8.在宅看取り希望が入院死となった肺癌の1症例 後藤與四之 (医療法人かがやき後藤クリニック) 佐藤 浩二,風間 俊文,湊 浩一 高田 由,小池 由美 (群馬県立がんセンター) 下山寿美子,宗像 道子,井上 晴美 後藤 勝子 (訪問看護ステーションかがやき) 久保田修平,岡野 和子,小林 裕子 (本島 合病院) 症例は 60歳男性右肺腺癌, 診断時点で腹部リンパ節 転移があり化学療法施行. その後脳転移でサイバーナイ フ, 胸椎転移で放射線治療など施行されたが 1年 10ヶ月 後には下半身対麻痺となった. 余命 1∼ 2ヶ月の病状説 明がなされ在宅看取りを希望された. 昨年 12月 22日退 院し訪問看護, 訪問入浴など順調に在宅療養が開始され たが 28日胸内苦悶の訴えで往診すると心拍 120血圧 82/72であり午後には血圧 72/60と下降し冷汗がみられ た. 静脈を確保しジゴシン投与で血圧 85/70とやや改善 したが心拍は 161で不整脈がみられた. これ以上の治 療は専門医でなければ」と告げ患家を辞した.翌 29 日入 院時意識レベル JCS Ⅰ-1血圧 108/63, 心電図は心拍数 172の心房粗動を示した. 各種薬剤を順次静脈内投与し た が 効 果 な く, 血 圧 90∼100mmHg と 低 下 傾 向 か つ BNP309 と心不全状態が想定されたので, ドムミカムに て鎮静し除細動し心拍は 120前後の洞調律に復した. そ の後意識混濁が遷 したため 31日に MRI 検査し頭頂 部の微少梗塞を認めた. しかしながら意識障害を来たす ほどの所見はなかった. 胸部 X 線は心肥大はないが両側 縦隔拡大, 左肺門部濃度上昇を認めた. 血ガスは酸素 6L のマスク投与下でも PaO2は 75.5mmHg であった. その 後意識は一層低下したので経口モルヒネから変えたデュ ロテップ MT パッチを剥がしたが効果なく昏睡に陥り 1 月 7日死亡した. 検討課題は「①不整脈は癌に起因した ものか, ②除細動後の意識障害の原因はなにか, ③疼痛 管理は旨く行ったか, ④再入院は適切だったか」などで ある. 9.当診療所における看取りの現状と問題点 朽名 靖 (くつなクリニック) 【目 的】 最後は自宅で」と願ってもなかなか実現でき る事が少ない. 在宅では家族が 24時間介護にあたり, ま た, 往診医も 24時間拘束される事が多い. 医師 1名の診 療所で行っている看取りの現状と問題点を報告する. (方 法)2008年 6月より 2010年 7月までの間に,往診に関わ り在宅での看取りを希望した患者 29 名 (男性 10名, 女 性 19 名) を検討した. がん患者 15名 (平 年齢 68歳, 3 歳から 86歳, 平 往診期間 92日, 5日から 600日) 非が ん患者 14名 (平 年齢 87歳, 75歳から 99 歳, 平 往診 期間 524日, 29 日から 687日), 在宅での看取りは 26名 で, 病院での看取りは 3名. 亡くなられた時間は夜間 8 名, 深夜 8名, 早朝 3名, 休日は 3名であり, 診療時間中 は 7名であった. 【結 果】 呼吸停止後, 直ぐに往診が 出来なかった症例は 7名で, 全員, 診療等があった場合 には直ぐに駆けつける事が出来ない旨を承諾してもらっ ていた. 病院での看取り 3名は当初, 在宅を希望してい たが, 1名は, せん妄のコントロールが出来ず入院, 入院 後 3日で亡くなり, 他の 2例は疼痛のコントロールがう まくいかず, 入院翌日と 5日後にそれぞれ亡くなった. 共にがんの告知が十 に行われておらず, 麻薬の 用を 躊躇したのが, 原因と思われた. 【 察】 1名の医師 で最期まで看取る事は非常に大変である. 診療等があっ た場合には直ぐに駆けつける事が出来ない旨を承諾して もらい, がん告知を十 に行い, 麻薬の適切な 用を行 えば可能であると思われた. 10.看護師の視点で捉えたモニターの無い看取りが意味 するもの ∼一般病棟でも最後を“ありがとう”で迎 えられる∼ 狩野 道子,小林美知子,笹本 肇 (原町赤十字病院) 篠原 深雪 (国立療養所栗生楽泉園) 臨終にも関わらず, 家族は画面の数字ばかり目で追い, 器械と繫がる色とりどりのラインに邪魔されて患者に触 れる事さえためらっている. 時々, 大切な人の死と向き 合う事が怖いから, 器械と向き合っているように感じる. 亡くなった患者の体に残る圧迫痕や皮膚障害は, 明らか に患者に苦痛を与えている事を物語っている. だから器 械を取り除きたかった. そして家族が患者と向き合う為 に, 専門的知識や技術の習得ではない, 当たり前の看護 を生かしたいと想った. 当然の事ながら, 在宅でモニ ターは存在しない. 家族は自 達の目で見て, 聴いて, 死 が訪れた事を感じるという. そこで, 慣習に捕われない 柔軟な視点から, コンセプトを, 家族が共に過ごす, 居 心地のよい場所の提供」とした. 患者の介護は家族が主 体. 看護師は家族が必要な時に必要なだけフォローする. その為に, 対象の家族は業務の流れから外した. 結果, 家 族は介護の時も予想外の力を発揮し, 最後には患者の体 に触れ, しっかりとお別れを言って大切な人が行くのを 見届けた. ある一組の家族は, 死亡診断の時だけモニ ターを着けてほしいと希望した. 過去の経験から, 自 達が死を受け入れる方法なのだと語った. この時, モニ ターを外す事がこの看取りの目的ではなく, 家族が主体 86 第 22回群馬緩和医療研究会
となって気持ちの駆け引きをするお手伝いをする事が目 的だと感じ, その為にモニターは いこなすものの一つ であってもいいように感じた. また, 関わった看護師達 も初めは戸惑っていたが, 慣れてくると業務としてでは なく, 看護師として, 人として自主的に関わる姿が見ら れた. 部屋から出てくる表情は, まるでケアされたよう に優しい. 業務の流れや慣習的な看取りは, こういった 家族や看護師の持つ「患者の死と向き合う力」や良好な 関係性を封じ込めていたのではないだろうか. そして 「緩和ケア」には, 雑多な業務に流されがちな看護を本 来の看護に引き戻す力があると私達には思えた. 11.疼痛と不安の軽減がはかれず試行錯誤した事例 青山真由美, 遠坂ちあき, 金子 直美, 山部 克己 (1 桐生地域医療組合桐生厚生 合病院 6階東病棟 2 緩和ケアチーム) 【事 例 紹 介】 M 氏 60代 男 性 肺 が ん 【現 病 歴】 2009 年 11月外傷の既往なく肋骨骨折, その頃より血痰 あり背部痛出現増強し,近院に受診.2010年 1月胸部 CT の結果, 左主気管支周囲に腫瘍形成, 左下葉に線状無気 肺,左肋骨・右肋骨・椎弓に転移性腫瘍,縦隔リンパ節の 腫大を認める (肺がんⅣ期). 【経 過】 背部痛強く入 院時よりオキシコンチン内服開始となるが, 疼痛の増強 あり痛みのコントロールつかず, 連日オキシコンチン増 量となっていた. 入院より 4日後には消化器症状強くオ ピオイドローテーシン施行. デュロテップパッチへの変 後も疼痛の軽減なく, 塩酸モルヒネ持続注射を併用で 開始した. 効果の実感が出来ず不安を抱くような発言が 聞かれ, 夜間は 1時間おきにレスキューを 用していた. 日中は状態観察やケアを行い傾聴していったが, 苦痛や 不安強く看護行為を拒否されることもあった. 緩和介入 や精神科受診も行った. 緩和回診時にも, 痛みと今後の 経過についての不安言動と不眠の訴えがあり抗不安薬の 内 服 開 始 と なった. し か し 痛 み は 再 び 増 強 し, レ ス キューの夜間 用回数は減らない.M 氏「もう辛くて,辛 くて,眠らせてください」と話され,本人・家人希望にて 夜間の間欠的鎮静開始となった. 鎮静剤 用後, 今が一 番いい状態との言葉が聞かれ日中は家族との会話も行え ていた.3月下旬,肺炎の合併症も伴い,鎮静導入後 23日 目に永眠された. 【論 点】 1) オピオイドの増量・変 を行っていたが, 疼痛緩和ができずに難渋していた. 苦痛症状に対する軽減が図れず最終的には鎮静での対応 でしかなかった. 鎮静でしか苦痛緩和ができなかったの か. 2) 疼痛コントロールを主として関わっていた. 夜 間のレスキュー 用量多いのは不安要素が疼痛閾値レベ ルを下げていたのか. 夜間頻回の不眠・不安の訴え時の 看護介入はどのよう様な事ができたか. 全人的苦痛とし て捉えどのようにケアしていけばよかったのか. 12.新たな緩和的治療に臨む大腸がん患者への関わり ―治療継続への援助― 茂木真由美, 本 弘恵,吉田 佳子 (群馬県立がんセンター外来・ 通院治療センター) 【目 的】 進行・再発の大腸がんの化学療法は, めざま しい進歩をとげている. 2005年 4月, FOLFOX 6療法・ FOLFIRI 療法,2007年 6月, 子標的治療薬ベバシズマ ブが併用, さらに 2009 年 9 月, XELOX+AV療法が大 腸がんにおける術後補助療法として認可された. 本研究 の目的は, めまぐるしく変わる治療内容を体験した患者 の, 治療継続への看護支援を構築することである. 【方 法】 外来通院治療を受ける大腸がん患者で, FOLFOX 6療法・FOLFIRI 療法, 子標的治療薬ベバシズマブを 併用, さらに XELOX+AV療法を体験した患者の看護 記録を調査. 【倫理的配慮】 対象患者が特定されない よう記録内容は意味を損なわないよう一部修正. 【結 果・ 察】 XELOX 療法は内服薬と注射薬を組み合わせ て行うため「点滴の時間が短い」「通院回数が少ない」「持 続静注ポンプに 48時間拘束されない」という日常生活へ のメリットを感じながらも, カペシタビンの内服により, 患者自身が在宅で行なう自己管理として, 有害事象が生 じていても「これくらい耐えられる範囲なので, なんと か治療を続けて欲しい」と, 治療を続けることを え症 状を我慢していた. これはがんの進行に伴い繰り返し治 療内容を変 する過程において「完治することがないな ら治療を継続しても意味がないのではないか」と えな がらも「生きていくためにはこの治療が必要」という思 いが同時に存在し「最後の治療」と捉え, 抗がん剤の変 ・減量・休薬・中止に不安を抱きながら治療に臨んで いると えられた. 【結 論】 命・緩和目的に化学療 法を受けている患者は「今日を生きることの意味を常に 自 自身に問いかけ続けながら治療に臨んでいる」と えられた. 看護師として, めまぐるしく変化をとげる大 腸がん化学療法の治療内容の動向をキャッチし, 治療継 続ができるよう精神的な支えと, 有害事象への支援が重 要と える. 13.経皮内視鏡的胃瘻造設術の導入と予後, そして妥当 性についての検討 小林 剛,蒔田富士雄,斎藤 龍生 (独立行政法人 国立病院機構 西群馬病院緩和ケア科) 【はじめに】 経皮内視鏡的胃瘻造設術 (Percutaneous 87