DNA修復異常マウスの分子病態
著者
安井 明
D NA修復異常マウスの分子病態
研究課題番号1 0044231 平成1 0年度∼平成1 2年度 科学研究費補助金(基盤研究(B)(2))研究成果報告書
平成1 4年3月
00021004258 研究代表者 安 井 明(東北大学・加齢医学研究所・教授)
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研究課題番号 10044231 平成1 0-1 2年度 科学研究費補助金 (基盤研究(B)(2)) 研究成果報告書 平成14年2月研究代表者安井 明
(東北大学・加齢医学研究所・教授)
研究組織 研究代表者: 安井 明 (東北大学・加齢医学研究所・教授) 研究分担者: 高尾 雅 (東北大学・加齢医学研究所・助手) 研究協力者: GijbertusT.J.vanderHorst (エラスムス大学・医学部・助教授) 研究協力者: 岡野 聡 (東北大学・加齢医学研究所・非常勤研究員) 研究協力者: 菅野新一郎 (東北大学・加齢医学研究所・非常勤職員) 研究協力者: 小林久美子 (東北大学・医学研究科・大学院) 研究協力者: 高野りや (東北大学・医学研究科・大学院) 研究経費 平成1 0年度 平成1 1年度 平成1 2年度 合計 2,600千円 2,200千円 2,200千円 7,000千円 研究発表 (1)学会誌等
1) Chigansas, V., Miyaji, E.NH Muotri, A.R., Jacysyn, JE・, Amarante-Mendes,
GP., Yasui, A., and Menck, C. F. M. Photorepalr Prevents UV-induced apoptosis
in human cells expressing the marsupial photolyase gene・ Cancer F7es・ 60,
2458-2463, 2000.
2) Yoon, J, H., Lee, C.-S., 0'Connor, T. R., Yasui, A., and Pfeifer, G・ The DNA
damage spectrum produced by simulated sunlight. J. MoI. BioI・ 299, 681-693,
2000.
3) Yagita, K., Yamaguchi, S., Tamanini, F., van der Horst, G.T., Hoeijmakers, J・ H・,
Yasui, A., Loros, J. J., Dunlap, J. C., and Okamura, HI Dimerization and nuclear
entry of mPER proteins in mammalian ce"S. Genes Dev. 14, 1353-1363, 2000・
4) Okamura, H., Miyake, S., Sumi, Y., Yamaguchi, S., Yasui, A・, Muijtjens, M・,
Hoeijmakers, J. H. J., van der Horst, G.T.J. Photic induction of mPerl and mPer2
in Cv-deficient mice 一acking a biologlCal clock. Science, 286, 2531 -2534, 1 999・ 5) van der Horst, G. T. J., Muijtjens, M., Kobayashi, KリTakano, R・, Kanno, S・,
Takao, M., de Wit, J., Verkerk, A., Eker, A. P. M.. van Leenen, D., Buijs, R.,
Bootsma, D., Hoeijmakers J. H. J., and Yasui, A. Mammalian Cryl and Cry2 are
6) Okano, S., Kanno, S.. Takao, M" Eker, A.P. M., lsono, K., Tsukahara, Y., and
Yasui, A・ A putative blue-light receptor from Drosophila me/anogaster, Photochem. Photobio/., 69, 1 08-113. 1 999.
7) Shimura, M., lto, YJshii, C., Yajima, H., Linden, H., Harashima, T., Yasui, A.,
and lnoue, H・ Characterization of a Neurospora crassa photolyase-deficient
mutant generated by repeat induxced point mutation of the phr gene, Funga/ Genet. Bio/., 28, 12-20, 1999.
8) YasL!i A・, and Eker, AI P・ M, DNA photolyases. ]n DNA Damage and Repair, Vol. 2:
DNA Repair in Higher Eukaryotes (Eds, J.A. Nickoloff and M.F. Hoekstra) Humana
Press lnc., Totowa, NJ, 9-32, 1998.
9) Kobayashj, KH Kanno, S., Smit, B., van der Horst, G. T. J., Takao, M., Yasui. A.
Characterization of photolyase/blueJight receptor homologs in mouse and human
cells. NucleI'cAoI'ds Res. 26, 5086-5092, 1 998.
10) HayashJ', T., Takao, M. Tanaka, K., and Yasui. A. ERCCl mutations in UV
sensitive Chinese hamster ovary (CHO) cell lines. Mutat. F7es1 407, 269-276, 1 998.
(2)口頭発表(国内学会は数が多過ぎるので、国際学会に限定します)
i ) Akira Yasui, Photolyase and its homolog in mammals: Functionaf divergence
from DNA repair to circadian thythms・ 7th Japanese German Workshop on
molecuJar and cellular aspects of carcinogenesjsI Essen, Germany, 29131 , July,
1999.
2 ) Gijbertus T・J. van der Horst, Akira Yasui et al. Nucleotide excision repair and
carcinogenesis: Of mice and men・ 7th Japanese German Workshop on molecular
and ce"ular aspects of carcinogenesis. Essen, Germany, 29-31. July, 1 999.
3) Akira Yasui, Photolyases and photolyase homologs. American Society of
Microbiology Conference on DNA repalr and mutagenesis: mechanism, Control,
and biologlcal consequences. Hilton Head, South Carolina, November 1 17, 1 999.
(3)出版物 1)安井 明、分子・細胞の生物学l-遺伝子とタンパク質(岩波講座・現代医学の 基礎。岩波書店、 1998年12月。 2)安井 明、分子生物学(共著)、丸善株式会社、 1999年4月30日。 3)岡野 聡、安井 明、塩基損傷と単鎖切断の修復ネットワーク。蛋白質核酸酵 素。共立出版。 2001年6月。
研究成果
この研究は元々、科学研究費の国際学術研究として始まり、オランダロッテ
ルダムのエラスムス大学医学部のG的ertus TJ. van der Horst博士の研究グル
ープとの間で進行中であった、種々の修復遺伝子の欠損マウスを作成し、その影 響を解析するプロジェクトを推進した。そこでテーマに取り上げたものの内の一 つは、紫外線損傷を光のエネルギーで修復する能力を持つ光回復酵素である。我々 は1992年に初めて多細胞生物の光回復酵素遺伝子を魚類(キンギョ)から単離 し、 1994年には、有袋晴乳動物(ラットカンガルー)と昆虫(ショウジョバエ) から単離した。これらの遺伝子の特徴は、それまでに我々が単離してきた、微生 物の光回復酵素に相同性のあるものの,進化的には随分と懸け離れた蛋白をコー ドしていることである。また、有袋晴乳動物はこの遺伝子を持っているが、せい ぜい1億年程前に分れたヒトを含む有胎盤晴乳動物では見つからないことである。 この興味深い事実の理由はまだ明らかで無い。 しかしながら、その後、ヒトの光回復酵素遺伝子のホモローグ(mCRYl)が データベースから見つかった。その後、もう一つのホモローグ(mCRY2)が見 つかり、それぞれの組み換え蛋白を作って調べたところでは、紫外線損傷を修復 する活性は持っていなかった。そこで、この遺伝子産物の機能を解明する共同研 究が我々とオランダの研究室で始まった。我々は、マウスの光回復酵素ホモロー グ遺伝子mCRYlとmCRY2のcDNAとゲノムDNAを単離し、蛋白の機能解 析と遺伝子破壊(gene targeting)マウスの作成を試みた。遺伝子の単離とノッ クアウト用プラズミドの作成を我々が行い、大学院生がそのプラズミドを持って オランダに渡り1 0ケ月ほど滞在してノックアウトマウスを作成する準備をした。 いずれのマウスも生まれたが、これらのマウスは何らかのDNA損傷の修復機能 に影響が出ている可能性があったので、紫外線を照射するなどの処置をしても、 異常は見つけられなかった。 光回復酵素は光を吸収する能力を持つことから、光の検出器の役割をしてい る可能性がある。動物での光の役割は視覚での物の認識であるが、もう一つの例 として、日周リズムでの光の認識がある。すなわち、 CRY蛋白は日周リズムで の光の認識にかかわっている可能性が考えられた。そこで、滑車を廻す運動を指 標にマウスの日周リズムを調べてみた。マウスには、 1日を1 2時間と1 2時間 に分けた明暗のサイクルの中で生活をさせると、晴の時期にのみ滑車を廻す活動 をする。突然に1日を暗のみにしても、 1日が23,5時間のリズムで昼夜を守っ ている。この機能が日周リズムであるが、 mCRYlを欠いたマウスでは、明暗の
サイクルでは正しくリズムを示すが、暗のみにすると1日が野性型のマウスより も1時間短いリズムを示すことが分かった。 mCRY2の欠損マウスでは、それと は逆に、 1日が1時間長いリズムを示した。 mCRYlとmCRY2のダブルノック アウトマウスを作成して調べると、驚いたことに、明暗条件では活動は少し弱い ものの晴でのみ活動するが、恒暗条件では昼夜を通してほぼ無秩序に活動し、日 周リズムが無くなってしまった。元々、光に対する反応が変化することを期待し て作ったCRY欠損マウスであったが、これらのCRY蛋白が日周リズムそのも のに重要であるという結論となった。 その後、 CRYのKOマウスの視交差上核での種々の日周リズムに関与する遺 伝子の発現を調べたところ、 CRYのダブルKOマウスではこれらの遺伝子の発 現が高い状態で発現リズムをなくしており、 CRY蛋白が日周リズムを作るフィ ードバックループのネガティブレギュレーターであることが示唆された。その後、 多くの研究室がCRY蛋白の日周リズムへの関与の機構を解析してきたが、 CRY
蛋白が他の日周リズムに関わる蛋白(Clock, Per, Bmalなど)と直接相互作用
をして発現制御をしていることが示唆されている。光を吸収する能力は、 CRY 蛋白が眼で発現していて、日周リズムでのロドプシンの機能をバックアップして いることが、ロドプシンとCRYのトリプルノックアウトのマウスが、明暗のリ ズムを感知出きなくなったことから明かとなった。このように、おそらく進化の 初期に、太陽光の紫外線から生命を守った光回復酵素が、光りを感じる機能を進 化させて昼と夜を区別する機能を獲得し、さらにはその経緯から、日周リズムを 発振する役割までも獲得したのではないか、と考えている。 現在の研究は、 DNA修復酵素としての光回復酵素にどのような機能が加わって 光情報の伝達が可能となったかを、 CRY蛋白の構造決定を行って解明するとい う研究を進めている。また、 cRYのダブルノックアウトマウスは生長が遅く体 も大変小さいことから、生長遅延と日周リズムの関係を解析しつつある。
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