• 検索結果がありません。

金融商品の負債と資本の区分―永久社債および永久優先株式を題材として―

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "金融商品の負債と資本の区分―永久社債および永久優先株式を題材として―"

Copied!
12
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)金融商品の負債と資本の区分 ──永久社債および永久優先株式を題材として── 山 田 和 宏. 1.問題の所在. ば,むしろ株主持分に属するほうが妥当であろ う.」(藤井[1997]175 頁)との見解がある.. 負債と資本の双方の性格を有する金融商品の. 次に,永久優先株式に関して,米国会計基準. 中で,依然未解決の項目として,債券では永久. では,資本として分類されるが,2007 年に公. 1). 社債(perpetual bond) がある.また,株式で. 表された予備的見解で提案された基本的所有ア. は永久優先株式(perpetual preferred stock)が. プローチでは負債に分類される.基本的所有ア. ある.また,近年世界的に永久債の発行が増加. プローチはその後棄却された.また,基本的所. しており,わが国においても多様な永久債が発. 有アプローチの対案として 2008 年に提案され. 行されている.国際決済銀行の自己資本規制2). た無期限アプローチでは,資本として分類され. との関係で発行される場合が多いが,事業会社. る.また,IAS 第 32 号改訂[2008]28 項によ. による発行も増加している.IFRS を適用し,. れば,累積型永久優先株式は,負債部分と資本. かつ永久債を発行している企業は,連結財務諸. 部分を分離して会計処理を行うことが求められ. 表上,資本計上を行っている.一方,日本会計. て い る が,IASB 討議資料[2018]「持分 の 性. 基準では,永久債は金融負債であり,会計基準. 格を有する金融商品」の審議会で推奨されたア. 間に齟齬がある.. プ ローチ( The Board’s preferred approach). 永久債に関しては,負債の定義から検討し,. の下では,金融負債として分類されることにな. 「元本返済と利息の支払のいずれかを履行しな. る.. ければならない義務として,負債となる. 」 (池. 永久債および永久優先株式に関する会計処理. 田[2009]197 頁)という見解がある.一方, 「永. に関して負債として計上すべきか,一定の要件. 久的に弁済されず,しかも利益分配にあずかれ. を満たした場合,資本として計上すべきかとい う論点がある.本稿は,貸借対照表の貸方にお. . 1)永久債 の 歴史 を 紐解 く と,カ ト リック 教会 が 発行 し た も の に は じ ま り,オ ラ ン ダ 水管理委 員会 に よって 発行 さ れ た も の,英国政府 に よっ て 発行 さ れ た コ ン ソ ル 債 が あ る(Berk, J. and P. DeMarzo[2017]p. 112). 2)国際決済銀行(BIS)の 自己資本規制 の 統一 基準によれば,自己資本は普通株等の基礎自己資 本と補助的自己資本に区別されており,永久債は, 後者に含められ自己資本として扱われる.. いて,負債と資本を区分する目的を資本の範囲 (利益の帰属先)の精緻化3)とした上で,発行 体は,永久債を負債として計上し,支払利息を . 3)資本の範囲を精緻化する目的は,残余請求権 者だけを利益の帰属先として区分することによっ て利益情報を意思決定に有用な情報として役立た せることである..

(2) 104 (520). 横浜国際社会科学研究 第 24 巻第 4 号(2020 年 2 月). 費用処理にて行うか, 「資本性金融商品」とし. は,繰上償還(Call Provision)条項 が 付 い て. て分類し, 「資本」として計上し,資本所有者. おり,将来十分な資金がある場合,償還を行う. への支払額を利益剰余金の処分として取り扱う. という選択肢がある.. べきか,会計主体論および会計上の資本概念の 視点から探求するものである.また,永久優先. 2. 3 環境管理を資金使途とした債券. 株式に関しては,累積型優先永久優先株式にお. 環境管理を資金使途とする永久債には,いま. いて,負債部分と資本部分を分けて分離処理を. だに利息の支払いのある最古な永久債として. 行うか,一括して資本として分類すべきか,あ. 17 世紀にオランダ水管理委員会によって発行. るいは,一括して負債として計上すべきか,同. されたものがある.また,最近では,類似の債. 様に,会計主体論及び会計上の資本概念の視点. 券として米国首都のワシントンで行われている. から検討するものである.. 水管理プロジェクトにおける資金調達で,発行. 2.永久債の概要と種類. された 100 年債(century bond)がある.償還 期間が 100 年(償還期限 2014 年)という債券で. 2. 1 概 要. あり,資金調達の使途が水資源,環境管理にあ. 永久債は,政府によって発行されるものと民. てられるため別名「グリーンボンド」とも呼ば. 間企業によって発行されるものがある.政府に. れている.. よって発行される永久債は,国家が破綻しない 限り,永久に利息の支払いを行うものであり,. 2. 4 民間企業によって発行される永久債. 償還期限の定めのないものである.また,民間. 民間企業によって発行される永久債は,BIS. 企業の場合,「会社が存続する限り,すなわち. 規制との関係で金融機関によって発行されるも. 解散,破産等にならない限り,元本を償還しな. の と 資金使途 を 一般事業費 と す る 事業会社 に. いという内容の社債である4)」 .. よって発行されるものがある.まず,金融機関 を取り巻く環境の変化(バーゼルⅢへの対応な. 2. 2 永久国債. ど)がある.2007~2009 年に生じたグローバ. 政府によって発行される永久債が永久国債で. ル金融危機の原因は,経済学の分野6),規制の. ある.代表的なものは,英国政府によって発行. 分野7),会計の分野8 )といったさまざまな問題. 5) された永久債(コンソル債) で,広く評価さ. が複雑に絡み合っている.会計の分野の「公正. れた.永久債は償還期限のない債券ではあるが, 英国政府 に よって 発行 さ れ た 永久債 は,2015 年に全ての永久債が償還された.また,2008 年のリーマンショック以降,中国をはじめとし また多くの新興国でも発行されている.永久債 . 4)『三訂金融証券用語辞典』銀行研修社,1989 年参照. 5)償還期限が特に定められてない国債の一種 で永久確定付公債である.英国で発行したもので 元本償還がない代わりに利子は永久に支払われる ことになっている.ただし政府による任意償還事 項はあるが低利率であることから償還の可能性は 少ないとされる.. . 6)経済学 の 分野 で は,時価会計 と 流動性 の 不 足が「危機の連鎖」を引き起こしているとの指摘 がある. 7)規制強化では金融システムの問題を解決でき ず,規制・監督・市場規律のバランスをとる必要 があるとの指摘がある(宮内[2015]122─123 頁) . 8)宮内(2015,235─242 頁)に よ れ ば,会計 に 関して,FSF(Financial Stability Forum:金融安定 フォーラ ム)は,IASB と FASB に 対 し て, 「貸出 金の引当方法の見直し」 , 「公正価値会計の副作用へ の対応」を作業課題とし,次のように関連機関に勧 告しているという.それを受けて,IASB と FASB は,金融危機助言グループ(FCAG: Financial Crisis Advisory Group)を 立 ち 上 げ,FCAG は, 「発生損 失モデル」に代わるものとして「予想損失モデル」 と「公正価値会計の見直し」を例示した.高須(2015).

(3) 金融商品の負債と資本の区分(山田). (521) 105. 価値会計の見直し」では,公正価値評価は危機. 負担があったことの反省から,投資家が発行体. を一層増幅すると主張する論者もいれば,金融. の損失を吸収する(ベイルイン)が設計された. 安定フォーラム (Financial Stability Forum) (以. ことなどがあげられる.また,金融機関は,今. 降 FSF と称する)は, 「デリバティブに公正価. 後も永久債,劣後債の発行等を通じて規制の要. 値の適用を進める動きに変更を求めるものでは. 件を満たす経営努力を行うことは免れられない. ない. 」とのスタンスで,公正価値に対するス. であろう.永久債としては,金融機関によって. タンスは曖昧である.ふたつの課題に関して,. 発行される上記の CoCo 債があげられ,具体的. FSF の プ ロ シ ク リ カ リ ティ(景気循環増幅効. には永久的な償還(perpetual maturity)を有. 果)の捉え方は一定していない(宮内[2015]. する特定の CoCo 債の場合である.他に,金融. 256─261 頁) .その後,IASB の金融商品会計基. 機関および事業会社双方にて発行されるものと. 準の動きは,公正価値評価の適用範囲を絞る様. して永久劣後債10)があり多様性を増している.. 子はなく,かつ実証研究は公正価値会計が金融. さて,永久債,劣後債を資本に分類することに. 危機を増幅したと必ずしも支持しているわけで. 否定的でないと思われる見解がある.まず,中. は な い と い う(宮内[2015]257 頁) .ま た 宮. 塚(2015,83 頁)は,欧州 で の エ ネ ル ギー大. 内(2015,ⅸ頁)は,リスク感応的な自己資本. 手の事業会社の永久債の発行および三菱商事. 規制の枠組みも今のところ基本的に維持されて. (株)によって発行された 60 年満期劣後債を紹. おり,これらの動きの共通項を探ると,いずれ. 介している.会計上は債券である限り負債であ. も経済実態を反映し,リスク管理と親和的で,. り,ROE 低下を回避すべく永久債あるいは超. 金融機関のインセンティブも歪めていないこと. 長期の劣後債を発行している.三菱商事の 60. を指摘している.つまり,公正価値会計が危機. 年満期劣後債の場合は,負債調達と並行して自. 的な連鎖を作り出すひとつの要素であると警笛. 己株式の取得も行って ROE 低下の回避を行っ. が鳴らされている一方で,公正価値会計が金融. ている.また,永久債で償還時を会社消滅にし. 危機を必ずしももたらしているわけではないと. ている場合,あるいは超長期の劣後債の場合,. いう考えの対立があると思われる.. 会計上負債のままでいいのかという論点があ. そ の よ う な 状況 の 中 で,欧州金融機関 で. る.仮に負債のままだとしても,少なくとも中. は,条件付転換社債9)(Contingent Convertible. 塚(2015,87 頁)は,開示上 の 扱 い に 関 し て. Bond) (以降 CoCo 債と称する)の発行が増加. 課題が残っているとの指摘をしている.開示上. している.その背景には,バーゼルⅢへの対応. の課題とは,金融機関の開示は,各国の金融監. また,リーマンショックの後に,多額の公的資. 督当局が定めた自国の実状に合わせたディスク. 金が投入され(ベイルアウト)納税者に多くの. ロージャを行い,投資家にも評価上のポイント. . によれば,予想損失モデルは,発生損失モデルよ りも銀行業における貸倒引当金の期待信用損失が 反映され銀行の与信行動に反映され景気循環増幅 効果を緩和し,かつ銀行業の与信行動の効率化を 促すことを示唆している. 9)発行体の銀行の自己資本が一定以下になった ときに強制的に低い対価で株式に転換させられてし まう社債であり,投資者側は情報の非対称性の問題 を抱えている.また橋本(2005, 347─350 頁)は,既 存の CB と CoCos では税務上の利子控除の大きな違 いという課税上取り扱いの差を指摘している.. が明確になっているのに対して,事業会社が発 . 10)永久社債および永久劣後債は,会社の支払 能力を確保するために自己資本の充実を目的とし て発行されるものである. 「自己資本」の意義を法 的に次のように示している.永久社債は, 「その存 在が会社の倒産の引き金にならないことである. 」 (江頭[1995]257 頁)また,劣後債は, 「会社が倒 産した場合に,他の出資の支払いに劣後して弁済さ れるものであり,これにより他の債権者への支払い が確保されるものである」 (江頭[1995]257 頁) ..

(4) 106 (522). 横浜国際社会科学研究 第 24 巻第 4 号(2020 年 2 月). 行するハイブリッド証券に関しては,プレスリ. を行うのに十分な利益を計上できない場合,翌. リースでも有価証券報告書にても簡単な注記が. 年度以降に支払われるものである.また,負債. 記載されているだけで,投資家にとって評価の. 部分と資本部分の双方の性質を有する複合金融. ポイントが不明瞭になっていることである.. 商品である.負債部分は現金を引き渡す義務で. 川村(2010b,10 頁)は,IASB/FASB におい. あり,資本部分は,配当の形式で株式に対する. て資本を積極的に定義するものとして提唱され. リターンを受け取る権利である.. たもののひとつの永続性アプローチ(perpetual. IAS 第 32 号 28 項によれば,複合金融商品は,. approach)に 関 し て「永続的劣後性 を 備 え た. 負債部分と資本部分を分離して会計処理を行う. 発行金融商品には,リスク・バッファーとして. ことが求められている.. の役割を果たすという意味で資本としての役割 を期待できると」と述べている.. 4.商法・会社法の視点から. 会計上の論点としては,上記のように負債か. 社債権者 か ら 償還 を 請求 で き な い 永久社債. 資本の区分の問題がある.また,損失吸収の仕. に,日本法上(商法)との関係に関して次のよ. 組みの中で社債を普通株に転換するといった特. うな見解がある(江頭[1995]267 頁).「社債. 性がある場合の会計処理の問題がある.. に限らず,消費貸借契約一般に関して,債権者 側の元本請求権がない旨の約定ができるかにつ. 2. 5 小 括. いて,それを肯定する学説がある.しかも,そ. 永久国債および環境金融の手段として発行さ. の学説が指摘するように,当該債権が証券化さ. れる永久債だけではなく,昨今は,BIS 規制と. れている場合には,債権者は譲渡により融資を. の関係で発行されるものと通常の事業資金を使. 回収できるから,債権者の利益にも欠ける点が. 途とする永久債まで発行されている.永久債の. ない.したがって,実質的観点からも,社債権. 会計処理では, 負債と資本の区分の問題がある.. 者からの償還を請求できない永久社債を,日本. 負債の定義に従って,支払利息は経済的資源の. 法上無効と解すべき理由はない.」. 流出であるので負債とする考えがある一方で,. したがって,わが国において発行される永久. 国際会計基準では,一定の要件を充足した場合. 債は,元本請求権のないものも容認されている. (例えば,償還期限の定めがない場合,利息の 任意繰延が可能な場合, )負債の定義の例外と して資本として計上する.ただし,何をメルク. と解しえる. 5.論点整理. マールとすべきかの問題がある.あるいは永久. 5. 1 永久債および永久優先株式の発行事例. 利付優先株式のような複合金融商品において,. 2015 年頃 か ら,わ が 国 に お い て も 金融会社. どのような場合,負債と資本の区分処理が必要. だけでなく事業会社においても,永久債が発行. かなどの論点があることが確認された.. さ れ る よ う に なった.EOL「全文検索」に て,. 3.永久優先株式の概要. Key Word と し て「永久社債」 , 「永久劣後特約 付社債」決算日 2015 年 4 月 1 日 か ら 2019 年 3. 永久優先株式は,無期限に固定配当を支払う. 月 31 日にて検索を行った結果から,事業会社,. ものである.また,特定の買戻日はないが,発. 金融機関が発行している事例を表 1 にて示した.. 行会社は,目論見書に記載されている特定の条. DMG 森精機(株)は,発行した「無担保永久. 件のもとで株式を買い戻す権利(コール条項). 社債」に 関 し て,連結財務諸表上 IFRS を 適用. を有する.永久優先株式の例としては,累積型. しており,償還期限の定めがなく,利息の任意. 永久優先株式があげられる.非償還型で,配当. 繰延が可能などから, 「資本」計上にて会計処理.

(5) 金融商品の負債と資本の区分(山田). (523) 107. 表 1 わが国での永久債の発行事例 発行会社. 発行年 金融商品概要. 無担保永久 DMG 森精機 2016 年 社債(劣後 (株) 特約付). 金額. 資金使途. 100 億円. AG の株式 取得に伴い 調達した有 利子負債の 弁済に充当. 会計基準. IFRS. 米ドル建 2,750 百万 ソフトバンク ノンコール 一般事業資金 2017 年 IFRS 米ドル グループ (株) に充当 6 年永久劣後 (3,113 億円) 特約付社債. 米ドル建 1,750 百万 ソフトバンク ノンコール 一般事業資金 2017 年 米ドル IFRS グループ (株) 10 年永久劣後 に充当 (1,981 億円) 特約付社債 (株)関西 第 5 回無担保 アーバン銀 2006 年 永久社債 50 億円 行(現関西 (劣後特約付) みらい銀行). 会計処理. 利息支払義務. 元本に対す 元本に対す る償還義務 る償還期限. 資本. 有,ただし, 任意償還が 任意繰延が 可能(一部 定め無し 可能 は不可). 資本(その 他の資本性 金融商品). 有(金利の ステップ アップ有), 早期償還 ただし,利 払繰延条項 付. 定め無し. 資本(その 他の資本性 金融商品). 有(金利の ステップ アップ有), 早期償還 ただし,利 払繰延条項 付. 定め無し. 有(金利の 日本基準 (金融負債) ステップ アップ有). 定め無し. (筆者作成). を行っている.具体的には,支払利息に関して. る権利を与えるものとして,発行体による会計. 損益計算を経由せず,利益剰余金の処分にて行っ. 処理は,金融負債であるとし,保有者側は資産. ている.また, ソフトバンクグループ (株)によっ. 計上を行うものとされている.ただし,負債の. て発行された「米ドル建ノンコール永久劣後特. 定義の例外として,固定対固定の原則とプッタ. 約付社債」も資本として計上されている.また,. ブル金融商品があげられる.固定対固定の原則. 永久優先株式 に 関 し て,EOL で「全文検索」. は,IAS 第 32 号 22 項にて規定されているもの. にて,Key Word として「永久優先株式」決算. で,一定額の現金又はその他の金融商品との交. 日 2015 年 4 月 1 日から 2019 年 3 月 1 日にて検. 換に企業自らが発行する一定数の持分有価証券. 索を行ったところ発行例はない.仮に,発行さ. を引き渡して決済する契約は,債務ではなく持. れる場合の会計処理は,法的形式にもとづいて. 分であると規定されており,ただしすべてが資. 資本に分類されると思われる.. 本となるわけではなく一定の条件がある.その 条件とは,一定の金額に対して一定の株式数を. 5. 2 IFRS による会計処理. 割り当てることが予め決まっている場合という. IAS 第 32 号改訂 AG6 項 に よ れ ば,永久債,. 条件である.また,プッタブル金融商品は,特. 債務証書(debenture)お よ び 銀行資本手形. 定の金融商品に関して,一定の条件を満たせ. (capital note)といった永久負債証券は,債券. ば,資本として分類される.金融負債の定義を. の保有者に対して,永続的な支払利息を受領す. 満 た す 金融商品 が IAS 第 32 号 16A 項 お よ び.

(6) 108 (524). 横浜国際社会科学研究 第 24 巻第 4 号(2020 年 2 月). 16B 項11)の 特徴 と条件を満たした場合,金融. よって,当該金融商品はすべて資本として分類. 商品は資本性金融商品として分類されるもので. される.発行体は普通配当を支払うか支払わな. ある.また,IAS 第 32 号 16C 項および 16D 項. いかの裁量権を保有している.発行体は,配当. の特徴と条件を満たした場合,清算時にのみ企. を支払うことを選択し,金利支払いを行う可能. 業の純資産の比例的取分を他の当事者に引き渡. 性が高いとしても,その高い蓋然性をもって金. す義務を企業に課す金融商品を資本性金融商品. 融負債とすることは不十分である.また,コー. として分類する.. ル・オプションを行使する可能性が高い.ただ. また,IAS 第 32 号の下で資本として分類さ. し,その可能性自体をもって金融負債とするに. れるための要件として,例えば現金のような財. は不十分であることが示されている12).よって. 務的資産を引き渡す契約上の義務を負ってはな. 以下の論点がある.. らないことがある.さもなければ IAS 第 32 号. 論点 1 として,償還期限の定めがなく,利息. 17 項に従って金融負債として分類されること. の任意繰延が可能という根拠で永久債を資本計. になる.よって,事例のように償還の期限に定. 上すべきなのかという点とステップアップ条項. めがないおよび利息の任意繰延条項があること. および配当促進条項が付加されている場合,資. などから,実際の会計処理において永久債に関. 本計上されうるかである.. して資本計上を行っている.. 論点 2 として,永久商品の中には,前述のよ. さらに,永久商品の中には,発行体が買入償. うに永久利付優先株式があり,負債と資本の双. 還(コール・オプション)でき,またステップ. 方の性質を有する金融商品である.IAS 第 32. アップ条項および配当促進条項(普通株式につ. 号 28 項によれば,複合金融商品は,負債と資. いてのみ,コール日前後の両方で金利が支払わ. 本を分離して会計処理することが求められてい. れるもの)が付加されている場合がある.当該. る.また,負債の公正価値は,永久に続く強制. 永久商品 は,現金 またはその他の金融資産を. 配当を市場金利で割り引いた現在価値で算定. 直接または間接的な債務として負っていない.. し,資本部分は金融商品全体の公正価値から計 算された負債部分の金額を控除した金額とする. . 11)IAS 第 32 号 16A 項,16B 項 は, 以 下(1)~ (6)を参照. (1)企業の清算時において,企業の純資産の比 例的(pro rata share)な持分に関する請求権を有 する.(Para. 16A(a)) (2)すべての他のクラスに劣後する金融商品の クラスに属する.(Para. 16A(b)) (3)すべての他のクラスに劣後する金融商品の クラスに属するすべての金融商品が,同一の性質 (identical feature)を有する.(Para. 16A(c)) (4)発行体にとって買戻し(repurchase)あるい は償還(redeem)を行う契約上の義務を除いて,そ の他の企業に対して,現金またはその他の資産にて 交付する義務をもたない. (Para. 16A(d) ) (5)当該金融商品の有効期間を通して全期間に おける期待されるキャシュフローは,実質的に年 度損益等に基づくものである.(Para. 16A(e)) (6)自己資本金融商品としてのプッタブル金融 商品は,実質的に年度損益等に基づくその他の金 融商品また契約が存在しない(Para. 16B)).. ものである.区分処理を行うべきかという問題 がある. IASB DP[2018] 「持分の性格を有する金融商 品」で は, 「時点特性(timing feature) 」 , 「金額 特性(amount feature) 」という審議会によって 推奨 さ れ た ア プ ローチ(The Board’s preferred approach)が示されている.以下のいずれか(ま たは両方)を含む金融商品が金融負債に分類さ れる(IN10) . (a)清算以外の特定の時点で現金または他の金 融資産を移転する不可避の契約上の義務 (b)企業 の 経済的資源 か ら 独立 し た 金額 に 係る不可避の契約上の義務 . 12) 『国際財務報告基準(IFRS)詳細 iGAAP2018 [第 3 巻] 』第一法規,168─169 頁参照..

(7) 金融商品の負債と資本の区分(山田). (525) 109. 表 2 金融負債と資本性金融商品の分類のアプローチ 「金額」の特性に 基づく区分. 企業 の 利用可能 な 経済的資源 から独立した金額に関する義 務 が 存在 す る(契約上 の 固定 金額又は金利その他の金融変 数に基づく金額など). 企業 の 利用可能 な 経済的資源 から独立した金額に関し何の 義務も存在しない(自社の株 価に連動する金額など). 清算時以外 の 特定 の 時点 で 現 金またはその他の金融資産を 移転する義務 が あ る(例:ス ケジュールに則った支払い). 負債(例:シンプルな社債). 負債(例:公正価値 で 償還可 能な株式). 清算時以外 の 特定 の 時点 で 現 金またはその他の金融資産を 移転する何の義務もない(例: 企業の自己株式による決済). 負債(例:固定金額 の 現金 に その価値が等しくなる,変動 数の自己株式を引き渡す義務 を伴う社債). 資本(例:普通株式). 「時点」の特性に 基づく区分. (IASB[2018]DP IN11 を引用). (a)の 要件 は,時期 を 扱って お り, (b)の. した義務が存在する場合,金融商品は負債とし. 要件は,金額を扱っている.つまり(a) , (b). て計上される.一方,IAS 第 32 号では,そう. いずれも含まない請求権を資本とするものであ. した義務があったとしても企業が清算時点まで. り, ガンマ・アプローチと称されるものである.. 支払いを無期限に繰り延べる権利を有する(例. 提案された分類によってもたらされる情報. えば,ステップアップ配当条項を有するコーラ. は,次の財務的ポジションと業績の評価にレリ. ブ ル 優先株式 が 相当 す る(IASB[2018]DP,. バントである.時点測定によれば,企業が清算. Para. 8. 9)場合には,資本性金融商品として分. 時以外の特定の時期において,義務を履行する. 類される.. ためのキャッシュあるいはキャッシュ以外の資. ま た,EFRAG 事務局 ワーキ ン グ ペーパー. 産を有するかどうかの評価に貢献し,また,金. ( secretariat working paper)[ 2019]「資 本 の. 額測定によれば,貸借対照表のソルベンシーお. 性質 を 有 す る 金融商品─初期段階分析(IASB. よびリターンの評価に貢献する(IN12) .以下. 討議資料 の 潜在的 な 影響)─」で は,IASB 討. 表 2 を参照.. 議資料[2018]に よって 示 さ れ た ア プ ローチ. IASB[2018]DP で は,IAS 第 32 号 の 規定. による潜在的な変化の分析がなされている(p.. の多くを引き継ぐことを前提としているが,不. 12).累積的繰延性質を伴う永久債(perpetual. 整合の可能性も出てくる.累積型永久優先株式. bond with cumulative deferral feature) は,. など,固定額かつ累積型の配当の支払義務があ. 「金額測定」の適用に従うと資本から負債に分. る 金融商品 は,IASB[2018]DP で は 金融負債. 類される可能性があることを取り上げている. に分類される.審議会で推奨されたアプローチ. ( para. 3. 4( a) ( i)). ま た,EFRAG[ 2019]. によれば企業の利用可能な経済的資源から独立. での累積的繰延性質を有する永久債の発行に関.

(8) 110 (526). 横浜国際社会科学研究 第 24 巻第 4 号(2020 年 2 月). する分類変更の潜在的影響における分析では,. 関しても,資本ではなく金融負債として分類さ. 「優先株,強制償還証券 と いった 金融商品 を 負. れる可能性があり,IAS 第 32 号による会計処. 債から資本に分類変更した後の米国会計基準お. 理と整合性がとれなくなることが確認された.. よび IAS 第 32 号に関連する学術研究がある13).. また,日本の会計基準では,永久債に関しては,. 同じような影響が累積的繰延性質を有する永久. 金融負債として分類される.. 債の発行においても起こる(para. 4. 33) . 」とさ. 6.検 討. れている.. 多様な永久債に関して,契約上の元本返済義 5. 3 日本会計基準による会計処理. 務と利息支払義務との組み合わせを表 3 にて整. わが国においては,社債である永久債は金融. 理した.. 負債として扱われる. (企業会計基準第 10 号). 元本返済義務に関しては,通常期限の定めは. 表 1 で示した関西アーバン銀行(現関西みらい. ないが,発行側に早期償還オプションがついて. 銀行)によって発行された永久社債は,日本基. いることが多い.元本返済義務が有りの場合,. 準によって会計処理されているので金融負債と. 形式上永久債として称されても,実質上,永久. して計上される.. 債ではないので,日本会計基準でも IFRS にお いても金融負債となる.元本返済義務に定めが. 5. 4 小 括. ないことあるいは利息支払義務において利払い. 永久商品 と 称 さ れる永久債および永久優先. 停止特約条項が付加されている場合,IFRS で. 株式に関して,各会計基準の変遷を概観した.. は資本計上となる可能性があると思われる.さ. IFRS では,永久債に関して負債の例外として. らに,債務免除特約が付いている場合もある.. 償還期限の定めがないこと,利息の任意繰延が. IFRS 適用会社では,償還期限の定めがないこ. 可能などの資本要件を充足することによって資. と,また,利息の任意繰延等を根拠に資本計上. 本として分類されている.また,永久優先株式. を行っているが,債務免除特約を履行しない限. に関しては,負債部分と資本部分を分離するこ. り,元本返済義務が消滅したわけではない.ま. とが求められているが,2018 年に公表された. た,利払特約を履行しない限り,利息支払義務. 討議資料では,審議会で推奨されたアプローチ. が消滅したわけではない.よって,債務免除特. によれば,永久債は資本ではなく負債として分. 約を履行した上で,はじめて資本計上が可能と. 類される可能性がある.また,永久優先株式に. 考えうる. また,償還(コール)条項とステップアップ. . 13)前者は,米国会計基準において強制償還優 先株式の会計処理を資本から負債に再分類した結 果,これらの金融商品の発行が減少したことを示し たものである(Levi & Segal[2015] ) .後者は,オ ランダにおける優先株式に係る IAS 第 32 号の影響 に関して論じたものであり,多くの優先株が資本 から負債に再分類された結果,IAS 第 32 号の影響 を受ける多くの企業が,優先株式を買い戻すか資 本として分類されるよう金融商品の性質を変更し ている.結論として金融商品の使用を減少させる だけではなく,資本構成を変えることとなったこ とを示唆したものである(De Jong, A., Rosellon, M. & Verwijmeren,P.[2006] ) .. 条項が付加されているハイブリッド証券があ る.また,多様な償還条項とステップアップ条 項の組み合わせがあり,償還期間があり,特定 の償還条項の期日日以降一定期間ステップアッ プする組み合わせと特定の償還期日以降無期限 にステップアップする場合がある.後者の場合, 永久社債に相当し資本として分類されるが,そ の根拠は,利息の支払いを配当と同質のものと して結びつけることからと考えられる.前述の 論点 1 および論点 2 に関して会計主体論,資本 概念,負債の定義の観点から以下検討を行う..

(9) 金融商品の負債と資本の区分(山田). (527) 111. 表 3 永久債発行体における元本部分の会計処理 元本返済義務  . 利息支払義務. 有,償還期限の定め無. 発行側に償還オプション無. . 有,償還期限の定め有 (満期償還). 発行側に償還オプション有(早 形式上永久債 だ が,元本返済 期償還など),また,債務免除 期限 が 定 め ら れ て い る 場合, 特約を付加する場合も有る. 実質上永久債ではない.. 利息支払(固定)義務有 (利払い停止特約条項有り). 金融負債(IFRS では資本計上) 金融負債(IFRS では資本計上). 金融負債. 利息支払(変動)義務有 (利払い停止特約条項有り) 変動とは,利息が利益に連 動する場合,ステップアッ プ,ステップダウンするな ど.. 金融負債(IFRS では資本計上) 金融負債(IFRS では資本計上). 金融負債. 金融負債(IFRS では資本計上) 金融負債(IFRS では資本計上). 金融負債. 利息支払義務無 (筆者作成). まず,会計主体論の観点から利子・配当観に. する同一持分所有者グループのメンバ―として. 関して資本主説と企業主体説を対峙させ,永久. 考えることは困難であるとの指摘がある(酒井. 債の会計処理を考察する.資本主説では所有者. [1992]33 頁).. と債権者を明確に区別するため,負債と資本の. 現行企業会計制度上の資本概念および利益. 区別を明確に行う必要がある.一方,企業主体. 概念を合理的に説明できるのは,資本主説の. 説では,企業と所有者を完全に独立した存在と. 立場であるとの見解がある 14).また,現行会. みなす理論であり,債権者に支払うべき利子コ. 計制度は,資本主説である株主を財務諸表利. ストは,利益の分配としての配当に近い性格を. 用者として予定した株主主体論─事実的帰属. 有しているものである.しかしながら,利子・ 配当を同一視することには異論がある. 利子,配当を同一視することの問題点として 次の点が挙げられている.企業利益が不十分で あるときあるいは欠損が生じた期間である場 合,社債権者になされる利子支払いの性質を考 えるとき,その利子支払いは普通株主の投資持 分の減少と言わざるをえず,故に普通株主と社 債権者を株式会社に対して通常の利害関係を有. . 14)資本主理論に基づいて会計を行うことが最 も合理的あるいは便宜的であるという根拠に関し て,以下のように示されている.法人税を納付す る課税所得計算が資本主理論に立脚していること. また,会社法に規制される株主総会には,債権者 は参加できないこと.さらに,支払利息や法人税 等は,その儲けや損のマイナス要素として取り扱 わ れ,一方,資本主 に 対 し て 支払 わ れ る 配当 は, そうした計算上のマイナス要素として取り扱われ ないことをあげている(齋藤[2016]33─34 頁) ..

(10) 112 (528). 横浜国際社会科学研究 第 24 巻第 4 号(2020 年 2 月). 説15)をとるとの見解がある16).. 帰属する成果とその他の主体に帰属する成果を. さらに,今日の企業会計は,米国会計基準も. 区分して利益計算を行う必要がある.よって,. わが国の会計基準も資本主説に則っている.永. リスク負担に着目する必要がある.. 久債 を 資本計上 し,支払 い 利子 を 利益剰余金. 会計上永久債は,債務免除特約で,普通株式. の処分として会計処理を行うことは,企業主体. に転換することを履行した場合のみ該当すると. 説に則らなければ理論的には整合がとれない.. 考えれば, 「永続的リスクの負担者」という概. よって,資本主説に依拠するならば,永久債の. 念から資本には該当しないと解しえる.また,. 支払い利子は費用計上にて処理すべきと考え. 永久優先株式に関しても,投資家はリスクを永. る.. 遠に負担するわけではないので資本ではなく金. 次に,資本概念の観点(永続的リスクの負担. 融負債として分類されると解される.. の有無の視点)からであるが, 「永続的リスク. さらに,資本概念の観点からであるが,負債. 負担」という考え方の下に,普通株式,優先株. 確定アプローチから永久金融商品の会計処理を. 式,取得条項付株式を資本とする見解がある17). 行う場合,複雑性という限界がある.および,. (福島・吉岡[2010]17 頁) .本稿では,形式基. 金融商品の区分との整合性との問題がある.金. 準ではなく経済的実質で,発行体の会計処理を. 融商品会計基準 は,情報提供次元18)と 資本利. 行うことを支持するので, 「永続的リスク負担」. 益計算次元19)の両方から検討されており, 「混. という考え方に賛同する.投資家にとって異な. 合アプローチ」,「二段階アプローチ」,および. るリスク負担は異なるリターンであり,企業活. 「狭義の資本確定アプローチ」のように資本の. 動に必要な資金の提供者は,企業の業績に直接. 確定 が 強調 さ れ る(徳賀[2014]249 頁).金. 連動するかによって二つの主体に大別される. 融商品の区分と整合性を回復するためには,二. (米山[2008]228 頁) .ひとつは,企業の業績. 段階 ア プ ローチ の よ う に 一旦,負債確定 ア プ. に直接連動する典型例として普通株式があげら. ローチを採用してから資本確定アプローチを適. れ,残余請求権者である.もうひとつは,企業. 用するか最初から資本を積極的に定義するかど. の業績とは間接的に連動する典型例として債権. ちらかである.前者は,貸借対照表と損益計算. 者があげられる.したがって,残余請求権者に. 書のために二つの異なるパースペクティブを利 用するので非論理的である20).資本利益計算を. . 15)「株主主体論─事実的主体説は,会計主体 たる株主に事実上帰属する資本と利益の計算を目 指すものである. 」 (西村[1986b]36 頁)と示されて いる. 16)現行会計制度の会計主体論の根拠について, 株主向けと債権者向けの二つの財務指標を作成す ることが実務上困難であるという消極的な理由と 企業の最終的な危険負担者かつ最終的な受益者で ある株主にとって株主に帰属する利益を知ること は 重要 で あ る こ と を あ げ て い る(西村[1986b] 46─47 頁). 17)永続的リスク負担者に関する説明として, 次 の 三 つ が あ げ ら れ て い る(福島・吉岡[2010] 17 頁).第一は,資本の拠出者が永続的なリスク負 担を行っていること.第二は,その得られるリター ンは当然に他の請求権者に劣後すること.第三は, 企業は償還をもとめられないことから,損失発生時 に損失を吸収するものである.. 優先させるならば,資本確定アプローチが採用 されるべきと考える.また,資本利益計算を行 う上で資本を基礎として計算される利益が純化 される必要がある.ただし,負債確定アプロー . 18)金融・財務活動の高度化ないし多様化に伴 う実態・リスク開示要求に対応する貸借対照表の 情報提供(財務実態・リ ス ク の 適正開示)を 重視 する貸借対照表の考え方を指す. (石川[2014]50 ─53 頁) 19)収支的期間損益計算に基礎をおき,測定の アンカーを現金収支とする貸借対象表の考え方を 指す. (石川[2014]50─53 頁) 20)負債確定アプローチと資本確定アプローチ を併用する考えはあるが,負債の定義に例外を設 ける必要がある為複雑性が増すなどの問題がある..

(11) 金融商品の負債と資本の区分(山田). (529) 113. チでは,資本を最終的なリスク負担者に帰属す. 本の定義および負債の定義の観点から検討し. る残余持分として純化することは困難である.. た.会計主体論の観点から,今日の企業会計は. よって,資本を積極的に定義するアプローチを. 資本主説に依拠しており,永久債を負債として. とり,資本概念を再定義する視点から検討を試. 分類し,支払利息を費用化すべきと帰結した.. みる.. また,資本の範囲の精緻化を行い,資本を最終. 資本を積極的に定義するアプローチとして. 的なリスク負担者に帰属する残余持分として純. は,資産から負債を控除した残余とせず,株式. 化する点から負債確定アプローチでは困難であ. リスクを項目とする考え,最劣後請求権者とす. り,資本を積極的に定義することを試みた.再. る 考 え,絶対的残余(absolute residual)を 持. 定義された資本に則れば,永久債は,元本返済. 分とし,普通株主と参加型優先株主の請求権を. の定めがない場合でも,あるいは利息支払い義. 持分とする考え,損失を吸収する請求権とする. 務において利払停止特約が付加されていたとし. 考えが検討されてきた.最劣後請求権者とする. ても資本計上ではなく負債として分類すべきと. 考えには,多くの金融商品が負債として計上さ. 帰結した.また,永久優先株式に関しても形式. れ,再測定を行う必要があるなどの問題があっ. 上は資本ではあるものの,例えば累積型永久優. た.また,損失を吸収する請求権とする考えも. 先株式のように固定額かつ累積型の配当の支払. 損失吸収の概念が曖昧であったという問題が. いの義務があるような場合,経済的実質は,資. あった.次に,前述した福島・吉岡(2010,17. 本ではない.よって,金融負債として分類すべ. 頁)が提唱する「永続的なリスクの負担者」を. きと帰結した.加えて,負債の定義の観点から,. 資本として考えた場合,普通株式,参加型優先. 永久債を資本として分類する場合の問題点をあ. 株式および取得条項付株式が資本となる.その. げた.. 考え方を負債と資本の区分のメルクマールとし た場合,永久債および永久優先株式は資本には 該当しないと解しえる. 加えて,負債の定義の観点からであるが,永 久債 は,元本返済義務 と 利息 の 支払義務 の ど ちらか一方の義務があるとの解釈がある(池田 [2009]194 頁) .利払停止 あ る い は 債務免除 を 行わない限り,いずれの場合も支払義務があり, 経済的資源の引き渡しがあるので負債計上とな ると考える.ただし,IFRS を適用した場合,一 定の要件を充足すると資本に分類される.その 結果,負債の定義の例外が発生し,複雑性が増 してしまう.また,結果としてさまざまな自己 資本数値が算出される可能性があると思われる. 7.おわりに 金融商品 の 中 の 永久金融商品 に 焦点 を あ て て,負債と資本の区分のあり方という観点から 探求を行った.また,会計主体論,負債確定ア プローチ,資本確定アプローチ,資本概念,資. 参考文献 Berk, J.and P. DeMarzo,[2017]Corporate Finance fourth edition. Pearson Education, Inc.(久 保田敬一,芹田敏夫,竹原均,徳永俊史訳 [2011] 『コーポレートファイナンス入門編第 2 版』ピアソン桐原 . De Jong,A.,Rosellon,M. & Verwijmern, P., [2006]“The Economic Consequence of IFRS: The Impact of IAS32 on Preference Shares in the Netherlands” Accounting in Europe,Vol. 3,pp. 169─185. EFRAG [2019] Financial Instruments with characteristics of equity EFRAG Secretariat Working Paper Early-Stage Analysis Potential Effects of the IASB Discussion Paper, February. IAS32[2008]Financial Instruments: Presentation. IASB[2018]Financial Instruments with Characteristics of Equity,Discussion Paper June. Levi,S. and B. Segal,[2015]“The impact debtequity reporting classification on firm’s decision to issue Hybrid securities.” Europe Accounting Review,Vol. 24,pp. 801─822. 青木崇[2014]「IFRS における資本区分の検討─.

(12) 114 (530). 横浜国際社会科学研究 第 24 巻第 4 号(2020 年 2 月). ドイツ会計制度との比較において─」『中央 学院大学商経論叢』第 29 巻第 1 号(9 月), 29─42 頁. 家田崇[2010]「種類株式に関する定款記載事項」 『新世代法政策学研究』第 9 巻,337─357 頁. 池田幸典[2009]「永久債 の 会計処理」笠井昭次 先生古希記念論作編集研修委員会編『笠井昭 次先生古希記念論文集』慶応義塾大学出版会, 189─200 頁. 石川純治[2014]『揺れる現代会計』日本評論社. 石田万由里[2015] 「金融商品の会計的特質─「負 債と持分の区分」問題の視点から─」明治大 学博士学位請求論文. 江頭憲治朗[1995]「永久社債 に 関 す る 諸問題」 小室直人・本間輝雄・古瀬村邦夫編集代表『企 業と法(下)』有斐閣,254─271 頁. 風戸正行・山田哲也[2017] 「CoCo 債市場 か ら 観 測されるベイルイン確率」 『IMES Discussion Paper』 (日本銀行金融研究所)No. 2017─J─11 (7 月) ,1─30 頁. 川村義則[2004a] 「負債と資本の区分問題の諸相」 『IMES Discussion Paper』(日本銀行金融研 究所)No. 2004─J─11(4 月),1─34 頁. ────[2004b]「負債 と 資本 の 区分表示 と 資 本利益計算」『季刊 企業 と 法創造』(早稲田 大学<企業と法創造>)総合研究所)通巻第 3 号(11 月),141─147 頁. ────[2010a] 「企業会計上の資本概念の再考」 『金融研究』第 29 巻第 3 号,175─192 頁. ────[2010b] 「企業会計上の資本概念の再考」 『IMES Discussion paper』(日本銀行金融研 究所)No. 2010─J─4(2 月),1─19 頁. 桑原正行[2008]『ア メ リ カ 会計理論発達史─資 本主理論と近代会計学の成立─』中央経済社. 齋藤真哉[2016] 『現代会計』放送大学教育振興 会 NHK 出版 酒井治郎[1992]『会計主体 と 資本会計』中央経 済社. 高須悠介[2015]「銀行 の 貸倒引当金処理 に 関 す る実証的考察」一橋大学商学研究科博士課程 単位修得論文. 徳賀芳弘[2014]「負債と資本の区分─なぜ解決. 困難 な の か ─」 『季刊 会計基準』税務研究 会出版局第 44 号(3 月) ,247─250 頁. 中塚富士雄[2015] 「ハイブリッド証券と自社株 買 い が 変 え る 資本政策」『証券 ア ナ リ ス ト ジャーナ ル』第 53 巻 第 12 号(12 月) ,80 ─ 89 頁. 西村幹仁[1986a] 「法人所得税の会計上の性格と 会計主体論(1) 『彦根論叢』第 237 号(3 月) 」 , 65─80 頁. ────[1986b] 「法人所得税 の 会計上 の 性格 と会計主体論(2) 」 『彦根論叢』第 238 号(6 月) ,33─47 頁. 橋本慎一郎[2005] 「Time Value と Bet ─法人税 をめぐる金融商品の Tax Planning」中里実・ 神田秀樹編著『ビジネス・タックス─企業税 制の理論と実務』有斐閣,337─352 頁. ────[2010] 「企業ファイナンスへの課税の 影響」金子宏編著『租税法 の 発展』有斐閣, 523─542 頁. PwC あらた監査法人編[2015] 『金融機関のため の IFRS 金融商品会計入門』中央経済社. 引地夏奈子[2013] 「貸借対照表貸方区分 に 関 す る一考察─新たな貸方区分によるわが国会計 へ の 影響」 『商学研究』 (関西学院大学)第 61 巻 2 号(10 月) ,85─103 頁. 福 島 隆・吉 岡 佐 和[2010]「企 業 会 計 上 の 資 本 概念 の 再構築 に 向 け た 一考察─関連領域 に お け る 資本概念 を 踏 ま え た 試論─」 『IMES Discussion Paper Series』 (日 本 銀 行 金 融 研 究所) ,No.2010─J─3(2 月) ,1─33 頁. 藤井則彦[1997] 『日本 の 会計 と 国際会計(増補 第 3 版) 』中央経済社. 宮内惇史[2015] 『金融危機 と バーゼ ル 規制 の 経 済学』勁草書房. 米山正樹[2008] 「第 7 章 資本会計に関する基本 的 な 視座」 『会計規準 の 整合性分析』中央経 済社,219─254 頁. [や ま だ か ず ひ ろ 横浜国立大学大学院国際社 会科学府博士課程後期].

(13)

参照

関連したドキュメント

と,②旧債務者と引受人の間の契約による方法(415 条)が認められている。.. 1) ①引受人と債権者の間の契約による場合,旧債務者は

耐久消費 家計資産 耐久消費 金融資産 宅地資産 住宅資産 財等資産

株式会社マウスコンピューター(代表取締役社⻑︓⼩松永門、本社︓東京都千代⽥区、以下マウスコンピュータ

Part V proves that the functor cat : glCW −→ Flow from the category of glob- ular CW-complexes to that of flows induces an equivalence of categories from the localization glCW[ SH −1

注意: Dell Factory Image Restore を使用す ると、ハードディスクドライブのすべてのデ

問55 当社は、商品の納品の都度、取引先に納品書を交付しており、そこには、当社の名称、商

点から見たときに、 債務者に、 複数債権者の有する債権額を考慮することなく弁済することを可能にしているものとしては、

基本的金融サービスへのアクセスに問題が生じている状態を、英語では financial exclusion 、その解消を financial