Title
ハウス栽培パッションフルーツの栽培技術開発 第1報.
開花習性と結実習性
Author(s)
松田, 昇; 長堂, 嘉孝; 島袋, 清香; 松村, まさと
Citation
沖縄農業, 39(1): 5-17
Issue Date
2005-12
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12001/1499
Rights
沖縄農業研究会
ハウス栽培パッションフルーツの栽培技術開発
第1報.開花習性と結実習`性
松田昇])・長堂嘉孝2)・島袋清香')・松村まさと') (1)沖縄県農業試験場名護支場,幻沖縄県農業試験場八重山支場) NoboruMATSUDA,YositakaNAGADO,SayakaSIMABUKU,MasatoMATSUMURA: Developmentofcultivationtechniquesofpassionfiuitinvinylhouse、 LCharcteristicpropertyoffloweringandbearing. 1.緒言 紫系パッションフルーツはブラジル南部を原 産地とする常緑蔓,性果樹であり,19世紀に南ア メリカやアジアに普及し(Martin,1970; Nakasoneeta1.,1998),主としてジュース用 に加工されている(Akamineeta1.,1956). 沖縄県では1950年代の初期にハワイから導入さ れ(沖縄園芸百科1986),ジュース等の加工や生 食に用いられてきた.現在,沖縄県で栽培され ている品種はムラサキクダモノトケイソウ (Hzss奴0me〃jSSims)であるが,生産者独 自の交配で多くの系統が存在する.沖縄県では 本部町や佐敷町で露地栽培が主として行われて いたが,国頭村の坂本氏(沖縄タイムス, 2005)によって本部町の系統を用いた施設栽培 が開始された.しかし,栽培技術が未確立であっ たことから,試行錯誤が繰り返されていた.ま た,他の地域でも新規の熱帯品目としてパッショ ンフルーツが着目されたが,本県での基本的な 調査研究が少なく,栽培に苦慮していた.そこ で,ハウスにおけるパッションフルーツの安定 生産を図る目的で,広く栽培されている紫系統 の開花および結実について調査研究を行ったの で報告する. 2.材料及び方法 供試樹として沖縄県農業試験場名護支場内の 無加温ビニールハウス内(ハウス外壁を周年に 渡り1mmネットで被覆)に2001年10月に定植 した紫系統を用いた.供試樹の仕立て法はつり 下げ型垣根式(図1)とし,栽植距離は樹間 3m×列間1.7m×樹高16mとした.枝は各節 1本とし,枝先が地上高10cmに達した時点で 摘心した.ハウス内温度は,側窓の開閉で換気 し,自記記録温度計(おんどとりJr)で1時間 ごとに計測した.日長時間は,国立天文台の日 の出,日の入りを参考にした. 実験1:開花習性と収穫果実数の推移 ハウスにおける蕾の縦伸長および開花と収穫 果実の推移を明らかにするため,2002年1月か ら12月にかけて紫系統の4樹を供試し経時的に 調査した.蕾の伸長は,縦長5mm程度の蕾10 個にラベリングし,開花まで5日間隔で蕾の伸 長量を測定した.開花調査は全花調査とした. 収穫果実調査は,開花した全ての花に自家の花 粉で人工受粉し,収穫果実数をカウントした. ビニールは2002年1月中旬に被覆し,6月下旬 に除去した.沖縄農業第39巻第1号(2005) 6 図1つり下げ型垣根整枝式. 実験2:花の形態別開花の推移と結実 花の形態別開花の推移を明らかにするため, 2003年10月下旬に紫系統の18樹に3時間の電照 を開始し,開花初期から終期までの接触型,接 近型および直立型の形態別に開花の推移を調査 した.花の形態別調査については鹿児島大学石 畑(1978)の分類に準じた. 結実については2003年12月5日から7日,14 日から15日に開花した接触型,接近型および直 立型のすべての花に他花の花粉を用いて筆で人 工受粉し,受粉4日後の結実果実数を調査した. 花は9樹供試した.調査はすべての花に14:00 から16:00の間に筆で人工受粉を行いラベリン グし,開花終期に結実果数を調査した. 実験5:開花後時間別受粉が結実に及ぼす影響 調査は2003年4月14日から16日,4月30日か ら5月2日にかけて3樹を供し行った.開花前 日に供試蕾の除雄を行い,パラフィン紙で袋掛 けし,翌日開花した花を対象に開花直後,2,3, 4,6,8時間後に接触型のそれぞれ10花につい て開花当日の同株で開花した花の花粉を筆で人 工受粉し,受粉4日後に結実果数を調査した. また,開花直後から48時間までの結実率を調べ るため,同様な方法で処理を行い実験に供した. 実験3:開花時間 開花時間の調査は,2002年4月15日,16日, 18日,5月7日,8日に供試11樹の全花を対象 に行った.花弁が全開した時点を開花とみなし, 調査日の1番目の開花開始から10分おきに開花 数を調査した. 3.結果 実験1:開花習性と収穫果実数の推移 開花数と収穫果実数の推移を第2図に示した. パッションフルーツは伸長する葉えきに花芽が 形成される.開花は3月下旬から4月下旬まで 続いた.開花のパターンは2つの山がみられ, ピークは4月上旬と中旬にあった.4月下旬以 実験4:温度条件が開花と結実に及ぼす影響 温度条件が開花と結実率に及ぼす影響を明ら かにするため,2003年の4月から12月に調査し た.4月~6月の開花は6樹,11月~12月の開
松田・長堂・島袋・松村:ハウス栽培パッションフルーツの栽培技術開発第1報.開花習性と結実習性7 降は葉えきに花芽が形成されるがほとんど発達 せず黄化し落下した. 蕾の縦径の伸長推移を図3に示した.縦径は 約5mmから急激に伸長し,縦経長32mmから33 mmで開花した.縦径5mmから開花までの所 要日数は約24日であった. 収穫は5月下旬からみられ7月上旬まで続い た.ピークは6月中旬にあった.受粉から収穫 までの日数は60±4.9日であった. ハウス内,露地温度及び日長時間の変化を図 4,5,6に示した.生育期間中の平均温度は露 地が1℃程度高いが,最高温度はハウス内が1 ℃から13℃高く推移した.最低温度は露地が1 ℃から2℃高かった.ハウス内温度は露地に比 べて最高温度が6月下旬のビニール除去まで高 く推移した. 0000000 654321 類 ElL) 、国への 画ヘマ ②ヘマ の一)す 一団ヘマ ト国ヘマ 画へ、 。〕L◎- す’へ① ○国へ@ ~一Eu Loヘヘ ピフL◎ 調査月曰 □へ@ 国へ。 トロへ□ ①劇へ① 図2開花数および収穫果実数の推移. 50505050 332211 (EE)山椒 91318 調査日数 22 24 5 1 図3蕾の縦径長の伸長推移.
沖縄農業第39巻第1号(2005) 8 05050505050 544332211 Yu-E JV~、ローヨb 。 。 ~P-L △~スー△ ̄凸一コ△
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調査月曰
図4ハウス内温度の推移.50505050小
332211 一四F--= 0 . 一一平均温度 一ロー最高温度 言←最低温度。)、、(、ヘト、(、、<、ヘ。、S、,o)、
調査月曰 図5露地温度の推移.q)(、‘J、、X、
松田・長堂・島袋・松村:ハウス栽培パッションフルーツの栽培技術開発第1報.開花習性と結実習性9
642086420小
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調査月曰 図6沖縄県の日長時間の推移. 実験2:花の形態別開花の推移と結実 電照条件下での花の形態別開花の推移を図 7に示した.開花期間中の形態別の発生率は接 触型が87.3%,接近型が8.1%,直立型が4.5% であった.接触型の発生推移には3つの山がみ られ,1次波は12月1日から3日,2次波は12 月5日から7日,3次波は12月14日から15日で あった.接近型の発生には2つの山がみられ、 接触型の減少する11月23日と12月5日がピーク だった.直立型は接触型の減少する12月5日に ピークがあり,開花期の後期から増加する傾向 にあった. 花の形態別結実の結果は表lに示した.接触 型の結実率は,12月5日から7日,および12月 15日は56.5%から88.5%の範囲にあったが,12 月14日は7.9%であった.接近型は12月5日と 15日は60%から80%の範囲にあったが6日と14 日は結実が認められなかった.直立型は5日間 とも結実がみられなかった.なお,14日は雨天 日であった. 00000000000 0987654321 1 接接直 触近立一十
一
接直 近立十一
類桿歴、二
12/17 12/312/10 調査月曰 11/26 11/19 図7花形態別開花の推移.沖縄農業第39巻第1号(2005) 10 表1花の形態が結実に及ぼす影響. 直立型 接近型 接触型 受粉日 受粉数結実数結実率受粉数結実数結実率受粉数結実数結実率 個個% OO OO OO OO OO O、0 個個% 2480.0 00.0 個個% 5084.7 7788.5 2656.5 37.9 4376.8 62.9 12/5 12/6 12/7 12/14 12/15 平均 m8654 帥2 97686 58435 0.0 60.0 35.0 45 03 月18日は15日と同様に19℃前後から9:00まで 19℃以下で推移した.20℃以上になったのは10 :00以降であった. 実験3:開花時間 開花時間とハウス内温度の推移を図8,9に 示した.開花時間は調査日で異なり,最も早く 開花のみられた4月15日は9:00から開始し, 10:10にはすべての花が開花した.開花に要し た時間は50分であった. 開花の最も遅い4月18日は10:20から開始し, 11:00はすべてが開花し,その要した時間は40 分であった.開花に要した時間の最も長いのは 5月7日で70分であった.なお,繭の裂開は開 花と同時に認められた. 4月15日の温度は19℃前後から7:00には20 ℃,開花終了時の10:10には25℃に達した.4 実験4温度条件が開花と結実に及ぼす影響 2003年4月27日から5月31日(前期),11月 19日から12月25日(後期)の開花数と結実率を 表2,図10,11に示した.前期の結実率は日に よってバラツキが大きく,平均結実率は63%で あった.前期の4月27日から5月7日の間は平 均結実率が62%で,5月8日から5月18日まで は89%と比較的高かった.5月19日から5月31 日までは52%であった.開花数との関係では, 00000000000 0987654321 1 I」。 D-B (ご側桿歴 9:209:309:409:5010:0010:1010:2010:3010:40105011:00 調査時間 図8時刻別開花曲線.
松田・長堂・島袋・松村:ハウス栽培パッションフルーツの栽培技術開発第1報.開花習性と結実習性11 ÷4/15 -←4/16
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時間
図9ハウス内温度の推移. 前半は同じ増減の傾向を示しているが,開花数 が減少から増加する5月7日から5月15日と5 月26日から28日は結実率が良い.後期は前記と 同様バラツキが大きく,平均結実率が59%あっ た. 温度と結実率の関係を図12に示した.結実率 と最低温度との間には有意な差はみられなかっ た. 一●-開花数 一。-結実率 25 19876543210 0000000000 0 20 15 無桿歴 10 5 0 画ベロ 画囚へ、 叩副ヘ叩 ト国}□ の国へ⑨ ーへの 、へ叩 ト・>一Cvフuつト ヘヘー--_ uつuつへへへへ L◎L◎UつUつ 調査月曰 開花と結実率の推移 一国、叩 ①|へ叩 ①国へ『 ト団へ『 ←のへ叩 (前期). 図10沖縄農業第39巻第1号(2005) 12 000000000 87654321 編桿匪 0 0000000000 19876543210 一●-開花数 一○一結果率 11/1911/2411/2912/412/912/1412/1912/24 調査月曰 図11開花と結実率の推移(後期). 0000000 208642 11 。O【】】0001 pH 9℃ 繍脇鵯
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JooUb S c ○ 曰 100 15.020.0 温度 図12最低温度と結実率の関係. 25.0 表2受粉花数と結実率. 受粉期間受粉花数結実数結実率 個 個 % 4/27-5/31 11/19-12/25 278 819 176 484 63 59松田・長堂・島袋・松村:ハウス栽培パッションフルーツの栽培技術開発第1報.開花習性と結実習性13 実験5開花後時間別受粉が結実に及ぼす影響 開花後時間別の受粉が結実に及ぼす影響は表 3,4に示した.4月14日から16日の3日間の平 均結実率は,開花直後から開花6時間後まで96 %から100%を示したが,8時間後は90%に低 下した.また,4月30日から5月2日に受粉し た.開花後24時間と48時間後の結実は開花直 後の結実率が90%に対し,開花24時間後(2日 目)に6.7%へ急激に低下し,48時間後(3日 目)はほとんど結実がみられなかった. 5月以降から開花がみられず,花芽は形成され たがほとんどが黄化し落下した.パッションフ ルーツの花芽形成は25-20℃で良く,30-25℃で 落下が多い(張,1989).開花には地温より気 温が大きく影響し,高い気温(25~30-20℃) では花芽形成が比較的早く,開花数と着花率は 低温(20~25-15℃)より低くなる(Simon, 1983).今回の施設内平均温度は,3月から4 月下旬まで21.6~27℃,5月の上旬から9月下 旬まで24.9~33.3℃であり,3月から4月下旬 が最も開花に適した期間であることがわかる しかしこの期間でもハウス内は最高温度が30 ℃を超える日が多く,花芽の発育,開花の最適 条件より高いため,開花を促進するにはハウス の開閉による温度管理が重要である.一方,露 地の最高気温は3月上旬から6月下旬まで30℃ 以下で推移し,開花が6月下旬まで確認(目視) されていることからハウス内でも温度管理を行 うことによって6月下旬まで開花が可能である と思われる. 5月上旬から9月下旬までの平均温度は25℃ 4.考察 沖縄県の雨よけ施設内におけるパッションフ ルーツの開花期は4月上旬から6月下旬,8月 から10月下旬の2回である(大城,1997).ま た,鹿児島県のパッションフルーツの花芽分化 は3月下旬から始まり,高温期の7月から8月 は花芽の縦経0.1cmで落下することが報告され ている(石畑,1989).本試験でも施設での開 花は3月上旬から始まり4月下旬まで続いた. 表3開花後時間別受粉が結実に及ぼす影響. 開花後の時間(hr) 受粉日 開花直後2 4 6 8 % % % % % 4/14 4/15 4/16 000 mm9 lOO lOO lOO 00N 891 00N 、91 l91 N0N 平均96.796.796.7100.090.0 表4開花後時間別受粉が結実に及ぼす影響. 開花後の時間(hr) 受粉日 開花直後 24 48 % % % 4/30 5/1 5/2 平均 ’0 000|・ ’0 80 100 90 90.0
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沖縄農業第39巻第1号(2005) 14 以上とハウス内が極端な高温条件にあり.花芽 を全く形成せず既報告と一致した.10月上旬か ら2月下旬までのハウス内の平均温度は,25℃ 以下で推移し,花芽形成と開花促進の条件はみ たしているが,開花はみられなかった.張 (1989)は台農1号を用いた高圧ナトリウム灯 による電照試験で,長日条件が花芽形成と開花 を促進することを報告し,また竹内ら(1995) は長日条件として10.5時間以上必要と報告して いる沖縄県では11月から2月にかけての日長 時間は10.5時間から11時間の短日条件下にあり, 花芽形成・開花が阻害されることで開花できな いと思われる. 果実の収穫は5月中旬からはじまり7月の上 旬まで続いた.果実収穫後は新梢の発生が旺盛 になり.新梢上の葉えきに花芽の形成がみられ るが黄化し落下した. パッションフルーツの花型は柱頭が開花時に やくに接する接触型,柱頭がやくの上方に位置 する接近型,花柱が湾曲しない直立型の3タイ プがあり,出現率は接触型が76%,接近型が17 %,直立型が7%であったと報告されている (石畑,19811本調査でも3タイプの花型が確 認され,接触型が87.3%,接近型が8.1%,直 立型が4.5%とほぼ一致した結果が得られた. パッションフルーツの各花タイプの発生は接 近型と直立型が開花期後半に増加するが,開花 期後半の高温が影響していると報告されている (石畑,1981).アボガドでは冬季の低温が異常 花発生に関係しているとしている(井上,1991). ウメの不完全花の発生は開花初期と後期に多く, 初期は冬季の温暖で開花の早い年にこの現象が 著しく,後期は貯蔵養分の不足によると報告さ れている(上野,1967).また,モモでは貯蔵 養分の少ない短果枝や横向枝に多く発現すとし ている(井上ら,1982).本調査の開花期の温 度は,前期の平均が23.3℃,最高が32.4℃であ り,後期の平均が19.2℃,最高27.8℃であった. 接近型は接触型の減る時期に増え,直立型は開 花期後期に増える傾向にあった.開花期が高温 に遭遇しておらず,直立型の発生が温度の影響 によるものでなく,開花期後半に発生すること からウメ,モモに類似し,貯蔵養分の不足によ るものと思われる. パッションフルーツの花の結実率は接触型, 接近型で高いが,直立型は結実しないとし,そ の要因として直立型の柱頭および花柱組織内に 花粉管伸長抑制物質が存在すると推察している (石畑,1981).また,直立型と接近型のタイプ はまったく結実せず,結実率が低いのは奇形花 の発生によるものとしている(大倉,2000). 本試験でも接触型と接近型の結実率が高く,直 立型は全く結実しなかった.接触型は12月5日 から7日,12月15日は56.5%以上の高い結実率 を示しているが,12月14日は7.9%と低く,日 によって大きな違いがみられた.直立型は開花 数が少ないため,直接収量に影響しないが,収 量を増やすには開花数の多い接触型の結実率を 高める必要があると思われる. 小笠原では台農1号が午前9:46分前後で開 花し日長時間とは明確な関係が認められなかっ たと報告している(竹内ら,2004).また,黄色 系のパッションフルーツは1時頃開始し,紫色 のパッションフルーツは早朝開花するとしてい る(Akamine,1956).本試験では開花日によっ て,開花時間に差がみられ,開花の早い4月15 日と遅い4月18日の温度変化を比較すると,両 日とも19℃前後から開始しているが,15日は7 時頃から20℃に上昇し,開花の終了する10時過 ぎには25℃に達している.一方,18日は9時頃 まで19℃以下で推移し,10時以後に20℃に達し ており,開花日の早朝の気温が開花時間に影響
松田・長堂・島袋・松村:ハウス栽培パッションフルーツの栽培技術開発第1報.開花習性と結実習性15 し,温度が高いと開花時間が早まるものと思わ れる. 露地栽培のクダモノトケイソウは降雨日に結 実率が低下し(前田,1982),露地栽培の台農1 号の結実率も日照時間30分以下,日降水量10 mm以上は有意に結実率を低下させるとして いる(竹内,2004).また,結実率の低下要因 として雨天時の受粉は柱頭上の花粉の破裂によ るものとしている(石畑,1984). 本試験では前期と後期の結実率が63%と59% であり,期間中大きなバラツキがあった.結実 率と開花日の温度,湿度との間には有意な相関 は認められなかった.本試験のパッションフルー ツは開花期がビニール被覆下にあり,花粉が水 に直接触れてないため,花粉の破裂による結実 率の低下ではないと思われる.早朝から曇天や 小雨が終日みられる日(未発表)に結実率が低 下しており,小笠原の結果に類似するものと思 われる. パッションフルーツの開花1日前の蕾から開 花後3日まで柱頭に新鮮花粉を人工授粉し結実 率を調査しているが,開花前日の蕾から開花2 日後までの結実率に差がないとしている(彌富・ 石崎,1958). 本調査では開花後8時間以内は90%以上と高 いが,24時間以後は急激に低下しており,彌冨・ 石崎(1958)の結果と一致しなかった.24時間 後で6.7%の結実率を得ているが,処理日によっ て結実がみられない日もあることから,受粉作 業を翌日まで持ち越すメリットはなく,開花当 日に実施したほうが良いと思われる. ビニール被覆栽培の樹を用いて試験した.結果 を要約すると以下の通りである. 1)開花は2つの山がみられ,ピークは4月上 旬と中旬であった.5月上旬から12月まで 開花がみられなかった.果実の収穫は5月 下旬から7月上旬であった.蕾の縦経5 mmから開花まで約24日,受粉から収穫ま で60±4.9日を要した. 2)花の形態別開花の推移は3つの山がみられ, 1次は12月1日から3日,2次波は12月5 日から7日,3次波は12月14日から15日で あった. 3)開花の早晩は温度に影響され,午前中の温 度が高ければ11時頃までに開花した. 4)花の形態別の発生割合は接触型が87.3%, 接近型が8.1%,直立型が45%であった. 花の形態別結実率は接触型と接近型が高く, 直立型は結実しなかった. 5)平均結実率は59%から63%で,日によって ばらつきが大きかった.温度,湿度との相 関はみられなかった. 6)花の開花後の受粉は開花後8時間まで高い 結実率を示した. 6.Summary Theobjectiveofpresentstudywasexanr inedinordertoclarifynoweringandfruit‐
inghabit(behavior)ofthepassionfruit
cultivatedinthevinylhouseinOkinawa, Theoutlineofresultsobtainedareasfbl‐ lows: l)Thetimefromvisiblebuds(5mm length)tonowermgtakesabout24 days・Floweringhadtwopeaks,first onearlyAprilandsecondonmiddle 5.摘要 沖縄県のハウス栽培におけるパッションフルー ツの開花習性と結実習性を明らかにするため,沖縄農業第39巻第1号(2005) 16 いて.園芸学雑.59:703-710. 井上弘明・伊東秀夫・高橋敏夫・武田昌敏 1982.モモにおける不完全花の発現と落花果 の分離層に関する研究.日大農獣医学報39: 24-34. 石畑清武1978.果物時計草の花の形態と受精 に関する研究.園芸学会昭和53年秋季大会研 究発表要旨90-91. 石畑清武1981.紫果物時計草の花の形態と結 果に関する研究.鹿大農学術報告31:25-3L 石畑清武1984.紫果物時計草の人工受粉によ る結果率および果実品質の向上.鹿大農学術 報告34:9-16. 石畑清武1989ムラサキクダモノトケイソウ PassifloraedulisSimsの花芽分化と花芽発 育.鹿大農学術報告39:103-119. Martin,F,W・andN.Y、Nakasonel970 Theediblespeciesofpassinora、Econ Bot、24:333-343. Nakasone,N、Y、andR,EPaull998 TropicalFruits270-29L 仲田圭子2005.頑張ることで故人に報いる. 沖縄タイムス(朝刊)2005年.4月11日 大城啓光・仲本光則・川満博幸・島川泰英 1997.パッションフルーツの着花習性及び着 果量の調査.「専門技術員活動高度化特別事 業」調査研究成果.50-52 大倉野寿・東明弘2001.パッションフルーツ の高品質多収技術の開発.鹿児島果樹試報告 書.165-166. Simon,P・andK・Annemariel98aEffbct ofsoilandairtemperatureongrowth andflowerfbrmationofpurplepassionfiuit
(P`、/7oreedMjsSimsvar・edulis).Acta
Hortl39:83-90.新報出版1986.沖縄園芸百科plO54
ApriLHowever,thebudsfTomMayto Decembercouldnothavedeveloped intoflowers・Thetimefromthepolli‐ natedflowertothematurefruittakes about60±49days、 2)Thedifferenttypesofflowershad threepeaks,thefirstfromlstto3rd ofDecember,asecondpeakfrom5th to7thofDecember,athirdpeakfrom l4thofDecember、 3)ItwasconsideredthattheHowering dependsontheairtemperatureinthe mornlng 4)Thenoweringpercentagesofthediffer‐ enttypewere:87.3%fbrnormal(con‐ tact)type,8.1%fbrrecreatetype,and 4.5%fbruprighttype、Thehighest fruitsetpercentagewasobservedin thenormalandrecreatetypenower・ Flowerswithuprightstylesfailedto setfTuit、 5)Theaveragefruitpercentagewasabout 59-63%byhandpollinationduringtwo floweringperiodCorrelationsdidnot existbetweenfiuitsetandairtem‐ peratureorhumidity、 6)Thehighestfruitsetpercentageshowed 8hoursafternoweropen. 7.引用文献 Akamine,EK、1956.Passionfiuitculture inHawaii・Univ・ofHawaiiExt・Cir、345 :13-14. 井上弘明・高橋文治郎1991.走査電顕による アボガドの異常花の形態観察と発生頻度につ松田・長堂・島袋・松村:ハウス栽培パッションフルーツの栽培技術開発第1報.開花習性と結実習性17 張青森1989.百香果開花習性興花芽形成之研 究(伊芸安正翻訳).国立台湾大学園芸研究所. TK・ROSEeta1.,1990.Fruits:Tropical andsubtropicaL690-721・ 竹内浩二・大林隆二1995.パッションフルー ツの栽培安定化試験.東京都:61-63. 竹内浩二・大林隆二2004.パッションフルー ツの栽培安定化試験.東京都:71-79. 前田政信・迫田和好1982.導入番号54039(時 計草)特性調査結果の概要.鹿児島県農業試 験場大島支場研究報告. 上野晴久・松山良樹1967.ウメの生産安定に 関する研究.第1報.花および果実について. 和歌山果試研報2:1-8. 彌富忠夫・石崎義人1958.パッションフルー ツの開花結実に関する研究.山口大学農学部 学術報告9:991-997.