• 検索結果がありません。

生態毒性の生命表評価法と生態リスク分析

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "生態毒性の生命表評価法と生態リスク分析"

Copied!
13
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)横浜国大環境研紀要 23:161−173(1997). 生態毒性の生命表評価法と生態リスク分析* Life−TableEvaluationofEco−tOXicityofPollutantsandEcologicalRiskAssessment* 田中 嘉成*. YoghinariTANAKA− Synopsis. A framework of ecologlCalrisk assessment based on extinction probability of populationsispresented・The estimation of extinction risk consists of three steps, i.e.1)estimation of dose−intrinsic naturalincrease curve based on experimental evaluationofdose−reSPOnSeCurVeS,2)calculation of dose−eXtinction time curves by. meansofanalyticalsolutionsofextinctiontimemodels,and3)fromcomparisonbe− tweenthedose−eXtinctiontimecurvesandrealexposureofpollutantsinto naturalen− vironments,the extinction risk oftarget speciesis evaluated・. Inthispaper,Ireviewed previous ecologlCaltoxicity experiments・and concluded thatthelifetable evaluationis the moststrlngentPrOtOCOlfor estimatlnglmPOrtant. populationparameters(especially,intrinsicrateofnaturalincrease)・Tosummarize the data base of life table evaluation I analyzed the data with a power function m。delfordose_intrinsicratecurves.Basedonthismodel,aVailable datacanbesum− marizedinto two summaryparameters,i.e.αandβ,Which respectively represents. thecriticaldosagewheretheintrinsic rate drops off below O and the curvature of thecurves.Thereisahigh1ypositivecorrelationbetweenα−Values and LD50s,Sug− gestingapossibilityofextrapolationfromacutetoxicitiesto aTValues・ Extinctiontime models are shortly reviewed,and extinction cost was tentatively calculated uslng these models.. 化学物質の生態系に対するリスク評価は,生物種ま. それらの生態学パラメータ,特に内的自然増加率に対. たは生物集団(個体群)の絶滅確率の算定を骨子とす. する化学物質の効果を推定するために,生命表データ. る。そのためには,化学物質の暴露が個体群の絶滅確. を利用した生命表評価法が最も有効であることを提案. 率にどう影響するかを評価するための,生態毒性デー. する。生命表評価法とは,試験生物の齢別産卵(産仔). タに対する解析法と絶滅確率予測モデルが必要になる。. 数,齢別生存率など,生命表を構成する生物の生活史. 本稿では,前半部分で,絶滅確率の予測のために必. 特性に対する毒性の効果を評価する毒性試験法のこと. 要な数理モデルの紹介と,モデルが要求する生態学パ. である。生命表評価法によって,絶滅確率モデルに必. ラメータ(内的自然増加率など)を解説する。さらに,. 要な内的自然増加率の推定値が得られる。. *横浜国立大学環境科学研究センター理論生態学研究室. Department of TheoreticalEcology,Institute of EnvironmentalScience and Technology,Yokohama National University (1996年12月10日受領). 本稿の後半部分では,このような生命表評価法を実 際におこなった研究例を総説し,それをデータ・ベー ス化して,共通の薬量一内的自然増加率曲線モデル (べき関数モデル)を使って整理した。個々の試験生 物,化学物質の組み合わせについて薬量一内的自然増.

(2) 162. 加率の関係式を,絶滅確率予測モデルに代入すること によって,それぞれについて薬量一絶滅時間曲線を推 定することができた。モデルの仮定,精度の点などで, 注意しなくてはならない制約があるが,今後の生態リ スク論に実証的背景を提供するものと期待される。. 1=. 00. (β ̄〟J′∽f). ′。. ここで,mtは齢tにおける産卵(産仔)数, tまでの生存率である。 この式はrについて解析的には解けないが,. (1)生命表評価法の基本 生命表評価法を解説する前に,絶滅確率モデルの基 礎になる個体群の増殖の理論を紹介しておこう。一般. し計算(iteration)によってrを数値的に解 ができる。汚染物質は普通,1tもmtも低下させ 内的自然増加率を減少させる。 生態学では,1tとmtをリストした表を生命表. ている(Pianka1978;Ehrlich and R. ける生物の個体群の増殖はロジスティック方程式に従. garden1987)。. うことが知られている(Pianka1978;Ehrlich and Roughgarden1987)。. 従って,異なった暴露濃度区ごと 毒性データが測定されていれば,各 内的自然増加率が推定できる。この. 表 皮 生 命 濃 な 生 露 う で 暴 よ. 的に,少数個体を初期状態とする,密度依存過程にお. 験法を生命表評価法(1ife table evaluation). 晋=可1一昔ト ここで,rは内的自然増加率(intrinsic rate of naturalincrease),Nは個体数,Kは環境収容力 (carrying capacity),Eは環境変動である。内的自. づけておこう。. (2)絶滅確率モデル. ここでは,個体群の絶滅確率モデルの中で代言. 然増加率は,個体群の指数的な増殖率であり,密度効. ものを紹介し,現段階でどの程度の精度で絶滅石. 果が無い状態での個体群が示す最大の潜在的な増殖率. 予測できるかを議論する。生態リスクの基本とヂ. である。環境収容力は,ある限られた生息場所におけ. 体群の絶滅確率は,もし絶滅の事象が時間と独j. る個体数の上限をしめす。個体群の増殖は,個体数N. こるなら,平均絶滅時間の逆数になる。したが・. が環境収容力Kに収束するにしたがって,個体間の密. 対数スケールで見た場合,絶滅確率と平均絶滅排. 度効果によ三て減少し,やがて漸近的に停止する。1−. 符号が違うだけなので,今後,本稿では絶滅のl. N/Kの項はこの密度効果を表すものである。実際の. を平均絶滅時間で表す。. 個体群の増殖は,決定論的に進行するのではなく,環. 平均絶滅時間は,基本的に環境変動項を含む. 境要因の変動などが原因で確率論的な変動が加わる。. ティツク方程式に基づいて個体数に関する拡散. それを表現するのが環境変動の項eで,多くのモデル. をたて,その解から導かれている。最近の研究. では自己相関の無い白色ノイズと仮定してある。. 学上の困難さから,密度効果(K環境収容力). このとき,個体群の平均絶滅時間(T)は,r,K,. を個体数の限界値からの反射(つまりKを反射. Ⅴ(どの分散)などの関数として表現できることが理. て扱う)と見なす単純化をすることによって,. 論的に知られている。K,Ⅴの特定の値に対して,絶. 単で実用的な解析解が得られている。代表的な. 滅時間は,r(内的自然増加率)の増加関数なので,. 以下に列記しよう。. 化学物質の毒性が内的自然増加率に与える効果がわか. (i)Landeモデル:Lande(1993)は,拡散方程. れば,毒物の絶滅時間に対する影響が評価でき,生態. 定常解から,次の平均絶滅時間の解析解を導き出. リスク分析に結び付けることができる。絶滅確率モデ. 仮定は,個体群増殖が個体数の限界値付近以外て. ルについては,後に述べる。 さて,生態リスク評価において個体群の内的自然増. 加率の推定が重要である理由を概説した。次に,生命. 非依存であること,個体数変動に対する拡散近肢 分正確になる程度に環境変動が小さく,平衡個伺 大きいことである。. 表データからの内的自然増加率の推定法を簡単に述べ る。内的自然増加率は,次のオイラー・ロトカ方程 式と呼ばれる公式を使って推定するのが普通である。. T(幻=意(誓一飯g).

(3) 163. ここで,C=2テ/v−1,Kは個体数の境界値(環境収容. 多くの組み合わせに対して回帰分析を階層的に繰り返. 力),iは内的自然増加率の平均,Ⅴは内的自然増加. すことによって,次の経験式を導いた。. 率の環境変動による分散である。. (ii)Foleyモデル:Foley(1994)はR・Landeと同様 の拡散近似の仮定のもとで,集団遺伝学で使われる集. log了1=. 団の平均持続時間(mean persistence time)の計 算法を適用して個体群の平均絶滅時間を推定した。そ. 0.0365032斤 、丁. log号. 0.262794γ.2.90722√ −logγ+0.0588958 ∫・ 、手. の解析解は. T(乃。)=[β訟た(1−β ̄独0)−2ぶ乃。]. 6.370294. ただし,ここでⅤは環境分散(どの分散)である。 私の予備的計算によると,適当なパラメータの範囲. である。ここで,記号はn=1nN,k=1nK,S=f/v を意味する。. 以上 Lande(1993)とFoley(1994)の解析結果 は,比較的近年の拡散方程式に基づく絶滅確率モデル の中で代表的なものと考えてよいだろう。絶滅確率の. 内では彼らの予測は,Foley(1994)の結果に最も近 い。ただし,上の予測式は,r=3における数値解を基 本に導かれたので,rが3から大きくずれると,予測 値はカオティックな様相を呈するようである。 この他,r,K,Ⅴなどのパラメータにさまざまな. 研究には,拡散近似に基づくもの以外に,確率論数学. 数値を代入することにより,モデル問の予測値の違い. で言う分岐過程として解析するもの,マルコフ連鎖モ. を比較した(データは示されていない)こ その数値比. デルで解析するものなどがあり,それぞれモデル化す. 較の結果を要約すると以下のようになる。. る個体群システムの特性に相違がある。拡散近似は最. 1.平均絶滅時間の予測値はモデルによって大きく異. も一般性の高い解析法だが,確率変動が十分小さく,. なり,しばしば2桁以上の差がある。したがって,. 平衡個体数が十分大きい集団でないと,編微分方程式. 現段階では平均絶滅時間の絶対値の正確な推定は不. の仮定を満たさない。ただし,Foley(1994)がモン. 可能である。特に,Landeモデルは,他の2つの. テカルロ・シミュレーションの結果と比較したところ. モデルに比べて平均絶滅時間の予測値が高くなる. によると,拡散近似による解析解は平衡個体数が通常. (つまり絶滅リスクの過小推定となる)傾向があっ. の大きさ(数100個体以上)であれば十分正確である. た。. ことが示されている。. 生態リスク論を考える場合は,環境中での暴露が大. 2.ただし,常用対数スケールに変換した平均絶滅時 間と内的自然増加率の関係は,上記の3つのモデル. きく生物集団へのリスクが非常に大きくない限り,比. の間で非常に似た傾向がある。つまり,内的自然増. 較的大きな平衡個体数に対する絶滅確率の計算(つま. 加率の変化分(△r)に対応する平均絶滅時間の変. り拡散近似による計算)が有用だと考えられる。なぜ. 化分(△logT)は,上記の3つのモデルの間で良. なら,リスク評価の対象はあくまで化学物質で,ほと. い一致がある。したがって,汚染物質の暴露によっ. んどの化学物質の生態系における暴露は,生息地の破. て低下した内的自然増加率の減少分に相当する,平. 壊など他の生態系破壊の要因にくらべるとはるかに低. 均絶滅時間の減少分を常用対数スケール(つまりオー. いと考えられるからである。この点は,小集団となっ. ダーのレベル)で推定することば可能であると考え. ている絶滅危慎種の絶滅リスク評価が必要な保全生物. られる。. 学とは異なっている。ただし,他の絶滅要因によって すでに小集団になっている生物種に対する生態リスク 評価を行うためには,拡散近似では十分でないかもし れない。. (3)生命表評価法による生態毒性試験例 化学物質の内的自然増加率に対する効果が測定され. (H)HakoyamaandIwasaモデル:九州大学理学. ていれば,それを絶滅時間予測式に代入することによっ. 部の箱山洋氏と巌佐庸氏昼,上記の拡散近似に基づき. て,暴露の生態リスクを絶滅時間の減少として評価で. ながらも,独特なアプローチで平均絶滅時間を研究し. きることが理解できた。前にも述べたように,内的自. た。彼らは,ロジスティック方程式から導いた拡散方. 然増加率は生命表評価法によって推定するのが最も直. 程式を数値的に解き,得られた絶滅時間とrやKとの. 接的な方法である。しかし,残念ながら,生命表の作.

(4) 16;2. 表1生命表評価法およびそれに準ずる方法による生態毒性試験のリスト. 化学物質など. 文献. 試験生物. 1Fernandez−Casalderrey,et al.(1993). endosulfan. D.magna. 2ConiglioandBaudo(1989) 3Gentileetal.(1983). D.obtusa. 4Marshall(1978). chromium Chronic mercury chronic cadmium. 5WinnerandFarrell(1976). COpper. 6Marshall(1962). gamma radiation acid stress DDT dieldrin mercury,nickel kepone. 7Waltonetal.(1982) 8Hummon(1973) 9DanielsandAllan(1981) 10Gentileetal.(1982) 11AllanandDaniels(1982) 12Winneretal.(1977) 13DayandKaushik(1987) 14BertramandHart(1979) 15HolmanandMacek(1980) 16Maki(1979) 17Enserinketal.(1991) 18Halbachetal.(1983) 19Marshall(1966). 20Francisetal.(1986) 21Klassetal.(1974) 22Winner(1981). 23GrayandVenti11a(1973) 24VanLeeuwenetal.(1985) 25VanLeeuwenetal.(1985) 26ReishandCarrlL(1978). Mysidopsis bahia D.galeatamendotae 4 Daphnias D.pulex D.pulex. Lepidodermella squammata D.pulex,Eurytemoraa疏nis. Mysidopsis bahia Eurytemoraa餌nis D.magna. COpper. D.galeatamendotae D.pulex. pyrethroid,fbnvalerate cadrriium LAS. fathead minnow. D.magna,免theadminnow LAS,Amineoxide,NTA,ZeOlite D.magna,Salmogairdneri. inetals. phenol,PCP,4−Chloroaniline, Brachionusrubens(rotifbr). 4−nitrophenol gamma radiation 4−nitrophenoI cadmium COpper,Zinc. D.pulex. D.magna Scenedesmusquadracauda(alga) D.magna Cristigeraspp.(marineprotozoa)窃 mercurieion,Zincion,lead,ion disul丘ram,Zineb. D.m∈唱na. cadmium. D.magna,Chlorellapyrenoidosa Ctenodrilus serratus. Cadmium,Chromium,COpper,. 1eadmercuryzinc. 成は,生活史が短く,体サイズが小さぐて飼育が楽な. してある。これらのデータから薬量一内的自然増加率. 種でない限り多くの労力と時間,スペースを必要とす. 曲線を描くことができるが,そのためには適合させる. る。おそらくこのことから,多くの種や化学物質に対. モデルが必要である。多くの研究例から,内的自然増. して実証データが十分あるとは言えない。表1には,. 加率は化学物質の薬量(濃度)に対して減少関数にな. オイラー・ロトカ方程式を使って内的自然増加率を推. ることは共通していたが,内的自然増加率の薬量に対. 定してある文献,または,簡単な計算によって内的自. する反応の仕方はまちまちであることがわかった。つ. 然増加率が計算できる文献のリストである。ただし,. まり,比較的線形に近い形で減少する場合から,薬量. この裏は完全な検索ではなく,実際は幾分多く報告さ. に閥値のようなものがあって,その近傍を超えると急. れているだろう。. に内的自然増加率が減少する場合もある。このように 曲線の次数に連続的な変異がある場合は,次のべき関 数でうまく近似できると考えられる。. (4)薬量一内的自然増加率曲線 (dose−r CurVe) γ=γ(1−(言)β). これらの生命表評価法による実験では,内的自然増 加率を対象区を含むいくつかの薬量区でそれぞれ推定.

(5) 165. (b). (a). 薬包一内的自然増加率曲線. 巣立一内的自然増加率曲線 0.4. 0∴沌. 1∵軒.  ̄t\←_ 0.25. \ ヽ、 へ. \ 芯 0.2 \ \. \\. \. \. 0.1. \. 仇15. 仇的. \\ 加5亡L亡Yモl. 国1 ミジンコ2種の内的自然増加率に対する銅の毒性の効果. D【ll亡L亡Y(!l. a)ミジンコ(Daphnia pulex)b)オオミジンコ(Daph−. niamagna).データ・ソースは,Winner(1976,1977)。 ここで,Ⅹは薬量(算術的スケール),α,β,γは. 基づく外挿法がある。外挿法は多かれ少なかれ生態リ. それぞれパラメータである。さいわい,パラメータの. スク分析には欠かせないと言えよう。外挿法を適用す. 解釈は比較的単純で,次のように考えることができる。. るためには,説明変数に対する回帰係数がある程度高. まず,αは内的自然増加率(r)が0になる薬量,逆. く,統計的にも有意であることが必要である。次に,. に,γは薬量が0の時の内的自然増加率である。つま. LD50値,水・オクタノール分配係数とべき関数モデ. り,γはコントロール区における潜在的な最大内的自. ルのパラメータとの回帰係数を計算してみた。まだ,. 然増加率を意味する。αとγが決まれば,薬量一内的. 十分な結論を得るにはデータ・サイズが小さいが,お. 自然増加率曲線の始点と終点も決まるので,高濃度暴. おまかな傾向を得ることはできるだろう。. 露での内的自然増加率ははぼ決まる。しかし中間的な. これまで繰り返し述べてきたように,生態リスク分. 薬量における内的自然増加率は薬量一内的自然増加率. 析に欠かせない絶滅確率(薬量一絶滅時間曲線. 曲線の形に大きく左右される。パラメータβは,この. [dose−logT curve])の算定のためには,薬量一内. 曲線の形(非線形性の度合い)を表す。βが1のとき,. 的自然増加率曲線(べき関数モデル)のαとβの値の. 内的自然増加率は薬量の増加に対して完全に線形に減. 推定値が必要である。最大内的自然増加率γについて. 少する。βが大きくなるにしたがって内的自然増加率. は,想定している生物種の自然状態での個体群増加率. の減少は非線形となり,最初はなだらかに減少するが. を野外調査や室内飼育実験などによって知る必要があ. 次第に減少が急になる。. る。ここでは,べき関数モデルのパラメータ(αとβ). べき関数モデルに適合させた例を2つあげておこう. と,通常の急性毒性試験や環境化学分析などで使われ. (図1a,b)。どちらも,銅の毒性による効果を,ミ. る,LD50値,水・オクタノール分配係数(Kow)と. ジンコ(刀dpん花よαp比Ze方図1a)とオオミジンコ. の相関・回帰係数を計算した(表2参照)。今のとこ. (刀印加よαmαg71α図1b)に対して生命表評価法で. ろ,文献検索から得たデータ・ベースから,48の薬量一. 試験したものである。図1(a)の方は,曲線が大きなカー. 内的自然増加率曲線が推定されている。. ブを措き,低濃度の薬量では,はとんど反応が現れな いが,図1(b)の場合は,反応がはとんど線形で,内的 自然増加率は低濃度暴露から徐々に低下していく。 このような,生命表評価法による生態毒性データは 非常に少なく,これだけでリスク論を構築するのは困. その結果を要約すると次の通りである。. 1)α値とLD50値の間には高い相関関係があった (α,LD50はばらつきが非常に大きいので対数ス ケールの解析が好ましいと考えられる)。 2)α値とKow値の相関は負になる傾向があるが,. 難である。データの不十分さを補足する方法として,. 統計的に有意でなかった。Kow値は毒性と正の相. 急性一慢性毒性,QSAR−慢性毒性間などの回帰に. 関があると言われているので,負の相関はこの事実.

(6) l−豪r■−−. 166. 表2 薬量一内的自然増加率曲線(べき関数モデル)のパラメータとLD50値,水・オクタノール分配係数との相関係数,回 帰係数(太字は統計的に有意,Pは確率). 変数の組み合わせ. 相関係数. 相関・回帰係数の推定値. α値−LD50値. 0.99995(Pく0.001). logα値−logLD50値. 0.8560(Pく0.001). logα値−logKow値. 一0.5890(P=0.095). α値−β値. −0.03528(P〉0.05). β値−LD50値. −0.03512(P〉0.05) 0.250(P〉0.05). logβ値−logKow値 回帰係数. LD50→ α. log LD50→log α log Kow→ β. と適合している。統計的に有意でなかった理由は,. のは,どちらも強い毒性反応が現れる薬量で定義され. サンプル数の少なさかもしれない。. ている点が共通しているからかもしれない。しかし,. 3)β値はα値ともLD50値とも有意な相関はなく, 相関係数の値も絶対値の小さな数値であった。この. 低濃度での集団に対する生態リスクは無視できないこ とから,毒性の定義そのものを拡張しなくてはならな. ことは,生態毒性の大きな性質であるβ値が,毒性. いかもしれない。つまり,反応(内的自然増加率の低. の大きさそのものには関係がないことを示唆してい. 下)が線形か非線形かによって,急性毒性LD50値が. る。. 同じ化学物質や生物種でも,低濃度暴露状況下での生. 4)一方,β値はオクタノール・水分配係数には正の 相関を示した。しかし,相関係数の値は低く,統計. 態リスク分析はまったく異なったリスクを予測するか もしれないのである。. 的にも有意でなかった。. 5)結局,目下のところ,α値はLD50値からよく予 測できる可能性が示唆された。β値はKow値など から予測できるようになるかもしれないが,今のと ころデータは十分でない。単回帰係数は,それぞれ, βL。5。→α⊆0.86,βK。W→β⊆0・88である。. (5)薬圭一絶滅世代数曲線 (dose−logT curve). 薬量一内的自然増加率曲線(べき関数モデル)は, 前記の絶滅時間予測モデルに代入することによって,. 薬量一絶滅時間曲線に変換することができる。予測さ 特に,α値がLD50値から予測できる可能性が示唆. れた絶滅時間(対数スケール)の予測値は,今後生態. されたことは重要である。β値がLD50値やα値と相. リスクの枠組みを構成する上で重要なメルクマールと. 関がないのは,β値が毒性の強さと関係があまりない. なる可能性がある。. ことを示唆している。もちろんこの場合,毒性の強さ. 薬量一絶滅時間曲線は,べき関数モデルによって薬. とは,LD50値,つまり半数の個体が死亡する濃度な. 量の関数として表現された内的自然増加率(r(Ⅹ)). ので,かなり顕著な効果がある薬量の範囲で定義され. を平均絶滅時間の解析解に代入することによって求め. ていることになる。α値とLD50値が高い相関がある. た。その際,最大内的自然増加率,環境変動の分散は.

(7) 167. すべての場合について,それぞれrm且Ⅹ=3,Ⅴ=2・5と仮. (1994),Hakoyama andIwasa(私信)をそれぞ. 定した。ただし,いくつかの実験から,汚染物質の暴. れ使用した。. 露は環境収容力に対しても,少なくとも内的自然増加. 最大内的自然増加率rmax(べき関数モデルのγ)を. 率に対するのと同程度の効果があることが分かってい. 3に設定したのは,HakoyamaとIwasaのモデルが,. るので,次のように,環境収容力(K)も薬量の関数. r=3の近傍で計算された近似式だからであり,生物学. 的な意味はない。ただし,Lande(1993),Foley として定義した:∬(∬)=考Ⅶβ. 砂 [−(言)loこの. (1994)らの計算では,平均絶滅時間が内的自然増加. モデルによれば,薬量が少ない時,内的自然増加率と. 率の絶対値には直接は依存せず,内的自然増加率と環. 環境収容力の減少率が等しくなる。. 境分散との比率に依存するので,両者の比率が適当な. 絶滅時間モデルとして,Lande(1993),Foley. 値になるように環境分散を設定した。内的自然増加率. (b). (a). 裏庭星一絶滅時間(常用対数)曲線. 魚座丑一絶滅時間曲線(Landeモデル) 勺○こと声量〓Uヱ︼占. 伍. −. −−−. −−. Lande Foley H8koya皿a&IYa5a. (d). (c). 暴威免一絶滅時間曲線什血岬胴モデル). 暴威皇一絶滅時間曲線(Foleyモデル). 勺○︼︶聖三二岩〓岩〓云. 勺○こ︼■こ⊥冨〓父こ;︼. ・− 一−−. −・−. −− −. K三100 K三200. X=400 Ⅹ=さ0(). Ⅹ=】600. 図2 銅のミジンコ(Daphniapulex)に対する生態毒性を表す薬量一絶滅時間曲線. (a)モデル間比較(b)Landeモデル(C)Foleyモデル(d)Hakoyama&Iwasaモデル. データ・ソースはWinner et al.(1976)..

(8) ■t一章.−−−. 168. と,環境分散との相対値は,Foley(1994)が再解析 したニジマスの個体群(漁獲量)変動データと矛盾の ない値に設定した。 図2はその1例である。全体では48例の薬量一絶滅. (6)暴露に変動がある場合 これまで,化学物質の暴露量は一定と仮定して,定 常状態にある個体群の絶滅時間を計算してきた。しか. 時間曲線が得られており,ここにあげた例がすべての. し実際には,環境中における薬物濃度は時間的,空間. 場合を代表しているわけではないが,おおまかな傾向. 的に常に変動していると考えられる。これまで述べて. にはいくつかの共通点がある。図2aでは,同じ薬量一. きた定常状態を仮定した拡散近似に基づく絶滅時間モ. 内的自然増加率曲線に基づく薬量一絶滅時間曲線のモ. デルでは空間構造は組み込まれていないから,空間的. デル間比較を行った。絶滅時間の絶対値は,モデルの. な変動を考慮することはできない。ただし時間的な変. 間で異なり,特にLandeモデルは他の2つのものに. 動に関しては,変動の周期が生物の世代期間に比べて. 比べてオーダーのレベルで短い傾向があった。Foley. 十分に短ければ,暴露の時間変動を,集団の増加率の. モデルとHakoyama&Iwasaモデルは比較的良い. 環境変動としてモデルに反映させることができる。そ. 一致を示した。この傾向は,他のはとんどの薬量一内. の場合,暴露の変動は内的自然増加率の環境分散に換. 的自然増加率曲線の場合で見られた。曲線の形は,ど. 算され。絶滅確率は内的自然増加率の環境変動が大き. のモデルでも比較的良く一致している。したがって,. くなるはど高くなるので,暴露の平均値が同じでも,. 絶滅時間の減少分に基づく生態リスクの評価はどのモ. 暴露の分散が大きくなるに従って個体群の絶滅のリス. デルを使っても著しく異なることばないと考えられる。. クは高くなる。. ただし,Hakoyama&Iwasaモデルは,制約の少. 個体群の増加率の分散はおもに気候や餌資源量など. ない拡散方程式を数値的に解くという実際的な方法を. の環境要因の変動によってもたらされると考えられる。. 採用していること,Hakoyama&Iwasaモデルと. ここでは,環境要因以外に,化学汚染物質暴露の変動. Foleyモデルはある程度のモンテカルロ・シミュレー. の要因も加算されると仮定する。つまり,個体群の増. ションによる検証がなされていることなどから,解析. 加率の分散は,環境分散vr(en,)と暴露分散Ⅴ.(ex)(暴露に. 結果しか報告されていないLandeモデルより正確か. よる内的自然増加率の分散)を足したものになる。. もしれない。. 図2b,C,dには,それぞれのモデルによる薬量一. ぴ=町(例〃)+〃r(打). 絶滅時間曲線を,いくつかの環境収容力(初期平衡個 体数)ごとにプロットしてある。環境収容力は,2の. いま,暴露量の分散をⅤⅩとしよう。これは,野外で実. べきに比例するようK=100,200,400,800,1600と設定. 測されるか,環境動態モデルで予測される暴露濃度の. した。どのモデルでも,薬量が0の時,絶滅時間の対. 分散そのものである。Vr(ex)とvxの変動係数が十分に小. 数は環境収容力(初期平衡個体数)のべきに比例した。. さければ,. つまり異なるK一億に基づく曲線の間隔が等間隔となっ た。このことは,環境変動による絶滅時間が,環境収. 容力のべきに比例するという知見に一致する. 〃r(α)=[意]2〃ェ. (Lande,1993)。 これらの曲線から,例えば平衡個体数(環境収容力) の半減に相当する絶滅リスクをもたらす薬量を推定す. ることができる。その値は,初期平衡個体数の絶対値. である。内的自然増加率のべき関数モデルより. 意=−γ君[訂1を上の式に代入すれば,暴露量の. によって異なるが,その違いは平衡個体数の違いに比. 分散を絶滅時間モデルに現れる暴露分散に換算するこ. べると非常に小さい。つまり,想定している平衡個体. とができる(図3参照)。このような,化学物質の暴. 数が定まらなくても,ある範囲内の値であれば,「生. 房量の時間・空間変動が,絶滅リスクにどの程度の影. 息地(平衡個体数)の半減がもたらす絶滅リスクに相. 響を与えるかは,化学汚染物質の環境動態に関する研. 当する化学汚染物質の暴露量は・‥である」という形の. 究との共同作業を通じて今後明らかにしていかなくて. 化学物質のリスク評価を行うことば可能になるだろう。. はならないだろう。.

(9) 169. rの変動. ‡. 内的自然増加率 く. 薬量. >. 暴露の変動. 園3 化学物質暴露の変動を内的自然増加率の変動に変換するシュマ.右下がりの曲線は薬量一内的自然増加率曲線,山型は 変動の分布を表す.. (7)Suterモデルとの関連(=ついて. 性毒性試験データを整理し,次の生活史モデル(ここ では仮に魚類生活史モデルFish modelと名付けてお. 生態毒性の生命表評価法は,絶滅確率算定に基づく. く)に当てはめることによって,個体群の増殖率の低. 生態リスク論を可能にする唯一の直接的な毒性試験法. 下率を算定することを提案している(Barnthouse. である。ただし,生命表データを得るには,同時に多. and Suter,1986,1987,1990;Suter et al・1983)。. 数の個体を飼育し,ライフサイクル全般にわたって生. 魚類生活史モデルは. 活史特性(生存率や繁殖)を測定しなくてはならない ので,労力がかかる上,可能な種も限られている。そ. 屈=So. Sl且f昭. の結果,現存の生命表評価法によるデータは非常に限. られており,生物の系統群にも偏りがある。世代時間 が長く,成魚の大量飼育が困難な魚類,哺乳類などで. である。ここで,Rは個体群の増殖率,Soは卵から1. は生命表評価法は事実上極めて困難である。したがっ. 歳魚までの生存率,Slは1歳魚からi歳魚までの生存. て,生命表評価法は生態毒性試験の1つの理想形を提. 率,Elは性的に成熟したi歳魚の個体あたり産卵数,. 示するが,外挿法を含む簡略な方法を生物の系統群ご. Miはi歳魚中の性的に成熟した個体の割合である。. とに提案していかないと,包括的な生態リスク論を展. 個体群の増殖率Rは,水産資源管理などで使われる加. 開することば困難だろう。 ここでは,そのような生命表評価法に代わる方法の 例としてSuterの外挿モデルを紹介し,その方法から,. 入率と同じ概念で,新たに卵として生まれた個体が, 一生で平均何個体の子孫を残すことができるかと言う. 量である。もちろん,増殖率が0なら,個体群は即座. どうやって薬量一内的自然増加率曲線が推定できるか. に絶滅する。Suterはこの増殖率の減少で生態リスク. を考えてみよう。. 評価をしようと考えた。実際の毒性データから増殖率. 米国の生態リスク研究の中心的地位にいるG.W・. を計算する場合,Suterは大胆な単純化を行った。つ. SuterとL.W.Barnthouseは,化学物質の水系生態. まり,化学汚染物質の暴露の効果は上記の生活史成分. 系(特に魚類)に対するリスクを評価するために,慢. の中で,S。(成魚になるまでの生存率)だけに作用す.

(10) ると仮定したのである。この単純化は,多くの試験魚. 包括的な水系の生態リスク分析を行うには避けられな. を使った慢性毒性試験の結果を総説すると,化学物質. い単純化であろう。リスク分析に必要なのは,1つの. の毒性は,卵の僻化率や成魚の生存率に対してより,. 事例に対する完全な調査というよりは,多くの化学物. 稚魚や幼魚の生存率に対する効果の万が一般的にずっ. 質と,生態系を構成している多くの種に対する広範囲. と大きいと言う知見に基づいている。. なデータである。. 従って,ここで暴露による成魚前死亡率をmoと書. さて,Suterの個体群の(世代あたり)増殖率は,. 内的自然増加率と次の関係がある。. くと,暴露下での個体群の増殖率R,は,. 00. 加点. 月,=S。(1一椚。)∑5fろ叫. γ= ̄ ̄ ̄. f=1. となる。つまり,. ここで,Tは平均世代時間. CO⊂〉〇 (テ=∑‥∫・∽ノ:い∽f)である。. 点’=(1一椚0)点. f=O. f=0. 暴露によって,繁殖開始齢以前の生存率だけが影響 である。さらに,1−moは次のように細分化できる。. を受けるとすれば,暴露によって平均世代時間は変化 しない。したがって,rは1nR(Ⅹ)に比例する。. 1一∽。=(1−∽e)(1−∽∼)(1一肌ブ) γ(∬)∝加屈(ェ). 上の式で,meは卵の死亡率,mlは稚魚の死亡率,m, は幼魚の死亡率である。さらに,me,m.,mjのそれ. Suterの式,R(x)=Rm。r(1−m。(x))より. ぞれが,薬量Ⅹに対して,次のロジスティック方程式 γ(∬)=た[加島偲(1−∽0(∬))]. に従うとする。. ヰ鯨ふ′乃(腔+1)]. gα+申. ∽(∬)=. 1+〆+伽. ただし,Rm8Ⅹは暴露が0の時の増殖率(最大増殖率),. (っまり1−∽(∬)=去声). kは定数である。 定数kを,無暴露でr(0)=γとなるように決めると,. 上のロジスティック方程式は,2つのパラメータα,. βによって特定される。大まかに言うと,パラメー. タ. g乃月仰一:加(βα伸+1). αは曲線の毒物薬量Ⅹ軸上での位置,つまり毒性の強. さを表し,ベータは反応曲線の勾配を表す。これらα. i=色ムメ. γ(∬)=γ. 加吼醍一. とβは慢性毒性試験結果に対するデータ解析から求め. .. る。しかし,パラメー タα,βに関する直接のデータ が無い種や化学物質に対しては,種間や急性毒性一慢. となる。上記の式から,Suterの魚類生活史モデルの. 性毒性の外挿から類推する方法を提案した。つまり,. パラメー. 同種のα値とLD50値の回帰式や異種のα借間の回帰. 薬量の関数と表現することができる。つまり,Suter. タ(αとβ)がわかれば,内的自然増加率を. 式を求めておいて,それらの回帰式を予測式として,. の魚類生活史モデルを薬量一内的自然増加率の関数に. 求めたい種のa値を推定するのである(Barnthouse. 変換することができる。前の節で述べた方法を使えば,. and Suter1986;Suter and Rosen1988)。ただし. これを薬量一絶滅時間曲線に変換するのは容易なので,. βに関しては,外挿の回帰式ができるはど十分なデー. 絶滅確率に基づく生態リスク評価に取り込むことがで. タがなかったので,一定と仮定してある。 このよう. きる。. に,Suterの外挿法には,いくつかの大きな単純化が. あり,それが制約となりうることは否定できない。し かし,限られた現存の慢性毒性データから,ある程度. ■りJrr上ll▼r■㌧﹁⊥T▲lll†.1 rしlllし、をーlF−ト■l−LLL■I − 1.−.・−−1. 170.

(11) 171. 採用していくことば,我が国で生態リスク分析を進め (8)考 察. *生態リスク分析の利点,実用性. ていく上で重要であろう。また,この分野の将来に国 際的な貢献をすることにもなると考えられる。. 本稿では,生物集団の絶滅確率(時間)に基づく生. 態リスク分析の可能性について議論した。さて,では 生態リスク分析の利点はいったい何であろうか。化学. *絶滅時間推定の問題点. ここで,絶滅時間の予測に関して,今後の課題を簡. 汚染物質の生態系への効果を生物集団,または生物種. 単に述べておこう。絶滅確率を予測するには,いくつ. の絶滅確率に換算することのメリットははたしてある. かの仮定が必要である。たとえば,分断化されていな. のだろうか。目下のところ,そのメリットは毒性試験. い任意交配集団,閉鎖生態系,漸近的定常状態などで. のデザインを変更しなくてはならないほど重要には思. ある。これらの仮定は,集団がいくつかの微視的な生. われないかもしれない。しかし,生物集団や種の絶滅. 息場所に分断化されていたり,他の生息域からの移住. が大気や水の汚染だけではなく,生息地の破壊や分断. があったり,大きく突発的な環境効果(山火事,突発. 化,環境の変化など多くの要因によって起こり,それ. 的な汚染による大量死など,カオス的環境効果)があっ. らの要因の重要性を比較する必要が出てきた時,生態. たりすれば満たされなくなる。このような状況を想定. リスク論の重要性が明らかになってくるだろう。あら. した生態リスク分析のためには,全く異なった種類の. ゆる要因による絶滅確率への効果は保全生物学で研究. 絶滅時間予測モデルが必要になるだろう。. されているので,化学汚染物質の生態毒性を絶滅確率. また,これらの仮定が満たされているとしても,絶. に変換しておけば,絶滅確率という究極的な価値基準. 滅時間モデルは内的自然増加率だけでなく,環境収容. によってあらゆる要因による生態リスクを比較するこ. 力(平衡個体数),増加率の環境分散なとのパラメー. とができるのである(中西1994,1995)。これは,人. タに依存するが,それらのパラメータが推定されてい. の健康へのリスク分析をする際に,死亡と言う共通の. る種はまれである。局所的な生態リスク分析を特定の. メルクマールを導入することに対応している(中西19. 何種かを対象にして行いたい場合は,このことは大き. 94,1995)。生息地の面的な減少は,それが非常に大. な障壁となるだろう。増殖率の環境分散は長期の個体. きな比率の減少でない限り環境収容力(平衡個体数). 群変動データが必要であるが,そのような生態調査が. の減少として扱うことができるので,それらの要因の. 行われた種は少数に過ぎないからである。ただし,個. 中でも最も扱いやすいものだろう。. 体群の変動パターンは,生物の分類群ごとである程度 類似した傾向があるので,おおざっ早まな分類群(科,. *生命表評価法の重要性. そのような生物集団の絶滅時間をエンドポイントと する生態リスク分析にとって,生命表評価法が最も好. 目など)ごとに代表的な値を設定することは可能にな. るかもしれない。それは,今後のデータ検索の結果か ら明らかになるだろう。. 都合な生態毒性試験であることは繰り返し述べた。そ れは,この方法によれば絶滅時間予測モデルに必要な. *毒性試験データの限界と外挿法. 内的自然増加率の推定値が得られるからである。一般. 生命表評価法による生態毒性データは量的に非常に. 的に,生命表データを得ること自身時間と労力がかか. 限られているので,どうしても生活史モデル(特定の. り,しかも毒性試験であることから,いくつかの薬量. 生物群を念頭に置いた生活史を記述するモデノりを使っ. 区と対照区で別々に生命表データが必要となる。した. た外挿法が必要になってくる。本稿ではその1例とし. がって,試験生物を注意深く選ばなければ十分なデー. て,Suterの魚類生活史モデルを紹介した。彼の,種. タは得られない。そのような制約があるにもかかわら. 閣外挿や急性一慢性毒性閣外挿を取り入れた,生物集. ず,すでに生命表評価法によって生態毒性を内的自然. 団の増殖率への効果に基づく生態リスク評価は,生態. 増加率の減少として評価した研究例は少なくないこと. 学的な基礎付けがなされていることとリスク評価の広. も本稿の総説から明らかとなった。. 範囲さの点で他に類例を見ない。Suterの解析法を,. 一方,我が国の慢性・生態毒性試験では,生命表評. 生物集団の絶滅時間に基づくリスク評価に変換するこ. 価が試みられた例が皆無であることも示唆された。こ. とができれば,絶滅確率による生態リスク論の試みは. のことば,我が国固有の水系・陸系の自然生態系の保. 一挙に可能性が増すであろう。本稿では,その具体的. 全を考える場合には大きな限界となるだろう。生命表. な作業を行う段階に至らず,可能性を示唆するにとど. 評価法など生態学理論の根拠がある生態毒性試験法を. まったが,今後の研究課題としたい。.

(12) 172. J.Van Leeuwen1991.Combined effects of. 謝 辞. metals:An ecotoxicologlCal evaluation. 本研究は,科学技術振興事業団戦略的基礎研究推進 事業「環境影響と効用の比較評価に基づいた化学物質. Wat.Res.25:679−687.. Fernandez−Casalderrey,M.D.Ferrando and. の管理原則」(代表者:中西準子氏)の援助を受けた。. E. Andreu−Moliner 1993. Effects of. 本稿の内容に関して有益な討論をしていただいたこと. endosulfan on survival,grOWth and repro−. に閲し,中西準子氏,益永茂樹氏,伊藤公紀氏,東海. duction of Daphnia magna. Comp.. 明宏氏,吉田喜久夫氏に感謝したい。. Biochem.Physiol.106C:437−441. Foley,P.Predictlng eXtinction times from en−. Vironmentalstochasticity and carrylng Ca− 引用文献. PaClty.Conservation Biology8:124−137.. Allan,].D.and R.E.Daniels1982.Life ta− Francis,P.C.,D.W.Grothe and J.C.. ble evaluation of chronic exposure of. Scheurlng1986.Chronic toxiclty Of 4−. Eurytemora quinis(Copepoda)to kepone.. nitrophenolto Daphnia magna Straus un−. Marine Biology66:179−184.. der statis−reneWaland flow−through condi−. Barnthouse,L.W.and G.W.SuterII1986.tions.Bull.Environ.Contam.Toxicol.36: User’s manualfor ecologlCalrisk assess− ment.EnvironmentalSciences Division Pub−. 730−737.. Gentile,].H.,S.M.Gentile,N. G. 1ication No.2679.U.S.Env.Prot.Agency. Hairston,Jr.and B.K.Sullivan1982.The. Barnthouse,L.W.and G.W.Suter Ⅱ1987. use oflife−tables for evaluatlng the chronic. Estimating responses of fish populations to. toxiclty Of pollutants to MysidopsIS bahia.. toxic contaminants.Environ.Toxicol.Chem.. Hydrobiologia93:179−187.. 6:811−824.. Gentile,].H.,S.−M.Gentile,G.Hoffman,].. Barnthouse,L.W.and G.W.Suter Ⅱ1990. F.Heltshe and N.Hairston,JR.1983.The. Risks of toxic contaminants to exploited. effects of a chronic mercury exposure on. fish populations:Influence oflife history,. SurVival,rePrOduction and population dy−. data uncertainty and exploitationintensity.. namics of Mysidopsis bahia.Env.Toxicol.. Environ.Toxicol.Chem.9:297−311.. Chem.2:61−68.. ●. Bertram,P.E.and B.A.Hart1979.Longev− Gray,].S.and R.].Ventilla1973.Growth. ity and reproduction of Daphnia pulex(de. rates of sediment−1iving marine protozoan. Geer)exposed to cadmium−COntaminated. as a toxicityindicator for heavy metals.. food or water.Environ.Pollut.19:295−305.. Ambio2:118−121.. Coniglio,L.and R.Baudo1989.Life−tables Halbach,U.,M.Siebert,M.Westermayer of Daphnia obtusa(Kurz)surviving expo−. and C.Wissel1983.Population ecology of. sure to toxic concentrations of chronium.. ritifers a占、 a bioassay tool for. Hydrobiologia188/189:407−410.. ecotoxicologlCaltestsin aquatic environ−. Daniels,R.E.andJ.D.Allan1981.Life ta− ments.Ecotoxicol.Environ.Safety 7:484:. bleevaluationofchronicexposureto apesti−. 513.. Cide.Can.].Fish.Aquat.Sci.38:485−494. Holman,W.F.and K.].Macek1980.An Day,K.and N.K.Kaushik1987.An assess− aqatic safety assessment of linear. ment of the chronic toxicity ofthe synthetic. alkylbenzene sulfonate(LAS):Chronic ef−. Pyrethroid,fenvalerate,tO Daphnia galeata,. fects on fathead minnows.Trans.Amer.. uslnglife tables.Env.Poll.44:13−26.. Fish.Soc.109:122−131.. Ehrlich,P.R.andJ.Roughgarden1987.The Hummon,W.D.1974.Effects of DDT onlon− Science and Ecology.McMillan,New York.. gevity and reproductive rate ln. Enserink,E.L.,].L.Maas−Diepeveen and C. Lepidodermella squammata(Gastrotricha:.

(13) 173. Chaetonotida).Amer.Mid,Natur.92:327− SuterⅡ,G.W.and A.E.Rosen1988.Com−. Parative toxicology for risk assessment of. 339.. Klass,E.,D.W.Rowe and. marine fishes and crustaceans.Environ. E.].Massaro. 1974.The effect of cadmium on population growth of the green alga Scenedesmus. Sci.Technol.22:548T556.. Van Leeuwen,C.].,W.].Luttmer and P.. quadracauda. Bull. Environ. Contam・. S.Griffioen1985.The use of cohorts and. Toxicol.12:442−445.. POPulationsin chronic toxicity studies with. Lande,R.1993.Risks of population extinc−. tion from demographic and environmental stochasticity and random catastrophes. Amer.Natur.142:911−927.. Maki,A.W.1979.Correlations between Daph−. Daphnia magna:A cadmium example. Ecotoxicol.Environ.Safety9:26−39. Van Leeuwen,C.].,F.Moberts and G.. Niebeek1985.Aquatic toxicologicalaspects of dithiocarbamates and related com−. nia magna and fathead minnow. POunds.Ⅱ.Effects o・n SurVival,rePrOduc−. (Pimephalespromelas)chronictoxicity val−. tion and growth of Daphnia magna.. ues for severalclasses of test substances.]. Fish.Res.Board Can.36:411−421.. Marshall,].S.1962.The effects of continu−. Aquatic Toxicology7:165−175.. Walton,W.E.,S.M.Compton,J.D.A and R.E.Daniels1981.The effect of acid. OuS gamma radiation on theintrinsic rate. StreSS On SurVivorship and reproduction of. of naturalincrease ofDaphnia pulex.Ecol−. Daph7ua Pulex(Crustacea‥. Ogy43:598−607.. Can.J.Zoo160:573−579.. Marshall,].S.1966.Population dynamics ofWinner,R.W.and M.P.Farrell1976.Acute. Daphnia pulex as modified by chronic ra−. and chronic toxiclty Of copper to four spe−. diation stress.Ecology47:561−571.. Cies of Daphnia.].Fish.Res.Board Can.. Marshall,].S.1978.Population dynamics of 33:1685−1691.. DaphniagaLeata Tnendotae as modified by. Winner,R.W.,T.Keeling,R.Yeager and. chronic cadmium stress.]. Fish. Res.. M.P.Farrell1977.Effect of food type on. Board Can.35:461−469.. the acute and chronic toxiclty Of copper to. 中西準子1994.水の環境戦略.岩波書店.. Daphnia magna.Freshwater Biology7:343−. 中西準子1995.環境リスク論.岩波書店.. 349.. Winner,R.W.1981.A comparison of body Pianka,E.R.1978.Evolutionary Ecology. 2nd ed.(訳:進化生態学.伊藤嘉昭監訳,蒼樹書 房). length,brood size andlongevity asindices Of chronic copper and zinc stressesinDaph−. Reish,D.].and R.S.Carr1978.The effectnia Tnagna.Environ.Pollut.26:33−37. Of heavy metals on the survival,rePrOduc− tion,development,andlife cycles for two species of polychaetous Annelods・Marine Pollution Bulletin9:24−27.. Suter Ⅱ,G.W.,D.S.Vaughan and R.H.. Gardner1983.Risk assessment by analysIS Of extrapolation error:A demonstration for effects of pollutants on fish.Environ. Toxicol,Chem.2:369−378..

(14)

参照

関連したドキュメント

Eskandani, “Stability of a mixed additive and cubic functional equation in quasi- Banach spaces,” Journal of Mathematical Analysis and Applications, vol.. Eshaghi Gordji, “Stability

If condition (2) holds then no line intersects all the segments AB, BC, DE, EA (if such line exists then it also intersects the segment CD by condition (2) which is impossible due

Keywords: nonparametric regression; α-mixing dependence; adaptive estima- tion; wavelet methods; rates of convergence.. Classification:

Let X be a smooth projective variety defined over an algebraically closed field k of positive characteristic.. By our assumption the image of f contains

[r]

Since the data measurement work in the Lamb wave-based damage detection is not time consuming, it is reasonable that the density function should be estimated by using robust

By the algorithm in [1] for drawing framed link descriptions of branched covers of Seifert surfaces, a half circle should be drawn in each 1–handle, and then these eight half

We will give a different proof of a slightly weaker result, and then prove Theorem 7.3 below, which sharpens both results considerably; in both cases f denotes the canonical