• 検索結果がありません。

巻頭言(立命館大学人文科学研究所紀要 114号)

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "巻頭言(立命館大学人文科学研究所紀要 114号)"

Copied!
2
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

1 〈小特集〉「暴力からの人間存在の回復」研究会ワークショップ

巻頭言

〈小特集〉

「暴力からの人間存在の回復」研究会ワークショップ

芸術哲学の可能性

―シェリング・ホワイトヘッド・メルロ=ポンティ

本特集は 2017 年 3 月 5 日、立命館大学衣笠キャンパスで行われた、立命 館大学人文科学研究所重点研究プロジェクト「間文化現象学と人間性の回 復」の「暴力からの人間存在の回復」研究会主催若手ワークショップ「芸術 哲学の可能性」で発表された論考によって構成されている。このワーク ショップのコーディネーターを務めた有村直輝氏(立命館大学文学研究科博 士後期課程)に感謝したい。 本ワークショップでは、哲学と芸術の接点をめぐって、佐野泰之氏(京都 大学)、加藤紫苑氏(京都大学)、有村直輝氏が発表を行い、それぞれの論点 から、哲学から芸術へのアプローチのなかで、哲学がその可能性をどのよう に拡大することができるのかが論じられた。 佐野氏は、20 世紀半ばにフランスで活躍したメルロ=ポンティによるポー ル・ヴァレリーの読解の形跡を丹念に追い、そのことを通じて、メルロ=ポ ンティの哲学における文学の意義を明らかにされた。ヴァレリーの「声」や 「錯綜体」(implexe)という概念についてのメルロ=ポンティの解釈を通じ て、言語と身体、言語と存在の問題が「形而上学」と呼ばれうる内容を秘め ていることを示された。 加藤氏は、18 世紀末から 19 世紀なかばにかけて活躍したドイツ観念論の 哲学者フリードリッヒ・シェリングの「芸術哲学」を基本に置きつつ、リュ ディガー・ブプナーの『美的経験』やアラン・バディウの『哲学宣言』、ま た小田部胤久の『西洋美学史』について言及され、芸術に真理の場を見る シェリングに対して、芸術と哲学の批判的距離を保とうとする試みを紹介さ

(2)

2 立命館大学人文科学研究所紀要(114号) れた。そして真理問題をめぐる芸術と哲学の関係について中立的な立場から 歴史的考察を行うことの必要性を主張された。 有村氏は 20 世紀前半の哲学者ホワイトヘッドの「芸術」概念を論じられ、 ホワイトヘッドにおいて美の経験と真理との関係が人間精神の「治癒機能」 を持つものとして考えられていることを明らかにされた。芸術の陶酔による 麻痺や混乱といった「精神病理的」機能に対して、真の宇宙の調和を私たち に感じさせる芸術の経験は、自身の経験を新しく創造する経験でもあること を論じられた。 これらの研究を通じて、哲学が芸術に真理の実現の機能を認め、芸術を通 じて哲学の役割を実現・拡張していくことの可能性と同時に、哲学と芸術と の批判的で適正な距離のあり方についての問いもまた明らかになったよう に思われる。哲学と芸術という、人文学において人間精神の最高峰を極める ような領域が、それぞれに交差しながら、その領域の境界について思索する ことをうながしていることが示されたと言えよう。 2017年度にはもうひとつのワークショップ「実存思想の可能性」も行われ た(2017 年 10 月 13 日)。このように、若手研究者の主催による充実した研 究ワークショップが連続的に開催されていることは、本学における若手研究 の活性化として本研究会の大きな成果であると言うことができる。 文学部教授 加國 尚志

参照

関連したドキュメント

Although he was the owner of a geigi shop (Okiya) Yamatoya in Minami-ku, Osaka (currently Chuo-ku), he and his wife Kimi Sakaguchi, established the five-year. “Yamatoya Geigi

【 大学共 同研究 】 【個人特 別研究 】 【受託 研究】 【学 外共同 研究】 【寄 付研究 】.

社会学文献講読・文献研究(英) A・B 社会心理学文献講義/研究(英) A・B 文化人類学・民俗学文献講義/研究(英)

山階鳥類研究所 研究員 山崎 剛史 立教大学 教授 上田 恵介 東京大学総合研究博物館 助教 松原 始 動物研究部脊椎動物研究グループ 研究主幹 篠原

本研究科は、本学の基本理念のもとに高度な言語コミュニケーション能力を備え、建学

本研究科は、本学の基本理念のもとに高度な言語コミュニケーション能力を備え、建学

本研究科は、本学の基本理念のもとに高度な言語コミュニケーション能力を備え、建学

災害復興制度を研究しようという、復興を扱う研究所と思われる方も何人かおっしゃ