氏 名 松澤 高光 博士の専攻分野の名称 博 士 ( 医 学 ) 学 位 記 番 号 医工博4甲 第204号 学 位 授 与 年 月 日 平成29年 3月 23日 学 位 授 与 の 要 件 学位規則第4条第1項該当 専 攻 名 先進医療科学専攻
学 位 論 文 題 名 Immunological function of Langerhans cells in HIV infection (HIV 感染におけるランゲルハンス細胞の免疫学的機能) 論 文 審 査 委 員 委員長 教 授 中尾 篤人 委 員 准教授 笠井 剛 委 員 講 師 篠﨑 陽一
学位論文内容の要旨
( 研 究 の 目 的 ) 粘 膜 ・ 皮 膚 表 皮 内 ラ ン ゲ ル ハ ン ス 細 胞 ( 以 下 LC) は 、 HIVの 初 期 標 的 細 胞 の 一 つ で あ り 、 所 属 リ ンパ 節 に遊 走 し HIVを CD4陽 性 T細 胞 に 伝播 し HIV播 種 に 関 わっ てい る 。一 方 、 HIV感 染 に お い て HIV特 異 的 CD8陽 性 T細 胞 や 制 御 性 T細 胞 ( 以 下 Treg細 胞 ) は HIV感 染 の 進 行を 抑 制す る こと に お いて 重 要な 役 割を 担 っ てお り 、LCと 同じ く HIV感 染 標 的 細胞 の 一 つ で ある 樹 状細 胞(以 下 DC)に よ るそ れ らの 細 胞 の誘 導 能に 関 して は 報 告が 散 見さ れ る。 し か し なが ら 、LCが HIVに 感 染 後 、ど の よう に免 疫 を 調節 す るか は 現在 ま で 明ら か にさ れ て い な い 。
我 々 は LCが HIVに 感 染 後 、 HIV特 異 的 CD8陽 性 T細 胞 を 誘 導 し 、 さ ら に Treg細 胞 の 誘 導 能 が 変 化 す るこ と で抗 HIV免 疫 応 答 を調 節 する と 考え て お り 、この 仮 説を実 証 す るた め 以下 の 実 験 を 行 った 。 ( 方 法 ) 本 研 究 に お い て LCと し て 、 採 血 検 体 か ら 分 離 し た ヒ ト 単 球 を GM-CSF/IL-4/TGF-β 存 在 下 で 培 養 し作 製 した 単 球由 来 LC-like DC( 以 下 mLC) と 、ヒ ト 表皮 水 疱蓋 よ り 得た 表 皮シ ー ト か ら 培 養液 へ 遊走 し た表 皮 LCを 用 い た 。コント ロ ー ルと し てヒ ト 単球 を GM-CSF/IL-4存 在 下 で 培 養 し作 製 した 単 球由 来 DC( 以 下 mDC) を 用い た 。 1. Naive CD8陽性T細胞をHIV曝露自己mLC、mDCと共培養後、HIV曝露mLC、mDCによるHIV抗原特異的 CD8陽性T細胞誘導能をHIVgagテトラマー染色によりフローサイトメトリーを用い比較検討した。 2. Naive CD8陽性T細胞をHIV曝露自己mLC、mDCと共培養後、各々分離した CD8 陽性 T 細胞による HIV抗原特異的IFN-γ産生能をHIV抗原刺激下にてIFN-γ ELISPOT assayを 用い 比 較 検討 し た。
一 方 、共培養後誘 導 され る HIV抗原特異的CD8陽性T細胞のIFN-γ産生能を、PMA/ionomycin刺激 後 に HIVgagテトラマー染色、IFN-γ染色によりフローサイトメトリーを用い比較検討した。 3. Naive CD8陽性T細胞をHIV曝露自己表皮LCと共培養後、HIV曝露表皮LCによるHIV抗原特異的CD8陽 性T細胞誘導能をHIVgagテトラマー染色によりフローサイトメトリーを用い検討した。さらに、 誘導されるHIV抗原特異的CD8陽性T細胞のIFN-γ産生能をHIVgagテトラマー染色、IFN-γ染色に よりフローサイトメトリーを用い検討した。 4. Naive CD4陽性T細胞をHIV非曝露、HIV曝露自己mLCと共培養後、HIV非曝露、HIV曝露mLCによるTreg 細胞誘導能を比較検討した。表皮LCでも同様の実験を行った。 5. HIV非曝露、HIV曝露mLCにより誘導されたTreg細胞をallo-MLR cultureに様々な比率で加えin vitro suppression assayを行い、Treg細胞のT細胞増殖抑制能を比較検討した。
6. HIV非曝露、HIV曝露mLCにより誘導されたTreg細胞のIL-10, TGF-βなどの抑制性サイトカインや PD-1, ICOS, CTLA-4, CD39, GITR, HVEMなどの抑制性分子の発現をフローサイトメトリーを用い 比較検討した。
7. HIV曝露mLCにより誘導されたTreg細胞のHIV感染の有無をHIVp24染色によりフローサイトメトリ ーを用い検討した。
( 結 果 )
mLC、 表 皮 LCは HIV感 染 後 、 IFNγ 産 生 能 を 有 す る HIV特 異 的 CD8陽 性 T細 胞 を 誘 導 し た 。 さ ら に 、 mLCは mDCよ り 有意 に HIV特 異 的 CD8陽 性 T細 胞 を 誘導 し た。
一 方 、 mLC、 表 皮 LCは HIV感 染 後 、 effector Treg細 胞 誘 導 能が 低 下し た。 mLCの HIV感 染 の 有 無 に 関 わ ら ず 誘 導 さ れ る Treg 細 胞 のT細胞増殖抑制能は同等であり、さらに誘導される effector Treg細 胞 上の抑制性サイトカイン/分子の発現も同等であり一貫した結果が得られた。
誘導されるTreg細 胞 はHIV感染していなかった。
( 考 察 )
現 在 ま で に HIV、 CMV、 EBV、 influenza virusな ど 種 々 の ウ イ ル ス 感 染 に お い て 、 ウ イ ル ス 特 異 的 T細 胞 に よ る IFN-γ 産 生 と51Cr-release assayに お け る 細 胞 傷 害 性 活 性 が 相 関 す る
と 報 告 があ る 。ま た 近年 、 ヒ ト Foxp3陽 性 T細 胞 を effector Treg細 胞、 naive Treg細 胞 、 non Treg細 胞 に 再 分類 す る方 法 が 報告 さ れ、 effector Treg細 胞 が最 も 強い 抑 制 能を 有 する 。
本 研 究 に お い て 、 LCは HIV感 染 後 、 DCよ り も 強 力 な 抗 HIV免 疫 応 答 を 惹 起 し 、 さ ら に 、 effector Treg細 胞 誘 導 能 が 低 下 す る こ と で よ り 強 力 な 抗 HIV免 疫 応 答 が 惹 起 さ れ る こ と が 示 唆 さ れた 。
( 結 論 )
HIV感 染 後 LCに よ る抗 HIV免 疫 応 答 の誘 導 は新 しい 知 見 であ る。LCは HIVの 初 期 標的 細 胞の 一 つ で あ る 一 方 で 、 強 力 な 抗 HIV免 疫 応 答 を 惹 起 し 、 HIV感 染 の 進 行 を 抑 制 し 後 天 性 免 疫 不 全 症 候 群 の 発 症 を 遅 延 さ せ て い る 可 能 性 が あ る 。 こ の 新 知 見 を 取 り 入 れ た ワ ク チ ン 開 発 も 期 待 で きる 。