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鹿児島地裁における裁判員裁判

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Academic year: 2021

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(1)

鹿児島地裁における裁判員裁判

著者

小栗 実

雑誌名

鹿児島大学法学論集

46

2

ページ

133-171

別言語のタイトル

Citizen judge system (saiban-in system) in

Kagoshima-district-court

(2)

鹿 児 島 地 裁 に お け る 裁 判 員 裁 判 小 栗 実 一37の 裁 判 員 裁 判 2009年5月21日 に施 行 され た裁 判 員法 。 全 国 的 に は 、8月4日 に東 京 地 裁 で初 め て の裁 判員 裁 判 が 開 廷 とな っ た。 鹿 児 島地 裁 で の初 め て の裁 判員 裁 判 は 、11 月24日 に公 判 が 開始 され た 強盗 致 傷 お よ び銃 刀法 違 反 容 疑事 件 で あ る。 それ 以 来 、2011年 末 ま で に37件 の 事件 が裁 判員 裁 判 で裁 かれ た。 本 稿 は 、 そ の37件 の裁 判 員裁 判 を紹 介 し、 そ こか らい くつ か の特 徴 と検 討課 題 を 見 つ け 出 そ う とす る もの で あ る。 私 は 、37件 の うち11件 に つ い て 部分 的 に で は あ っ た が傍 聴 した の で 自分 の傍 聴 の感 想 な ども 書 く こ とに した い。 検 察 官 に よ る死 刑 求 刑 が 無 罪 判 決 と な り、 裁 判 所 の イ ン タ ー ネ ッ ト ・サ イ トに 公 開 され た 鹿 児 島 市 南 部 で 起 きた 老 夫 婦 殺 害 事件( http://www.courts.go.jp/ hanrei/pdf/20110322105943.pdf/ → 【判決18】)を 除 い て 、判 決 文 を入 手 す る こ と は で き な か っ た の で 、 文 中 に 引用 した判 決 の部 分 は 、 南 日本 新 聞及 び朝 日新 聞 (鹿 児 島版)か ら引 用 した もの で あ る。 裁 判後 の 裁 判 員 の感 想 も、 報 道 機 関以 外 に は聴 く こ とが で き な い の で 、 そ の 内容 も 引用 に よ っ て い る。 しか し、裁 判 員 裁 判 の 大 き な特 徴 で あ る 市 民参加 の 長所 ・短 所 を検 討 す る た め に も 必 要 と考 え て 、 主 な もの を 引用 した。 鹿 児 島 地裁 に は刑 事の合 議 部 は 一 つ しか な く、2009年11月 か ら2011年3月 ま で 平 島正 道 裁判 官 が 裁判 長 、2011年4月 か ら中 牟 田博 章 裁 判 官 に裁 判 長 が交 代 した。 2009年 ■ 【判 決1】 強 盗 致 傷 及 び 銃 刀 法 違 反 事 件(男 性 ・49歳)) 鹿 児 島 地裁 で初 の裁 判員 裁 判。 鹿 児 島 市 内 で 、金 融機 関職 員 が二 人組 の 男 に 襲 われ 、 現金88万 円 が入 っ た か ば ん を 奪 われ 、 け が を した事 件 。 被 告 人 は容 疑 を 認 め 、 共犯 者 は無 罪 を 主 張 した た め 、分 離 公 判 とな っ た(→ 【判決5】)。

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7月24日 に 起 訴 され 、9月29日 に第1回 公判 前 整 理 手続 きが 行 われ た。 裁 判 所 は 、裁 判員 候 補 者100人 を無 作 為 抽出 し、調 査 票 で辞 退 が 認 め られ た 人 を除 く77人 に 「裁 判 員 等 選 任 手 続 き期 日のお 知 らせ 」(呼び 出 し状)を 送 付 した 。3人 に は呼 び 出 し状 が 届 か なか った とい う。 呼 び 出 し状 に 同封 され た 質 問 票 に回 答 して 辞 退 希 望 が 認 め られ 、 呼 び 出 し状 が 取 り消 され た 人は33人 。 期 日当 日、 呼 び 出 され た 候 補 者 は41人 だ っ た が 、6人 が 連 絡 な しに 欠 席 した。 末 尾 に 、 裁 判 員 候 補 者 の 辞 退 者 数 お よび 辞 退 理 由、 欠 席 者 数 の 表 を掲 載 した 。35人 の うちか ら選 任 され た 裁 判 員 は、男性3人 、女性3人 。 補 充裁 判 員3人 は いず れ も女性 。 新 聞 な ど報 道機 関 は 、地 裁 で 最 初 の 裁 判 員 裁 判 とい うこ とで 裁 判 の 経 過 を詳 細 に報 道 した 。 裁 判 員 の 選 出手 続 き につ い て 「非 公 開 で 、 選 任 過 程 の 不 透 明感 が 指 摘 され て い る」 と論 じて い る(23日 南 日本)。 開廷 初 日につ い て の 報道 は 、 第1面 及 び社 会 面 を大 き く使 っ て い る。 「二 日 目被 告 人 質 問 に注 目」 と見 出 し に あ る よ うに、 裁 判 員 の 質 問 を と く に注 目す る姿 勢 が み られ た 。 この 事 案 は 共 犯 関係 が 論 点 に な って い た の で 「罪 の 割 合 は どの く らい か 」 と尋 ね た 裁 判 員 の 質 問 や 更 生 の 可 能 性 につ い て の 質 問 に注 目して い る。 ま た 裁 判 員 の 選 出 につ い て 「『9枠 』 候 補 者 緊 張」 「番 号 呼 ば れ 瞬 間 た め息 」 な ど と裁 判 員 にス ポ ッ トを 当 て る 報 道 に な っ た。 「市 民 参 加 、変 わ る法 廷 」 「簡 略 ・視 覚 化 全 面 に」(25日 南 日本)と 、 これ まで の 裁 判 か らの 変 化 を強 調 して い るの も 目立 つ 。 会 見 を報 道 す る こ と に加 えて 「審 理 ス ケ ジ ュ ール 」「二 口 目日程 予 定」 「被 告 人 質 問詳 報」 「証 人尋 問 詳報 」 「裁 判 員 裁 判 会 見 詳 報 」 な ど も掲 載 され て い る。 11月24日 開 廷(起 訴 事 実 を認 容) 11月25日 求 刑(懲 役7年) 弁 護 人 は懲 役3年6月 が 相 当 と主 張 。 11月26日 判 決(懲 役5年) 判 決 は、 金 融 機 関の 職 員 を狙 った 点 は 悪 質 で 、刑 事 責 任 を軽 くみ る こ とは で き な いが 、 犯 行 を提 案 ・計 画 した の は 共 犯 者 で 被 告 人 は そ の 命 令 を断 りに くい 状 況 に あ った な ど と して 酌 量 減 軽 した上 で刑 を科 す の が 相 当 と した 。 ■ 【判 決2】 傷 害 致 死 事 件(男 性 ・67歳) 2009年7月29日 午 後10時 頃 、鹿 屋 市 の 自宅 で妻 の顔 を 殴 り足 で蹴 る な ど して 、

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く も膜 下 出血 で 死 亡 させ た容 疑 で起 訴 され た。 県 内2例 目の裁 判 員裁 判 判 決 と な っ た。 裁 判員 は 男性4人 、 女性2人 。 補 充裁 判員 は3人 とも 男性 。 新 聞 な ど報 道機 関 は 、地 裁 で2件 目の裁 判 員 裁 判 とい う こ と、 さ らに家 庭 内 暴 力 に 関す る 事件 とい うこ とで 、 か な りの 関 心 を もっ て 、第 一 回 目の裁 判員 裁 判 同様 、 そ の経 過 を詳 細 に 報 道 した。 12月7日 開 廷(起 訴 事実 を 認容) 検 察官 は遺 体 の 写真 を証 拠 請 求 した が 、 不採 用 とな っ た。 裁 判 員 か ら質 問 が 出 た。 12月8日 求 刑(懲 役4年) 弁護 人 は執 行 猶 予付 判決 を求 め た。 12月9日 判 決(懲 役3年 保 護 観 察付 き執 行 猶 予5年) 判決 は 、妻 の 死 とい う結 果 は重 大。 夫婦 生活 の ス トレス は うか が え る が 、特 段 の事 情 を くむべ き事 情 で は な い と しつつ 、頭 部 を怒 りに ま かせ て 殴 る な どの 偶 発 的 な側 面 もあ り、被 告 人 の家 族 が 支 え る と述 べ て 、 更 生 が期 待 で き る環 境 に あ る と指 摘 した。 執 行 猶 予 とな っ た本 件 被 告 人 は 、2011年4月11日 、鹿 児 島 県警 に よ り現 行 犯 逮 捕 され た。 徳 之 島署 の発 表 に よ る と、11日 午前9時 半 ごろ 、徳 之 島 で の夏 金 約2千 円入 りの ガ ラ ス瓶 を 盗 ん だ容 疑 。 鹿 児 島 保護 観 察 所 奄 美駐 在 官 事務 所 に よ る と、 月2、3回 あ る保 護 司 との 面接 を欠 か さず 受 けて い た とい う。 ■ 【判 決3】 強 姦 致 傷 事 件(男 性 ・54歳) 2009年7月6日 午 前2時 半 こ ろ 、 県 内 の離 島 で 民 宿 を 経 営 して い た被 告 人 が 、 お 客 で あ る女 性 に顔 を 殴 り、 「殺 すぞ 」 な ど と脅 して性 的 な 乱 暴 を加 え、 約5日 間 の け が を負 わせ た容 疑 で 起訴 され た。 この事 件 は 、地 裁 で性 犯 罪 が裁 かれ る初 め て の裁 判 員 裁 判 とな り、被 害者 女 性 の プ ラ イバ シ ー保 護 等 が課 題 とな っ た。35人の うちか ら選任 され た 裁 判 員 は 、 男性3人 、女 性3人 。 補 充 裁判 員3人 は いず れ も女 性 。 報 道 機 関 は 、 地裁 で初 め て の性 犯 罪 に 関す る裁 判員 裁 判 とい うこ とで 「検 察 側 論 告 要 旨」 「弁 護 側 最 終 弁 論 要 旨」 「鹿 県 初 の 性 犯 罪 裁 判 員 裁 判 詳 報 」 「被 害 者 意 見 陳述 要 旨 」 を掲 載 して い る。

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12月15日 開 廷(起 訴 事 実 を認 容) 検 察 官 は、 犯 行 の 詳 しい 状 況 を 口頭 で は 説 明 しな い で 、 裁 判 官 ・裁 判 員 に文 書 で 確 認 す る配 慮 を行 った 。 被 害 女 性 の 氏 名 ・年 齢 ・住 所 は秘 匿事 項 と され た。 被 害 女 性 の 負 傷 箇 所 を写 した 写 真 もモ ニ ター に映 写 せ ず 裁 判 員 だ け に見 せ 、 被 害 女 性 の 供 述 調 書 も朗 読 しなか った 。 被 害 女 性 の 意 見 陳 述 は 、 被 告 人 と傍 聴 席 か ら姿 が 見 え な い よ うに、 つ いた て で 遮蔽 され た 証 言 台 で 行 わ れ た 。 被 告 人 質 問 で は裁 判 員 三 人 が 質 問 した。 犯 行 場 所 も検 察 官 の 冒頭 陳述 で は 「県 内」 と、 弁護 人 は 「地 元 」 と表 現 した が 、 被 告 人 質 問 で 裁 判 長 及 び 検 察 官 が 具 体 的 な 島 の 名 前 を述 べ て しま うハ プ ニ ン グ も あ った 。 12月16日 求 刑(懲 役7年) 弁 護 人 は 「懲 役4年 が 相 当」 と して 酌 量 減 軽 を求 めた 12月17日 判 決(懲 役6年) 判 決 は、 被 害 女 性 の 精 神 的 、 肉体 的 苦 痛 の 大 き さか ら、 結 果 が 重 大 で あ る こ と は明 らか で あ り、 法 を軽 視 す る態 度 が うか が わ れ 、 今 後 も犯 罪 を犯 す 可 能 性 は否 定 で き ない 、 な ど と指 摘 した 。 【裁 判 員 の感 想 】 「性 犯 罪 だ か ら ど う、 とい うこ とは な か った 。 他 の 裁 判 で も 同 じ心 境 で 参加 した と思 う」、 「最 初 は 男 女 で は感 情 的 な と こ ろで 意 見 が 分 か れ る の か と思 って いた が 、 評 議 で は意 識 しな か った 」。 【控 訴 審 】12月25日 、被 告 人 は 懲 役6年 と した 第 一 審 判 決 を 不 服 と して福 岡 高 裁 宮 崎 支 部 に控 訴 した が 翌 年2月24日 に控 訴 を取 り 下げた 。 2010年 ■ 【判 決4】 傷 害 致 死 事 件(男 性 ・25歳) 被 告 人 は 派 遣 型 風 俗 店 の 店 長 を して い た が 、2009年9月11日 午 前6時 ご ろ 、 風 俗 店 事 務 所 と して 使 って いた 薩 摩 川 内 市 の ア パ ー トで 、 同店 ア ル バ イ トの 男 性(当 時46歳)の 腹 を約7回 殴 って 死 な せ た 容 疑 で 起 訴 され た 。 2月24日 開 廷(起 訴 事 実 を認 容) 2月25日 求 刑(懲 役7年) 弁 護 側 は懲 役4年 が 相 当 と主 張 。 2月26日 判 決(懲 役5年)

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判 決 は 「体格 の劣 る被 害者 に対 し一 方 的 に 強 い 力 で 殴 り、非 常 に危 険 で悪 質 な暴 行 」 と指 摘 した。 売 上金 を使 っ た被 害 男性 が 開 き 直 る よ うな態 度 を 見せ た た め 、被 告 人 が激 怒 した と認 定 し 「被 告 人 に有 利 に酌 むべ き で は な い との 異論 も出 た が 、 そ の発 言 を き っ か け に激 怒 した とい う経 過 そ の もの に は酌 むべ き点 が あ る と判 断 した 」 と述 べ た。 【裁 判 員 の 感 想 】 「初 め て の こ とで疲 れ た が 、知 らな か っ た こ とを勉 強 させ て も らっ た。 判 決 文 にす べ て 裁判 員 の 考 え が入 っ て い る と理 解 して ほ しい 」。 ■ 【判 決5】 強 盗 致 傷 事 件(男 性 ・58歳) 【判 決1】 事件 の 共 犯 者 。1月29日 に 公 判 前 整 理 手 続 き が終 了 した 。 地 裁 で 初 の 否認 事 件 で あ っ た。 争 点 は 、す で に 有罪 が確 定 して い た 共犯 者(被 告 人 の い と こ)と の 共謀 が あ っ た か 否 か に あ る と予想 され た。 共犯 者 の証 言 と被 告 人 の証 言が対 立 して い る 点 が この事 案 の特 徴 だ っ た。 選 出 され た裁 判員 は 男性4人 、 女性2人 。 補 充裁 判員 は今 回 と くに4人 が選 ばれ 、 男性3人 、女 性1人 。 3月8日 開廷(起 訴 事実 を否 認 して 、 無 罪 を主 張 した 。) 公 判 は5日 間 に わ た っ て行 われ た。 共犯 者 が証 人 と して 出 廷 し、被 告 人 に は 絶 対 服 従 だ っ た と述 べ た(3月10日)。 検 察 官 の 質 問 に 対 して被 告 が 一 時 黙 秘 した(3月110)。 被 告 人 は 、計 画 は 鞄 をひ っ た く るだ け だ っ た の に、 共 犯 者 が勝 手 に 包 丁 で 強 盗行 為 をや り山 した の で 、 パ ニ ック状 態 に な っ て しま った 、 と主 張 した。 被 害 者 で あ る金 融機 関 の職 員 が 証 人 尋 問 に 立 ち 、被 告 人 が 共 犯 者 に 合 図 を 送 っ た様 子 は気 づ か な か っ た が 、 自分 に 「金 融 機 関 に恨 み が あ る。 ぶ っ殺 して や りた い 」 と声 を 荒 げ て い た の を 覚 え て い る と証 言 した。 3月15日 求刑(懲 役8年) 弁護 人 は無 罪 を 主 張 した。 3月18日 判 決(懲 役7年) (紙面 に掲 載 され た 判 決 要 旨か ら抜 粋)検 察 官 は 共 犯 者 の証 言 を信 用 で き る と して被 告 人 は 有罪 、弁 護 人 は信 用 で き な い と して 無罪 と主 張す る が 、 中 立 的 な 立場 で あ り、 特 に 不 自然 な 点 の な い被 害者 の証 言 を基 本 とす る の が適 当 で あ

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る。 共 犯 者 の 証 言 は客 観 的 な事 実 と一 致 して い る、 犯 行 前 後 の 行 動 な ど に不 自 然 な行 動 も な く、 証 言 は信 用 で き る。 他 方 、 被 告 人 が 述 べ た 変 装 道 具 や 凶 器 を 入 手 した 目的 、経 済 的 に 困窮 しなが ら も レ ン タカ ー を借 りた 理 由な どの 説 明 は 不 自然 。 供 述 は信 用 で き ない 。 犯 行 も危 険 で 悪 質 。 被 害 者 の感 じた 恐 怖 心 の 大 き さ を考 慮 す る と、 結 果 は軽 視 で きず 、 被 害 者 も処 罰 をの ぞ ん で い る。 被 告 人 は罪 を認 めず 、 うそ をつ く な ど反 省 も して い な い 。 被 告 人 が 犯 行 を発 案 、 計 画 し、 共 犯 者 に指 示 した 主 犯 とみ るべ きで 、 共 犯 者 よ り重 い 懲 役7年 が 相 当。 【控 訴 審 】9月30日 に福 岡高 裁 宮 崎 支 部は 第 一 審 判 決 の 懲 役7年 を支 持 し、 被 告 の 控 訴 を棄 却 した 。 ■ 【判 決6】 強 姦 致 傷 及 び強 制 わ いせ つ致 傷 罪 容 疑 事 件(男 性 ・43歳) 2009年3月16日 夜 、 被 害 女性 をカ ッ ター ナ イ フで 脅 して 乱 暴 し、 けが を負 わ せ た ほ か 、4月22日 ま で の38日 間 に、 狭 い 区域 内 で7人 の 女 性 を連 続 して 襲 っ た 容 疑 で 起 訴 され た。 被 告 人 は鹿 児 島 県 警 の警 察 官 だ っ た が 、 不 倫 の 発 覚 を き っか け に退 職 した 。 そ の 後 、仕 事 が うま くい か な か っ た。 この事 件 とは別 に 、 2008年12月 下旬 、 た また ま 見か けた 通 行 中の 女 性 に後 ろか ら抱 きつ き、 この と き女 性 を襲 うス リル と興 奮 を覚 えた と され る。2009年2月 こ ろか ら逮 捕 され る まで と少 女の 体 に触 り、下 着 な ど を奪 い 取 るな ど性 犯 罪 を繰 り返 した 。7件 の 性 犯 罪(強 姦 致 傷 及 び 強 制 わ い せ つ 致 傷)の 容 疑 につ い て 併 合 審 理 で 裁 か れ る こ と に な った 。 この 事 件 は 、 当初 、鹿 児 島地 裁 で の 裁 判 員 裁 判 第1号 にな るか も しれ な い と 予 想 され 、 新 聞 等 で 大 き く報 道 され た 。 被 告 人 は2009年4月30日 に 逮 捕 され 、6月17日 に再 逮 捕 され た。12月24日 に 公 判 前 整 理 手 続 が 開 始 され た 。 裁 判 員 の 選 出 は公 判 前 日の2010年4月19日 に行 わ れ た 。 性 犯 罪 とい うこ と も あ り、 選 任 手 続 きで は裁 判 員 候 補 者 に これ ま で よ り多 くの 質 問 が な され 、 同 じ 自治 体 に居 住 す る な ど事 件 に 関係 す る人 を除 く作 業 が 行 わ れ た 。 新 聞 報 道 に よ る と、 「事件 を知 っ て い るか 」 とい う従 来 の 質 問項 目に加 えて 、 事件 とか か わ りの あ る 自治 体 名 を複 数 挙 げ 、① 裁 判 員 候 補 者 本 人 ・家 族 が そ の 自治 体 内 の 学 校 に通 学 して い た こ とが あ るか 、 ② 通 学 した 場 合 、 そ の 学 校 名 は 、 な どの 質 問

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項 目が加 え られ た。 裁判 長 に よ る個 別 質 問 も29人 に及 ん だ。 ま た 、弁護 人 は 「被 害者 の 方 と同 じ生活 圏 内 、接 点 が あ りそ うな 方 に 対 して は 不選 任 請求 の権 利 を 行 使 した 」 と述 べ て い る。 選 出 され た 裁 判 員 は 男性2人 、 女性4人 。 補 充裁 判員 は男 性1人 、 女性2人 。 裁 判 員裁 判 で は じめ て被 害者 参 加 制度 が適 用 され 、被 害者 の代 理 人 弁 護 士 が 出席 した。 4月20日 開 廷(起 訴 事 実 を認 容) 弁護 人 は 、1人 を除 く被 害 者 に合 計100万 円 の被 害 弁償 を し、被 害者1人 との 示 談 が成 立 した と して情 状 酌 量 を 強調 した。 取 り調 べ 映 像 のDVDを 弁 護 側 が 証 拠 申 請 し、 裁 判 所 が 採 用 して 上 映 した (4月21日)。 鹿 児 島 県警 は2009年4月 か ら、裁 判 員 裁 判 の対 象 事 件 に つ い て取 り調 べ の 一 部録 音 。 録 画 を試 行 して い る。 4月22日 求 刑(懲 役15年) 弁護 側 は 、被 害 者 に 謝 罪 の 手 紙 も送 り、被 害 弁 償 の 一 部 と して6人 に合 計 100万 円 を支 払 い 、1人 とは 示 談 も成 立 した 、家 族 と交 際 中 の女 性 の存 在 は 更生 の 支 え とな る の で 、 寛 大 な処 分 を して い た だ き た い と主 張 した。 4月28日 判 決(懲 役14年) (紙面 に掲 載 され た 判 決 要 旨か ら抜 粋)性 的欲 望 を満 足 させ た い と い う身 勝 手 で卑 劣 な犯 行 。 カッ ター ナ イ フ な どの 道 具 を用 意 し、短 期 間 に犯 行 を重 ね悪 質性 は 際 立 つ。 被 害者 家 族 が 苦 しい 心情 や 処 罰 感 情 を証 言 し、被 害者 の 屈辱 感 な ど肉 体 的 、精 神 的 苦痛 が 大 き い こ とは 明 らか だ。 健 全 な成 長 の 阻 害 が懸 念 さ れ る被 害者 もい る。 屈辱 的 な行 為 を した後 、 早 く立 ち去 る よ うに命 令 す る な ど 恐 怖 心 を さ らに 大 き く した 言動 も軽 視 で き な い。 しか し、根 深 い ゆ が ん だ性 癖 の持 ち 主 とま で は 断 定 で き な い。 法 廷 で 弁解 せ ず 謝 罪 す る な ど反 省 の態 度 が認 め られ る。 帰 りを待 つ家 族 も お り更 生 の 可能 性 が あ る。 懲 役14年 の刑 が相 当 と 判 断 した。 【裁判 員 の 感 想 】「複 雑 で 難 しか った 。」「当初 は裁 判 員対 象 は よ い とは 思 わ な か っ た が 、 被 害 者 へ の配 慮 もあ った 。 市 民 が 裁 く こ とに 今 は 賛 成 。」 取 り調 べ 映像 のDVDの 視 聴 に つ い て 「量 刑 に関 係 な か った 」「被 告 が 反省 して い る と思 った 」 「様 々な 証 拠 の 一つ 」

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■ 【判 決7】 麻 薬 特 例 法 違 反 罪 ・大 麻 取 締 法 違 反 事 件(男 性A・52歳 、 男 性B・ 35歳 、 男 性C・35歳 、 男 性D・33歳) Aら は 共 謀 、 営 利 目的 で2009年4月 中 旬 ∼7月5日 、 鹿 児 島 市 内 で 大 麻 草 を 栽 培 し、 乾 燥 大 麻 草 片 を 売 り渡 す な ど し た 容 疑 で 起 訴 さ れ た 。 主 犯 格 のAは 暴 力 団 幹 部 だ っ た 。 暴 力 団 構 成 員 が 関 係 す る 事 案 だ と い う こ と で 、 法 廷 に は 防 弾 パ ネ ル 、 傍 聴 入 り 口 に は 金 属 探 知 機 が 設 置 さ れ た 。 裁 判 員6人(男 性3人 、女 性3人)、 補 助 裁 判 員2人(女 性2人)が 選 出 され た 。 6月2日 開 廷(起 訴 事 実 を 認 容) 6月7日 求 刑(A=懲 役10年 、 罰 金200万 円 、B、C、D=懲 役8年 、 罰 金 150万 円) 6月9日 判 決(A=懲 役8年 と 罰 金200万 円 、B、C=懲 役6年6月 と罰 金 150万 円 、D=懲 役5年 と 罰 金100万 円 。4人 に は 計 約130万 円 の 追 徴 金 も課 さ れ た.) 判 決 は 「巧 妙 な 組 織 的 犯 罪 」 「密 売 先 に 暴 力 団 関 係 者 も い る 。 大 麻 の 社 会 へ の ま ん 延 防 止 と い う観 点 か ら も 、 厳 し い 態 度 で 臨 む べ き 」 と 述 べ た 。 【裁 判 員 の 感 想 】 暴 力 団 員 を 裁 い た こ と に つ い て 「目 を 見 な い よ う心 掛 け て い た が 、 途 中 か ら 恐 怖 心 は な く な っ た 」 「遠 い 存 在 と思 っ て い た 大 麻 が 身 近 に あ る こ と に 危 機 感 を 覚 え た 」。 ■ 【判 決8】 住 居 侵 入 及 び 強 盗 傷 害 事 件(男 性A・36歳 、男 性B・26歳 、男 性C・ 26歳) 2009年4月17日 午 後11時 半 頃 、 被 告 人 は 男 性 宅 に 侵 入 し 、 男 性 の 手 足 を 手 錠 で し ば り 、 頭 や 胸 を こ ぶ しで 複 数 回 な ぐ る な ど し て 、 肋 骨 骨 折 な ど 全 治40日 間 の 重 傷 を 負 わ せ た う え 、 大 型 バ イ ク な ど174点(時 価 約424万 円 相 当)を 奪 っ た 容 疑 で 起 訴 さ れ た 。 被 告 人 ら は 暴 力 団 組 員 だ っ た 。2010年3月12日 に 公判 前 整 理 手 続 き が 開 始 さ れ た 。 裁 判 員6人(男 性2人 、女 性4人)、 補 助 裁 判 員2人(女 性2人)が 選 出 され た 。 6月14日 開 廷(起 訴 事 実 を 認 容) 公 判 の 中 で 弁 護 人 が モ ニ タ ー に 量 刑 判 断 の 表 を 写 し た と こ ろ 、 裁 判 員 を 誘 導 して い る と して 、 裁 判 長 が 弁 護 人 を 制止 し た 。

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6月16日 求 刑(A=懲 役10年 、B、C=懲 役7年) 6月18日 判 決(A=懲 役7年 、B、C=懲 役4年) 判 決 は 、 覚 醒 剤 を取 り扱 って い た被 害 者 の 弱 み につ け こん だ 計 画 的犯 行 で 、 結 果 も重 大 だ と述 べ る 一方 、B、Cに つ い て は被 害者 が 寛 大 な処 分 を希 望 して い る こ とを配 慮 した と した。 ■ 【判 決9】 殺 人 事 件(女 性 ・50歳) 被 告 人 は2009年7月23日 、 同 市 の谷 山 港岸 壁 に駐 車 中 の 車 内 で 、同居 して い た 父(当 時76歳)の 腹 部 を包 丁 で刺 し、殺 害 した容 疑 で起 訴 され た。 裁 判員 は 男性4人 、 女性2人 、補 充裁 判員 は 男 女 各1人 だ っ た。5日 付 で補 充裁 判 員 の 男性 が解 任 され た。 6月29日 開 廷(起 訴 内容 を 一 部否 認) 7月10求 刑(懲 役10年) 弁護 人 は 一 部 否 認 して 、承 諾 殺 人罪 の成 立 を 主 張 した。 7月8日 判 決(懲 役9年) 判決 は 「父親 は 認知 症 の影 響 か ら死 の 意 味 を理 解 で き る状 況 に な く、被 告 も 承 諾 す る こ とが で き な い状 態 で あ る こ とは知 っ て い た 」 と承 諾 殺 人 罪 の成 立 を 否 定 し、 犯 行 に一 定 の 計 画 性 を認 め 、 「無 抵 抗 な 父 親 を一 気 に刺 し殺 した非 常 に悪 質 な犯 行 」 「(被告 は)状 況 を都 合 よ く解 釈 す る傾 向 が あ り、反省 が 不 十 分 」 と指 摘 した。 【裁判 員 の 感 想 】 「認 知 症 の母 を 思 い 出 した 」(60代 の 男 性) 【控 訴 審 】被 告 人 は7月14日 に福 岡 高 裁 宮 崎 支 部 に 控 訴 した。 福 岡 高 裁 宮 崎 支 部(榎 本 巧 裁判 長)は2011年1月20日 、懲 役9年 と した鹿 児 島地 裁 裁 判 員 裁 判 判決 を 「量刑 判 断 が誤 っ て お り重 す ぎ る 」 と破 棄 し、 あ らた め て懲 役7年 を言 い渡 した。鹿 児 島 地 裁 で の 裁 判 員 裁 判 判 決 が破 棄 され た 初 めて の 事 例 とな った 。 控 訴 審 判決 は 、 父 が 認知 症 だ っ た こ とな どを理 由 に承 諾 殺 人罪 の成 立 は否 定 した。 そ の上 で 、 父 と被 告 人 の 間 に は特 別 な愛 情 が認 め られ る が 、 一審 判 決 で は検 討 され た形 跡 が な い と指 摘 し、父子 関係 や 、犯 行 に 至 る ま で被 告 が置 かれ た状 況 、精 神 状 態 な どを適 切 に 考慮 して お らず 、 量刑 判 断 は誤 り と判 断 した。

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■ 【判 決10】 殺 人 事 件(男 性 ・25歳) 2010年1月1日 、 曽於 市 財 部町 北 俣 の 自宅 で 父 親 を殺 害 した と して 、 同居 す る息 子 が 殺 人 罪 に問 わ れ た 。 被 告 人 は1月1日 午 後8時 半 ご ろ、 父 親(当 時60 歳)の 頭 部 を金 槌 で 殴 り、 ダ ンベ ル を頭 な ど にた た きつ けた 上 、 刃 渡 り約17セ ンチ の 包 丁 で 数 回 背 中 を刺 す な ど して 殺 害 した 容 疑 で 起 訴 され た 。 裁 判 員6人(男 性2人 、 女性4人)、 補 助 裁 判 員2人 の うち1人 は選 任 直 後 に解 任 され 、 午 後 の 公 判 に は参 加 せ ず 男 性1人 が 選 出 され た 。 7月13日 開 廷(起 訴 事実 を認 容) 7月14日 求刑(懲 役13年) 弁 護 人 は懲 役5年 が 相 当 と主 張 。 7月15日 判 決(懲 役11年) 判 決 は 「動機 が 身 勝 手 で 短 絡 的 」 「強 固 な殺 意 に基 づ く残 忍 な犯 行 」 と指 摘 、 酒 に酔 い 家 族 に暴 力 をふ る う父 親 を幼 い こ ろか ら見 て きた こ と に 同情 の 余 地 が あ る と しなが ら も、「父 親 と話 し合 うな ど 事態 を改 善 す る手 段 は い く らで も あ っ た 」 と指 摘 した 。 ■ 【判 決11】 殺 人 事 件(男 性 ・56歳) 2009年11月11日 、 被 告 人 は 自宅 で 、 交 際 して い た 同市 内 の スナ ッ ク経 営 女性 (当 時61歳)の 左 胸 を 刃 渡 り約21セ ンチ の 差 し身 包 丁 で 刺 し、 殺 害 した容 疑 で 起 訴 され た 。 裁判 員6人(男 性2人 、女 性4人)、 補 助 裁 判 員2人(男 性1人 、女 性1人) が 選 出 され た 。 7月21日 開 廷(起 訴 事 実 を一 部 否 認) 被 告 人 は殺 す 意 図 は なか った と主 張 した 。 7月24日 求刑(懲 役15年) 弁 護 人 は、 傷 害 致 死 罪 が 妥 当す る と して 懲 役5年 が 相 当 と主 張 。 7月280判 決(懲 役12年) 判 決 は 「傷 は ろ っ骨 を切 断 して 心 臓 を貫 通 して お り、 相 当の力 を込 めて 包 丁 を突 き 出 した とみ る の が 自然 」 と傷 害 致 死罪 の 成 立 を否 定。 「犯 行 に及 ん だ 経 緯 や 動機 に酌 む べ き と こ ろ は少 ない 」 と指 摘 した 。

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【裁 判 員 の感 想 】 証 拠 と して 示 され た 被 害 者 の 傷[の 写 真 に っ い て 「証 拠 物 件 な の で 見 ざる を得 な い 」 と話 した。 ■ 【判 決12】 強 盗 致 傷 ・住 居 侵 入 事 件(男 性 ・45歳) 判 決8と 同 じ事 件 。 被 告 人 は 元暴 力 団員 ら と共謀 し、2009年4月17日 、 曽於 市 の 男性(54歳)に 暴 行 を加 え 、 覚せ い剤 な どの 金 品 を 奪 うよ う指 示 した容 疑 で起 訴 され た。 被 告 人 は指 定暴 力 団 元組 員。 裁 判員6人(男 性2人 、女 性4人)、 補 助 裁 判 員2人(女 性2人)が 選出 され た 。 8月25日 開 廷(起 訴 事 実 を否 認) 被 告 人 は 、集 団 強 盗 の指 示 役 で あ る とす る検 察官 の 主 張 を否 定 した。 8月27日 求刑(懲 役12年) 9月1日 判決(懲 役8年) 判 決 は 、指 示 され た との 共犯 者 の証 言は 、被 害者 の証 言 とも 一致 し信 用 で き る と被 告 の 主 張 を 否 定 し、 共犯 者 に犯 行 を提 案 し被 害者 の情 報 を提 供す る な ど 首謀 者 的 な役 割 を果 た した 、 と指 摘 した。 【裁 判 員 の感 想 】 被 告 人 が無 罪 を主 張 して い た 点 に つ い て 「検 察 官 の 証 拠 を も とに 全 員 で決 め た 」 と話 した。 ■ 【判 決13】 強 姦 致 傷 事 件(男 性 ・51歳) 2009年11月30日 に 、 女性 に 乱暴 しよ う と して 、 け が を負 わせ た容 疑 で 起訴 さ れ た。 裁 判 員6人(男 性4人 、 女 性2人)、 補 助 裁 判 員2人(男 女 そ れ ぞ れ1人) が選 出 され た。 9月6日 開 廷(起 訴 事実 を 認容) 9月7日 求刑(懲 役5年) 弁護 人 は 、 弁 護 側 は 、飲 酒 した 上 で の犯 行 で 計画 性 は な く、 示 談 も成 立 し、 被 告 人 が反 省 し、母 親 も 更 生 を約 束 して い る と して懲 役3年 執 行 猶 予5年 が相 当 と主 張 した。 9月8日 判 決(懲 役3年 執 行 猶 予5年) 判 決 は 、 犯 行 内 容 は 悪 質 で 、 被 害 者 の 精 神 的 被 害 は 重 大 だ が 、 逮 捕 か ら

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約9ヶ月 身 柄 を拘 束 され る 中で 反 省 し、 母 親 が 支 えて い く と述 べ るな ど更 生 の 環 境 が あ る程 度 整 って い る、 と した 。 【裁判 員 の 感 想 】性 犯 罪 を裁 い た点 に つ い て 「感 情 に流 され な い よ うに判 断 す るの が 難 しか った 」 と話 した 。 ■ 【判 決14】 強 盗 致 傷 及 び住 居 侵 入 事 件(男 性 ・56歳) 2010年5月110午 後7時 半 ご ろ、鹿 児 島 市 の た ば こ店 玄 関 土 間 で 、 女 性 店 主 (80歳)に 借 金 を 申 し込 ん だ が 断 られ た た め、 金 を奪 お うと女 性 の首 を 手 で 絞 めて10日 間 の けが を負 わ せ た 容 疑 で 起 訴 され た 。 裁 判 員6人(男 性3人 、女性3人)、 補 助 裁 判 員2人(男 性2人)が 選 出 され た。 9月27日 開 廷(起 訴 事 実 を認 容) 9月28日 求 刑(懲 役8年) 弁 護 人 は被 害 者 の けが の 程 度 は軽 く、 反 省 して い る と して 懲 役7年 が 相 当 と 主 張 。 9月29日 判 決(懲 役8年) 判 決 は、 手 で 首 を絞 め る危 険 な犯 行 で 、 再 犯 も懸 念 され る、 と した 。 【裁 判 員 の感 想 】長 期 間 に わ た る こ とが 予 想 され る 【判 決18】 の よ うな裁 判 員 裁 判 の 日程 に つ い て 「会 社 や 育 児 な どが あ り、 非 現 実 的 な 日数 だ 」 「長す ぎて 精 神 的 に もた ない 。 考 慮 す る余 地 が あ る」 と話 した 。 ■ 【判 決15】 殺 人未 遂 事 件(男 性 ・59歳) 2010年2月24日 夜 、 徳 之 島の 自宅 で 近 くの 男 性 の 胸 や 腹 な ど を包 丁 で 数 回 刺 し、約1ヶ 月 の けが を負 わ せ た 容 疑 で 起 訴 され た 。 裁 判 員6人(男 性5人 、 女性1人)、 補 助 裁 判 員2人(男 女1人 ず つ)が 選 出 され た 。 10月12日 開 廷(起 訴 事実 を認 容) 10月130求 刑(懲 役6年) 弁護 人 は計 画 性 の ない 、 偶 発 的 な 犯 罪 だ と して 執 行 猶 予 付 き判 決 を求 めた 。 10月14日 判 決(懲 役3年 執 行 猶 予5年) 判 決 は、 胸 周 辺 を何 度 も しつ こ く突 き刺 す な ど危 険 で 悪 質 な 犯 行 だ が 偶 発 的

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な犯 行 で 、 兄 が今 後 監督 を誓 うな ど更 生 の環 境 が整 っ て い る と して 、執 行 猶 予 をつ け た。 ■ 【判 決16】 強 姦 致 傷 事 件(男 性 ・35歳) 女 性 に 乱暴 し、 け が を 負 わ せ た容 疑 で 起 訴 され た。 裁判 員6人(男 性5人 、 女性1人)、 補 助 裁 判 員2人(男 女1人 ず つ)が 選 出 され た 。 10月18日 開 廷(起 訴 事 実 を認 容) 被 害者参加 制 度 が適 用 され 、被 害者 の代 理 人 が 出席 し、19日 に 「精 神 的 に傷 を負 い 、 苦 しん で い る。 普 通 の 生活 を返 して くだ さい。」 と意 見 陳 述 した 。 10月19日 求 刑(懲 役7年) 弁 護 人 は 、酒 と睡 眠薬 の 強 い 影響 で犯 行 を行 っ た が 、十 分 に反 省 して い る と して懲 役3年 が相 当 と主 張。 10月20日 判 決(懲 役7年)。 判 決 は 、被 害 者 が 負 った 肉体 的 、精 神 的 苦痛 は 大 き く、結 果 は 重 大 と指 摘 した 。 【裁判 員 の 感 想 】 「中 立 的 な 立場 で判 断 で き た。 司法 に興 味 が で て き た 」 ■ 【判 決17】 逮 捕 監 禁 致 死 及 び 死 体 遺 棄 事 件(男 性A・48歳) 被 告 人Aは 被 告 人B(50歳)と 共謀 し、2009年5月30日 朝 、屋 久 島 の会 社 社 長(当 時73歳)を か ば ん に押 し込 み 、 監禁 し、 車の トラ ン ク の 中 で同日 夕 ま で に 死 亡 させ 、6月2日 ご ろ遺 体 を栃 木 県 の小 学 校 跡 地 の古 井 戸 に遺 棄 した容 疑 で起 訴 され た。 犯 行 を 否 認 す る被 告 人Bは 公 判 を 分 離 され 、9月14日 に第1回 公 判 前 整 理 手 続 き が行 われ 、2012年2月13日 に公 判 が 開 廷 され る 予 定 に な っ て い る。 裁 判員6人 、補 助 裁 判員2人 が選 出 され た。 全 員 が 女性 だ っ た。 裁 判 で は被 害者 参 加 制度 が適 用 され 、被 害者 の社 長 の遺 族 が 出 廷 し、検 察官 の横 に着 席 した。 10月25日 開 廷(起 訴 事 実 を認 容) 冒頭 陳述 で検 察官 は 「社 長 か ら金 を 引 き 出 そ う と、架 空 の会 社 を つ くっ て 土 地 を 高値 で 売 り さば く話 を持 ち掛 け た が は ぐ らか され 、 ナ イ フ で脅 して も 言 う こ とを 聞 か な か っ た た め 監 禁 した 」 と指 摘 した。 否 認 を続 け る 共犯 の被 告 人B

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を主 に運 転 手 役 だ った と位 置 づ けた 。 10月27日 求 刑(懲 役15年) 弁 護 人 は 、死 亡 は予 想 して い なか った 、 死 体 を遺 棄 した 後 に思 い 悩 み 、鹿 児 島県 警 に電 報 を打 って 犯 行 を 自供 して い る と情 状 酌 量 を求 めた 。 10月29日 判 決(懲 役14年) 判 決 は、 全 身 を ロー プ な どで 縛 り、 肉体 的 ・精 神 的 苦 痛 を与 えて 死 亡 させ た 結 果 は主 犯 と して 相 当重 い と しつつ 、 自供 で 事 件 が 解 明 され 、 反 省 の 態 度 も示 して い る と して 、 情 状 酌 量 を認 めた 。 【裁 判 員 の感 想 】 「最 初 は人 を裁 く こ と に恐 怖感 も あ った 」 ■ 【判 決18】 老 夫婦 強 盗 殺 人 事 件(男 性 ・71歳) 2009年6月19日 朝、 鹿 児 島市 南 部 に住 むAさ ん(当 時91歳)と そ の 妻Bさ ん が 自宅 寝 室 で 頭 か ら血 を流 して い るの を家 族 が 発 見 し、 警 察 に通 報 した 。 部 屋 に は物 色 の 後 が あ った 。 事件 後10日 後 、 警 察 は 、 現 場 に残 され た 指 掌 紋 か ら被 告 人 を割 り出 し、強 盗殺 人 の容 疑 で逮 捕 した 。被 告 人 は一 貫 して 犯行 を否 認 した。 2010年5月10日 に 第1回 公 判 前 整 理 手 続 き が 行 わ れ 、8月25日 に鹿 児 島 地 裁 が 公 判 期 日を決 定 した 。 判 決 まで40日 間 が 予 定 され 、 裁判 員 裁判 で は 当時 は 全 国 最 長 とな っ た 。 鹿 児 島地 裁 は 候 補 者 名 簿 か ら450人 を 無 作 為 抽 出 し、調 査 票 に よ り辞 退 を 申 し出 た人 を 除 い て 、 これ ま で に 最 も多 い295人 に呼 び 出 し状 を 送 っ た。 呼 び 出 し状 に 同 封 した 質 問 状 に よ り 「他 人 が 代 わ る こ との で き な い 重 要 な仕 事 」 「病 気 」 「育 児 」 な ど を理 由 に 辞 退 を 申 し出 た 人 が216人 、 呼 び 出 し状 が 届 か な か っ た 人 が33人 。 最 終 的 に 裁 判 所 が 出席 を求 め た 人 数46人 、 欠 席 が12人(出 席 率73.9%)。 そ こ で 、34人 の 中 か ら裁 判 員6人(男 性4人 、 女 性2人)、 補 助 裁 判 員4人(男 女2人 ず つ)が1日 午 後 に選 出 され た。 11月2日 開 廷((起 訴 事 実 を否 認 、 無罪 を 主 張) 被 告 人 は 「現 場 に行 って い な い」 と全 面 否 認 し、 無 罪 を主 張 した 。 審 理 で は裁 判 員 が 凶器 に見 入 り、 割 れ た 窓 を手 に検 察 官 が 説 明 した 。 遺 族 が 涙 なが ら に 「顔 中血 だ らけ の父 、正 視 で きず 」と証 言 した(11月4日)。 検 察 官 は 、 犯 行 現 場 か ら採 取 され たDNAが 被 告 の もの で あ る と主 張 した が 、 弁 護 側 は 捜 査 不 十 分 で あ る と主 張 した(11月10日)。 検 察 官 は指 ・掌 紋11点 を証 拠 と して

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あ げ 、犯 行 現 場 に残 され た もの と被 告 人 の指 ・掌 紋 が 一 致 して い る と主 張 した 。 弁護 人 は 転 写 で は な い か と疑 問 を提 示 した(11月11日)。 裁 判 員 が疲 労 して い る と して 証 人 尋 問 が 延 期 され た(11月12日)。 被 告 人 質 問。 裁 判 員 か ら被 告 人 に対 して 直接 の質 問 は な か っ た(11月16日)。 11月17日 求刑(死 刑) 弁護 人 は無 罪 を最 終 陳述 した。11月18日 か ら評 議 が始 ま り、12月1日 に は補 充 裁判 員1人 を解 任 した。 12月10日 判 決(無 罪) (判決 か ら抜 粋) 「3ま と め 以上 の検 討 に よれ ば,情 況証 拠 に よ っ て認 定 で き る 間接 事 実 の うち,被 告 人 と犯 人 とを結 び付 け る方 向 に働 くも の と して は,被 告 人 が,〔1〕 過 去 に本 件 網 戸 に触 っ た こ とが あ る こ と,〔2〕 過 去 に本 件 窓 ガ ラ ス の外 側 に触 っ た こ とが あ る こ と,〔3〕過 去 に被 害 者 方 に立 入 り,本件 整 理 だ んす や パ ン フ レ ッ ト類 に触 っ た こ とが あ る こ と,〔4〕 被 害者 方 に行 っ た こ とが な い 旨事 実 に反 す る供 述 を し て い る こ と に と どま る と ころ,〔1〕 な い し 〔3〕の 事実 は,い ず れ も単 独 で は も とよ り,そ れ ら を総 合 して も被 告 人 が 犯 人 で あ る との推 認 には 遠 く及 ば な い 。 む しろ,本 件 の情 況 証 拠 の 中 に は,被 告 人 の犯 人性 を否 定す る 事情 が 多 々 認 め られ る こ とは前 述 の とお りで あ る。そ して,こ の よ うに 客観 的 な事 実 関係 に よ っ て犯 人性 が 強 く疑 われ な い 以 上,た とえ被 告 人 が重 要 な 事実 につ い て 事実 に反 す る虚 偽 の供 述 を して い る と して も,虚 偽 の供 述 をす る理 中 に つ い て は い ろ い ろ 考 え られ る か ら,そ の こ とを もっ て犯 人性 が 強 く推 認 され る とは到 底 い え な い.結 局,本 件 に お い て は,情 況証 拠 に よ っ て認 め られ る 間接 事 実 の 中 に,被 告 人 が犯 人 で な けれ ば合 理 的 に 説 明す る こ とが で き な い(あ る い は,少 な く と も説 明 が極 め て 困難 で あ る)事 実 関係 が含 まれ て い な い とい うほ か な い(な お, 被 告 人 に は,被 害 者 方 へ の 住 居 侵 入,窃 盗 未 遂 罪 が成 立 す る可 能 性 が あ るが, 当該 犯 行 が公 訴 事 実 の 口時 に行 われ た も の で あ る と認 め る に足 りる根 拠 が な い 以 上,本 件 訴 因 に よ っ て,こ の 点 に つ い て の み被 告 人 を有 罪 とす る こ とも で き な い。)。

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第4結 論 以 上 の とお り,様 々 な点 を検 討 した が,本 件 程 度 の 情 況 証 拠 を も って 被 告 人 を犯 人 と認 定 す る こ と は,刑 事 裁 判 の鉄 則 で あ る 「疑 わ しき は被 告 人 の利 益 に」 とい う原 則 に照 ら して 許 され ない とい うべ きで あ って,結 局,犯 罪 の 証 明 が な い こ と に帰 す るか ら,刑 事 訴 訟 法336条 に よ り,無 罪 の 言渡 しをす る。」 判 決 の 後 、12月22日 に鹿 児 島地 検 が判 決 に誤 りが あ る と して 福 岡 高 裁 宮 崎 支 部 に控 訴 した 。 一 方 、 県 警 本 部 は、 改 めて 現 場 を再 捜 査 した 。2011年4月28日 に控 訴 趣 意 書 が 福 岡高 裁 宮 崎 支 部 に提 出 され た 。 しか し、2012年3月10日 に被 告 人 が 死 亡 し、3月27日 付 で 公 訴 棄 却 とな った 。 2011年 ■ 【判 決19】 殺 人 事 件(女 性 ・24歳) 薩 摩 川 内市 の 自宅 で2009年8月 、父 親(当 時50歳)を 包 丁 で刺 殺 した と して 、 長 女 が 殺 人 罪 に問 わ れ た 。 1月24日 開 廷(起 訴 事実 を一 部否 認) 被 告 人 は殺 意 を否 定 した 。 審 理 で は、 殺 意 の 有 無 な どが 争 点 とな った 。 1月260求 刑(懲 役10年) 弁護 人 は、 もみ 合 って い る最 中 に刺 さ った 可 能 性 が あ り、 殺 意 は 見 い だ せ な い 、発 達 障 害 が 犯 行 に 与え た 影 響 も あ り、母 親 も処 罰 を求 め て い な い と して 、 傷 害 致 死 罪 の 適 用 を主 張 し、 執 行 猶 予 付 の 判 決 を求 めた 。 1月28日 判 決(懲 役7年) 判 決 は、 至 近 距 離 か ら左 胸 に 向 けて ま っす ぐ に肋 骨(ろ っ こつ)を 切 断 す る ほ どの 勢 いで 振 り下 ろ した 事 実 が 認 め られ る と して 殺 意 を認 定 し、 傷 害 致 死 罪 の 適 用 を 求 め る弁 護 側 の 主 張 を退 け た。 一 方 、(父 親 に 取 り上 げ られ た)携 帯 電 話 を身 体 の 一 部 の よ うに大 切 に思 って 強 く こだ わ り、 返 して ほ しい とい う感 情 をエ スカ レー トさせ 衝 動 的 に犯 行 に及 ん だ もの で あ り、 動機 面 で 情 状 酌 量 で き 、被 告 人 は反 省 し、更 生 しよ うとす る気 持 ちが 深 ま りつ つ あ る と も認 め られ る と した 。

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■ 【判 決20】 強 盗 傷 害 罪 事 件(男 性 ・45歳) 2010年1月5日 、入 院 中 に病 棟 出入 り 口の鍵 を 奪 お う と、看 護 助 手 の顔 を 殴 る な ど して 、顔 面骨 折 な ど約2ヶ 月 の け が を負 わせ た容 疑 で起 訴 され た。 審理 の途 中 で 、補 充 裁 判 員 が 意識 を失 った よ うに倒 れ るハ プ ニ ン グが あ った 。 再 開後 に解 任 され た。 2月2日 開 廷(起 訴 事実 を 認容) 2月3日 求 刑(懲 役5年) 弁護 人 は 、何 度 も外 泊 を 申 し出 た が 不許 可 に な り、精 神 的 の 追 い込 まれ て い た 、被 害 弁 償 も行 っ て お り、支 援 す る家 族 もい る と して執 行 猶 予 付 判 決 を求 め た。 2月4日 判 決(懲 役3年 保 護 観 察付 き執 行 猶 予5年) 判決 は 、個 人 的 に 落 ち度 の な い 女性 を 一方 的 に 殴 っ て お り悪 質 と しつつ 、病 院側 の対 応 が十 分 で な か っ た こ とが犯 行 を誘 発 した 面 も否 定 で きず 、同 情 の余 地 が あ る と指 摘 した。 ■ 【判 決21】 殺 人 事 件(女 性 ・40歳) 鹿 屋 市 の 自宅 で2009年11月 、母 親(当 時64)の 首 を タオル で絞 め て殺 した と して殺 人罪 に 問 われ た。 2月15日 開 廷(起 訴 事 実 を 一部 否 認) 被 告 人 は 「殺 意 な か っ た 」 と主 張 し、弁護 人 は 承 諾 殺 人 罪 の 適 用 を主 張 した 。 2月18日 求 刑(懲 役5年) 弁護 側 は 、被 告 人 も母 親 も将 来 の 生活 を 悲観 し、母 親 が 意識 的 に抵 抗 した形 跡 は な い 、 自首 も して い る 、遺 族 の処 罰 感 情 もな い と して 、執 行 猶 予付 き判 決 を求 め た。 2月24日 判 決(懲 役3年6カ 月) 判決 は 、 心 中 に 同 意す る ほ ど差 し迫 っ た状 況 は な く、被 害者 は被 告 人 に 乗 り か か られ て抵 抗 が 困難 とも 考 え られ る と して承 諾 殺 人 罪 の適 用 を退 け た。 【控 訴 審 】 同 年6月16日 に福 岡 高 裁 宮 崎 支 部 は 、 気 の 強 い 実母 の性 格 上 、殺 害 され る こ とを承 諾 して い な か っ た し、被 告 は承 諾 を誤 信 して い な か っ た と推 測 で き る と して 、被 告 人 の控 訴 を棄 却 した。

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■ 【判 決22】 強 姦 致 傷 及 び 大 麻 取 締 法 違 反 事 件(男 性 ・27歳) 2010年8月21日 夜 に 、 女 性 を 脅 して 乱 暴 し、 さ ら に 車 に 乗 せ て 乱 暴 し、 け が を 負 わ せ た 。 ま た 車 内 に 大 麻0.64グ ラ ム を も っ て い た 容 疑 で 起 訴 さ れ た 。 2月28日 開 廷(起 訴 事 実 を 認 容) 3月1日 求 刑(懲 役8年) 弁 護 人 は 、 深 く 反 省 し、 会 社 を 解 雇 さ れ る な ど 社 会 的 制 裁 も 受 け て い る と し て 、 懲 役4年 程 度 が 相 当 と 主 張 した 。 3月3日 判 決(懲 役7年) 判 決 は 、 首 を 絞 め 、 脅 迫 し な が ら 犯 行 に 及 ぶ な ど 卑 劣 で 悪 質 、 女 性 の 生 活 は 一 変 し 、 精 神 的 に 苦 しん で い る な ど 被 害 は 重 大 と し た 。 ■ 【判 決23】 強 制 わ い せ つ 致 傷 事 件(男 性 ・26歳) 2010年9月10日 夜 、 自 転 車 に 乗 っ た 少 女 を 押 し倒 し、 わ い せつ な 行 為 を し よ う と して け が を 負 わ せ た 容 疑 で 起 訴 さ れ た 。 3月14日 開 廷(起 訴 事 実 を 認 容) 3月15日 求 刑(懲 役3年) 弁 護 人 は 計 画 的 な 犯 行 で は な く 、 積 極 的 に 傷 つ け る 意 思 は な か っ た と主 張 。 酒 の 影 響 で 判 断 能 力 が 低下 して い た 。 謝 罪 文 も 書 い て い る と し て 、 執 行 猶 予 付 判 決 を 求 め た 。 3月16日 判 決(懲 役2年6ヶ 月 執 行 猶 予5年) 判 決 は 、 身 勝 手 で 危 険 な 犯 行 で 、 被 害 者 の 受 け た 精 神 的 苦 痛 は 大 き い が 、 わ い せ つ 行 為 は 未 遂 に 終 わ り、 反 省 も し て い る 、 と 指 摘 し た 。 ■ 【判 決24】 現 住 建 造 物 放 火 事 件(男 性 ・51歳) 2010年10月14日 自 宅 縁 側 付 近 の 畳 に 灯 油 を ま い て 、 ラ イ タ ー で 火 を つ け 、 畳 や 敷 居 を 燃 や した 容 疑 で 起 訴 さ れ た 。 4月190開 廷(起 訴 事 実 を 認 容) 弁 護 人 は 、 仕 事 が な く 、 ス ト レ ス が た ま っ た 末 の 突 発 的 犯 行 と 主 張 。 4月20日 求 刑(懲 役4年) 4月21日 判 決(懲 役3年 執 行 猶 予5年)

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判 決 は 、 自宅 に 灯 油 を ま い て火 を放 っ た の は危 険 な犯 行 だ が 、焼 け た の は一 部 で 、反 省 の態 度 も示 して い る と指 摘 して 、執 行 猶 予 を 認 め た。 ■ 【判 決25】 強 盗 致 傷 事 件(男 性A・20歳 、 男 性B・20歳) 被 告 人 らは3人 で2010年11月7日 午前2時5分 及 び15分 ころ 、鹿 児 島 大 学前 路 上 と学 内駐 輪 場 で 、 大 学 生2人 に暴 行 しけ が を お わせ 、バ ッグ を 奪 っ た容 疑 で起 訴 され た。 5月23日 開 廷(起 訴 事実 を 認容) 弁 護 人 は 、 も う1人 の共 犯 者 で あ る少年Cは 、少 年 院 送致 の保 護 処分 とな っ た の で、 同 じ犯 行 に かか わ った もの に刑 で差 をつ け る のは 妥 当で な い と主 張 した。 5月25日 求刑(懲 役6年) 弁護 人 は 、被 告 人 は成 人 に な っ た ば か りで 、 実質 的 に少 年 で あ り、 両親 が監 督 を誓 約 して お り、社 会 内 で の 更 生 が 可能 で あ る と執 行 猶 予付 判 決 を求 め た。 5月27日 判 決(A,B=懲 役3年6カ 月) 判 決 は 、 うっぷ ん 晴 ら しの 側 面 が 強 く、 強 盗 の側 面 は 強 い もの で は な い が 、 執 拗 に暴 力 を ふ る っ た卑 劣 な犯 行 と して 、 実刑 に処 した。 ■ 【判 決26】 強 姦 致 傷 及 び 強 制 わ いせ つ 罪 事 件(男 性 ・31歳) 2008年8月6日 夜 、 県 内 の 路上 で 、女 子 高校 生(当 時17歳)を 脅 し、 空 き地 に 引 きず り込 み 強姦 して1週 間 の け が を負 わせ た。 さ らに2010年4月6日 夜 に も別 の女 子 高校 生(当 時16歳)を 脅 して 県 内 の 空 き家 敷 地 で わ いせつ な行 為 を した容 疑 で 起訴 され た。 6月13日 開 廷(起 訴 事 実 を認 容) 6月14日 求 刑(懲 役8年) 弁 護 人 は 、 示 談 が 成 立 した 被 害 者 は 厳 重 な 処 罰 を 望 ん で は い な い の で 懲 役6年 が相 当 と主 張 した。 6月16日 判 決(懲 役7年)。 判 決 は 、被 害者 の 一 人 が示 談 に応 じた こ とを 考慮 した と して も 、根 深 くゆ が ん だ欲 望 に基 づ く犯 行 で あ っ て 内省 が十 分 に深 ま っ て い る とは い え な い 、卑 劣 で身 勝 手 な 動機 に酌 量 の余 地 は な い と指 摘 した。

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■ 【判 決27】 強 姦 致 傷 と住 居 侵 入 事 件(男 性 ・38歳) 2010年12月17日 夜 、 無 断 で 作 成 した 合 い 鍵 を使 って 、 女 性 宅 に侵 入 し、 カ ッ ター ナ イ フで 脅 し、強 姦 して 、 けが を負 わ せ た 容 疑 で 起 訴 され た 。 7月4日 開 廷(起 訴 事実 を認 容) 7月5日 求刑(懲 役15年) 検 察 官 は、 求 刑 は過 去 の 裁 判 例 と比 較 し重 い と感 じ るか も しれ な い が 、 犯 行 は計 画 的 で 悪 質 で あ り被 害 者 に一 生 残 る精 神 的 な 被 害 を 与え、 非 難 の 度 合 い は 殺 人 罪 に匹 敵 す る と言 って も過 言 で は な い 、 と指 摘 した 。 弁 護 人 は 、 被 告 人 は 反 省 し、両 親 も社 会 復 帰 後 の 支 援 を約 束 して い る、 社 会 的 な 償 い と して の刑 罰 とい う観 点 か ら 見 る と、 類 似 す る 事件 と比 べ て 重 い 求刑 で あ る と陳 述 した 。 7月7日 判 決(懲 役8年)。 判 決 は、 犯 行 の 卑 劣 さ を指 摘 した 上 で 、 初 犯 で あ る こ とな どか ら、 性 犯 罪 の 傾 向が 根 深 い と まで は認 め られ ない 、 再 犯 の お そ れ は そ れ ほ ど認 め られ な い と した 。 ■ 【判 決28】 現 住 建 造 物 等 放 火及 び住 居 侵 入 事 件(男 性 ・26歳) 2010年5月30日 午 後 、以 前 交 際 して い た女 性 へ の未 練 か ら、女 性 の 住 む ア パ ー トの 部屋 に侵 入 して 、 火 をつ けた 容 疑 で 起 訴 され た 。 ア パ ー ト約83平 方 メー ト ル が 焼 失 した 。 7月11日 開 廷(起 訴 事実 を認 容) 7月12日 求刑(懲 役7年) 検 察 官 は元 交 際 相 手 に愛 想 を尽 か され 、 や け にな って 放 火 した もの で 、 同情 の 余 地 は ない と論 告 した 。 弁 護 人 は 犯 行 の9ヶ 月 前 に診 断 を受 けた 適 応 障 害 の 影 響 を理 由 に懲 役3年 が 相 当で あ る と主 張 した 。 7月13日 判 決(懲 役6年) 判 決 は、 一 方 的 な恋 愛 感 情 の もつ れ か ら犯 行 に及 ん だ 動機 は 自 己 中心 的 で 身 勝 手 、 損 害 も大 きい と した 。

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■ 【判 決29】 強 盗 強 姦 、 わ い せ つ 目 的 略 取 、 窃 盗 、 覚 醒 剤 取 締 法 違 反 な ど6事 件(男 性 ・31歳) 2010年10月 、女 性 の住 む アパ ー トの部 屋 に侵 入 して 、女 性 を 監禁 、 室 内 の現 金 を 奪 い 、 車 で廃墟 に連 れ 去 り、 強姦 した容 疑 で 起訴 され た。 被 告 人 は 強 盗強 姦 、わ い せ つ 目的 略 取 、窃盗 、覚 醒剤 取 締 法 違 反 な ど6事 件 で 併 合 審 理 され た 。 7月25日 開 廷(起 訴 事実 を 認容) 7月26日 求 刑(懲 役15年) 検 察官 は 、 女性 の 人格 を無 視 した執 拗 で卑 劣 な犯 行 で あ り、殺 され る か も し れ な い とい う被 害者 の処 罰 感 情 も強 い と論 告 した。 弁 護 人 は 、類 似 す る事 件 と 比 べ て重 い求 刑 で あ り、冷 静 で公 平 な 判 断 を 、 と陳述 した。 7月28日 判 決(懲 役12年) 判決 は 、 同種 の犯 罪 に比 べ て も特 に悪 質 で 、 事件 後 約1ヶ 月 の 間 に窃 盗や 車 上 荒 ら しな どを繰 り返 した と して犯 罪 傾 向 の根 深 さか ら更 生 に は相 当 の 困難 が 見込 まれ る と指 摘 した。 ■ 【判 決30】 強 姦 致 傷 及 び 強 制 わ いせ つ 未 遂 事 件(男 性 ・30歳) 3月2日 未 明 、県 内 の路上 で帰 宅 途 中 の飲 食 店 店 員 を強 姦 し、けが を させ た 。 さ らに 、4月3日早 朝 、 県 内 の 商 業 施 設 敷 地 内 で 女性 に わ いせつ 行 為 を しよ う と した容 疑 で起 訴 され た。 8月31日 開 廷(起 訴 事実 を 認容) 9月1日 求 刑(懲 役6年)。 検 察官 は 、 た ま た ま 見 か け た 女性 を性 欲 を満 たす た め だ け に襲 っ た身 勝 手 な 犯 行 と論 告 した。 弁 護 人 は 、計 画 的 な犯 行 で は な く、家 族 が 監督 を誓 っ て い る と最 終 陳述 した。 9月2日 判 決(懲 役6年) 判 決 は 、 被 害 者 に 大 き な 精 神 的 苦 痛 を 与 え た 重 大 な 犯 罪 で あ り、1か 月 に2人 の女 性 を あ い つ い で狙 い 、反 省 も十 分 で な い と指 摘 した。

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■ 【判 決31】 監 禁 致 死 事 件1(幇助 罪)(男 性A・23歳 、 男 性B・23歳 、 男性C・ 24歳 、 男 性D・23歳) 4人 は2010年12月 、鹿 児 島市 で 逮 捕 監 禁 致 死 罪 な どで 起 訴 され た 主 犯 格 と さ れ る男 性Fら と と もに、 逃 げ よ うと した 男 性 を追 い か けた 上 、 男 性 が 太 も も を ナ イ フで 刺 され て 卓の トラ ン ク に押 し込 め られ た 際 、 地 面 に残 った 大 量 の 出血 を水 で 洗 い流 して 犯 行 を助 けた 容 疑 で 起 訴 され た 。2011年1月 、 曽於 市 の 果 樹 園 で 男 性(当 時30歳)が 土 の 中か ら遺 体 で 見つ か った 。 この 事件 で は、 太 も もか らの 大 量 出血 が 原 因 で 死 亡 した 男 性 を埋 めた な ど と して 計13人 が 逮 捕 され た 。2011年3月 、 遺 体 を埋 め るた め に協 力者 を探 して い たFに 知 人 少 年 を紹 介 した 男(26歳)に 地 裁 が 懲 役8カ 月の 判 決 を言 い 渡 して い る(裁 判 員 法 の 適 用 は な し)。 9月5日 開 廷(起 訴 事実 を認 容) 被 告 人 らは 監 禁 致 死幇助 を認 めた 。 弁 護 人 は 、4人 は恐 怖 で 被 告Fら の命 令 に逆 ら え なか った 、Fが 男 性 を連 れ 去 る理 由 も知 らな か った と主 張 した 。 9月8日 求刑(A、B=懲 役2年 、C、D=懲 役1年6カ 月)。 検 察 官 は、 間 接 的 なが ら被 害 者 の 死 に関 与 した と論 告 した 。 弁 護 人 は 、 犯 行 を手 伝 った にす ぎ な い と執 行 猶 予 付 き判 決 を求 めた 。 9月12日 判 決(A、B=懲 役2年 執 行 猶 予4年 、C、D=懲 役1年6カ 月執 行 猶 予4年) 判 決 は、 被 告 人 らが 主 犯 格 のFが 被 害 者 を連 れ 去 る こ と を知 りな が ら犯 行 に 荷 担 した こ と を非 難 しつつ も 、恐 怖 心 か ら主 犯 で あ るFら の 指 示 に逆 ら うこ と は 困難 だ った 、 と した 。 ■ 【判 決32】 監 禁 致 死 事 件2(少 年E・19歳) 【判 決31】 と 同 じ事 件 で 逮 捕 監 禁 致 死罪 で 起 訴 され た。 裁判 員 裁 判 対 象 事 件 で 少 年 が 起 訴 され るの は県 内初 めて とな った 。 9月26日 開 廷(起 訴 事 実 を認 容) 9月27日 求 刑(3年 以 上5年 以 下の 不 定 期刑) 弁 護 人 は 、被 告 人 は未 成 年 で あ り一 日も早 く両 親 の 下 で 更 生 を図 る こ とが 求 め られ る と して 執 行 猶 予 判 決 を求 めた 。

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9月29日 判 決(懲 役3年 保 護 観 察 つ き執 行 猶 予5年) 判 決 は 、 人命 が 奪 われ た重 大 さや 自 らの 問題 点 に十 分 気 づ い て い る とは言 い 難 い が反 省 は深 ま りつ つ あ り、 主犯 らの指 示 に逆 ら うの は 困難 だ っ た と指 摘 し た。 【裁 判 員 の 感 想 】 「最 初 は少 年 を裁 く不 安 が あ っ た。 強 い意 志 を持 っ て 更 生 して ほ しい 」 ■ 【判 決33】 逮 捕 監 禁 致 死 、 傷 害 、 死 体 遺 棄 等 事 件3(男 性F・32歳 、 男 性G・ 38歳 、 男性H・29歳 、 男性1・26歳) 【判 決31】 【判決32】 と同 じ 事件 。 被 告 人Fは 、12,月7日 夜 、鹿 児 島 市 内 で 男 性 の右 太 も も を ナ イ フ で刺 し、 卓で霧 島 市 に連 れ 去 っ た。 そ の後 、失 血 死 した 男性 の遺 体 を 曽於 市 内 に埋 め た容 疑 で 起訴 され た。 当初 、殺 人容 疑 で逮 捕 され た が 、地 検 は殺 人 罪 で の起 訴 を 見送 っ た。 そ の ほ か の3人 も逮 捕 監禁 致 死 、死 体 遺 棄 罪 な どで 起訴 され た。 逮 捕 監禁 致 死罪 の 共謀 が成 立 した 時期 や 関 与 の度 合 い が 争 点 とな っ た。 この 裁判 で も暴 力 団構 成 員 が 関係 す る事 案 だ とい う こ と で 、法 廷 に は 防 弾パ ネル 、傍 聴 入 り 口に は金 属 探 知 機 が設 置 され た。 10月3日 開 廷(FとGは 起 訴 内容 を 一部 否 認 、HとIは 認 め る) 弁護 人 は 、男 性 を生 け捕 りす る よ うに指 示 され て お り、刺 した の は想 定外 だ っ た。 責任 は 監禁 罪 の範 囲 に と どま る と主 張 した。 10月11日 求 刑(F=懲 役17年 、G=懲 役7年 、H=懲 役10年 、I=懲 役4年) 弁護 人 は 、Fに つ い て 一 部無 罪 を 主 張 し、懲 役8年 が相 当 と主 張 し、Gの 弁 護 人 は懲 役2年6ヶ 月 が相 当 と主 張 した。 10月14日 判決(F=懲 役10年 、G=懲 役6年 、H=懲 役7年 、I=懲 役3年 懲 役 猶 予5年) 判決 は 、暴 力 団 周 辺者 間 の 強 い 人 間 関係 が 事件 の背 景 に あ っ た と指 摘 した。 【裁判 員 の 感 想 】 「裁判 所 を 出 る とき周 囲 を うか が っ た。 別 の場 所 で解 散す る配 慮 が あ っ て もよ か っ た 」

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■ 【判 決34】 強 盗 殺 人 未 遂 お よ び詐 欺 事 件(男 性 ・52歳) 2010年6月29日 、 曽於 市 の ホテ ル で 女 性 が 眠 って い る と こ ろ をネ ク タイ で 首 を絞 め 、現 金6000円 を奪 い 、 さ ら にホ テ ル 代6500円 をだ ま し取 った 容 疑 で 起 訴 され た 。 被 害 女 性 は意 識 不 明 の 状 態 とな り、 四肢 麻 痺 ・低 酸 素脳 症 の 状 態 にな り意 識 を い ま なお 回 復 して い な い。 10月24日 開 廷(起 訴 事実 を 一 部否 認) 10月26日 求 刑(懲 役30年) 検 察 官 は、 これ 以 上 悲 惨 な結 果 は な く、 結 果 は 死 に準 じて い て 、 有 期刑 の 上 限 か ら刑 を下 げ る理 由が ない と して 有 期上 限 の 懲 役30年 を求刑 した 。弁 護 人 は 、 精 神 疾 患 に影 響 で 恨 み が あ った 別 の 女 性 と被 害 者 を錯 覚 して 殺 害 し よ うと した もの で 、 強 盗 目的 は な く、 殺 人未 遂 に 当た る と主 張 した 。 11月1日 判 決(懲 役27年) 鹿 児 島地 裁 の 扱 った 裁 判 員 裁 判 で も っ と も重 い刑 罰 の判 決 とな った 。判 決 理 由 は、 女 性 の 首 を素 手 で まず 絞 め、 そ れ か らネ ク タイ を使 って 、 ち ぎれ る まで 絞 め続 けた 犯 罪 行 為 を 「強 固 な殺 意 に基 づ く」 と認 定 し、 被 害 者 には 重 大 な 障 害 が残 り、 「強 盗 殺 人 未 遂 罪 の 中 で もっ と も重 い 被 害 」 で 、 刑 事責 任 は 非 常 に 重 い と した 。 【控 訴 】11月15日 ま で に被 告 人 は 判決 を 不服 と して控 訴 した。2012年3月27日 、 福 岡高 裁 宮 崎 支 部 は控 訴 を棄 却 した 。 ■ 【判 決35】 監 禁 致 死 事 件4(男 性J・39歳) 【判 決31】 【判 決32】 【判 決33】 と同 じ 事件 で 、 地 検 や 県 警 は 指 定 暴 力 団 組 員 で あ る被 告 人 を事 件 の 首 謀 者 と した 。 11月9日 開 廷(起 訴 事実 を否 認) 11月15日 求刑(懲 役12年) 弁 護 人 は、 実 行 犯 らの 証 言 に は矛 盾 が あ り、 自分 の 責 任 を軽 減 す るた め に う そ の 証 言 を した と して 無 罪 を主 張 した 。 11月18日 判 決(懲 役9年) 判 決 は、 実 行 犯 の 供 述 は 自然 で 真 に迫 って い る と して 、被 告 人 と実 行 犯 との 共 謀 を認 め、執 拗 に犯 行 を指 示 した もの で、実行 犯 と比 べ て も責 任 は重 い と した。

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■ 【判 決36】 殺 人 事 件(男 性 ・52歳) 2011年4月30日 午前3時45分 ご ろ 、 交 際相 手 の 女性 が勤 務 す る病 院前 の路 上 で 、女 性 の背 後40メ ー トル の と ころ か らラ イ フル 銃 を1発 発 射 し、失 血 多 量 に よ り殺 害 した容 疑 で 起訴 され た。 被 告 人 は行 政 書 士 で あ っ た。7月9日 に公 判 前 整 理 手続 き 第1回 協 議 が行 われ た。 12月5日 開 廷(起 訴 事実 を 認容) 弁 護 人 は 、行 政 書士 会 な ど多忙 な 業務 と同居 して くれ と 言 う女 性 か らの 要望 が重 な り心 の 余裕 が な くな っ て い た 、 と酌 量 を求 め た。 12月6日 求 刑(懲 役20年) 弁護 人 は 、 ラ イ フル 銃 の使 用 は被 害者 の 苦痛 を少 な くす る た め で 、他 の 凶器 よ り残 虐 性 は低 く、祉 会 的 制裁 をす で に受 け て い る と して懲 役15年 が相 当 と主 張 した。 12月8日 判 決(懲 役18年) 判 決 は 、妻 との離 婚 を装 っ た 交 際 の も つれ か ら計画 的 な犯 行 に及 び 、 動機 は 身 勝 手 で 、 責任 は非 常 に重 い と した。 裁 判 長 が 「遺 族 だ け で は な く、被 害 者 に 対 す る謝 罪 の気 持 ち を もっ て ほ しい 」 とい う裁 判員 の 意 見 を伝 え た。 【裁 判 員 の 感 想 】 「大 き く報 道 され た事 件 だ っ た の で 、最 初 は不 安 だ っ た が 、適 切 に 判 断 で き た。」 「被 害者 の遺 体 の 写真 を 見 る場 面 も あ っ た が 、裁 判所 か らの フ ォ ロー も あ り、 苦痛 で は な か っ た。」 ■ 【判 決37】 殺 人 未 遂 及 び 承 諾 殺 人 罪 事 件(女 性 ・52歳) 2011年5月5日 午後3時45分 ごろ 、在 宅介 護 中 の母 親 の承 諾 を得 て 、 口 と鼻 に布 製 の粘 着 テ ー プ を貼 り、 そ の ヒか ら手 を押 し当 て て殺 害 した。 そ の2時 間 後 、介 護 老 人 保健 施 設 に 入所 して い る寝 た き りの姉 の と ころ に行 き 、 同様 に殺 害 しよ う と した が 、施 設 職 員 に 見 つ か り未 遂 に 終 わ っ た。 被 告 人 は 、介 護 が必 要 な母 親 と2人 暮 ら しで 、介 護 保 険 に よ るサ ー ビ ス を申請 す る こ と もな く、1人 で 介護 して い た。 母 親 は 腰 椎 の圧 迫 骨 折 を繰 り返 して 、 口頃 か ら 「死 に た い 」 と漏 ら して い た。 12月19日 開 廷(起 訴 事 実 を認 容) 12月21日 求 刑(懲 役7年)

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弁 護 人 は、 母 親 の 面倒 を最 後 まで み た い と思 って い た 行 為 で あ り、 寝 た き り の 姉 を殺 そ うと した の は、 寝 た き りで この ま まで は か わ い そ うと思 って した こ と と して 、執 行 猶 予 付 き判 決 を求 めた 。 12月22日 判 決(懲 役3年) 判 決 は、 家 族 が 次 々 に病 に倒 れ 、 閉 塞 的 な 状 況 に置 か れ て い た 点 は 同情 の 余 地 が あ るが 、 死 を願 う母 の 苦 しみ を和 ら げ るた め に治 療 な ど殺 害 以 外 の 手 段 を 検 討 しなか った こ と は強 い 非 難 に値 す る、 と して 実刑 判 決 を 出 した 。 【裁 判 員 の感 想 】 「同情 す る面 も あ った が 死 な せ た こ との 達 成感 も感 じた 。 執 行 猶 予 をつ け るべ きか 最 後 まで 迷 った 。」 二 裁 判 員 裁 判 に つ い て の 検 討 (1)裁 判 員 の 負 担 は ど うだ った か 裁 判 員 裁 判 制 度 の 施 行 に あた って 、 裁 判 員 に選 出 され る国 民(20歳 以上)の 負 担 が 問 題 に な った 。 法 律 に よ って 多 くの 国 民 が 義 務 的 に参加 させ られ るの だ か ら 、そ の 負 担 感 は 、 これ まで の 検 察 審 査 会 へ の 参加 とは 程 度 が 異 な る。 この 点 につ い て 、 一 部の 法 曹 ・研 究 者 か らは 「強 制 」 で あ って 許 され な い とい う主 張 もで て いた 。 欠 席 率  鹿 児 島地 裁 で の 裁 判 員 裁 判 の 辞 退 率 ・欠 席 率 は表1の とお りで あ る。 【判 決10】 ま で は 、 地裁 が2009年 度 及 び2010年 度 の 裁 判 員 候 補 者 と して 有 権 者 名 簿 か ら無 作 為 に抽 出 した 名 簿 搭 載 者 の 中か ら 当該 裁 判 ご と に抽 出 され た 候 補 者 数 お よび 辞 退 者 数 が 紙 上 に掲 載 され た 。 そ の 後 、2010年 末 まで は呼 び 出 され た 候 補 者 数 、 欠 席 者 数 が 新 聞 に掲 載 され て い た が 、2011年 に入 る と、 裁 判 員 候 補 者 につ い て の 情 報 は 新 聞 紙 上 に掲 載 さ れ な く な った 。 事前 の 調 査 票 に も、 事件 ご との 裁 判 員 候 補 に送 られ た 質 問 票 に も辞 退 理 由 を 述 べ る こ とな く(回 答 しな い 場 合 も あ る だ ろ う)、裁 判 所 か らの 「出頭 」 要 請 が あ った に もか か わ らず 、参加 しな か った 裁 判 員 候 補 者 は 、2010年 末 まで の18 件 合 計 で641人 の うち98人 、裁 判 所 か ら呼 び 出 しを 受 けた 候 補 者 の15.3%に あ た る。

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裁判 員法112条 は 、 「裁判 員候 補 者 の 不 出頭 」 に つ い て10万 円 以 下 の過 料 に処 す る こ とを 定 め て い る が 、現 在 ま で の とこ ろ 、 実 際 に 呼 び 出 しに応 じな か っ た 裁判 員候 補 者 に過 料 が科 され た事 例 は な い。 過 料 が科 され れ ば 、 この 欠席 率 は もっ と低 く な る と思 わ れ るが 、 「強 制 」 の色 合 い が 濃 く な る こ とは 出来 る 限 り 回避 す べ き で あ る。 呼 び 出 しに応 じた裁 判員 候 補 者 全 員 が進 ん で参 加 した とも 思 え な い か ら、積 極 的参 加 ・消極 的参 加 双 方 が含 まれ て い る が 、約85%の 出席 率 は 制度 的 に は一 応 の 国 民 の 了解 度 を示 して い る と評価 で き る の で は な い か。 辞 退 理 由 裁 判員 法 に よ る と、年 度 ご との裁 判員 候 補 者 名 簿 か ら無 作 為 に抽 出 され た裁 判 員候 補 者 の 中 か ら事 前 の調 査 票 で70歳 以上 ・学 生等 、裁 判 員 法 が規 定す る辞 退 事由 に該 当す る と して辞 退 を申 し立 て た 人 が まず 除外 され 、 呼 び 出 し状 が送 られ る。 呼 び 出 し状 と とも に質 問 票 が同 封 され 、 そ の 回答 に よ っ て さ らに辞 退 が 認 め られ る。 さ らに初 公 判 当 日(事 案 に よ っ て は前 日)出 席 した裁 判 員候 補 者 も申 し立 てや 個 別 面接 に よ っ て辞 退 が認 め られ る。 報 道 に よ る と、この 質 問 票 及 び 当 日の 面 接 等 に よ る辞 退 理 由(表2)の うち、 一 番 多 い 理 由 は 「事 業 に 著 しい損 害 」(法16条8号 ハ)で あ る。 つ づ い て 「 護 や 養 育 」、 「重 い病 気 や 疾 病 」 「70歳以 上 」 が 入 る。 注 目され た の は 「身 体 的 ・ 精 神 的 ・経 済 的 に重 大 な 不 利 益 が あ る」 とい う辞 退 理 由で 、 例 え ば 、 「裁 判 員 裁 判 に 反 対 で あ る 」 「死 刑 求 刑 事件 を裁 くの は 心 理 的 に耐 え られ な い 」 とい う よ うな 思想 ・信 条 ・信 教 に 関 わ る理 中 で の辞 退 が どれ ほ ど出 た か とい う点 で あ る。 これ 以 上 、 詳 しい辞 退理 由 が わ か らな い の で 、 評価 は難 しい が 、 【判 決4】 で は3人(7.3%)、 【判決18】 で は13人(5.9%)が 認 め られ た。 死刑 求 刑 事 件 で あ っ た 【判決18】 で は 、 審理 が 長期 に わ た る とい う こ とで辞 退率 が 高 か っ た が 、精 神 的 に重 大 な 不利 益 とす る辞 退 理 由 が特 段 に 多 い とい う こ とは な さそ う で あ る。 審 理 期 間  審 理 期 間 が 長 い こ とが 裁 判 員 の 負 担 に な るの で は な い か と指 摘 され た。 死 刑 が求 刑 され 、被 告 人 が 否認 して 、 全 面 的 に 無 罪 を争 っ た 【判 決18】 の 39日 間 は特 別 と して 、一 週 間 を超 え て10日 間程 度 に な っ た 事件 は6件 で あ っ た

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(表3)。 い ず れ も殺 人 事 件 あ る い は否 認 事 件 で あ り慎 重 な 審議 が 求 め られ た 事 件 と考 え られ る。 自 白事件 等 、他 の 事件 は3∼4日 程 度 で終 わ る裁 判 が 多 か っ た。 (2)裁 判 員 制 度 は 「市 民 感 覚 」 を反 映 した か 裁 判 員 制 度 の うた い文 句 が 「裁 判 に市 民感 覚 を」 とい うもの だ った の で 、 ど れ だ け市 民 感 覚 が 刑 事裁 判 に反 映 した の か につ い て も検 証 の 対 象 とな るが 、 評 議 の 内容 は守 秘 義 務 と され て お り、判 決 言い渡 しが終 わ っ た後 の記 者 会 見 で の 、 裁 判 員 に よ る感 想 か ら しか うか が い 知 る こ とは で きな い の で 、 十 分 な 検 証 は で きて い ない 。 しか し、 記者 会 見 に応 じて くれ た 裁 判 員 経 験 者 か らの感 想 は お お む ね 好 意 ・ 積 極 的 で あ った よ うに思 わ れ る。 同時 に、 裁 判 員 の 心 情 的 な 負 担 や 不 安 も語 ら れ た 。 裁 判 員 裁 判 が 実 施 され た 直 後 、 何 回 か 傍 聴 して 、 驚 い た こ とは 、 検 察 官 ・弁 護 人 と も にパ ネ ル 等 を使 って 裁 判 員 にで き るだ け ビ ジ ュア ル にわ か りや す く争 点 を説 明 しよ うとす る工 夫 が な され て い た こ とだ った 。 当初 は 傍 聴 人 向 け に も パ ネル を 用 意 す る な ど 「裁 判 が 変 わ っ た な 」 と感 じる こ と も多 か った 。 ただ、 や は り 「無 理 」 は長 く続 か なか った ら し く、2011年 に入 って か らは そ の よ うな 法 廷 の 光 景 は検 察 官 ・弁 護 人 双 方 と も見 られ な くな った 。 しか し裁 判 には 素 人 で あ る裁 判 員 にで き るだ けわ か りや す く争 点 を説 明 しよ うとす る工 夫 は 引 き続 き重 要 だ ろ う。 求 刑 と判 決 の 量 刑  検 察 官 に よ る求 刑 と裁 判 官 に よ る判 決 の懲 役 期 間 の差 は 、 法 曹 業 界 用 語 で 「八 掛 け」 と呼 ばれ て きた 。 求刑 の 八 割 程 度 が 判 決 の 出す 懲 役 期 間 と して 予 想 され 、 それ 以 下だ と 「軽 い 」、 そ れ 以 上 だ と 「重 い 」 と評価 さ れ る と い うこ とで あ る。 鹿 児 島地 裁 の37の 判 決 の うち、 無 罪判 決 及 び 執 行 猶 予 つ き判 決 を除 き、 被 告 人 ご との 懲 役 期 間 を平 均 す る と求 刑 に 対 して77.1%と な る(表3)。 概 して い え ば、鹿 児 島地 裁 の裁 判 員 裁 判 は 「相 場 」に近 い 懲 役刑 の 宣 告 が な され た とい っ て よい か も しれ ない 。た だ し、これ は 求刑 と判 決 との 比 較 にす ぎな い 。た とえ ば 、 【判 決33】 の 逮 捕 監 禁 致 死 事件 で主 犯 格 と され た暴 力 団 関 係 の 被 告 人 は 、 求刑

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