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JAIST Repository: 2030年の環境制約を考慮したサステナブル・テクノロジー創出システム

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Academic year: 2021

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JAIST Repository

https://dspace.jaist.ac.jp/ Title 2030年の環境制約を考慮したサステナブル・テクノロ ジー創出システム Author(s) 森田, 圭祐; 古川, 柳蔵; 石田, 秀輝 Citation 年次学術大会講演要旨集, 23: 30-33 Issue Date 2008-10-12

Type Conference Paper Text version publisher

URL http://hdl.handle.net/10119/7494

Rights

本著作物は研究・技術計画学会の許可のもとに掲載す るものです。This material is posted here with permission of the Japan Society for Science Policy and Research Management.

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1A13

2030 年の環境制約を考慮したサステナブル・テクノロジー創出システム

○森田圭祐,古川柳蔵,石田秀輝 (東北大) 1.はじめに 厳しい環境制約が顕著にみられると予想され る2030 年頃にはエネルギー価格の上昇、資源枯 渇などにより、我々の生活を便利にする製品の開 発や使用が困難になり、現在保有している技術の 価値を享受できなくなる可能性がある。 このようなリスクを回避するために、持続可能 な社会を目指す社会デザイン、事業設計、研究開 発において新しい研究が多数行われてきた。代表 的なものとしては、技術ロードマップ1やサステナ ブルデザイン2,3,4などが挙げられる。しかし、技 術ロードマップは環境制約が必ずしも考慮され ない手法であり、サステナブルデザインは環境制 約は考慮されるが具体的な技術の抽出までは行 わない手法である。環境制約が厳しくなることが 予想される2030 年という遠い将来の暮らしを想 定し、環境制約に耐えうる技術を創出するという、 環境制約と技術抽出の両方を取り入れた技術創 出手法はいまだ確立されておらず、環境制約を踏 まえた技術開発が進まない原因の一つでもある。 一方、生態系や自然の中に見られる技術の中に は、人間がいまだ実現していない高エネルギー効 率の技術や、循環型のシステムが実在しており、 これらの技術やシステムを企業の製品開発に応 用するネイチャー・テクノロジー5、バイオミミク リ6という概念が提唱されている。例えば、カワセ ミの嘴と同様の形状にした低抵抗の新幹線の先 頭部7、ハスの葉の表面の撥水構造を利用した洗浄 不要の容器8といったイノベーションが実現して いる。生態系や自然が保有する技術やシステムを システマティックに応用し、将来必要となる技術 を考案できるようになれば、このようなイノベー ション事例が増加し、環境負荷低減に大きく寄与 することが期待できる。 そこで、本研究では、地球環境問題の大きな転 換期とされる 2030 年を想定し、その厳しい環境 制約のもとで成立する低環境負荷技術を、自然が 持つ技術を応用して創出する手法を研究し、その 妥当性を検証することを目的とする。 2.方法 本研究で用いた手法は、「生活に関わるテーマ の選定」、「環境制約条件の定量化」、「ライフスタ イル・デザイン」、「テクノロジーの創出」で構成 されている(図 1)。本手法は、現在の研究動向や 技術分野、あるいは企業の経営戦略にとらわれず、 将来望まれるライフスタイルを実現するのに必 要な技術を考案することが狙いであるため、フォ アキャスティングではなく、バックキャスティン グの観点を取り入れた。「ライフスタイル・デザ イン」は企業のデザイナーグループ、「環境制約 条件の定量化」及び「テクノロジーの創出」は企 業外部の環境・技術専門家によって実施される。 生態系技術の メカニズム サステナブルな 概念 機能 リラクゼーション効果 湯船 技術名 生態系技術のデータベース(表2) ライフスタイル・デザイン 機能抽出:やすらぐ + 個体名 水の流れにより生じる 光や音の1/fゆらぎ + やすらぐ 機能検索 生態系技術の事例 サステナブルな概念(表3) 湯の循環利用で少 量の湯で入浴できる リラックスのために テクノロジーの創出 キラキラ光る水・ 流れる水を感じて 入浴する + + どのように 何をする 何のために 環境制約条件の定量化 サステナブル・テクノロジー の を利用した 生活に関するテーマ(食、湯) 図1:機能分析による技術創出手法(「湯」の事例)

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本手法では「ライフスタイル・デザイン」の対 象を絞りこむため、生活に関わるテーマを選定す る必要がある。本研究では、「食」と「湯」とい うテーマがライフスタイル・デザインを実施する 企業により選定された。 「環境制約条件の定量化」では、IPCC の報告 書9、政府の発表資料等を用いた(表 1)。 「ライフスタイル・デザイン」では、企業デザ イナー5、6 人が 2 時間程度のブレーンストーミン グを実施し、将来の環境制約の中でも捨てられな い利便性や望ましいライフスタイルを抽出した。 これにより抽出されたライフスタイルは、「何の ために」「どのように」「何をする」の3 要素に分 け、整理を行った。 「テクノロジーの創出」では、挙げられたライ フスタイルを実現するために必要な技術を考案 する。ここで、必要技術を考案するための支援ツ ールとして、ネイチャーテック研究会が構築した ネイチャー・テクノロジー データベース 8 Biomimicry Institute が構築したデータベース9 を本研究グループで統合し、新しく機能分類を導 入したデータベース(表 2)を用いた。また、必 要技術を考案するためのもう一つの支援ツール として、「サステナブルな概念」(表 3)を新規に 構築した。このサステナブルな概念は、環境配慮 型の技術やシステムに見られるものであり、低環 境負荷を実現するための技術開発に一定の方向 性を示すことができる。 「テクノロジー創出」の具体的な手法としては、 まず、ライフスタイル・デザインによって示され た将来のライフスタイルを実現するのに必要な 技術の機能を抽出し、生態系技術のデータベース (表 2)を用いて、それと同様の機能を有する生態 系技術を検索する。検索された生態系技術が保有 するメカニズムと、サステナブルな概念(表 3)を テクノロジーに付与することで必要技術として のテクノロジーを考案できる(図 1)。このように して考案されたテクノロジーは、特許レベルでは ないが、技術開発の方向性を示すものとなる。 表1:環境制約条件 項目 基本項目 環境制約条件(2030年、日本の場合) 人口 ライフスタイルが大きく 異なる極端な世帯構成 が存在(アダルトシング ル、カップル、シニアシ ングル) ・人口1億1800万人 (2005年より約10%減 少) ・世帯数4900万世帯 (2000年より約6%増加) ・生産年齢人口6740万 人(2005年より約20%減 少) 地球温暖化 温室効果ガス削減規制(自主規制を含む) 2030年には、地球温暖 化対策のための規制が 執行され、製品使用時 にCO2排出量が2004年 時に普及している製品と 比較して、平均的にCO2 排出量を50%以上削減 した製品でなければなら ない。 エネルギー 石油、電気、ガス、灯油 の価格 (生活に影響が出始める 可能性があるレベルま で価格上昇を想定) ・エネルギー価格が2倍 に上昇(ガソリン代は3 倍に上昇) ・製品のエネルギー効 率は50%以上向上 資源 金属、非金属、プラス チック、樹脂の価格 (生活に影響が出始める 可能性があるレベルに まで価格上昇を想定) ・資源価格が2倍に上昇 ・製品の資源利用は 50%削減 ・製品の資源生産性は8 倍向上 水 生活用水、工業用水、農業用水の価格が上昇 ・水使用料は2倍に上昇 食料 食材 (農水省が不測時を想定 した最悪のケースを想 定。自給率の低い食材 については、食生活に 影響が出始める可能性 があるレベル) - その他 基本的には家庭内を想 定するため、社会システ ム、交通システム等のラ イフスタイルは今回は除 外。 - 表2:生態系技術のデータベースの構造 大分類 小分類 個体名 機能 体温管理 保温 バンドウイルカ 放熱を防ぐ脂肪 トウブテンマクケムシ 風を防ぐことにより太陽熱を保温 する巣 コウテイペンギン 保温性の羽 ホッキョクグマ 脂肪と毛皮による断熱 循環 水分回収 ダニ 空気中から水分を吸収する キリアツメゴミムシダマシ 親水・疎水部がモザイク上に なった表皮で空気中から水を回 収する 情報察知 季節察知 カマキリ 積雪量を察知して産卵する オジロジカ 季節に対応した毛皮の変化 危険察知 ゾウ 地震等の危険察知 魚 お互いがぶつかることなく泳ぐ クロタマムシ 森林火災察知 ネ イ チ ャ ー ・ テ ク ノ ロ ジ ー デ ー タ ベ ー ス 8、Biomimicry Database9より作成

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表3:サステナブルな概念 循環 共有 ネットワーク 3R(Reduce-Reuse-Recycle) 自然との共生 省エネ・省資源 長寿命 モノからサービスへ コミュニティ 愛着 簡明 本研究では、「食」と「湯」の 2 つのテーマに ついて3 つの企業デザイナーグループと共同でラ イフスタイル・デザインを実施し、テクノロジー の創出まで行った。テクノロジーの創出について は、生態系技術の機能面に着目する機能分析(図 1)に加え、生態系技術のデータベースやサステナ ブルな概念を基礎資料として機能分析を行わず、 インスピレーションによってテクノロジーを考 案する手法も同時に行った (図 2)。 ライフスタイル・デザイン リラックスのために テクノロジーの創出 キラキラ光る水・ 流れる水を感じて 入浴する + + どのように 何をする 何のために 生活に関するテーマ(食、湯) 環境制約条件の定量化 低環境負荷技術 水がつくる波や光によるリラクゼーショ ン効果などを利用し、水の美しさに魅了 され、水の利用に感謝したくなる湯の循 環風呂 生態系技術のデータベース(表2) インスピレーションにより技術創出 資料として利用 サステナブルな概念(表3) 図2:インスピレーションによる技術創出手法 (「湯」の事例) 3.結果と考察 本手法によって創出されたテクノロジーを表4 に示す。左が機能分析によって創出されたテクノ ロジー、右がインスピレーションによって創出さ れたテクノロジーである。 表4:本手法によって創出されたテクノロジー テーマ 機能分析によって創出されたテクノロジー インスピレーションによって創出されたテクノロジー 光や音の1/fゆらぎのリラクゼーション効果を応用した少ない食事量でも食欲を満 たす食事法(サプリメント) 気化熱利用、中長期保存ボックス 漬物・干物保存用メソポア利用による脱臭壁付きボックス 育虫 省エネ、コンパクト冷蔵・冷凍庫 マンション共有型巨大冷蔵・冷凍庫 パッシブ駆動による短期冷蔵・冷凍庫 屋上共同栽培技術 立体的省スペース家庭ベランダ栽培 ダイニングの色・香りを発する壁又は環境制御による味の最適化技術 人間の体内のpH・糖・温度測定による健康測定技術 2030年の新しいレシピ(現在ないレシピ) 水の流れによる光や音の1/fゆらぎのリラクゼーション効果を応用した湯を循環利 用し、少量の湯でやすらぐ湯船 湯船に入ると風の循環などで顔の周囲だけが冷える頭寒足熱節水風呂 ホッキョクグマの毛の空洞構造、脂肪、紫外線に対する熱伝導性からなる断熱構 造を応用した省エネ・省資源で保温性能の高い湯船(ポット) 湯船の側面に設置する水流を利用した小型水力発電装置 ハゴロモグサの産毛によって水や汚れをはじく表面構造を応用した省エネ・省資源 の汚れや水分をはじく風呂場の床 水がつくる波や光にリラクゼーションを利用し、水の美しさに魅了され、水の利用に 感謝したくなる循環節水風呂 キリアツメゴミムシダマシの親水性の表面・疎水性の表面を組み合わせた凹凸が、 空気中の水分を効率よく集め、疎水性の表面を流れるという現象を応用した省資 源で側面を清潔に保つ湯船 湯の保温機能の優れたシマウマの縞模様がつくる対流を応用した自動拡販風呂 アフリカガエルなどの微生物や細菌を攻撃するペプチドを身近な自然界の物質か ら生成する技術を応用した省資源で殺菌効果を持つ洗剤 設定温度の湯のみ放出され、冷たい捨て水は循環、再利用される節水シャワー サメ・カジキ等の皮膚表面構造を利用した低抵抗ホースや配管 高齢者向けの、垢がたまりにくい高摩擦力の床 発電床を利用した家庭内での小型発電装置 人のいるところだけに温かさが集まるセンサー付床暖房 風呂の湯と床暖房の湯を再利用する床暖房システム 発電機能、高い保温機能を有する衣類 銅を用いないエコキュート、太陽熱温水器 省エネサウナ 食 湯

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「食」と「湯」の2 テーマに関して考案された テクノロジーと、科学技術政策研究所の技術予測 10や、経済産業省の技術戦略マップ11に示される 2030 年ごろに実現することが予想される技術と の比較を行った結果、これらはほとんど異なって いた。また、生活者のニーズオリエンテッドなテ クノロジーが多いという点、本手法により創出さ れたテクノロジーの持つサステナブルな要素と して「省エネ・省資源」がほとんどであったとい う点が特徴として挙げられる。これらの特徴がみ られるのは、本手法が生活者の視点に立ってライ フスタイルをデザインしているためであると考 えられる。 テクノロジーの創出において、機能分析による テクノロジーの考案とインスピレーションによ るテクノロジーの考案の両者の結果を比較する と、最終的に創出されるテクノロジーに違いがみ られた。機能分析によって創出されたテクノロジ ーには生態系技術のメカニズムがテクノロジー の中に必ず含まれている点で具体的といえる。一 方、インスピレーションによって創出されたテク ノロジーは、その種類の幅は広くなるが、生態系 技術のデータベースを必ずしも利用しないため、 生態系技術を使わないテクノロジーが含まれる 結果となった。 機能分析によるテクノロジーの創出は、テクノ ロジー考案者が生態系技術の深い知識を持ち合 わせなくても具体的なテクノロジーを考案でき るが、データベースのデータ量と生態系技術の背 景にあるサイエンスの解明度合いに依存する。一 方、インスピレーションを用いるテクノロジーの 創出では、テクノロジーの考案者の能力に大きく 依存するという特徴が明らかとなった。 現在の生態系技術データベースのデータ量は、 200 件程度であるが、データ量の増加により、機 能分析によるテクノロジー創出のメリットが増 強される。そのため、今後データベースのデータ 量をいかに増強させるかが重要である。また、本 研究で用いた手法では、環境負荷低減の効果の測 定が手法内に含まれていない。これを本手法の内 部に含めるかどうかについては検討が必要であ る。 引用文献

1 Charles H. Willyard and Cheryl W. McClees,

Motorola’s Technology Roadmap Process, Research Management,30(6),13-19 (1987).

2 Ezio Manzini,Sustainable Everyday,

Edizioni Ambiente (2003).

3 William Macdonough and Michael Braungard,

Cradle to Cradle,North Point Press (2002).

4 A. J. Jansen and G. van Leeuwen,

Alternative Energy Sources in product design, Delft University of Technology (2006).

5 石田秀輝,古川柳蔵,前田浩孝,‘ネイチャー・

テクノロジー’,Journal of the Society of Inorganic Materials,Japan 13,

428-435(2006).

6 J.M.Benyus,Biomimicry: Innovation

Inspired by Nature,Harper Perennial, New York (1997).

7 ネイチャーテック研究会,すごい自然のショー

ルーム.

http://www.nature-sugoi.net/

8 Biomimicry Institute,Biomimicry Database.

http://www.biomimicryinstitute.org/resources /biomimicry-design-portal.html

9 Intergovernmental Panel on Climate Change,

IPCC Fourth Assessment Report.

http://www.ipcc.ch/ipccreports/ar4-syr.htm

10 科学技術政策研究所,科学技術の中長期発展に

係る俯瞰的予測調査 デルファイ調査, NISTEP Report No.97,(2005).

11 経済産業省,技術戦略マップ 2008.

表 3 :サステナブルな概念 循環 共有 ネットワーク 3R(Reduce-Reuse-Recycle) 自然との共生 省エネ・省資源 長寿命 モノからサービスへ コミュニティ 愛着 簡明 本研究では、 「食」と「湯」の 2 つのテーマに ついて 3 つの企業デザイナーグループと共同でラ イフスタイル・デザインを実施し、テクノロジー の創出まで行った。テクノロジーの創出について は、生態系技術の機能面に着目する機能分析(図 1)に加え、生態系技術のデータベースやサステナ ブルな概念を基礎資料として機能分析を

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