ブ
ロ
ー
ド
ウ
ェ
イ
・
ミ
ュ
ー
ジ
、カ
ル
日
本
上
演
の
軌
跡
昨 昭 和 48 年 は 日 本 に 初 め て 本 場 の ブ ロ ー ド ウ ェ イ ・ ミ ュ ー ジ カ ル が 上 演 さ れ て か ら 丁 度 10 年 目 に 当 り 、 日 本 の ミ ュ ー ジ カ ル 史 上 記 憶 す る に 足 る 年 で あ っ た 。 即 ち 昭 和 38 年 9 月 、 東 宝 劇 場 に 於 て 、 当 時 ミ ュ ー ジ カ ル 最 高 の 傑 作 と い わ れ 、 又 最 多 続 演 記 録 を 有 し て い た ﹁ マ イ ・ フ ェ ア ・ レ デ イ ﹂ が 東 宝 製 作 に よ っ て 飜 訳 上 演 さ れ 、 観 客 13 万 人 を 動 員 す る 好 結 果 を 収 め た 。 こ れ に 力 を 得 た 東 宝 は 、 次 々 と ア メ リ カ 或 は イ ギ リ ス の ミ ュ ー ジ カ ル を 上 演 し 、 又 40 年 に ﹁ ハ ロ ー ・ ド ー り ー / ﹂ 、 43 年 に ﹁ オ リ バ ー / ﹂ の 一 座 を 迎 え ( こ れ よ り 先 、 39 年 に 日 生 劇 場 が ﹁ ウ ェ ス ト ナ イ ド 物 語 ﹂ の 一 行 を 招 い た ) 、 帝 劇 ミ ュ ー ジ カ ル に 続 く 東 宝 ミ ュ ー ジ カ ル の 一 環 と し て こ の 新 し い 演 劇 の ジ ャ ン 〃 を 根 付 か せ よ う と 試 み 、 本 年 1 月 の ﹁ シ ュ山
口
貞
三
ガ ー ﹂ に 至 る ま で 飜 訳 上 演 は 17 本 を 数 え る 。 そ の 殆 ど を 昨 年 4 月 亡 く な っ た 菊 田 一 夫 が 担 当 し た 。 然 し ﹁ キ ス ・ ミ ー ・ ケ イ ト ﹂ ( 41 年 ) の 如 く 聊 か 輸 入 の 選 択 を 誤 ま っ た 感 の あ る 作 品 、 ﹁ プ ロ ミ セ ス ・ プ ロ ミ セ ス ﹂ ( 46 年 ) の 如 く 配 役 に 疑 問 あ る 公 演 、 或 は ﹁ 努 力 し な い で 出 世 す る 方 法 ﹂ の 如 く 崩 し す ぎ の 場 面 が 目 立 っ て 意 義 の 薄 れ た 舞 台 等 が あ り 、 そ の 道 は 必 ず し も 平 坦 な も の で は な か っ た 。 勿 論 、 こ れ ら の 個 々 の 欠 点 よ り も 、 全 体 を 通 じ て の ミ ュ ー ジ カ ル 演 技 力 の 不 足 、 出 演 者 、 の 層 の 薄 さ 、 そ れ に も ま し て 観 る 側 が 容 易 に 形 式 に 馴 染 ま な い こ と 、 の 方 が 遙 か に 重 要 な 問 題 で あ ろ う 。 そ の よ う な 困 難 な 条 件 下 、 前 記 の ﹁ マ イ ・ フ ェ ア ・ レ デ イ ﹂ を 始 め ﹁ 王 様 と 私 ﹂ ( 40 年 ) ﹁ ラ ・ マ ソ チ ャ の 男 ﹂ (44 年 ) ﹁ ス イ ー ト ・ チ ャ リ テ ィ ﹂ ( 47 年 ) な ど 見 る 可 き 成 果 を 挙 げ た 舞 台 も 少 く な か っ た 。 そ し て 昨 年 7 ・ 8 ・ 10 月 に そ れ ぞ れ ﹁ 王 様 と 私 ﹂ ﹁ マ イ ・ フ ェ ア ・ レ デ イ ﹂ ﹁ ラ ・ マ ソ チ ヤ の 男 ﹂ 、 三 作 品 の 再 演 を 続 け さ ま に 行 っ た が 、 こ れ は 東 宝 が ア メ リ カ 演 劇 界 の 栄 誉 と さ れ る ト ニ ー 賞 特 別 賞 を 贈 ら れ た こ と に よ る も の で 、 目 本 の ミ ュ ー ジ カ ル 界 は 否 応 な く 、 ブ ロ ー ド ウ ェ イ ・ ミ ュ .ー ジ カ ル の 影 響 を 再 確 認 乃 至 再 検 討 す る こ と を 迫 ま ら れ た の で あ る 。 上 述 の 通 り 、 現 在 ま で ブ ロ ー ド ウ ェ イ ・ ミ ュ ー ジ カ ル の 上 演 は 東 宝 製 作 が 圧 倒 的 で 、 他 に は 僅 か に 劇 団 四 季 と ゼ ネ ラ ル ・ ア ー ツ の 共 同 企 画 製 作 で ﹁ ア プ ロ ー ズ ﹂ (47 年 ) ほ か 本 年 予 定 さ れ て い る 2 作 品 を 含 め て 5 本 、 そ の 前 に 同 系 列 の 日 生 劇 場 製 作 で ﹁ 結 婚 物 語 1ー ア イ ・ ド ウ / ・ ア イ ・ ド ウ / ﹂ (44 年 ) を 、 宝 塚 歌 劇 団 が ﹁ オ ク ラ ホ マ ! ﹂ (42 年 ) ﹁ ウ ェ ス ト ・ ナ イ ド 物 語 ﹂ ( 43 年 ) ﹁ 回 転 木 馬 ﹂ ( 44 年 ) を 、 後 は 一 つ ず つ で 隔 東 俳 の ﹁ 野 郎 ど も と 女 達 ﹂ ( 40 年 ) 松 竹 ・ ア ス カ プ ロ の ﹁ ヘ ア ー ﹂ 、 ア ト リ エ 41 に ょ る ﹁ フ ァ ソ タ ス テ ィ ッ ク ス ﹂ ( 46 年 ) 宮 城 ま り 子 に よ る ﹁ イ ル マ ・ ラ ・ ド ウ ス ﹂ 等 を 数 え る に す ぎ ぬ 。 一46一中 で 、 劇 団 四 季 は 過 去 10 年 、 目 本 生 命 の 後 援 に よ り 小 学 生 を 招 待 し て 行 っ て い る 日 生 子 供 ミ ュ ー ジ カ ル で の 実 績 を 持 ち 、 劇 団 と し て 音 楽 ・ ダ ソ ス の 基 礎 訓 練 を 重 視 し て き た 。 然 し 本 場 ミ ュ ー ジ カ ル は 踊 り の 場 面 が 話 題 を 呼 ん だ ﹁ ア プ ロ ー ズ ﹂ 、 ﹁ メ イ ム ﹂ ( 48 年 ) 共 越 路 吹 雪 申 心 の 企 画 ・ 公 演 で あ っ た が 、 昨 年 ロ ッ ク ・ ミ ュ ー ジ カ ル ﹁ イ エ ス ・ キ リ ス ト ・ ス ー パ ー ・ ス タ i ﹂ を 上 演 し 、 又 ﹁ メ イ ム ﹂ の 上 演 中 越 路 が 負 傷 し 、 代 役 に 立 っ て 好 演 し た 雪 村 い つ み を 劇 団 員 が バ ッ ク ア ッ プ し て 、 舞 台 を 維 持 し た こ と は 、 こ の 劇 団 の ミ ュ ー ジ カ ル 指 向 の 巾 を 拡 げ た と 言 え る 。 そ の 意 味 で 雪 村 を マ リ ア に 据 え た 今 年 の ﹁ ウ ェ ス ト ナ イ ド 物 語 ﹂ が 正 に 勝 負 ど こ ろ で あ ろ う 。 次 に 宮 城 ま り 子 の 製 作 ・ 主 演 に よ る 珍 ら し い フ ラ ン ス 原 産 の ﹁ イ ル マ ・ ラ ・ ド ウ ス ﹂ の 日 本 で の 上 演 の 意 義 は 、 演 出 の 中 村 哮 夫 が 狭 い 、 そ れ も 極 め て 特 殊 な 条 件 を 持 つ 場 所 (渋 谷 ・ ジ ァ ソ ・ ジ ァ ソ ) で 上 演 す る た め 、 全 面 的 に ア レ ソ ジ し た こ と で あ っ て 、 出 演 者 ・ 楽 団 編 成 を 小 人 数 に 絞 り 、 大 変 に 洒 落 れ た 、 観 客 と 一 体 化 し た 小 劇 場 ミ ュ ー ジ カ ル に 仕 立 て 直 し た こ と で あ っ た 。 音 楽 と 台 本 が 楽 し い 、 い わ ゆ る よ く 出 来 た プ ロ ⋮ ド ウ ェ イ ・ ミ ュ ー ジ カ ル は 数 多 く あ る か ら 、 日 本 の 観 客 動 員 可 能 数 、 更 に は 今 後 の 経 済 的 事 情 を 考 え れ ば 、 こ の 種 の 試 み は も っ と 行 わ れ て よ い 。 加 え て こ の よ う な 舞 台 に あ っ て は 装 飾 的 な も の が 極 力 取 払 わ れ る か ら 演 技 (勿 論 歌 ・ 踊 を 含 め て の ) 演 奏 が 非 常 に シ ビ ア に 問 わ れ 、 試 練 と 向 上 の 場 と な ろ う 。 そ の 意 味 で ア ト リ エ ・ 41 製 作 の ﹁ フ ァ ソ タ ス テ イ ッ ク ス ﹂ は も と も と が オ フ ・ ブ ロ ー ド ゥ ェ イ の 百 数 十 人 の 客 席 を 持 つ 小 劇 場 で 上 演 さ れ て き た ミ ュ ー ジ カ ル で 、 1 9 6 0 年 以 来 、 今 日 に 至 る ま で 14 年 聞 、 ニ ュ ー ヨ ー ク の 新 聞 広 告 欄 に そ の 名 を 見 る こ と が 出 来 る 。 日 本 で 最 初 に 上 演 し た の は 昭 和 42 年 、 芸 術 座 で 東 宝 製 作 に よ る 。 こ の 時 初 め て 、 ブ ロ ー ド ウ ェ イ の 制 度 に 倣 っ て 一 般 の オ ー デ イ シ ョ ソ を 行 っ て 若 い 2 人 の 主 役 を 選 ぶ 等 し た 。 ア ト リ エ ・ 41 に 製 作 が 移 っ た の は 46 年 か ら で 、 場 所 は 前 記 ジ ァ ソ ・ ジ ァ ソ で あ っ た 。 そ し て ﹁ フ ァ ソ タ ス テ ィ ッ ク ス ﹂ は こ の 小 劇 場 に 移 し て か ら 、 本 来 の 輝 き を 示 し 始 め 、 ほ ぼ 同 じ ス タ ッ フ 、 配 役 で 場 所 を 変 え 乍 ら 、 短 期 の 公 演 を 重 ね 、 見 る 者 に ミ ュ ー ジ カ ル の 楽 し さ を 味 わ せ て い る 。 宝 塚 歌 劇 団 は 前 記 の 3 作 品 の 他 、 実 は 38 年 よ り も 前 に 白 井 鉄 造 が 宝 塚 式 に 改 め て 、 ヨ ー ロ ッ パ 系 オ .ヘ レ ッ タ の 色 濃 い 初 期 の ブ ロ ー ド ゥ ェ イ ・ ミ ュ ー ジ カ ル を 二 度 上 演 し て い る 。 そ の ﹁ イ ソ デ ィ ア ソ ・ ラ ヴ コ ー ル ﹂ (31 年 ) は ﹁ ロ ー ズ ・ マ リ ー ﹂ で あ り 、 ﹁ 恋 人 よ 我 に 帰 れ ﹂ ( 33 年 ) は コ = 1 ・ ム ー ソ ﹂ で あ っ て 、 共 に 主 題 歌 の 一 つ を 新 た な 標 題 に し た も の で あ る 。 然 し こ れ ら を 以 て 、 ブ ロ ー ド ウ ェ イ ・ ミ ュ ー ジ カ ル の 本 格 的 上 演 の 最 先 駆 者 と い う に は 問 題 が あ ろ う 。 紙 数 が 尽 き た の で 後 は 補 足 的 に 述 べ る と 、 俳 優 座 が 37 年 に 又 多 少 変 形 で は あ っ た が 青 年 座 が 昨 年 、 ﹁ 三 文 オ ・ヘ ラ ﹂ を 上 演 し た 。 尤 も ﹁ 三 文 オ ・ヘ ラ ﹂ 自 体 、 ブ ロ ー ド ウ ェ イ ・ ミ ユ ー ジ カ ル と 言 え る か ど う か は 疑 問 だ 。 い ま 一 つ 星 野 演 出 事 務 所 に よ る オ フ も の の カ ソ ト リ ー ・ ロ ッ ク ・ ミ ュ ー ジ カ ル ﹁ タ ッ チ ﹂ ( 47 年 ) の 各 地 上 演 も あ げ て お こ う 。 そ し て 東 京 だ け に 限 っ て も 再 演 、 再 々 演 さ れ た ケ ー ス が 多 々 あ る こ と を 附 記 し た い 。 ( 文 中 敬 称 略 ) 一一47
