 に耳 を傾 け る習 慣 が なか った こ とが原 因 で あ る。 牛乳 業界 の生 産 構 造 は非 常 に単 純 で 、 いわ ゆ る酪 農 機 械 メ ー カ ー の機 械 を その ま ま持 って くれ ば 牛 乳 製 品 が簡 単 に で き る もの で あ った 。 そ う い う業 界 で あ った の で、 目新 しい技 術 は殆 どな か った 。 そ こで、 労働 生 産 性 を高 め る た め に現 場 で は人 を減 ら した の で、 サ ー ビス残 業 が 急 増 して事 故 が 頻 発 した 。省 力化 が進 ん だ反 面 、 顧 客 不 在 の 生 産 体 制 が 日 常化 す る こ とに な って い た と いえ る。1970年 後 半 に は、 雪 印 の商 品 は、 た とえ ば店 頭 に置 いて も ら う 商 談 が簡 単 に成 約 で き た と い う。 雪 印 商 品 は営 業 努 力 を しな くて も店 頭 の一 番 目立 つ 棚 に置 いて も ら え た し、 工 場 現 場 もつ くれ ば売 れ る とい う こ とで 、 殿様(左 団扇)営 業 が全 社 的 に黙 認 して い た と い う。 当 時、 悠 々 と殿 様 営 業 して い た人 た ちが 、 現 在 で は ベ テ ラ ンの部 長 ・課 長 で、 今 回 の 食 中毒 事 件 を対 処 した 当事 者 で あ る(注06)。 管 理 部 門 は1970年 か ら80年 頃 の 省力 化 の 後 遺 症 と して の トラブ ル も抱 え て い た。1990年 代 半 ば に 四 谷 駅 で 時 々 労組 の シ ュプ レ ヒコー ル が挙 が るが 、 この 時 に、 あ る役 職 の高 い社 員 が た また ま頭 を下 げ て しま った と い う言 動 を契 機 と して、 人事 ・総務 部 門が 今 日の 企業 体 質 を学 習 して しま った とい え る。 雪 印乳 業 の社 員 は外 部 の マ ス コ ミ取 材 を 受 けた り、 い ろい ろな と ころ で講 演 す る と叩 か れ る、 外 部 で 目立 つ社 員 は 評 価 され な い。 要 す るに余 分 な こ とを や るな と い う企 業 風 土 で あ った(注07)。役 員 ・部 長 ク ラ ス は他 流 試 合 と して 社 外 の 公 開 セ ミナー 等 に派遣 して も主 体 的 に参 加 しな い し、 常 に社 内 に関 心 が 向 い て:おり、 そ れ も上 の み を 見 て い た 。 どの企 業 で も多 か れ少 な か れ あ る親 分 子 分 の 関 係 の 強 い 企 業 風 土 で あ った(注08)。 雪 印事 件 が 発 覚 した際 に、 「現 場 が ち ゃん と して い た は ず … …」 と経 営 トップが 発 言 して しま った の は、 情 報 が トップ に上 が って い く途 中 で 、都 合 の い い よ うに変 わ って しま った とい う こ とで 、 トッ プ の側 も、 現 場 の情 報 に接 す る努 力 を常 日頃 して い な か った こ と と、 組 織 上 の欠 陥 が あ った た め と考 え られ る。 トップ に上 が って くる情 報 が変 質 して い た とい う こ との具 体 的 な例 と して は 、1992年 頃 か ら1995年 にか けて 、 営 業部 門 の余 剰 人 員 を生 産 部 門 に異 動 させ る 「ホ ー プ21」 とい う活 動 の 展 開 で あ る。生 産 現 場 は"確 か に社 員 が送 り込 まれ て き た けれ ど も、 そ の うちの1人 は腰 痛 で 仕事 が で き な い、 一 人 はペ ー ス メー カー が入 って い て生 産 現 場 に張 りつ け られ な い"と いった 状 況 で あ った とい う。 数 字 上 は辻 褄 が 合 って い るけ れ ど、 現 場 で は戦 力 に な らな い とい う現 場 情 報 が 上 には伝 わ らな い企 業 風 土 で あ った 。 トップや管 理 部 門 は結 果 を 出 せ と繰 り返 す が、 現 場 の 実 情 を 知 ろ う と しな か った の で社 員 に モ ラル ハ ザ ー ドが生 じて い た 。 雪 印 食 品事 件 に関与 した社 員 の多 くはBSEの 影 響 で 在 庫 が急 増 し売上 が 急 落 して 、 目標 達 成 が 出来 な い不 安 を動 機 の ひ とつ に挙 げて い る よ う に、 目標 管 理 制 度 が結 果 至上 主 義 で運 営 され て い た の で あ る。 現 在 の牛 乳 は成 分 無調 整 とい うの が殆 どで あ るが 、 以 前 は乳脂 肪 分3.6と か3.8、 も っ と遡 る と3.0で あ った。 牧 場 か ら入 って くる原 材 料 と して の牛 乳 は、 乳 脂 肪 分 が 品 質 規 格 よ りも高 い の で、 大 き な遠 心 分 離 器 に入 れ、 ほぼ 品質 規 格 に な る よ う にす る上 限 と下 限 が あ った 。 い ろい ろ な意 味 で歩 留 りの ぎ り ぎ りの と こ ろ で 成 分 品 質 を3.6に 維 持 す る た め に は+α の 目増 しが 必 要 とな って い た。 食 品 衛 生 法 上 で は何 か ほ か の もの を添 加 す る と加 工 乳 で あ るの で 添 加 は禁 止 され て い る。 しか し、 何 か を取 り出 す の は問 題 と され て い な い ので、 上 限、 下 限 の 中 で脂 肪 調 整 が き くこ とか ら品 質 問題 を軽 視 して いた。 さ らに、 衛 生 管 理 軽 視 の業 界体 質 を 引 きず って い た(注09)。要 す る に、 信 賞 必 罰 の う ち必 罰 の 考 え 方 が 必 要 とさ れ な か った ので あ る。 ス ノ ー ブ ラ ン ドは非 常 に高 い確 率 で 将来 消 え るで あ ろ う。 そ れ は、 経 営者 の責 任 を明 確iにしな い と い う、 ボ タ ンをか け違 え た ま ま に して い るか らで あ る。 最 初 の書 類 送 検 さ れ た 時 に社 長 の 石 川 と専 務
を 大 阪 の地 検 が不 起 訴 処 分 に した こ と も危 機 意 識 の欠 如 に火 を注 いで しま った。 経 営者 の責 任 を 問 わ な い ま ま、 い ろ い ろ な施 策 を打 って も、 そ ん な もので リカバ リーで きな い。顧 客 ア ンケ ー トで は経 営 者 の 責任 が 明確 で な い とい う こ と にす べ て が 尽 きて い る。 急 遽 、 対 策 チ ー ム を編 成 した り して甘 い再 建 計 画 を立 案 して い る が、 そ れ らは真 の 反 省 で あ る とみ る こ と はで きな い。
II内
部告発不可避 の時代
1990年 代 か らい ろ い ろ な企 業 不 祥 事 が 出て き た。 これ らは、 集 団主 義 的 日本 経 営 構 造 で あ る"社 員 が企 業 の利 益 に反 す る行 動 を妨 げ る終 身雇 用 ・年 功 序列 の 仕 組 み(従 業 員 相 互 の牽 制 ・制 裁 の シ ス テ ム)"が 崩 壊 して き た こ と に も よ る と考 え られ る。 つ ま り、 あ らゆ る局 面 で、 集 団 の利 益 の追 求 を 優 先 させ る こ とが 個 人 の 利 益 に直 結 す る と い う 日本 的 諸 シ ス テ ム が 機 能 しな くな って き た[山 岸 、 1999]と い う こ とで あ る。 企 業 不 祥 事 が表 に 出 て き た契 機 は、 内部 告 発 に よ る もの が大 半 で あ る。 今 日で は、 昔 と違 って 集 団 内 で不 祥事 を 隠 す こ とが 困 難 に な り、 「蓋 を して お き た い 反 則 行 為 や グ レー部 分 」 は厳 し く暴 か れ る 傾 向 に あ る。 こ う した状 況 を 嘆 き、昔 は よ き 時 代 で あ った 、 とい う人 が い る。 果 た して 内 部 告 発 は 憂 うべ き ものか どうか 。 確 か に仲 間 を売 る こ とは歓 迎 され て はい けな い し、 個 人 的 な 恨 み か ら、 些 細 な 問題 を取 り上 げ て告 発 す るの も非難 され な け れ ば な らな い と思 う。 しか し、 社 会 全 体 か らみ れ ば、 公 正 さ を取 り戻 す 動 き と して 、 私 は歓 迎 して い い の で は な い か と考 え て い る。 東 海 村 臨 界 事 故 を受 けて 原 子 炉規 制 法 が改 定 され、 内部 告 発 者 を守 る条 項 が 加 え られ た 直後 、 通 産 省 に東 電 原 発 虚 偽 記 載 の 内部 告 発文 書 が届 き、2年 後 で は あ る が、 これ に よ る東 京 電力 の 原発 トラ ブ ル 隠 しに対 す る経 済 産 業 省原 子 力安 全 ・保 安 院 の立 ち入 り調 査 が行 われ た。 強 調 しな け れ ば な らな い の は、 今 後 、 日本 にお いて 欧米 社 会 と同様 な 内部 告 発 が急 増 す る こ とを前 提 にお か な け れ ば な らな い と い う こ とで あ る。 終 身 雇用 ・年功 序 列 とい った 閉鎖 的 企 業 内人 間関 係 秩 序 の 中 で機 能 した社 員 相 互 牽 制 に よ る外 面 化 され た 個人 行 動 規 範 が弱 ま る こ とは一 人 ひ と りの 日本 人 が 自発 的 に企 業 の利 益 を重 視 して 行 動 す る欧 米社 会 の 内 面化 され た行 動 規 範 を強 め る こ とに な る。 そ の 結 果、 個 人 と企 業 の集 団 主 義 的 閉 鎖 関 係 か ら生 ず る呪縛 行 為 を と らな くて よ くな って き た ので あ る。 外 面 化 され た個 人行 動 の規 範 が弱 ま る現 象 の第1は 正 規 社 員 の割 合 の 減 少 で あ る。 パ ー ト、 契 約 社 員 、 派 遣 労 働 者 、 請 負 社員 、 取 引先 ス タ ッフ とい う労 働 者 以 外 に、 一・部 業 務 の ア ウ トソー シ ング の比 率 が どん どん 多 くな って きて い る。 た とえ ば非 正 規 社 員 の割 合 が 全 体 で 大 体30%弱 ぐらい に な っ て き た 。 そ うす る と、 比較 的 帰属 意 識 の低 いパ ー トとか契 約 社 員 が 解 雇 され る と同 時 に、 企 業 の 中 の情 報 が 簡 単 に外 に 出て い って しま う。 第2に は、 離 職 率 が 高 くな って い る こ とで あ る。 その 傾 向 は、15歳 か ら25歳 の若 年 層 が 高 く、 企 業 へ の ロイ ヤ リ テ ィが この層 で は低 い。 この層 の離 職 率 が 高 くなれ ば、 会 社 の 中 の情 報 は必 然 的 に外 部 に漏 れ る こ とを 覚悟 しな けれ ば な らな い。 因 み に、1997年3月 学 卒 新 規 就 職者 の離 職 率 は高 卒 が1年 目24.6%、2年 目13.8%、3年 目9.1%、 大 卒 が そ れ ぞれ13.8%、10.4%、8.3%で あ るの で 、就 職 して 3年 以 内 に、 辞 め るの が高 卒 で2人 に1人 、 大 卒 が3人 に1人 で あ る 〔厚 生 労働 省 、2001〕。 第3は 、 大 企 業 の1万 ∼2万 人 とい う規 模 の リス トラで 、 不 本 意 な 形 で 解雇 され た人 々 が 内部 告 発 に走 る可 能 性 が 高 い。 希 望 退 職 制 度 に よ るの で な く、 本 人 の意 思 に反 して解 雇 され た場 合 は、 多 分 強 い恨 み を持 って企 業 内 の 問題 を暴 露 して い くこ とにな るで あ ろ う。 第4は 、 新 しい世 代 の 価 値 観 が 大 き く変 わ って き て い る こ とで 、 と りわ けイ ンタ ー ネ ッ ト、IT時代 にあ って 、 社 内 の結 び つ き よ り もネ ッ ト網 の結 びつ き、 外 部 の 専 門 家集 団 との結 び つ きみ た い な も のが か な り強 くな って き た場 合 に、 外 部 へ の情 報 流 出 は や む を得 な い とい う こ とで あ る。 企 業 内部 に と どま って社 員 相 互 に協 力 し合 う集 団 内部 協 力 体 制 の 維 持 で安 心 で き た行 動 原 理 がIT時 代 に は機 能 せ ず 、 逆 に足枷 とな って い くと い うこ とで あ る。 これ に関 連 して言 え ば、 誰 で も が発 信 者 にな りう るネ ッ ト時 代 の 消 費者 対 応 の難 しさ の象 徴 で もあ るイ ンタ ーネ ッ トク レー マー が だ ん だん多 くな る こ とがか な り懸 念 され る。 イ ンタ ーネ ッ トク レー マ ー は、 製 品 に欠 陥 が あ る とか、 サ ー ビスが 悪 い とか の 文 句 をつ けて 、 ホー ム ペ ー ジで欠 陥製 品告 発 キ ャ ンペ ー ンを 行 う とか、 企 業 が これ に応 じな けれ ば、 マ ス コ ミに訴 え る と脅 して賠 償 金 名 目の金 銭 を要 求 して くるタ イ プ の ク レー マ ーで あ る。 確 か に イ ン ター ネ ッ トは通信 手 段 と して は革 命 的 に す ば ら し い。 場 所 とか 時 間 に関 係 な くア ク セ スで き る。 しか し、 よ くよ く考 え て み る と、 悪 質 な ホ ー ム ペ ー ジ が 開 設 され た か ら とい って 大 騒 ぎ しな くて も よ い と思 う(注10)。要 す る に、 マ ス コ ミに取 り上 げ られ な い限 り、 ホ ー ム ペ ー ジ に何 と書 か れ よ う と別 に問 題 はな い。 ク レー マ ー た ち も充 分 に こ の こ とを 自覚 して い るの で、 マ ス コ ミへ の接 触 を何 回 も何 回 も行 うが 、 良 識 あ る報 道 機 関 で あ れ ば、 根 拠 が な けれ ば そ れ を報 道 す る こ と 自体 が 、 取 り上 げ た報 道機 関 の リス ク にな って しま うの で、 それ ほ ど恐 れ る こ とは な い。 しか し、 こ う い う こ と も、 や は り念 頭 にお か な けれ ば な らな い。 イ ンタ ーネ ッ トク レー ム と並 行 して、 多 発 す る契 約 トラ ブルか ら消費 者 を保 護 す る"消 費 者 契約 法" が2001年4月1日 か らス タ ー トして い る。 ク レー ム は、 一 般 には、 耳 の痛 い もので あ るが 、 そ の発 想 を まず 改 あ て、 前 向 き に、 む しろ企業 に と って有 益 な もの と捉 えな け れ ばな らな い。製 品 に欠 陥 が あ っ た場 合 、 企 業 に と って ク レー ム と い う有 益 な情 報 が あ った 時 点 で、 事 前 に それ に気 づ いて 対 応 して い れ ば、 リ コール な ど はな くて 、被 害 を最 小 限 に食 い止 あ る こ と もで き る。 した が って 、 ク レー ム に対 して誠 実 に対 処 す べ きで あ って、 そ れ を恐 れ る こ とは何 もな い とい え る。 皿 コ ン プ ラ イ ア ン ス 、 ク ラ イ シ ス 、 リ ス ク へ の 企 業 の 対 応 の 仕 方 コ ンプ ラ イ ア ンス と い う言 葉 の意 味 を辞 書 とか用 語 類 で調 べ て み る と、 服 従 、 応 諾 とか 、追従、承 諾 とい う言 葉 が 出て くる。 ビ ジネ ス用 語 と して は法 の遵 守 で、 法 令 とか社 内規 則 な どを 守 る こ と、 法 律 や社 会 規 範 を尊 重 す る こ とで あ る。 リス ク は、 広 く捉 え れ ば、 経 済 活動 す べ て に 関 わ る危 険 で あ る。 ク ラ イ シ ス は、 日常 的 な 手 続 きや 取 り組 み で は う ま くコ ン トロー ル で き な い こ とで、 そ れ が社 会 的 に及 ぼす 影 響 が 極 め て 大 き い もの で あ る。 考 え方 と して は、 ク ライ シス マ ネ ジメ ン トは応 急 処 置 的 な対 応 で、 一 方 リス クマ ネ ジ メ ン トは 再 発 防 止 の対 策 で あ る。 そ うす る と、 ク ラ イ シス、 リス クへ の対 応 の仕 方 は、 次 の5点 ぐ らい に集 約 で き る。 第1は 、 いか な る組 織 も、 何 らか の ク ラ イ シス を抱 え て い る。 ク ラ イ シ スを 抱 え て い る こ と 自体 は 恥 ず か しい こ とで は な い。 第2は 、 自然 災 害 を 除 く と、 ほ とん どの ク ラ イ シ ス は コ ンプ ライ ア ンス体 制 を構 築 す る こ と によ って 回避 で き る。 第3は 、 も し、 ク ライ シス を回 避 で きな い場 合 が あ った と し て も、 誠 実 な コ ン プ ライ ア ンスへ の取 り組 み が認 め られ る場 合 、 社 会 は これ を 高 く評 価 して くれ る。 批 判 を受 け るの は、 そ う した取 り組 み もな く、 当然 の帰 結 と して ク ラ イ シ スを 経 験 す る場 合 で あ る。 第4は 、 ク ライ シス を経 験 した 時 に最 も大 切 な こ とは、 そ の経 験 か ら学 ぶ 、 失 敗 か ら学 ぶ とい う、 ク ラ イ シ ス マネ ジ メ ン トに留 ま らず リス ク マ ネ ジメ ン トへ 発 展 す る発 想 で あ る。 企 業 倫 理 の 出 発 点 は コ ンプ ライ ア ンス で あ る。 一 口に法 令 遵 守 と い って も、 企 業 活 動 に関 して は、 法 律 の 条 文 を み て も判然
と しな い、 判 例 な ど も明 示 して い な い。 つ ま り第5と して は、 グ レー ゾー ンが存 在 す る ので あ る[田 中、2002]。 ビジ ネ ス マ ンは企 業 競 争 の 中 で 利 益 を追 求 し、 業 績 を上 げ な け れ ば な らな い とい う こ と で、 意 識 的 あ る い は無 意 識 的 に、 グ レー ゾ ー ン に入 る こ とを 自 ら容 認 して い る。 そ うい う人 の 個 人 的 な判 断 が 、 企 業 判 断 とみ な され て しま うの で あ る。 残念 な こ とに、 そ の判 断行 為 が 、 後 で 法 律 違 反 、 法 令 違 反 と判 明 す る と企 業 は多大 な損 害 を被 る。 従 って、 経 営 者 は全 社 員 に対 して 、 この グ レー ゾー ンに対 す る考 え 方 を まず は っ き り させ て お か な け れ ば な らな い。 これ が コ ンプ ライ ア ンス経 営 の 重 要 な要 件 の1つ で あ る。 まず、 グ レー ゾ ー ンに入 り込 む こと を絶対 的 に禁 止 す る領 域 が あ る。 この グ レー ゾ ー ンの 中 に は入 っ て はい け な い とい う こ とを 明示 す る こ とが 必 要 で あ る。 米 国 の優 良 企業 、 例 え ばIBMは 、 グ レー ゾー ンに入 り込 む こ と を全 面 的 に禁 止 して い る。 次 に、 グ レー ゾ ー ンの 中 で、 違 法 行 為 とな る可 能 性 の 大 き い領域 は、 顧 問 弁 護士 とか法 律 の専 門家 の判 断 に よ って、 認 め る か、 認 めな いか を は っき り させ て お くこ とが必 要 とな る。3番 目は違 法 行 為 の可 能 性 の小 さ い ゾ ー ンで、 これ は いか な る場合 に 禁止 す るの か、 経 営 判 断 の 上実 行 す るの か ど うか を、 こ こで も明 確 に して お くこ とが 必 要 で あ る。 こ うい う グ レー ゾー ンの 中 で、 ビ ジネ ス マ ンは企 業 活 動 をせ ざ る を得 な いの が 実 態 で あ る。 不 祥 事 が 発生 す る と、 顧 客 離 れ が生 じ、 売 上 げが 減 少 し、 利 益 が 落 ち込 み 、 市 場 の ペ ナ ル テ ィ と して の格 づ けが下 が り、 株 価 が 急 落、 資 金 繰 りが 悪 化 して 企 業 倒 産 に至 る。 社 員 の士 気 が 落 ち、 あ るい は顧 客 離 れ で取 引 が減 少 、 業 績 が悪 化 して利 益 が 減 少 す る。 企 業 の不 祥 事 は こ の よ うな ル ー トで 巨額 な損 失 と か 罰金 支 払 い で 、 経 営上 大 き な ダ メ ー ジ を受 け て しま う。 したが って 、 これ らグ レー ゾー ンを どの よ う に扱 うの か を 、 各 企業 と も し っか り考 え て お か な けれ ばな らな い。 IV企 業 倫 理 の コ ン セ プ ト 1企 業 倫 理 の 空 洞化 企 業 倫 理 とい う言 葉 の本 来 の意 味 は、 公 正 か つ 適 切 な 経 営 を実 現 す るた め の 企業 内 活動 で あ る。 こ こで い う公 正 と は、 第3者 か ら見 て 許 容 可 能 と い う ことで あ り、 適 切 と は、 利益 を上 げ得 る ほ ど合 理 的 な とい う こ とで あ る。 多 くの企 業 は こ う した 経 営 行 動 が とれ ず に、 企 業 倫 理 の空 洞 化 を起 こ して い る。 企 業 倫 理 が な ぜ必 要 な の か とい う こ とで 、 た とえ ば学 生 な ど にゼ ミで議 論 させ る と、"明 ら か に不 正 と判 る こ とを 会 社 の た め に行 う社 員 が い た と して も、 これ を良 くな い こ と と して誰 れ も止 め させ る こ とが で き な い こ とが あ るの で、 企 業 が 生 き残 る た め に不 可 欠 な こ と と して 、 社会 か ら企 業 倫 理 が 問 い質 され な けれ ばな らな い"あ る い は"不 正 を行 って いて 摘 発 を され な い企 業 が 存在 す る こ と が不 愉 快 で不 公 正 で あ る ので、 公 正 な る企 業 活 動 を展 開す る上 で 避 けて 通 れ な いの が 企 業倫 理 で あ る"と い う。 どち らの 意 見 も企 業倫 理 を コ ンプ ラ イ ア ンス と同義 と して捉 え て の もの で あ る。 企 業 倫 理 は、 今 や 企 業行 動 の グ ローバ ル ス タ ンダ ー ドの1つ で あ る。 フ リー ドマ ンが主 張 す るの は "企業 の社 会 的 責 任 と は金 儲 けの こ とで あ り 、 そ れ以 上 で も以 下 で もな い"と い う こ とで あ る。 企 業 が 資本 主 義 を 標 榜 す る限 り、 これ は真 実 で あ る の で、 違 法 で な くて も世 間 か ら非 難 され る と思 わ れ る 行 為 を あ え て す る か ど うか は、 利 益 ・不 利 益 を判 断 す る功 利 主 義 で決 めれ ば よ い こ と にな る。 この場 合 、短 期 的 立 場(行 為 功 利 主義)で な くて、 長 期 的立 場(ル ール 功 利 主 義)で あ る こ とを原 則 とす る こ とが 重 要 な こ と とな る[竹 内、1998:248]。 企 業 が ス テ ー クホル ダ ー との長 期 的 信 頼 関係 を築 くこ とで、 競 争 優 位 の ポ ジ シ ョニ ン グを獲 得 して い く経 営行 動 は、 利 益 追 求 とい う利 己 主 義 が べ 一 ス で な
けれ ば な らな い が、 時代 の要 請 は、 宗 教 家 や 慈 善 団体 が 主 張 す る もの と は異 な った利 他 主 義 に昇 華 す る 自己 抑 制 の 意思 と行 動 で あ り、 そ れが 利 益 の 源泉 で あ る個 人 一 人 ひ と りの創 造 性 の発 揮 につ な が る とい う企 業 倫 理 の実 践 で あ る。 ど の よ うな 説 明 を持 って くる に して も、企 業 倫 理 が必 要 と され る背 景 には、 企 業 の影 響 力 が想 像 を絶 す る ほ ど大 き くな った と い う こ とで あ る。 影 響 力 が 絶大 に な った と して も、 企 業 が 常 に理 性 を 持 って 、 公 正 か つ適 切 な行 動 が とれ るな らば企 業倫 理 の 実践 の必 要 性 を訴 え る こ と はな い。 問題 は、 どの よ うな エ クセ レ ン トカ ンパ ニ ー とい わ れ る 企 業 で も、 ま た経 営 者 が どの よ う に立 派 で あ った と して も、 倫 理 的 に完 全 無 欠 で は あ り得 な い とい う こ とで あ る。 個 人 が善 意 を も って 行 動 して も、 い つ も適 切 た 倫 理 的 判 断 が で き て、 しか もその判断 に 合 致 す る行 動 を とる こ とが で き るわ けで はな い とい う こ とで あ る。 組織 に属 して い る 限 り、 必 ず 倫 理 的行 動 を とる合 理 性 が ど こか で 歪 ん で しま う こ とが あ り得 る。 た とえ ば、 組 織 に忠 実 に働 い て い る個 人 が、 倫 理 的 な 問題 の存 在 に気 づ いて も、 個 人 レベル に お け る この気 づ き が、 必 ず し も組 織 全 体 の意 識 に ま で上 って くるわ けで はな い と い う こ とで あ る。 雪 印食 品 の社 長 は 广真 面 目な 社 員 が多 い ので 問 題 が起 きて も表 に出 せ な いか も しれ な い」[日 経 産 業 新 聞2002・1・24コ と い う。 考 え て 見 れ ば 、 経 済 的、 社 会 的、 政 治 的影 響力 を 持 って しま った企 業 が、 個 人 側 か ら見 れ ば受 け入 れ 難 い行 為 が は っ き り した と して も、 そ こに働 く個 々人 の 良心 ・倫 理 と は無 関 係 に、 も し くは個 々人 の 良 心 を 無 視 して、 不 公 正 な、 あ る い は無 責 任 な行 動 を と って しま う場 合 、 そ れ に対 して個 人 が どの よ う に対 処 、 対 抗 で き るの だ ろ うか と い う問題 で あ る。 この よ う な行 動 の裏 側 は、 経 営 学 的 に見 れ ば、 第1に 、 企 業 が官 僚 制 化 せ ざ るを え な い とい う こ と で あ る。 企 業 が成 長 し、 発 展 す れ ば、 必 ず 官 僚 制 化 が 進 む。 よ り精 緻 な 規 則 とか 、 そ れ を 実行 す るた めの手 続 きが必 要 にな って くる。 そ うす る と、 この 規 則 とか 手 続 き をで き るだ け適 用 しよ う とす る人 の 恣意 的 な解 釈 とか運 用 とい った ものが どん どん 発 展 して しま う。 官 僚 制 化 は業 務 の効 率 化 に は もの、 す ご く役 立 つ。 あ る職 場 で働 く人 が 突 然 退 社 して も、 仕 事 の 内 容 が 規 則 化 され て い れ ば、 組 織 全 体 と して は そ れ ほ ど効 率 は低 下 しな い。 反 面 、 各 人 の道 徳 的 責 任 が きわ め て不 明確 に な って しま う。 仮 に あ る労 働 者 が規 則 に従 って 行 動 して いた と して も、 意 図 せ ぬ 結 果 を 招 き、 社 会 に多 大 な影 響 を与 え た 場 合 、 彼 はル ール に従 った だ けで 、 自分 には非 は な い と主 張 す るか も しれ な い。 特 に管 理 者 と労 働 者 の関 係 が思 わ し くな い よ うな 職 場 で は、 規 則 や手 続 き だ けに従 う とい う態 度 が よ く見 られ る。 そ こで は労 働 者 は、 あ る規 則 に従 って 行 動 す れ ば、 現 実 に そ ぐわ な い よ うな こと に な って 、 いつ か大 きな 事 故 や 不 祥 事 に発 展 す るの で は な い か と感 じて も、 それ を あ え て声 を大 に して言 わ な い。 雪 印の 場合 、 そ うだ った のだ ろ うと推測 で き る。 個 人 の良 心 の 問題 を管 理 者 の と ころ に持 ち込 ん で も無 駄 な こと だ っ た。 現 場 の 従 業 員 の意 見 な ど、 そ れ ほ ど重 要 視 して くれ な い し、 そ の責 任 は その 規 則 を 守 らな い現 場 従 業 員 に あ る とい う意 識 に な って い た。 つ ま り責 任 の 空 洞 化 が起 き て い た と いえ る。 これ は雪 印 だ け の こ とで は な く、 多 くの企 業 で起 き て い る こ とで あ り、 こ れ を ど うす るか が 大 問題 で あ る。 企 業 が発 展 し、 大 き くな って、 優 良 企 業 に な ろ う とす れ ば す る ほ ど、 こ う い う官僚 化 の弊 害 は どん どん 出 て き て しま う。 組 織 の階 層 化 が進 め ば進 む ほ ど、 経 営学 的 に言 え ば、 命 令 を 出 す者 とそ れ を実 行 す る者 と の 間 の距 離 が広 が っ て い く。 つ ま りこれ は空 間 的 な もの ばか りで はな くて、心理 的な距離 で も出て く る。 た とえ ば心 理 的 距 離 は、 中央 とか本 社 か らの情 報 が 疎 い とか 、本 社 は逆 に、 支 店 現 場 の無 責 任 な 行 動 が 問題 で あ る と い う言 い方 を す る。 つ ま り中央 の意 図 が末 端 に伝 わ らな い、 逆 に末 端 の情 報 も中 央 に伝 わ らな い。 これ に 関連 した もの と して 、1960年 代 米 国 のBFグ ッ トリ ッチ社 の事 例 が 参 考 にな るで あ ろ う。 こ れ は空 軍 のA7D型 機 に搭 載 す る ブ レー キ を 開 発 し、 そ の 模 擬 実 験 を して い た会 社 の例 で あ る。 実
験 の途 中 で ブ レー キ に構 造 的 な 欠 陥 の あ る こ とが 判 明 した 。 実験 に従 事 した従 業 員 と責 任 者 た ち は実 験 結 果 に手 を 加 え て、 偽 りの報 告 書 を 作 成 した。 この た め に数 か月 後 、 本 格 的 な テ ス ト飛 行 を 行 った とき に 、 ブ レー キが 熱 で溶 け て、 飛 行 機 が150フ ィニ ト横 す べ り した とい う最 悪 の事 態 を 招 い た 事 例 で あ る。 こ の事 例 で最 初 に責 任 が 問 わ れ な けれ ばな らな い の は、 もち ろん、 偽 りの報 告 書 を 作 成 した 従 業 員 、 そ れ を黙 認 した管 理 者 で あ る。 しか し、 彼 らは 決 して個 人 的 に は犯 罪 を犯 す よ うな 人 物 で は な か った。 皆 、 そ の会 社 に と って は、 十 分 に尊 敬 に値 す る従 業 員 で あ った。 ど う して 従 業 員 が 報 告 書 を偽 り、 管 理 者 が黙 認 す る と い う よ うな 、無 責 任 な行 動 を と った の か とい うのが 問 題 の 所 在 で あ る。 事 件 当 時、BFグ ッ トリ ッチ社 は、 階層 間 の コ ミュニ ケ ー シ ョ ンが うま くい って な か った。 上 層 部 で あ る技 術 関連 の政 策 決 定 階 層 と現 場 の人 た ち との 間 の コ ミュニ ケ ー シ ョ ンが うま くいか な か った 。 つ ま り、 上 層 部 は、 どん な犠 牲 を 払 って で も、 ブ レー キ契 約 を獲 得 す る とい う決 定 を 下 して、 そ の 旨を 現 場 部 門 に伝 え て い る。"ど ん な 犠 牲 を 払 って で も"と い う表 現 が ひ と り歩 き を した と い う こ と が真 の原 因で あ った。 つ ま り現 場 の とこ ろで 問題 が 出て も、 そ れ を上 に伝 え る コ ミュニ ケ ー シ ョ ンル ー ト、 情報 伝 達 ル ー トが な い と上 層 部 が 下 に伝 達 した意 図 の み を優 先 す る こ と にな る とい う事 例 で あ る。 責 任 の空 洞 化 現 象 を阻 止 す るた め の最 大 の施 策 は、 コ ミ ュニ ケ ー シ ョ ンツ ール とル ー トの整 備 に あ る と私 は言 い た い。 もう1つ の 事 例 は大 手 水産 会 社 の マ ル ハ で あ る。2001年5月 、 発 展 途 上 国 を 支 援 す る 目的 の特 恵 関 税 制 度 を悪 用 して 、 脱 税 容疑 で東 京 地 検 の強 制 捜 査 を受 け た。 冷 凍 の タ コを 輸 入 す る際 に、 そ れ に か か る関 税 が7%で あ るが 、特 恵 関税 制 度 で は、 セ ネ ガル 産 は5%で あ るが 、 隣 国 の ガ ン ビア、 モ ー リ タニ ア産 は無 税 で あ る。 マル ハ は、 セネ ガ ル産 の冷 凍 タ コを 、 ガ ン ビア産 とか 、 モ ー リタニ ア産 と偽 っ て 申告 して 、 約4億 円脱 税 した[2001・5・9、 日本 経 済 経 新 聞 夕 刊]。 新 聞 を読 ん で驚 いた の は、 マ ルハ の説 明 で、 東 京 地 検 が 強 制 捜 査 した 当 日、 マ ル ハ は、 総 務 部 長 等 が 記 者 会 見 して こん な こ とを言 って い た 。 この脱 税 事 件 は、 「逮 捕 され た元 社 員 らの独 断 で あ る。 ま た脱 税 に走 っ た動 機 と して は、 部 門 と して の業 績 を上 げ る ため で あ った 。 だ か ら個 人 の利 益 目 当て で な い」、 さ ら に 「会 社 ぐる み の犯 行 で は な い の で 、 上 層 部 は全 く知 らな か った」 とい う説 明 で あ る。 マ ル ハ の対 応 は、 違法 行 為 に対 す る企 業 の誤 った認 識 を 示 す 典 型 例 で あ ろ う。 日本 の い ろ い ろな 企 業 犯罪 の大 半 は 、 社員 が個 入 的利 益 を図 る た め に行 った もの で は な い とい う説 明 で あ る。 法 律 に触 れ る 行 為 か も しれ な い けれ ど も、 会 社 の業 績 向上 の た め に行 った の だ か ら、 あ ま り強 く非 難 しな いで ほ し い とい う主 張 であ る。 個 人 の た めで な く会 社 の業 績 の た め に と主 張 す る こ とで、 個 人 の 責 任 の 所 在 を す ご くあ い ま い に して しま う。 第2の 点 は も う1つ 、 業 界 全 体 、 あ る い は企 業 全 体 に 一 定 の 考 え 方 が定 着 して、 習 慣 化 され て くる と、 そ れ 自体 が力 を持 って きて 、 各 人 の 思 考 パ ター ンを 支 配 す る よ うに な って くる。 業 界 内 の 暗 黙 の 了解 が い ろ い ろな と ころ で成 立 して い る と い う こ とで あ る。 建 設 業 界 の 談合 体 質 が ものす ご くマ ス コニ で 攻 撃 され た の は、1990年 頃 で あ っ た。 現在 は、 当然 の こ とな が ら こ の よ うな こ とは絶 対 にな いが 、 当 時 、 公共 工 事 を発 注 す る側 で は、 慣 習 と して発 注 す る 時 に、 業 界 団 体 に工 事 の設 計 価 格 を 伝 え て 、 業 界 団 体 内 で 落札 価 格 と業 者 を決 め させ て い た。 この発 注 談 合 支 援 体 質 は、 当 時 の新 聞 を 見 る と よ くわ か るが、 過 去 か らず っ と価 格 を教 え る習 慣 が で きて い て、 建 設 会 社 の営 業 担 当者 が"こ れ は お か しい"と 感 じて も、 この流 れ に従 わ ざ るを得 な か った と、 関係 者 全 員 が 述 べ て い る。 また 、 この 価 格 漏 ら しは、 官 公 庁 の所 長 とか次 長 で あ って、 そ の上 の幹 部 は黙 認 して い た と も語 って い る。 この よ うな 慣 習 の枠 内 に い て正 しい判 断 がで きな か った とい う、 業 界 慣 習 の 弊 害 も無 視 で きな い。 慣 習化 の 進 ん だ 企 業 で働 く人 々 が これ に疑 問 をな ぜ 投 げ か け な か った
の か とい う と、慣 習 が抱 え て い る 問題 が 問 題 と して 見 え て な か っ たか らで あ る。 つ ま り認 識 上 の 限界 が あ った。 長 年 勤 め て管 理 者 に な れ ば な る ほ ど、 そ う い う傾 向が 強 くな って い た。 しか も この タイ プ の管 理 者 は新 入社 員 教 育 とか、 若 手 社 員 教 育 の 場 で 、 こ の商 慣 習 に疑 問 を投 げ か け て くる社 員 が い た ら、 必 ず こ う言 った もあ で あ る。"君 は わ か って い な い ね、 早 く学 生 気 分 か ら抜 け 出 しな さ い""世 の 中 そ ん な甘 くな い よ … …"。 そ れ と同 時 に、 こ う した 慣 習 を受 け入 れ る こ と 自体 が 所 属 会 社 の組 織 社 員 の二 員 にな るた め の儀 式 に な って い た。踏 み 絵 的 な 役 割 を各 種 の社 内研 修 に果 た させ て、 個 々 の社 員 が 慣 習 に内在 す る 問題 に気 がつ いて も、 共 同 体 の メ ンバ ー とな るた め に、 ど う して も周 りに合 わせ る態 度 を と って しま うよ うに躾 けて いた。 つ ま り労 働 市 場 へ の 出 入 り とい う労 働 移 動 の な い、 大 企 業 で あれ ば あ るほ ど、 こ の種 の儀 式 が 定 着 して い た の で あ る。 2個 人倫 理 ・職 業 倫 理 ・組 織 倫 理 ・社 会 倫 理 の4層 構 造 1999年 に は 日本 原 燃 の試 験 デ ー タ改 竄事 件 が あ り、 世 間 を 騒 が せ た。 今 回 の東 電 事 件 は80年 代 後 半 か ら90年 代 ま で の29件 と され て い るが、 そ の後 も続 い て いた の で あ る。 原 子 力 安 全 ・保 安 院 の検 査 を 潜 り抜 け13年 間 も隠 し続 けた 東 京 電力 の原 子 力 発 電 所 トラ ブル記 録 改 竄 の発 覚 の発 端 は2年 前 の 内部 告 発(2000年7月)で あ る が、 高 度 な専 門 知 識 が 要 求 され る原 発 部 門 は専 門 家 以 外 は関 与 で き 難 い "聖域"で あ っ たの で 、 調 査 の 発動 が遅 れ た と感 じ る。 最 近 、 政 ・財 ・官 界 で これ まで 聖 域 と いわ れ て い た人 が告 発 され て い るが 、専 門知 識 の な い素 人 に は何 を信 用 して い いの か わ か らな い領 域 が 存 在 す る。 今 回 の東 電 原 子力 発 電所 の記 録 改 竄 の箇 所 の損 傷 に つ い て、 電 力 会 社 自主 点 検 担 当下 請 企 業 は 繰 り返 され る 隠 蔽 が 重 大 な 事 故 に つ な が る と懸 念 す る 一 方 、 東 電 原 発 部 門 の 専 門 家 は軽 微 な もの ("い つ ま で も新 車 で な い が安 全 で あ る"と い う新 車 論)で あ るの で現 行 の 厳 格 な 法 規 制 を 緩 和 す る改 定 が必 要 で あ る との見 解 を述 べ て い る。 こ の よ うな専 門知 識 が介 在 す るケ ー ス の 場 合 、 企 業 倫 理 で 問 わ れ る責 任 は4層 で と らえ る こ とが大 切 に な る。 そ の第1は 、 組織 を構 成 す る社 員 が、 人 間 と して ど う考 え る のか と い う個 人 の 信 条 ・道 徳 に 関 す る 個 人 倫 理 で あ る。 第2は 、 仕 事 をす る、 いわ ゆ る職 務 を遂 行 す る職 業 倫理 、 そ れ か ら第3に 、 企業 と して ど う あ るべ きか とい う組 織 倫 理 、 第4に 常 識 ・良 識 とい った社 会 的 許 容 範 囲 の 内 で の 企 業行 動 と い う社 会 倫 理、 この4つ の層 の相 互 の関 連 づ けが 重 要 で あ る。 この4つ の倫 理 は行 動 す る立 場 に よ って 、 そ れ ぞ れ 大 き く重 要 視 す る局 面 が変 わ って くる。 た と え ば、 個 人 商店 で あ れ ば商 売 を行 う上 で の 人 生 観 、 自 らの身 を守 ろ う とす る個 人 倫 理 が 強 く前 面 に 出 て くるが 、 公認 会 計 士 、 弁 護 士 とか 医 者 、 も し くは企 業 内 に お け る研 究 職 とか技 術 職 、 い わ ゆ る プ ロ フ ェ ッシ ョナ ル な業 務 を行 うな人 は、 職 業 倫 理 が 強 く意 識 され て くる。 組 織倫 理 は、 経 営者 とか、 経 営 戦 略企 画職 の人 た ち の 中 に意 識 され て くる。 フ ィ ラ ンソ ロ フ ィー の 要 請 も さ る こ とな が ら、 社 会 倫 理 は企業 の社 会 的責 任 と して 社 会 的 倫 理 選 考 が 問 い質 され 、 日本 的 文 化 に根 付 く日本 的 ビ ジネ ス の特 質 と して糾 弾 され る もので あ る。 日本 の 場 合 、 ど う して も職 業 倫 理 と組織 倫 理 が前 面 に 出 て き て、 個 人 倫理 と社 会 倫 理 は裏 面 に後 退 して しま う。 この4つ の倫 理 が うま く重 な るた め には ど うい う こ とを 行 な った らい い の か とい う こ とが大 き な課 題 で あ る。1993年 緊 急 炉 心 冷 却 装 置 の 配 管 の 一 部 の ヒ ビが 発 見 され た が 国 に報 告 せ ず、 無 断 で留 め金 を つ け、 国 の検 査 時 に は はず し、 検 査 後 に は また つ けて6年 間 も運転 して い た こ とや福 島第2原 発3 号 機 シ ュ ラ ウ ド(炉 心 隔 壁)の ひ び割 れ 隠 しの 事 例 を み る と、"こ れ ぐ らい は 大 丈 夫 との 社 内専 門 家 の判 断"が 隠 蔽 の発 端 とい う こ とで あ った の で 、職 業 倫 理 を 方 向 づ け る経 営 理 念 を軸 に して、 この4 つ が一 貫 性 を もって 結 びつ くこ とが 重 要 で あ る と再 確 認 で き る。
と ころ が、 一 流 企 業 と言 わ れ て い る と こ ろ ほ ど、 高 邁 な経 営 理 念 を 掲 げ て い るが、 現 在 、 経 営 理 念 自体 が空 洞 化 して い る こ とが 問 題 で あ ろ う。 自社 の 創 業 の精 神 とか 、 社 是 ・社 訓 、 経 営 哲 学 な どが い つ の 間 に か言 葉 だ け にな って 、 文 章 だ け掲 げ られ て 、 実 態 は空 洞 化 して い る と ころ が多 く見 られ る か らで あ る。 企 業 が 経 営 理 念 に方 向 づ け られ た 職 業倫 理 に 基 づ い て、 コ ンプ ライ ア ンス を最 優 先 させ る社 内体 制 の も とで 運 営 され て いれ ば、 不 祥事 の 発生 は 未 然 に防 げ た と思 わ れ る事 例 が あ ま りに も多 い。 そ う し た事 態 に な って しま う理 由 と して は3つ ぐらい あ げ る こ とが で き る。 そ の1つ は、 企 業 が 過 度 の 業 績 至 上 主 義 を推 進 して いて 、 企 業倫 理 を二 の次 と考 え て い る場 合 、2番 目は、 取 締 役 会 とか 、監 査 役 会 が 十 分 に機 能 せ ず 、 企 業 行 動 とか経 営手 法 が依 然 と して 日本 的経 営慣 行 の ま ま で あ るの で 、 急 速 な グ ロ ーバ ル 化 が進 行 して い る こ とへ の対 処 不 十 分 の場 合 、 第3番 目は、 企 業 倫 理 と い う言 葉 が市 民 権 を 得 て きて い る こ と に対 す る認識 不 足 が あ る場 合 で あ る。
V国
際 ビジネ スにお ける倫理性
国 際 ビジネ ス にお け る企 業主 導 の行 動 指 針 と して は、1986年 以 来 、 毎 年 ス イ スの レマ ン湖 畔 の コー に、B米 欧 の ビ ジネ ス マ ン、 学 者 、 国連 ・OECD等 の 国 際 機 関 の代 表 者 が 集 ま る 「コー 円 卓 会 議 」 (www.cauxroundtable.org)が 有 名 で あ る。1992年 の 第7回 会 議 で 、 キ ャノ ン会 長 賀 来 龍 三 郎 を代 表 とす る 日本 参 加 者 が"企 業行 動 指 針"を 提 案 した。 こ こで 強 調 さ れ た 「共 生 」 とい う言 葉 が世 界 的 に流 布 す る こ とに な った。 この ほ か に も1976年 の"OECDの 多 国籍 企 業 ガ イ ドライ ン"な どが あ る。 国 際 ビ ジネ ス に お け る倫 理 性 に は3つ の 方 向 が あ る。 公 正 な 経 営 を 促 す 新 た な 国 際標 準(注11)を遵 守 し、2国 間 ・多 国 間 の 国 際合 意 に よ る共 通 の法 令 ・諸 法 制 を活 用 して の倫 理 の 実践 が そ の1の 方 向 で あ る。 三 井 物 産 はODA事 業 に絡 む デ ィー ゼ ル 発 電所 施 設 供 与 に関 し、 国後 島 の不 正 入 札 事 件 の捜 査 の 過程 で、 被 告 者 が モ ン ゴル 政 府 高 官 に資 金 提 供 した こ とが発 覚 し、 東 京地 検 の本 格捜 査 を受 け た。 これ は1997年 にOECDが 採 択 した規 定 に基 づ き 日本 国 内 法 を 改 正 した"外 国 公務 員 へ の 賄 賂 禁 止 規 定"に よ る賄 賂 罪 の 初 適 用 で あ る。 進 出 企 業 に対 す る法 令 規 則 や倫 理 規 定 の整 備 の要 請 が そ の2の 方 向 で あ る。 進 出先 の市 場 が、 進 出 して くる企 業 にか な り厳 しい基 準 、 よ り高 い倫 理 性 を求 め る もの で あ る。 米 国 で セ クハ ラ問題 の解 決 に積 極 的 に取 り組 ま なか った 日本 の 自動 車 会 社 の例 が そ れ に該 当す る。 日本 に お け るセ クハ ラ倫 理 規 定 よ りも、 進 出 国 米 国 の そ れ が もの す ご く厳 しか った とい うこ と で あ る。1990年 代 初 頭 の米 国 で は、 組 織 に対 す る連 邦 量 刑 ガ イ ドライ ンが施 行 さ れ 、米 国 で企 業 活 動 す るす べ て の企 業 は、 この ガ イ ドラ イ ンに積 極 的 に対 応 しな けれ ば な らな くな った 。『この ガ イ ドラ イ ンは、 組 織 で 働 く者 の有 罪 が確 定 し た 時 に、 組 織 に対 して罰 金 額 を 算定 す る手 続 き を纏 め た もの で、 た と え ば企 業 が 常 日頃 か ら倫 理 法 令 遵 守 を 徹 底 させ る た め の取 り組 み を行 って い た とす れ ば、 罰 金 額 が そ れ な りに低 く査 定 され る とい う もの で あ る。 セ クハ ラ 問題 で 日本 企 業 が か な りの 罰金 を払 わ さ れ た とい うの は、 セ クハ ラ防止 の社 内 体 制 の 整 備 を怠 って い た こ とへ の 見 せ しめ で あ った。 第3の 方 向 は、 この逆 で 、 進 出 国 よ りも厳 しい 国 内 の法 律 や倫 理 規 定 を、 海 外 の 子会 社 ま で適 用 し よ うとす る もの で あ る。 海 外 子 会 社 が 、 進 出 先 の 法 律 だ け を遵 守 す れ ば い い の で はな くて、 本 国 の 倫 理 規 定 そ の もの に従 わ な けれ ばな らな い とい う もの で あ る。 これ は倫 理 絶 対主 義 の立 場 で あ り、IBM は こ の主 義 で経 営 して い る。 これ と は正 反 対 な もの が 中東 地 域 、 東 南 ア ジア地 域 で 営 業 活 動 す る常 識 と して賄 賂 の供 用 を 当 然 とす る倫 理 相 対 主 義 の考 え 方 で あ る。IBMは 社 員 が 賄 賂 を 、 た と え そ れ を供 与 す る こ とでIBMの 利 益 に な った、 売 上 げ が 上 が っ た、 契 約 が とれ た と して も、 も しそ うい う こ とが 発 覚 した ら、 す ぐ解 雇 す る。IBMは 社 員 を本 国 のIBMで 決 め られ た倫 理 規 定 に、各個人全員 が 100%従 わ ざ るを得 な い よ うに して い る。 倫 理 規 定 の1つ で も犯 す と解 雇 され て しま う。 今 日の グ ロー バ ル化 時代 の 国際 ビジネ スを 考 え る と、 日本 で も社 会 的倫 理 選考 の形 成 と デ ィス ク ロ ー ジ ャーが 避 け て通 れ な い もの に な って い る と いわ ざ るを え な い。 か な り以 前 の こ とで あ るが 、 日本 国 内 の工 場 で公 害 問題 を起 こ して い た 日本 企 業 が 、環境基準 の も の す ご くゆ る い途 上 国 に 出て 行 って 、 そ の地 で、 環 境 を破 壊 して い た。 本 国 で の 基 準 と ホ ス ト国 の そ れ との どち らか に従 って行 動 す るか とい うダ ブ ル ス タ ンダ ー ドの 問題 で あ る。 勿 論 、 こ う した こ とを 進 出 国 地域 住 民 か ら訴 え られ て良 識 あ る操 業 停 止 や撤 退 を した 企 業 もな くは な い(注12)。しか し、 日本 人 は、 高 度 成 長 期 にお い て 日本 国 内 に問題 が な け れ ば、 海 外 で どん な こ と を して いて も、 自分 た ちの 知 った ことで はな い と、 また そ うす る こ とで製 品価 格 が 低 く押 さ え られ るな ら、 あ え て 他 国 の 環 境 問 題 ま で言 及 す る必 要 はな い と考 え て い た と指 摘 す る人 もい る。 本 国 で は禁 止 され て い る低 賃 金 児 童 労 働 を雇 用 して コ ス ト競 争 力 を得 る とか、 移 転 価 格 を不 正 に操 作 す る こ とで 特 定 国 の 現 地 子 会 社 に利益 を計 上 す る と い った こ と、 さ らに、 自国 の や り方 を正 当 な もの と信 じ、 ホス ト国 の文 化 ・商 慣 習 を無 視 す る こ とで 発生 す る問題 で あ る(注13)。 日本 の場 合 、企 業 倫 理 の選 好 基 準 の導 入 は 出発 点 で 挫 折 して いた 。 要 す るに、 倫 理 問題 に 敏感 な社 会 や 市 場 が形 成 されな け れ ば企 業 倫 理 は言 葉 だ け にな って しま う とい う こ とで あ る。 社 会 的倫 理 選 考 が形 成 され る とい う こ とは、 倫 理 的 な企 業 が 報 わ れ る、 倫 理 的 な 企 業行 動 を とれ ば、業績 向上 の糧 に な る と い う、"企 業 倫 理 が ビジ ネ ス チ ャ ンス に な る社 会 を つ くる"と い う こ とで あ り、 国際 ビジネス .にお け る企 業 倫 理 の意 義 もこ こ に あ る。 つ ま り倫 理 選考 の 形 成 が 不十 分 な社 会 は グ ロ ーバ ル世 界 で は 許 容 され な い とい うのが 現 在 の 世 界 の 潮 流 で あ る。 環 境 問 題 を ビ ジネ ス に お け る制 約 条 件 と捉 えて い た一 時期 が あ ったが 、 今 日で は環 境 問 題 を ビ ジネ ス チ ャ ンス と して と らえ て、 企 業 成 長 の機 会 に して い る国 際 企 業 は数 多 い 。 米 国 のSRI(社 会 的 責 任 投 資)と い う投 資 手 法(注14)の発 祥 は"環 境 対 策 は 企 業 の コス トア ップ要 因 とは な らず、 省 エ ネ や省 資 源 対 応 な どを通 じコ ス トダ ウ ン に寄 与 す る ビ ジネ ス チ ャ ンス"と い う環境 効 率 性 の考 え方 で あ る。 投 資 家 が不 祥 事 を起 こす リス クの 高 い企 業 に対 して 投 資 を 避 け る こ とが 欧米 で は定 着 して お り、 日本 で も大 和 證 券 グル ー プや 三 井住 友 アセ ッ トマ ネ ジメ ン トが2002年 内 に もSRI投 資 信 託 を開 始 す る 予定 で あ る。 現 在 、 企 業 倫 理 を企 業 活 動 の 制 約 条 件 で はな く .てビ ジネ ス チ ャ ンス と捉 え て い くよ うに、 ビジネ ス意 識 が 変 わ って きつ つ あ る こ とを 自覚 す る こ とが 大 切 で あ る。 この 捉 え 方 を可 能 にす る た め に は、 ど う して も倫 理 デ ィ ス ク ロー ジ ャー の推 進 が必 要 で あ る。企業 側 か ら発 信 され る一 方 的 な情 報 公 開 で は不 十分 で 、 誰 もが 信 頼 で き る情 報 提供 の枠 組 を社 会 全 体 で つ くって い くこ.とが大切で ある。 このような倫理関連 の情報 ディスクロージ ャーが進めば、 国際市場は、 徐 々 に で は あ るが 、 倫 理 的 企 業 に は追 い 風 にな る し、 非 倫理 的企 業 に は逆 風 が吹 く。 これ は考 え て み れ ば、 米 国 の連 邦 量 刑 ガ イ ドライ ンの よ うな制 度 の導 入 で あ る。 た だ し、 罰 金 額 その もの が 低 い と、 懲 罰 的 賠 償 の考 え 方 にな じみ 深 い 日本 等 の社 会 で は、 量 刑 ガ イ ドラ イ ン的 な もの を 選 択 ・導 入 す るの は、 ど うも適 切 で はな い。 とす れ ば、 や は り市 場 メ カニ ズ ム を活 用 した、 個 別 企 業 の 主 体 性 にゆ だ ね た 取 り組 み 方 を進 め た方 が い い。 日本 の場 合 、 法 規 制 で 企 業 倫 理 を推 進 す る よ りも、個別企業の主体 性 の も とで の市 場 メ カ ニ ズ ム に ゆ だね る企 業 倫 理 の取 り組 み方 が 望 ま しい。 世 界 市 場 は フ リー、 フ ェア、 グ ロー バ ル が ス ロー ガ ン と して ず っ と今 まで い わ れ て き た。 フ リー と か グ ロ ーバ ル は、 時代 の流 れ と して必 然 的 な もの で、 あ え て何 も しな くて も、 この流れに対応で きる。
しか し、 フ ェア は、 そ れ を担 保 す る シ ス テ ム と か、 それ を推 進 す る意 識 が 形 成 され な い 限 り、 な か な か 根 付 か な い もの で あ る。 従 って、 フ ェア を担 保 す る シ ス テ ム と して の 倫 理 マ ネ ジ メ ン トに真 剣 に取 り組 ま な い 企 業 は 時代 の流 れ に取 り残 さ れ て い くこ と に な る。