長野大学紀要 第14巻第2号 124-135頁 1992
会計デ ィス クロー ジャー制度の展望
A Overview of Accounting Disclosures
1
.序
会計デ ィス クロー ジャーは、本来株主,債権者, 投資者その他企業利害関係者の意思決定に役立つ ため にお こなわれる。 ここに情報の流れか ら見 る と情報 を発信す る側面 と受信す る側面がある。会 計デ ィス クロー ジャーに関 して発信す る側面 (企 莱)か らは社会、経済的活動についてある種 の成 果 を自己の見解 (主観的、客観的)に もとづ いて、 受信す る側面 (企業利害関係者)に伝達す ること であ る。 会 計デ ィス クロー ジャーにおいて企業の社会 ・ 経済活動 をどの範囲 まで どのように把捉す るか と い うことは重要 な意義がある。 ここでは狭義に企 業の経営活動 を把握 し、無数に存在す る企業情報 の中か ら、基本的に必要 なデー ター を選別 し、解 釈 し、整然 と関係者に対 しその意味 と価値 を報告、 伝達す るものである。 しか しディスクロー ジャーの語義については、 閉された、あるいは隠れた事実 を開示す るとい う 意味が込め られている。今 日ではある主体が 自ら 保有す る情報 を一般に開示す る意味に解 されてい るが、 しか しその背景には進んで情報 を開示す る 意図はな く何 らかの力によって開示 しなければな らない意味が含 まれているO 語義的にはディスクロー ジャーは 「ある主体が、 その行動 によってインパ ク トを受ける利害関係者 に対 して、主体 の行動 に関す る事実や状態 を社会 的に開示 し、主体 と利害関係者間の、 もしくは利 害関係者相互間の コンフ リク トを解消 し、そのア カ ウ ン タ ビ リテ ィー を まっ と うす るこ とで あ る。」(1)と定義 される。 デ ィス クロー ジャー を構成す る要因 として大 き くは情報の存在、情報 を提供す る開示主体 (発信 主体 )、情報 を受取 る主体 (受信主体)、情報か ら伊
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与 え られ るインパ ク トなどで\ある。発信側か ら開 示 された情報は受信側の判断資料 とな り、受信主 体 の責任 と判断の もとにおいて行動す るこ とにな る。提供 された情報の信頼性が確保 されているこ とを前提 にディスクロー ジャーは情報 を受信す る 側面の解釈力、分析力によってその意味 と価値は 違 って くる。「このような能力は、受け手の要求す る価値、適切 な行動に関す る確実性の有無 につい ての受け手の判断力、受信過程におけるその他の 妨害要因によって大 きな影響 を受 け る」
。
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2
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会計デ ィスクロー ジャーは無数に存在す る情報 を一定量に圧縮 し、必要 なもの と有用な もの とを 開示す ることになるが、発信す る側 と受信す る側 との間には、必要性、有用性の解釈 に隔 た りが存 在す る。情報の価値特質において両者の考 えは一 致 しない。発す る側は情報 をあまり開示 した くな い、受け る側はなるべ く多 くの情報 を得 たい とい う力関係が常に存在す る。一般に情報は発す る側 に多 く存在 し、発す る側が 情報 を提供す るにあた って 自己に有利性が期待 で きると判断 した とき、 受け る側の要望 に応ずる傾 向がある。従 って発す る側 は積極的に不利 な情報の提供はおこなわれない。
会計デ ィスクロー ジャーの範囲 とす る ところは 基本的には経営成績、財政状態 といった財務報告 が中心である。 ここでい う主要 な利害関係者は、 株主、債権者、投資者、消費者等であるが、 これ らの者は財務報告 を情報 として受け取 り、 自己の 意思決定に影響 させ る手段 とす る。その財務報告 内容 が、 自己の意思決定に与える影響力が強いか、 弱いか、意思決定にあたって どれ位不確実性 を除 去で きるか どうかによって財務報告 内容 の価値づ けが決 まる。 今 日、制度会計のディスクロー ジャー に関 し法 規の定めがあるし、信頼性の保証 を確保 す る手段125 長野大学紀要 第14巻 第2号 1992 も講ぜ られている。 しか し企業が積極的、 自発的、 自主的にディスクロー ズしているか、情報の透明 性、情報の有用性、価値の観点か ら考慮すれば問 題が多 く存在す る。現実的には会計ディスクロー ジャーは、消極的、形式的、義務的な開示に終 っ ている。情報 を発す る側の企業か ら、「私的企業情 報」の面 と企業の 「公共性の役割情報」の帰属問 題 との関係において、 どこまでを開示すべ きであ るか とい うことは高度の政策判断によらなければ な らない。(3)また開示にあたって費用負担の問題 も存在す る。 現在の会計制度に もとづ く財務諸表は、企業会 計原則、商法、証券取引法に準拠 して作成 されて いる。制度的ディスクロー ジャー としては法務省 令 としての商法 ・計算書類規則 と大蔵省令 として の証券取引法 ・財務諸表規則がある。商法は経営 者の株主に対す る受託責任の報告 を目的 とし配当 可能利益算出の定めであ り、証券取引法は投資家 保護のための情報提供の役割 を果た している。 企業会計原則、商法、証券取引法に もとづ いて 作成 され る財務諸表は、株主、投資者、債権者、 一般消費 ヱ大衆に配付 され る会計ディス クロー ジ ャー として重要 な機能 を果 たす。 しか し、社会的、 経済的な機能が増大す ると共に、財務諸表の利用 者層が増加 し、公表財務諸表に対す る価値、評価、 要望の内容が少 しづつ変化 して来ている。企業は これに対 しいかに対応 してい くべ きか、統一的な 見解 を出す ことができるかそのことが課題 となる。 従来会計ディス クロー ジャーは、企業周辺の株 主等利害関係者の経済的な意思決定情報 に役立 し め るためであったが、今 日では企業活動のベース となる社会基盤、社会的活動に関す る情報 を無視 し、遠 ざけては多 くの不都合 を生 じさせ ている。 観点 を変 えて企業は一定の会計情報 をなぜ開示 す るかにつ いて、株主、債権者は企業に資金 を提 供 し、企業は配当、利子 を分配す るとい う関係の もとにエ クイティ-アカウンタビ リティで説明さ れ ることが多い。利害の相互関係発生の もとに状 況説明、あ る意図 を含んだ情報開示の必要性が発 生す る。開示の制度 としては、 自発的、任意的情 報開示か、 もしくは法規的、強制的情報開示 とい うことになる。 強制的開示は法規、契約等の関係の もとにおい てお こなわれ る。強制的開示条項がなければ、情 報は一部の者のみが知 り、一般 には非開示の まま の状態におかれ不利な立場 になる。 任意的情報開示か強制的情報開示かの折合 の問 題 と共に 「企業行動の内容の複雑化、行動半径の 拡大の結果 として、企業はその存続発展に不可欠 な新 たな資源 を必要 とし、 ここに新 らしい資源提 供者の登場 を見、次第にエ クイテ ィ-アカウンタ ビ リティの関係が拡大 されてゆ く」(4)ように経済 社会発展が続け られ る。 会計情報の基本であ る財務諸表 は会計記録 シス テムか ら作成 された ものであるが、 しか しその意 味す るものは、社会全体の複雑化 に ともなって多 義的な情報の意味 を要求 されてい る。会計情報 を 作成す る者が、記録、測定、伝達 、報告 とい う一 面的な手段によって作成 された情報の意味 と情報 利用者が解釈 した意味 との問に大 きなギャップが あれば、会計による情報伝達機能 は有効に働 いた とは言えない。単一の企業会計 システムによって 企業活動 を多種の利害関係者に多面的に説明す る ことは多 くの困難 を伴 う.会計デ ィス クロー ジャ ーに関 し、いろいろな領域か ら多面的な要請があ った ときにいかに対応 していかなければならない か重要 な局面にさしかかっている。一律的な会計 ディス クロー ジャーに検討が加 え られなければな らない。主 としてここでは制度会計上のデ ィスク ロー ジャーの課題 につ いて展望 し、環境変化 と制 度会計の対応、それに伴 うディス クロー ジャー問 題 について触れて見たい。 2. 会 計 情 報 とデ ィス ク E)- ジ ャ ー 経済、社会環境の進展 と共 に企 業の作成す る会 計情報量は膨大な もの となってい る。 国際化社会、情報化社会、高度化社会による新 しい動 きがそのまま企業取引に反 映 しているか ら である。企業の作成す る情報形態 として
、FAS
Bの財務会計の諸概念によると(丑 財務諸表、(む 財務諸表への注記(5)、(診 補足情報、① その他の 財務報告 の手段、そ して①か ら① までの領域 を「財 務報告」 とし、 さらに⑤ として 「その他の情報」 を加 え、投資、与信お よびこれに類似す る意思決 定に とって有用 なすべ ての情報 と位 置づけている。伊藤治郎 会計デ ィス クロー ジャー制度の展望 財務諸表 と財務報告 とを明確に区分 している点 であ る。 G)の財務諸表の内容 として貸借対照表、損益計 算書、キャッシュフロー計算書、株主持分増 減計算書。 ② の注記 として、会計方針、偶発事象の事例 な ど。 ③ 補足情報 として、価格変動の開示。 ① 財務報告の手段 として、株主への挨拶。 ⑤ その他 の情報 として、経済統計、会社の近 況な どを例示 している。
FASB
の財務会計の諸概念によると、企業内 答の開示が前記① よ り⑤ までの領域において開示 可能 であるこ とが知 り得 る。 会計情報の開示は一般的には次の三つの どれか に属 し開示 され る。 (∋ 基本財務諸表 として組入れ開示す る。 (診 基本財務諸表に開示基準に基づ いて注記、 補足情報 で開示す る。 ③ 財務諸表以外の箇所、媒体で情報開示す る。 わが国の商法上の取扱いを見 ると、営業報告書 (商法計算書類規則第45条)が計算書類に含 まれ ている点である。 この営業報告書の上で企業の会 計情報が開示 されなければならない とい う条文 に なる。商法第45条によると 「営業報告書には、次 の事項その他会社の状況に関す る重要 な事項 を記 載 しなければならない」 としている。 「その営業年度における営業の経過及び成果 (餐 金調達の状況及び設備投資の状況 を含む)
」、同2 項には 「営業の部分が分かれている会社 にあって は、前項第2
号の記載はその部門別に もしなけれ ばならない。 ただ し、資金調達の状況、その他の 記載が困粍な事項についてはこの限 りでない」 と ある。 「営業の経過及び成果」、「資金調達の状況」、「設 備投資の状況」、「部門別の状況」これ らについて は、経団連な らびに全国株懇連合会 よりそれぞれ ひな型、モデルが発表 されている。昭和5
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年6
月 お よび10月に具体的な記載括針が出されている訳 であるが、実際に公表 された開示内容について、 結論か ら申せば期待 される開示の役割 を果た して いない ところに我が国の会計情報開示に関す る問 題点が潜在す ると言える。今後 「営業報告書の構 126 成、区分、配列については、会社の状況 を正確 に 判断す ることができるように、会社 の創意 と工夫 が必要」(6)となる。 営業報告書の会計に関す る部分の具体的内容 を 分類 して例示すれば次の ようになる。(7) (9 売上高、当期利益、純資産、総資産等の金額 で、会計帳簿に基づ く数値。会計帳簿に基づか ない数値例 えば、受注高、販売予測高は含 まれ ない。 ② 売上高の対前年増減率、 1株当 り当期利益、 子会社株式の所有割合、過去3年 の売上 を示す グラフ等の会計帳簿の金額 を基礎 として導 き出 された比率、拍数、図表等。 (卦 企業結合の経過および成果に関 して、記載 さ れた金額で、子会社等の貸借対照表、損益計算 書等に基づ くもの。 ① 会社の財産又は損益の状態に重要な影響 を及 ぼす後発事象。 商法の営業報告書によっては、財務諸表の数値 は表示 されてはいるが、数値が作成 された背景 に つ いて、質的要因な どがわずかで も知れ ることが で きるような開示が望 まれ る。 営業報告書の内容記載についての指針が出され たのは、昭和5
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年であるか らその間経済発展 と社 会状況の変貌があるので新 しい指針、基準の設定 を検討 し時代 にマ ッチさせ ることが望 まれ る。 こ れは国際化社会の中に存在す る日本経済、 日本企 業 に とって重要 な課題である。企業側に関 しては 開示情報 を有用 とす るために も積極的に営業の経 過及び成果等については記載すべ き方向で検討 を 重ねなければならない と思われる。 3.会計情報開示の課題
(1) 関連 当事者 との取 引の 開示 標記に関す る取扱通達が平成2年12月25日大蔵 省 よ り通知が出された。 その 〔開示の趣 旨〕によると、関連当事者 との 取引は、独立 した対等な立場 で行われ るその他 の 当事者 との取引 (一般取引)には通常み られない ような条件で行 われ ることがある。関連 当事者 と の取引 も、外形上、一般取引 と変わ らない法的形 式が整 えられ、 しか も通例、両者は混然一体 とし127 長野大学紀要 第14巻 第2号 1992 て財務諸表に集約的に表示され るため、財務諸表 の外観か らは容易には識別で きない。 このため関連当事者 との取引が提出会社の財政 状態や経営成績に及ぼす影響 を投資者が適切に判 断で きるよう、関連 当事者 との取引を財務諸表の 「補完情報」 として開示することが、米国、 カナ ダ等においておこなわれている。 この ような関連 当事者 との取引に係 る情報は証券取引法の下 で も 有益 な投資情報 と考 え られてお り、現に役員、支 配株主等 との取引の開示が求め られているところ であるが、今般、国際調和の観点 を踏 まえて関連 当事者の範囲の拡大、開示内容の充実 を図 ること とした として、以下
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、関連当事者の定義関係(
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、開示内容関係(
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、開示様式の順 で説明がな されている。(8) 日米構造協議 と系列 ディス クロー ジャーに関 し ては、外交的、政治的 インパ ク トが直接の契機 と なってデ ィス クロー ジャーの改善が行 われた とい うことは、企業の国際化、企業会計の国際化 とい う大 きな波が次々 とお しよせ て来 る感 じがす る。 ここでは会計の情報開示国際化-の道のひ とつ と して課題 をとり上げてみたい。関連 当事者 との取 引の開示は米国等です でに実施 してお り、国際調 和の視点か ら取 り上 げ られた ものであることは う かがわれ る。 これが第一弾であって、情報開示に 関す る国際調和の課題 は山積 しているこ とを予想 しておかなければな らない。 このたびの通達の内容の解説 として 「企業の個 別の取引内容についての社会的妥当性や適法性 を 開示 させ ることを意図 したものではない」
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「その 目的 を超えで情報 を無制限に開示 させ るものでは ない」(9)としている。 これは何 を物語 る ものであろうか、情報の受信 主体 のベ ク トルを代 って述べていることになる。 それ を自ら制止 し、 ここではあ くまで も証券取引 法のデ ィス クロー ジャー固有の領域の枠内で取 り 扱われていることに注 目してお くべ きである。 し か し関連当事者 との取 引のディスクロ- ジャは証 券取引法以外の領域 において有用価値が派生 し、 さらに利用効率の上 か ら多面的な要望意見が出さ れて来 ると思われ る。 系列の問題は 日本 と米国の経済慣習の違いを調 整す るための ものであ るが、系列関係が存在す る 理由は、 日本側か ら見た場合一定の経済的合理性 が認め られ るが、 しか し同時にグループ内だけの 取引が協調 され、対 日直接投資を阻害 し、反競争 的取引慣行が生起す る原因 となる。「そのような懸 念に対 し、政府 として系列問題 をよ り開放的かつ 透明な もの とす るよう所要の措置 を講ず ることと されている」(ll)としている。 系列問題に係 るディスクロー ジャーの改善 とし て提示 された ものは次の とお りである。 ① 関連当事者間取引についての開示の充実。 (勤 連結財務諸表の有価証券報告書等本体-の組 み入れ。 ③ セグメン ト情報の開示。 ① 個別財務報告 における主要顧客別の売上高の 開示。 前期通達解説によると、国際的調和の観点か ら 我が国のディス クロー ジャー を考 えた場合、改善 が必要 と判断されたのが上記4項 目であるとい う。 従来関連当事者 (第1
条27号の5) との取引は 一般の取引にはみ られない条件 で行 われていたが、 これ らの状況については一般投資家 は知 り得 なか った。 これ を今 回、「財務諸表 を補完す る機能」を もった開示制度 に改め られたO この種の開示は、 従来の証券取引法の下 で も部分 的になされていた が、「国際的調和」の観点か ら本開示の先駆国であ る米国の基準等 を参考 に 「関連 当事者の範囲の拡 大」「開示 内容 の充実」を行 い体系的、包括的な開 示制度 として整備 された ものであるO これによ り 一応は企業間取引の透明性 を高め ることに資す る と思われ る。 関連当事者の範囲が、親会社、子会社、兄弟会 社、関連会社、役員、近親者、 その他重要 な関連 当事者-拡大 され、報告会社 との間に出資、人事、 資金、技術取引等の関係 を通 じて、財務、経営上、 「支配」 ない し 「重要 な影響」が認め られる者 と い うように拡大明示 された。 「支配」 とは出資、人事、資金、技術、取引等 の関係 を通 じて他の者の財務及び営業の方針決定 を指示 し若 しくは強制 し得 る力 を有す る場合 (過 逮) 「重要 な影響」、支配には至 らないが、上記の関 係 を通 じて財務及び営業の方針の決定に相 当程度 関与 し得 る力 を有す る場合 (通達)伊藤 治郎 会計ディスクロージャー制度の展望 これ らに関 し、監査第-委月会 よ り 「関連当事 者 との取引に係 る情報の開示に関す るガイ ドライ ン」(12)が平成3年 3月26日付 で公表 されている。 取扱通達上、開示内容関係において (取引) (敬 引条件)等の記載方法が示 されているが、取引の 開示、取引条件等の開示にあた りどこまで開示す るべ きかが重要課題 であろう。 企業に とっては対外的企業秘密、経営戦略 と関 連 して来 るので痛 し拝 しとなる。取引の開示、取 引条件の開示は開示によって競争上の地位、有利 性が変 ることも考 えられ、現実的に どこまで開示 す るのか、企業の戦略方針 と一般投資家の開示期 待 とあわせ て重要 な判断箇所 となる。 その企業に 関心 を持つ株主専門家、アナ リス トは時期、数値、 名称、内容、商品、サー ビスその他 を見 ることに よって内容はほぼ把握す ることができる。 同ガイ ドラインはこれ らの状況 を踏 まえて次の ようにガイ ドしている。 「各社 にあっては、 こうしたモデル を参考 に実 情 に応 じた適切 な開示 を行 うよう工夫 してい くこ とが大事 である。 また取引条件ない し取引条件の 決定方針等の記載の仕方について、い くつかの異 なる取引条件等 を示 しているが、 これ も同様であ る」(13)と一応は基本的な指針 としている。 開示内容関係 (取引)の中でひ とつだけ問題点 を指摘 し将来の課題 としてお きたい。 それは役員 報酬が取引の開示趣 旨か らみて、開示 を要 しない ことになっている点である。 一般に役員報酬 は、具体的な金額 を総会決議で 定めているのであれば、附属明細書 (計規第
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条) で開示 を求め る必要はない と考 えられ るが、具体 的 な役員報酬支給額 を何 らかの形で開示す る必要 が出て くるのでは と思 う。 日本では経営は集団で お こない役月個 人の業績が表れて来ない。 また個 々の報酬 を公開す ることはプライバ シィ- とのか ねあい もあっておこなわれていない。 しか し投資 家サ イ ドは経営効率の上か ら経営者 コス トを考 え 開示す るケー ス もうかがわれる。現在販売費、管 理費 として役員報酬が記載 されてはいるが、 とく に明瞭表示 とも言い難い。附属明細書の該 当す る 箇所において も然 りである。 関連当事者 との取引において も役員報酬の開示 を要 しない趣 旨は上記 と似たような葺里由で除かれ 128 たか も知れない。ある側面か ら見 るならば、取締 役の責任、監査役の責任 を追求で きるのは第一段 階で株主総会における株主の権利主張の発言だけ である。 取締役の役員報酬、主要株主 と会社 との取引に 関す る開示、無償の利益供与、名 目取引等に関 し ては、一般取引 とは異な り、公平性 を欠 く場合 も あろうし、競争市場の前提 を欠 くこ ともあろうか ら一層 の開示が求め られて来 ると想像 され る。 し たが って、情報作成作業において複雑性の問題、 コス ト、ベ ネフィッ トとの関係 を調整 しなが ら、 「関連 当事者 との取引
」に関 しては、 もう少 し詳 しい開示があって もよいのではなか と考 えられ る。(
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デ ィス ク ロージ ャーの国際化 経済の国際化 と共に企業の国際取引 も活発 とな り対外投資、貿易活動は増大 している。企業の国 際取引 と相 まって国際会計につ いて考慮 しなけれ ばな らない。 国際会計 とは(》 親会社及び外国子会社 の会計 で、国際連結会計、外貨換算会計、国際振替価格 等の問題がある.(勤 各国の比較会計、会計報告 実務 における国際的な多様性の認識、各国の会計 原則や会計実務の理解及び多様 な会計実務 が財務 報告 に及ぼす影響、(診 世界会計システム、世界 的に承 認、遵守 される会計基準の確立な どが課題 となる。(14) 企業活動の国際化は会計情報 を国際規模 で作成 す る必要がある。各国の文化、社会、経済、政治 基盤が異なる中で作成 された財務諸表はそのまま 国際的には通用 しない。国際的調和 を斑 るための 国際化会計 とディスクロー ジャー制度の確立が要 請 され る。財務諸表の作成基準は国際的に統一 さ れなければならない。在外子会社等の財務 情報の 作成に際 して、本国 と現地国 との間で言語や通貨 の違 いだけでな く、会計基準、会計法規、商慣習 等が異 なる場合に、 どの国の基準 を採用すべ きか が重要 な問題 となる。(15) 実務 的には財務報告 を国際的に活用す るため 自 国語に翻訳 し情報 として利用 し、その利用 の方法、 解釈 に混乱があ り意思決定に影響 を与 えていた。 これ らを克服す るため ヨー ロッパ共同体 (EC)、 国際 連 合 (UN)
、経 済協 力 開 発 機 構 (OEC
129 長野大学紀要 第14巻 第2号 1992
D)
、国際会計基準委員会 (IASC)
な どが会計 の国際的調和化活動 を実施 している。(16) ここでは国際的観点か らの情報開示の事例 とし てOECD
情報開示ガイ ドラインについて触れる。 これは1
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年6
月 「国際投資お よび多国籍企業に 関す る宣言」 を発表 し、 その附属文書 として 「多 国籍企業の行動ガイ ドライン」 を制定 した もので ある。一般方針、情報公開、財務、課税等に関 し て多国籍企業が遵守すべ き項 目を列挙 している。 情報公開についてはあらまし次の ようである。 企業は適切 な期間内で、通常の基準で、 しか し 少な くとも年 に一度は、全体 としての企業に係わ る次の事項 を含む財務情報お よび適切 な情報 を開 示すべ きである。 1.親会社の名称 と位置 を示す企業の構造、その 子会社 におけ る相互間の株式所有 を含む直接的 かつ間接的持分比率。 2.経営活動が展開 されている地理的領域、親会 社およびその主要 な子会社 によって、そこで行 われている主要活動。 3.地理的領域別の経営成果 と売上高、および全 体 としての企業に とっての主要 な事業系列別の 売上高。 その他重要 な新規資本投資高、資金計算書、従 業月平均実数、研究、開発支 出高、企業集団内振 替価格設定の方針、開示情報の会計方針、達路上 の会計方針 などを含めている。 これ らをもとに して、営業成果、売上高、新規 投資、資金計算書、従業月平均実数、会計方針、 セグメン ト別情報、財務報告書作成に対す る税制 の及ぼす影響、連結会計、銀行、保険業部門に対 す る情報開示、振替価格、年金会計 などにつ いて 研究がなされている。 ここで作成 され る国際会計基準は各E]会計実務 をつ よ く拘束す るもの とな り、会計基準の国際的 調和 とい う点において、OECD
の研究作業は注 目され る。(17) このようにOECD
は国際社会にあって国際会 計情報の開示に関す るレベルア ップ を図ってお り 貴重な仕事 をおこなっているもの と理解 され る。 以上の ような事例 に もあるように、 日本の企業 の国際化プ ロセスは、① 輸出入中心段階、(勤 現 地化段階、③ 国際化段階、④ 多国籍段階、G) グローバル化段階 と進むこ とが予 想 され、(18)それ ぞれ位置す る段階で国際化の影響、国際会計基準 を意識 し対応 していかなければな らない。情報開 示に関 しては国際化への道が幅広 く適応 されるよ うになる もの と思われ る。(
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)
時価 情 報 の開示 の課題 現在の経済状況 を見 るに企業資産の うち、特に 土地価格、有価証券価格の乱高下がはなはだ しい。 個々の資産価格は取得原価 に対 し経済実態 を正 し く反映 していないのが芙情である。 情報の開示 とい う観点か ら貸借対照表の資産実 態 を知 りたい と望む人々に、尿価主義で表示 され た数値に よって、直接 には実勢 を把握 し得 ない。 原価主義は、資産の取得か ら費消 または売却に 至 るまでの記録計算上、「検証可能性」と 「実行可 能性」 とい う特性 を強 くもってい る。そのため経 営者が財産の管理運営に関す る代理人 としての受 託責任 を果たすために、 また配当可能利益や課税 所得 といった分配可能利益 を計算す るために有用 な評価基準 とされてお り、今 日ひろ く世界の各国 において採用 され、 またわが国で も商法、税法、 証券取引法などの会計法令 に導入 されている。(19) 原価主義 をとる限 り、時価情報 の開示 とい う点 では実態 を知 り得ず、公表 された財務諸表上 では、 原価主義価額 と時価 との差額が 情報 としてオフバ ランス となってい ることにひ とつ の問題がある。 公表財務諸表の機能 を、企業の社会的機能、社 会的存在価値 とい う点か ら広 くとらえるならば、 公表財務諸表の限界、短所 を内部 に保有す ること に もなる。 ここに経済変動に もとづ く財務諸表項 目の価格変動に対応す る情報開示 のシステムが課 題 となる。短的に言えばそれ も投 資家サ イ ドか ら 見て時価情報 をどのように扱 うべ きか、扱 ってい るのか とい うことになる。現実的調整方法 として は、原価主義 による情報開示では実態 を正 しく反 映 しないので 「時価情報」 を補足的に、追加的に 提示 し調整 しているが これは一種 の便法 といえる。 原価主義 も時価主義 もそれぞれ長所 と短所 を持 ちどちらか一方 とい う決着は不可能であるが、原 価主義の短所 を補 う意味で 「時価情報」が要所に おいて採用 されて来ている。 原価主義が、一般に公正妥当な企業会計の方式伊 藤治郎 会計デ ィス クロー ジャー制度の展望 として採用 され る理 由は、① 代理 人会計機能、 ② 分配可能利益 の算定 とい う、社会的機能 を果 たすか らである。 このためには検証可能性、制度 的実行可能性、保守主義性 とい うような支 えが必 要 である。 現在の商法は複数 の資産評価基準 を定めてい る。 原価 主義が原則 であるが、任意的に低価主義 を、 一定 の条件 の もとに時価 までの評価減が強制 され てい る。(商法第34条、第285条、第285条の7、財 規第41条、第81条)商法の評価基準は利益 を算定 す るためには こうあるべ きだ とい う主張の根底 に ある ものは、分配可能利益算定のためにその計算 過程 の方法 として評価 基準が制定 されてい るもの と解せ られ る。 これか ら推移 して商法は分配可能 利益算定 とい う目的に合致す る範囲で情報 を開示 す る とい うこ とが考 え られ る。 こ との出発点 を分配可能利益算定のプ ロセスか らではな く、 その企業か ら企業実態に則す る情報 の提供、開示 を必要 とす る場合、分配可能利益 に 集約 された利益概念に よる財務会計情報 では要望 を充分み たさない。 ここでの情報の開示は分配可 能利益 に集約 され るプ ロセスか ら派出 した もので あるか ら時価 は考慮 されていない。時価 を考慮 し た情報が必要 となって くる。 証券取 引法上 の、有価証券報告書において、保 有有価証券 の銘柄、株式数、取得価雀乱 貸借対照 表価額等 を附属 明細表上 において開示 され る。土 地の保有 に関 しては、所在地、面積、帳簿価額 を 「設備 の状況」の箇所 において開示す るこ とにな って いる。 有価証券 の時価、土地価額 についてはそれぞれ 取引所の相場表、地価の公示価緬等 を参照す るこ とに よって、各時価の概要 を知 るこ とがで きるの で 「時価情報」の間接表示 ともいえる。 「時価情報」に関 して商法は分配可能利益の算 定に基準がおかれ るため時価 と原価 との問には一 定の距能が存在す る。 しか し証券取引法に関 して は 「時価情報」 と原価 との距経は縮め られてい る と見受 け る。 長 い間 この ような状況下 にあって、平成2年5 月29日、企業会計審議会第一部会 は 「先物 ・オプ シ ョン取引等の会計基準に関す る意見書等につ い て」 を公表 した。 ここでは先物 ・オプ シ ョンに係 130 る時価情報 に加 えて、現物有価証券の時価 の開示 を勧告 している。 これ を受 けて平成2年12月25日大蔵省 よ り 「市 場性 あ る有価証券及び先物 ・オプ シ ョン取 引等の 時価情報の開示ついて」 と題 す る取扱内容 を定め 各 界に通知 した。 企業会計審議会 の報告書では、財務諸表の体系 を基本財務諸表 と補足情報 とに分 け、基本財務諸 表 に関 しては取得主義会計に よ り、補足情報 に時 価情報 を開示す るとい う方針 が採用 されている。 これは取得原価主義の限界 を補 うため「時価情報」 を補足情報 として開示す るこ とが現段階で有効 で あ ると判断 されたこ とに よる と思 われ る。 企業 の現時点での実態 を表示す るとい う要望 の もとに、短期投資又は保有資産 を時価 で評価 し、 未実現 であるが保有損益 をタイム リー に開示す る こ とは意義がある。 エ クイティエアカウンタビ リティの立場 におい て 「取引事実主義 に立脚す る取得原価主義会計の もとでは、企業は含み益 のあ る資産のみ を売却 し て利益 を計上 し、逆に含み損 のあ る資産 の売却 を 延期す るこ とに よって、随意、利益 を生 み出す こ とがで き、 その道の取引に よって損失 を計上す る こ とが で きる」(20)、「この ような操作 を抑止す るた め に も保 有損益 の開示 は有効 であ る」(21)といえ よ
う。
経営効果 として、時価情報 を開示す るこ とに よ り、含み資産が表示 され、含 み資産 に対 す る金融 機関の担保評価能力 となってあ らわれ経営上有利 に展開 され るこ とになる。 しか し反面、保有損益 を分配可能利益 の領域 に入れ ると、配当要求、課 税対象の問題 に発展す る可能性があるの で、現在 の原価主義会計 と時価情報の調整 を法規制 の上か ら、 さらに検討が加 え られなければな らない。 客観的に見て、現在の財務諸表 は原価 主義 に よ らざるを得 ないが、取得原価 のみでは他 の事実 を 判断 し得 ない場合が生ず るので今後の論 点 は時価 情報の課題が多 く採用 され る もの と思 う。 それは 負債概念の拡張解釈、あ るいは資産概念 の拡張解 釈(22)を通 じてお こなわれて来 るに違 いな い。 (4) 情 報 開示 多様 化 の課 題 昭和61年10月31日企業会計審議 よ り、 わが国の131 長野大学紀要 第14巻第2号 1992 企業の資金調達、経営活動の多角化、国際化等の 進展に伴 い、証券取引法に基づ くデ ィスクロー ジ ャー制度 をめ ぐる環境は著 しく変化 して来ている もの と認識 し、デ ィス クロー ジャー制度の開示内 容 について改善、充実 を図 るため次の 4項 目につ いて中間報告がなされた。「連結財務諸表
」
「資金 線情報」
「セ グメン ト情報」
「四半期情報」の4
点 である。 これ ら 4項 目が一挙に課題 として報告 されたこ とは情報開示にあた り、財務諸表の内容につ いて 改善、充実 を図 る必然性があったか らである。開 示すべ き情報の量 と質の面において何 らかの手 を 打つ必要があったか らこの中間報告が公表 された ものであろ う。経済社会の発展 と共に開示すべ き 情報の量 と質について多 くの課題 と論議 を引 き起 す ことは必定である。 ここでは上記 4項 目につい てそれぞれが持つ不備 について考 え将来改善 され るべ きもの として見たい。 〔連結財務諸表〕 この中間報告が出され る背景は企業の国際化に よ り、国内企業か ら国外企業へ と向っていること、 企業結合形態が複雑 になっているこ となど環境が 大 き く変 っていることによる。 この中で例 えば海外の会計処理基準によ り作成 された連結子会社等の財務諸表等はで きるだけ 日 本の会計処理基準に修正 して連結処理 しなければ ならないことがある。 しか しFASB
ステー トメ ン トによる退職年金の会計処理や リー ス会計の場 合、 日本の会計処理基準に修正す るこ とが困葉箆な もの もある。米国におけ る会計処理基準 と日本の 会計処理基準の間に隔 りがある場合があるので、 その相違点 を考慮 し米国会計基準に近づ いてい く 方策が考 えられなければならない。(23) 〔資金繰情報〕 資金繰表 を資金収支表 と改め、その表示内容 と 様式 を示 している。資金の範囲 を現預金か ら市場 性のある一時所有の有価証券に拡大 している。 こ れ ら改善に よ り企業の資金収支に対 し、財務情報 利用者の必要に対応す ることがで きる。 しか し公 表 された中間報告 において、資金収支表が外部の 利用者に どの ような 目的で情報 を提供す るかが明 確になっていない。投資家は 「収益力の予測」 を、 債権者は 「支払能力の予測」、企業側は 「資金調達 能力」 などの 目的が考 えられ る。 この 目的によっ て資金概念の違い、開示の形式、 内容が変 って来 る。各企業において資金繰 り状況 につ いては多面 的な内容形式になっているのでこれ を収致 し得 る か どうか大変 な作業 を控 えていることになる。 〔セグメン ト情報〕 不備 と考 え られ るものの例 として、親会社、子 会社の所在地別セ グメン ト情報 と営業損益の開示 を求めていない。在外子会社 に関す る財務情報の 地域別開示が ない。 セグメン ト資産 の表示がない。「セグメン ト資産 を開示す る目的は、情報利用者に、企業の異なる セ グメン トへの相対的な段階で投資額 を吟味 させ、 セグメン トの成績 をそれぞれの投資額 との関連に おいて、セグメン トの投資収益率 によって評価 さ せ る」(24)のである。 今後、情報要求の多様化によ りセグメン ト情報 の拡張が予想 され る。 〔四半期情報の開示〕 現在、中間財務諸表 として半期財務諸表が制定 されている。 これ とあわせ てアメ リカの制度であ る四半期情報が作成 され るとなると情報過重にな るし、企業側の コス ト負担 も重なる。 これは半期 報告か四半期情報の開示かの選択 の問題 であ る。 しか しタイム リー なデ ィスクロー ジャー とい う課 題か ら考 えれば別 の道 も考慮 されて くる。例 えばEDGAR
システムの迅速処理 に よる情報活用で ある。(25)4
.デ ィスク ロージャーの社会的課題
環境変化 と制度会計
制度会計においては企業の利害関係者に対 して 財務諸表 を中心に会計情報 を提示 し、補足的に記 述報告 を添 えてい る。 その原理はその企業に対す るエ クイティ保有者が、その経営管理者に受託責 任関係 を成立 させ てお き、資本 と利益の増減 とい う複式簿記の理論 に もとづ くものであ る。受託責 任者はその期 間の資産、負債、資本の状況 を説明伊 藤治郎 会 計デ ィス クロー ジャー制度 の展望 しなければな らない。 当初において会計責任の対 象はエ クイティ保有者に限 られ るが、次第に法的 根拠の存否は別 として、企業の利害関係者層 を拡 大 して受託責任概念 も拡大 して考 えるようになっ て来ている。 これはエ クイティエアカウンタビ リ ティの社会的概念拡張解釈 とい うことになる。拡 張 された受託責任は会計責任 と非会計責任 との関 係づ けの調整が必要 となって来 る。時代の変化、 社会環境の変化 と共に資本 と利益の増減のみに よ る会計情報だけでな く、企業の定性的な状況 をも 知 り得 る情報の必要が求め られている。会計責任 領域 の うちどれが拡張 され、社会的アカウンタビ リティに関連す るか を究明 しなければならない。 会計ディス クロー ジャーのあ り方 も時代の変化、 環境 の変化 と共に変貌 して来ている。企業の利害 関係者屑が厚 くな り範囲 も拡大 しているため、従 来の財務諸表 を中心 とす る制度会計による会計情 報では社会環境の変化に対応す る情報開示 として は不足す るものがある。企業 と社会の関係 は直接 的には市場 での取引 (貨幣 を通 して製品、サー ビ スの交換) と間接的に生ず る派生的社会関係が重 層化 した ものである。株主、債権者、資産者、消 費者、従業員 は地域住民 としての立場にあって、 企業 はこれ らの人々に環境問題、従業員の福利厚 生問題、製品の安全性責任、地域社会貢献度、文 化的活動支援 問題に関係 を持つ。企業は環境に多 面的 な役割 と機能 を持 ち、これ を無視す ることは で きない。 この状況の もとに会計の役割は社会的 に どの ように果 たすべ きなのかが課題 となる。デ ィス クロー ジャー とい うことを通 じて、例 えば企 業 と社会環境情報の開示はいかにあるべ きか、財 務会計報告の中にいかに盛 り込 まれるものなのか、 環境情報の信頼性保証は どうあるべ きか とい うこ とである。 いま社会的受託責任が存在す るとして社会の利 害関係者に社会関連報告 を位置づける考 え方 とし て二つの方法がある。 1.企業の受託責任 を拡大解釈 し、広義の社会 的保管役割 を持 たせ るところの社会関連報告 を理解す る。- 受託責任概念の拡大解釈。
2.
企業 と社会的利害関係者 との財務的、非財 務的契約- と契約概念 を拡張 して社会関連報 告 を位置づけ る。- 財務、非財務的契約概 132 念の拡張。(26) 会計機能によって作成 される財務諸表の中心概 念は、資産、負債、資本、収益、費用であ り、利 益 と資本概念に集約 され る。重要 な企業行動の指 標 とな る。社会環境に存在す る企業が、環境に関 す る情報がこの会計の基礎概念 と離れて論ぜ られ て来た。(27)極論すれば企業が環境 に与 えるマ イナ スの行動 を会計的には遠 ざけて、利益概念、資本 概 念の情報開示 をおこなっていたことになる。 会計人は組織の行動が環境に及ぼす影響 を測定 す るための技法の採用 について責任があ り、何 ら かの測定の確実性 を検証す ることに も責任がある。 会計人は企業が環境関連法規 を遵守 しているか ど うか を証 拠 に もづ い て検 討 しなけ れ ば な らな い。(28) 会計人は企業 と環境 との問題 において発生す る 化学的、物理的、生物学的、技術的諸関係 を直接 的貨幣換算測定技術 を持 ち合せ ていない。 環境基準、環境変化の測定、比較、法規の適合 性につ いて判断すべ き能力を持 っていない。当該 専 門家の協力 を得て財務諸表に環境情報の開示 に ついて研究 され なければならない。環境情報 をコ ス ト概念、費用概念で把握す る理論的基盤が要請 され る。簡潔に申せば財務諸表の中で、環境志向 的取引の表示 を区別す ることによって、直接的な 効果 をあげるこ とがで きる(29)のである。理論的考 慮 と実際の開示行為 は別であろ うが、会計勘定科 目的処理では、環境規則のための設備、お よびこ れに対す る減価償却費 を明示す る。環境 関連費用 は当該科 目を用 いるか、付属明細表、脚注、追加 的情報 で表示 され るようにす る。運用面 においてぺい の利益 の隠蔽、偶発的な環境 コス トの方便 とな り かねないが、環境に関連す る負債性引当金 も開示 対象 となる。 これ らの手段 を精細に構築 す ること によって環境関連情報の開示の手がか りになる。 企業の利害関係者は利益、資本の状況、流動性、 安全性、収益性等に関す る財務情報だけ でな く、 その範囲 を広げて企業の社会責任に関す る情報 を 開示 され ることを望んでお り、 これ をも判断に加 えなければ企業の実態 を把握 し得 ないの ではない か と思 われ る。企業の社会責任のディス クロー ジ ャーの方法について例 えば次の三点があ る。(30) 1.現代会計制度 をその まま利用 して社会責任133 長野大学紀要 第14巻 第2号 1992 を開示す る。
2.
現行会計制度 の フレームワー クだけ を利用 し、別途に社会責 任開示のための財務諸表 を 添付す る。 3.現行会計制度 とはまった く別に、新 しく社 会責任開示のためのディスクロー ジャー シス テムを考 える。 上記 1. 2.
の方法 は勘定科 目に工夫 を重ね表 示形式 を改めれば実行 可能性は充分考 えられ る。 3.の方法にあっては社会責任、環境情報に関す る一般基準 と社会監査制度の基準が確立 しなけれ ば不可能であると思 われる。 企業の環境に関連す るディスクロー ジャーは企 業に とって有利 と判 断 されるときのみに しか開示 されていない。実に不完全で抽象的な文章説明で なされている。環境関連情報は一般に 「営業報告 書」の中で説明 されている。 例 えば次の事例があ る。 ◎三菱商事の事例 - 営業報告書 「地球環境問題へ の取組」
「当社 は昨年4
月 『地球環境室』 を設置 し、企 業活動 と環境の よ り良 い調和 を目指 して、具体的 な対応 を進めています。
」(31) ◎東北電力の事例 - 営業報告書 「営業の経過および成果ならびに対処すべ き課 題」 「原子力施設全般 の安全性、必要性 をは じめ と したエネルギー問題 について、地域の皆様のご理 解 をよ り一層深めていただ くよう全力 を尽 くす と ともに、環境問題につ いては、『地球環境問題対策 推進会議』の もとで設備の効率化 をは じめ、風力 発電、燃料電池などの新エネルギーや二酸化炭素 の除去、固定化に関す る技術開発 などに鋭意取 り 組んでいるところであ ります。(32) ◎ゼ クセルの事例- 営業報告書 「会社が対処すべ き課題」 ○地球環境保護へ の積極的対応 「今や地球規模 で環 境保全が求め られてお りま す。企業の事業活動 に より地球環境に影響 を及ぼ す ようなこ とがあってはな りませ ん。製品活動、 工場活動 を通 して、 また、市民企業 としての活動 を通 じて F人 と地球の よ り快適 な環境実現』に向 け、 これ まで以上 に環境保全に対 し、積極的に取 組んでまい ります。(33) 今 日各企業は経営方針の中に環境保全、地球環 境保護 を特に意識 している。 この ことは企業の社 会責任、環境 との密着性のよ り深い関係 を示す も ので、あらゆ る機会 を把 えて開示 に努めていると 理解 され る。 営業報告書の記載様式、内容 については何 ら制 約がないので、環境情報 を開示す る必要はない。 しか し企業 と環境の密着性、企業が社会環境に与 える重要 な影響、例 えば環境関連情報についてデ ィスクローズす る要請が前 よ り高 まっている。会 計理論 と同居 しに くい環境情報 を どの ように組み 合せ てい くのかは重要 なことであ る。企業の利害 関係者のある当事者は企業の収益性に関心 を持 ち、 ある当事者は企業の社会関連に関心 を持つ場合が ある。前者は端的に利益 目標、後者は社会 目標 と いうことになる。 もし くは前者は経済的成果 と後 者は社会公益成果の違 い となって あらわれ る。 こ の両局面において大 きなギャップが存在す る。企 業の公表す る財務諸表、営業報告書等で両者 を満 足す ることに尚不足す るものがあ る。 それぞれに 不足す る情報開示が求め られ るのは 自然の姿であ ろう。AAA
委員会報告の環境問題についての文章説 明に必要 な項 目として次例が紹介 されている。 こ れは環境情報の必要項 目を把握す る上で有力な手 がか りとなるものである。 1.環境問題の認識 規制、課 された規制基準、守 るべ き最低基準、 違反に対す る罰金、未履行契約 に含 まれ る環境 上考慮すべ きこ とが ら、お よびその他の偶発的 なことが らと関連のある組織上 の特殊問題。 2.組織の削減 目標 削減計画の詳 しい説明、時間計画の予定、 コ ス トない し予定支出額の見積 り。3.
組織の進行状況 認識可能な進行状況の説明、今 日までの コス ト、予測 される未来 コス ト、組織の環境 目標に 関連のある適切 な非貨幣的情報。 4.重要 な環境問題が組織の財政状態、収益力お伊藤治郎 会計ディスクロージャー制度の展望 よび企 業活動 に及ぼす影響 のデ ィス クロ- ジャ () これ らの列挙項 目か ら環境 関係 に関 してあ る程 度の情報 を集約 的に把握 で きる。 これ を もとに財 務会 計の側面か ら企業 に与 え る影響 、環境 に与 え る影響 につ いてのデ ィス クロー ジャー は可能 と思 われ る。 このデ ィス クロー ジャー に関す る信頼性 の付 与、保証 は監査 の立場 か ら実施 され なければ な らない。制 度会 計 に対す る環境関連情報 の開示 のあ り方、 日本 の実情 に合 う監査体 系 また確立 さ れて いない。環境情報 のデ ィス クロー ジャー と環 境監査 の モデル を作 り上 げ るこ とが急務 とな る。
5
.結
会 計情 報の 内容 は、企業 が現在 の社会、経済事 象 を どの よ うに認識す るのか、利害関係者 をどの 範囲 まで確定 す るのか、 そ して どの よ うな会計認 識基準 を採用 してい るのかは重要 なこ とであ る。 いづ れ会 計的 には、複 式簿記の原理 に よ り勘 定形 式 に よ り経済事象 は二面的 に分 解 され会計的 に変 換、表示 され る。経済事 象の測定 目的、伝達 目的 に よって会計情報 の意味、 内容 は影響 を受 け る。 企業 の利 害関係者 はそれ ぞれの領域 にお いて利害 が対 立 し錯綜 してい る。企業 は どの領域 に力 を入 れて会計情報 を作成す るのか、 簿記原理 に流入 さ せ る会 計思考 は何 か に よって会計 デ ィス クロー ジ ャー の道 も変 って来 る。従来 の単一 原理 に よる会 計思考 に よった ものでは複雑 な社会変化 に対応 で きない。会計 デ ィス クロー ジャー制度 も社会 の要 請 に対 応 した ものに変貌 しない と会計制度 も立 ち 遅 れ て しまう。 (い とう じろ う 教 授) (1992. 7. 7受理) く参考文献〉 (1) 若林明 「企業内答開示制度の展開」
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ICPA 1991年7月117 ペー ジ以下 (13) 同上 前掲者 (14)吉 田寛編著 「環境変動 と会計情報戦略論」税務 経理協会 昭和62年 隅田一塁 「国際化、情報化の進展 と財務会計」
31ページ (15)前掲者 34ページ (16)前掲者 36ページ (川 飯田、早矢仕編著 「会計情報 と情報開示」白桃 書房 196ページ (18)経済同友会 「企業自書」 平成2年98ページ (19)新井清光 「新版財務会計論」中央経済社 65ペ ン′ CZO)加古宣士 「公表財務諸表制度におけ る時価情報 の地位」
「会計」平成3年3月41ページ Czl) 同上 C22)ベ ッ ドフォー ド著 (2)前掲者 244ペー ジ C22)福 田真也 「連結財務諸表 と監査」
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