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福祉を架橋する病衣のデザインについての考察 : ヘルシンキ市立ロイフヴォリ高齢者センターにみる<家>と<衣服>を手がかりに

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(1)

福 祉 を架橋 す る病衣 のデ ザ インにつ いての考 察

ヘ ル シンキ市 立 ロイフヴォリ高 齢 者 センター にみ る〈家 〉と〈

衣 服 〉を手 が か りに

藤井 尚子

概 要

病 衣 とは 、入 院加 療 中 に 患者 が着 用 す る衣 服 の こ とで あ り、患者 に とっ て 一番 身 近 な療 養 環 境 とも い

え る。 しか しそ の現 状 は、着 用 す る 当事 者 た る患者 が 置 き去 りな っ て い る こ と も少 な くな い。 そ の要 因

の一 つ と して 、従 来 の病 衣 は 、急 性 期 医療 で の使 用 を前 提 と して い るた めで あ る。 しか し、今 日で は慢

性 疾 患 や が ん な ど、 日常 的 に疾 患 と向 き合 う長 期 医 療 の 患者 も増加 し(広井2008)、

求 め られ る病 衣 の

様 態 も変 わ りつ つ あ る。

執 筆 者 は2009年

よ り、 名 古 屋 市 立 大 学 付 属 病 院 の 看護 部 ・化 学療 法部 と連 携 し学 際 的研 究 チー ム を

構 成 し、 現 状 の病 衣 の 実 情 調 査 をふ ま え、 「

脱 着 容 易 性 」 と 「

生 き る力 の 向 上 」 の2点

に重 点 をお き 、

デ ザ イ ン 的解 決 よ り、療 養 環 境 の 改 善 に 資す る研 究 を行 っ て お り、1)病

衣 プ ロ トタイ プ の 作 成 、2)

担 が ん 患 者 を対 象 と した 着 用 実 験 、3)患

者 お よび看 護 師 の意 見 を集 約 す る実 践 的手 法 に よ り課 題 解 決

取 り組 ん で い る。

一 方

、 長 期 療 養 の実 体 に あ る 「

高 齢 化 」 を見 過 ごす こ とは で き な い。1990年

代 に は入 院 患 者 全 体 に

占 め る65歳 以 上 の高 齢 者 患 者 の 割 合 は5割 以 上 に 達 す るな ど、疾 病 に よ る治 療 よ りも、身 体機 能 が 徐 々

に低 下 す る なか で 、 い か に生 活 全 体 の質(QoL)を

高 め られ るか とい っ た 課題 が 求 め られ て お り、 医療

と福 祉 が 限 りな く連 続 化 し、不 可分 の もの とな って い る。

以 上 を ふ ま え 、本研 究 で は 、先 行研 究 の成 果 を も とに し、今 後 の超 高齢 社 会 へ の応 用 を 目的 に 、高齢

者 の身 体 的機 能 や 自発 的社 交 性 を支 援 し、福 祉 の 向 上 に 資す る高 齢 者 衣 服 の基 礎 的 研 究 と して 、福 祉 国

家 を標 榜 す る フ ィ ン ラ ン ドにお け る高 齢 者 セ ン ター の 取 り組 み な らび に 、居 住 高 齢 者 とス タ ッフの 「

服 」 に対 す る意 識 調 査 を行 っ た。本 稿 はそ の 調 査 報 告 で あ り、調 査 よ り得 られ た知 見 を考 察す る た め の

端 緒 に あ た る。

キ ー ワー ド:フ ィン ラ ン ド、高 齢 者 福 祉 、 〈

家 〉

、 私 服 風 職 業 服 、 超 高 齢 社 会 の デ ザ イ ン

1.は じめ に 一デ ザ イ ン は 福 祉 を 架 橋 し う る か フ ィ ン ラ ン ド共 和 国(以 下 、 フ ィ ラ ン ド と記 す)は 、 「森 と 湖 の 国 」と も よ ば れ る こ とか ら も 国 土 の 多 く に 自 然 を 擁 し て お り、33.8万 平 方 キ ロ メ ー トル の 日本 よ りや や 小 さ な 国 土 に537万 人(2011年:外 務 省)が 暮 ら して い る 。 総 人 口

は 日本 の お よそ 半 数 で あ り、

都 市 部 で も首 都 ヘ ル シ ン キ市 の

人 口が 東 京 都 の22分

の1で あ る な ど、 日本 に比 べ 空 間的 に

余 裕 の あ る生 活 圏 を形成 して い る。そ の一 方 で 、ヘ ル シ ン キ

市 の 住 宅 状 況(注1を見 る と、住 宅 総 数 に対 して一 戸 あた りの

平 均 人 数 は1.9人

と少 数 で あ り、

一 人 住 まい な らび に二 人 住

(2)

ま い住 宅 は 、全 体 の79パ ー セ ン トを 占め るな ど、独 居 も し

くは 夫 婦 や 親 子 とい っ た 少 人 数 をユ ニ ッ トとす る暮 ら しを

営 ん で い る こ とは、 「

都 市 」 を生 活 圏 とす る こ とを差 し引 い

て も特 筆 す べ き も ので あ る。そ もそ も フ ィ ン ラ ン ドは核 家 族

が基 本 で あ り、

祖 父 母 と同 居 す るケ ー ス は少 な い こ とだ け で

な く、成 人 と とも に独 立 す る こ とが 一 般 的 と され て い る。そ

の た め 、フ ィ ン ラ ン ド人 に とっ て の 「

家 」とは 「自分 の領 域 」

で あ り、生 活 圏 の地 域 コ ミ ュニ テ ィー の 高齢 者 は 、自 らの祖

父 母 以 上 に近 しい 存 在 で あ る とい わ れ て い る こ とか ら も、

族 とは両 親 や 祖 父 母 とい つた 血 縁 だ けで な く、

地 域 コ ミュ ニ

テ ィー も大 き な家 族 と見 な す 感 覚 は 、目本 人 の家 お よび 家 族

意 識(注2と は 異 な る もの で あ る。

こ う した 自主 独 立 の 生 活 様 式 は 、高齢 者 の暮 ら しも 同様 で

あ る。フ ィン ラ ン ドで は 、他 の 北 欧 諸 国 と同 様 に 、子 は親 の

介 護 をす る義 務 は な く(注3ヽ親 も ま た 、高 齢 化 に よ り身 体 的

機 能 が 低 下 す るな どの 場 合 、

高 齢 者 向 き に設 計 され た 賃 貸 住

宅 へ の 移 住 や 、ケ アや サー ビス付 き の 「

サ ー ビス ハ ウス」の

利 用 な ど を積 極 的 に 行 い 、子 に依 存 す るケ ー ス は少 な い(注4。

本 調 査 の 対 象 地 域 に フ ィン ラ ン ドを選 ん だ こ とは 、

一 つ は 、

福 祉 国家 と して す で に安 定 した 機 能 を 有 して い る た め で あ

っ た が 、

実 際 に調 査 を進 め る なか で 、

福 祉 制度 の根 幹 に あ る 、

理 想 的 な生 活 や 暮 ら し向 き の 背 景 に あ る 自主 性 や 自立性 こ

そ が 、

デ ザ イ ン か ら福 祉 を考 え る上 で 重 要 な契 機 とな るの で .

は な い か と感 じた こ と も大 き い。一 般 に、社 会 福 祉(social

welfare)は

、 未 成 年 者 、 高 齢 者 、 障 害 者 、 経 済 的 困 窮 者 や

ホ ー ム レス な どの 生活 の支 援 や 介 助 、生 活 の質 の維 持 ・向 上

させ るた め の サ ー ビス を社 会 的 に提 供 す る こ と、 あ る い は 、

そ の た め の 制 度 や設 備 を整 備 す る こ とを指 して い る よ うに 、

日本 に お い て は 、特 に ヽい わ ゆ る社 会 的 弱 者 の 救 済 措 置 と同

等 に扱 わ れ て い る。しか し、本 来 的 な福 祉 とは 、「しあわ せ 」

や 「

ゆ た か さ」を 意 味 す る言葉 と され る こ とか らも 、根 幹 を

な す 「しあ わ せ 」や 「ゆた か さ」 と はな にか を再 考 し、そ の

意 義 を 問 い な おす こ とは重 要 で あ る。フ ィ ン ラ ン ド人 の 生 活

観 に み られ る 自主性 や 自立性 は 、 「

私 ら しく生 き る」 こ と と

同 義 で あ り、

幼 少 時 よ り多 様 な 選 択 肢 よ り自 ら選 び 取 る こ と

に よっ て 自主性 や 自立性 を培 わせ る こ とは、フ ィ ン ラ ン ドの

地 文 的 特性(注5も 大 い に影 響 してい る と考 え られ る。この よ

うな フ ィ ン ラ ン ド人 の生 活 基 底 に あ る 「

私 ら し さ」の保 障 と

は 、

個 々 の 自主 性 や 自立 性 が 担保 され て は じめ て な し得 る も

の で あ る。多 様 な選 択 肢 の なか か ら、自主性 と 自立性 を もっ

て 選 択 し、 「

私 ら し く生 き る」 上 で 、 フ ィ ン ラ ン ドの社 会 福

祉 に お い てデ ザ イ ンは どの よ うに 活 用 され て い るの か を探

る こ とで 、 「

し あわ せ 」 や 「ゆた か さ」 を 実現 す る本 来 的福

祉 の 架 橋 とな り うるデ ザ イ ン の 可 能 性 につ い て も言 及 で き

れ ば 幸 い で あ る。

以 上 をふ ま え 、 まず 、 「

北 欧型 」福 祉 国家 の 定義 な らび に

フ ィ ン ラ ン ドの社 会 福 祉 の特 徴 を あ げ、そ の 上 で 、フ ィ ン ラ

ン ドの社 会 保 障 制 度 と ソー シ ャル サ ー ビス の概 要 か ら、自主

性 と 自立 性 を涵 養 し支 援 す る福祉 の 骨 格 を示 す。

2.フ

ィ ン ラ ン ドの 社 会 福 祉

2.1北

欧 型 ソー シ ャル サ ー ビス の 特 徴

福 祉 国家 と は、

社 会 保 障制 度 を通 じて 国民 の生 活 の 安 定 に

責 任 を持 ち、そ の た め の社 会 政 策 を施 行 す る 国 の こ とで 、い

わ ゆ る先 進 国 の す べ て が福 祉 国 家 を標 榜 して い る。福 祉 国 家

は一 般 的 に三 つ タイ プ に 分類 され て お り、

本 稿 で と りあげ る

フ ィ ン ラ ン ドは 「

北 欧型 」 に あ た る。

北 欧 型 」は ヽ社 会 民 主 主義 型 、また は普 遍 主 義 型 と も呼

ばれ て お り、イ ギ リス の他 、デ ンマ ー ク 、ス ウ ェー デ ン、ア

イ ス ラ ン ド、ノル ウェ ー 、フ ィ ン ラ ン ドの 北 欧 諸 国 が この タ

イ プ の 福 祉 国 家 に あ た る。そ の特 徴 は、ネ オ ・コー ポ ラ リズ

ム に も とづ き政 府 に よ る 普 遍 主 義 的 な社 会 保 障 の給 付 が 上

げ られ る。 これ は 、 す べ て の 市 民 が 労働 市場 の地 位 や 階級 、

居 住 地 とは 無 関係 に 、

基 本 的 な社 会 保 障 の 給 付 と社 会 サ ー ビ

ス(以 下 、ソー シ ャル サ ー ビス)を 受 け られ る こ と を意 味 す

る。 ま た 、 これ ら の ソ ー シ ャ ル サ ー ビ ス は 各 地 方 自治 体

(kunta)に

よ つ て供 給 され るた め、 地 方 分 権 が 高 度 に 発 達

して い る こ と も特徴 で あ る。

(3)

フ ィ ン ラ ン ドの 社 会 保 障 は 、① 予 防 目的 の 社 会 福 祉 保 険 政 策 、② 社 会 福 祉 保 険 サ ー ビ ス 、③ 所 得 保 障 の 三 つ の 柱 で 成 り 立 っ て い る 。 ま た 、 社 会 福 祉 政 策 に は 、 家 族 政 策(注6、 高 齢 者 支 援 政 策(注7、 障 害 者 支 援(注8が あ る。所 得 保 障 は 国(注9、 ソ ー シ ャ ル サ ー ビ ス は 自治 体 と 、そ れ ぞ れ が 明 確 に 分 担 され て い る と い う点 も特 徴 的 で あ る 。特 に 自 治 体 は 住 民 に 対 す る ソ ー シ ャル サ ー ビ ス(注1° に 責 任 を 持 ち 、 な か で も 、 社 会 福 祉 、健 康 医 療 関 連 と 文 化 教 育 、人 事 関 連 の 支 出 は 、 全 体 の 財 政 お よ び 職 員 数 の 約50パ ー セ ン ト(注11を 占 め て い る こ と か ら も 、 こ れ ら が 特 に 重 要 視 され て い る こ とが わ か る 。 ソ ー シ ャ ル サ ー ビ ス の 財 源 は 主 に 税 金 で 賄 わ れ て い る 。 自 治 体 が 供 給 責 任 を 負 う こ と か ら 、自 治 体 は 自 由 に 地 方 所 得 税 を 決 定 す る こ と が で き 、 こ れ に 国 か ら の 包 括 補 助 金(福 祉 ・保 健 医 療 包 括 補 助 金 、 教 育 ・文 化 包 括 補 助 金)も 加 え 、 社 会 福 祉 事 業 に 使 用 で き る 。 一 方 、普 遍 主 義 型 で あ り、 且 つ 福 祉 政 策 が 広 範 囲 で あ る こ とか ら、税 金 と 社 会 保 障 費 でGDP の44.2パ ー セ ン トを 占 め る 「高 福 祉 ・高 負 担 」 と い っ た 特 徴 が 、北 欧 型 福 祉 国 家 の イ メ ー ジ の 一 つ と し て 広 く知 られ て い る 。 し か し 、北 欧 諸 国 で は 、 国 民 の 政 府 ・行 政 に 対 す る 信 頼 が 高 く 、 「高 福 祉 ・高 負 担 」 は 国 民 の 選 択 で あ る と一 般 に 解 釈 され て お り、高 福 祉 と され る 北 欧 に お け る ソー シ ャ ル サ ー ビ ス は、個 人 が 障 害 ・疾 病 に 起 因 す る 不 自 由 さ に も か か わ らず 、 自 立(注12し て 日常 生 活 を 送 れ る よ う支 援 す る 「ケ ア 」 とい う考 え の も と 、 提 供 さ れ て い る。 Sipila(Sipila,J.etal1995.SosiaalpalvelujenSuomi.,WSOY) は ソ ー シ ャ ル サ ー ビ ス を 次 の よ うに 規 定 し て い る 。 1.個 人 が 必 要 と す る サ ー ビ ス で ヽそ の 利 用 は 個 人 の 自 由 意 志 に 基 づ き 、公 権 力 を 用 い て 強 制 的 に 執 行 す る こ と は で き な い 。 2.純 粋 な 営 利 的 ケ ア サ ー ビ ス は 社 会 サ ー ビ ス の 範 疇 に ふ く ま れ な い 。 ソ ー シ ャ ル サ ー ビ ス は 、 そ れ を 必 要 と す る 人 が 、 所 得 に 関 係 な く 受 け る こ と が で き る も の で あ り 、 料 金 を 支 払 う と し て も 、 全 額 支 払 う必 要 は な い 。 3.イ ン フ ォ ー マ ル(家 族 、 ボ ラ ン テ ィ ア 等 に よ る)な サ ー

ビス は 、ソー シ ャ ル サ ー ビス の分 野 に含 ま な い。それ は 、

ソー シ ャル サ ー ビ ス に お い て ケ ア を 提 供 す る人 と受 け

る人 は 対 等 な 関係 で あ る べ き と考 え る た め で あ る。 ソー

シ ャル サ ー ビス は イ ン フ ォ ー マ ル な ケ ア の 負 担 と束 縛

を 軽減 す る もの で あ る。

こ うした 考 え方 か ら、北 欧 型 の ソー シ ャル サ ー ビス は、個

人 が どの よ うな 状 況 に あ ろ うと も 自立 的 に 生 活 を送 る こ と

を保 障 す るだ け で な く、

提 供 され るケ ア も必 要 に応 じて 自 由

に 選 ぶ こ とが で き るな ど、個 人 の 自 由意 志 の 尊 重 ヽ平 等 、対

等 な 人 間 関係 な どを軸 に規 定 され て い る。これ は、フ ィ ン ラ

ン ドで の 調 査 中 しば しば 耳 に した 「

公 平 性 」に基 づ い て い る

の で あ ろ う。フ ィ ン ラ ン ドで は、子 ど も も大 人 も基 本 的 な 事

柄 に つ い て 、自 らの責 任 の も と 自由 に選 択 して い く こ とが 求

め られ て お り、

種 々 の選 択 に必 要 と され る創 造 性 を重 視 して

い る。北 欧 型 福 祉 国家 で は、各 々 の 創 造 性 を もっ て 参 与 で き

る公 平性 を基 盤 に 、生 活 ・社 会 ・文 化 ・教 育 な どが 形 成 され

て い る。

2.2フ

ィ ン ラ ン ドの 高 齢 者 支 援 政 策

フ ィ ン ラ ン ドの高 齢 者 比 率(全 国平 均)は1994年

に14.1

パ ー セ ン トに な り、い わ ゆ る高 齢 社 会 へ 突 入 した 。そ の後 も

上昇 し2008年 に は16.7パ

ー セ ン トとな って い る。そ の後 も

さ らに増 加 傾 向 に あ る と推 計 され て お り、2020年 に は23パ

ー セ ン ト

、 さ らにそ の20年 後 の2040年

には27パ

ーセ ン ト

に な る とい わ れ て い る(注13。高齢 社 会 は 、フ ィ ン ラ ン ドのみ

な らず 、2007年

に は超 高齢 社 会 とな っ た 日本 を は じめ 、世

界 各 国 に共 通 す る課 題 の ひ とつ とな つ て い る。

フ ィ ン ラ ン ドの 高 齢 者 に 関 す る福 祉 政 策 は ヽ

憲 法 と社 会 福

祉 全 般 を規 定 す る社 会 福 祉 法 に 基 づ く。福 祉 政 策 の基 盤 整 備

に は、1982年

に 国連 世 界 会 議 で採 択 され た 「

高 齢 化 に 関す

る国 際 行 動 計 画 」(注14、1984年VALTAVA改 革 、1993年 の税 制

改 革 が あ り、 段 階 的 に 議 論 を 重 ね 、 現 在 に 至 っ て い る。

VALTAVA改

革 は 国 と 自治 体 問 の 社 会 サ ー ビス 提 供 に お け る

役 割 分 担 の 再 構 築 、施 設 ケ ア の 見直 し、オ ー プ ンケ ア へ の 移

行 促 進 とい っ た 、

北 欧 型 福 祉 国家 の基 盤 を形 成 した 改 革 で あ

(4)

る。1993年

の 税 制 改 革 で は 、 地 方 自治 体 に サ ー ビス供 給 の

権 限や 税 源 を移 譲 、包 括 補 助 金 制 度 導 入 等 、地方 分権 が 大 き

く促 進 した。 こ うして 、 自治 体 主 導 に よ り、 自治 体 に お け る

サ ー ビス へ の 責 任 を負 わ せ る と と もに サ ー ビス の 質 を間 わ

れ る よ うに な った こ とで 、よ りき め 細や か な ソー シ ャル サ ー

ビ ス の構 築 と提 供 が 可 能 にな って い る。そ の他 、

各 自治 体 は 、

内容 に合 わ せ 民 間 企 業 の サ ー ビス を購 入 す る こ と もで き 、

さ な 自治 体 で は、周 辺 の 自治 体 と組 合 連 合 を つ く り、共 同で

サ ー ビス の 運 営 ・提供 を行 う こ と もあ り、必 要 とされ るサ ー

ビス を フ レキ シ ブル に提 供 して い る。(油5

2.3高

齢 者 福 祉 に お け る ソー シ ャル サ ー ビス の 概 要

フ ィ ン ラ ン ドの 高齢 者 福 祉 政 策 の 目標 は、高 齢者の 経 済 的

自立 の促 進 、自己決 定 権 の尊 重 、社 会 的 な 統 合 お よび公 平 さ

の確 保 に あ り、

豊 か な高 齢 期 の 生 活 が 送 れ るた め 、

年 金 政 策 、

住 宅 政 策 、社 会 福 祉 お よび 保 健 サ ー ビス な ど、質 の 高 い ソー

シ ャル サ ー ビス の構 築 と提 供 が 目指 され て い る。

在 宅 サー ビ

スや 施 設 サ ー ビス に 関わ る福 祉 サ ー ビス 、医療 、看 護 、入 院 ・

外 来 な どに 関わ る保 健 医 療 サ ー ビス 、デ イ ケ ア ・

セ ン ター や

サ ー ビス 付 き住 宅 な どホ ー ムヘ ル パ ー 等 ケ ア に 関 わ るケ ア

サ ー ビス は、高齢 者 それ ぞれ の ニ ー ズ に即 し柔 軟 に対 応 で き

る よ う、長 期 医 療 、在 宅 ケ ア 、そ れ らの混 合 サ ー ビス と、さ

ま ざま な 場 面 に即 し構 成 され て い る。 尚 、 各 種 サ ー ビス は 、

各 自治 体 が 徴 す る税 金 の ほ か 、国 か らの包 括 補 助 金 、利 用 者

の 自己 負 担 に よっ て 支 え られ る。高 齢 者 ケ ア にか か る総 費 用

の 約1∼2割

が利 用 者 の 自己負 担 に よ っ て賄 われ て い る。(注

16 高 齢 者 ケ ア と 福 祉 サ ー ビ ス に か か わ る ソ ー シ ャ ル サ ー ビ ス の 概 要 は 以 下 の と お り で あ る 。 (a)ホ ー ム ヘ ル プ サ ー ビ ス お よ び 訪 問 介 護 サ ー ビ ス 在 宅 の 高 齢 者 を 対 象 と し た ソー シ ャ ル サ ー ビ ス 。介 護 士 お よ び 看 護 師 と 連 携 を と り な が らサ ー ビ ス が 提 供 さ れ る。 費 用 は 、 サ ー ビ ス 利 用 料 、 利 用 者 の 収 入 な ら び に 家 族 形 態 に 応 じ て 一 部 自 己 負 担 す る 。(2005年 時 点 で65歳 以 上 の6.5パ ー セ ン ト、75歳 以 上 の11.5

パ ーセ ン トが利 用 して い る。)

(b)生 活 支 援 サ ー ビス

主 に 在 宅 高 齢 者 の 日常 生 活 の 補 助 を 目的 と した サ ー

ビス。

・ 食 事(自

宅 へ の 配 達 、ホームヘルパ ー による食事

準 備 、サ ー ビス セ ンタ ー や デ イ セ ン タ ー で の提 供 な

ど)

・ 洗濯(ク リー ニ ン グ、ホームヘルパ ーの補助 な ど)

・ 移 動(交 通 公 共 機 関 と 同 額 で タ ク シ ー 利 用 可)

・ 日中 の 活 動(サ

ー ビ スセ ン タ ー や デ イ セ ン ター に

お け る運 動 ・他 者 との 交 流 の機 会 の提 供 な ど)

・付 き添 い等 。

(c)住 宅 サ ー ビス

自宅 で で き る 限 り長 く暮 らす こ と を支 援 す る サ ー ビ

ス。

・住 宅 改 修 費 用 の 補 助

・サ ー ビス ハ ウス(賃 貸 型 高 齢 者 住 宅)の 提 供(利

用 者 は家 賃 の ほ か 、食 費 や 各 種 サ ー ビス の費 用 負 担)

(d)イ ン フ ォー マ ル ケ ア(家 族 や 親 族 に よ る ケ ア)の サ ポ

ー ト

家 族 介 護 の た め の費 用 補 助

・ 介護 者 手 当(月 額317 .22ユ ー ロと定 め られてい る。

但 し、要 介 護 者 の状 況 が深 刻 で あ り、介 護 の た め に

仕 事 を休 職 しな くて は な らな い 場 合 な ど、最 低600

ユ ー ロが 保 障 され る)

・ 介 護 休 暇 の支 援(介

護 者 は 月 に三 回 の介 護 休 暇 が

自治 体 で 保 障 され て い るた め 、シ ョー トステ イ 等 の

補 助 を しな くて は な らな い)

(e)補 助 器 具 ・健 康 管 理 等

高 齢 者 の た めの保 健 ・健 康 管理 を補 助

・補 助器 具(車 椅 子 、杖等)の 貸 し出 し(各 自治体

ヘ ル ス ケ ア セ ンタ ー の 責任 に て提 供)

・長 期 療 養(が

んや 糖 尿 病 な ど)で 必 要 なデ ィス ポ

ー ザ ル機 器(各 自治 体 ヘ ル ス ケ ア セ ン ター にて 無 料

(5)

提供)

・高 価 な機 器 類(電 動 車 椅 子 、昇 降ベ ッ ド等)の 貸

し出 し(各 自治 体 の病 院 の リハ ビ リテ ー シ ョ ン部 門

か ら提 供)

(f)施 設 サ ー ビス

24時 間 の介 護 、

サ ー ビス が備 わ った介 護 施 設 を指 し、

長 期 入 所 サ ー ビス と シ ョー トス テ イ のサ ー ビス を 受

け る こ とが で き る。

長 期 入 所 サ ー ビス の利 用 者 は、 元 に は最 低 で も80ユ

ー ロ/月 が残 し、収入 の80パ ーセ ン トを費用 として

支 払 う。 月80ユ

ー ロで は 実 費 が ま か な え る場 合 は少

な く、 差 額 は 自治 体 が 負 担 す る。 介 護 ・看 護 の ほ か 、

必 要 に応 じて 眼鏡 や 入 れ 歯 、衣 服 、タ オル や ベ ッ ドリ

ネ ン 、家 具 な ども提 供 され る。

・ 老 人 ホ ー ム

・ヘ ル ス ケ アセ ン ター の長 期 療 養 病 棟

・認 知 症 等 の た め の特 別 ケ アユ ニ ッ ト棟

(g)プ ライ ベ ー トフ ァ ミ リー ケ ア

一 般 の 家 庭 が 高 齢者 の 家族 に代 わ り介 護 す るも の

。受

入 高 齢 者 の た め に相 応 の トレー ニ ン グ を受 講 し、環 境

を整 え る義 務 を 要 し、 自治 体 か ら介 護 手 当(310.44

ユ ー ロ∼/月)と

必 要 経 費(350ユ

ー ロ/月)が

支 払

わ れ る。

(a)(b)(c)(d)は

在 宅 ケ ア を、(f)は

施 設 ケ ア も し くは

在 宅外 ケ ア 、(e)は 混 合 ケ ア の サー ビス で あ り、フ ィ ン ラ ン

ドの 高齢 者 福 祉 政 策 の理 念 は、で き るだ け 多 くの 高齢 者 が 自

宅や 慣 れ 親 しん だ環 境 で、家 族 や 社 会 ネ ッ トワー ク に よ る支

援 を受 け な が ら、

で き る限 り自立 した 生活 を 営 め る環 境 を創

出す る こ とに あ る こ とが わか る。そ こに は 高齢 者 が直 面 す る

生 活 面 や 経 済 面 な ど種 々 の不 安 を軽 減 し、自 ら必 要 とす るサ

ー ビス を 選 択 し気 軽 に利 用 す る こ とが で き る仕 組 み を構 築

す る こ とで 、

社 会 的 な 統合 お よび公 平 さの確 保 も保 障 され て

い る。 この こ とは 、わが 国 の高 齢 化 社 会 の 問題 と して 、 しば

しば 「

社 会 的孤 立 」や 「

社 交 性 の欠 如 」 な ど、社 会 か ら離 脱

を 余 儀 な く さ れ る 事 態 に 対 し 、社 会 保 障 シ ス テ ム が 高 齢 化 社 会 の イ ン フ ラ に 必 要 不 可 欠 で あ る こ と を 示 す の み な らず 、中 年 期 か ら 高 年 期 の 生 活 感 覚 を で き る だ け 保 持 しつ つ 、一 人 ひ と り異 な る 人 生 で 培 っ て き た 自 主 性 や 自 立 性 に 依 っ て 立 つ 「自恃 」 を 活 か し う る 、本 来 の 公 平 性 と は な に か 、 あ ら た め て 問 い か け る こ と が 必 要 と な ろ う。 こ れ ら の 理 念 を ふ ま え 、1990年 以 降 、 施 設 ケ ア か ら在 宅 ケ ア へ 移 行 す る 傾 向 に あ り 、在 宅 ケ ア を 支 援 す る さ ま ざ ま な ソ ー シ ャ ル サ ー ビ ス が 充 実 す る こ と と な つ た 。 こ れ は 、先 述 し たVALTAVA改 革 の 指 向 を 反 映 し た 結 果 で も あ り 、さ ら に は 1993年 の 税 制 改 革 を 受 け 、 翌 年1994年 に 保 健 福 祉 省 、 自 治 省 、 環 境 省 と そ の 傘 下 に あ る 住 宅 基 金 局(ARA)が 連 盟 で 、 各 自 治 体 に 従 来 の 医 療 福 祉 シ ス テ ム と 住 宅 政 策 の 抜 本 的 改 革 を 求 め た こ と も 大 き な 影 響 を 与 え て い る 。実 際 に ヽ国 の 目 標 と し て 、75歳 以 上 の 高 齢 者 の90パ ー セ ン トが 必 要 な サ ー ビ ス を 受 け な が ら在 宅 で 生 活 す る こ と 、75歳 以 上 の30パ ー セ ン トの 高 齢 者 が 定 期 的 に サ ー ビ ス を利 用 で き る こ と 、3∼5 パ ー セ ン トが サ ー ビ ス ハ ウ ス に 住 む こ と 、 施 設 ケ ア は5∼7 パ ー セ ン トに 抑 え る こ と な ど が 示 さ れ て い る 。1995年 、65 歳 以 上 の 在 宅 ケ ア サ ー ビ ス 利 用 者 の 割 合 は6.5パ ー セ ン ト だ っ た の に 対 し 、10年 後 の 調 査 で は7.3パ ー セ ン ト、 同 じ く サ ー ビ ス ハ ウ ス 利 用 者 も10年 で お よ そ1パ ー セ ン トと 増 加 傾 向 に あ る。 そ の 一 方 で 、施 設 ケ ア(老 人 ホ ー ム ・長 期 療 養 病 床)サ ー ビ ス 利 用 者 の 割 合 は 、1995年 か ら2005年 に か け て 、老 人 ホ ー ム 利 用 者 は0.9パ ー セ ン ト、長 期 療 養 病 床 は 0.4パ ー セ ン トと 減 少 傾 向 に あ る 。(注17そも そ も 施 設 ケ ア は 、 認 知 症 や 身 体 麻 痺 な ど機 能 障 害 が あ り 、24時 間 ケ ア を 必 要 と す る 要 介 護 者 の 求 め る サ ー ビ ス の 充 実 に 加 え 、 近 年 「24 時 間 ケ ア 付 き サ ー ビ ス ハ ウ ス 」 も 増 え て き て お り、要 介 護 高 齢 者 も 住 み 慣 れ た 自 宅 で 生 活 を 送 る こ と も で き る よ う に な っ て き て い る(注18。 同 時 に 、 施 設 ケ ア も 従 前 ど お り の 在 り 方 で は 認 め られ ず 、空 間 構 成 な ど ハ ー ド面 ・居 住 者 そ れ ぞ れ の 生 活 を つ く りだ す ソ フ ト面 の 両 面 よ り、で き る か ぎ り 「在 宅 ケ ア 」 に 近 い 環 境 を創 出 し 、居 住 高 齢 者 のQoLの 確 保 に 努

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力 して い る。 調 査 対 象 と し た 施 設 ケ ア 「ヘ ル シ ン キ 市 立 ロ イ フ ヴ ォ リ 高 齢 者 セ ン タ ー(Roihuvuoren  vanhustenkeskus)」(以 下 、 ロ イ フ ヴ ォ リ高 齢 者 セ ン タ ー と記 す)は 、現 在 は 居 住 型 施 設 と な っ て い る が 、VALTAVA政 策 以 前 は 、 長 期 医 療 に 即 し た い わ ゆ る 病 棟 で あ っ た 。しか し、現 在 は 、さ ま ざ ま な 工 夫 に よ り、 居 住 高 齢 者 の 「家 」 と し て の 環 境 づ く り を 行 っ て い る 。 本 報 告 で は 、病 棟 を 居 住 ス ペ ー ス とす る た め 改 修 等 ハ ー ド面 で は な く 、 ソ フ ト面 で の さ ま ざ ま な 工 夫 に つ い て 、2011年3月 と9月 の 二 回 に わ た り調 査 ・聞 き 取 り を お こ な い 、居 住 す る に 相 応 しい 環 境 づ く りに な に が 必 要 か を 明 ら か に し、そ こ か ら あ ら た め て 「家 」と は な に か ヽ環 境 づ く り に 資 す る 「衣 服 」 の 役 割 と は な に か を 探 る 事 を 目 的 と し た 。次 章 で は 、在 宅 ケ ア を 指 向 す る フ ィ ン ラ ン ドの 高 齢 者 福 祉 に お け る 施 設 ケ ア に つ い て 、 具 体 的 に 言 及 す る。 3.ヘ ル シ ン キ 市 立 ロ イ フ ヴ ォ リ高 齢 者 セ ン タ ー 3.1沿 革 り、 お よ そ4万2千 人 の 職 員 を擁 す る社 会 部 が ヽ 社 会 保 障 、 地 域 サ ー ビ ス 、高 齢 者 施 設 、予 防 医 療 の た め の 保 健 セ ン タ ー (2010年 よ り)を 統 括 し て い る 。 現 在 、 ヘ ル シ ン キ 市 の 高 齢 者 施 設 は11カ 所(図1)(内 、 居 住 型 施 設8カ 所 、 高 齢 者 や 生 活 保 護 者 を 対 象 と し た コ ミ ュ ニ テ ィ ー ・セ ン タ ー3カ 所) あ り、本 研 究 調 査 に て 対 象 と し た ロ イ フ ヴ ォ リ高 齢 者 セ ン タ ー は、 居 住 型 施 設 に あ た る。 ロ イ フ ヴ ォ リ高 齢 者 セ ン タ ー は 、ヘ ル シ ン キ 市 中 心 部 か ら 北 東 お よ そ10kmに 位 置 し て い る 。 ヘ ル シ ン キ 市 郊 外 で あ る た め 高 齢 者 セ ン タ ー の 周 辺 は 、夫 婦 や 低 年 齢 層 の 子 ど も が い る 家 族 の た め の 集 合 住 宅 が 見 ら れ る 地 域 で あ る。各 階A棟 ・ B棟 に わ か れ た4階 建 て の 高 齢 者 セ ン タ ー は 、他 の 集 合 住 宅 と 同 様 、赤 煉 瓦 の 外 壁 に 、ガ ラ ス 張 り の テ ラ ス を 有 す る 造 り と な っ て い る。(写 真1) 図1)ヘ ル シ ン キ 市 立 高 齢 者 施 設 地 図 ヘ ル シ ン キ 市 は 人 口お よ そ56万 人 の 内 、65歳 以 上 の 高 齢 者 人 口 は13.8%で あ る(2006年 統 計 よ り)。他 の 自治 体 同 様 、 ヘ ル シ ン キ 市 が 提 供 す る 公 共 保 健 サ ー ビ ス や 社 会 福 祉 が あ 写 真1)ヘ ル シ ンキ 市 立 ロ イフ ヴ ォ リ高 齢 者 セ ン ター 外 観 1960年 の 設 立 当 初 は 、 長 期 医 療 病 床 を 主 体 と し た 、 い わ ゆ る 老 人 ホ ー ム で あ っ た た め 、対 象 と な る 高 齢 者 を で き る だ け 多 く且 つ 合 理 的 に 収 容 で き る よ う、居 室 レ イ ア ウ ト も 直 線 の 廊 下 に ヽ一 室6名 収 容 可 能 な ベ ッ ド を 中 心 と し た 多 床 室 が 並 列 す る 、 無 機 質 な 構 造 で あ っ た と い う。 先 述 のVALTAVA 改 革 、税 制 改 革 を 経 て 、2000年 か ら2001年 に 改 築 、部 屋 の 収 容 者 数 は 、フ ィ ン ラ ン ド人 の 生 活 観 に 見 合 う一 人 部 屋(16 平 方 メ ー トル)も し く は 二 人 部 屋(20平 方 メ ー トル)を 採 用 し 、ま た 、1グ ル ー プ6名 程 度 を 、2か ら3グ ル ー プ と1 ユ ニ ッ ト と し 、ユ ニ ッ ト毎 に 集 え る 共 有 ス ペ ー ス を 設 け 、共 有 ス ペ ー ス と廊 下 が 有 機 的 な 形 状 で 各 室 を 繋 ぐ ヽ現 行 の 構 造

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と な っ た(図2)。 い ず れ の 共 有 ス ペ ー ス も 暖 炉 が 設 け られ 、 基 本 的 に 居 住 者 同 士 が 集 っ た り、一 緒 に 食 事 を 取 っ た り 、話 合 い を お こ な っ た り、 寛 い だ りす る 。 構 成 区 分 は ヽ居 住 高 齢 者 の 症 例 に あ わ せ 、7ユ ニ ッ トに 分 け られ て い る 。 内 、3ユ ニ ッ トは 認 知 症 高 齢 者 、 そ の ほ か 、 精 神 的 障 害 を 持 つ 高 齢 者 、身 体 麻 痺 な ど機 能 障 害 を 有 す る 高 齢 者 が 利 用 す る 長 期 利 用 者 用(110床)の セ ク シ ョ ン(2∼ 4階)と 、 高 齢 者 が 自 宅 で 生 活 で き る よ う リハ ビ リテ ー シ ョ ン や 評 価 を 行 う居 室(地 階 部)(図3)や 、 在 宅 介 護 す る 家 族 に 対 す る イ ン フ ォ ー マ ル ケ ア の サ ポ ー ト(注19と い っ た 、 短 期 利 用 者 用(37床)の セ ク シ ョ ン(2階)に わ か れ て い る。 そ の ほ か 、図 書 館 や カ フ ェ ・レ ス トラ ン と い っ た 地 域 住 民 や 高 齢 者 が 自 由 に 利 用 で き る 地 域 サ ー ビ ス を 提 供 す る コ ミ ュ ニ テ ィ ー ・セ ン タ ー(1階)が 併 設 され て い る 。 な か で も 、 2011年 に は 、 身 体 機 能 障 害 を 持 つ 短 期 滞 在 者 が 日常 生 活 に 復 帰 す る た め の 練 習 用 台 所 を 新 設 し 、リハ ビ リテ ー シ ョ ン や 技 能 チ ェ ッ ク を 理 学 療 法 士 や 作 業 療 法 士 、ソ ー シ ャ ル ワ ー カ ー と と も に 評 価 す る こ と に 力 を 入 れ て い る 。こ うした 取 り組 み は 、高 齢 者 の 在 宅 ケ ア を 推 進 す る 国 家 施 策 に 沿 う だ け で な く ヽ身 体 機 能 が 低 下 も し く は 障 害 が あ る 高 齢 者 で も 、 自 主 性 を 維 持 し 、自 立 した 生 活 環 境 を創 出 す る 一 助 と な っ て い る こ と が わ か る 。 図3)ロ イフ ヴ ォ リ高 齢 者 セ ン ター 見 取 図(地 階) 他 の ヘ ル シ ン キ 市 立 高 齢 者 セ ン タ ー に 比 べ 、ロ イ フ ヴ ォ リ 高 齢 者 セ ン タ ー の 規 模 は 大 き い も の で は な い 。労 働 人 員(以 下 、 ス タ ッ フ と 記 す)の 構 成 は 、 職 員141名(内 、8割 は 介 護 士 の 資 格 を 有 す る)、 看 護 師35名 、医 学 療 法 士 や 作 業 療 法 士 な ど 専 門 分 野6名 、上 記7ユ ニ ッ トそ れ ぞ れ に 社 会 ア ドバ イ ザ ー(注2° が 一 名 ず つ 配 置 さ れ て い る 。 そ の ほ か 、 清 掃 や 種 々 の 手 助 け す る 補 助 員(資 格 無)10名 の 計200名 弱 の ス タ ッ フ が ヽ 昼 夜 交 代 制 シ フ トを 組 み な が ら 、147名 の 利 用 者 を サ ポ ー トす る 体 勢 と な っ て い る 。 尚 、医 師 は 常 駐 して お ら ず 、そ の 分 、保 険 医 療 サ ー ビ ス を 利 用 して 週4回 在 中 す る 仕 組 み と な っ て い る。 と は い え 、被 介 護 者1名 に 対 す る 介 護 者 の 負 担 は 大 き く 、介 護 者1名 が6名 の 認 知 高 齢 居 住 者 を 担 当 す る こ と に な る 。 さ ら に 、ヘ ル シ ン キ 市 の 高 齢 者 施 設 の い ず れ も 、居 住 者 だ け で な く 地 域 住 民 も 自 由 に 利 用 で き る コ ミ ュ ニ テ ィ ー ・セ ン タ ー と65歳 以 上 を 対 象 と し た サ ー ビ ス セ ン タ ー(注21を 併 設 し て お り 、 コ ミ ュ ニ テ ィ ー ・セ ン タ ー とサ ー ビ ス セ ン タ ー を 合 わ せ て 外 部 使 用 者 は 月 間2 ,000名 を 超 え(注22、 急 激 に 増 加 し つ つ あ る 。 そ れ に 対 し 、職 員4名 が 対 応 す る な ど 、介 護 者 数 と被 介 護 者 数 の 不 均 衡 は 、福 祉 国 家 と して 認 知 さ れ る フ ィ ン ラ ン ドで も課 題 と な っ て い る。(注23し か し、高 齢 者 セ ン タ ー 内 に 設 け られ た コ ミ ュ ニ テ ィ ー ・セ ン タ ー は 、居 住 高 齢 者 と 地 域 住 民 と の 積 極 的 な 交 流 を 促 しヽ同 時 に 、居 住 高 齢 者 の 社 交 性 を 高 め る 上 で 重 要 な 機 能 を 果 た し て い る こ と か ら も 、現 状 で は 、積 極 的 に 高 齢 者 セ ン タ ー 内 に コ ミ ュ ニ テ ィ ー ・セ ン タ ー の 機 能 を 付 加 す る 方 向 に な りつ つ あ る。2011年3月 の 調 査 時 に は 、 ロ イ フ ヴ ォ リ高 齢 者 セ ン

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タ ー の 他 、 ヘ ル シ ン キ 市 東 部 地 域 の 市 立 高 齢 者 セ ン タ ー (Kontulan  palvelukeskus)を 訪 問 し た 際 、 カ フ ェ ・レ ス ト ラ ン 、 図 書 館 、 美 容 室 、 マ ッ サ ー ジ 店 、 ネ イ ル サ ロ ン 、 作 品 制 作 が で き る 工 房 、高 齢 者 向 け 衣 料 店 な ど、高 齢 者 セ ン タ ー 1階 ス ペ ー ス に 多 様 な 地 域 サ ー ビ ス が 付 帯 され て お り、居 住 高 齢 者 は も ち ろ ん 、そ の 家 族 、地 域 住 民 が 多 く利 用 し て い た 。 な か で も 、近 所 の 子 ど も た ち が 高 齢 者 と と も に 図 書 館 や 工 房 を 利 用 し、 コ ミ ュ ニ テ ィ ー ・セ ン タ ー と し て 実 質 的 に 機 能 し て い る 様 子 は 印 象 的 で あ っ た 。 3.2理 念 2011年3月 と9月 の 二 回 に わ た り ヽ セ ン タ ー 長 兼 婦 長 マ リ ッ タ ・ハ ー ヴ ィ ス ト女 史(Ms.MarittaHaavisto)(以 下 、 ハ ー ヴ ィ ス ト女 史 と記 す)へ の 聞 き 取 り調 査 を 行 っ た 。ハ ー ヴ ィ ス ト女 史 は 心 理 学 を 学 び 、精 神 的 疾 患 の ケ ア を 専 門 と し て い る 。2003年 か ら2006年 に か け て ヽ 当 該 セ ン タ ー の 職 員 (介 護 ス タ ッ フ)と し て 従 事 し 、2006年 に 大 学 に て 学 び な お し 臨 床 心 理 療 法 士 の 資 格 を 得 て ヘ ル シ ン キ 市 立 病 院 に 勤 務 、2007年 ク ス タ ン カ ル タ ノ 高 齢 者 セ ン タ ー に 勤 務 、2010 年 に ロ イ フ ヴ ォ リ 高 齢 者 セ ン タ ー に 再 勤 務 、セ ン タ ー 長 に 就 任 す る と い う経 歴 を も っ て い る 。セ ン タ ー 長 に就 任 後 、そ れ ま で セ ク シ ョ ン 毎 に わ か れ て い た ロ イ フ ヴ ォ リ 高 齢 者 セ ン タ ー 内 を ま と め る た め 、サ ー ビ ス 基 準 を 立 ち 上 げ 、セ ン タ ー 全 体 が 一 つ の ま と ま り(ハ ー ヴ ィ ス ト女 史 の い う と こ ろ の 「コ ミ ュ ニ テ ィ ー 」)と な る よ う整 備 を 行 っ た 。 こ の サ ー ビ ス 基 準 と は 、 従 来 の 高 齢 者 セ ン タ ー 共 同 体 の 活 動 モ デ ル (PohjolaLMuurinenSym.(2006))や 、 高 齢 者 福 祉 に 関 す る 先 行 研 究(KurkiL,(2007))を も と に 、ハ ー ヴ ィ ス ト女 史 が 、2010年6.月 に 「社 会 的 つ な が り の た め の 品 質 基 準 (YHTEISOLLISYYDEN LAATUKRITEERIT)」 と 題 し 提 唱 し た も の で 、 セ ン タ ー 全 体 に 公 布 され た 。 「人 間 に と っ て 、他 の 人 とつ な が り を も つ こ と 、及 び コ ミ ュ ニ テ ィ ー に 属 し て い る こ と の 必 要 は 生 き て い る 限 り あ る こ と で あ る 。老 人 ホ ー ム/サ ー ビ ス ホ ー ム に 居 住 す る 高 齢 者 達 の 間 で の コ ミ ュ ニ テ ィ ー は 介 護 者 、及 び 居 住 仲 間 に よ っ て 形 成 さ れ る。 尚 且 つ 、各 居 住 者 は 依 然 と して 家 族 の よ うな そ の 他 の 独 自 の コ ミ ュ ニ テ ィ ー の メ ン バ ー で も あ る 。職 員 に と っ て 職 場 の コ ミ ュ ニ テ ィ ー で の 人 間 関 係 は 、 勤 務 上 の 持 久 力 、 及 び 自 己 業 務 向 上 に 関 わ っ て の 重 要 な 意 味 が あ る 。こ の よ う な 社 会 的 関 係 、つ な が り を 支 援 す る こ と に よ り 、居 住 者 の 福 祉 を 、所 属 感 を 増 し 、 同 時 に 職 員 の 福 祉 、及 び 勤 務 能 力 を も 高 め る こ と に な る の で あ る 。社 会 的 つ な が り に 含 ま れ る 事 項 を 特 に 挙 げ て い え ば 、 共 に 同 意 し た 価 値 観 、基 本 理 念 、違 い の 許 容 、相 互 の 支 え 、及 び 継 続 的 な 人 間 的 成 長 の 可 能 性 な ど で あ る 。共 同 体 で の 活 動 モ デ ル に は こ れ ら 要 素 を 論 理 的 か つ 計 画 的 に 実 現 目 標 と し て い く も の で あ る 。」(M. Haavisto(2010)/M.Lakso訳) そ の 上 で 、ロ イ フ ヴ ォ リ高 齢 者 セ ン タ ー で は 、ヘ ル シ ン キ 市 立 ク ス タ ン カ ル タ ノ 高 齢 者 セ ン タ ー(Kustaankartanon palvelukeskus)の 品 質 基 準 を 参 考 に し 、 さ ら に 、 「上 司 、 担 当 看 護 師 、療 法 士 らの 代 表 者 に よ る 改 善 目標 の た め の 午 後 の 集 い(2010年5月26日 実 施)、 及 び 各 セ ク シ ョ ン の 介 護 士 の 会 議(2010年6月23日 実 施)を 通 し て 」(M. Haavisto(2010))、 品 質 基 準 を つ く り あ げ た 。 品 質 基 準 は 、 「居 住 者 の 活 動 」一コ ミ ュ ニ テ ィ ー(注24に お け る 居 住 者 の 関 わ り方 に つ い て な ど11項 目、「コ ミ ュ ニ テ ィ ー の 活 動 理 念 と プ ロ セ ス 」コ ミ ュ ニ テ ィ ー の 活 動 に 居 住 者 が ど の よ うに 関 わ つ て い る か な ど9項 目 、 「コ ミ ュ ニ テ ィ ー の め ざ す 理 念 の 実 現 度 」 一こ こ3ヶ 月 間 の コ ミ ュ ニ テ ィ ー の 雰 囲 気 、 職 場 の 雰 囲 気 、人 間 関 係 な ど7項 目 、 「介 護 士 の 活 動 」一こ こ3ヶ 月 の 居 住 者 に 対 す る 介 護 士 の 活 動 な ど12項 目 、「コ ミ ュ ニ テ ィ ー の 経 済 と 資 材 」 一こ こ3ヶ 月 の 予 算 執 行 と 資 材 活 用 に つ い て 10項 目そ れ ぞ れ を 、 回 答 者 を ス タ ッ フ と し 、 そ れ ぞ れ の 主 観 評 価(よ く 実 現 され て い る:100-75パ ー セ ン ト、 平 均 的 に 実 現 さ れ て い る:74-50パ ー セ ン ト、 平 均 以 下 で 実 現 さ れ て い る:49-25パ ー セ ン ト、実 現 され て い な い:25パ ー セ ン ト 以 下(25パ ー セ ン ト以 下 の 場 合 、補 足 説 明 欄 に 記 入 す る こ と と な っ て い る)を 企 画 担 当 者 に 返 却 す る 形 式 が と られ て い る 。集 約 し た 結 果 は 分 析 さ れ 、 こ れ が 、現 在 の 理 念 へ と つ な

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が つ て い る 。 現 時 点 で 、ロ イ フ ヴ ォ リ高 齢 者 セ ン タ ー で は 、以 下 の4つ の 理 念 を 上 げ て い る 。 ・ み ん な で 一 緒 に 協 力 す る ・ 日常 を 行 動 的 に ・ ア ッ トホ ー ム に ・ で き る か ぎ り 自 分 の こ と をす る 、 自立す る これ ら は 、ス タ ッ フ の み な ら ず 居 住 者 に も 求 め ら れ て お り 、 ス タ ッ フ お よ び 居 住 者 が 相 互 に 協 力 し、能 動 的 に 参 加 す る こ と で 、共 同 生 活 の 場 で 〈自分 の 家 〉 を つ く る た め の 重 要 な 指 針 と な っ て い る。 具 体 的 に は 、食 事 は で き る か ぎ り共 有 ス ペ ー ス に て み ん な で 一 緒 に と る こ とや、居 住 者 そ れ ぞ れ の 強 み を 前 面 に 出 せ る よ う、そ れ ぞ れ に あ っ た 役 割 を ス タ ッ フ が 与 え る こ と で 自 立 性 を 尊 重 す る こ と が あ げ られ る 。ま た 、 日常 を 行 動 的 に す る た め に 、 自 由 に 参 加 で き る グ ル ー プ 行 事(パ ン を 焼 く 、 映 画 を 見 に い く 、 手 芸 を す る 、 歌 を 唄 う等(注25) と 、 全 員 で 参 加 す る 「沈 黙 の 日 」(毎 週 木 曜 日)と 「ダ ン ス 」 (毎 週 金 曜 日)を 設 け 、 自主 的 に 参 加 す る こ と と 行 動 的 に 日 常 を 過 ご す 工 夫 が な され て い る。一 方 で 、行 事 を 特 別 に 設 け る だ け で な く 、 日常 的 に ス タ ッ フ は 必 要 以 上 に 介 護 を せ ず 、 居 住 者 の 自 助 努 力 を 手 助 け す る 程 度 の 介 護 を 意 識 的 に 務 め て い る と い う。 これ に よ り 、居 住 者 は 必 然 的 に 目常 を 行 動 的 に せ ざ る を 得 な い 。 こ う し た 介 護 の 在 り 方 は 、 「患 者 で は な く 自 分 自 身 を保 つ こ と で 、 病 院 や 施 設 で は な く<自 分 の 家 〉 で 生 活 す る こ と へ の 意 識 を 高 め る こ と に な る 」と セ ン タ ー 長 で 婦 長 の マ リ ッ タ ・ハ ー ヴ ィ ス ト女 史 は 指 摘 し て い る 。 さ ら に 、セ ク シ ョ ン 毎 に 共 通 で 参 加 す る 行 事 を 設 け 、そ の 際 、セ ン タ ー の 職 員 全 員 と居 住 者 が 協 力 しな け れ ば 行 事 が 成 り立 た な い 仕 組 み(「 ロ イ フ 郵 便(Roihuposti)」(写 真2)の 発 行(注26や 、 〈ヴ ィ ッ ト リ ー ニ(vitriini)〉 と よ ば れ る 各 セ ク シ ョ ン に あ る 展 示 棚 を利 用 し た ク リ ス マ ス ・デ ィ ス プ レ イ の コ ン テ ス トの 開 催(写 真3)な ど)を つ く る こ と で 、 全 体 意 識 の 向 上 を は か っ た 。これ ら の 仕 組 み は2年 毎 に ス タ ッ フ 全 員 で 運 用 を 評 価 す る こ と で 、現 在 ま で 改 定 し続 け られ て い 3.3〈 自 分 の 家 〉 を 確 立 す る た め に ハ ー ヴ ィ ス ト女 史 の 提 唱 す る 「社 会 的 つ な が りの た め の 品 質 基 準(YHTEISOLLISYYDENLAATUKRITEERIT)」 の と お り 、 高 齢 者 セ ン タ ー は 単 な る ソ ー シ ャ ル サ ー ビ ス を 提 供 す る機 関 だ け で な く 、他 者 とつ な が り持 つ コ ミ ュ ニ テ ィ ー と して 機 能 し、社 会 に 開 か れ て い な け れ ば な ら な い 。 そ の た め に は 、 コ ミ ュ ニ テ ィ ー を 形 成 す る 人 間 関 係 が 重 視 さ れ る の は い う ま で も な い 。あ く ま で も 、居 住 者 の ひ と りひ と り の 人 生 が 尊 重 さ れ て い る こ と は も ち ろ ん の こ と 、他 者 の 人 生 と協 力 し、行 動 的 に 積 極 的 に 参 加 す る こ と に よ り、よ り社 会 に 開 か れ る 契 機 と な ろ う。 そ の 結 果 、 「社 会 的 つ な が り」 が 担 保 さ れ る こ と に な る 。そ の 一 方 で 、 〈自 分 の 家 〉 と は 、理 念 に も あ る 「ア ッ トホ ー ム 」 と 同 義 で あ る が 、 そ の 意 味 す る と こ ろ は 広 く 、 抽 象 的 で す ら あ る。 や や と も す れ ば 、 い わ ゆ る 「内 に 籠 る 」 と い っ た 、社 会 的 つ な が り と は 逆 の 閉 鎖 的 な 感 も な く は な い 。 しか し、い ず れ の 聞 き 取 り調 査 に お い て も 、ハ ー ヴ ィ ス ト女 史 の ほ か 、介 護 士 や 看 護 師 、療 法 士 と い っ た 複 数 の ス タ ッ フ か ら も 〈自分 の 家 〉 と い う表 現 が しば し ば な さ れ て い た 。 そ の た め 、二 回 目 の 聞 き 取 り調 査 で は 、フ ィ ン ラ ン ド人 に と っ て の 〈自 分 の 家 〉 と は な に か 、 〈自分 の 家 〉 を 感 じ る 上 で な に が 必 要 か に つ い て ヒ ア リ ン グ を行 っ た 。 ソ ー シ ャ ル プ ロ グ ラ マ ー の 女 性 と 上 司 職 員 の 女 性2名 に ヽ 〈家 〉 と は な に か に つ い て 聞 い た と こ ろ 、 「自分 の 領 域 」 と の 回 答 を 得 た 。 そ れ は 、 安 心 で き る 自 分 だ け の 〈場 〉 で あ る が 、決 し て 〈場 〉だ け で は な く 、な ん らか の 「人 の つ な が り」

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を感 じさせ る こ とが 重 要 で あ る との こ とで あ っ た。事 例 と し

て 、ヘ ル シ ン キ 市 立 高齢 者 施 設 の建 替 え の際 、廃 校 の 校 舎 を

臨 時 的 に使 用 した 時 に 、

カ ー ペ ッ トや マ ッ トや カ ー テ ン を設

え た こ とに よっ て 、

人 の気 配 を感 じる場 とな っ た こ とを 挙 げ

て い た。 この よ うな 人 の 気 配 を感 じ られ る こ とが 〈

家 〉な ら

ば 、 「

安 心 感 」や 「自分 ら しさ」 を感 じ られ る と同時 に、 「

者 」 と 「

つ なが り」 を感 じ させ る 〈

場 〉 こそ 〈

家 〉 を規 定す

る とい え る。す な わ ち 〈

場 〉は あ くま で も器 と して機 能 す る

にす ぎ ない こ とが わ か る。

感 じ られ る/感

じ させ る事 物 や 記

憶 は、個 々 を と りま く環境 や 経 験 に よ っ て異 な る が 、そ の独

自性 を許 容 し、そ の器 の な か に盛 り込 み ・配 置 で き る こ とが

重 要 で あ る とい え よ う。 それ らをふ ま え 、 〈

家 〉 を象 徴 す る

もの とは何 か 、 とい う質 問 に対 し、 「

写 真 、 ベ ッ ドカ バ ー 、

カ ー テ ン 、ク ッシ ョン 、絵 画 、花 瓶 」 とい っ た 、い わ ゆ る室

内 を装 飾 す るイ ンテ リア用 品が 挙 げ られ た 。これ らは 、一 人

部 屋 や 二 人 部 屋 とい っ た セ ン タ ー 内 の 比 較 的狭 小 の 居 室 を

前 提 と した 回 答 で あ った か も しれ な い が 、しか し、これ らイ

ンテ リア の 本 質 にあ る多 様 性 は 、フ ィ ン ラ ン ド人 が 幼 少 時 か

ら培 って きた 自主 性 と 自立性 の も と選 択 され る こ とで 「

私 ら

しさ」を体 現 し得 る、有 効 な 装 置 とな る とい え よ う。実 際 に 、

居 室 を 拝 見 させ て も らっ た とこ ろ 、家 族 や 友 人 ・知 人 の 写真

や 本 人 の若 か り し頃 の写 真 が飾 られ てお り、居 室 全 体 を 色彩

や 様 式 を組 合 せ 、雰 囲気 を統 一 す る工 夫 が な され て い た。ま

た 、

花 や 人 形 、ぬ い ぐるみ な ど本 人 が好 ま しい と感 じる もの 、

孫 か ら贈 られ た カ ー ドや 家 族 か らの 手 紙 な ど思 い 入 れ の あ

る も の 、

長 く愛 用 して き た 古 い 家 具 な ど愛 着 の あ る も の とい

つ た、居 住 者 そ れ ぞ れ の感 性 や価 値 観 を 可視 化 す る物 や 、居

住 者 の 人 生 の 記 憶 装 置 た る物 に 囲 まれ る こ とで 、

安 心 感 と居

心 地 の 良 さが あ る 「自分 の領 域 」を創 出す る こ と に成 功 して

い た 。(写 真4、5)

従 来 の 老人 ホー ムや 高 齢 者 施 設 はヽ医 療 的措 置 を 主 とす る

が故 、ベ ッ ドを 中 心 と した 生活 圏 で あ っ た。 しか し、ロイ フ

ブ ォ リ高 齢 者 セ ン ター の よ うに、 〈

場 〉 を 共有 す る人 間 関係

を軸 と した コ ミュニ テ ィー を形成 しヽ

社 会 的つ な が りを福 祉

の 「

品 質 」と見 なす 力 動 は 、今 日の よ うに 医療 と福 祉 が 限 り

な く連続 化 し、

不 可分 とな っ た動 向 に見 合 う好 例 とい え よ う。

同 時 に 、ス タ ッフ と居 住 者 の 協 力 的 ・行 動 的 ・自立 的 に 関 わ

りな が ら形 成 され る 「

独 自の コ ミ ュニ テ ィー 」は、高齢 者 施

設 を地 域 社 会 の な か の一 つ の 〈

家 〉 とみ なす こ とが で き る。

これ は 、 「

社 会 的 つ な が りの た め の 品質 基 準 」 で も触 れ られ

て い た、人 間 の 生 に お い て 必 要 な他 者 とのつ な が り及 び 所 属

感 を、地 域 社 会 の な か で 実感 で き る 〈

場 〉 と して 機 能 して い

るの だ 。一 方 で ヽ地 域 社 会 に属 す る 〈

家 〉の なか に、 さ らに

自分 の 家 〉を確 保 す る こ とは、豊 富 な 人 生経 験 を経 て 、あ

る程 度 確 立 され た 自我 を 有 す る居 住 者 の拠 り所 と して 必 要

不 可 欠 で あ る。 こ の よ うに、居 住 者 の 自主性 ・自立性 を 前提

に 、社 交性 を もっ て 地域 社 会 と関 わ る た め の 「

大 き な 〈

家 〉」

の な か に 、 さ らに個 々 の独 自性 を担 保 す る 「

小 さ な 〈

家 〉

が存 在 す る 、入 れ 子 構 造 を もつ 高 齢 者 施 設 こそ 、本 来 的福 祉

を実 践 す る上 で 重 要 で あ る と思 わ れ る。

4.も

う一 つ の 〈自分 の 家 〉 と して の 衣 服

4.1「

制 服 」 か ら 「

私 服 」 へ

2011年3月

、 ロ イ フ ヴォ リ高 齢 者 セ ン ター 初 訪 問 の 際 の

第 一 印 象 は 、ス タ ッフ と居 住 者 も しく は居 住 者 の 家 族 が 容 易

に 見 分 け られ な い とい う こ とで あ っ た。そ の 要 因 の 一 つ と し

て 「

私 服 」 の 着 用 が 挙 げ られ る。 そ も そ も 、本 研 究 調 査 は、

(11)

病 衣 の 延 長 上 に位 置 す る高齢 者 衣 服 を 対象 と して い た た め 、

ま ず は居 住 高 齢 者 の衣 服 へ の 意 識 調 査 な ど を行 う予 定 で あ

った 。 しか し、先 述 した よ うに ス タ ッフ の衣 服 も また 、独 自

の コ ミュニ テ ィー 形成 に お い て重 要 な装 置 とな って お り、

調

査 を進 め るな か で 、当該 セ ン ター で は、意 志 的 に 衣 服 の 改 革

が 進 め られ た こ とが 明 らか に な っ た。

現 セ ンタ ー 長 ハ ー ヴィ ス ト女 史 は 、ロイ フ ヴォ リ高齢 者 セ

ン ター の 一 介護 士 で あ っ た 当 時 の上 司 、

看 護 師 ペ ル クネ ン氏

に よ る現 場 か ら発 信 す る新 規 事 業 へ の取 り組 み に深 く共 感

し、2004年1自

ら 「

衣 服 の 自 由化 」 運 動 を展 開 して い る。

そ もそ も介 護 者 と して精 神 的 疾 患 の ケ ア を 担 当 して い た経

緯 か ら、医師 や 看 護 師 の よ うな 「

制 服 」 を着 用 す る場 面 が な

か っ た こ と と、特 に 専 門 とす る心 理 学 の見 地 か ら も、意識 的

に 役 割 分 担 を 規 定 し、そ の結 果 、無 意 識 的 に 上 下 関係 や 主従

関係 が 生 じ る制 服 は 、

福 祉 を提 供 す る高 齢 者 施 設 に は違 和感

を 覚 え 、

改 善 した い と考 えた こ とが き っか け とな っ た との こ

とで あ る。衣 服 の 自由化 に 向 け、賛 同 者 が 実 際 に 私服 を着 用

し職 務 に従 事 し、

現 場 にお け る居 住 者 の 好 意 的 な反 応 を提 示

す る とい っ た 、ボ トム ア ップ の 改 革 で 実 践 した。 しか し、他

の部 署 一特 に、 救 急 病 棟一の ス タ ッフ か らは強 い 反 対 もあ り、

依 然 と して 白衣 を着 用 して い た 理 由 と して 、当初 は 、衛 生 面

の 問題(注27、

居 住 者 とス タ ッフ の 差別 化 が 困難 に な る とい っ

た種 々 の不 安 要 因 のた めだ けで な く、白衣 が看 護 師 な ど 医療

従 事 者 の ア イ デ ン テ ィテ ィ を表 象 す る もの で あ っ た こ と も

大 きい 。現在 は 、ロイ フ ヴォ リ全 体 で 私 服 着用 とな っ てお り、

看 護 師 も率 先 して 私 服 着 用 を実 践 して い るが 、改 革 当初 、高

齢 者 施 設 に お け る居 住 者 とス タ ッフ の 関係 性 を ど う捉 え る

か に よ って 、私服 か制 服 か の議 論 が な され て きた こ とが 見 て

取 れ る。

結 果 的 に、ス タ ッフ も 自分 で選 ん だ私 服 を着 用 す る こ とに

な った 。そ の 背 景 に は 、私 服 を着 用 す る こ とで ス タ ッ フ と居

住 者 の 関わ り方 が 好 転 した こ とが 大 き い。一 つ は、ユ ニ ッ ト

毎 にス タ ッ フは 固 定 的 に 配 属 され て お り、

ユ ニ ッ ト毎 に 関係

す るス タ ッ フの 顔 写 真 と名 前 が 掲示 され て い る もの の(写 真

6)、 昼 夜 交 代 制 に よ りス タ ッ フが 頻 繁 に 出入 りす るた め、

居 住 者 が ス タ ッフ を 記 憶 しに くい とい う問題 点 が あ っ た が 、

私 服 を とお して ス タ ッフ を記 憶 す る だ け で な く、

ス タ ッ フの

趣 味 に 共感 す る こ とで 、

新 た な コ ミュニ ケ ー シ ョンが 生 ま れ

る こ と もあ る とい う。特 に 、新 しい 私 服 に敏 感 に反 応 す る居

住 者 もい る こ とか ら も、

季 節 感 や 流 行 な どを積 極 的 に取 り入

れ るな ど、衣 服 を とお した 「

社 会 的 つ な が り」を実 践 して い

る こ と も聞 き 取 る こ とが で き た。これ は衣 服 に限 らず 、

髪 型 、

そ して 表 情 の 変化 に も反 応 す る こ とで あ り、

小 さな 変 化 が あ

る こ とで 、コ ミュ ニテ ィー の さ さや か な活 性 化 につ な が っ て

い るの で あ る。ま た 、私 服 を とお した コ ミュニ ケ ー シ ョンは

双 方 向 的 な もの で あ り、居 住 者 も ま た 自 らの私 服 で 「自分 ら

し さ」を表 現 す る こ とで 、他 居 住 者 や ス タ ッ フ と 円滑 な コ ミ

ュ ニ ケ ー シ ョン を成 立 させ て い る(写 真7)。 ロイ フ ヴォ リ高

齢 者 セ ン タ ー に お け る私 服 着 用 の ポ ジテ ィ ブ な効 果 は、2008

年 に はヘ ル シ ン キ 市社 会 サー ビス事 務 所 が、ヘ ル シ ンキ 市 立

高齢 者 施 設 及 び サ ー ビス ホ ー ム担 当ユ ニ ッ トに 向 け 、 「

高齢

者 ホ ー ム 、

及 び サ ー ビス 居 住機 能 施 設 担 当 ユ ニ ッ トに お け る

職 員 の仕 事 着 に 関 して」と題 す るプ ログ ラム 指 導 を 通 達す る。

そ の 内容 は 、 「

私 服 風 職 場 服 」 に よっ て 、職 員 の パ ー ソナ リ

テ ィー を尊 重 し、

ア ッ トホ ー ム な 雰 囲気 や コ ミュ ニ テ ィ ー で

の平 等 性 を もた らす こ と を 目標 と し、条 件 に 該 当 す る職 員(注

28に対 し

、私 服 風職 場服 の 費用 を支 給 す る こ とに な っ て い る。

ま た 、認 知 症 居 住 高 齢 者 へ の 配 慮 か ら、認 知 症 患 者 セ ク シ ョ

ン の場 合 は 「

白い 衣 服 」や 「

落 ち着 か な い模 様 等 の衣 服 」 を

着 用 しない よ う指 導 もな され て い る。手 入 れ や 管 理 に 関 して

も基 本 的 に個 人 の裁 量 に任 され て い るが 、

所 属 ユ ニ ッ トの洗

濯 機 に よ っ て 勤 務 時 間 内 に 執 行 す る こ と と な っ て い る こ と

か ら も、私 服 とい え ども 、あ くま で も職 場 服 で あ り、そ れ ら

はす べ て 地 方 自治 体 で の保 護 服 契約 に基 づ い て い る。さ らに、

2009年 か ら2010年 に か け て 、フ ィ ン ラ ン ド高 齢 者 施 設 全 体

の 取 り組 み に も発 展 して い る。 これ を受 け て 、2011年

に ロ

イ フ ヴォ リ高齢 者 セ ンタ ー で は 、新 た に指 示 書 を作 成 し、そ

の な か で 「

ロ イ フ ヴォ リ高 齢 者 セ ン ター にお い て の 常 識 的 な

(12)

服 装 とは 、

各 人 の 自 由な か つ 他 者 に 敬 意 を 払 っ た服 装 とい う

こ とで あ る 」と記 され て い る こ とか らも、自 ら着 用す る服 を

選 ぶ こ とか ら 自主性 と 自立 性 を保 障 し、且 つ 、居 住 者 とス タ

ッ フ の コ ミュ ニ ケ ー シ ョン を 推 進 す る社 交性 を涵 養 す る こ

とが 衣 服 に は 可 能 で あ る こ とを示 してお り、そ の 点 か ら も衣

服 は も う一 つ の 〈自分 の家 〉 と もい え よ う。

4.2私 服 の 効 用 一ス タ ッ フ を 対 象 と した ア ン ケ ー ト調 査 2011年9月 に 実 施 し た 二 回 目 の 聞 き 取 り調 査 の 際 に は 、 ス タ ッ フ を 対 象 に 「ロ イ フ ヴ ォ リ 高 齢 者 セ ン タ ー の 居 住 者 な ら び に ス タ ッ フ の 私 服 の 効 用 に つ い て 」の ア ン ケ ー ト調 査 を 行 っ た 。 ア ン ケ ー トの 項 目 は 、 付 録 の とお りで あ る 。 回 答 者 数 は7名 で 、4名 の 介 護 士(20代 女 性1名 、50代 女 性2名 、60代 女 性1名)、1名 の ソ ー シ ャ ル プ ロ グ ラ マ ー (30代 男 性)、1名 の 理 学 療 法 士(30代 女 性)、1名 の 看 護 師(50代 女 性)、 そ し て1名 の 学 習 契 約 学 生 職 員(大 学 在 学 中 に イ ン タ ー ン シ ッ プ の か た ち で 入 る 学 生 職 員 の こ と)(20 代 女 性)と な っ て い る 。 職 場 服 と し て 私 服 と 制 服 の ど ち ら が 良 い か と の 問 い に 対 し 、 全 員 が 「私 服 」 と 回 答 し て お り 、 そ の 理 由 は 、 「(着用 時 の)心 地 よ さ 」 と 「(居住 者 に 対 し て)ア ッ トホ ー ム な 雰 囲 気 を 創 出 で き る 」 な ど が 挙 げ られ た 。 特 に 後 者 に 関 し て は 、 「高 齢 者 ホ ー ム は お 年 寄 り に と っ て の 〈家 〉で あ り、病 院 で は な い 。私 服 を 着 用 す る こ と に よ っ て 、ス タ ッ フ は 居 住 者 か ら も よ り身 近 で 近 づ き や す い 、ま た 同 等 の 存 在 と な る こ と が で き る 」な ど 、無 意 識 的 な 上 下 関 係 を 生 み 出 す 制 服 と は 異 な る 私 服 の 効 用 に つ い て の 言 及 が み られ た 。 ま た 、 自 ら職 場 服 を 選 ぶ 際 に 気 を つ け て い る 点 に つ い て 、 9項 目 か ら複 数 選 択 し て も ら い 、さ ら に 自 由 筆 記 に て 回 答 し て も ら っ た と こ ろ 、 機 能 性(動 き や す さ)、 心 象 性(居 住 者 の 印 象 に 残 りや す い こ と)、 自分 ら し さ(自 分 ら しい お しゃ れ)を 複 数 選 択 す る ケ ー ス が 多 く 見 られ た 。機 能 性 で は 、居 住 者 の 靴 を は く の を 手 伝 う際 の 前 屈 や 、居 住 者 を 抱 え 上 げ る 際 の 中 腰 動 作 や 、移 動 の サ ポ ー トな ど に 適 し た 動 き や す い 介 護 動 作 の 妨 げ に 成 ら な い こ と が 大 切 で あ り、動 作 性 の 高 い 伸 縮 素 材 や 、膝 や 肘 な ど負 担 の か か る 部 位 が 丈 夫 な も の な どが 好 ま し い と の 意 見 も み られ た(写 真8)。 心 象 性 で は 、色 へ の 言 及 が 多 く 見 られ た 。 具 体 的 に は 「い き い き と は っ き り し た,色 鮮 や か な 」(介 護 士:20代 女 性)、 「明 る く元 気 で 、ま た は ニ ュ ー トラ ル な 色 。黒 や グ レー で は 悪 い 印 象 を 受 け る 」(ソ ー シ ャ ル プ ロ グ ラ マ ー:30代 男 性)ヽ 「色 鮮 や か さ 」(介 護 士:50代 女 性 ・60代 女 性)な ど ヽ視 認 性 と誘 目性 の あ る 高 彩 度 の 衣 服 は 、居 住 高 齢 者 に と っ て 印 象 が よ い と の こ と で あ る 。 ま た 、 「男 性 ら し い 衣 服 を 着 用 し て い る と 、 良 く褒 め ら れ る 」(ソ ー シ ャ ル プ ロ グ ラ マ ー:30代 男 性)と あ る よ う に 、居 住 高 齢 者 が 異 性 を 意 識 す る こ と は 心 理 的 な 活 性 を も た ら し 、 「社 会 的 つ な が り」 の 上 で も重 要 な 視 点 で あ る と い え よ う。 一 方 で 、 「看 護 師 を 見 つ け や す い 」 (看 護 師:50代 女 性)な ど 、 居 住 者 が ス タ ッ フ を 必 要 とす る 場 合 ヽ困 惑 し な い 配 慮 も 必 要 と の 意 見 も あ り、 これ は 私 服 よ り も制 服 の ほ う が 適 し て い る と も 捉 え る こ と が で き る 。ま た 、 「マ リ メ ッ コ(marimekko)(注29の 横 縞Tシ ャ ツ を 着 用 し て い る と 、 居 住 高 齢 者 か ら 印 象 が 良 い)(ソ ー シ ャ ル プ ロ グ ラ マ ー:30代 男 性)と い っ た 、 居 住 高 齢 者 が 社 会 的 に 活 躍 し た 時 代 の 社 会 ・文 化 的 コ ン テ ク ス トの 引 用 も ま た 、記 憶 な ど 認 知 能 力 の 活 性 化 に つ な が っ て い る と捉 え る こ と が で き よ う(写 真9)。 ロ イ フ ヴ ォ リ高 齢 者 セ ン タ ー の ス タ ッ フ は 、 年 間 約120 ユ ー ロ の 職 場 服 調 達 費 用 が 支 給 され て お り 、年 間 で シ ャ ツ な ど トッ プ ス を5∼6枚 、 パ ン ツ な ど ボ トム ス を2∼3着 程 度

(13)

購 入 す る との こ とで あ る。基 本 的 に は、ボ トム ス は 黒 や グ レ

ー な ど他 の 色 彩 と組 合 せ しや す い無 彩 色 の も のや 、トレーニ

ン グパ ンツ とい っ た動 きや す い もの を選 ん でお り、居 住 高齢

者 の 印 象 に残 りや す い よ う、トップ ス に色 鮮 や か な シ ャツ や

横 縞 な どは っ き り した柄 もの の シ ャ ツ な ど を組 み 合 わせ る

ケ ー ス が 多 い(注3°(図4)。

す る ロイ フ ヴォ リ高 齢者 セ ン ター の 取 り組 み は 、

本 来 的 福 祉

の求 め る 「しあ わせ 」や 「

ゆ た か さ」 を 日に見 え る形 と した

上 で 社 交 性 に展 開 され て お り、た いへ ん意 義 深 い も ので あ る。

図4)ア ン ケ ー ト調 査 よ り(一 週 間 の ワ ー ドロー ブ に つ い て) こ の よ う に 、居 住 高 齢 者 の 印 象 に 残 りや す い よ う、特 に 顔 に 近 い 上 半 身 の 衣 服 を 工 夫 す る こ と で 、コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン を と りな が ら 衣 服 の 話(「 新 しい シ ャ ツ ね!」 と い っ た 声 を か け 合 うな ど)か ら ヽ趣 味 、流 行 な ど話 題 が 豊 富 に な っ た と の 回 答(介 護 士:20代 女 性)や 「居 住 者 か ら(衣 服 の)色 や デ ザ イ ン に つ い て 肯 定 的 な コ メ ン トを も ら う」(理 学 療 法 士:30代 女 性)と い っ た も の も み られ た 。 こ れ ら の ア ン ケ ー ト調 査 を とお し て 、高 齢 者 セ ン タ ー 内 の ス タ ッ フ と居 住 者 の 人 的 つ な が りや 関 わ り を とお して 、〈家 〉 と し て の 居 心 地 の 良 さや 安 心 感 を 創 出 す る 上 で 、個 々 の 居 室 の イ ン テ リ ア と 同 様 に 、衣 服 も ま た コ ミ ュ ニ テ ィ ー を 形 成 す る 装 置 と し て 機 能 して い る こ と が わ か る 。 そ の 際 、 ス タ ッ フ ・居 住 者 双 方 と も に 「他 者 へ の 敬 意 を 払 う」 こ と が 重 要 で あ り 、そ れ は 、 た と え 自分 の 好 み や 趣 味 で な い と して も 、他 者 の 好 み で あ り趣 味 と して 認 め る こ とで 、相 手 の 自 主 性 や 自 立 性 を 尊 重 し て い く こ と に つ な が る 。 こ の こ と か ら 、職 場 服 に 私 服 を 着 用 す る 際 、 個 々 の 自主 性 と 自立 性 を 担 保 しつ つ 、 他 者 の 自主 性 と 自立 性 を 尊 重 す る 、二 重 の 自 主 性 を 確 立 す る こ と が 求 め られ て お り、多 様 性 を 本 質 と す る イ ン テ リ ア や 衣 服 デ ザ イ ン は 、装 置 と し て 相 応 し い 。 自 主 ・自 立 に 依 る 衣 服 を と お し た コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン か ら コ ミ ュ ニ テ ィ ー を 形 成 5.お わ り に 一高 齢 者 衣 服 の 可 能 性 に む け て 本 研 究 調 査 を とお し て 、 福 祉 国 家 フ ィ ン ラ ン ドに お け る 〈家 〉 を 手 が か り に 、高 齢 者 施 設 の コ ミ ュ ニ テ ィ ー 形 成 す る 上 で 重 要 な 装 置 と な っ て い る 衣 服 の 意 義 に つ い て 考 察 を 試 み て き た 。 幼 少 時 よ り 自 主 性 や 自 立 性 を 重 ん じ る フ ィ ン ラ ン ド人 に と っ て 〈家 〉 は 、 自 己 と社 会 の 接 点 で あ り、 地 域 社 会 に お け る 所 属 観 を 象 徴 す る も の で あ る 。そ れ は 広 義 の コ ミ ュ ニ テ ィ ー と し て 作 用 す る。 そ の 一 方 で 、 〈家 〉 は よ り個 人 的 な も の で あ り 、 「自分 の 領 域 」 と して 必 要 不 可 欠 な も の と し て 認 識 され て い る。 そ の た め 、 〈家 〉 の 設 え を と お し て 自 分 ら し さ を 確 立 す る 場 と も な り 、カ ー テ ン や カ ー ペ ッ ト、家 具 な ど設 え は 居 心 地 の 良 さや 安 心 感 を 獲 得 す る と と も に 、自 分 ら し さ を 可 視 化 す る 重 要 な ソ フ ト と して 機 能 して い る 。以 上 か ら も 、 フ ィ ン ラ ン ドに お け る 〈家 〉 と は 、 地 域 社 会 に お け る 「大 き な 〈家 〉」 の な か に 、 さ ら に 個 々 の 自 主 性 と 自 立 性 を 担 保 す る 「小 さ な 〈家 〉」 を 持 つ 、 入 れ 子 構 造 の 特 徴 を 持 っ て い る こ と が わ か っ た 。 これ は 、 な に も 〈家 〉 だ け で は な い 。 人 間 は 、個 人 の 周 縁 に 家 族 、 社 会 、 地 域 、 国 家 … と 重 層 的 な 環 境

参照

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