折 り紙 と幼児教育
―
一 附属幼稚園の指導をとおして ―
OFigami and Preschool Education:
Through Teaching Origamiin the Ariliate Kindergarten岩
瀬
敏
子
Toshiko IWASE
中
山
千
章
I
はじめに 保育園や幼稚園の実習において,本
学保育科の学生たちは実習に行 く前 に,子
どもたちと室内 で遊ぶには,ど
んなことをすればいいのか と訊いて くることが多い。 とくに1年生は入学 して学 生生活にもまだあまり慣れていない 6月 に,最
初の実習である幼稚園に観察実習 として12日間行 くことになるので,緊
張感 とともに不安感が募るのであろう。 室内の遊 びというと,ど
うして も走 つた り跳んだ りといつた運動系の遊 びは無理であるので, 必然的に静的な遊びになる。静的な遊 びとい うと,イ
メージ的には手遊び・指遊びや折 り紙,紙
芝居や絵本 を読むことなどが挙げられる。 また,準
備 を必要 とするので,必
ず しも簡単な室内遊 びとはいえないが,パ
ネルシアターやエプロンシアター,ペ
ープサー ト,工
作 などもある。 ここでは,実
習の部分的指導 として,紙
芝居や絵本の読み聞かせのように子 どもたちが どちら か とい うと受身で楽 しむ遊びではな く,ま
た,手
遊びのように歌や リズム感 を必要 とする遊びで もない折 り紙 について論 じることにする。折 り紙は伝承遊 びで もあるので,両
親や祖父,祖
母な ども鶴 をは じめ とし,い
ろいろな種類の折 り方 を知つている可能性が大である し,祖
母などと一 緒 に折 り紙で遊べば,そ
れだけで コミュ■ケーシ ョンが より発展す るのは間違いないであろう。 折 り紙の利便性 は紙 さえあれば何時で もどこで も,少
しの時間 しかない場合で も,子
どもの数の 多少にかかわ らず,誰
もが楽 しく遊べ るという点にある。 さらに,折
り紙は他の遊 びとは違い子 どもたちが 自ら主体的に取 り組むことので きる遊びで も ある。子 どもたちにとって も,実
習生 にとつて も折 るのが上手 とはいえないまで も,昔
か ら続い ている日本の伝統的な遊 びで もある し,日
常的な遊びで もあるので,当
然のことなが ら,折
り紙 で遊んだ経験 はあるであろう。 幼稚園・保育園等の保育テーマ としても,折
り紙は格好の題材である。なにしろ,机
に向かって の作業 となるので,心
を落ち着けて静かに,集
中 して取 り組むことへの習慣づけになる。実際に 折 り方 を教 えるにあたつては,一
つひとつの手順 を教えなが ら,一
緒 に折 つてい くわけであるか ら,子
どもたちも熱心 に先生の話 を聞 くようになる。 さらに,ど
のように折ればいいのかをじっ くり考えた り,確
認 した りしなが ら取 り組むようになるので,子
どもたちの思考力や忍耐力 も自 然 と高 まることになる。 さらに,子
どもたちは自分の好 きな折 り紙の折 り方 を覚えると,楽
しくなって自ら進んで折 ろ うとする し,作
品がで きあがると認めて もらいたい という気持 ちが高ぶ り,先
生や家族の人たち にも見せ ようとするので,コ
ミュニケーションも自然 と弾 んで くる。子 どもは作品を作 る喜びを 感 じるとともに折 ることので きるものが増えて くる楽 しみを味わいなが ら,観
察することや きち んと聴 くこと,理
解力や記憶力 を高めてい く。 一-18-一Π 目的及び方法 について
.
折 り紙 は フ レーベ ルの第18恩物 (恩物 は関信 三 の訳 で教 育遊具 の こ と)と
して, 日本で最初の 幼稚 園であ る東京女子 師範学校 附属幼稚 園 (明治9年
設立)の
時代 か ら手技 の教材 と して取 り入 れ られていた。 もっ とも当時 は折 り紙 とい う言葉 は使 われてな く「摺紙 (しょうし)」 とか「紙 た たみ」 という訳があてられていた。手技 とは明治時代に書かれた『保育法』によると「幼稚園恩 物を用いて目及び手を練習 し心意の発育に資せんことを要す」 とのことであ り,折
り紙は日と手 のコーデイネーションを育む訓練に用いられていたことが分かる。フレーベルの教育論を規範と した日本の幼稚国では,初
めから恩物を幼稚園に備える必要な教具の一つとしていたのである。 ここでは,保
育の教材 として折 り紙を現代の幼児教育の観点からの考察と,折
り紙の指導にお いて,現
場の教師がどのような考えや目的をもって折 り紙を取 り入れているのかを研究する。 折 り紙の指導のあ り方の研究については,本
学の附属幼稚園の教師に依頼 し,質
問紙による調 査方法をとった。有効回答数は7で
あつた。なお,質
問項目は次の 7つ である。 ①折 り紙を指導するクラス及び月の頻度について ② どんな作品を折るかについて ③折ることのできるのは何種類位なのか ④折 り紙のサイズについて ⑤指導方法 と折 りかたの注意事項について ⑥折 り紙を幼児教育に取 り入れる目的について ⑦その他 (興味・関心を引 く話など)に
ついて Ⅲ 幼児教育 と折 り紙について 日本の幼稚園教育は初めから,フ
レーベルから直接教授を受けた松野クララが東京女子師範学 校附属幼稚園の首席保母 として着任 し,恩
物などを教材 として用いた保育方法であ り,フ
レーベ ルの幼児教育を踏襲 したものであった。では,フ
レーベルの幼児教育とはどんなものであろうか。 少 し長いが,『保育法』の記述によると,「自然が教えるところに従いて身体の運動によりて幼児 を発達せ しむべ きことを説 き,幼
児固有の活動の欲望は自ら遊嬉によりて顕れ又其の共同遊嬉を 愛するによりて観ることを得べ しとなし,遂
に幼児自然の傾向たる活動を組織的運動に導 きたる は是れ幼稚園教育の発明というべ し。遊嬉は則ち幼児心身の多方の活動を奨励 し又之を増進する ものなるが故に幼稚園教育は一に遊嬉に依るべ きなり」 とのことである。 「子 どもを取 り巻 く環境の変化を踏まえた今後の幼児教育の在 り方について」の答申として,中
央教育審議会は次のように述べている。「幼児は,遊
びの中で主体的に対象にかかわり,自
己を表 出する。そこから,外
の世界に対する好奇心が育まれ,探
索 し,知
識を蓄えるための基礎が形成 される。また, ものや人とのかかわ りにおける自己表出を通 して,幼
児の発達にとつて最 も重要 ―-19-な自我が芽生えるとともに
,人
とかかわる力や他人の存在 に気付 くなど,自
己を取 り巻 く社会へ の感覚 を養っている」そ して,「この ような幼児期の発達の特性 に照 らして,幼
稚園では,幼
児が 自由に遊ぶのに任せるのではな く,教
員が計画的に幼児の遊 びを十分 に確保 しなが ら,生
涯にわ たる人間形成の基礎 を培 う教育 を行 っている」。 さらに,保
育所保育指針 には,保
育の方法 とし て,「子 どもが 自発的,意
欲的に関われるような環境 を構成 し,子
どもの主体的な活動や子 ども相 互の関わ りを大切 にすること。特 に,乳
幼児期 にふ さわ しい体験が得 られるように,生
活や遊び を通 して総合的に保育すること」 と記 してある。 言葉の表現 は現在 と明治時代では当然違 って くるが,内
容的には酷似 している。 どちらも遊び が もっとも重要であることや,遊
びのなかか ら自己の欲望が表れること,他
人に働 きかける活動 が現れ共同で遊ぶ こと,心
身の活動が多方面 にわた り活発 になることなどを挙げている。 フレーベルはまた子 どもの教育遊具 として恩物 を創造 した。恩物は子 どもが夢中になって遊ん でいる中で想像・創作活動 を自然 と引 き出すための教材であ り,想
像力や観念力,集
中力,情
緒 の安定,美
的感覚 などが養われるとい う。第18番恩物の紙たたみは折 り紙のことであ り,日
本で は最初の東京女子師範学校附属幼稚園の設立 と同時に重要な教材 として取 り入れ られた経緯があ る。 折 り紙は日本の幼児教育 においては最初か ら重要な一端 を担 ってお り,現
在の幼児教育 にも通 じているので,保
育園・幼稚園での折 り紙の活動 (子どもたちと一緒に折 り紙で遊ぶ一連のプロセ ス)は
幼稚園の教育の在 り方にも保育所の保育の趣 旨にも十分 に適 つているといえる。 Ⅳ 折 り紙の効用 について 子 どもたちは好奇心のかたまりである。何 にで も興味 を示 し,な
んで も手 に取 り,理
解 しよう とする。何かを制作することは,何
かを工夫 しなが ら発見するプロセスで もあ り,本
能的に好 き といえる。折 り紙 を折 る楽 しさは,そ
の ような習性 を備 えた子 どもの好奇心 を育み,探
究心 を高 めなが ら,イ
メージ した形が一連の行為のなかで手の中にで きあがつてい くことにある。 折 り紙 を折 る楽 しさは単 に市1作することだけにあるのではな く,そ
の過程 にもある。子 どもた ちは作品のイメージを膨 らませ,上
手 に折 ろうと,手
順 を考えた り,折
り方を工夫 した りしなが ら主体的に取 り組むことによつて折 り方 を覚えてい くところに楽 しみが生 まれる。実際には先生 の真似 をすることだけか もしれないが,真
似 ることは学ぶ ことで もある し,オ
リジナリテイーを 生み出す力 にもなる。 子 どもたちにとっては折 り紙は自発的に関わる遊 びで もある し,話
をしっか りと聞 くとともに 深 く考え,心
を落ち着かせ,静
かに指先 に神経 を集中させる (忍耐心 を養 う)作
業で もある。 ま た,折
り方 を友達同士が教 えあ うコミュニケーションの場で もある し,お
互いの作品を評価 した りする意見交換の場 ともなる。 ―-20-―折 り紙 を環境的に捉 えてみると
,折
り紙用紙はどこにで も売 られている し,い
ろいろな大 きさ や色の もの もある。 またユニークなデザインを選ぶなら身の回 りのラッピングペーパーや新聞の チラシなどで折 つてみるの も一興であろう。子 どもの生活や遊 びのひとつ として積極的に取 り入 れようとするなら, どこの家庭 にもある,包
装紙や綺麗 な折 りこみを利用するの も面白い。いつ で もどこで も準備が容易 にで き,す
ぐに遊べ るので,子
どもと一緒 に楽 しむには最適 な遊 びのひ とつ ともいえる。 子 どもは折 り紙が折れるようになると,家
にいる ときは家族の前で も折 りた くなるだろうし, 試行錯誤 しなが ら折る中で,折
り紙 を媒介に したコミュニケーションも大いに弾み,ま
す ます興 味・関心が高 まり,そ
れ とともに「 もっと上手に折 りたい」 とか「もっと詳 しく知 りたい」 とかの 意欲がわいて くる し,生
きる力の基礎 を培 うことにもなる。 折 り紙遊 びで育 まれる力 として,折
り紙作家の山口は①集中力,②
理解力,③
創造力や想像力, ④手先の操作力の4つ
を挙げ,そ
れぞれ次の ように述べている。最初の集中力については,子
ど もは好 きな作品は夢 中になって折 るので,そ
の過程で確実に集中力 を育むようになる。 また理解 力については,本
の読み聞かせ と同様で,折
り紙 も子 どもに手本 を示 しなが ら言葉で折 り方 を教 えることで,人
の話 をしっか り聞いて理解する力がつ くようになる。創造力や想像力に関 しては, 子 どもは折 つたものを何かに見立てるのが得意だとして,次
のように述べている。子 どもは,た
だ三角に折 つたもので も飛行機 にした りおにぎりにした りと何かに見立てるのが得意であるので, 「おにぎりの中には何が入つているのかな」など見立てを広げるような声掛けをしなが ら,創
造力 や想像力 を伸ば してあげたい とい う。 さらに,手
先の操作力 については,子
どもが作品を作 った ら,「じょうずに作れたね」 と褒めた り,作
品を飾るようにしてあげることの大切 さについて言及 している。そうすることにより子 どもは嬉 しくな り,次
々と作品を折 るようになる。そ うして折 り紙で遊 んでいるうちに手先 も自然 と器用 になるとのことである。 他 にも,折
り紙の効用 として一般的に次のようなことがいわれている。手先,指
先の働 きは脳 によい刺激 を与え,そ
れは脳の発達 を促す。手は第二の脳 ともいわれているが,指
先の話になる と,ペ
ンフイール ドの手や日,舌
が奇妙 に大 きい運動野の脳地図を思い出す。本当に脳が発達す るか どうかはよくわか らないが,手
先の巧級性やイメージする能力が高まることは確かであろう。 さらに,自
発性や努力する心が養われることや色彩感覚が高 まること,物
の形 を正確 に捉えるよ うになること,物
事 には 'llE序 があることを知るようになるといえるであろう。V
幼稚園での折 り紙の指導について 初めに附属幼稚園では折 り紙の指導は保育のなかに取 り入れ られているのか どうか,取
り入れ られているとしたらどのクラス (年少,年
中,年
長)で
取 り入れられているのか,そ
して作品 と してはどの ようなものを折 つているのかを調べた。 一-21-―指導は年少か ら年長 クラスに至 るまで
,ど
のクラスで も行われていたが,指
導の頻度はどのク ラスにおいて も月に 1回 のペースで進め られていた。ただ,年
少の1ク ラスだけは月に 1回 ∼3 回ほどという回答であって,そ
れほど多 くはなかった。そのためか,作
品はチユー リップやこい のは り,カ
タツムリ,お
りひめ,ひ
こぼ しなど季節 にあわせて市1作するものが多 く,幼
稚園の月 毎の行事スケジュールに したがつて折 り紙指導 も行われている様子が作品か らも窺われる。この 傾向は年少か ら年長 クラスまでほぼ同様であつた。ただ し,制
作する作品の種類の数は年中か ら 年長 クラスになるに従 って,や
は りというべ きか,多
くなって くる。 折 り紙 を折ることので きる種類 については,年
少 クラスで多い子 は10種類ほどであつた。年中 クラスにおいては10種類以上は折れるということだが,実
際には確認 をしたことがないのであ く まで推測 とのことである。年長 クラスでは多 く折れる子は15種類 ぐらいで,少
ない子は5種
類 ぐ らい しか折れないそうである。ただ,年
長の子 どもたちは,種
類 としては毎月2種
類ほど折 つて いるので,毎
回の行事や月毎の制作 を合計すると,年
間では36種類以上は折 つていることになる そうである。ただ し,幼
稚園で折 っているときは,教
師が指導 した作品の折 りかたは覚えている のだが,家
に帰 ってか ら,ひ
とりで折 るとなると,で
きな くなる子が結構多い とのことである。 折ることので きる種類の数は,理
解力や能力の差が子 どもによりそれぞれで,た
くさん折れる 子 も,折
れない子 もいるので,一
概的に何作品 ぐらい折れるか ということは難 しいとのことであ る。ただ し,家
庭環境が大 きく影響 していると考 えられるのだが,母
親や祖母 と一緒 に折 り紙遊 びを楽 しんでいる子 は折 ることので きる種類が多い という。 折 り紙 を指導するうえで,大
変 なことは,子
どもたちの間で理解力 にそれぞれ差があるので, 早い子はどんどん先 に進んで しまい,終
わるの も早 くなるので, どうしても飽 きが きて騒いで し まうなど,時
間をもてあそぶ ようになるが,折
り紙が苦手な子は教師の手助けが どうして も必要 にな り,時
間もかかるので,ク
ラス全体 を上手にコン トロールすることが難 しい とい う。 指導の ときに使用する折 り紙の用紙サイズについての質問には,年
少 クラスの子供たちは大判 (25cm角 か30cm角)を
使 うとのことであった。年中クラスにおいては,年
度初めの 4月 頃は年少 クラス と同 じく大判サイズ を使 うが,そ
れ以後は普通サイズ (15cm角)を
使 うとのことであ り, 年長 クラスでは最初か ら普通サ イズを使用するそ うである。 年少(3歳
児)ク
ラスの子供 においては手の巧緻性が十分 に育 つていないので, もっともこの 頃か ら指 をた くさん使 うようにな り器用 さが身について くるのだが,折
り紙 を上手に折ることは で きない し,角
と角 をあわせるの も大変なので,折
るのを容易 にするために大判の折 り紙 を使用 することになる。年中や年長児 になると指先 を器用 にコン トロールで きるようになるので,普
通 サイズで間に合 うのであろう。3歳
児用の折 り紙の本 に『3歳
からのは じめての折 り紙遊び』 というのがあるが,そ
のなかで, は じめて折 り紙 をする子は「 まっす ぐに折 る」 ことは結構むずか しく最初のうちはどうして もく ―-22-―しゃくしゃになって しまう。けれ ど
,そ
れを「失敗」 といわないで子 どもと一緒 に「で きたね」 といって喜ぼうなどと指導上の ヒン トが記 されている。 またこの本の特徴 として,「山折 と谷折だ けでOK」
と表紙 に書かれている。3歳
の子 どもにはおそらく他の折 り方 を用いての作業は難 し いのか もしれない。 折 り紙の指導方法 と折 りかたの注意事項 について,年
少 クラスでは折 り紙 をするにあたって, 子 どもたちにわか りやすい言葉で話す ことや,話
をしっか り聞 くこと,間
違 えないように取 り組 もうとする気持 ちを持 たせることなどを挙げた。それ とともに,折
りかたについては,折
り紙の 角 と角 とをしっか り合わせ,よ
くアイロンをかけきちん と折 目をつけるなど,折
りかたの基本 を 指導することが大切であるとのことである。年中クラスにおいては,難
易度の高い作品 も折るよ うになるので, どの ように説明 したら全員が理解で きるようになるのか, ということを特 に留意 するとい う。何度 も失敗 し,理
解力 に欠ける子 どもへはどういう声かけをしたらいいのか,ど
の ように配慮・援助すべ きかなど考えることが多い という。折 りかたが難 しい作品を折る場合には指 導用 に使 う用紙は,子
どもたちが使 っている折 り紙の4倍
サ イズを使って説明するとのことであ った。 年長 クラスにおいても,折
りかたの指導についてはほぼ年少。年中クラスと同様で個々の子 ども たちの理解力がそれぞれなので上手に折れない子への声かけの工夫や,達
成感 を味合わせるため, 最後 まで 自分で折れるようにする指導の進め方や配慮の仕方などが難 しいという。 折 り紙 を幼児教育に取 り入れる目的について,年
少 クラスの回答は,子
どもたちが折 り紙遊 び で指先 を使 うことにより,知
能の発達が促 されるばか りでな く,集
中 して考えなが ら取 り組むこ とによって作品が完成 し,喜
びと同時に達成感 を味わえるなどを挙げている。年中クラスにおい ては折 り紙 をとお して,分
か らない ところなどは,お
互いに教 えあつた りするのでコミュニケー シ ョンの発展 とともに友達の輪が広がること,手
先が器用 になること,そ
れ とともにきれいに折 ろうとする気持 ちが 自然 と芽生えて くるなどであった。年長 クラスにおいては,折
り紙 を通 して 季節の草花や生 き物,食
べ物 を知ることがで きる し,集
中力 も持続 しやす くなるか らとのことで ある。それ とともに,色
彩 を楽 しみ,想
像性・創造性 を養い,考
える力 を培い,達
成感 を味わい, 意欲 につなげてい くのが折 り紙 をする重要なねらいであるとのことであった。 年少か ら年長 クラスを通 して, 日本の伝承遊びのひとつで もある折 り紙は,一
枚の平面 よりい ろいろな形 に変化 させることがで き,立
体的にも折 ることがで き,ま
た失敗 して も何度で もや り 直 しがで きるので,子
どもたちはイメージを拡張 させ,考
えなが ら折 つた作品にユニークな解釈 をした り,表
現 した りすることがで きる創造性豊かなすばらしい教育素材であるとのことである。 Ⅵ 実習でする折 り紙 折 り紙は学生にとつて身近な遊びで もある し,授
業で も行っている。 また多 くの保育・幼稚園で ―-23-一も取 り入れ られてお り
,紙
一枚で簡単 にで きるので,実
習で折 り紙 を子 どもたちに指導 しようと する学生が少 なか らずいる。 しか しなが ら,実
際に指導すると,子
どもたち一人ひとりの能力差 が大 きく,み
んなが同 じペースで折 ることがで きないので,部
分実習は失敗だったという話 をよ く聞 く。 折れない子 に配慮 し声かけをしなが ら手伝 っていると,他
の子 どもたちへの説明が上手 にで き な くな り,落
ち着 きがな くな り騒 ぎは じめる子 どももでて き,予
定の時間配分 もずれて結局は失 敗 して しまうのだそ うだ。折 り紙のように,個
々の子 どもたちの能力が要求 され,指
導するにも ある程度の時間が必要 となると,保
育でよくいわれる全体への「気配 り」「 日配 り」 を忘れないよ うにするだけでは済む問題ではないようである。 折 り紙の保育技術 としては,ひ
とえに折 り方 をどのように説明すればいいのか,子
どもにも分 か りやすい言葉 をつかって,タ
イ ミングよく言葉かけをで きるようにするのが大切である。それ には前 もって説明方法や言葉かけをどんなふ うにするのがいいのかをよく考えなが ら何度 も自分 で折 つてみて,実
習のデモ ンス トレーションをする必要がある。 他 にも,発
達段階を考慮 してどんな作品を折 るのかを考えてお く必要がある。3歳
児は折 り紙 は初めての経験である子 どもが多いので, とにか く親 しみを持たせるようにすることが大事であ る。折 るにあたっては指先の力 もあまりない し,器
用 さも発達 していないので,折
りす じが残る ように何度 もアイロンをかけさせるの もいいのか もしれない。 とにか く角がずれてしまって上手 く折れな くて も,最
後 まで頑張って作品を仕上げ,達
成感 を味わつてもらうようにする。年中ク ラスでは,作
品への想像力 も発達 してきてお り,色
に対 しての好み も子 どもたちそれぞれなので, 好 きな色 を選ばせるようにする。 自分の好 きな色 を慎重 に選択する姿に,取
り組みへの意欲がみ られるとのことである。折 りかたの指導 としては山折 り,谷
折 りなど折 り紙の基本 をしっか りで きるようにすることが大切であるとのことである。作品の出来栄えを気 にするような年齢 になっ ているので,折
り紙 を楽 しむだけでな く,上
手 に折れるようにすることも大事であるとのことで ある。上手 に折れない と悔 しがった りする し,上
手 く折れると自己肯定感や満足感が高 まる年頃 で もあるか らである。年長 クラスにおいては,基
本的に年中クラスと同 じであるが,指
先の巧緻 性や想像力・創造力 も高 まって きてお り,チ
ャレンジ精神旺盛 になっているので,作
るのが難 し く,時
間 もかかるような作品に取 り組む子 もいる し,実
際大人で も驚 くような作品を作 る子 もで て くる。ただ し,個
人差が ます ます大 きくなって きているので,一
斉指導で折 り紙 をし,ク
ラス を上手 に運営するのは少々難 しいか もしれない という。 学生の実習の経験談 によると,年
長児は遊べ る折 り紙 (例えば,紙
飛行機や手裏剣,紙
鉄砲 な ど)を
作 ると友達 とのかかわ りやコミュニケーシ ョンが発達 しているので,お
互いに教 えあつた り,一
緒 に作品で遊 んだ りして,エ
キサイ トしなが らもとて も楽 しそうに遊ぶそ うである。 もっともその学生 も,初
めての幼稚園実習では,「犬の顔」 を折 り紙で作ろうとし,年
中児のク ―-24-―ラスで実際に指導 をしてみると,「半分 に折 つて折 目をつけて戻す」 とか,「今度は紙 を裏返 しに してね」 といった簡単な作業で も
,説
明の仕方が下手なのか,ち
よつとした指導の仕方ひとつで, 子 どもたちが全 く理解 を示 さない場合があるので,指
導の難 しさを身にしみて感 じたとの話であ った。幼稚園の指導教師か らは,初
めての実習だ し,上
手 にで きないのがあた りまえであって, 実習生だか ら,上
手 にで きなかったことや失敗 したことも全て勉強だといわれ, くよくよしない で頑張るようにと励 まされたそうである。 それか ら,折
り紙の指導 については,子
どもたちの年齢の違いによつても,興
味・関心度や理解 力の差 によつて も大 きく折 ることので きる作品の種類 も違 って くる し,同
じクラスで も子 どもた ちに上手・下手の差 もあるので,一
律 に指導するのは難 しい。子 どもたちが折 り紙 を楽 しみなが ら,上
手 に折れるようにするのには子 どもが分か りやすい言葉 を選んでの説明や,見
本の折 り紙 への工夫,声
かけの方法など,考
えなければならない点が多々あるとのことである。 例 えば,指
導用の折 り紙 には大 きなサイズの用紙 を使 うこともひとつの方法だ し,見
本 を分か りやす くするために,折
す じに線 を引いてお き,折
り合わせる面には丸や三角などの記号 を描い て説明する方法 もある し,完
成 までの折 り順 を段階ごとに折 つた折 り紙 を見本 としてい くつか並 べてお く方法などもある。 また,年
少 クラスの子 どもや作業が大 きく遅れている子 どもには,直
接,子
どもの手 をとって折 る場合 もあるとのことであった。・ このように子 どもの年齢や理解力 による違い
,個
々の子 どもたちの特性 に合わせた指導は,一
朝一夕には身につ くものではな く,長
年の指導経験のなかか ら自然 に身について くるものだ とい う。 Ⅶ おわりに 折 り紙は日本 に昔か ら伝わる伝統的な遊 びのひとつであるが,現
在では海外で もorigamiと し て一般的に知 られるようになった。折 り紙が最 も遊びとしても教育の手段 として も利用 されると ころは幼稚園や保育園においてであろう。 なぜ幼児教育 において利用 されているのか というと,折
り紙の幼児 に与える効用はもちろんだ が,日
本最初の官立幼稚園である東京女子師範学校附属幼稚園が フレーベルの幼児教育 を取 り入 れ,恩
物 などを幼稚園の教育遊具 として用いたことが大 きい。フレーベルの第18番恩物は折 り紙 のことであって,当
時は「摺紙 (しようし)」 とか「紙たたみ」 と訳があてられていた。折 り紙は 手技 とみなされていて,そ
の目的は日と手の練習であ り,心
身の発育に資することであった。 折 り紙 は,日
本の幼児教育の初めか ら必要不可欠な教具 として備 えられたものであった。フレ ーベルの直弟子である松野 クララが附属幼稚園の首席保母 として,折
り紙 を教具 として取 り入れ たことは分かつているが,実
際 どのように扱 ったのかは不明である。『保育法』に描かれた恩物の 図によると第18恩物 として折鶴の絵が描かれているので,鶴
などを折 つていたのか もしれない。 ―-25-―最 も現在の折 り紙
,正
方形で半面 に色彩が施 してあるのは,日
本古来の折 り紙ではな くフレーベ ルの考案 した折 り紙 なのである。 折 り紙 を幼児教育に取 り入れることは,現
在の保育所保育指針や幼稚園教育要領の唱えている 保育にも適 つているといえる。折 り紙 には,子
どもが 自発的に,そ
して意欲的に取 り組み,子
ど もたちがお互いに教 えあつた りし,コ
ミュニケーシ ョンを発達 させなが ら友達関係 を広げ,深
め てい く環境が備わつていると考えられるか らである 折 り紙の効用 については,一
般的に言われていることだが,細
かい作業なので自然 と集中力が 上がることや,人
の話 をよく聞 くことによつて理解力が付 くこと,折
り紙 をいろいろなものにみ たてる想像力や創造力が育 まれること,手
先の操作力 (巧緻性)が
高 まること,友
達同士が教 え あうことにより人間関係が広が り,深
まること, さらには,積
極性や自発性,長
い時間折 り紙 に 取 り組むことによる努力する心,忍
耐する心 などが挙げられる。 折 り紙の指導 について,附
属幼稚園の場合,取
り入れる回数は年少,年
中,年
長クラスとも月 に1回か ら3回ほどで,頻
度的には,あ
まり多い とはいえなかった。折 り紙の作品については,季
節感 を表す ものや行事 に合わせた作品が中心 となってお り,年
齢が上がるにつれ,種
類 も増え, 複雑なものを折れるようになっていることがわかる。折ることので きる種類 としては5種類から15 種類ほどであ り,個
人差が大 きいことが明 らか となった。 指導方法に関 しては,年
齢 によつて も違 うのだが,丁
寧 に指導すること,子
どものペースに合 わせて焦 らずに進めること,説
明には子 どもに分か りやすい言葉 を選んで話す こと,そ
して,一
回ずつ折 つた形 を何かにみたて,形
の変化 を楽 しみなが ら進めることなどを挙げていた。指導用 の折 り紙の用紙サイズについては,年
少は普通の折 り紙ではな く大 きいサイズの折 り紙 を使い, 年中,年
長 クラスでは難易度の高い作品を折る場合にのみ,大
きいサイズを用いるとのことであ った。 実習での折 り紙 は,学
生か らの話であるが,前
もって練習を十分 に しているのにも関わらず, 子 どもたちの前で折 り紙の指導 をすると,簡
単 な作業の説明で も全 く理解 してもらえなかった り, 子 どもたちの作業ペースは個人差が大 きく,で
きない子 を直接指導 していると時間が足 りな くな つた りで,失
敗 して しまったということである。 実習で習 つた折 り紙指導のポイン トは,指
導する際に使 う折 り紙は子 どもが見やすい ように大 きいサ イズの折 り紙 を使 うこと,折
りかたの説明については子 どもに分か りやすい言葉 を使 うこ と,ど
の ような説明をすれば子 どもが理解 しやす くなるのか前 もって考えてお くこと,折
り紙で 何 を作 るかは発達段階を考 えて選ぶこと,ア
イロンをかけて折 り筋 をしっか りと付 けること,順
序別に折 つた折 り紙の作品を見本 として子 どもたちの周 りに置いてお くこと,指
導用の折 り紙 に は折 りす じをベ ンで描いておいた り,折
り面には記号で印をつけてお き,理
解 しやすいようにす ることなどであった。 ―-26-―そのほか