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受容体型チロシンキナーゼと固形がんの薬物治療

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はじめに ヒト全ゲノムシークエンスの結果、90 のチロシ ンキナーゼ (tyrosine kinase TK) が同定され、その う ち58 が 受 容 体 型 チ ロ シ ン キ ナ ー ゼ (receptor tyrosine kinase RTK) に、32 が非受容体型 TK に 分けられた1。さらにキナーゼドメインのアミノ酸 配列の系統樹解析やタンパク質全体のドメイン構造 解析により、RTK は 20 種類の、非受容体型 TK は 10 種類のサブファミリーに分類された1RTK は リガンドへの結合領域となる細胞外ドメイン、一回 細胞膜貫通ドメイン、細胞内のキナーゼドメインか ら構成される(図1)。増殖因子などのリガンドが 細胞外ドメインに結合することにより受容体の二量 体が形成され、相互的に受容体間で自己リン酸化が 起こり、下流のシグナル伝達分子の結合部位が提供 され、Src homology 2 (SH2) ドメイン等を介して 下流のシグナル伝達分子が結合する。TK がシグナ ル伝達分子をリン酸化することによって核内の転写 因子までシグナルが伝達され、RTK は細胞内シグ

総説

受容体型チロシンキナーゼと固形がんの薬物治療

秋山聖子 国立病院機構仙台医療センター 腫瘍内科 抄録  受容体型チロシンキナーゼ(RTK) は種を超えて保存され、細胞増殖などの細胞内シグナル伝達経路に関わ る重要な分子である。リガンドがRTK の細胞外ドメインに結合することによってシグナル伝達が開始され、 RTK の二量体形成され、細胞内チロシンキナーゼ (TK) ドメインのリン酸化により、その下流の分子にシグ ナルが伝達される。RTK は腫瘍の発生、進展において重要な役割を持つ。がん細胞において、RTK の活性 型変異や発現量上昇が多数報告されており、RTK はがん治療の標的として様々な研究が行われて来た。近年 がん治療薬として、RTK やそのリガンドを阻害する分子標的治療薬、すなわち、抗体や小分子化合物 (TKI) が次々と開発され、がんの薬物療法において重要な役割を担っている。これらの薬剤は、単独で治療効果を 示すほか、既存の殺細胞薬と併用することで治療効果を増強させる。さらに、これまで殺細胞薬による薬物 療法に対して効果を示さなかった固形がんにおいて、優れた治療効果が報告されている。本総説ではEGFR、 HER2、VEGFR、PDGFR(c-kit)、ALK などの RTK ごとに、それぞれの RTK の特徴と、モノクローナル抗 体やTKI を用いた臨床試験など、分子標的治療薬による固形がんの治療の現状について概説する。 キーワード: 受容体型チロシンキナーゼ (RTK) リガンド 分子標的治療薬 モノクローナル抗体 小分子 化合物(TKI)

EGFR/ERBB INSR PDGFR FGFR  VEGFR  MET ROS1 ALK

K in as e L L Fu ri n se K in a Ig Ig Ig se K in a Ig Ig Ig Ig Ig Ig Ig K in as e Fn3 Fn3 Fn3 Fn3 Fn3 Fn3 Fn3 細胞膜貫通領域 Fibronectin3型ドメイン システインリッチドメイン 免疫グロブリン様ドメイン   キナーゼドメイン リガンド結合ドメイン  Semaphorinドメイン IPT/TIGドメイン グリシンリッチドメイン MAMドメイン LDLaドメイン Fn3 Ig L Sema Kinase K in as e L Fn3 L se K in a Ig Ig Ig Ig Ig 細胞膜 K in as e Sema クラス I II III IV V K in as e G M G M M 図1 受容体型チロシンキナーゼのドメイン構造

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ナル伝達において重要な役割を担っている(図2)。 RTK は細胞増殖、分化、生存、代謝、移動に関 わるシグナルを伝達、制御している。悪性腫瘍細胞 内で発現上昇、活性型変異、局在偏移などが起こる と、RTK が恒常的に活性化状態となり、血管新生、 浸潤能、転移能の増強をもたらす。近年では、これ らのRTK を標的とした分子標的治療薬が開発され、 これらの薬剤はRTK の二量体形成阻害、リガンド の中和、リガンドの結合阻害、受容体の内在化など によりRTK のシグナル伝達を阻害する。 RTK に対する分子標的治療薬には、大きく分け て モ ノ ク ロ ー ナ ル 抗 体 と 小 分 子 化 合 物(tyrosine kinase inhibitor, TKI) がある。両者の最も大きな 違いは、その分子の大きさである。小分子化合物は 分子量が数百と小さく、細胞膜を通過し細胞内に入 り、 細 胞 内 に あ るATP- 結 合 ド メ イ ン に 結 合 し RTK の活性阻害を行う。小分子化合物は設計され た標的以外のRTK にも親和性を示し複数の標的に 応用されている。モノクローナル抗体は分子量数 十万であり、RTK の細胞外ドメインやそのリガン ド を 標 的 分 子 と し て 作 用 す る。TKI と 異なり、 ADCC (antibody-dependent cell-mediated cytotoxicity) などの免疫作用を介した効果も有する ことに特徴がある。

Epidermal growth factor receptor (EGFR) 阻害 薬 は 結 腸 直 腸 癌、 非 小 細 胞 肺 癌 (Non-small cell lung cancer NSCLC)、頭頚部癌で、human epidermal growth factor type 2 (HER2) 阻害薬は 乳癌、胃癌で、vascular endothelial growth factor (VEGFR) 阻害薬は結腸直腸癌を始めとして複数の

がんで、治療効果を示している2。また、TKI の開 発によって、それまで薬物療法が効果を示さなかっ た 甲 状 腺 癌、gastrointestinal stromal tumor (GIST)、腎細胞癌、肝細胞癌などにおいても、治 療効果が期待できるようになった。本総説で取り上 げた分子標的治療薬一覧を表1 に示す。 1. EGFR/ERBB ファミリー EGFR/ERBB フ ァ ミ リ ー は、EGFR/HER1/ ErbB-1、HER2/ErbB-2/NEU、 HER3/ErbB-3、 HER4/ErbB-4 の4種類の RTK から成る。構造の 特徴としては(1) 細胞外のリガンド結合ドメイン、 (2) 二量体形成に関わるシステインリッチドメイン、 (3) 一回細胞膜貫通領域、(4) TK ドメイン (ATP 結 合ポケットと活性ループ)が挙げられる。リガンド は epidermal growth factor (EGF)、 transforming growth factor alpha (TGFα)、 amphiregulin (AR)、 neuregulins (NRG)1-4、 epiregulin (EFG)、 betacellulin(BTC)、 heparin-binding epidermal growth factor (HB-EGF) が知られる。リガンドは それぞれの受容体で異なり、EGF、 AR 、TGF α がEGFR に、HRG、 BTC 、 HB-EGF が EGFR と ErbB-4 に、 NRG1、 NRG2 が ErbB-3 と ErbB-4 に、 NRG3 、 NRG4 が ErbB-4 に 結 合 す る。 し か し、 HER2 のリガンドは明らかにされておらず、HER2 はリガンド非依存性に2量体形成をすると考えられ ている。リガンドが結合することにより、EGFR/ ERBB ファミリーはホモあるいはヘテロ二量体を 形成し、キナーゼドメインの活性化をすることが知 られている。キナーゼドメインの活性化により、 Src homology 2 (SH2) ドメインの結合部位がリン 受容体型

チロシンキナーゼ EGFR HER2 VEGF, VEGFR PDGFR (c-kit) ALK

モノクローナル抗体

cetuximab trasutuzumab bevacizumab  

panitumumab perutuzumab ramucirumab  

necitumumab (国内未承認) Trasutuzumab emtansine (T-DM1) aflivercept (組み換え 融合タンパク質)   小分子化合物 7., 

gefitinib lapatinib sorafenib imatinib crizotinib

erlotinib neratinib (国内未承認) sunitinib sunitinib alectinib

afatinib  pazopanib regorafenib brigatinib (国内未承認)

dacomitinib  axitinib  ceritinib

osimertinib  regorafenib  lorlatinib

  lenbatinib    vandetanib     cabozantinib (国内未承認)   表1.本文中に記載した分子標的治療薬の一覧 表1.本文中に記載した分子標的治療薬の一覧 P P Grb2 P RAS PI3K SOS RAF MEK ERK AKT mTOR PIP2 PIP3 細胞膜 P P 受容体型 チロシン キナーゼ (RTK) リガンド 抗体薬 小分子 化合物 (TKI) 殺細胞薬 ALK TK リガンドに対する抗体 例)bevacizumab 受容体に対する抗体 例)cetuximab trastuzumab ramucirumab P 抗体薬物複合体 例)T-DM1 細胞外 ドメイン チロシン キナーゼ (TK) P 例)crizotinib 例)gefitinib lapatinib regorafenib imatinib 細胞膜貫通 ドメイン 図2 分子標的治療薬の作用部位のモデル

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酸化され、細胞内シグナル伝達経路が活性化され る。 EGFR を標的とした治療 1) 小分子化合物 NSCLC で は、 ア ジ ア 人 で は 30-40% にEGFR の変異が検出される。わが国ではNSCLC に対し て、2002 年に gefitinib が、2007 年に erlotinib が 承認された。その後EGFR-TKI が有効なサブグルー プが明らかとなり、エクソン19 の欠失やエクソン 21 の点突然変異 L858R など、効果が期待できる EGFR 変異が明らかにされた3。これらのEGFR 変異は、EGFR の恒常的活性化を引き起こすので は な く、 リ ガ ン ド に よ るTK 活 性 化 を 増 強 し、 TKI による阻害活性に対しての感受性を上げると 考えられている4。Gefitinib はプラチナとタキサン 併用療法を標準治療群とした第3 相ランダム化比 較試験(randomized controlled trial, RCT) におい て、PFS の 延 長 を 示 し た5。erlotinib は、EGFR 変 異 を 有 す るNSCLC の一次治療として、化学 療 法 を 対 照 と し たRCT において PFS の有意な 延長を認めた6。プール解析の結果、EGFR-TKI 治療によるPFS 中央値は、erlotinib で 13.2 か月、 gefitinib で 9.8 か月、化学療法で 5.9 か月であっ た7。これらの可逆的なTKI は第 1 世代と呼ばれ、 EGFR 変異を持つNSCLC の一次治療として用い られるようになった6,8。ただし、薬剤性肺障害に 代表される有害事象は重篤となる場合があるため、 喫煙歴、背景となる肺野の状態、他の治療薬使用の 有無などを考慮し、治療の適応は慎重に決定する必 要がある。また、皮膚毒性は患者にとって苦痛に感 じられる有害事象であり、患者へのセルフケア指導 が治療継続に大切である。  基本的にすべてのEGFR変異を有するNSCLC では、10 - 13 か月で耐性を獲得する。耐性獲得機 序は4 つのカテゴリーに分類される。最も多い耐 性 機 序 は2 次的なEGFR の 変 異 で あ り、50-60% においてT790M が報告されている。次に、別の代 替シグナル伝達経路の活性化が挙げられ、3-22% にHGF 受容体である MET の、1-13% に HER2 の 活性化が報告されている9。エクソン20 の点突然 変異であるT790M では、EGFR タンパクの立体構 造が変化し、EGFR の ATP 結合部位への ATP の 結合能が高まることにより、第1 世代 EGFR-TKI の結合親和性が低下する。 第 2 世 代 と 呼 ば れ るafatinib は 非 可 逆 的 な EGFR 阻害薬である。前臨床の試験で afatinib は T790M を獲得した EGFR-TKI 抵抗性の細胞にお いて、阻害活性を持つことが期待されたが、下痢や 悪心がdose limiting toxicities (DLT) となり、臨床 試験においてはT790M への阻害活性を示すことが できなかった。Afatinb は重篤な下痢、皮疹、口内 炎などの有害事象がgefitinib より多く報告されて おり、使用時に注意が必要である7。Dacomitinib は、 第2 世代の EGFR-TKI であり、非可逆的に EGFR を阻害する。わが国では 2019 年 1 月に承認 された。EGFR変異を有するNSCLC を対照とし た 第3 相 RCT に お い て、dacomitinib 群 で は progression free survival (PFS) 14.7か月、 gefitinib 群では 9.2 か月であり、dacomitinib 群に おいて有意にPFS を延長した10。有害事象では、 grade1、2 の下痢が 78%、grade3 以上の下痢が 8% 以上であり注意が必要である。 第3 世代と呼ばれる osimertinib は非可逆的に EGFR を阻害し、T790M を有する NSCLC に対し て初めて有効性を示したTKI である。1 次 EGFR-TKI 耐 性 と な っ た T790M 点 突 然 変 異 を 有 す る NSCLC を 対 象 と し た、 第 3 相 RCT で あ る AURA3 試験において、osimertinib はペメトレキ セドとプラチナ併用化学療法に対して、10.1 か月 と標準治療群の4.4 か月を有意に延長する PFS を 示した11 。また、1 次治療として osimertinib を用 いた第3 相 RCT では、gefitinib あるいは erlotinib に対してPFS 18.9 か月と、標準治療群の 10.2 か 月を有意に延長した12。Osimertinib はわが国でも 2016 年 3 月に EGFR-TKI 抵抗性のEGFR T790M 変異陽性NSCLC の 2 次治療に承認された。さらに、 2018 年 8 月には、EGFR変異陽性の手術不能また は再発NSCLC に対して、1 次治療から使用可能と なった。Osimertinib への耐性を獲得した患者では、 MET や KRAS の増幅、MEK1、KRAS、あるいは

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れた。これらのシグナル伝達経路を阻害するような 薬剤との併用治療などの臨床試験が行われており、 薬剤耐性を克服するための治療開発が期待される。 2) モノクローナル抗体 抗EGFR 抗体は EGFR の細胞外ドメインに結合 し、リガンドの結合を防ぐことにより、2 量体形成、 自己リン酸化を阻害し、シグナル伝達を阻止する。 現在cetuximab がRAS野生型の大腸癌と頭頚部癌 の治療に、panitumumab がRAS野生型の大腸癌 治療に用いられている。Cetuximab は EGFR に対 するIgG1 マウス / ヒトキメラ抗体であり、ADCC 活性を持つ。インフュージョンリアクションが約 20%、低 Mg 血症が 19% 程度と報告されている。 panitumumab は EGFR に対する IgG2 完全ヒト型 モノクローナル抗体で、ADCC 活性を持たない。 インフュージョンリアクションは約3% であるが、 低Mg 血症は 29% 程度と報告されている。どちら も有害事象に皮膚毒性を多く認め、治療開始の際に は患者へのセルフケア指導が重要となる。 大腸癌におけるRAS変異は50-55% と報告され、 これらの患者では抗EGFR 抗体薬の有効性は認め られていない。Cetuximab は既治療の大腸癌にお いて、単独でも10.8% に、イリノテカンとの併用 で22.9% の奏功率を示した13。KRAS野生型転移 大腸癌の1 次治療では、FOLFIRI 単独治療に対し て、overall survival (OS) が cetuximab 併 用 群 で 23.5 か月、単独治療群で 20.0 か月と有意に延長を 示した14。一方KRAS 変異群ではOS16.2 か月と 単独治療群の16.7 か月を下回った14。プール解析 の結果、KRAS 野生型ではcetuximab の上乗せ効 果が証明された。BRAF変異陽性の大腸癌は全体 の6% に認められ、抗 EGFR 抗体の化学療法への 上乗せ効果は示されなかった15。 近年RAS 野生型大腸癌において、一次治療に抗 VEGF 抗体と抗 EGFR 抗体のいずれが優れている かを検討したRCT が複数行われた。その結果、ど ちらを一次治療で用いるかの見解は得られなかっ た。統合解析の結果RAS/BRAF野生型大腸癌では、 原発巣占拠部位の左右が治療効果の違いに影響する ことが示された16。すなわち、原発巣占拠部位が左 側(下行結腸、S 錠結腸、直腸)では一次治療にお ける抗EGFR 抗体薬の効果が高いが、右側(盲腸、 上行結腸、横行結腸)の患者では効果が乏しい。 National comprehensive cancer network (NCCN) ガイドライン(ver.1 2019) においても、一次治療で は原発巣占拠部位が左側の場合に抗EGFR 抗体を 用いるように記載された。

EGFR シ グ ナ ル 伝 達 経 路 の 下 流 に 位 置 す る

BRAFV600E変異は、切除不能大腸癌患者の約5% に

認められる。BRAFV600E変異を有する患者はBRAF 野生型患者に比較して、予後不良である15。最近 BRAFV600E変異を有する切除不能進行再発大腸癌既 治療例に対して、抗EGFR 抗体に BRAF 阻害薬 を併用する臨床試験が行われ有効性が示されてお り17、NCCN ガイドライン (ver.1 2019) では推奨 されるレジメンとして、イリノテカンと抗EGFR 抗体、BRAF 阻害薬 (vemurafenib) の併用療法と、 抗EGFR 抗体に加えて、BRAF 阻害薬と MEK 阻 害薬を併用する選択肢(dabrafenib と trametinib、 encorafenib と binimetinib いずれも国内未承認) が記載さている。 また、頭頚部癌において放射線との併用や化学療 法との併用によって局所制御期間やOS の延長が報 告された。転移・再発頭頚部癌の1 次治療におい て、プラチナとフルオロウラシル併用化学療法を対 照としたRCT で、cetuximab を上乗せすることに よって、OS 中央値を 7.4 か月から 10.1 か月に延長 した18。ステージIII、IV の頭頚部癌を対象とした シスプラチンとcetuximab を放射線治療に併用す る第3 相 RCT において、3 者の併用群では 26.9%に、 対照群では15.1% において治療が中止された19。 併用群では、グレード3 から 4 の放射線粘膜炎が 43.2%と対照群の 33.3%よりも増加し、治療効果 の 改 善 は 認 め ら れ な か っ た19。 こ の 結 果 か ら、 cetuximab の化学放射線治療への併用は推奨され ていない。局所進行頭頚部癌を対象としたRCT に おいて、cetuximab の放射線単独療法への上乗せ が検討された。Cetuximab 併用群は局所制御期間 を24.4 か月とし、放射線治療単独群の 14.9 か月と 比較して有意に延長した20。しかし、対照群は標準 治療であるプラチナ併用放射線化学療法でないた め、その結果は慎重に判断する必要がある。

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Necitumumab(国内未承認)は EGFR に対する ヒトIgG1 モノクローナル抗体である。IV 期の扁 平上皮NSCLC に対する 1 次治療として、ゲムシ タビンとシスプラチンとの併用(GC) 療法に上乗せ する第3 相 RCT である SQUIREGC 試験が報告さ れた。Necitumumab 併用群は OS 11.5 か月と GC 療法の9.9 か月を有意に延長した21。国内では第2 相試験が行われ、日本人でも有効な可能性が示され ている。 2. HER2 HER2 はリガンドが結合しなくても二量体を形 成し、TK が活性化される。Trastuzumab は乳癌 の25 ~ 30% で 陽 性 と な る HER2 を 標 的 と し た IgG1 ヒ ト 化 モ ノ ク ロ ー ナ ル 抗 体 で あ る。 trastuzumab は、ADCC 活性により HER2 陽性癌 細胞の細胞増殖を抑制し細胞死を誘導し、また細胞 表面のHER2 のダウンレギュレーションを起こす と考えられている。HER2 を過剰発現している患 者のみがtrastuzumab をはじめとした HER2 を標 的 と し た 適 応 と な る が、 過 剰 発 現 はIHC (immunohistochemistry) お よ び FISH 法 (fluorescence in situ hybridization) により判定す る。 す な わ ち、HER2 過剰発現は IHC3+ または IHC2+ かつ FISH 法陽性と定義されている。 HER2 を標的とした治療 1) モノクローナル抗体 HER2 が高発現した乳癌は、進行が早く予後不 良である。Trastuzumab は ERBB2/HER2 に対す るモノクローナル抗体であり、HER2 の細胞外ド メインIV に結合し、下流のシグナルを抑制する。 Perutuzumab はドメイン II に結合し、2 量体形成 を阻害する。抗HER2 抗体の特徴的な有害事象と して心毒性が挙げられ、慎重な心機能のモニタリン グが必要である。 Trastuzumab は HER2 陽性の転移性乳癌の生存 を改善し、早期乳癌の再発を抑制する。さらに近年、 trastuzumab、perutuzumab とドセタキセルとの 併用によって、転移性乳癌のPFS、OS の延長22と 術後乳癌再発を抑制する23ことが報告された。また、 転移性胃癌ではHER2 陽性がおよそ 2 割の患者で 認められ、第3 相 RCT である ToGA 試験では、フ ル オ ロ ウ ラ シ ル と シ ス プ ラ チ ン の 化 学 療 法 に trastuzumab を併用することで、OS が 13.8 か月 と化学療法群の11.1 か月を延長することが示され た24。 Tr a s t u z u m a b e m t a n s i n ( T- D M 1 ) は trastuzumab と チ ュ ブ リ ン 重 合 阻 害 薬 で あ る emtansine (DM1) とをリンカーで結合させた薬剤 である。Trastuzumab が HER2 を認識し細胞内に 取 り 込 ま れ た 後、DM1 が 遊 離 す る こ と に よ り HER2 陽性細胞に対して抗腫瘍効果を発揮する。 Trastuzumab とタキサンによる既治療の HER2 陽 性乳癌患者を対象としてT-DM1 と lapatinib とカ ペ シ タ ビ ン 併 用 群 と を 比 較 す るRCT で あ る EMILIA 試験において、T-DM1 群は PFS 9.6 か月 であり、lapatinib とカペシタビン併用群の 6.4 か 月を有意に延長した25。EMILIA 試験のその後の報 告では、クロスオーバーが許容されたにもかかわら ず、T-DM1 群は OS 29.9 か月と、lapatinib とカペ シタビン併用群の25.9 か月に対して有意に延長し た26。有害事象もgrade3 以上の有害事象は 41% と、 コントロール群よりも少なかった。この結果を受け て、進行再発HER2 陽性乳癌の 2 次治療は T-DM1 が推奨されている。 2) 小分子化合物

HER2 陽性乳癌に対して lapatinib、 neratinib(国 内未承認)が用いられている。Lapatinib は可逆的 なHER2 阻害薬である。HER2 の N 末側が欠失し たp95HER2 は、細胞外ドメインを欠くが、TK 活 性は保たれる。P95HER2 は trastuzumab の結合 部 位 を 欠 く た め に、trastuzumab 抵抗性となる。 アンスラサイクリン、タキサン、trastuzumab 治 療後に増悪したHER2 陽性転移性乳癌患者を対象 と し たRCT に お い て、lapatinib と capecitabine との併用群では、capecitabine 単独群に比較して病 勢増悪までの期間がそれぞれ、8.4 か月、4.4 か月 と併用群で有意に延長を示した27。Lapatinib は、 脳転移を有するHER2 陽性乳癌患者での効果が期 待され、システマティック・レビューでは、脳転移 に対して30% の response rate を示しており、局

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所療法が困難な脳転移を有する患者には治療の選択 肢となる28。閉経後ホルモン陽性、HER2 陽性乳癌 患者において、lapatinib と letrozole との併用療法 が検討され、letrozole 単独と比較して、PFS がそ れ ぞ れ8.2 か 月 と 3.0 か 月 と 有 意 に 延 長 を 示 し  た29。 Neratinib は非可逆的に HER2 を阻害する。周 術 期 化 学 療 法 とtrastuzumab 投与後のステージ 1-3c の手術可能乳癌において、1 年間の neratinib とプラセボとを比較した第3 相 RCT において、 5 年invasive disease free survival が neratinib 群で は90.2%、プラセボ群では 87.7% と低下を示し  た30。 安 全 性 に お い て は、neratinib 群において grade3 の下痢が 40% と placebo の 2% よりも増加 が見られたが、それ以外のgrade3 以上の有害事象 の増加は見られなかった30。 3. VEGFR

Vascular endotherial growth factor receptor (VEGFR)ファミリーはVEGFR-1/Flt-1、 VEGFR-2/ KDR/Flk-1、 VEGFR-3/Flt-4 の細胞外領域に7つ の免疫グロブリン様ドメインを持ち、リガンドは VEGF-A、 -B、 -C、-D と placenta growth factor (PlGF) である。VEGF-A、 B と PIGF は VEGFR-1 に結合する。VEGF-A、 C、 D は VEGFR-2 に、 VEGF-C と D は VEGFR-3 に結合する。VEGF は 血管上皮細胞の増殖、移動、生存、細胞間コミュニ ケーション、分化、血管透過性などのシグナルを伝 達する。他のRTK と同様に VEGFR においても、 リガンドがVEGFR の細胞外ドメイン結合するこ とによりシグナル伝達が開始さる。引き続いて、 VEGFR はホモ、あるいはヘテロ二量体を形成し、 VEGFR のキナーゼドメインのチロシン残基がリン 酸化されることにより活性化する。 VEGF を標的とした治療 1) 小分子化合物 VEGFR に 対 す る 阻 害 活 性 を 持 つ TKI は、 sorafenib、 sunitinib、 pazopanib、 axitinib、 r e g o r a f e n i b 、 l e n v a t i n i b 、 v a n d e t a n i b 、 cabozantinib(国内未承認)など複数の薬剤が用い ら れ て い る。VEGFR の み で な く、PDGFR、 c-KIT、 RET、 FLT-3 など、他のキナーゼに対して も阻害活性を持つため、マルチキナーゼ阻害薬と総 称されている。これらの薬剤は、肝細胞癌、腎細胞 癌、甲状腺癌、GIST、軟部肉腫等これまで殺細胞 薬による薬物療法が効果を示さなかった悪性腫瘍に も用いられる。当科で日常的に用いている、大腸癌 のregorafenib と甲状腺癌の lenvatinib について解 説する。 Regorafenib は 既 治 療 の 大 腸 癌 を 対 象 と し た CORRECT 試験において、OS 6.4 か月とプラセボ 群の5.0 か月を有意に延長した。Regorafenib 群で は93% とプラセボ群の 61% に比較して多くの有害 事象が報告された。グレード3 以上の有害事象と して、17% に手足症候群が、36.7% に下痢、高血 圧が、29.6% に皮疹あるいは落屑が認められた31。 Lenvatinib はヨードによる内照射抵抗性の甲状腺 癌を対象とした第3 相 RCT において、PFS 中央値 を18.3 か月とプラセボ対照群の 3.6 か月と比較し て 有 意 に 延 長 し た。 奏 功 率 はlenvatinib 群 で 64.8%、プラセボ群で 1.5% であった。有害事象は レンバチニブ群で多く見られ、高血圧、下痢、疲労、 食欲不振などであった。肺塞栓、出血性卒中に伴う 死亡例も報告されている32。これらの薬剤は投与量 の調節や支持療法など、薬剤の特性に特に配慮が必 要である。 2) モノクローナル抗体

Bevacizumab は VEGF-A に対する IgG1 ヒト化 モ ノ ク ロ ー ナ ル 抗 体 で あ る。 大 腸 癌、 乳 癌、 NSCLC、卵巣癌、子宮頸癌、悪性神経膠腫など多 くの適応がある。悪性神経膠腫以外では単独での抗 腫瘍効果を示さず、化学療法との併用で用いられ る。 Bevacizumab は FOLFOX4 との併用で、大腸癌 の2 次治療において OS を 12.9 か月とし、化学療 法単独の10.8 か月を有意に延長した33。しかし、 bevacizumab 単独では OS 10.2 か月と単剤での効 果は認められなかった。大腸癌の1 次治療では、イ リノテカンベースの化学療法に併用することで、 PFS を 6.2 か月から 10.6 か月に、OS を 15.6 か月 から20.31 か月に延長した34。オキザリプラチン

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ベ ー ス の1 次治療では、bevacizumab の併用は、 PFS を 8.0 か月から 9.4 か月に延長した351 次治 療から引き続いて2 次治療にも bevacizumab を用 い る 第3 相 RCT が 行 わ れ、OS に お い て bevacizumab 併用群で 11.2 か月、化学療法単独群 で9.8 か月と bevacizumab 併用群で有意な延長を 示した36。NSCLC を対象としたカルボプラチン、 パクリタキセル併用療法へのbevacizumab 併用効 果を検証したRCT において、bevacizumab 併用群 はOS 12.3 か月と、化学療法群の 10.3 か月を延長 した。その一方、出血の有害事象はbevacizumab 群で多く見られた。プラチナ抵抗性の卵巣癌を対象 とした第3 相 RCT である AURELIA 試験では、化 学療法へのbevacizumab の上乗せ効果を検証した。 PFS 中 央 値 は 化 学 療 法 単 独 群 で 3.4 か 月、 bevacizumab 併用群で 6.7 か月であったが、OS に おいては有意差を示さなかった。有害事象は既知の 範囲であった37。 Aflivercept はヒト VEGFR1 および 2 の細胞外ド メ イ ン を ヒ トIgG の Fc ド メ イ ン に 結 合 し た、 VEGF 標的組み換え融合タンパク質である。可溶 性のデコイ受容体として、VEGF-A、 B、 PIGF に高 い親和性で結合する。オキザリプラチン既治療大腸 癌の2 次治療を対象とした第 3 相 RCT において、 aflivercept は FOLFIRI との併用で OS を 13.50 か 月と、プラセボ群の12.06 か月から有意に延長し た38。有害事象は下痢、口内炎、倦怠感、高血圧、 出血、鼻出血などの頻度が増加することが報告され ている38。

Ramucirumab は VEGFR-2 に対する IgG1 完全 ヒトモノクローナル抗体であり、胃癌、大腸癌、 NSCLC に用いられている。オキザリプラチンと bevacizumab にて既治療の転移性大腸癌を対象と し た 第3 相 RCT で あ る RAISE 試 験 に お い て、 Ramucirumab は FOLFIRI に併用することで OS を13.3 か月と、プラセボ併用群の 11.7 か月と比較 して有意に延長した39。有害事象としては、出血、 鼻出血、消化管出血、高血圧、タンパク尿の発現が 増加するため注意が必要である39。RAISE 試験の バイオマーカー検索にて、血中VEGF-D 高値の患 者 に お い てOS の延長を認め、血中 VEGF-D が ramucirumab の効果予測バイオマーカーとなる可 能性が示された40。既治療の胃癌を対象とした、国 際 共 同 ラ ン ダ ム 化 比 較 第3 相 試 験 で あ る RAINBOW 試験では、ramucirumab とパクリタキ セル併用群においてOS が 9.6 か月、プラセボ併用 群では7.4 か月と ramucirumab 群において有意に 延長した。グレード3 以上の有害事象は好中球減 少症、白血球減少症、高血圧症などであった41。既 治 療 のNSCLC においては、第 3 相 RCT である REVEL 試験で、ドセタキセルと ramucirumab の 併用効果が検討された。その結果、OS は併用群で 10.5 か月、化学療法単独群で 9.1 か月、PFS はそ れぞれ4.5 か月と 3.0 か月であった。グレード 3 以 上の有害事象は既知の範囲であり、重篤な有害事象 の発現は、標準治療群と差を認めなかった42。 4. ALK

ALK 融合遺伝子は、Anaplastic lymphoma kinase (ALK) 遺 伝 子 の キ ナ ー ゼ ド メ イ ン と echinoderm microtubule-associated protein-like 4 (EML4) 遺伝子とが小さな逆位を形成することでで きた融合遺伝子である。ALK は leukocyte tyrosine kinase (LTK) ファミリーに属する RTK であり、細 胞外ドメインにグリシンリッチドメインを有する。 脳神経系の発達に関わると考えられている。リガン ドが結合することにより、二量体形成し活性型とな る。ALK融合遺伝子を形成することにより、恒常 的に二量体形成し活性化すると考えられている。こ の融合タンパクは固形腫瘍で初めて発見された染色 体再配列であり、細胞内に局在することが特徴的で ある。ALK 融合遺伝子陽性のNSCLC は 3-5% で あり、比較的若年者に多く認められる。ALK 融合 遺 伝 子 陽 性 のNSCLC では crizotinib や alectinib などのTKI が奏効することが示されている。 Crizotinib は第 3 相 RCT において、PFS 10.9 か 月であり、標準治療群であるプラチナ製剤とペメト レキセドとの併用療法群のPFS 7.0 か月に対して 優越性を示した43。Alectinib は 2014 年に承認され た選択的ALK 阻害薬である。わが国において行わ れたALK融合遺伝子陽性NSCLC を対照としたラ ン ダ ム 化 第3 相 試 験 で は、1 次 治 療 に お い て

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crizotinib に 対 し て、 主 要 評 価 項 目 の PFS で は alectinib 群は中央値に未到達であり、crizotinib 群 の10.2 か月よりも延長を示している44。Brigatinib (国内未承認)は未治療のALK 融 合 遺 伝 子 陽 性 NSCLC を対照とした第 3 相 RCT である ALTA-1L 試験において、crizotinib 群に対して PFS を延長 する報告がされ45、わが国でも単群多施設共同第2 相試験が進行中である。また、これらのALK 阻害 薬治療抵抗性となったNSCLC に対して、ceritinib の有効性が報告されている46。Lorlatinib は第 3 世 代のALK 阻害薬であり、ALK 阻害薬既治療例を 対照とした国際共同第I/II 相試験において、ORR 46%を示した47。わが国では2018 年に全例調査を 行う条件で承認されている。 5. PDGFR ファミリー PDGFRファミリーは CSF1R (colony-stimulationg factor 1 receptor)、FLT3 (Fms-like tyrosine kinase 3)、c-kit、PDGFRα、PDGFRβ の 5 つのキ ナーゼから成る。構造の特徴としては(1) 5 つの免 疫グロブリン (Ig) 様ドメインから成る細胞外ドメ イン、(2) 一回細胞膜貫通領域と細胞膜近傍 (JM) ドメイン、(3) キナーゼ挿入配列 (KI) 領域で二分さ れたTK ドメイン (ATP 結合ポケットと活性ルー プ)が挙げられる。リガンドはそれぞれの受容体で 異 な り、CSF1R に は CSF1、c-kit に は CSF、 FLT3 には Flt3 ligand (FL) が結合する。リガンド の 特 徴 は 二 量 体 と し て 機 能 す る こ と で あ る。 PDGFR リガンドには PDGFA-D の 4 種類が知ら れており、それぞれホモ二量体あるいはAB から成 るヘテロ二量体を形成することが知られている。 1) c-kit c-kit はリガンドである SCF の結合によりホモ二 量体を形成し、細胞内のTK ドメインが相互にリン 酸化され活性化する。c-kit は肥満細胞、造血前駆 細胞や造血幹細胞表面に発現し、分化した細胞では 検出されないことから、幹細胞性維持に関わってい ると考えられている。c-kit変異が関連する腫瘍と し て は 肥 満 細 胞 症、 急 性 骨 髄 性 白 血 病(AML)、 GIST 等が報告されている。 GIST においては 70-90% にc-kitの変異が報告 されている。最も多く報告されている変異は自己活 性阻害に関わるJM 領域をコードするエクソン 11 の変異で、欠失、挿入、置換やそれらの複合変異が およそ70%の患者で認められる。7-11% の患者で は細胞外ドメインをコードするエクソン9 に変異 が報告されている。これらの変異によりc-kit の立 体構造が変化し、リガンドに依存することなくTK ドメインの恒常的活性化を獲得する。c-kit が活性 化 さ れ る とRas-MAPK、PI3K-AKT、JAK-STAT 等の経路にシグナルが伝達され、細胞増殖、アポ トーシスの阻害、生存、細胞周期の活性化、移動 等が促進される。 切除不能・転移GIST 患者の初期治療にイマチニ ブを用いる第Ⅱ相試験(B2222 試験)が行われ、 PR 53.7%、SD 27.9% が認められ、長期の観察で はOS 中央値は 57 か月であり48、それまで有効な 化学療法薬が存在しなかったGIST に対して有望な 結 果 が 認 め ら れ た。 国 内 で は、 第II 相 試 験 (STI571B1202)49 が 行 わ れ、PR 69%、SD 26%、 PFS 中央値 96 週であり、安全性も確認され、2003 年GIST に対して承認された。 薬物治療前にはTK ドメイン内の変異の頻度は低 いが、imatinib 治療による二次耐性獲得には、TK ドメインの点突然変異が原因の一つとして関わって いる。TK ドメインのうち ATP 結合ドメインをコー ドするエクソン13 および 14 の変異に対しては第 2 世代TKI の sunitinib が有効であるが、活性ループ をコードするエクソン17 および 18 の変異に対し ては効果を期待できない。Sunitinib は imatinib 抵 抗性のGIST に対する第 3 相 RCT で OS 72.7 か月 であった。クロスオーバーが許容された試験であっ た た め、rank-preserving structural failure time (RPSFT) 法にて統計学的解析がなされ、その結果 プ ラ セ ボ 群 のOS は 39.0 週 と 推 計 さ れ た50。 Imatinib と sunitinib の両者に抵抗性 GIST を対象 とした第3 相 RCT では、regorafenib が検証された。 その結果、regorafenib 群の PFS は 4.8 か月とプラ セボ群の0.9 か月を延長した。グレード 3 以上の regorafenib の有害事象は、高血圧症、手足症候群、 下痢が報告された51。

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2) PDGFRα PDGFRα はリガンドである PDGF-AA あるいは -CC が結合し活性化される。下流のシグナル伝達経 路であるRas-MAPK、PI3K-AKT、PLγ-PKC 等の 経路が活性化され、遊走、増殖、細胞生存等が促進 さ れ る。 子 供 の 髄 芽 腫 や 好 酸 球 増 多 症 候 群 等 で PDGFRα の活性化が報告されている。 

c-kit変異を持たないGIST においてはPDGFRA の変異が報告されている。PDGFRA はGIST 患者 のうち、5-7%で変異が認められ、変異は活性ルー プをコードするエクソン18 の点突然変異が最も多 い。PDGFRA とc-kitの変異は相互排他的である。 PDGFRA の変異はc-kit の変異と同様に、リガン ドの非存在下で恒常的キナーゼ活性化を起こし、下 流のシグナルが活性化される。 その他の受容体型チロシンキナーゼ 1) c-MET c-MET は MET ファミリーに属し、そのリガン ドはhepatocyte growth factor/scatter factor (HGF/SF) である。c-MET は細胞外に Semaphorin (SEMA) ドメイン、システインリッチ (CR) ドメイ ン、4 つの Ig 様ドメインを持ち、細胞内には TK ドメインを持つ。リガンドが細胞外ドメインに結合 すると2 量体を形成しリン酸化により活性化され、 下 流 のRas-MAPK や PI3K-AKT 等の経路を介し て生存、増殖、細胞周期促進、遊走等のシグナルが 伝達される。様々な腫瘍においてMETの増幅が報 告されている。MET に対する onartuzumab の臨 床試験は、NSCLC、胃食道腺癌を対象として実施 されたが効果は証明されなかった。MET のリガン ドであるHGF に対する抗体である rilotumumab では、胃癌、胃食道接合部癌に対する第3 相 RCT において有効性を示さなかった。TKI ではマルチ キナーゼ阻害薬であるcabozantinib が MET に対 す る 阻 害 活 性 を 持 つ こ と が 報 告 さ れ て い る。 Cabozantinib は FDA で甲状腺髄様癌、肝細胞癌、 腎細胞癌において承認されたほか、各種癌において も 臨 床 試 験 が 行 わ れ て い る。 ま た、crizotinib が MET-TKI と し て の 活 性 を 持 つ こ と が 知 ら れ、 NSCLC などで臨床試験が進行中である。 2) その他

その他のRTK では、insulin-like growth factor 1 receptor (IGF1R) や fibroblast growth factor (FGFR) などががんに関わることが報告されてお り、それぞれを標的とした薬剤の開発が行われてい る。

ROS1 は insulin receptor family に属する RTK であり、Fibronectin type III ドメインからなる細 胞外ドメインと膜貫通部位、TK からなる。リガン ドはまだ明らかにされていない。ROS1転座により 融合遺伝子が形成され、ROS1 が恒常的に活性化さ れることにより癌化が引き起こされる。NSCLC を はじめ、胆管癌、胃癌、卵巣癌、膠芽腫などのヒト の 癌 に お い てROS1 の 転 座 が 報 告 さ れ て い る。 FISH を 用 い た 解 析 に よ り、NSCLC に お い て

ROS1 転 座 は1.7% に 検 出 さ れ た。ROS1 の ATP 結合部位はALK と 77%のアミノ酸相同性を持ち、 crizotinib による治療効果が期待された。ROS1転 座陽性の肺癌ではcrizotinib による臨床試験が進行 中である。 6. 受容体型チロシンキナーゼのネットワーク RTK にはシグナル伝達経路のネットワークが存 在し、がん治療を困難にしている。以下に例を挙げ る。 NSCLC では EGFR を標的とした TKI に対する 耐性獲得の多くはEGFRに新規の変異が加わるこ とによるが、その他の耐性獲得機序としてc-MET の 増 幅 が 挙 げ ら れ る。 未 治 療 のNSCLC で は c-MET の増幅は4-7% であるが、TKI 耐性 NSCLC では約20% と報告されている52。高発現したMET の作用メカニズムとして自己リン酸化によるシグナ ル伝達と、ERBB3 をトランスリン酸化し活性化す るクロストークが考えられている。EGFR-TKI 抵 抗性のNSCLC を対象とした第 2 相試験において、 erlotinib と cabozantinib との併用療法が検討され、 濃厚な治療歴を有する患者においても併用療法は抗 腫瘍活性を示す可能性が示された53。 BRAFV600Eを有する結腸直腸癌は非常に予後が悪 く、抗EGFR 抗体薬の化学療法薬への上乗せ効果 が 見 ら れ な い15。 こ の た め、 抗EGFR 抗体薬に

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BRAF あるいはその下流分子の阻害薬を併用する 治療法が開発されている。BRAFV600Eを有する結腸 直腸癌を対象とした第3 相 RCT である BEACON 試験の安全性導入期の結果が報告され、MEK 阻害 薬 のbinimetinib、BRAF 阻 害 薬 の encorafenib、 抗EGFR 抗体の cetuximab の 3 者併用療法の安全 性が確認された。奏功率は48%、PFS 中央値は 8.0 か月、OS 中央値は 15.3 か月であり、今後の試験 結果に期待が持たれている54。BRAFV600Eを有する 結 腸 直 腸 癌 で は、 そ の 他 に もvemurafenib と cetuximab を併用する第 2 相試験の報告が待たれ ている。 HER2 陽 性 乳 癌 の 治 療 抵 抗 例 で は、IGF-1R、 Her3、Met、PI3K などの増幅が報告され、HER2 を迂回するシグナル伝達経路の活性化が報告されて いる55。既治療のHER2 陽性乳癌においても、今 後の分子標的治療薬併用療法の展開が期待される。 おわりに RTK に対する分子標的治療薬の登場で画期的な 治療効果を得られるようになった腫瘍が存在する一 方、RTK の二次変異やクロストークによる分子標 的治療薬の耐性獲得など、新しい課題が明らかと なってきた。耐性を獲得した腫瘍にも効果を持つよ うな新しいデザインの薬剤の開発が求められる。さ らに、細胞内シグナル伝達ネットワークの多様性を 考えると、複数の受容体に作用する阻害薬を組み合 わせる、あるいは多標的に対して有効な分子標的薬 の開発が、今後の分子標的治療の鍵となる可能性が ある。今後はRTK からのシグナル伝達を、クロス トークやネットワークも含めて解明することが、効 果的な分子標的治療薬開発における課題であると考 える。 歴史的にがん治療は臓器別に確立されてきた。し かし、臓器に関わらず遺伝子変異解析に基づいて治 療薬を選択することは、今後のがん治療のありかた を 大 き く 変 え よ う と し て い る。 が ん 化 に お い て RTK が重要な役割を持つことは多く、ゲノム医療 の場ではRTK を標的とした分子標的治療薬を用い た治療の展開が期待される。 文献

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参照

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