信時潔『沙羅』の音楽語法
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(2) 66. 田鎖. 大志郎. 大まかに美学上の「美的 範鴫 」を大西 克 祀の考察を踏まえることから 始めたい。 を 捉えることにより、. 「日本の美的. 範濤. 」. 「信時」の手法の 工夫の意味が 明らかになり、 几沙羅 』の持つ内容の 豊かさを. 裏 打ち出来れば 幸いであ る。 大西 克禧の 「美学」切によれば、. Erhebene) 2). 「. 美 」的なもの (das Schone) 3). 「フモール」. ℡ agische)、 「幽玄」を「崇高」から 派生したものとし、 優腕 「. から派生したものとしている。 ( 「わび」も含めて ). 1) 「崇高」なるもの (das (Humo めであ り、 「悲壮」 (das. 「美的 範鴫 」の基本的なものは. さらに「滑稽」. 」. (Grazie,Anmut) 、. 「あはれ」を「. (dasKom 玉che) を「フモール」と 関連させ、 「あはれ」、. 「さび」. 「さび」が、 当面該当するが、. 西洋音楽を基礎に 置いている「信時」の 作品の場合、 当然全ての「美的 範鴫 」と関わり合 う. 」. も多角的な考察、 吟味を経た後、 「フモール」へと 系統だてている。. 日本的な「美的 範肩 」としては、 上記の中の「幽玄」、 なろ. 美. う. ことと. 。 そこに「信時」の 語法の「新しさ」と「意味」を 観ることにもなるであ ろう。. 特に「清水重道」の 詩の内容と、 「信時」の「音楽語法」は 、 共に「自然」と「精神或いは 心 」と の融合した境地が 主流であ り、 その「美的 範鴫 」は、 日本的なものに 最初から限定す ぢ より、 「基本 的 美的 範鴫 」及び「派生的 H 的 範哺 」にせよ、. 哺 」としての「崇高」「幽玄」のく に 思う。. 「自然感的契機」に 基づいて成り 立っている「美的 範. 境 ひ目 ) 、 或いは、 往来する境地 ) として観た方が 適合するよ く. 一方、 「芸術感的契機」として「フモール」「さび」は. は「自然」との 本質的な関わり。). が 厳然として在る。. う. 考えられているが、 「さび」の根底に. それらが形式. ( 主として「芸術感的契機」. ). 及び納谷 ) にどの様に反映しているか、 表現されているかを 観ていくことになろう。 Ⅱext について. Ⅰ. Ⅰ. 口. 一. 1. 内容について. 几沙羅 』は清水重道. (信時と東京音楽学校の. 同僚の国文学者 ) の八つの詩から 成っているが、. そ. れぞれの詩は 、 異なった質の 美しさを持ちつつ 全体の流れを 作っている。 が. く片澤 ). れ. には 丹澤に 汗して登山した 者の目に写る 初冬 (?) の木立、 沢の流れ、 崩土 、 遠くに望. む町並み等の 自然への同化と 孤独感が一体となっている。 くあづま. やの ) この詩は、 催馬楽の. 句は畳みかけられ. ( シラブルは、. あ ずまや. (. 東屋 ) を下敷きにして 書かれており、 愛の間 答 歌風に詩. 5, 7, 7, 7, 7/5,. 7, 7/5,. 7,. 5, 7,. 7. になって. いる ) 、 リズミカルであ る。 内容は多少媚を 含んだ軽やかな 調子で、 訪ねても居ない 恨みを歌って い る。 く北秘め ). では愛する人への 思いを 北私 の 一 小さき花一に 例えている。 険しい山肌と 小さき花を. 対比することによって、 より可憐な白い 小さな花を浮き 上がらせている。 く沙羅) 林 、 昔なく一で始まるこの 詩は、 静寂さと、 日暮れの停止した 時間の中に、 象徴的に一 ほの黄色なる 沙 羅の花 一 を散らしている。. まさに幽玄の 境地であ り、 この曲集のタイトルになって. いる。 く鴉). 一転して、 鴉を道化者にして 薄ら氷の上を 渉らせている。 ひょうきんな 人を食った様は 誇. 張 され、 虚構そのもの、 滑稽そのものの 世界であ る。 「鳥獣戯画」にもつうじている。 く. 7予々. 子 ) ふるさとに帰って、 一昔わが遊びし 時と一変わらず、 鋭く鳴いているよしきりに 懐か. しさをつのらせている。 く. 占ふと ). この詩のみ自然を 離れて、 恋の行方への 不安や心の揺れを 一 黒髪を杭 る 一行為の中に.
(3) 信時潔『 沙 雁コの音楽語法. 67. こめている情緒の 濃い詩であ る。 ( ゆめ ). 寝覚めの夢の 中、 幽暗で広大で 荘漠 とした空間と、 夢とも. う. つっともっかない 境地を 、. 一軒のはて一の 池に象徴させている。 正に定家等の 幽玄体、 有心体の境地とっながるであ ろ. 以上、 清水重道の詩、 一つ一つぼ既に 多岐にわたる 精神的な美的世界がこめられていて、 それら 日本の美意識の 上に成り立っている。 けれども、 古典 (例えば定家、 西行、 芭蕉等の和歌、 俳. は、. 句 ) の 凝集し、 結晶化した作品に 比べると、 かなりゆるやかで 野情的であ ったりする。 しかし紛れ もなく、 日本の様々な 美の範 鴫に 通じ、 それらが総合され、 連 語 となって日本的美の 変幻を見せて いく。. Ⅰ. 一. 2. 詩の配列について. 八つの詩は 、 犬ょ そ 三つの傾向に 分類出来、 1. くあづま. やの ) の 詣謹 的ではあ るが、 ふられた悲哀、. ( 占ふと ). の実らない恋への 予感、. といっ. た 主観的感情の 濃い、 いわば生身の 人間の感情が 露に出た二つの 詩 。 Ⅱ ( 丹澤 ). の初冬の自然景観の 中での孤独、. き 死に託した思い、 (鴉 ). の河原で鋭く 鳴く. ではひょ. ぅ. Ⅱ ヒ 秋の ) の 険しい山道のくま. きんな擬人化された 道化としての 鴉、. く. (隈 ). に咲く白く小さ. 7〒々 子 ). ではふるさと. ,よしきり,と 幼き日への郷愁、 等 、 様々な自然に 心を通わせ、 自然と人が融合. している 詩 。. Ⅲ W沙羅 ) の夕暮の幽かな 沙 羅の花の描写とくゆめ. ). の 花漠 とした時空間を 描いた --篇の詩は 、. 自然描写そのものが 心象風景となっていいて、 幽玄性を帯びている。 これらが巧みに 流れを作って 並べられている。 1). く打澤 ) 一. 2). ( あ づま やの ). 3). ( 北秋の ) 一 Ⅱ. 4) く、m25 ク羅) Ⅱ。. 一. Ⅱ. m. 1. 5). く鴉). 6). (行々子 ) 一 Ⅱ. 7). く. 8). く夢) 一 Ⅲ. く鴉) は 擬人法を使い、. 一 Ⅱ。. 占ふと. ) 一 1. 技巧的であ ってⅡとしては 特別であ る。. これらの詩をテキストとして「信時」は 詩の精神. (心 ). を、 さらに内面化すると 同時に 、 広がっ. ていく小宇宙にしている。 次に、 その秘密を、 構成の仕方より 観てみる。.
(4) 田鎖. 68. 2. 大志郎. 楽曲分析. 2 一1. 詩の構成と曲の 構成. (丹澤 ). 枯れ笹に陽が 流れる、 背に汗. ①. うらと 雲 さへも 、 冬なのに. ②. ひのき ほ ら. 尾根長く檜綱こえて. 響く. ⑤⑥ つ,. はたの. 塔 のむか ふ 町並光らせて 秦野 あ まぎ. 見 やる天城も明るい 草 附き う. l. ④. どの山も崩土の 色だけは凍ててゐる. 雪 の 束 ぬ冬山のくぼに 煙草吸. I. ③. 澤 おと. て見る. )⑦⑧. ひとり. 詰 は 8 行より成る自由詩で、 ①∼④行は汗して 登る者の周辺の 自然を受けとめ、 ⑤⑥行で目は 遠 くを望み、 視野を広げ、 の⑧行では、 煙草を吸い、 自身を自然に 融けこませている。 曲も大体詩の 内容に沿っているが、 フレーズの間に 間奏が度々はいって 場面転換しつつ、 次のフ レーズに誘導している。 調も大きく は. 1. I. 一 E.dur,. Ⅱ. 一 A,dur, Ⅲ 一 E.dur と設定され、 旋律のピーク. の③の後半に / で e2 となり、 Ⅱでは⑥が m 夕からだんだん 強くなり、 Ⅰのところで 億 2 に達し、. 全体のクライマックスを 作っている。 但し、 内的なピークは m の⑧、 さらに後奏の 煙のモティーフ. のところであ ろう。 ラ テタ 桟下. Ⅰ. 牡. 拍手. か l. 坤. ⑦. の (タ ). カⅠ. (ヲ ). ひ iぬ). (チ ). ,何 安. 穏 石ム睦. ->@w. あ. 押卸. ヱ """". ". Ⅰ. 後。. ユ正. 吃 ぷ/. ガの び). ・Ⅴ. 鮭). す). 的呵 を. 案.
(5) 信時潔. T 沙 雁コの音楽語法. 69. くあづま やの ). 音節. ( シラブル. ). あ づまや の. ①. まや のあ まりに. ②. 7. 立ちぬれて. ③. 5. 殿 の声 あけ と. ④. 7. 云 ひし人もが. ⑤. 7. ⑥. 5+7. の. 7. 五月雨を. ⑧. 5. わが訪ひくれ ど. ⑨. 7. ⑩. 5. 君は い まさ ず. ⑪. 7. 憎くや. ⑫. この 君. ⑬. 5. とん. かすがひ. とざし. 錠も扁もなしと 云 ひし人もが みたれ. さ. Ⅱ. かど. 門. さして. この詩は 13行にわたっているが、 古代歌謡の催馬楽引を 下敷にし、 て リズミカルであ. り、. 前半の①∼⑤は 催馬楽「東屋」を. 踏襲し、. 5 と 7. のシラブルに 徹してい. 後半は催馬楽風であ りながら⑧∼. ⑬ではむしろ 和歌 (5, 7, 5, 7, 7) 風でもあ り、 心ャ青をまとめている。 詩は前半. 5. 行①∼⑤ 、. 後半 8 行⑥∼⑬の 2 節としている。. 曲の方は で 始まり. 3. つの部分 (1 ①∼⑤ 、 Ⅱ⑥の 、 Ⅲ⑧∼⑬ ) に分けられ、. c,mol1で終わっている。 Ⅱの冒頭. になっている。. そして. エ ゆ び. の. 一. @@ @@. Ⅰ. ル """. "'. 小節は. 1. 瓦メ妙づ. し. とⅢは殆ど同じで、 g.mol1. 、 Ⅲと同じ旋律であ るが、 背景の調は B.dur. g.nlo11 に自然に戻っている。 淡々とした旋律は、. の 伴奏に乗って 流れている。. 弗. 2. 1. 最初から最後まで 同じ音形.
(6) @70. 田鎖. 大志郎. 秋の ). くコヒ. きたあ. き. ①. 5. ②. 7 + 5. ③. 7. ④. 7. いなむしろ. ⑤. 5. 君 によそへて. ⑥. 7. 呼ま ばしものを. の. 7. みっし. ⑧. 3 つ (みつめ つ し. 白く /」、 さき. ⑨. 7. ⑩. 7. 北私 の かひ. 峡 のこ. ビ. しき道のくま. わが見し花に 名. づけてよ. きたあ. 君. 5). き. 北 秋の花. 詰 は 10 行より成り、 3 節に分かれている。 1 節は①∼④で、 山道での花との 出会い。 2 節で思う 人を花に重ね、 3 節で白く小 t き北 秋の花を改めて 称えている。 五セ 調で整えられている。 曲では. ⑧. ( かっし ). は. ( みつみつし ). 曲は、 大きく 2 節に分け、. としている。 (①∼④ ) 、. 1. (⑤∼⑩ ). Ⅱ. とし、. 1. 4 分の 2 拍子が基本であ るが、 一箇所、 4 分の 3 拍子になっている ズが 多く見. ぅ. けられる. (② 、 ③ 、 ④ 、 ⑥ 、 ⑨ 、 ⑩ ) 。. イ 簾牢練ガ. 廿. ㏄/. エ弗キ. 彪/,. お. ⑦ (二%). り. フ. ⅠⅠ. ( タナょ. Ⅰ. 奏. ゐん. が, ば. ⑤ ひ). C由. ③ (り. の老老⑤ (ユ Ⅰ. 亡ヱ. の. ) (3). ④ (J). (3). げ). 番、 2 番の如くに構成している。. (29小節 ) 。 全体に 3 小節フレー.
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(8) ラナ. 曲. く鴉). 冊 良 士l ;@ " 二. 田鎖. 大. 72. ひ. 小田の薄ら氷 ふみ破り. 踏み渉る , 「. I. た. 大おそ どり、 からす. ①②③④. 首ふり. ⑤Ⅰ. 肩をはり. ⑥. あ うら. の. 蹴っ ぬ たげに. Ⅱ. ⑧. つ いばむ. ひようとして. ⑨. 六 % そ どり、 からす. ⑩ /. 詩は各行、 調子よく畳みかけるよ. う. に、 文人仰に言い 切っていく。 5 つの 節. (①②③ / ④ / ⑤⑥の /. ⑧⑨ / ⑩ ) から成り、 ④と⑩は同じ 語句で納めの 句 となっていて、 大きくは 2 つに分けられる。 曲は、 詩の特徴を狂言の 言い回し風にとらえている。 曲の構成は、 1 ID. (⑩ ). と. 3 つの部分になっている。 Ⅲの冒頭の間奏は 、. (①∼④ ) 、. 1 の①∼③の部分 6 小節を 4 小節に要約. C. せ ぜ/. せ ん -0 ,. /ク ). G. チ. ). ). 空. : @ の ・ 引 , Ⅵ , 1 叩・ ぃ 1,1,. し、 ④と同じ⑩に っ なげている。. 皿. Ⅱ (⑤∼⑨ ) 、.
(9) 信時潔い沙羅』の 音楽語法. ㏍千々. 73. 子). ふるさとの ひら. 河原の平に よしきりは q烏く. 日. ねもす鳴く. 昔 わが遊びし時と. 「」⑤⑥ m. 轡 ることなし. ノ. よしきりは鳴く 日. ねもす鳴く. 耳 いたく鳴く. 詩は 9 行で、 1 大きくは 1 ∼Ⅲ 、 W. (①∼③ ) 、 ∼. Ⅱ (④ ) 、 ID (⑤⑥ ) 、 IV (⑦⑧ ) 、 V. (⑨ ). の 5 節になっているが、. V の 2 つぼ分けられるであ ろう。 ③④と⑦⑧は 同じ語句であ り、 結びの 句と. なり、 ⑨で言い切って 納めている。 曲は ①∼④までを 1 、 ⑤⑥をⅡ 、 ⑦∼⑨をⅢとし、 3 つの部分から 出来ている。 らm. 、 そして後奏の 部分に. ( よしきり ). 1. からⅡ 、 n か. の鳴き声を模したモティーフが 鋭く印象的に 鳴らされる。. 旋律はお ょそ丘 s 。 からⅡ s2 のオクター ヴ のやや高い音域の 中で明朗な旋律がさり 気なく歌われる。. コ狂. 姥,. ナ.
(10) 田鎖. 74. ①②③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨ ⑩ ⑪ ⑫. ( 占ふと ). 云 ふにあ らぬ ど. 占ふと. くしけ づ. 杭 るわが黒髪の. 常にな. う. ときわけがたく. なにがなし 心 みだる. ュ. ふ. ずい月. を な. し. くう. 櫛も きけ すわ. ためらふと 云 ふにあ らぬ ど. あ. 大志郎. まこと. わが轡のさだのにも 似て ひたすらに 心 わびしも. この詩は他の 詩の省略した 言い方に比べ、 連綿とした情緒を 含み、 語調に流れがあ る。 それぞれ の節の一行日を 、 同じ音節、 言い方にして 大きく 2 つの節に分けている. (1 ①∼⑤ 、 Ⅱ⑥∼⑫ ) 。 2. 節の後半は情感の 高まりのまま 2 行増している。 曲の 1 の部分は、 前奏の後、 ①から⑤まで、 間奏を挟みながらやや 断片的に進んでいく。 直ぐⅡ にはいり、 ⑥から⑦の 2 小節までは 1 と全く同じ旋律であ るが、 その後から変化し、 ⑧へと一気に つながっていく。 滅亡による不安定な 転調楽句を経てさらに⑨⑩で 高揚 し 、 間奏で"沈静して⑪⑫で. 終息させている。 この曲集唯一、 情感の勝った 歌であ る。 ダ. ル坤 ・. ,の. 且. 互ケ. ⑥. ⅠⅠ. Ⅰ. 介. Ⅰ. 二+3. Ⅰ す毛ク. ヱナ注. 止. 6c--. 一一. ⑨. 。. 一一,. 2-. ノ緩彬. メあ. 一. 一一 -サ.
(11) 75. 信時潔 几沙羅コ の音楽語法. く. ゆめ ) あ かっきに. 曲. ⅡⅠ. 見る夢の さめ はて ぬ. かなしさや 野 のはてに 池 あ りて. 大 ならぬ. 0. 5. 静けさや. ⑧. 5. ⑪. 5. 白々. /. と. たビ ひろく ひろ ご れる. さびしさや Ⅱ. 夢ごュろ うつ し心、 だビ ひろき. 池 ばかりなる 詰 は ¥W行にわたって 書かれているが、 一行は殆 んど 5 シラブルで、 ⑭ 、 ⑯がそれぞれ 6. ブルになっているのみであ る。 ①から⑫ 行 まで全て. 5. 音節. ⑫と区切ることが 出来、 ③④、 の⑧、 ⑪⑫は、 それぞれ を 踏み、 感動助詞の (や ) で結んでいる。 ⑬から⑯は、 5. ( シラブル ). (ね 、. と. 7. シラ. で、 ①∼④ 、 ⑤∼⑧ 、 ⑨∼. や / ね 、 や / る 、 や ) の様に末尾が 韻. 6, 5, 7 となっていて 語調が変わり. 広がった語感になっている。. ①から⑫の淡々と 虚無的に語られる 夢の景色と心境に 対して、 ⑬から⑯では 自分の心を客観的に 観ている。 大きくは 1. (①∼⑫ ) 、. Ⅱ (⑬∼⑯ ) に分けられ、 1 は①∼④ 、 ⑤∼⑧ 、 ⑨∼⑫の 3 つ か. ら 成っている。. 曲は 、 ①から⑧まで 通して歌われるが、 ①∼④の旋律は 問いかける様に 上昇し、 ⑤∼⑧は下降し て 納めている。 間奏の後、 b.mo Ⅱ上のぺ ンタ トニック 風 (但しつかわれているのは as, 、 bl 、 c2 、. es2 の四苦であ る。) のシンプルな 旋律と響きで、 荘漠 としてしかも 深い雰囲気を 醸し、 再び F-dur に 戻って、 薄明るく 寂寛 とした 昔 空間を、 転調 (h.molL、 且mol1) と Moll.dlmr によって作っている。. 従って曲では①∼⑧までを 1 、 ⑨∼⑯をⅡとし、 Ⅱは繋がってはいるが 調の変化によって、 ⑨∼⑫ / ⑬∼⑯の 2 つに分けられる。 短い出ではあ るが、 旋律及び和声の 微妙な変化、 ペンタトニックの 使用や完全 8 度のみの鳴らし 方等によって 密度の濃い、 しかも広がりのあ る曲になっている。.
(12) 76. 田鎖. 万 Ⅰ ユ 寸土牛. 2. 一. 之十ユ +. ガ イヰ. 戸. 2. Ⅰ. ユ. -. 屏な. p. ⑨④. ④. / ア/. (々ノ. // 拷. ③. ,の. 皿 , 勿一. ぶダ. ダダ 、 l、 や. 大志郎. 二千之. の. 1. ガ. ダ/. と 十ユⅠ二十. 一. /. 才. 旋律及び音程について. 旋律は、 日本語の音. 忠実に対応している。例外はところどころ 見られるが、. 高 によるアクセントに. 曲想、 旋律 綜 に溶け込んでいて 殆ど気にならない。. 例外. 桃私 の ) (沙羅. ). (鴉 ). なづ考. や. てよきみ. 力. く. 占ふと. ヲ いつになら. ほのきい 老 なる. ひょうとして. ) くしけ づる フ わがこひ. ( 一回目 ). く. ゆめ. ). ひろこ乱る. 等. 言葉のリズム 上への割り振りは、 フレーズの作り 方と関わり合っていて、 二通りあ る。. 1). 0 丹澤 ). (コヒ秋の ). てまで、 動機. (通例. (沙羅 ). く. 行々子 ). く. 占ふと ) ( ゆめ ) に 払 いては、. 2 小節 ) 、 山楽節 (2 小節 X2). 日本語の流れを 犠牲にし. の様な楽曲構成の 基礎的な綜合の 仕方に当. て 嵌めてはいない。 むしろ自由リズムに 近く、 2 拍子、 3 拍子上に伸びのびと 割り振っている にの点では山田耕作と 同じであ. る )。. 従って動機も 2 小節とは限らず、 山楽節も、 2 小節士 3. 小節、 3 小節士 3 小節等、 一定ではなく 自在であ り、 変拍子もところどころにあ る。 (勿論、 標 準的 (2+2). な 箇所も多い。 ).
(13) 信時潔『 沙羅 』の音楽語法. 77. G. 北. -一一一. よ ・. """. 2). くあづま. / オ. さ. やの ). (鴉 ). ". ゴ. 「. においては、 どちらもリズミカルであ り、 基本的には. 8 分音符が当てられ、 ところどころ 4 分音符が割り 当てられている。. 1. シラブルに大方. くあづまやの ). では、 最後. の 語句がひき延ばされている。. Ⅰ. f6. 3. ヰサ. ィ,わ l. 戸 ヤ. [Ⅰ く. く鴉) ト. 、. し. ウ. さ. ケ. ではシンコペーション や 、 弱拍が長かったり、 あ っと息をのんだり、 弱拍にアクセン. がついたりして. (前奏部分 ) 、. 詣謹 味を出している。 ル荏. 十. ヱ/. @. ⅠⅤ. サ@. Ⅰ,. 音域は、. ( 井澤 ) 一. オクター ヴと 完全 5 度 (h 一 %2) 、. ( あ づ き やの ) 一. Ⅰ オクター ヴと短 3 度 (c. ,. 一 e52) 、 ( 北私 の ) 一 オクター ヴと長 3 度 (d 。 一億 2) 、 ( ゆ羅 、 ) 一 オクター ブと短 2 度 (cis, 一 d2) 、 (鴉 ). 一 オクター ヴと長 2 度 (d. 一 e2) 、. オクター ヴと 完全 5 度 (Cl 一 92) 、. く. (行々子 ). オクター ヴと短 3 度 (d穂 ,一旦52) 、. く. 占ふと. ). ゆめ ) オクター ヴと長 2 度 (l亡 diS2) となっており、 ぐ沙羅). が 最も狭くて オクタ一ヴと 短 2 度、 く丹澤) とく占ふと. ). が オクター ヴと 完全 5 度と、 最も広い音域. を持っている。 音程については、 オクター ヴや短 7 度の跳躍が時折 見ぅ けられるが、 概 、 背高 め アクセントに 従. ってなめらかな 旋律となっている。 跳躍の例. たばこす. (44∼ 45 小節 ). く丹澤). 一. く鴉). 一 おおお そ どり (13, 38 小節 ). ぅ. てみる. さらにフレーズの 音域の巾、 及び旋律 綜に ついては 幾 っかの特徴があ る。.
(14) 78. 田鎖. げウヤ. く丹浬ノ. 大志郎. を みガ Ⅰ化しりぃヲガゲ. 俺 手。 '@7 テえみヌ Ⅰ. ぽ. ひしⅠ. つ. ケ くあ つ ま や の ノ. い. い之 ヱヵ 3. 正行 (上昇 ) する腺を下で (落差の対比があ. ひし. 材ヒ. 支えている。. る。). か推ぐ 波状下降. 秩の ノ くゴヒ. 急激な上昇. ん/ く癖ノ. おおみを. か. ビⅠ. j. 一. "Ⅰ. ア. く 行々子 ノ. みサ. Ⅱ イしく. ¥@@ i@-Xt@@tts@@-ty@ig. 一. 劫搬 (27j、 節 ) 単位の上下の 対比. 叩く "". く ゆめ ノ. 丁. あ い フえトみ 2 ゆめ. 短時に 畏 7 度の往復. ゥ. りりト托ぇトぃ T あ Ⅰてひと L られレブ 7%. 8 小節 (小 楽節 一 フレーズ ) 単位による正行. ハ平. (雨音域 ). 、. 下行 (低音域 ) の. 大きな対比. ルげひタ芝 1. フレーズ (4+5). 、 ヴ,オ。、. ". の中の高音域と 低音域の対比. ク. %.
(15) 信時潔. 几沙羅 』の音楽語法. 旋律を乗せている 音階についてはく あ づま や の >. (鴉 ). く. 占ふと. 79. ). く. ゆめ ) に長音階以外の 音階が使. われている。 くあ づまや の ノ 旋律から抽出した 晋. ヘ0 ンタト㍉ タグ. 間奏. エ耳. 7%. ヴァ ( 房雄 ヌチタ昔. ク. り. ノ. ふと 占 く. へ. Dur. の. 平行 調. m. ら 明り oil. Desd ℡上の陰旋法. く ゆめ ノ. 前半のフレーズは 一瞬 皿oU になるが、 全体は Mol1 せ℡。 中間部は. "a. テトラコードナヱ.
(16) 0. 8. 2. 田鎖. 一. 3. 大志郎. 和声及び響きについて. 「信時」の和声については、. いわゆるドイツの 機能のはっきりした 古典派を軸とする 和声. 的にはバッハ 、 べ一 ト一ヴェン、 ブラームス. ). と. ( 具体. 目されている。 基本的にはその 通りであ るが、 一. 度 い沙羅』の世界に 踏み込んで見ると、 一見シンプルに 見える和声は 実に微妙な使い 方をされてい ることが見えてくる。 例えば、 減 7 の和音が多用されているが、 その扱い方は 一様ではなく、 様々 な 表情をそこから 引き出している。 音階も「日本的音階」㈲を 含んでいて、 曲 毎に和声の扱い 方は 異なっている。 それぞれの曲について 見ていきたい。 1. 一. く. 三王テミ婁. す. Ⅰ. o m 也 んて 頭つ らま 2. 一. 3. 一. 2. の。かだあ と︶ 、 で と と 紘4 前 箭 形 6 な和 で 体 のに 大ノ︶節んでき 冒と く を いT て づ クい ズ は つ D わ づ土日 変 s も の 法 後 声 の 和 そ てよ. 3. くる でん で ん とン. 一. つ 且V 且 然. 2. くあ つま せ の ). 短音階をべ ー スにしているが、 旋律は古代歌謡. ( 「雅楽歌謡」. ). の催馬楽を恐らく. 念頭に置いて. いて、 これといった 音階ではないが 民族的音階を 使用している。 旋律は組 mol1 から Es,dur を経て. c.molUに乗って運ばれ、 旋律の民族的音階と 自然短音階に 対応して 副 三和音、 Ⅱ, m, W,. Ⅶが多. くなっている。 この楽節は中間部を 挟んでくり返され、 Coda はそのまま c.mol1で閉じられている。 中間部は B.dur から g.mol1 を経て間奏により、 再び B,dur に復帰している。. 全曲は絶えず 右手の. 1. 拍を 4 分割した同形の 分散和音に駆り 立てられながら、 大雑把に和音を 変. えている。 この曲の下敷きとなっているであ ろう催馬楽の 旋律は、 律 、 呂の旋法の表記があ るが、 実際に使. われていた旋法を 示してはいない 7)。 この曲からも 律旋、 呂旋法を特定するには 至らなかった。 音 源と資料により 検討したい。.
(17) 信時潔い沙羅』の 音楽語法. 2. 一. 3. 一. 3. 8. Ⅰ. く北 枕の ). 和音は和声機能を 代表とした I 、 W 、 V が主であ り、 わずかに D7 が変化和音になっている 程度 の シンプルなものだが、 この曲では非和声音の 扱いが繊細な 味を出し、 詩の可憐さを 写している。. 最後のフレーズでは 前半と後半. ( 高音域 ). で音域が響きの 対比を作って、 やはり繊細さを 際立たせ. ている。. る 昭小い. 参て 譜げ. ︵ を. いカェ. る間. つ し. フ奥. 立く り深 成を らき か行. ィは. モ濃. テ淡. 3 塁. のの っ色. のの. る薄 なな 異様. ス墨. ら ね. リ水 たず. ね. さ. はに. て. 沙. く曲さ. 矩歩. 4 い な 一 3 のの. 素 材 2. この雰囲気を 担っているのは 主として滅セ の 響きであ り、 その響きの中での 少ない動きであ ろう。 中間部はピアノが 主導する①の モ テイー 昔は第. 3. フ. のエコ一の様な 効果を持っている②で 始まるが、 その 和. 音を欠いた空虚な 響きを、 Ⅲ s.durの. 三和音の対 斜 的な感覚 8)とをもって、 たった. 2. レーズの頭で D.dwr の V となり、 V づ VI づ VD づ. づ V づ丘 s,mol1. I. 1 6 の和音連結による. 長 三和音 と短. 小節で次の音空間へ 誘っている。 この和音は次の I ( Ⅱ ) づ V+. フ. づ 1 と、 ここでも長短調の 境の暖 味 な和. 音連結を経た 後、 このフレーズの 終わりは D.dur の IV や変化和音 IV,(牡 ) をⅡ s.dur のⅡ. 2. と読み換. えて V へとつなぎ、 長 3 度上の調への 急な転調を果たして 終わっている。 且s-mol1で再び①のモティ. ーフに戻り C.dur を経て半音階的転調により。@ dur になった途端、 初めて透明な 明るさを持った ・. 主. 題が 、 ほの黄色い沙羅の 花として薄明かりの 中に浮き上がってくる。 この主題も 、 Ⅲは明、 W を 潜. ませている。 ① h.mol1づ ② D.dur. (平行. 調 ) づ Ⅲ S.dur. (長. 3 度上 ) の V づ ① fRS.mol1 ( 同主調. ). -, (C.dur) づ. ③ H.dur といった意外性を 伴った立体的な 調の変遷も含めて、 この曲は極めて 和声的であ ると言わ. ざるを得ない。.
(18) 82. 田鎖. 大志郎. ︵Ⅰ. | Ⅱ. 2. 一. 3. 一. (狂言. 5. く刀田幸. Ⅰ. 唄風に. ). と記されているように、 調子の良いリズムに 乗って日本音階的な 旋律が朗唱 風 に. 歌われていく。 背景にあ る調は、 e.moll づ G.dur づ c.Inollづ C.dur づ c-nlo1lづ e.Inol1と近親調の間を. 転調するが、 G づ c づ C の箇所の和声づけは、 瞬間々々の表情が 鮮やかに変化し、 瓢 逸さに荷担して カ 土日. 衝撃 だ. ん. 含. い. こ 同一 大月. を. 土日 口. 小. ろて. ろ徴 こ特 とを. め. 、曲. が. っ. るこ. 細. で表. 単を. 現. 休意. V. ︶. 、 主がれ. W. ト ク. ァし. l. 6. 旨タ. 一. ウ. 3. 大フ. 一. 十戸 イ 1Ⅱ. 2. はア. Ⅱ 口リ コ埼マ. 和拍. いる。. く行々子 ). 旋律はむしろ 素朴なくらい 平易なものであ り、 従って和声も 旋律に沿ってごく. 普通で T, S, D の 代. 表 的和音がついている。 わずかに平行 調 転調を匂わせる W 、 Ⅲ ぃ 3,が見ぅ けられる程度であ る。. しかし「よしきり」の 鳴き声を模した 16分音符の鋭い 響き. KI の上に 1V7(.)をのせた響き. W, にあ る 短 7 度 (h' 一 a2) の他に種々の 不協和音程を 生んでいろ。. 目. ). は、. (短 2 度 (cis, 一 d2) 、 短 7. 度 (cis, 一 h.) 、 長 7 度 (ais 一 a2) 、 減 4 度 (a 玉一 d2) ) がすべり込んでいる 手法は、 この曲を.
(19) 信時潔『 沙羅コ の音楽語法. し. る. ・Ⅴ て. せ ま. こ キノ. 融. を. 効果. の 土日. 擬. Ⅴ @ Ⅰ 、 ℡﹃ プし. め. 白. る. で. 然あ. 土日いソ. な絶 こま 借方. 。ムロ. の取 曲の. 畑Ⅰ. 7. Ⅱ. 一. なな. そ. 3. めの. ね. 一. もの. 凡も 平か 2. 83. く占ふと ). この曲集の中では づ F づ d づ F づb づ d. と共に長い曲であ り、 大きく 2 つ 又は 3 つぼ分けられる。 調は 1). ( 丹澤 ). Ⅱ ) d づ F づ f ∼ 減セの 連続使用∼ As-,E づ e. Ⅲ) d. d. と変遷するが、 平行調の往. 復 (d づ F) が多く、 その 為 和音もⅢ 、 W が比較的多く 使われている。 21 、 22 小節の B.dur(Moll-dur) の ピアノの先導から. 同様の節を b.moln で歌がはいるところ (23、 24 小節 ) も、 Moll.dur づ mol1 によ. って、 気分が暗く沈んでいく 過程を巧みに 演出している。 as づ E の 長 3 度下の調への 転調は (55小. 節 ∼ 58 小節 ) 近親謁転調の 枠覚であ る。. Ⅱ). り. 田 、 その後の E.dur 、 e.mol1 の共存も不思議な 効果を持って い. の 真中の間奏部分 (49小節∼ 54小節 ) の 減セの 連続使用は、 扇情的に盛り 上げていて、 他. の曲と趣を異なったもの. ( 人間臭く ). にしている。. 14小節 (38小節 ) では 15 (b7) にⅡが乗った 形で先取昔を 拡大した効果 効果 ?) があ り、 22 小節では前の 和音の 2 つの音が 掛 留の様に延ばされ. ( 先取和音に覆われた. (解決されていないが ). さらに 24小節、 31小節 (68小節 ) 、 33小節 (70小節 ) 等の掛 留昔 と共に、 或 種の情緒. (粘っこさ. 、. ?). を醸している。. んメ. 2. 一. 3. 一. 8. If り ル. "" ⅠⅠ 。,. くゆめ ). 終曲としては 短い出であ るが、 幾 っかの響きの 工夫が内蔵 され、 内面の深さを 立体的に組み 立て ている。 曲の前半では Dur 、 Moll.dur 、 mol1 が湛然. と 融合され、. Ⅱ dur 、. ⅡmoI1 の諸和音が微妙に. 変化して. いる。 従って 10小節目では一瞬、 b.mol1に転調しているが、 すぐに 丑moIl の W に思い直されていてさ りげない。 幽かな明るさをもった 昔 空間を創り出している。 なお 16小節のところではⅦ 9 。 ではなく f4音が加わり、. Vm7 の第. 7. 7 にバスに. 音というより 主音の働きをしている 様に感じられ、 微妙な低音. のふくらみを 作っている。 続く間奏では、 f,moU の第. 3. 音上 (as). の 短 三和音をシャープ. 系の如上の短姉和音に 置き換え、. gisづ ns と平行和音 (非機能的な ) 使用の意覚性のあ る連結により 異 空間へと導かれ、 減 七を経て.
(20) 84. 田鎖. 大志郎. b.mol1 に落ちつく。 次の節では へ ン タ トニックにのった 旋律に、 やはりモノフォニックな 伴奏がついている。 ・主音と 第 5 音のみのオクター ブ の広がりだけで、 あ たかも 寂 浄土を思わせる 空間が漂. う. 。 このフレーズの 射. の. 長. し. カ. 光 く. 薄. よル. は. こ. ろ. て. る. く. れ 虫. と. レ て. 経. を. l つ. 転調. -牡. の. 成 ) 構. テし. ム ). 曲. 的. 上目. 一'. ズ. 階. 半. 丸 が爪 ェ て. ピ. ム、. )ノ ). ズ. 大C. は. ズ. レ. フ. @V. 方角. で. 大. の. 項. 構成. の. 圭Ⅰ 二 Ⅰ 工. 寺. 2. 、性一. い. 一の︵. し. ズ特. ︵. ス. レズは フ一て. Ⅰ. レ. そ. フ. 一一. 44. で 土日. 戸で帥叩 5%W 22. と. Ⅰ/. イ /-. 一一. ア. ヱ小. D. 一一. 減. りる があ なら. っす でで. り. 、た. F. 役つ の陰. そ又. ピークのところで 初めて第 3 音を備えた 短 三和音を鳴らす 設定も空間を 拡大する効果絶大であ る。. 自在であ り、 言葉をのせた 旋律は、 いわゆる西欧的な 等時的間隔 (距離 ) による積み重ねではなく、 長短のバランスを. 取っている。 それは旋律線の 上付、. 下行を含めた 高低のバランスでもあ る。 従っ. てシシ メトリックな 構成法ではなく、 不規則であ りながら山脈の 連なりの様な 重なり方をしている。 2. 一. 4. 一. 2. リズムの特性. 譜面上では時に 変拍子はあ っても、 2 拍子、 3 拍子、 4 拍子と拍子は 確立しているが、 2 づま やの ) 、. 6 曲目. く. 曲目 ( あ. 鴉 ) を 除いては、 必ずしも拍子リズムとは 言い難い。 それぞれの拍子のアク. セント (4 拍子なら強弱虫強弱 ) を強調すべきではなく、 大らかな抑揚のうねりが 構成されている。. フレーズが一般の 動機の様に 2 小節単位の枠から 自在であ ることと当然ながら 関係している。. 2. 一. 4. 一3. 几沙羅コ. ピアニズムについて. 8 曲のピアノパートは 、 速いパッセージや 跳躍などピアニスティックな 箇所はないが 以. 外と弾き難い。 例えばく 丹澤 ) の 3 速符の分散和音、 それに 重 昔の加わった 部分、 の 16分音符 4 つからなる同形の 分散和音の反復の 中にあ る若干の変化、. く. ( あ づま. やの ). 占ふと ) の減セの 和音を. 左手がトレモロで 奏する部分等、 随所に見られる。 一 つ には一見、 易しそうに見えて 微妙に昔や昔 形 が違っていることにも 因るであ ろう。.
(21) 信時潔. 全体として、. 85. 几沙羅 』の音楽語法. ピアノの機能を 存分に発揮する 様には書かれていないが、 逆にそのことの 意味する. ところは、 表現の手段として 必要最小限の 音を要求し、 ピアノそのもの、 或いは奏法の 運動性には 奉仕していない 点にあ る。 ショパン、 リストとは遠く、 音楽の構成そのものを 鳴らそうとしている 点は 、 むしろ べ一 ト一ヴェン的であ ろう。 オーケストラの 素描の様でもあ る。 従って内容を 掴むと. 表現はふくらみ、 音響は決して 痩せてはいない。 音楽の把握と 分析が、 必須条件となる。 r 沙羅 ]. 3. 3 一1. の特徴的表現方法. (語法 ). 旋律. 言葉の旋律化については、 大旨、 昔高 め アクセントを 踏襲していて 自然であ る。 フレーズの作り 方は、 型に嵌めてしまわず 自在で小節数も 2 ∼ 6 といろいろであ る。 フレーズの縮合の 仕方もフ. ン. 一ズの 長さが一定でないところから 不規則になっているが、旋律線の持つ 上付、下行のエネルギー、 ダイナミズム 等、 言葉の意味・ 内容と相まって 立体的に構築されている。 しかも有機的であ って 、 その粗密、 濃淡は、 山脈の連なりや 自然の織りなす 調和に近い 3 一2. ( アンバランスのバランス ) 。. 和声・響き. 音階の使い方は 多様であ るが、 Dur, m0U をべ ー スに和声づけしている。 調性の中では Dur, Moll.dur 、 mol1 を同主調の中で 共存、 往来させ、 淡い色彩感はあ るものの、 恰も水墨画の 如き階調 になっている。 ペンタトニックの 音階は特定のものではないが、 古代歌謡の せたり. ( くあづま. ( ゆめ ). やの )L 、 日本人の深奥に 鳴っている音調を 引き出したりしている. に於ける ぺンタ トニックは、 そのシンプルな 和声法. になっており、. (催馬楽 ) を 徒佛 とさ. 調性との繋がりの. 妙も含めて、. ( モノ ブ. オニック. ). (. く. ゆめ )L 。 特に. と共に抽象的表現. この作曲家の 音階に対する 鋭敏な感受性と 音階の背. 景 にあ る文化、 芸術の感得及び 教養に 警嘆 せざるを得ない。 減セ 、 減 三和音の多用は 目立っが 、 いわ める無彩色でどの 調にも転調可能な、 便利な和音として. ではなく、 愛着を持って 使われ、 それぞれの曲の 表情を特徴づけている。 一 (丹澤 ) の凍てついた 乾いて無機質な 山の表情、 空気。. く秒羅 ). もや. の謂のかかった 様な、 暖昧で 湿った雰囲気は、 その後に. 来る明るい調性 (H.du めを際だたせていて 幽玄性を帯びている。. ( 占ふと ). では情感の高まりを 演. じているが、 この用例は一般的ではあ る。 ゆめ ) の ぺンタ トニックの音調から Dur にはいり、 又雲 く. らせる箇所での 減 三和音も見事な 効果を担っている。 自然昔に近く 、 或いは調性の 和声感にはない 不協和音の使い 方は 、. く丹澤). の最後では、 煙草の煙. の 象徴的表現であ ったり、 (行々子 ) ではよしきりの 鋭い鳴き声であ ったりするが、 不思議と解け 合 って、 音楽の中にく 昔 ) を 融け込ませている 特殊な例であ る。 むしろ極めて モダ一ンな 用例とも 言 える. 3. 一. ( コラージュ. 3. 詩と. 風 )。. 曲目の配列について. 曲の構成のところで 述べたが、 詩の配列は曲によって、 より有機的、 内面的に拡大・ 深化さ. れて流れを作っている。 , 表には直接出て 来てないが、 の チクルスは愛の 挫折に会った 男のく魂の遍歴 トの 《冬の旅》や㌢ユー マンの. 象 風景. [ 冬の旅 ]. ( 詩人の恋》に. ). と. 7 曲目. ( 占ふと ). を男の心悸. 2)とすると、. こ. 見ることが可能になり、 そうなるとシューベル. 対して、 殆ど自然に託して 語らせている 東洋的な心. であ り、 この曲集が日本を 代表する歌曲集であ ることはもはや 疑 がめないところ.
(22) 86. 田鎖 大志郎. となる。. 結び 日本歌曲は、 山田耕作、 信時潔以後、 芸術歌曲として 連綿とその系譜を 受け継いで様々な 展開を 経て来た り 。 今、 改めて、 黎明期を担った 二人のうちの 一人「信時」の『 沙羅 』を見るとき、 西洋. 音楽と日本の 精神風土の職別な 葛藤の足跡に 目を見張らされる。 開拓 期 であ らばこそ、 西洋の音 組 織の素晴らしさに 新鮮な驚きと 敬意を持ちつつ、 自身の足許にあ る伝統芸術、 伝統芸能の教養の 深 さをもって 対峠 させ得たのかも 知れない。 正しく大西 克 禧の美学上の 仕事に拮抗した 業績に思える。. 同時代のく親和力 ) の為せる業でもあ ろう。 ただ『 沙羅 山の美的価値を 直ぐに. やはび ) に結びつけて 評価してしまうことは 危険で. ( 幽玄 ). あ ろう。 何故ならばそれらの 日本の美的 範 鴫は伝統芸術に 向けられたものであ 句、 美術一水墨画等 ) 、 能の幽玄を除いては 日本の. (音楽 ). ( 文学一和歌や 俳. り. には与えられていない 価値であ る。. 西洋音楽の土壌の 上にその美的 範 鴫を意識しっ っ 、 日本固有の美を 融け込ませた『 今しばらくの 検討が必要であ ろう。 但し具体的に 見た格調高さと 羅). く. ゆめ )) や 、 芸術感的契機に 裏 打ちされた. ( く鴉). ( 自然感的契機 ). 沙羅コ には、. による繊細さⅨ 沙. 等 ) 作品は、 その内容を把握した 演奏によっ. て普遍性を獲得するはずであ る。 今回の吟味が、 西洋の音組織と 表記の仕方の 上に盛られた、 的 美意識の所産を. 日本. 慈しみ評価を 高め、 より説得力のあ る深い演奏に 結びつけることへの 一里塚とな. れば幸いであ る。 なお、 並列化された 美的カテゴリ 一では捉えにくい 層に、 大西 克 禧の分類によっ て 光をあ てることは、 國 安洋灰 に 啓発されたことであ った。 ここに深く感謝いたします。. 計. 1) 木下供 : 信時潔歌曲集. 白. 白. 2 1 5 3 4 等 p. 日本歌曲全集. 番. :. 他. 1. 234. 畑中良輔. P.87) 東京音楽研究会 ( 日本歌曲について P.41,42) 音楽之友社. (歌唱についてその. 5) 日本古典文学全集 2 5. (小学館 ) :. 催馬楽地. (東屋 ). P.128. 6) 第二曲くあ づ きや の ノ 、 第五曲 く鴉ノ 、 第八曲 く ゆめ ノ の中に含んでいる。 7) 5) ibid.. :. P.l11. ∼. 117,. ニューバローダ 世界音楽大辞典 1 2P.213,. 8) 和声 学 g) G 。. (. 214 、 増本喜久子. 雅楽 P.266 ∼ 273. : 地声部間に於ける 半音の変化で、 禁則とされる。. ドイツの六 ) づ V 的 連結により転調している。. 10) 枕草子に現れる 一 烏の点描 に 似ている 11) べ一 ト一ヴェン. 12) 木下供. :. ( 三つ四つ 、. 二つ ) 。. 悲 憤 ソナタ第二楽章に as づ E の例があ る。. : 信時潔歌曲集. (詩の説明. P.86). 13) 近年の畑中良輔 編 ・著による『日本歌曲全集』及び 氏の「日本歌曲の 演奏家の育成」はその 最 たるものであ る。.
(23) 信時潔『 沙 雁コの音楽語法. 87. く 分析表及び和声の 記号等の表記について ノ. 註. 1) % 高の表記は、 ドイツの回音 法 によっている。 2) 長音階 (Du め 短音階 (moⅢについては、 Dur は大文字、 mol1 は小文字を用いている。. 3) 和声 : 和音記号は、 度、 表記している。. ローマ数字で (. 表し、 音階固有の和音は 度数のみ、. 変化している 昔はその都. 。 *,, 根音を半音上げる、 ぱ 3, 第 3 音を半音上げる。 等 ). 4) 分析 表 中に於ける▲ 、 ▲ ,は減セ、 減 三和音を示す。 夫は和声的に 特徴あ る箇所を示している。. 5) 分析表の段落は、 そのままフレーズになっている。 6) 分析表及び 図 、 譜例の右肩にあ る数字は何小節目かを 示している。 資料. ( 楽譜 ). 1) 木下供Ⅱ信時潔歌曲集』東京音楽出版会 1969 2) 畑中良輔Ⅱ日本歌曲全集 音楽之友社 1991 コ. 参考文献. 1) 木下 保イ 信時潔歌曲集コ 2) 畑中良輔 イ 日本歌曲全集』及び 解説書 3) 山根 銀二 、 渡 鏡子訳 (LudwigThu Ⅲ e, Rudolf ㌦ uis著 ) イ 和声 学. 』. 音楽の友 社 1969. 4) 下総 院一 Ⅱ標準・和声 学 』音楽之友社 1950 5) 五桁 真 社主 : 『新版・楽式論』音楽之友社. 1950. 6) 小泉文夫 : 『日本伝統音楽の 研究 音楽之友社 1958 コ. 7) 増本喜久子 : 『雅楽』音楽之友社 1968. 8) 黒沢隆朝. : 『楽典一新訂 コ 音楽之友社 1975. 9) 大西 克禧イ 美学』 上 、 下巻 10) 今道文 信. 11). 國 安洋 :. :. 弘文 覚 1959, 1960. 『東洋の美学』第二部一日本の. 美学. TBS ブリタニカ 1980. 医 藝術 ノの 終焉』春秋社 1991. 12) 佐々木健一 : 『美学辞典』東京大学出版会 1995 13) 『日本古典文学全集 25 』催馬楽 小学館 1976 辞典 1) ニューバローダ 世界音楽大辞典. 講談社 1994. 2) 音楽大辞典 平凡社 1991 3) 哲学・思想辞典 岩波書店 1998 CD. 1) 信時潔. : 几沙 雁山池. Bar.畑中良輔 P 二三浦洋一. 日本ビクタ一社.
(24) 88. 田鎖. 大志郎. ( 寸" 億接. ,Ⅰ. 雙日. ハ. Ⅵ 一 レ. 相. Q る. @@@汁@. Ⅰ. 卸. 甘. 俺. tJ 一. 目ョ巨 ‥ セ@. Ⅴ や. デ ". 挺. 目目. 申. Ⅰ 仁. 紬 太. ゆ. 輻 烏 ぃ安. 更. 地中. Q. 目。. や. 村. る. 9. 卜. ゆ. 目. 碑. 杓. 杣. ノト. 杓. 穏 %ハ. ゆ. )Ⅴ. c. レ". 「 「. 田畠. 目 (. 田. @ @. レ. ⅠⅠ. ⅠⅡ. 「. レ. Ⅰ. @-p. -. 簗. 目 曲り頁. @@@ Ⅰ. @. 舘. ︵ L・ W 輻志. 田ぜ ( 目 @ や. *. 寸ネ. Ⅰ. Ⅱ. べ目.
(25) 89 信時潔『 沙 雁コの音楽語法. 。" 。. 雙卜. 居ぜ. 無目交 目. トめ , ︵. O. H. 冊. 巨卜. ︶当日︶. 邨. るヱ. ㏄レ頭ⅠⅡ け のⅠ r. D. レⅠ暗. ヒ目. ト = へ Ⅱ. 番. N口 .僻案 患. 0ヒ @ り へ @ へ. 0 甘:石尾. 百. 巨. や. 富. 刈る. や. 捉音. 日華白日色目 ト 。 w. テ "l. 熊. 下 寸 、. j。・ 一. | い. 鴇ゆ. 冊. 5日 寂ぎよ. Ⅱ. |. Q. 臣. 午. レ dパ 申 。巳 Ⅱ︵ Ⅰw ︵ ∼︶ぁ か. 俺. レめ 。. コ 。 牽コ. 卍 @. @ 戸.
(26) 90. 田鎖. 大志郎. ち Ⅰ. 目. る. コ. x. ∼. 僧 ︵︵. |. 下. ト. Ⅴ. 6. Ⅱ. レ. v. 耳. 円 。 毘. Ⅰ. Ⅰ. 目. コ. Ⅰ. 和. 叩. や. 卜. 巨. ゆ. ト. 玉ア. Ⅰの. や. 目. ト村 |. 。. 目 の (. ト百. 奄 按 @. 1u1. ト. Ⅰ. ㌣Ⅰ. 由. 目. QⅡ. Ⅲ 案 患. 日. 韓 Ⅱ.
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(28) Ⅰ. 「. 目. 「日日日, " ⅡⅠ べ. 「 Gd. 目 。 薄ら. 台 卜. 一". Ⅰ. ヰ. 「 「 目. ヤ. 「 旨. く. 代. 「 ばつ. 毎. 楽 案 頃. 団田 「Ⅰ o. 寸寸. Ⅰ日 Ⅰ. 官冊. 「. 士, ひ 大. 田. Ⅰ. 鎖. 92.
(29) 信時潔. 几沙羅 』. の音楽語法. 93. 代 ぺ. もト「. 令 轄目. べ. 代 H 什 -のよ 川ノ日一. 「. 下. 戸. ヰ. ヰ. 「. 跨. 。. 片や. ヰ. ミ. 卜. @c"Ⅱ. 日. 。. 代. ". 目 Ⅱ. べ. 目替 目. ヰ. 「. x. ・ⅠⅢⅠⅡ. ,べ. Ⅱ " 丘甘. 謹. 比目 由Ⅱ ヨ. 憶. で由. の・ LW 案志. -%. 代. lⅡⅡ. H、. 出口 や.
(30) 94. 田鎖. 大志郎. ト・Ⅰ 脩握 頃.
(31) 95 信時潔『 沙羅 』の音楽語法. 。. 鮨甲. |. 零桐楼裁. +. 田の ト一。 もく. Ⅱ. 日. Ⅱ. つ目 ︶ 。目. よ巨 。レ目. つ千︵. 中何. 旺ゃ. 如|りコる. 小や. け目. 巳暉| ㏄Ⅰ. 憶. 粟田トレ. 1音. モおコハや頴. 巳甲. b廣. ぉ 品目。Ⅰ. SH. ゴ. の ・ LW 握頃. ﹁ 0pe 。 毛毛. 腿. 、.
(32) 6 9. 田鎖. 大志郎. 「. 。 トよ ㎝巨 Ⅰ. 「. ,レ. 目. 。 目. べ. 穏. @一. U@@'@l ヰ. 小. ;. 片ョ. 6. 口. Ⅰ. "コ. ゆ. 目く. 「 何. 卜簿. 仮. の Ⅰ. 。 目. ⋮. 丑. 目. キハ. 叩. コ. ト. せ い. Ⅰ 零. ヒ 。 笘笛. ぞ. 目. さ. ニ. 片. 一. 。 。づ. 苗. *. 下. や. い. b. 卜. 村. ぜ。w ︵ 。 " Ⅱ. 。. Ⅰ「. Ⅰ. 目. 0%Ⅲ 室頭. Ⅰ b.rg 掛@ ㏄m n やn缶 0 r@ o0. ベ Ⅰ. Ⅰ " " ⅠⅠ. "". Ⅱ ヒ. @6. "デ. """'. 由出 ‥‥. 」. 「Ⅰ. @. Ⅰ. づ. @Sj@B.
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