著者
西本 健太郎
雑誌名
東北ローレビュー
巻
5
ページ
1-20
発行年
2018-03-30
URL
http://hdl.handle.net/10097/00127047
延長大陸棚の境界画定
東 北 大 学 大 学 院 法 学 研 究 科 准 教 授西本 健太郎
Ⅰ は じ め に Ⅱ 海 洋 境 界 画 定 に 関 す る 判 例 法 理 の 確 立 と そ の 射 程 Ⅲ 延 長 大 陸 棚 の 境 界 画 定 に 関 す る 国 際 裁 判 例 1 バ ン グ ラ デ シ ュ / ミ ャ ン マ ー 事 件 判 決 ( 2012 年 ) 2 バ ン グ ラ デ シ ュ / イ ン ド 事 件 判 決 ( 2014 年 ) 3 ガ ー ナ / コ ー ト ジ ボ ワ ー ル 事 件 判 決 ( 2017 年 ) 4 国 際 裁 判 例 の 評 価 Ⅳ 合 意 に よ る 延 長 大 陸 棚 の 境 界 画 定 1 米 国 ・ メ キ シ コ ( 2000 年 ) 2 オ ー ス ト ラ リ ア ・ ニ ュ ー ジ ー ラ ン ド ( 2004 年 ) 3 ノ ル ウ ェ ー ・ ア イ ス ラ ン ド ・ デ ン マ ー ク ( フ ェ ロ ー 諸 島 ) ( 2006 年 ) 4 ア イ ス ラ ン ド ・ デ ン マ ー ク ( グ リ ー ン ラ ン ド )( 2013 年 ) 5 200 海 里 内 を 主 な 対 象 と す る 海 洋 境 界 画 定 条 約 Ⅴ 国 家 実 行 の 評 価 Ⅵ お わ り にⅠ はじめに
国 連 海 洋 法 条 約 第 76 条 は 、「 大 陸 縁 辺 部 の 外 縁 」の 概 念 を 使 っ て 沿 岸 国 の 大 陸 棚 を 定 義 し て い る 。沿 岸 国 の 大 陸 棚 は 、大 陸 縁 辺 部 の 外 縁 が 基 線 か ら 200 海 里 以 遠 に 延 び て い る 場 合 に は 、 領 海 の 外 側 か ら 大 陸 縁 辺 部 の 外 縁 ま で の 海 面 下 の 区 域 の 海 底 及 び そ の 下 で あ り 、 200 海 里 以 遠 に 延 び て い な い 場 合 に は 、 領 海 の 外 側 か ら 200 海 里 ま で の 海 面 下 の 区 域 の 海 底 及 び そ の 下 で あ る 。 200 海 里 以 遠 の 大 陸 棚 ( 以 下 、「 延 長 大 陸 棚 」と い う )に つ い て 、沿 岸 国 は 大 陸 棚 限 界 委 員 会 に 対 し て 情 報 の 提 出 を 行 う も の と さ れ て お り 、 同 委 員 会 の 勧 告 に 基 づ い て 設 定 し た 大 陸 棚 の 限 界 は 「 最 終 的 ・・・か つ 、 拘 束 力 を 有 す る 」( 76 条 8 項 )。 延 長 大 陸 棚 の 限 界 設 定 は 、 他 国 と の 間 で 権 原 の 重 複 が な い 場 合 に は 、 沿 岸 国 に よ る 一 方 的 行 為 と し て 行わ れ る 。 し か し 、 相 対 国 間 ま た は 隣 接 国 間 で 延 長 大 陸 棚 に 対 す る 権 原 が 重 複 す る 場 合 に は 、 延 伸 大 陸 棚 の 境 界 画 定 が 必 要 と な る 。 日 本 は 2012 年 に 4 つ の 海 域 に つ い て 大 陸 棚 の 延 長 を 認 め る 勧 告 を 大 陸 棚 限 界 委 員 会 か ら 受 領 し た1。こ の う ち 、小 笠 原 海 台 海 域 及 び 南 硫 黄 島 海 域 の 2 つ の 海 域 に つ い て は 、 米 国 ( 北 マ リ ア ナ 諸 島 ) と の 間 で 延 長 大 陸 棚 が 重 複 す る 可 能 性 が あ り 、重 複 が 存 在 す る 場 合 に は 境 界 画 定 が 必 要 と な る2。ま た 、日 本 が 申 請 し て い た 海 域 の う ち 、 勧 告 が 見 送 ら れ た 九 州 パ ラ オ 海 嶺 南 部 海 域 に つ い て も 、 将 来 的 に 勧 告 が な さ れ た 場 合 に は パ ラ オ と の 間 で の 境 界 画 定 が 必 要 と な る3。こ の よ う な 意 味 で 、 延 長 大 陸 棚 の 境 界 画 定 は 日 本 に と っ て 今 後 実 務 的 な 対 応 が 必 要 と な る 問 題 で あ る 。 延 伸 大 陸 棚 の 境 界 画 定 は 比 較 的 新 し い 問 題 で あ る 。 専 ら 延 長 大 陸 棚 の 境 界 画 定 の た め に 締 結 さ れ た 条 約 は 現 時 点 で 数 件 存 在 し て い る の み で あ り 、 ま た 延 長 大 陸 棚 の 海 洋 境 界 画 定 を 正 面 か ら 扱 っ た 国 際 裁 判 例 も 現 時 点 で は 3 件 に 過 ぎ な い 。結 論 を 先 に 述 べ れ ば 、 条 約 実 践 は い ま だ 一 致 し た 方 向 性 を 見 せ て お ら ず 、 3 件 の 国 際 裁 判 例 も 一 定 の 方 向 性 を 示 し て は い る も の の 、そ の 射 程 に つ い て は 限 界 が あ る 。 延 長 大 陸 棚 の 境 界 画 定 に つ い て は 、な お 実 行 の 集 積 が 不 十 分 で あ り 、学 説 上 も 様 々 な 議 論 の 余 地 が あ る の が 現 状 で あ る4。本 稿 で は 、既 存 の 国 際 裁 判 例 及 び 条 約 を 分 析 し 、 そ れ ら が 延 長 大 陸 棚 の 境 界 画 定 に 関 す る 今 後 の 展 開 に つ い て 、 ど の よ う な 示 唆 を 与 え る も の で あ る の か を 検 討 す る 。
1 Summary of Recommendations of the Commission on the Limits of the Continental Shelf
in Regard to the Submission made by Japan on 12 November 2008 (19 April 2012), available at <http://www.un.org/depts/los/clcs_new/submissions_files/jpn08/com_sumrec_jpn_fi n.pdf>. 2 米 国 は 国 連 海 洋 法 条 約 の 当 事 国 で は な い こ と か ら 、米 国 と の 間 の 延 長 大 陸 棚 の 境 界 画 定 を 考 え る 上 で は 、延 長 大 陸 棚 に 対 す る 権 原 は 非 当 事 国 で あ る 沿 岸 国 に 対 し て も 慣 習 国 際 法 上 は 認 め ら れ る の か 、そ し て 大 陸 棚 限 界 委 員 会 の 勧 告 を 得 て い な い 国 と の 間 で 延 長 大 陸 棚 の 境 界 画 定 は 行 い う る の か と い う 問 題 が 存 在 す る 。こ れ ら も 重 要 な 問 題 で あ る が 、 別 途 詳 細 な 検 討 が 必 要 で あ り 、 本 稿 で は 取 り 上 げ な い 。 3 九 州 パ ラ オ 海 嶺 南 部 海 域 に 関 す る 問 題 に つ い て は 次 の 文 献 を 参 照 。西 村 弓「 大 陸 棚 延 伸 と 大 陸 棚 限 界 委 員 会 手 続 規 則 の 問 題 点 ― 日 本 の 延 伸 申 請 を 素 材 と し て ― 」松 井 芳 郎 ほ か 編 『 21 世 紀 の 国 際 法 と 海 洋 法 の 課 題 』( 東 信 堂 、 2016 年 ) 398-416 頁 、 井 内 由 美 子・臼 井 麻 乃「 大 陸 棚 限 界 委 員 会 の 任 務 と 実 行 ― 島 に 関 す る 国 家 間 の 見 解 の 相 違 へ の 対 応 を 例 と し て 」 島 嶼 研 究 ジ ャ ー ナ ル 第 2 巻 1 号 ( 2012 年 ) 100-117 頁 。
4 D. H. Anderson, “Recent Judicial Decisions Concerning Maritime Delimitation,” Lilian
del Castillo (eds.), Law of the Sea, From Grotius to the International Tribunal for the Law
Ⅱ 海洋境界画定に関する判例法理の確立とその射程
国 連 海 洋 法 条 約 第 74 条 1 項 及 び 83 条 1 項 は 、排 他 的 経 済 水 域( EEZ)及 び 大 陸 棚 の 境 界 画 定 に つ い て 、「 衡 平 な 解 決 を 達 成 す る た め に 、国 際 司 法 裁 判 所 規 程 第 38 条 に 規 定 す る 国 際 法 に 基 づ い て 合 意 に よ り 行 う 」 と 規 定 し て い る 。 条 文 上 は 、 200 海 里 内 の 大 陸 棚 と 延 長 大 陸 棚 は 区 別 さ れ て お ら ず 、 延 長 大 陸 棚 の 境 界 画 定 に つ い て も こ の 規 定 が 適 用 さ れ る 。 し か し 、 こ の 規 定 は 「 衡 平 な 解 決 」 と い う 一 般 的 な 指 針 と 「 国 際 法 に 基 づ い て 合 意 に よ り 行 う 」 と い う 原 則 的 な 方 法 を 示 す の み で 、 境 界 画 定 の 具 体 的 な 方 法 に つ い て は 明 ら か に し て い な い 。 国 際 裁 判 ・ 仲 裁 裁 判 に お け る 海 洋 境 界 画 定 の 具 体 的 な 方 法 は 、 国 際 裁 判 例 が 蓄 積 さ れ る 中 で 形 成 さ れ て き た 。 国 際 司 法 裁 判 所 に お け る 1993 年 の ヤ ン ・ マ イ エ ン 事 件 判 決 以 降 、 国 際 裁 判 所 及 び 仲 裁 裁 判 所 は EEZ 及 び 大 陸 棚 の 海 洋 境 界 画 定 に 関 す る 事 件 で ほ ぼ 一 貫 し た 手 法 を 用 い て い る5。 こ の 手 法 は 、 2009 年 の 黒 海 海 洋 境 界 画 定 事 件 判 決 で 3 つ の 段 階 か ら な る も の と し て 提 示 さ れ6、こ の 3 段 階 ア プ ロ ー チ は 国 際 司 法 裁 判 所 に お け る「 確 立 し た 判 例 法 理( settled jurisprudence)」で あ る と 位 置 づ け ら れ た7。こ の 3 段 階 ア プ ロ ー チ は 、第 1 に 、等 距 離・中 間 線 に よ っ て 暫 定 的 な 境 界 線 を 引 き 、 第 2 に 、 衡 平 な 結 果 を 達 成 す る た め に 暫 定 的 な 等 距 離 ・ 中 間 線 の 修 正 を 必 要 と す る 要 素 ( 関 連 事 情 ) が あ る か 否 か を 検 討 し た 上 で 、 必 要 に 応 じ て 修 正 を 施 し 、 第 3 に 、 関 連 す る 海 岸 の 長 さ と 境 界 画 定 の 結 果 と し て の そ れ ぞ れ の 海 域 の 面 積 と の 間 に 著 し い 不 均 衡 が 生 じ て い る と い う 意 味 で 不 衡 平 な 結 果 と な っ て い な い か を 検 証 す る 、 と い う も の で あ る 。 も っ と も 、こ の 3 段 階 ア プ ロ ー チ が EEZ と 大 陸 棚 の 両 方 を 線 引 き す る 単 一 海 洋 境 界( single maritime boundary)の 画 定 方 法 に 関 す る 判 例 法 理 と し て 確 立 す る ま で に は 、 自 然 の 延 長 を 基 準 と し て 大 陸 棚 の 境 界 画 定 を 行 う ア プ ロ ー チ か ら の 転 換 が あ っ た8。国 際 裁 判 に お い て 初 め て 大 陸 棚 の 境 界 画 定 が 問 題 と な っ た 西 ド イ ツ と 5 唯 一 の 例 外 は 2007 年 の ニ カ ラ グ ア / ホ ン ジ ュ ラ ス 事 件 で あ り 、 両 国 の 海 岸 線 の 角 度 の 二 等 分 線 を 基 準 と し て 海 洋 境 界 画 定 を 行 っ た 。し か し な が ら 、こ の 方 式 は 具 体 的 な 地 理 的 状 況 と の 関 係 で 、3 段 階 ア プ ロ ー チ に よ り が た い 場 合 の 例 外 的 な 境 界 画 定 方 法 と し て 位 置 づ け ら れ て い る 。Territorial and Maritime Dispute between Nicaragua and Honduras in the Caribbean Sea (Nicaragua v. Honduras) , Judgment, ICJ Reports 2007 (II),p. 745, para. 281 参 照 。
6 Maritime Delimitation in the Black Sea (Romania v. Ukraine), Judgment, ICJ Reports
2009, p. 44, paras. 115-117. た だ し 、こ の 手 法 が 3 つ の 段 階 か ら な る も の と し て 明 示 的 に 表 現 さ れ た の は こ の 事 件 が 初 め て お り 、そ れ ま で の 判 決 で は 、第 3 の 段 階 と さ れ る も の は 第 2 段 階 に 含 め て 理 解 さ れ て い た 。
7 Ibid., para. 118.
8 海 洋 境 界 画 定 に 関 す る 判 例 法 理 が 結 果 指 向 的 衡 平 ア プ ロ ー チ( result-oriented equity
オ ラ ン ダ 及 び デ ン マ ー ク と の 間 の 北 海 大 陸 棚 事 件 で 、 国 際 司 法 裁 判 所 は 「 自 然 の 延 長 」 に 基 づ い た 境 界 画 定 方 法 を 示 し て い る 。 大 陸 棚 条 約 第 6 条 は 、 当 事 国 間 で 合 意 が な い と き は 、「 特 別 の 事 情 」 に よ り 他 の 境 界 線 が 正 当 と 認 め ら れ な い 限 り 、 等 距 離 ・ 中 間 線 に よ っ て 大 陸 棚 の 境 界 を 画 定 す る と 規 定 し て い た と こ ろ 、 オ ラ ン ダ 及 び デ ン マ ー ク は 、 本 件 で は こ の 規 則 が 適 用 さ れ る べ き で あ り 、 か つ こ の 規 則 は 慣 習 国 際 法 で も あ る た め 大 陸 棚 条 約 の 当 事 国 で は な か っ た 西 ド イ ツ を も 拘 束 す る と 主 張 し た 。 こ れ に 対 し て 、 裁 判 所 は 結 果 の 衡 平 を 重 視 し 、 大 陸 棚 の 境 界 を 画 定 す る に あ た っ て 唯 一 の 義 務 的 な 方 法 は な い と 指 摘 し た 上 で 、 大 陸 棚 の 境 界 画 定 方 法 を そ の 権 原 の 根 拠 と 結 び つ け て 論 じ た 。 判 決 は 大 陸 棚 が 沿 岸 国 に 帰 属 す る 理 由 に つ い て 、 そ れ が 沿 岸 国 の 陸 上 領 土 の 延 長 ま た は 継 続 で あ る か ら で あ る と 述 べ た 上 で 、 こ の こ と か ら 次 の 帰 結 が 導 き 出 さ れ る と し て い る9。 す な わ ち 、「 一 定 の 海 底 区 域 が 自 然 な ( ま た は 最 も 自 然 な ) 沿 岸 国 の 陸 域 の 延 長 を 構 成 し て い な い 場 合 に は 、 仮 に こ の 海 域 が 他 国 の 領 土 よ り も 当 該 沿 岸 国 に 近 い 場 合 で あ っ て も 、 沿 岸 国 に 帰 属 し て い る と み な す こ と は で き な い 。 あ る い は 少 な く と も 、 よ り 近 く は な い が 当 該 海 域 が そ の 陸 域 の 自 然 な 延 長 で あ る と み な さ れ る と こ ろ の 国 家 に よ る 競 合 す る 主 張 と の 関 係 で は 、 そ の よ う に み な す こ と は で き な い 。」 北 海 大 陸 棚 事 件 に お け る 以 上 の 判 示 を 踏 ま え て 、 大 陸 棚 の 境 界 画 定 は 一 定 の 海 域 が ど ち ら の 国 の 「 自 然 の 延 長 」 で あ る の か に よ っ て 判 断 さ れ る と の 理 解 が 生 じ た10。 北 海 大 陸 棚 事 件 後 の 大 陸 棚 の 境 界 画 定 事 件 で は 、 各 国 は 海 底 の 地 質 及 び 地 形 に 関 す る 科 学 的 知 見 を 動 員 し て 、 対 象 海 域 が 自 国 の よ り 自 然 な 延 長 で あ る こ と を 主 張 す る よ う に な っ た 。1977年 の 英 仏 大 陸 棚 事 件 で は 、英 国 が 英 仏 海 峡 の ハ ー ド ・ デ ィ ー プ ( Hurd Deep) に 沿 っ た 境 界 線 を 主 張 し た11。 仲 裁 裁 判 所 は こ の 主 張 を 認 め な か っ た が 、 そ の 理 由 は 、 大 陸 棚 の 境 界 画 定 に お い て 海 底 の 地 形 学 的 な 特 徴 は 考 慮 さ れ な い と い う こ と で は な く 、 ハ ー ド ・ デ ィ ー プ が 地 形 学 的 に は 明 確 な 特 徴 で あ る と し て も 、 大 陸 棚 の 本 質 的 な 一 体 性 を 分 断 す る も の と ま で は い え な い と い う 実 質 的 な 判 断 で あ っ た12。 る も の と し て 、Y. Tanaka, The International Law of the Sea (2nd ed., Cambridge University Press, 2015), pp. 201-209.
9 North Sea Continental Shelf Cases (Federal Republic of Germany/Denmark; Federal
Republic of Germany/Netherlands), Judgment, ICJ Reports 1969, p. 31, para. 43.
1 0 K. Highet, “The Use of Geophysical Factors in the Delimitation of Maritime Boundaries ,”
J. I. Charney and L. M. Alexander (eds.), International Maritime Boundaries (Martinus Nijhoff, 1993), Vol. I, pp. 168-171.
1 1 Case Concerning the Delimitation of the Continental Shelf between the United Kingdom
of Great Britain and Northern Ireland, and the French Republic, Decision of 30 June 1977 and Decision of 14 March 1978, Reports of International Arbitral Awards (United Nations,
2006), Vol. XVIII, p. 21, para. 12.
国 際 司 法 裁 判 所 に お け る チ ュ ニ ジ ア / リ ビ ア 事 件( 1982年 )で も 、チ ュ ニ ジ ア と リ ビ ア の 双 方 が 、 対 象 海 域 が 自 国 領 域 の 自 然 の 延 長 で あ る こ と に つ い て 、 海 底 の 地 形 学 ・ 地 質 学 的 な 特 徴 に 基 づ い た 詳 細 な 主 張 を 行 っ た 。 こ れ に 対 し て 裁 判 所 は 、 ま ず 、 海 底 の 地 質 に 関 す る 主 張 を 詳 細 に 検 討 し て 、 法 的 に は 地 質 的 な 考 慮 の み に 依 拠 し て 大 陸 棚 の 帰 属 を 決 定 す る こ と は で き な い と 判 示 し た13。 次 に 、 海 底 の 地 形 に 関 す る 主 張 に つ い て 、地 質 に 基 づ く 主 張 に 優 越 す る も の と は 認 め ら れ ず 、 ま た 、 2つ の 異 な る 自 然 の 延 長 が 存 在 す る こ と を 示 す ほ ど の 明 確 な 断 絶 も 存 在 し な い と の 認 定 を 行 っ た14。 す な わ ち 、 こ の 事 件 に お け る 裁 判 所 の 結 論 は 、 海 底 の 地 質 ・ 地 形 そ の も の に 基 づ い て 対 象 海 域 の 境 界 画 定 を 行 う こ と は で き な い と い う も の で あ っ た 。 し か し 、 裁 判 所 の 判 断 枠 組 み に よ れ ば 、 対 象 海 域 の 海 底 が 2つ の 異 な る 大 陸 棚 か ら 構 成 さ れ て い る と 評 価 で き る ほ ど に 明 確 な 断 絶 が あ る 場 合 に 、 こ れ を 考 慮 す る こ と は 必 ず し も 排 除 さ れ て い な い 。 チ ュ ニ ジ ア / リ ビ ア 事 件 判 決 の 結 論 は 、 対 象 海 域 に つ い て 正 面 か ら 地 形 学 ・ 地 質 学 的 な 検 討 を 行 っ た 結 果 、 そ う し た 断 絶 が こ の 事 案 に お い て は 存 在 し な か っ た と い う こ と に 過 ぎ な か っ た 。 判 決 は む し ろ 、 海 底 の 地 形 学 的 な 特 徴 が 、 大 陸 棚 の 連 続 性 を 害 す る ほ ど の も の で は な か っ た 場 合 に も 、 衡 平 な 解 決 を 導 く た め に 関 連 事 情 と し て 考 慮 さ れ る 場 合 が あ る こ と を 明 示 的 に 認 め て い る15。 北 海 大 陸 棚 事 件 を 基 点 と し た 、 自 然 の 延 長 を 基 準 と す る ア プ ロ ー チ か ら の 転 換 点 と な っ た の は 、リ ビ ア / マ ル タ 事 件 判 決( 1985年 )で あ る 。こ の 事 件 で リ ビ ア は 、 マ ル タ と の 間 の 海 底 に は 地 質 学 的 ・ 地 形 学 に 見 て 本 質 的 な 断 絶 が あ り 、 こ の 断 絶 が 両 国 の 2つ の 自 然 の 延 長 の 間 の 境 界 線 と な る べ き で あ る と の 主 張 を 行 っ た 。 こ れ に 対 し て 、 国 際 司 法 裁 判 所 は 、 こ の 主 張 に つ い て 地 質 学 的 ・ 地 形 学 的 な 観 点 か ら 正 面 か ら 検 討 す る こ と を せ ず に 、次 の よ う に 判 示 し た 。す な わ ち「 ・・・法 の 発 展 に よ り 、 国 家 は そ の 大 陸 棚 が 海 岸 か ら 200海 里 ま で 及 ん で い る こ と を 、 対 応 す る 海 底 及 び そ の 下 の 地 質 的 な 性 質 を 問 わ ず 主 張 す る こ と が で き る よ う に な っ た の で 、 そ の 距 離 内 に お い て は 、 関 係 す る 国 家 の 法 的 権 原 を 確 認 す る 場 合 で も 、 あ る い は そ の 主 張 の 相 互 間 に お い て 境 界 画 定 を 行 う 場 合 で も 、 地 質 学 的 ま た は 地 球 物 理 学 な 要 素 に 役 割 を 与 え る 理 由 は 何 ら 存 在 し な い16。」さ ら に 、判 決 は よ り 端 的 に 、 200海 里 内 の 海 洋 境 界 画 定 に お い て 「 当 該 海 域 の 地 質 学 的 ま た は 地 形 学 的 な 特 徴
1 3 Case Concerning the Continental Shelf (Tunisia/Libyan Arab Jamahiriya) , Judgment,
ICJ Reports 1982, pp. 53-54, para. 61.
1 4 Ibid., p. 57, para. 66. 1 5 Ibid., p. 58, para. 67.
1 6 Case Concerning the Continental Shelf (Libyan Arab Jamahiriya/Malta) , Judgment, ICJ
は 、 完 全 に 無 関 係 で あ る 」 と も 述 べ て い る17。 そ の 後 の 国 際 裁 判 に お い て は 、 前 述 の よ う に 、200海 里 内 の 単 一 海 洋 境 界 の 事 案 に 関 す る 判 断 が 蓄 積 し て い く 中 で 、 3段 階 ア プ ロ ー チ が 確 立 し て い っ た 。 し か し 、 リ ビ ア / マ ル タ 事 件 判 決 で 理 由 と し て 挙 げ ら れ た よ う に 、 国 連 海 洋 法 条 約 で 新 た に 距 離 に 基 づ く 大 陸 棚 へ の 権 原 が 認 め ら れ る よ う に な っ た こ と が 、 従 来 の 判 断 枠 組 み か ら の 転 換 を も た ら し た の で あ る と す る と 、 200海 里 以 遠 の 大 陸 棚 に つ い て は な お 旧 来 の 判 断 枠 組 み が 適 用 さ れ る と も 考 え ら れ る こ と に な る 。 そ こ で 学 説 上 は 、 延 長 大 陸 棚 に つ い て は 、 200 海 里 内 の 単 一 海 洋 境 界 線 と の 関 係 で 確 立 し た 3段 階 ア プ ロ ー チ が そ の ま ま 適 用 さ れ ず 、 自 然 の 延 長 が 考 慮 さ れ る の で は な い か と の 指 摘 が な さ れ て き た18。
Ⅲ 延長大陸棚の境界画定に関する国際裁判例
以 上 の よ う な 問 題 関 心 が 持 た れ て い た 中 で 、 ベ ン ガ ル 湾 の 海 洋 境 界 画 定 に 関 す る バ ン グ ラ デ シ ュ / ミ ャ ン マ ー 事 件 に お け る 国 際 海 洋 法 裁 判 所 の 判 決 ( 2012 年 ) は 、 延 長 大 陸 棚 の 境 界 画 定 を 初 め て 正 面 か ら 取 り 扱 っ た も の と な っ た 。 ま た 、 そ の 2 年 後 に は バ ン グ ラ デ シ ュ / イ ン ド 事 件 判 決( 2014 年 )に お い て 、国 連 海 洋 法 条 約 附 属 書 VII に 基 づ く 仲 裁 裁 判 所 が 、 同 様 に 延 長 大 陸 棚 部 分 の 海 洋 境 界 画 定 に つ い て 判 断 を 行 っ て い る 。 そ の 後 、 国 際 海 洋 法 裁 判 所 の 特 別 裁 判 部 に よ る ガ ー ナ / コ ー ト ジ ボ ワ ー ル 事 件 判 決( 2017 年 )も 延 長 大 陸 棚 の 境 界 画 定 を 行 っ た 。い ず れ の 判 決 も 、延 長 大 陸 棚 に は 200 海 里 内 の 海 洋 境 界 画 定 と 同 一 の 方 法 が 適 用 さ れ る と の 判 断 を 下 し た 。 も っ と も 、 以 下 で 検 討 す る よ う に 、 い ず れ の 判 決 も そ の 理 由 付 け に お い て 海 洋 境 界 画 定 に 関 す る 従 来 の 判 例 法 理 と の 関 係 を 十 分 に 説 明 し て お ら ず 、極 め て 形 式 的 な 理 由 か ら 200 海 里 内 で 形 成 さ れ た 3 段 階 ア プ ロ ー チ を 延 長 大 陸 棚 に つ い て も 適 用 し て い る 。 こ の 点 は 学 説 上 批 判 さ れ て い る が 、 他 方 で 、 延 伸 大 陸 棚 に つ い て 200 海 里 内 と 同 じ 境 界 画 定 方 法 を 適 用 す る 判 断 が 積 み 重 ね ら れ つ つ あ る こ と は 、今 後 の 議 論 の 動 向 に 大 き な 影 響 を 与 え て い く も の と 思 わ れ る 。 1 バン グラ デ シュ /ミ ャ ンマ ー事 件 判決 ( 2012 年) バ ン グ ラ デ シ ュ / ミ ャ ン マ ー 事 件 は 、 国 際 海 洋 法 裁 判 所 で 海 洋 境 界 画 定 が 争 わ 1 7 Ibid.1 8 R. R. Churchill and A. V. Lowe, The Law of the Sea (3rd ed., Manchester University
Press, 1999), p. 190; D. A. Colson, “The Delimitation of the Outer Continental Shelf between Neighboring States”, American Journal of International Law, Vol.97(1) (2003), pp. 102-103.
れ た 初 め て の 事 件 で あ り 、 か つ 延 伸 大 陸 棚 の 境 界 画 定 が 国 際 裁 判 所 で 判 断 さ れ た 初 め て の 事 件 と な っ た 。 延 長 大 陸 棚 部 分 の 海 洋 境 界 画 定 に つ い て は 、 当 該 海 域 に つ い て 大 陸 棚 限 界 委 員 会 に よ る 勧 告 が 得 ら れ て い な か っ た た め 、 国 際 海 洋 法 裁 判 所 が 境 界 画 定 を 行 う 権 限 を 有 す る の か 否 か 、 そ し て こ の 権 限 を 行 使 す る の が 適 切 で あ る の か が 、 ま ず 問 題 と な っ た 。 こ の 点 に つ い て 裁 判 所 は 、 裁 判 所 が 境 界 画 定 を 行 っ て も 大 陸 棚 限 界 委 員 会 の 機 能 を 阻 害 す る こ と に は な ら ず 、 ま た 、 両 国 が 大 陸 棚 限 界 委 員 会 に お け る 手 続 に 同 意 を 与 え て い な い こ と に 鑑 み れ ば 、 裁 判 所 に よ る 境 界 画 定 な し に は 両 国 の 大 陸 棚 の 外 側 の 限 界 が 明 ら か に な ら な い こ と に も な り か ね な い と し て 、 裁 判 所 が 境 界 画 定 を 行 う 権 限 を 行 使 す る の が 適 当 で あ る と 判 断 し た19。 ベ ン ガ ル 湾 に お け る 延 長 大 陸 棚 の 存 在 に つ い て 、 バ ン グ ラ デ シ ュ は 、 ミ ャ ン マ ー と 対 象 海 域 と の 間 に は 本 質 的 な 断 絶 が あ る の で 、 ミ ャ ン マ ー は そ も そ も ベ ン ガ ル 湾 に お け る 延 長 大 陸 棚 に 対 す る 権 原 を 持 た な い と 主 張 し て い た 。 こ の 主 張 は 、 海 底 の 地 質 に 基 づ く 主 張 で あ る 。 し か し 、 裁 判 所 は こ の 主 張 を 退 け 、 延 長 大 陸 棚 に 対 す る 権 原 の 存 在 は 、 主 と し て 国 連 海 洋 法 条 約 第 76 条 4 項 の 要 件 を 充 た す こ と に よ っ て 示 さ れ る も の で あ り 、 ベ ン ガ ル 湾 に お け る 堆 積 岩 層 は 非 常 に 厚 い こ と に 鑑 み れ ば 、 76 条 4 項 (a)(i)に お け る 要 件 を 充 た し 、 両 国 は と も に 延 長 大 陸 棚 に 対 す る 権 原 を 有 し て い る の で あ っ て 、 権 原 の 重 複 が あ る と 判 断 し た20。 そ の 上 で 裁 判 所 は 、大 陸 棚 の 境 界 画 定 に 関 す る 国 連 海 洋 法 条 約 第 83 条 が 、200 海 里 内 の 境 界 画 定 と 200 海 里 外 の 境 界 画 定 を 区 別 し て い な い こ と を 指 摘 し 、「 本 件 に お い て 200 海 里 以 遠 の 大 陸 棚 に つ い て 用 い ら れ る べ き 境 界 画 定 方 法 は 、 200 海 里 内 の も の と は 異 な ら な い 。 従 っ て 、 200 海 里 以 遠 の 大 陸 棚 の 境 界 画 定 に つ い て も 、 等 距 離 / 関 連 事 情 方 式 が 適 用 さ れ る 」 と 結 論 づ け た21。 ま た 、 こ の 帰 結 と し て 、 海 底 の 地 質 ・ 地 形 に 関 す る 要 素 を 関 連 事 情 と す る バ ン グ ラ デ シ ュ の 議 論 も 退 け た 。 他 方 で 、 200 海 里 内 で 関 連 事 情 と し て 認 め て い た バ ン グ ラ デ シ ュ の 海 岸 線 が 凹 状 で あ る と い う 事 情 に つ い て は 、 200 海 里 以 遠 に つ い て も 関 連 事 情 で あ る と し た 。 こ の よ う な 判 断 の 下 、 裁 判 所 は 延 長 大 陸 棚 に つ い て も 単 一 海 洋 境 界 線 を 伸 ば す 形 で 境 界 画 定 を 行 っ た 。
1 9 Dispute concerning Delimitation of the Maritime Boundary between Bangladesh and
Myanmar in the Bay of Bengal (Bangladesh/Myanmar), Judgment of 14 March 2012, paras.
378-392, available at <http://www.itlos.org/cases/list-of-cases/case-no-16/>.
2 0 Ibid., paras. 444-449. 2 1 Ibid., para. 455.
2 バン グラ デ シュ /イ ン ド事 件判 決 ( 2014 年) 同 じ ベ ン ガ ル 湾 で は バ ン グ ラ デ シ ュ ・ イ ン ド 間 の 海 洋 境 界 画 定 紛 争 が 国 連 海 洋 法 条 約 附 属 書 VII の 下 で の 仲 裁 裁 判 所 に 付 託 さ れ て お り 、2014 年 に 判 決 が 下 さ れ た 。 こ の 事 件 で も 延 伸 大 陸 棚 の 境 界 画 定 が 行 わ れ た が 、 裁 判 所 の 判 断 は 基 本 的 に は バ ン グ ラ デ シ ュ / ミ ャ ン マ ー 事 件 判 決 を 踏 襲 す る も の で あ っ た 。 バ ン グ ラ デ シ ュ は 、 本 件 で も 延 伸 大 陸 棚 部 分 が 自 国 領 域 の 「 最 も 自 然 な 延 長 ( most natural prolongation)」で あ る と の 主 張 を 行 っ て い た が 、バ ン グ ラ デ シ ュ / ミ ャ ン マ ー 事 件 判 決 で こ の 主 張 が 受 け 入 れ ら れ な か っ た こ と を 受 け て 、 こ の 主 張 を 自 ら 取 り 下 げ て い た22。 最 終 的 に バ ン グ ラ デ シ ュ が 延 長 大 陸 棚 に つ い て 関 連 事 情 と し て 主 張 し た の は 、 自 国 の 海 岸 線 が 凹 状 に 屈 曲 し て い る こ と な ど 、 海 岸 線 か ら の 権 原 の 延 び 方 に 関 す る 事 情 で あ っ た 。 仲 裁 裁 判 所 は 、 200 海 里 の 内 外 を 問 わ ず 大 陸 棚 の 境 界 画 定 に 関 す る 適 切 な 方 法 は 同 一 で あ り 、 200 海 里 内 で は 等 距 離 ・ 関 連 事 情 の 方 法 を 用 い た の で 、 200 海 里 以 遠 に つ い て も 同 じ 方 法 を 用 い る と し て 200 海 里 以 遠 に つ い て も 暫 定 的 な 等 距 離 線 を 引 い た23。 裁 判 所 は こ の 判 断 に つ い て 具 体 的 な 理 由 を 特 に 述 べ て お ら ず 、 国 際 海 洋 法 裁 判 所 の バ ン グ ラ デ シ ュ / ミ ャ ン マ ー 事 件 判 決 も 明 示 的 に は 参 照 し て い な い 。 200 海 里 の 内 外 で 方 法 は 同 一 で あ る と い う 説 明 の 仕 方 か ら は 、 バ ン グ ラ デ シ ュ / ミ ャ ン マ ー 事 件 と 同 様 に 、 第 83 条 1 項 の 規 定 上 、 区 別 が 存 在 し な い と い う 形 式 的 な 理 由 に 立 脚 す る も の と 思 わ れ る 。 こ の 点 で 、 本 判 決 が 延 長 大 陸 棚 の 境 界 画 定 の 理 論 に つ い て バ ン グ ラ デ シ ュ / ミ ャ ン マ ー 事 件 判 決 に 付 け 加 え る と こ ろ は な か っ た と い え る 。 3 ガー ナ/ コ ート ジボ ワ ール 事件 判 決( 2017 年) ガ ー ナ / コ ー ト ジ ボ ワ ー ル 事 件 で は 、 大 西 洋 に 面 し て 隣 接 す る ガ ー ナ と コ ー ト ジ ボ ワ ー ル と の 間 の 海 洋 境 界 が 国 際 海 洋 法 裁 判 所 の 特 別 裁 判 部 で 争 わ れ た 。 特 別 裁 判 部 は ま ず 、 延 長 大 陸 棚 の 境 界 画 定 を 行 う 権 限 の 有 無 に つ い て 検 討 を 始 め 、 一 方 の 当 事 者 で あ る ガ ー ナ が 既 に 大 陸 棚 限 界 委 員 会 か ら 勧 告 を 受 領 し て お り 、 隣 接 国 で あ る コ ー ト ジ ボ ワ ー ル と の 間 で 地 質 的 な 状 況 は 同 一 で あ る こ と か ら 延 長 大 陸 棚 が 存 在 す る こ と 自 体 に は 疑 い は な い と 判 断 し た24。 ま た 、 延 長 大 陸 棚 の 境 界 画
2 2 Bay of Bengal Maritime Boundary Arbitration between Bangladesh and India
(Bangladesh v. India), Award of 7 July 2014, para. 439, available at
<http://www.pcacases.com/web/view/18>.
2 3 Ibid., para. 465.
定 を 行 う た め に は 、 延 長 大 陸 棚 が 存 在 す る こ と が 大 前 提 と は な る も の の 、 大 陸 棚 の 限 界 設 定 と 境 界 画 定 は 異 な る 作 用 で あ る か ら 、 コ ー ト ジ ボ ワ ー ル が 大 陸 棚 限 界 委 員 会 の 勧 告 を 受 領 し て い な い こ と は 、 裁 判 所 に 対 す る 申 立 の 受 理 可 能 性 の 点 で 問 題 と は な ら な い と 判 断 し た25。 延 長 大 陸 棚 の 境 界 画 定 の 方 法 に つ い て は 、大 陸 棚 制 度 は 単 一 の も の で あ る か ら 、 境 界 画 定 の 方 法 論 に つ い て 200 海 里 内 の 大 陸 棚 と 延 長 大 陸 棚 と の 間 で 区 別 を 設 け る こ と は 適 当 で は な い と 判 断 し て い る26。 そ れ ゆ え に 、 延 長 大 陸 棚 以 遠 の 大 陸 棚 は 、大 陸 棚 の 外 側 の 限 界 線 に 達 す る ま で 、領 海 及 び 200 海 里 内 の EEZ・大 陸 棚 の 境 界 線 と 同 じ 方 向 に 延 び て い る と 結 論 づ け ら れ た 。 4 国際 裁判 例 の評 価 バ ン グ ラ デ シ ュ / ミ ャ ン マ ー 事 件 判 決 と バ ン グ ラ デ シ ュ / イ ン ド 事 件 判 決 は 、 こ れ ま で 国 際 裁 判 例 が 存 在 し な か っ た 延 長 大 陸 棚 の 境 界 画 定 の 問 題 に つ い て 、 極 め て 明 確 な 判 断 を 行 っ た 。他 方 で 、両 判 決 は 200 海 里 内 外 で 同 一 の 境 界 画 定 方 法 が 用 い ら れ る 理 由 と し て 、 第 83 条 の 規 定 及 び 大 陸 棚 制 度 の 単 一 性 と い う 形 式 的 な 根 拠 し か 挙 げ て い な い 。 と り わ け 、 200 海 里 内 で 形 成 さ れ て き た 判 例 法 理 の 妥 当 根 拠 が 、 200 海 里 外 で は 存 在 し な い に も 関 わ ら ず 、 な お 従 来 の ア プ ロ ー チ を 踏 襲 す べ き 理 由 が 積 極 的 に 論 じ ら れ て い な い 点 に は 批 判 が あ る27。 両 事 件 で は 両 当 事 国 の 権 原 の 間 に 目 立 っ た 地 質 学 的 ・ 地 形 学 的 な 特 徴 は な か っ た も の の 、 際 立 っ た 特 徴 が あ る 事 案 の 場 合 に は 、 地 形 的 ・ 地 質 的 要 素 が 考 慮 さ れ る 可 能 性 は 、 完 全 に は 排 除 さ れ た と は い え な い と の 見 解 も 主 張 さ れ て い る28。 そ の 後 、 ガ ー ナ / コ ー ト ジ ボ ワ ー ル 事 件 判 決 も 、 大 陸 棚 制 度 の 単 一 性 の み を 理 由 と し て 先 行 す る 2 つ の 事 件 に お け る 判 断 枠 組 み を 踏 襲 し た 。 し か し な が ら 、 こ の 事 件 も ベ ン ガ ル 湾 に 関 す る 2 つ の 事 件 と 同 様 に 、隣 接 す る 2 つ の 沿 岸 国 の 大 陸 棚 が 両 国 か ら 離 れ る 方 向 に 延 び て お り 、 か つ 、 特 に 目 立 っ た 地 質 学 的 ・ 地 形 学 的 な 特 徴 が 存 在 し て い な い と い う 状 況 の 下 で の 判 断 で あ っ た 。 少 な く と も 一 方 の 沿
D’Ivoire in the Atlantic Ocean (Ghana/Côte D’Ivoire), Judgement of 23 September 2017,
para. 491, available at < https://www.itlos.org/en/cases/list-of-cases/case-no-23/>.
2 5 Ibid., paras. 493-494. 2 6 Ibid., para. 526.
2 7 R. Churchill, “The Bangladesh/Myanmar Case: Continuity and Novelty in the Law of
Maritime Boundary Delimitation,” Cambridge Journal of International and Comparative
Law, Vol. 1 (2012), p. 149.
2 8 C. Schofield, A. Telesetsky and S. Lee, “A Tribunal Navigating Complex Waters:
Implications of the Bay of Bengal Case,” Ocean Development and International Law, Vol. 44(4) (2013), p. 375.
岸 国 が 大 陸 棚 限 界 委 員 会 の 勧 告 を 受 領 し て い な い こ と か ら 大 陸 棚 の 外 側 の 限 界 が 不 明 で あ っ た に も 関 わ ら ず 、 裁 判 所 に よ る 境 界 画 定 が 可 能 で あ っ た の も 、 隣 接 国 間 の 海 洋 境 界 画 定 で は 、 外 洋 に 向 か っ て 一 定 の 方 向 で 大 陸 棚 の 外 側 の 限 界 線 ま で 海 洋 境 界 が 継 続 し て い る と の 形 で の 判 断 が 可 能 で あ る か ら で あ る 。 こ の よ う に 、 こ れ ま で 国 際 裁 判 所 で 判 断 の 対 象 と な っ た 3 事 件 は 、一 定 の 共 通 す る 地 理 的 特 徴 を 前 提 と し た 判 断 と み る こ と も で き る 。 し た が っ て 、 国 際 裁 判 に お け る こ れ ま で の 判 断 の 射 程 が 延 長 大 陸 棚 制 度 一 般 に 及 ぶ の か 否 か に つ い て は 、 特 に 相 対 国 間 の 境 界 画 定 な ど 、 別 の 地 理 的 状 況 に お い て 同 様 の 判 断 が 踏 襲 さ れ な い 限 り 、な お 議 論 の 余 地 が あ る と 評 価 せ ざ る を え な い 。
Ⅳ 合意による延長大陸棚の境界画定
合 意 に よ る 延 長 大 陸 棚 の 境 界 画 定 に つ い て は 、 200 海 里 内 の 海 洋 境 界 画 定 を 主 と す る 条 約 に お い て 境 界 線 を 200 海 里 外 に 延 長 し て い る も の を 除 け ば 、ま だ 僅 か な 数 の 条 約 が 締 結 さ れ て い る の み で あ る 。 し か し 、 既 に 締 結 さ れ て い る 少 数 の 条 約 は 、 合 意 に よ る 延 長 大 陸 棚 の 境 界 画 定 を 行 う に あ た っ て 多 様 な 方 法 を 採 用 し て お り 、 延 長 大 陸 棚 の 境 界 画 定 に 関 す る 3 件 の 国 際 裁 判 に お け る ア プ ロ ー チ と は 必 ず し も 整 合 し て い な い こ と が 指 摘 で き る 。 1 米国 ・メ キ シコ ( 2000 年) 米 国 と メ キ シ コ と の 間 で は 、 メ キ シ コ 湾 に お け る 両 国 の 延 長 大 陸 棚 に つ い て 2000 年 に 境 界 画 定 条 約 が 締 結 さ れ て い る29。境 界 画 定 の 対 象 海 域 は 、両 国 の EEZ で 完 全 に 囲 ま れ た 海 域 で あ る 。 米 国 は 、 国 連 海 洋 法 条 約 の 当 事 国 で は な い 。 メ キ シ コ は 国 連 海 洋 法 条 約 の 当 事 国 で は あ る が 、 境 界 画 定 条 約 締 結 時 点 で は 大 陸 棚 限 界 委 員 会 に 対 す る 申 請 を ま だ 行 っ て い な か っ た 。 そ の 後 、 メ キ シ コ は 境 界 画 定 線 の メ キ シ コ 側 の 海 域 に つ い て 2007 年 に 大 陸 棚 限 界 委 員 会 に 対 し て 申 請 を 行 い 、 2009 年 に は 申 請 を 行 っ た 全 域 が 大 陸 棚 の 限 界 内 に 入 っ て い る こ と を 確 認 す る 内 容 の 勧 告 を 受 領 し て い る 。 合 意 さ れ た 境 界 線 は 、 全 て の 島 を 考 慮 に 入 れ た 等 距 離 ・ 中 間 線 で あ る 。 交 渉 の2 9 Treaty between the Government of the United States of America and the Government of
the United Mexican States on the Delimitation of the Continental Shelf in the Western Gulf of Mexico Beyond 200 Nautical Miles, reproduced in Law of the Sea Bulletin, Vol. 44 (2001), pp. 71-75.
過 程 に お い て 、 等 距 離 ・ 中 間 線 以 外 の 方 法 は 一 切 提 起 さ れ な か っ た と い わ れ て い る30。 な お 、 延 長 大 陸 棚 部 分 の 境 界 線 は 、 そ の 両 端 に お い て 両 国 の 200 海 里 内 の EEZ・ 大 陸 棚 の 境 界 画 定 条 約 と 接 続 す る が 、 200 海 里 内 の 境 界 画 定 線 も 等 距 離 ・ 中 間 線 で あ る 。 な お 、 両 国 は 延 長 大 陸 棚 境 界 画 定 と 同 時 に 、 境 界 線 の 両 側 に 1.4 海 里 の 緩 衝 海 域 を 設 け 、 条 約 締 結 後 10 年 間 の 間 は こ の 海 域 で 天 然 資 源 の 開 発 を 行 わ な い こ と を 合 意 し て い る 。 図 1 メ キ シ コ 湾 に お け る 米 国 ・ メ キ シ コ 間 の 大 陸 棚 境 界 2 オー スト ラ リア ・ニ ュ ージ ーラ ン ド( 2004 年) オ ー ス ト ラ リ ア と ニ ュ ー ジ ー ラ ン ド と の 間 で は 、2004 年 に 延 長 大 陸 棚 の 境 界 画 定 条 約 が 結 ば れ て い る31。 こ の 条 約 も 両 国 が 大 陸 棚 限 界 委 員 会 に 対 し て 申 請 を 行 う 前 に 締 結 さ れ た 。オ ー ス ト ラ リ ア は こ の 条 約 締 結 の 数 ヶ 月 後 の 2004 年 11 月 に 、 ま た ニ ュ ー ジ ー ラ ン ド は 2006 年 に 申 請 を 行 っ て お り 、両 国 と も に 2008 年 に 委 員
3 0 Robert W. Smith, “Mexico-United States”, Report Number 1-5 (2), J. I. Charney and R.
W. Smith (eds.), International Maritime Boundaries (Martinus Nijhoff, 2002), Vol. IV, p. 2625.
3 1 Treaty between the Government of Australia and the Government of New Zealand
Establishing Certain Exclusive Economic Zone Boundaries and Continental S helf Boundaries, [2006] ATS 4.
会 か ら の 勧 告 を 受 領 し て い る 。 合 意 さ れ た 境 界 線 は 、 2 つ の 部 分 か ら な る 。 条 約 の 第 2 条 に 規 定 さ れ て い る ロ ー ド ・ ハ ウ 島 ( オ ー ス ト ラ リ ア ) と 北 島 ( ニ ュ ー ジ ー ラ ン ド ) 及 び ノ ー フ ォ ー ク 島 ( オ ー ス ト ラ リ ア ) と ス リ ー ・ キ ン グ ズ 島 ( ニ ュ ー ジ ー ラ ン ド ) と の 間 の 境 界 画 定 、 そ し て 第 3 条 に 規 定 さ れ て い る マ ッ コ ー リ ー 島 ( オ ー ス ト ラ リ ア ) と オ ー ク ラ ン ド 島 及 び キ ャ ン ベ ル 島 ( ニ ュ ー ジ ー ラ ン ド ) と の 間 の 境 界 線 で あ る 。 図 2 豪 州 ・ ニ ュ ー ジ ー ラ ン ド 大 陸 棚 境 界 ( 条 約 2 条 対 応 部 分 ) 合 意 さ れ た 線 は 複 雑 な 形 状 で あ る が 、 次 の よ う に 分 析 さ れ て い る32。 条 約 第 2 条 が 規 定 し て い る 境 界 線 に つ い て は 、( A)ノ ー フ ォ ー ク 島 か ら 350 海 里 の 線 と 大 陸 棚 の 限 界 が 交 差 す る 点 か ら 、ス リ ー・ キ ン グ ズ 海 嶺 の 北 端 を 結 ん だ 線 、( B)ス リ ー・キ ン グ ズ 海 嶺 の 縁 辺 に 沿 っ た 線 、( C)ノ ー フ ォ ー ク 島 沖 の 小 島 で あ る フ ィ リ ッ プ 島 と ス リ ー・キ ン グ ズ 島 の 間 の 中 間 線 、( D)フ ィ リ ッ プ 島 か ら の 200 海 里 に 沿 っ た 線 ( 南 緯 31 度 30 分 ま で )、( E) D の 終 点 と ロ ー ド ・ ハ ウ 島 沖 の ボ ー ル ズ・ピ ラ ミ ッ ド か ら の 200 海 里 上 の 南 緯 32 度 30 分 と の 交 点 を 結 ん だ 線 、( F)ボ ー ル ズ ・ ピ ラ ミ ッ ド か ら の 200 海 里 線( 終 点 は 、ス リ ー ・ キ ン グ ズ 島 に 半 分 の 効
3 2 N. Fyfe and G. French, “Australia-New Zealand,” Report Number 5-26, D. A. Colson and
R. W. Smith (eds.), International Maritime Boundaries (Martinus Nijhoff, 2005), Vol. V, pp. 3761-3762.
果 を 与 え た オ ー ス ト ラ リ ア と ニ ュ ー ジ ー ラ ン ド 本 土 と の 間 の 中 間 線 と の 交 点 )、 ( G) F の 終 点 と ボ ー ル ズ ・ ピ ラ ミ ッ ド か ら 350 海 里 線 上 の 点 を 結 ぶ 線 、( H) ボ ー ル ズ・ピ ラ ミ ッ ド か ら 350 海 里 の 線( 終 点 は 、本 土 間 の 中 間 線 )、( I)本 土 間 の 中 間 線 を 結 ん だ 線 、 で あ る 。 図 3 豪 州 ・ ニ ュ ー ジ ー ラ ン ド 大 陸 棚 境 界 ( 条 約 3 条 対 応 部 分 ) ま た 、条 約 第 3 条 が 規 定 し て い る 境 界 線 は 、マ ッ コ ー リ ー 島 の 200 海 里 に 沿 っ た 線 、両 国 の 200 海 里 EEZ・大 陸 棚 の 境 界 線( 中 間 線 )及 び 両 国 の 大 陸 棚 が 重 複 す る 海 域 を 等 分 す る 短 い 線 か ら 構 成 さ れ て い る 。 境 界 線 を 構 成 し て い る 各 部 分 は い ず れ も 交 渉 の 産 物 で あ り 、 一 定 の 原 則 か ら 必 然 的 に 導 き 出 さ れ た も の で は な い と 考 え ら れ る が 、 以 下 の こ と は 指 摘 す る こ と が で き る 。第 1 に 、等 距 離・中 間 線 は 限 定 的 な 形 で し か 用 い ら れ て い な い 。第 2 に 、 ス リ ー ・ キ ン グ ズ 海 嶺 に 従 っ た ( B) の 線 の よ う に 、 海 底 の 地 形 を 基 準 と し て 境 界 線 を 引 い て い る 箇 所 が あ る 。 第 3 に 、 南 部 の 境 界 線 は そ の 大 半 が オ ー ス ト ラ リ ア の 200 海 里 線 に 沿 っ て お り 、延 長 部 分 の ほ ぼ 全 て を ニ ュ ー ジ ー ラ ン ド の 大 陸 棚 と す る 境 界 画 定 と な っ て い る 。 こ れ は 、 延 長 部 分 が ニ ュ ー ジ ー ラ ン ド の 南 島 の 自 然 の 延 長 で あ る と い う 点 を 前 提 と し て 、 自 然 の 延 長 を 基 準 に 境 界 画 定 を 行 っ た も の と 評 価 で き る 。 な お 、 オ ー ス ト ラ リ ア の マ ッ コ ー リ ー 島 に 由 来 す る 延 長 大 陸 棚 は 200 海 里 の 南 部 で 申 請 さ れ て お り 、重 複 す る 海 域 は わ ず か で あ る が 、こ の 重 複
部 分 に つ い て は 等 分 す る 形 で の 境 界 線 と な っ て い る 。 3 ノル ウェ ー ・ア イス ラ ンド ・デ ン マー ク( フ ェロ ー諸 島 ) (2006 年) ノ ル ウ ェ ー 、ア イ ス ラ ン ド 及 び デ ン マ ー ク の 3 国 の 間 で は 、3 国 の EEZ に 囲 ま れ て い る バ ナ ナ ・ ホ ー ル と 呼 ば れ る 公 海 部 分 に つ い て 、 延 長 大 陸 棚 の 境 界 画 定 方 法 に 関 す る 合 意 が 2006 年 に な さ れ た33。 2006 年 の 合 意 議 事 録 に は 、 3 国 の 間 で 相 互 に 大 陸 棚 限 界 委 員 会 に 対 す る 申 請 に つ い て 異 議 を 申 し 立 て な い と い う 合 意 も 含 ま れ て お り 、合 意 の 約 2 ヶ 月 後 に ノ ル ウ ェ ー が 北 東 大 西 洋 及 び 北 極 海 に 関 す る 部 分 申 請 を 、2006 年 に ア イ ス ラ ン ド が エ ー ギ ル 海 盆 及 び レ イ キ ャ ネ ス 海 嶺 西 部 ・ 南 部 に 関 す る 部 分 申 請 を 、 そ し て 2009 年 に デ ン マ ー ク が フ ェ ロ ー 諸 島 北 部 に 関 す る 部 分 申 請 を 行 っ て い る 。 ノ ル ウ ェ ー 、 ア イ ス ラ ン ド 、 デ ン マ ー ク は そ れ ぞ れ 2009 年 、 2016 年 、 2014 年 に 勧 告 を 受 領 し て い る 。 境 界 画 定 の 対 象 で あ る 「 バ ナ ナ ・ ホ ー ル 南 部 」 は 、 合 意 上 は 明 確 に 定 義 さ れ て い な い が 、フ ェ ロ ー 諸 島 、ア イ ス ラ ン ド 及 び ノ ル ウ ェ ー( 本 土 及 び ヤ ン マ イ エ ン ) の 200 海 里 線 、並 び に フ ェ ロ ー 諸 島 及 び ア イ ス ラ ン ド の 350 海 里 線 で 囲 ま れ る 海 域 で あ る 。 こ の 海 域 に A~ F の 6 点 を 指 定 し 、 直 線 で 結 ぶ 形 で の 境 界 画 定 を 行 っ て い る 。 こ れ は 対 象 海 域 の 全 体 が 連 続 し た 大 陸 棚 で あ る と の 前 提 に 立 つ も の で あ る が 、 大 陸 棚 限 界 委 員 会 の 勧 告 に よ っ て 対 象 海 域 の 一 部 が 深 海 底 で あ る と 判 断 さ れ た 場 合 に は 、 関 係 国 は 合 意 さ れ た 境 界 線 に 影 響 を 及 ぼ す こ と な く 勧 告 に 従 っ て 大 陸 棚 の 限 界 を 設 定 す る 。 た だ し 、 勧 告 に よ っ て 実 際 に 得 ら れ た 延 長 大 陸 棚 の 面 積 が 境 界 画 定 合 意 に よ っ て 割 り 当 て ら れ た 面 積 を 下 回 っ た 場 合 に は 、 過 剰 な 部 分 に つ い て 調 整 を 行 う こ と に な っ て い る 。 例 え ば 、 フ ェ ロ ー 諸 島 の 延 長 大 陸 棚 が 27,000 平 方 キ ロ メ ー ト ル を 下 回 っ た 場 合 に は 、過 剰 な 部 分 を ア イ ス ラ ン ド( 40%) と ノ ル ウ ェ ー ( 60%) で 配 分 す る 。 こ の 修 正 は 合 意 か ら 逸 脱 が 最 も 少 な く な る よ う 、主 と し て C 点 を 移 動 さ せ て 行 う 。最 終 的 な 境 界 画 定 は 3 つ の 二 国 協 定 の 締 結 に よ っ て 行 わ れ る こ と に な っ て い る 。 本 海 域 に お け る 境 界 画 定 方 法 は 、 大 陸 棚 限 界 委 員 会 の 勧 告 に 応 じ た 境 界 線 の 修 正 方 法 に も 表 れ て い る 通 り 、 面 積 が 主 な 考 慮 要 因 と す る も の と 考 え ら れ る ( ノ ル ウ ェ ー 56,000 km²、ア イ ス ラ ン ド 29,000 km²、デ ン マ ー ク( フ ェ ロ ー 諸 島 )27,000
3 3 Agreed Minutes on the Delimitation of the Continental Shelf beyond 200 Nautical Miles
between the Faroe Islands, Iceland and Norway in the Southern Part of the Banana Hole of the Northeast Atlantic, reproduced in R. E. Fife, “Denmark/The Faroes-Iceland-Norway”, Report Number 9-26, D. A. Colson and R. W. Smith (eds.), International Maritime
km²)34。た だ し 、点 C と 点 F を 結 ぶ 線 、及 び 点 D と 点 E を 結 ぶ 線 は 既 存 の EEZ の 境 界 線( 等 距 離 )を 延 長 し た も の に 近 い 。ま た 点 A と 点 B 線 を 結 ぶ 線 に つ い て は 、 海 岸 線 の 長 さ が 影 響 し て い る 可 能 性 も 指 摘 さ れ て い る 。 さ ら に 、 結 果 と し て 主 な 海 底 の 地 形 と 線 引 き が 一 致 し て い る と い う 指 摘 も あ る35。 図 4 フ ェ ロ ー 諸 島 ・ ア イ ス ラ ン ド ・ ノ ル ウ ェ ー 間 バ ナ ナ ・ ホ ー ル 南 部 に お け る 大 陸 棚 境 界 4 アイ スラ ン ド・ デン マ ーク (グ リ ーン ラン ド ) (2013 年) ア イ ス ラ ン ド と デ ン マ ー ク と の 間 で は 、 ア イ ス ラ ン ド と グ リ ー ン ラ ン ド と の 間 の 延 長 大 陸 棚 の 重 複 部 分 に つ い て も 、 バ ナ ナ ・ ホ ー ル に お け る 3 国 の 合 意 と 同 様 の 方 法 で 、 境 界 画 定 に 関 す る 合 意 議 事 録 が 作 成 さ れ て い る36。 こ の 合 意 は 、 両 国 と も 大 陸 棚 限 界 委 員 会 に 対 し て 当 該 海 域 に 対 す る 申 請 を 行 っ た 後 、 勧 告 を 受 領 す る 前 に な さ れ て い る 。 3 4 Ibid., pp. 4542-4543. 3 5 Ibid., p. 4540.
3 6 Agreed Minutes on the Delimitation of the Continental Shelf beyond 200 Nautical Miles
between Greenland and Iceland in the Irminger Sea, reproduced in B. M. Magnusson, “Denmark (Greenland) - Iceland”, Report Number 9-22(2), International Maritime
合 意 の 対 象 は 、 大 陸 棚 限 界 委 員 会 に 対 す る 両 国 の 申 請 が 重 複 し て い る 海 域 で あ る 。な お 、ア イ ス ラ ン ド の レ イ キ ャ ネ ス 海 嶺 の 脚 部 は グ リ ー ン ラ ン ド の 200 海 里 内 に と る こ と も 考 え ら れ る 。 し か し 、 実 際 の 大 陸 棚 限 界 委 員 会 に 対 す る 申 請 は グ リ ー ン ラ ン ド の 200 海 里 線 ま で に 留 ま っ て お り 、相 手 方 の 200 海 里 内 の 海 域 を 申 請 の 対 象 に 含 め る こ と は し て い な い37。 ま た 、 申 請 に あ た っ て は 相 互 に 大 陸 棚 限 界 委 員 会 に 異 議 を 申 し 立 て な い こ と 等 を 合 意 し て い る 。 図 5 イ ル ミ ン ガ ー 海 に お け る グ リ ー ン ラ ン ド ・ ア イ ス ラ ン ド 間 の 大 陸 棚 境 界 合 意 さ れ た 境 界 線 は 、 7 つ の 点 を 結 ぶ 直 線 で あ る 。 こ の 境 界 線 は 対 象 海 域 の 面 積 比 に 基 づ く も の で あ る こ と が 明 示 さ れ て い る ( デ ン マ ー ク ( グ リ ー ン ラ ン ド ) が 53% 、ア イ ス ラ ン ド が 47% )。大 陸 棚 限 界 委 員 会 に よ る 勧 告 に よ っ て 対 象 海 域 の 範 囲 が 修 正 さ れ る 場 合 に は 面 積 比 が 維 持 さ れ る よ う に 、 か つ 合 意 さ れ た 境 界 線 か ら の 逸 脱 が 最 小 と な る よ う に 修 正 す る こ と も 合 意 さ れ て い る 。 当 該 海 域 は 、 全 体 が 中 間 線 の グ リ ー ン ラ ン ド 側 に 位 置 し て い る こ と か ら 、 中 間 線 を 用 い る こ と は そ も そ も 不 可 能 で あ っ た 。 ま た 、 地 質 学 的 ・ 地 形 学 的 な 要 素 は 考 慮 さ れ て い な い 3 7 相 対 国 間 で 一 方 の 沿 岸 国 の 200 海 里 内 の 大 陸 棚 と 他 方 の 沿 岸 国 の 延 長 大 陸 棚 が 重 複 し う る か 否 か(200 海 里 内 の 海 域 に 対 す る 権 原 が 自 動 的 に 優 先 す る か 否 か )に は 争 い が あ る 。東 シ ナ 海 で は 、中 国 及 び 韓 国 が 日 本 の 200 海 里 内 の 海 域 ま で 自 国 の 延 長 大 陸 棚 が 伸 び て い る こ と を 主 張 し て い る 。ア イ ス ラ ン ド・デ ン マ ー ク 間 の 合 意 は こ の 問 題 と の 関 係 で も 参 考 と な る 国 家 実 行 で あ る 。
と 考 え ら れ て お り 、 面 積 比 は 海 岸 線 の 長 さ の 比 に 基 づ く も の で あ る と 説 明 さ れ て い る38。 5 200 海里 内 を主 な対 象 とす る海 洋 境界 画定 条 約 200 海 里 内 を 主 な 対 象 海 域 と す る 海 洋 境 界 画 定 条 約 に お い て も 、 延 長 大 陸 棚 部 分 の 海 洋 境 界 画 定 が 含 ま れ て い る 場 合 が あ る39。 こ れ ら の 条 約 に お い て は 、 200 海 里 内 と 同 様 に 等 距 離 ・ 中 間 線 を 基 本 と す る 境 界 線 が 採 用 さ れ て い る 場 合 が ほ と ん ど で あ り 、少 な く と も 200 海 里 の 内 外 で 境 界 線 の 方 向 は 大 き く 変 わ っ て い な い 40。 ガ ン ビ ア ・ セ ネ ガ ル 間 の 1975 年 条 約 は 、 緯 度 線 に 平 行 す る 既 存 の 境 界 線 を 延 伸 大 陸 棚 に つ い て も そ の ま ま 延 長 し て い る41。 オ ー ス ト ラ リ ア の ハ ー ド ・ マ ク ド ナ ル ド 諸 島 と フ ラ ン ス の ケ ル ゲ レ ン 諸 島 と の 間 の 海 洋 境 界 画 定 を 行 う 1982 年 条 約 は 、 延 長 大 陸 棚 に つ い て も 等 距 離 線 を 採 用 し て い る42。 オ ー ス ト ラ リ ア と フ ラ ン ス ( ニ ュ ー ・ カ レ ド ニ ア ) の 間 の 1982 年 条 約 も 、 延 長 大 陸 棚 に つ い て 等 距 離 線 を 採 用 し て い る43。ア イ ル ラ ン ド と 英 国 の 間 の 1988 年 条 約 は 、ジ グ ザ グ の 線 と な っ て お り 、 詳 し い 根 拠 は 明 ら か に な っ て い な い44。 し か し 、 200 海 里 の 内 外 で 境 界 画 定 方 法 が 大 き く 変 わ っ て い る よ う に は み ら れ ず 、 境 界 線 自 体 も 等 距 離 線 か ら 大 き く 逸 脱 す る も の で は な い 。 オ ー ス ト ラ リ ア と ソ ロ モ ン 諸 島 の 間 の 1988 年 条 約 は 、 等 距 離 線 に 近 い 線 で 延 長 大 陸 棚 の 境 界 画 定 を 行 っ て い る45。 ト リ ニ ダ ー ド ・ ト バ ゴ と ベ ネ ズ エ ラ の 間 の 1990 年 条 約 も 、 延 長 大 陸 棚 に つ い て ほ ぼ 等 距 離 線 の 境 界 を 採 用 し て い る46。米 国 と ソ 連 の 間 の 1990 年 の 未 発 効 の 条 約 は 、中 間 線
3 8 Magnusson, supra note 36, p. 7.
3 9 こ の よ う な 条 約 も 含 め て 、 延 長 大 陸 棚 の 境 界 画 定 に つ い て 検 討 し た 先 行 研 究 と し
て 、B. M. Magnusson, “Outer Continental Shelf Boundary Agreements ”, International and
Comparative Law Quarterly, Vol. 62 (2013), pp. 345-372.
4 0 Colson, supra note 18, p. 96.
4 1 A. O. Adede, “The Gambia-Senegal”, Report Number 4-2, Charney and Alexander (eds.),
supra note 10, pp. 849-855.
4 2 Victor Prescott, “Australia (Heard/McDonald Islands)-France (Kerguelen Islands)”,
Report Number 6-1, J. I. Charney and L. M. Alexander (eds.), International Maritime
Boundaries (Martinus Nijhoff, 1993), Vol. II, pp. 1185-1194.
4 3 C. Park, “Australia–France (New Caledonia)”, Report Number 5-1, Charney and
Alexander (eds.), supra note 10, pp. 905-913.
4 4 D. H. Anderson, “Ireland-United Kingdom”, Report Number 9-5, Charney and Alexander
(eds.), supra note 42, pp. 1767-1779.
4 5 C. Park, “Australia-Solomon Islands”, Report Number 5-4, Charney and Alexander (eds.),
supra note 10, pp. 977-983.
4 6 K. G. Nweihed, “Trinidad and Tobago-Venezuela”, Report Number 2-13(3), Charney and
を 基 準 に し た 境 界 で は な い が 、200 海 里 の 内 外 で 境 界 の 方 向 等 に は 変 更 が な い47。 ケ ニ ア ・ タ ン ザ ニ ア の 間 の 2009 年 の 境 界 線 は 緯 度 線 に 平 行 な 線 を 採 用 し て い る が 、 延 長 大 陸 棚 部 分 に つ い て も 200 海 里 内 の 線 を そ の ま ま 延 長 す る 形 で あ る48。 バ ル バ ド ス と フ ラ ン ス の 間 の 2009 年 条 約 は 、等 距 離 線 を 採 用 し て い る49。ノ ル ウ ェ ー と ロ シ ア の 間 の 2010 年 の 海 洋 境 界 条 約 は 、 セ ク タ ー 理 論 に 基 づ く ロ シ ア の 主 張 と の 間 と の 妥 協 を 反 映 し た 特 殊 な 形 状 の 境 界 線 で あ る が 、 延 長 大 陸 棚 部 分 に つ い て 、 200 海 里 内 と 異 な る 考 え 方 を 反 映 し た も の と は な っ て い な い50。
Ⅴ 国家実行の評価
延 長 大 陸 棚 の 境 界 画 定 に 関 す る 3 件 の 国 際 裁 判 は 一 定 の 方 向 性 を 示 し て い る の に 対 し て 、 国 家 間 の 交 渉 を 通 じ て 合 意 さ れ た 境 界 画 定 条 約 か ら は 必 ず し も 一 貫 し た 方 向 性 を 見 い だ す こ と が で き な い 。 200 海 里 内 に お け る 海 洋 境 界 画 定 条 約 に 付 随 的 に 延 長 大 陸 棚 部 分 が 含 ま れ て い る 場 合 に は 、 200 海 里 内 の 境 界 線 ( 多 く は 等 距 離 ・ 中 間 線 ) を 単 純 に 延 長 し て い る が 、 延 長 大 陸 棚 が 重 複 し て い る 海 域 に つ い て 主 に 境 界 画 定 を 行 う 条 約 に つ い て は 、 そ の 手 法 は 様 々 で あ る 。 事 例 が 少 数 に 留 ま る た め 、 そ こ で 採 用 さ れ て い る 手 法 を 一 般 化 す る こ と は で き な い 。 し か し 、 少 な く と も 下 記 の 2 点 は 指 摘 す る こ と が で き る 。 第 1 に 、 国 際 判 例 に お け る 等 距 離 ・ 中 間 線 を 基 準 と し た ア プ ロ ー チ は 、 必 ず し も 踏 襲 さ れ て い な い 。 特 に ア イ ス ラ ン ド と デ ン マ ー ク ( グ リ ー ン ラ ン ド ) と の 間 の 境 界 画 定 は 、 権 原 が 重 複 し て い る 海 域 の 全 域 が 中 間 線 の グ リ ー ン ラ ン ド 側 に 存 在 す る た め 、 暫 定 的 な 等 距 離 ・ 中 間 線 を 引 く 手 法 が そ も そ も 適 用 で き な い 事 案 で あ っ た 。 こ の 点 、 国 際 裁 判 所 に よ っ て 判 断 が な さ れ た 3 件 の 事 件 は い ず れ も 隣 接 国 間 に お け る 海 洋 境 界 画 定 で あ り 、 両 国 の 海 岸 線 か ら 離 れ る 方 向 に 大 陸 棚 が 延 び て い る 地 理 的 状 況 で あ っ た た め 、 200 海 里 内 に お け る 境 界 画 定 方 法 を そ の ま ま 適 用 す る こ と が 可 能 で あ っ た 。 し か し 、 ア イ ス ラ ン ド と グ リ ー ン ラ ン ド の 間 の 海 域 の よ う に 、相 対 国 間 の 延 長 大 陸 棚 の 海 洋 境 界 画 定 で は 200 海 里 内 の 手 法 を そ の ま ま 適 用 で き な い 場 合 が あ る 。 こ の 観 点 か ら も 、 国 際 裁 判 所 に お け る こ れ ま で の 34 7 E. G. Verville, “United States-Soviet Union”, Report Number 1-6, Charney and
Alexander (eds.), supra note 10, pp. 447-460.
4 8 M. Pratt, “Kenya-Tanzania”, Report Number 4-5(2), International Maritime Boundaries
(online edition).
4 9 C. W. Dundas, “Barbados-France (Guadeloupe and Martinique)”, Colson and Smith,
supra note 33, pp. 4223-4231.
5 0 R. E. Fife, “Norway-Russian Federation”, Report Number 9-6(3), International Maritime
件 の 判 決 の 射 程 に つ い て は 、 な お 議 論 の 余 地 が あ る 。 第 2 に 、暫 定 的 な 等 距 離 線 を 修 正 す る 手 法 が 必 ず し も 用 い ら れ て い な い こ と と 関 係 し て 、 面 積 に 着 目 し た 解 決 方 法 が 登 場 し て い る こ と が 新 た な 展 開 と し て 指 摘 で き る 。 た だ し 、 面 積 の 根 拠 に つ い て は 必 ず し も 明 ら か で は な く 、 面 積 に 着 目 し た 実 行 を ど の よ う な も の と し て 理 論 化 で き る か に つ い て は 不 明 な 点 が あ る 。 ア イ ス ラ ン ド と グ リ ー ン ラ ン ド と の 間 の 境 界 画 定 は 関 連 す る 海 岸 の 長 さ の 比 に 基 づ い て い る と の 指 摘 も あ り 、 こ れ は 「 衡 平 な 解 決 」 の あ り 方 に つ い て 国 際 判 例 が 採 用 し て き た ア プ ロ ー チ と 重 な る も の と 評 価 で き る 。 他 方 で 、 バ ナ ナ ・ ホ ー ル に お け る 海 洋 境 界 画 定 に つ い て は 、 フ ェ ロ ー 諸 島 の 関 連 す る 海 岸 の 長 さ は 極 め て 僅 か で あ る に も 関 わ ら ず 、 よ り 長 い 海 岸 線 を 採 用 す る ア イ ス ラ ン ド と 大 き く 変 わ ら な い 面 積 を 与 え ら れ て お り 、 こ の 場 合 に は 海 岸 の 長 さ の 比 は 考 慮 さ れ て い な い 。 延 長 大 陸 棚 の 権 原 の 根 拠 は 自 然 の 延 長 で あ り 海 岸 線 か ら の 距 離 で は な い こ と か ら 、 理 論 的 に は 海 岸 線 の 長 さ を 考 慮 に 入 れ る 必 然 性 は な い 。 他 方 で 、「 よ り 自 然 な 延 長 」 と い っ た 延 長 大 陸 棚 の 権 原 と 結 び つ い た 基 準 に よ っ て 決 定 す る 実 行 が 蓄 積 さ れ て い る わ け で も な い 。
Ⅵ おわりに
延 長 大 陸 棚 の 境 界 画 定 を め ぐ っ て は 、 国 際 裁 判 所 に お け る 境 界 画 定 方 法 と 、 国 家 間 の 合 意 に 基 づ く 境 界 画 定 方 法 と の 間 で 相 違 が 見 ら れ る 。 国 際 裁 判 所 に お け る 延 長 大 陸 棚 の 境 界 画 定 方 法 に つ い て は 、 少 な く と も 当 面 の 間 は 、 3 件 の 判 決 に お け る 一 貫 し た 流 れ の 影 響 下 で 議 論 が 展 開 さ れ て い く も の と 思 わ れ る 。 し か し 、 こ れ ま で の 判 決 は 、 そ の 具 体 的 な 地 理 的 状 況 の 下 で は 衡 平 な 解 決 を も た ら し て い る と し て も 、 一 般 的 に 適 用 可 能 な も の と し て 十 分 に 説 得 力 の あ る 理 由 付 け を 伴 っ て い な い 。 200 海 里 内 外 で の 大 陸 棚 制 度 の 単 一 性 と い う 点 が 挙 げ ら れ て い る の み で あ り 、 3 段 階 ア プ ロ ー チ と い う 境 界 画 定 方 法 が 妥 当 す る 実 質 的 理 由 が 必 ず し も 明 ら か で は な い こ と か ら 、 理 論 的 な 観 点 か ら の 判 決 に 対 す る 批 判 は 納 得 で き る も の で あ る 。 ま た 、 実 際 上 の 問 題 と し て 、 沿 岸 国 の 海 岸 線 と 画 定 す べ き 海 域 の 関 係 が 希 薄 で あ っ て 、そ も そ も 等 距 離・中 間 線 が 意 味 を 持 た な い よ う な 海 域 に つ い て は 、 判 決 の 枠 組 み は そ の ま ま 適 用 す る こ と が で き な い 。 こ う し た こ と か ら 、 国 際 裁 判 所 に お け る 延 長 大 陸 棚 の 境 界 画 定 方 法 に つ い て は 、 一 般 的 に 適 用 可 能 な 説 得 力 あ る 枠 組 み が こ れ ま で の 判 決 の 積 み 重 ね に よ っ て 示 さ れ た と は い え な い 。 国 家 間 で の 交 渉 と 合 意 を 通 じ た 延 長 大 陸 棚 の 境 界 画 定 方 法 に つ い て は 、 国 家 実 行 が 集 積 中 で あ る 。 こ れ ま で の 少 数 の 国 家 実 行 を 見 る 限 り 、 延 長 大 陸 棚 の 境 界 画定 条 約 で は 具 体 的 な 地 理 的 状 況 に 応 じ て 柔 軟 に 合 意 が な さ れ て き て お り 、 特 に 支 配 的 な 手 法 が あ る と ま で は い え な い 。 注 目 す べ き 展 開 と し て は 、 面 積 に 着 目 す る 境 界 画 定 方 法 が あ る 。 し か し 、 米 国 ・ メ キ シ コ の よ う な 等 距 離 ・ 中 間 線 に よ る 解 決 の 例 も あ り 、 何 ら か の 傾 向 が 存 在 し て い る と ま で は い え な い 。 し た が っ て 、 現 状 を 前 提 と す れ ば 、 日 本 が 他 国 と の 間 で 合 意 に 基 づ い て 境 界 画 定 条 約 を 締 結 す る 際 に も 、 国 際 法 上 確 立 し た 方 法 を 適 用 す る と い う よ り は 、 相 手 国 と の 間 で 合 意 可 能 な 境 界 線 を 柔 軟 に 探 る こ と に な る で あ ろ う 。 も っ と も 、 米 国 が 国 連 海 洋 法 条 約 の 当 事 国 で は な い 等 の 事 情 が 存 在 す る こ と か ら 、 実 際 に 境 界 画 定 を 行 う こ と が で き る ま で に は 相 当 の 時 間 を 要 す る こ と も 考 え ら れ る 。 そ の 場 合 に は 、 そ れ ま で の 間 の 境 界 画 定 方 法 の 発 展 も 考 慮 に 入 れ る 必 要 が 生 じ る 。 今 後 の 展 開 を 考 え る に あ た っ て は 、 国 家 間 の 合 意 に 基 づ く 境 界 画 定 方 法 が 国 際 裁 判 所 に お け る 境 界 画 定 方 法 と 接 近 す る よ う に な る か が 特 に 問 題 と な る 。国 家 は 、 相 手 国 と 合 意 で き る 限 り に お い て 様 々 な 要 素 を 考 慮 に 入 れ つ つ 自 由 に 海 洋 境 界 画 定 を 行 い う る の で あ り 、 ま た 、 海 洋 境 界 画 定 紛 争 は 国 連 海 洋 法 条 約 の 義 務 的 紛 争 解 決 手 続 の 下 で も 選 択 的 除 外 の 対 象 と さ れ て い る( 298 条 1 項 (a)(i))か ら 、必 ず し も 裁 判 所 の 影 で 交 渉 を 行 う こ と に な る わ け で は な い 。 し た が っ て 、 国 際 裁 判 所 の 境 界 画 定 方 法 を 説 得 力 あ る も の と し て 各 国 が 自 ら 受 け 入 れ る よ う に な ら な い 限 り 、 延 長 大 陸 棚 の 海 洋 境 界 画 定 条 約 に 関 す る 国 家 実 行 が 国 際 裁 判 所 の 境 界 画 定 方 法 に 接 近 し て い く と は 限 ら な い 。 こ う し た 観 点 か ら も 、 今 後 の 判 決 の 蓄 積 を 通 じ て 、 国 際 裁 判 所 に お け る 延 長 大 陸 棚 の 境 界 画 定 方 法 が ど の よ う に 一 般 的 に 適 用 可 能 な も の と し て 構 築 さ れ 、 理 論 的 に 裏 付 け ら れ て い く か が 注 目 さ れ る 。 ( 本 研 究 は JSPS 科 研 費 JP16K13320、 JP15H03294 及 び JP26780022 の 助 成 を 受 け た も の で す 。) ( に し も と け ん た ろ う )