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目標の視点から見た中学校家庭科「家族・家庭生活」領域における授業研究

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(1)

目標の視点から見た

中学校家庭科「家族・家庭生活」領域における授業研究

2020

兵庫教育大学大学院

連合学校教育学研究科

先端課題実践開発専攻

(兵庫教育大学)

村田 晋太朗

(2)

目 次 /

目 標 の視 点 から見 た中 学 校 家 庭 科 「 家 族 ・ 家 庭 生 活 」 領 域 における授 業 研 究

1 . 序 論

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 1 1 . 1 . 学 習 指 導 要 領 における「 家 族 ・ 家 庭 生 活 」 領 域 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 2 1 . 1 . 1 . 学 習 指 導 要 領 における「 G 家 庭 生 活 」 領 域 の再 設 定 の 背 景 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 3 1 . 1 . 2 . 再 設 定 後 の「 家 族 ・ 家 庭 生 活 」 領 域 における学 習 内 容 の変 遷 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 4 1 . 1 . 3 . 学 習 指 導 要 領 における「 家 族 ・ 家 庭 生 活 」 領 域 の位 置 付 け ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 8 1 . 2 . 「 家 族 ・ 家 庭 生 活 」 領 域 に関 する実 践 課 題 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 8 1 . 2 . 1 . 家 族 関 係 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 9 1 . 2 . 2 . 幼 児 の心 身 の発 達 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 9 1 . 2 . 3 . 「 家 族 ・ 家 庭 生 活 」 全 般 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 10 1 . 3 . 家 庭 科 における目 標 に関 する研 究 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 13 1 . 3 . 1 . ブルーム・ タキソノミーと先 行 研 究 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 13 1 . 3 . 2 . 改 訂 版 ブルーム・ タキソノミーと先 行 研 究 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 14 1 . 4 . 研 究 課 題 及 び本 研 究 の目 的 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 16 1 . 4 . 1 . 研 究 課 題 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 16 1 . 4 . 2. 本 研 究 の目 的 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 17 引 用 文 献 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 17

2 . 学 習 指 導 案 に見 る「 家 族 ・ 家 庭 生 活 」 領 域 の目 標 に関 する現 状 と課 題

2 . 1 . 本 章 の背 景 及 び目 的 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 22 2 . 2 . 研 究 の方 法 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 22 2 . 2 . 1 . 対 象 となる文 献 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 22 2 . 2 . 2 . 分 析 の手 続 き ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 23 2 . 2 . 3 . 手 続 きの適 用 例 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 24 2 . 3 . 結 果 及 び考 察 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 27 2 . 3 . 1 . 「 家 庭 や家 族 の基 本 的 な機 能 」 に対 応 した学 習 指 導 案 の分 析 と考 察 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 27 2 . 3 . 2 . 「 家 庭 生 活 と 地 域 と の 関 わ り 」 に 対 応 し た 学 習 指 導 案 の分 析 結 果 と考 察 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 29 2 . 3 . 3 . 「 家 族 関 係 をよりよくする方 法 」 に対 応 した学 習 指 導 案 の結 果 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 30

(3)

2 . 4 . 小 括 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 33 引 用 文 献 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 34 参 考 資 料 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 36 3 . 「 家 族 関 係 」 を題 材 にした問 題 解 決 学 習 の授 業 開 発 に向 けた調 査 3 . 1 . 本 章 の背 景 及 び目 的 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 37 3 . 2 . 授 業 開 発 のプロセス ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 39 3 . 3 . INS モデルについて ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 39 3 . 4 . 研 究 の方 法 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 42 3 . 5 . 予 備 調 査 (対 人 葛 藤 場 面 の選 定 ) ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 43 3 . 5 . 1 . 予 備 調 査 の概 要 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 43 3 . 5 . 2 . 予 備 調 査 の結 果 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 43 3 . 5 . 3 . 作 成 した対 人 葛 藤 場 面 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 44 3 . 6 . 本 調 査 (問 題 解 決 能 力 の把 握 ) ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 46 3 . 6 . 1 . 本 調 査 の概 要 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 46 3 . 6 . 2 . 分 析 の方 法 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 46 3 . 6 . 3. 結 果 及 び考 察 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 47 3 . 7 . 問 題 解 決 学 習 に関 する指 導 指 針 の検 討 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 50 3 . 8 . 小 括 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 51 注 釈 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 51 引 用 文 献 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 52 参 考 資 料 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 54

4 . 「 家 族 関 係 」 を題 材 にした問 題 解 決 学 習 の授 業 開 発 及 び効 果 の検 証

4 . 1 . 本 章 の背 景 及 び目 的 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 58 4 . 2 . 研 究 の方 法 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 58 4 . 3 . 開 発 した授 業 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 58 4 . 4 . 開 発 した授 業 の効 果 検 証 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 65 4 . 4 . 1 . (a)問 題 の定 義 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 65 4 . 4 . 2 . (b)方 略 の産 出 , (c)方 略 の選 択 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 66 4 . 4 . 3 . (d)結 果 の評 価 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 67 4 . 4 . 4 . 対 人 志 向 スタイル ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 67 4 . 5 . 小 括 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 70 引 用 文 献 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 71 参 考 資 料 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 72

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5 . 結 論

5 . 1 . 各 章 で得 られた知 見 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 77 5 . 1 . 1 . 学 習 指 導 案 に見 る「 家 族 ・ 家 庭 生 活 」 領 域 の目 標 に関 する現 状 と課 題 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 77 5 . 1 . 2 . 「 家 族 関 係 」 を題 材 にした問 題 解 決 学 習 の授 業 開 発 に 向 けた調 査 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 78 5 . 1 . 3 . 「 家 族 関 係 」 を題 材 にした問 題 解 決 学 習 の授 業 開 発 及 び効 果 の検 証 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 78 5 . 2 . 結 論 ( 家 庭 科 教 育 実 践 への示 唆 ) ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 79 5 . 3 . 今 後 の研 究 課 題 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 80 本 研 究 に関 連 する論 文 , 学 会 発 表 等 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 82 おわりに ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 83 謝 辞 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 85

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1. 序論

1. 序論

2017 年に改訂された中学校学習指導要領(文部科学省,2017)(以下,2017 年改訂) 技術・ 家庭,家庭分野(以下,中学校家庭科)の目標は,次のように設定されている. 「生活の営みに係る見方・考え方を働かせ,衣食住などに関する実践的・体験的な活動を通し て,よりよい生活の実現に向けて,生活を工夫し創造する資質・能力を次のとおり育成することを 目指す. (1) 家族・家庭の機能について理解を深め,家族・家庭,衣食住,消費や環境などについて,生活 の自立に必要な基礎的な理解を図るとともに,それらに係る技能を身に付けるようにする. (2) 家族・家庭や地域における生活の中から問題を見いだして課題を設定し,解決策を構想し, 実践を評価・改善し,考察したことを論理的に表現するなど,これからの生活を展望して課題 を解決する力を養う. (3) 自分と家族,家庭生活と地域との関わりを考え,家族や地域の人々と協働し,よりよい生活 の実現に向けて,生活を工夫し創造しようとする実践的な態度を養う. 2017 年改訂では,育成すべき資質・能力の観点から目標が改善されたほか,「小・中・高等学 校の内容の系統性を明確にし,各内容の接続が見えるように,小・中学校においては,従前の A, B,C,D の4つの内容を『A 家族・家庭生活』,『B 衣食住の生活』,『C 消費生活・環境』の3つの 内容としている(文部科学省,2017)」と学習内容は3つの柱で再構成された.先述の目標は, 「(1)家族・家庭の機能について理解を深め〜」「(2)家族・家庭や地域における生活の中から〜」 「(3)自分と家族,家庭生活と地域との関わりを考え〜」と記述されていることから,家族や家庭生 活,地域を起点とした学習により各資質・能力を育成することと解釈できる.つまり,「A 家族・家 庭生活」領域は家庭科の中心的な学習内容に位置づけられていると言える. だが,1958 年に改訂された中学校学習指導要領(以下,1958 年改訂)から,1989 年に改訂 された中学校学習指導要領(以下,1989 年改訂)まで,中学校家庭科には「家族・家庭生活」領域 に関する学習は教育課程に位置づけられていなかった. そのため,衣食住に関する学習内容と 比べて,「家族・家庭生活」領域は歴史の浅い領域であり,研究の蓄積も少ない. 本章では,「家族・家庭生活」領域の学習指導要領上での扱われ方や実践研究について整理し, 研究課題や本研究の目的について検討する.

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1. 序論 1 節では,これまでの学習指導要領において「家族・家庭生活」領域がどのように位置づけられ てきたかを整理する. 1.1.1. 学習指導要領における「G 家庭生活」領域の再設定の背景 1.1.2. 再設定後の「家族・家庭生活」領域における学習内容の変遷 1.1.3. 学習指導要領における「家族・家庭生活」領域の位置付け 2 節では,「家族・家庭生活」領域に関する先行研究を学習内容別で整理し,実践研究上の課 題について検討する. 1.2.1. 家族関係 1.2.2. 幼児の心身の発達 1.2.3. 「家族・家庭生活」領域全般 3 節では,実践研究上の課題として「目標」の視点に着眼する.家庭科教育における「目標」に 関する先行研究や用いられてきた理論を併せて整理する. 1.3.1. ブルーム・タキソノミーと先行研究 1.3.2. 改訂版ブルーム・タキソノミーと先行研究 以上を踏まえて,4 節では本研究の課題について検討する. 1.4.1. 研究課題 1 1.4.2. 研究課題 2 1.4.3. 本研究の目的 なお,領域名は,学習指導要領の改訂毎に変更されており,先行研究を概観しても共通で用い られている名称は確認できなかった.そこで,特定の学習指導要領を指さない場合は,最新の学 習指導要領で用いられている「家族・家庭生活」を以下でも用いる.1989 年改訂時を指す場合 は「G 家庭生活」,1999 年改訂中学校学習指導要領(以下,1999 年改訂)は「B 家族と家庭生 活」,2009 年改訂中学校学習指導要領 (以下,2009 年改訂)は「A 家族・家庭と子どもの成 長」,2017 年改訂は「A 家族・家庭生活」を用いる.

1.1.

学習指導要領における「家族・家庭生活」領域

本節では,1958 年改訂より「家族・家庭生活」領域に関する学習内容が位置づけられなくなっ た背景,及び 1989 年改訂時に「G 家庭生活」領域として再度設定され,2017 年改訂において も継続して位置づいている経緯について整理する.また再設定以降,学習指導要領において「家 族・家庭生活」領域がどのような内容として位置づけられてきたかについても整理し,学習指導要

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1. 序論 領における総合的な「家族・家庭生活」領域の位置づけについて検討する. 1.1.1. 学習指導要領における「G 家庭生活」領域の再設定の背景 中学校家庭科は,1947 年新制中学校の発足時には教科名「職業」として第 7 学年では「単元 (1)家庭生活」,第 9 学年では「単元(1)家庭生活と能率」などの学習内容が配置されていた(文 部省,1947).1951 年改訂時に「職業・家庭科」となり,「家庭生活のありかた」「家族関係」「能率 と休養」など,内容も改訂された(文部省,1951).1957 年に改訂された学習指導要領職業・家庭 科には,「家族・家庭生活」領域に関する学習内容として第 5 群「43.家族 保育・家族」において, 「家族の一員」「家族相互の理解」「家族相互の協力」「家族相互の満足な生活」「家庭生活の意義」 「家庭と社会」などの項目が配置されていた(文部省,1957). だが, 1958 年改訂では,「家族・家庭生活」領域に関する学習内容は配置されなくなった.こ の背景には,「職業・家庭科」から「技術・家庭」へと教科名が変更され,男女別修となったことが挙 げられる.男子は工的内容が中心となり,女子も「家庭工作」「家庭機械」「設計,製図」のように工 的内容が相当程度入り,それと入れ替わる形で家族や家庭生活に関する内容が削除された(大 竹,2003). その後,学習指導要領は大きく 2 回改訂された.その 2 回では,「家族・家庭生活」領域に関す る学習内容を再設定する動きはなかった.だが,「婦人に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関 する条約(1979 年第 34 回国連総会にて採択,翌年日本は署名)」を批准するために国内法制 など諸条件の整備の一環として,教育の機会均等を考え直す立場から家庭科の履修の在り方に ついて検討することが社会から要請された(中西,1993).そこから,「家族・家庭生活」領域の再 設定に関わる議論が開始された.また,1974 年には「家庭科の男女共修を進める会」が市川房 江氏を世話人として発足され,女子のみ家庭科への批判が運動として動き出していた(牧野,200 6). 文部省が出した 1984 年 12 月 19 日「今後の家庭科教育の在り方について(報告) (初等中 等教育局職業教育課,1985)」内では,「家庭を取り巻く環境の変化や婦人差別撤廃条約との関 連を考慮しながら,高等学校『家庭一般』の履修の在り方及びそれとの関連で中学校の『技術・家 庭』の在り方について検討することを目的」と明記された.具体的には,学習内容の見直しとして, 「家庭生活に必要な新しい知識や技術などを取り入れていくとともに,実践的な学習を重視し,家 庭環境の変化を踏まえて家庭生活を営み,その充実向上を図ることのできる能力や実践的な態 度などを育てる必要がある(初等中等教育局職業教育課,1985)」とし,「家族・家庭生活」領域に

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1. 序論 関する学習内容配置の必要性が謳われた.また,臨時教育審議会第 2 次答申(1986 年 4 月)で は,今日の家族形態の変化や女性の社会進出などによる家庭の教育力の低下に伴う家庭生活の 意義の軽視を背景とし,家庭教育の意義と活性化が提言されている(津止ら,1988).1987 年 1 2 月に教育課程審議会の「幼稚園,小学校,中学校及び高等学校の教育課程の基準の改善につ いて(答申)」において,「小学校の家庭科,中学校の技術・家庭科及び高等学校の家庭科につい ては,家庭を取り巻く環境や社会の変化に対応し,男女が協力して家庭生活を築いていくことや, 生活に必要な知識と技術を習得させることなどの観点から,その内容及び履修の在り方を改善す る(中略)中学校においては,情報や家庭生活にかかわる内容を加えるほか,すべての生徒に共 通履修させる領域と生徒の興味・関心等に応じて履修させる領域を設定する(教育課程審議会,1 988)」とある.最終的には,この答申を受けて,1989 年改訂より「G 家庭生活」という領域名で 再設定された.2017 年改訂においても,「A 家族・家庭生活」領域として継続的に位置づけられ た. まとめると,1958 年改訂において,技術分野と合同で「技術・家庭」と教科名が変更になり,よ り工的な学習内容に移行したことによって,「家族・家庭生活」領域に関する学習内容は設定され なくなった.また,1980 年女子差別撤廃条約に日本も署名をしたことを受け,技術・家庭の共修 や学習内容の検討が行われ,1989 年改訂より「家庭生活」として再設定された.これは,家庭科 の在り方の変化と,「家族・家庭生活」領域の配置の有無は関連していると推察される.そして,男 女共修となった 1989 年改訂以降の家庭科では「家族・家庭生活」領域は中心的な位置付けを保 ったまま現在に至っている. 1.1.2. 再設定後の「家族・家庭生活」領域における学習内容の変遷 次に,学習指導要領における「家族・家庭生活」領域では,どのような学習内容が配列され,ど のような体系で設定されているか,について検討する.「家族・家庭生活」領域が再設定された 19 89 年改訂から 2017 年改訂までの計 4 改訂における学習内容を整理した.結果として,「中学 生の成長」「家族の機能と家庭の機能」「家族関係」「幼児の心身の発達」「地域の人々との関わり」 「消費生活」「家庭の仕事」「環境」の 8 つの項目に分けることができた(表Ⅰ-1).以下では,各項 目の概要についてまとめる.

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1. 序論 表Ⅰ-1 「家族・家庭生活」領域の学習内容一覧 G家庭生活 B家族と家庭生活 A家族・家庭と子どもの成長 A家族・家庭生活 文部省,1989 文部省,1999a 文部科学省,2009 文部科学省,2017 ① 中学生の成長 ― (1)自分の成長と家族や家庭生活と のかかわりについて考えさせる (1)自分の成長と家族 ア 自分の成長と家族や家庭生活と のかかわりについて考えること (1)自分の成長と家族・家庭生活 ア 自分の成長 ② 家族の機能と家庭の機能 (1)家庭生活 ア 家庭の機能と家庭生活の意義を 知ること (3)家庭の仕事 ア 家庭の仕事の種類や内容につい て知り,計画を立てることができるこ と (3)家庭と家族関係 ア 家庭や家族の基本的な機能を知 り (2)家庭と家族関係 ア 家庭や家族の基本的な機能 (1)自分の成長と家族・家庭生活 ア 家族や家庭生活との関わりが分 かり,家族・家庭の基本的な機能につ いて理解するとともに,家族や地域の 人々と協力・協働して家庭生活を営 む必要があることに気付くこと ③ 家族関係 (1)家庭生活 イ 家族の生活と家族関係について 考えること (3)家庭と家族関係 ア 家族関係をよりよくする方法を考 えること (2)家庭と家族関係 イ これからの自分と家族とのかかわ りに関心をもち,家族関係をよりよく する方法を考えること (3)家族・家庭や地域との関わり ア 次のような知識を身に付けること (ア)家族の互いの立場や役割が分か り,協力することによって家族関係を よりよくできることについて理解する こと イ 家族関係をよりよくする方法及び 高齢者など地域の人々と関わり,協 働する方法について考え,工夫する こと ④ 幼児の心身の発達 ※「K保育」 (2)幼児の発達と家族 ア 幼児の観察や遊び道具の製作を 通して,幼児の遊びの意義について 考えること イ 幼児の心身の発達の特徴を知り, 子どもが育つ環境としての家族の役 割について考えること (5)幼児の生活と幼児との触れ合い ア 幼児の生活に関心をもち,課題を もって幼児の生活に役立つものをつ くることができること イ 幼児の心身の発達を考え,幼児と の触れ合いやかかわり方の工夫が できること(選択履修) (4)幼児の生活と家族 ア 幼児の発達と生活の特徴を知り, 子どもの育つ環境としての家族の役 割について理解すること イ 幼児の観察や遊び道具の製作な どを通して,幼児の遊びの意義につ いて理解すること ウ 幼児と触れ合うなどの活動を通し て,幼児への関心を深め,かかわり方 を工夫することができること エ 家族又は幼児の生活に関心をも ち,課題をもって家族関係又は幼児 の生活について工夫し,計画を立て て実践できること (2)幼児の生活と家族 ア 次のような知識を身に付けること (ア)幼児の発達と生活の特徴が分か り,子供が育つ環境としての家族の 役割について理解すること (イ)幼児にとっての遊びの意義や幼 児との関わり方について理解するこ と イ 幼児とのよりよい関わり方につい て考え,工夫すること (4)家族・家庭生活についての課題と 実践 ア 家族,幼児の生活又は地域の生 活の中から問題を見いだして課題を 設定し,その解決に向けてよりよい生 活を考え,計画を立てて実践できるこ と ⑤ 地域の人々との関わり (4)家庭生活と地域との関係 (6)家庭生活と地域とのかかわり ア 地域の人々の生活に関心をもち, 高齢者など地域の人々とかかわるこ とができること (選択履修) (2)家庭と家族関係 ア 家庭生活と地域とのかかわりに ついて理解すること (1)自分の成長と家族・家庭生活 ア 家族や地域の人々と協力・協働し て家庭生活を営む必要があることに 気付くこと (3)家族・家庭や地域との関わり ア 次のような知識を身に付けること (イ)家庭生活は地域との相互の関わ りで成り立っていることが分かり,高 齢者など地域の人々と協働する必要 があることや介護など高齢者との関 わり方について理解すること ⑥ 消費生活 (2)家庭の経済 ア 家庭の収入と支出を知ること イ 物資・サービスの選択,契約,購 入及び活用について考え,消費者と しての自覚をもつこと (4)家庭生活と消費 ア 販売方法の特徴や消費者保護に ついて知り,生活に必要な物資・サー ビスの適切な選択,購入及び活用が できること イ 自分の生活が環境に与える影響 について考え,環境に配慮した消費 生活を工夫すること ※「D身近な消費生活と環境」 ※「C消費生活・環境」 ⑦ 家庭の仕事 (3)家庭の仕事 イ 簡単な食事を整えることができる こと ウ 被服計画を考え,適切な着用及 び手入れができること エ 室内の整備と美化の工夫ができ ること ※小学校家庭科 ※小学校家庭科 ※小学校家庭科 ⑧ 環境 ― (6)家庭生活と地域とのかかわり イ 環境や資源に配慮した生活の工 夫について,課題をもって実践できる こと (選択履修) ※「D身近な消費生活と環境」 ※「C消費生活・環境」 項目

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1. 序論 ① 中学生の成長 「中学生の成長」に関する学習内容は 1999 年改訂から現在まで配列されていた.1999 年改 訂では,筒井(1993)は,自分の成長と家族や家庭生活は,幼児の発達と家族・家庭と家族関係 の学習の導入として設けられていると説明した.順序性について明記されていないが,体を通し て家族や家庭生活について感じ取らせるように意図することが勧められていた.2009 年改訂及 び 2017 年改訂では,「中学生の成長」は 3 年間家庭科を学ぶためのガイダンス的な機能を持っ ている.そのため,「中学生の成長」に関する内容は,衣食住生活や消費生活も含めた家庭科の 学習全体を概観する目的で配列された. ② 家族の機能と家庭の機能 「家族の機能と家庭の機能」は,4つすべての学習指導要領に配列されていた.1989 年改訂に ある「(3)家庭の仕事ア 家庭の仕事の種類や内容について知り,計画を立てることができること (文部省,1989)」は,「⑦家庭の仕事」でも後述するが, 1999 年改訂から小学校家庭科に移っ ている(文部省,1999b). ③ 家族関係 「家族関係」は,4 つすべての学習指導要領に配列されていた. 1989 年改訂では,家族関係 の構造そのものを理解することを目標にしているが,それ以降の学習指導要領では「家族関係を よりよくする方法」について考えることが求められており,複雑な学習に転換されたと言える. ④ 幼児の心身の発達 「幼児の心身の発達」は,1989 年改訂時には,「K 保育」と別領域として設定されていたが,1 999 年改訂より「家庭生活」領域に包含されている. それ以降は幼児の発達や幼児の遊び,幼 児との触れ合いなどの学習内容が配列された. ⑤ 地域の人々との関わり 「地域の人々との関わり」は,すべての学習指導要領に配列されていた.家庭を支える地域の 活動や地域を支える活動などについて取り上げ,家庭生活と社会との関連について理解を深めさ せる学習内容となっている.

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1. 序論 ⑥ 消費生活 「消費生活」は,1989 年及び 1999 年改訂では,「家族・家庭生活」領域の中に配列されてい た.2009 年改訂時には「D 身近な消費生活と環境」,2017 年改訂時には「C 消費生活・環境」と 別領域に配置され,学習の 1 つの柱となった. ⑦ 家庭の仕事 「家庭の仕事」は,1989 年改訂には衣食住に関する家庭の仕事として「家庭生活」領域に位置 付いていたが,それ以降は主に小学校家庭科で学習することとなった.「②家族の機能と家庭の 機能」の項目での述べたように衣食住生活に関連した家庭の仕事は,1999 年改訂以降,小学校 学習指導要領家庭に移った. ⑧ 環境 「環境」は,1999 年改訂にのみ設定された学習内容であった.それ以後は,「⑥消費生活」と同 様に,別領域に配置されていた. 表Ⅰ-1 より,「⑥消費生活」「⑦家庭の仕事」「⑧環境」の項目は,1999 年改訂もしくは 2009 年改訂より「家族・家庭生活」領域から他領域に移っていき,①〜⑤の項目に関しては,1999 年 改訂以降大幅な変更はなく配置されていることが分かる. 次に,整理した 8 つの項目の体系について検討する.2017 年改訂では学習内容の示し方の 改善として,「空間軸と時間軸という二つの視点からの学校段階に応じた学習対象の明確化であ る.空間軸の視点では,家庭,地域,社会という空間的な広がりから,時間軸の視点では,これま での生活,現在の生活,これからの生活,生涯を見通した生活という時間的な広がりから学習対 象を捉えて指導内容を整理することが適当である(文部科学省,2017)」と明示されている.また, 2017 年改訂の学習内容は,「中学校における空間軸の視点は,主に家庭と地域,時間軸の視点 は,主にこれからの生活を展望した現在の生活としている(文部科学省,2017)」と解説されてい る.この「空間軸」「時間軸」の視点を基に,これまでの「家族・家庭生活」領域における学習内容の 体系について検討する. まず,「空間軸」の視点で見ていくと,「①中学生の成長」「②家族の機能と家庭の機能」「③家 族関係」「④幼児の心身の発達」「⑦家庭の仕事」と「⑥消費生活」の一部は主に家庭の視点から 見た学習内容であった.「⑤地域の人々との関わり」は主に地域に関連した学習内容であった.

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1. 序論 「⑥消費生活」の消費者問題に関連する学習や 1999 年改訂「B 家族と家庭生活」(4)イや(6)の 環境・資源に関する内容は一部ではあるが社会の視点から見た学習内容であった. 次に,「時間軸」の視点は,「①中学生の成長」や「④幼児の心身の発達」の一部の学習内容で は,これまでの生活について触れる機会はあるものの,それ以外の学習内容は現在の生活に焦 点が当たっている.将来の生活がどうなっていくかという学習はほとんど見受けられなかった.よ って,「時間軸」の視点で見た体系は,現在の生活に焦点化された学習内容であった. 以上より,「空間軸」は家庭・地域の視点,「時間軸」は現在の生活に焦点化されていた.一方で, 消費者問題,環境や資源の学習内容のように,社会の視点に位置づいていた過去もあり,「家族・ 家庭生活」領域が同じ体系を維持してきたとは言い難い. 1.1.3. 学習指導要領における「家族・家庭生活」領域の位置付け 1.1.1.では,学習指導要領改訂に伴う家庭科の在り方と「家族・家庭生活」領域は関連している ことを明らかにした.その根拠として,技術分野と同一教科になり,男女別修になった際には,工的 な学習内容を中心とすることが影響して,「家族・家庭生活」領域は位置づかなくなったこと,女子 差別撤廃条約への日本の批准後には,男女共修に伴い,「家族・家庭生活」領域は再度設定され たことがある. 1.1.2.では,学習指導要領における「家族・家庭生活」領域の位置付けでは,1989 年改訂から 2017 年改訂までの 4 改訂における「家族・家庭生活」領域の学習内容を整理し,学習内容につ いて検討した.結果として,①から⑤までの学習内容は,1999 年改訂以降,大きな変更なく配置 されていた.また,学習内容の体系として,「空間軸」では主に家庭や地域,「時間軸」では主に現 在の生活に焦点が当てられていたことが明らかとなった. 以上より,1989 年改訂以降の男女共修となった「家族・家庭生活」領域は,家庭科の在り方を 表す重要な領域であり,中学生の家庭や地域における現在の生活を学ぶ領域であると言える.

1.2.

「家族・家庭生活」領域に関する実践課題

「家族・家庭生活」領域に関する先行研究を整理すると,表Ⅰ-1 にある「③家族関係」「④幼児 の心身の発達」に関連した実践研究が多く確認された.また,特定の学習内容に限定するのでは なく,「家族・家庭生活」領域全般を対象にした調査研究も確認された.よって,次の 3 項目で先 行研究を整理し,「家族・家庭生活」領域の実践課題を検討する. 1.2.1. 家族関係

(13)

1. 序論 1.2.2. 幼児の心身の発達 1.2.3. 「家族・家庭生活」領域全般 1.2.1. 家族関係 1999 年改訂の内容の取り扱いにおいて,「実習や観察,ロールプレイングなどの学習活動を中 心とするよう留意すること(文部省,1999a)」と明示されたことも影響し,ロールプレイング(以下, RP)に関する実践研究が行われてきた.RP に関する授業開発として,中村・夫馬(2008a)はペ アによる RP や物語形式の場面設定をした授業を開発し,効果について検討した.鎌野(2016) は,人間関係学を理論として援用した家庭科の RP を開発・実践した.萬崎ら(2016)は,社会的 な家族に関する課題を盛り込みながら,RP の活動を取り入れた家族領域の授業を開発・実施し た.RP により家族を学習する中学生を対象にした研究として,中村・夫馬(2008b)の RP に対す る中学生の意識調査,鎌野・伊藤(2012)の生徒が RP を通してどのような学びを展開するのか を明らかにした研究がある.その他,RP におけるウォーミングアップの有効性について検討した 鈴木(1994)の研究,RP のシナリオの発言を分析した中村・夫馬(2007)の研究,RP がどのよ うに活用されているか家庭科担当教員への調査を行なった中村・夫馬(2008c)の研究が確認で きた. RP 以外の実践研究としては上野・鈴木(1994)は,中学 1 年生の親とのコミュニケーションの 実態から「家庭生活」領域の「家族関係」の扱い方について考察した.綿引・岩﨑(2005)は「家族」 教育に対する生徒の意識を調査した. 以上の RP に関する研究は,家族関係に関する研究では,主に学習方法である RP に着眼し, (1)その効果を高めるための授業開発に関する研究,(2)生徒の思考や意識を把握する研究,な どが行われてきた.家族関係を学習する上で,RP を方法として用いることに対する一定の効果や RP に対する肯定的な評価がされた. 1.2.2. 幼児の心身の発達 先述の通り,1989 年改訂時には保育に関する内容は単独で「K 保育」と設定されていたが,1 999 年改訂より「B 家族と家庭生活」の一部に配置された.また,1999 年改訂の内容の取り扱 いにおいて「幼稚園や保育所等で幼児との触れ合いができるよう留意すること(文部省,1999a)」 と明記されて以降,保育体験を中心とした実践的な研究が盛んに行われるようになった.なお,保 育体験に関する称呼は,論文によって個別で使用されている.当該の論文に記載されているもの

(14)

1. 序論 を用いる. まずは,保育体験における生徒の学びや思考の把握を行なった研究がある.鎌野(2013)は, 保育体験学習後の生徒の語りから,中学生の「幼児との関係性」の変容につながっている要因を 明らかにした.叶内・倉持(2015a)は,幼児とのふれ合い体験に何を体験し,その時にどのように 感じていたかを明らかにしている.叶内・倉持(2015b)は,幼児とのかかわり方の面で不適切と 思われる行動をとった生徒に着目し,かかわり方と心情との関連について検討した.保育体験の 教育効果を確認した研究も行われている.鎌野・伊藤(2010)は,保育体験学習の教育的効果に ついて考察した.岡野ら(2012)は,中高生を対象にした,「幼児とのふれ合い体験」を含む保育 領域の教育効果を実証的に明らかにした. 次に,学習効果を高めるための指導方法に関する研究がある.鎌野・伊藤(2008)は,アクショ ンリサーチによる幼児とのふれあい体験の教育的効果を高める実践について検討した.様々な手 立てを実施することで,その教育的効果が確認されている.叶内・倉持(2014)は,クラスごとに 異なったふれ合い体験により,学びがどのように異なるかを検証した. 保育実習の実施は,保育園や幼稚園との連携により支えられていることから,園側を研究対象 にした調査研究も行われている.伊藤(2007)は,学校側と受け入れる幼稚園・保育園側の双方 から保育体験学習の課題を検討した.倉持ら(2009)は,保育現場における中高のふれ合い体 験活動の状況と活動への捉え方について調査を行なっている. その他,立松ら(2007)は,中学校家庭科教員へ調査を行い,教育現場で求められている学 習内容を整理し,内容の提案を行なっている.家庭科と職業体験で行われた「幼児とのふれ合い 体験」での学習を比較し,教育効果にどのような違いがあるか考察した岡野ら(2011)の研究も ある. 以上の保育体験に関する研究では,幼児の心身の発達に関する実践研究では,(1)保育実習 における生徒の学びや教育効果を確かめる研究,(2)学習効果を高める指導方法に関する研究, (3)保育実習を受け入れる園側を対象にした研究,などが行われてきた.学習者,授業設計に当 たる家庭科教員,受け入れ先の園の 3 つの視点から多面的に研究され,知見が蓄積された.1.2. 2.家族関係で整理した RP に関する研究と同様に,保育体験に関する研究も学習方法を起点と して行われた. 1.2.3. 「家族・家庭生活」領域全般 1989 年改訂において「G 家庭生活」領域が再設定されたことを受けて,領域に関する意識な

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1. 序論 どの調査研究がいくつか行われた.浜島(1992)は,免許所有及び免許外の家庭科担当教員を 対象に,家庭科指導に関する意識と実態について調査した.この調査は 1990 年に実施されてい ることから,1989 年改訂時の「G 家庭生活」領域に対して,「よかった」「設置しなくてもよい」「関 心がない,わからない」と質問していると言える.結果として,免許所有教員は 52.4%,免許外教 員は 40.3%が「よかった」と答えており,免許外教員の方が有意に低かった.また,設定しなくて もよいとの回答は免許所有教員で 29.5%,免許外教員は 19.4%であった.免許所有教員の方 が,家庭生活領域の設置に対して賛否が分かれる結果となった.松村・小池(1990)は,家庭科 担当教員に対して,1989 年学習指導要領や「G 家庭生活」領域に対する意識調査を行った.結 果として,「G 家庭生活」領域の再設定を肯定的に捉えている教員は約 7 割おり,その理由として 「社会の情勢に合致している」などが挙げられた.一方,否定的な約 2 割の教員は,「教えにくそう」 「内容がよくわからない」という意見であった.総合的な結果から,内容,指導方法への不安を教 員が抱いていることが示唆された.中西(1993)は,中学校家庭科教員に対して,「G 家庭生活」 領域の再設定に対する意見や学習内容に対する意見について調査を行った.結果として,家庭生 活領域の再設定に対して,全面的に賛成は 13%,問題はあるが賛成は 62%という結果であっ た.半数以上の教員は「G 家庭生活」領域に対して問題意識を持っていた.学習内容に関する調 査では,家庭経済(消費生活に関する内容など)・家族関係・地域社会との関わりは社会科で学ん だ方がいいのではないかという意見も明らかにされている.中間・伊藤(1997)は,全国の中学校 家庭科教員への調査において,学習内容に対する意識を調査した.結果として,「取り入れたい内 容」「削除したい内容」は「G 家庭生活」領域が最も多かった.また,「G 家庭生活」領域に対する意 見として,「家庭環境の複雑な家庭もありやりづらい」「全領域を通じて扱えば特別取り出すこと はない」「削除し領域へ移行したい内容」などの意見が見られた.k 以上のように,1989 年改訂より再設定された「G 家庭生活」領域に対する意識や領域に対す る評価を調査した研究がいくつか確認された.どの調査においても,領域に対する評価は二極化 していた.「G 家庭生活」領域に関する学習の必要性は確認されているものの,否定的な意見とし て「教えにくそう」「内容がわからない」「社会科で学んだ方がいい内容がある」「家庭環境への配 慮によるやりにくさ」「取り出す必要がない」のように,指導の不安感や領域に対する理解の不十 分さが示唆された. 「G 家庭生活」領域が再設定された約 20 年後に行われた黒光ら(2010)の調査では,家庭科 教員への調査を 2008 年に実施しているため,「B 家族と家庭生活」領域領域に対する意識につ いて明らかにしている.結果として,「家族・家庭生活」領域に対してあまり得意でないと回答した

(16)

1. 序論 教員は 49.5%,苦手と回答した人は 14.3%であった.とても得意,やや得意と回答した人は 28. 6%であり,消極的な回答をした教員の方が多かった.消極的な回答をした理由としては,「生徒 のプライバシーに関わるから」「指導しにくいから」が多かった.20 年経過してもなお,生徒のプラ イバシーに深く関わる学習内容であることから指導が困難であるという課題は残ったままである と言えるだろう.片田江(2010)は,高等学校家庭科教員へのインタビューを通して,家族教育体 験が家庭科教員にとってどのような意味を持つのかを明らかにした.結果として,3 つのエッセン スとして,「『とりあえずお知らせみたいな感じ』で教える」,「『私だって私の人生しか知らないから』 と思いながら教える」,「『気を遣いすぎて』『ちょっと怖い』と思いながら教える」ことを明らかとした. 中学校と高等学校では生徒の発達段階は異なるものの,教科担任制であるなどの背景は同様で あるため,片田江(2010)の知見は中学校家庭科教員の持つ不安感を示唆していると考えられ る.伊深(2016)は,1989 年改訂以降に出版された書籍に掲載されている家族の授業実践を内 容,方法,教材の視点で分析した.結果として,(1)抽出した 70 編のうち,中学校の実践は 25 編 あった,(2)家族を対象にして学ぶ・人間の成長の中で家族を学ぶ・多領域の中で家族を学ぶ, の 3 分類を明らかにした,(3)授業方法として,討論・VTR 視聴・感想記述・聞き取り・RP などが 多く用いられていた.指導が難しいとされている家族の授業において,内容や方法を工夫して,多 様な実践が開発されていることが明らかとなった.不安感と戦いながら,様々な学習内容や指導 方法を新たに開発するなどの工夫を行うことによって,その課題を乗り越えようとする姿が示唆さ れた.村田ら(2017)の研究は,全日本中学校技術・家庭科研究会が毎年発行する機関誌『理論 と実践』に掲載されている「家族・家庭と子どもの成長」領域に関する実践論文を分析し,実践を 一体的に捉え,現状と課題を明らかにした.結論として,目標や評価に関する課題が明らかとなっ た.その根拠としては,(1)実践研究の背景が具体的に把握することができていなかった,(2)実 践を通じた生徒の変化をどのように評価したのかが不明瞭であった,(3)題材目標の記述が欠如 している論文が確認された,の3点が挙げられる. 「G 家庭生活」領域が再設定された直後に行われた研究では,指導の不安感や領域に対する 理解の不十分さが明らかになった.その課題は,20 年後にも確認されており,どう教えればいい のか,何を教えればいいのか,といった不安は今もなお課題として残っていた.そのような課題を 解決するために,家庭科教員は「内容」や「方法」を主軸に置いた実践研究を行なっていることも 明らかとなった.例えば,家族関係の学習では RP を,幼児の心身の発達では保育体験を方法と した研究が盛んに行われてきた.伊深(2017)においても多様な学習内容が開発されていた.し かし,実践を分析した村田ら(2017)の研究では,実践課題は内容や方法の視点ではなく,目標

(17)

1. 序論 にあることが示唆された.しかし「家族・家庭生活」領域の実践研では,目標の視点から見た研究 は行われていない.次節では,対象を広げて「家庭科教育」全般における「目標」に関する先行研 究を概観する.

1.3.

家庭科における目標に関する研究

家庭科における目標に関する研究は目標分析に関する理論が用いられてきた.目標分析に関 する理論として,海外を中心にこれまで複数の理論が開発されている.目標分析に関する先駆的 理論として,1956 年に B. S. Bloom et al.によって発表された「Bloom’s Taxonomy(ブル ーム・タキソノミー,以下 BT)」がある.また,1980 年代のスタンダード運動の中で,Anderson et a l.は 2001 年に「Revised Bloom’s Taxonomy(改訂版ブルーム・タキソノミー,以下 RBT)」や M arzano et al.の「Dimensions of Learning(学習の次元)」,Webb et al.の「Depth of Kn owledge(知の深さ)」,Wiggins et al.の「structure of knowledge(知の構造)」の枠組みも ある(石井,2014).

家庭科教育では,主に義務教育段階において,目標の性質を把握することや目標の明確化を目指 した研究として,「Revised Bloom’s Taxonomy(改訂版ブルーム・タキソノミー,以下 RBT)」及び RBT の理論背景となっている「Bloom’s Taxonomy(ブルーム・タキソノミー,以下 BT)」が用いら れてきた.以下では,BT に関する理論と先行研究,RBT に関する理論と先行研究についてまとめる.

1.3.1. ブルーム・タキソノミーと先行研究

目標の明確化を目指す先駆け的な理論としての B. S. Bloom et al.(1956)による BT は,大学 のテスト作成に関して,作成者の共通言語として開発された.BT は,認知領域(B. S. Bloom et a l., 1956), 情意領域(D. R. Krathwohl et al., 1964), 精神運動領域(A. Harrow,1972 や B. J. Simpson,1966)の 3 領域が発表されている.その内,「認知領域」は,「知識」「理解」「応 用」「分析」「総合」「評価」の主要な 6 カテゴリーがあり,「知識」から「評価」につれて,単純な認知から 複雑な認知という順序になっている(石井,2002). 日本の家庭科教育において目標を分析した研究は,岩見・瀧沢(1974)の研究が起源である.岩見 らは,1969 年改訂学習指導要領の目標が「〜の能力を養う」「〜について知る」と不明瞭であり,目標 の明確化が課題であると指摘している.そこで,BT の中でも「認知領域」の「知識」「理解」「応用」の 3 カテゴリーに着目し,中学校1年食物領域の内容の一部における明確な目標を試案した.「〜について 知る」は「〜について述べることができる」や「関連づけて書くことができる」のように目標の具体例を示

(18)

1. 序論 した.木村・田辺(1976)は,日本の学習指導要領の「目標の抽象的な文章表現」「目標と内容の対応 の不明確さ」を背景に,日本とアメリカミネソタ州の目標(どちらも食習慣に関する学習)の表現法を B T のカテゴリーに基づき比較し,抽象的な日本の学習指導要領の記述を解釈するための資料を提示し た.また,日本の記述にある「知る」「考える」「できる」の各目標用語は,さまざまな解釈を許すあいまい な言葉であり,目標を示す言葉としてあまり適切ではないと結論づけている.刀祢館(1983)は,BT の認知領域のカテゴリーを用いて,小学校被服実習の「三つ折り縫い」の完全習得を目指した目標記 述を開発した.これら 3 つの研究は,目標の明確化を目指した先駆的な理論である BT を用いた研究 であった.BT を用いることで,日本の学習指導要領の不明瞭な記述を明確にするための参考となる 記述例を作成することが可能であると言える. 1.3.2. 改訂版ブルーム・タキソノミーと先行研究 L. W. Anderson et al.(2001)は,初等・中等教育段階の現場向けに, RBT を発表した.RB T の基本的な方針として,(1)目標・授業活動・評価の全過程を対象としていること,(2)目標の記述方 法では,動詞(例えば,BT では「理解」だったものが RBT では「理解する」)で表現されるようになった ことが挙げられている(石井,2002).また,BT の「知識」カテゴリーの中に混在していた名詞の側面と 動詞の側面を分離させ,名詞の側面は「知識次元」に,動詞の側面は「記憶する」カテゴリーとなり,BT の構造を継承した「認知過程次元」として位置付けた(図Ⅰ-1).

「知識次元」は “knowing that(事実や法則についての「宣言的知識」)”と“knowing how(や り方についての「手続き的知識」)”とに分けられる.「宣言的知識」はさらに,「個別・具体的な内容要素 を指し示す知識である『事実的知識』と,より一般化された知識である『概念的知識』とに分割される (石井,2002)」.自分自身についての知識や人間一般に関する知識として「メタ認知的知識」がある. 以上の知識は,「具体→抽象」という原理で「事実的知識」「概念的知識」「手続き的知識」「メタ認知的 知識」の順に配列された(石井,2002). 「認知過程次元」は,先ほどの「記憶する」「理解する」「応用する」「分析する」「評価する」「創造する」 の 6 カテゴリーが複雑性の原理によって配列され(石井,2002),表Ⅰ-2 のような二次元の表(以下 RBT テーブル)が開発された.

(19)

1. 序論 図Ⅰ-1 BT の認知領域と RBT の関連 表Ⅰ-2 RBT テーブル 家庭科教育において,河村(2013)は小学校家庭科の調理実習を通じた調理技能(技能や調理に 関する知識)の習得状況を把握する研究を行っている.状況把握のためのテスト項目作成時に学習内 容を RBT の 4 つの知識次元に分類している.岡・三好(2018)は,メタ認知に着目した資質・能力型 ポートフォリオの開発のため,2009 年改訂小学校学習指導要領衣生活領域「(5)生活を豊かにする ための布を用いた製作」の解説にある記述を RBT の認知過程次元を中心に分類し,製作の活動を想 定して RBT テーブルを試案している. 以上の研究は,テスト項目やポートフォリオを開発するために,RBT の知識次元の主要タイプや認 知過程次元の 6 つのカテゴリーを用いて目標の記述の生成を行っている.BT に関する先行研究のよ うに,目標の明確化を目指して RBT を用いてはいなかった.また,「家族・家庭生活」領域の目標に関 する先行研究も確認できなかった.村田ら(2017)では,実践課題が目標に含まれる可能性が示唆さ れている.よって,本節で整理した理論を用いて,「家族・家庭生活」領域の実践における目標の課題 を具体的に把握する必要がある.

(20)

1. 序論 BT 及び RBT の理論及び家庭科教育における先行研究を概観した結果,本研究の分析理論として RBT を用いることが適していると考えられる.その理由は 3 つある.1 つ目として,BT は,大学のテス ト作成において作成者のために開発されたが,RBT は初等・中等教育段階の現場向けに開発されて いる点において,中学校家庭科と適合する.2 つ目は,RBT は知識次元と認知過程次元の二次元で 目標を分類することができ,BT に比べてより明確に目標を解釈できる点である.そして 3 つ目は,RB T の理論によって学習指導案に記述のある学習活動や評価を分析することで,目標・授業・評価の「整 合性」が検討でき(石井,2015),授業改善の視点が得られるためである.

1.4.

研究課題及び本研究の目的

1.4.1. 研究課題 以上より,「家族・家庭生活」領域に関わる実践上の課題として,村田ら(2017)は題材レベル では目標が抽象的であり,かつ具体的な授業後の姿がイメージできないという現状を明らかとし た.また,家庭科教育における目標に関する研究を整理したところ, 衣食を対象にした研究はい くつか確認できたが,「家族・家庭生活」領域を対象にした研究は確認されていない.これまでの 「家族・家庭生活」領域における研究は,主に学習内容や学習方法に関するものが中心であり,目 標の視点から課題を把握することや,目標の視点から授業を開発し,「家族・家庭生活」領域にお ける指導の難しさを解決するための方策に関する研究は見受けられない.以上の背景を踏まえ, 本研究では 2 点の研究課題を設定する. (研究課題1) 授業レベルにおける「家族・家庭生活」領域の目標を把握する 先述したように,村田ら(2017)の研究では,実践論文において題材の目標が不明確であるこ とが指摘されている.だが,1 つ 1 つの授業の目標の性質,課題の所在については言及されてい ない.そこで,RBT の理論を用いて,実践論文のような題材規模の実践を対象にするのではなく, 1 時間単位の授業を対象にして,目標の内実について把握し,目標に関する現状や課題について 考察する必要があると考える.これを本研究の課題の 1 つ目とする. (研究課題2) 目標に着目した授業の開発とその効果の検証 続いて,研究課題 1 で明らかとなった課題を踏まえて,目標の視点から新たに授業を開発・実 施し,学習効果について検討する.「家族・家庭生活」領域に関する授業づくりにおいて,これまで 「内容・方法」の視点からアプローチしていたのに対して,「目標」の視点からアプローチした授業

(21)

1. 序論 提案をすることは,実践課題の解決方策になると考える.これを本研究の 2 つ目の課題とする. 1.4.2. 本研究の目的 本研究の目的は,中学校家庭科「家族・家庭生活」領域の授業を「目標」の視点から分析し課 題を明らかにすることである.さらに,明らかとなった課題を解決するために,「目標」の視点から 授業を開発し,効果検証を行うことで家庭科教育への示唆を得ることである. 引用文献

A. Harrow(1972)A Taxonomy of the Psychomotor Domain: A Guide for Developing Behavioral Objectives, Philadelphia, David Mckay.

B. J. Simpson(1966)The Classification of Educational Objectives: Psychomotor Domain, Illinois Journal of Home Economics, Vol.10(4). B. S. Bloom, M. D. Engelhart, E. J. Furst, W. H. Hill, D. R. Krathwohl

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(22)

1. 序論 鎌野育代・伊藤葉子(2008)中学校家庭科における幼児とのふれ合い体験の教育的効果をどの ように高めていくのか:アクションリサーチによる検討,千葉大学教育学部研究紀要,56, pp.201-208. 鎌野育代・伊藤葉子(2010)子どものイメージと自己効力感の変容からみる保育体験学習の教 育的効果,日本家庭科教育学会誌,52(4),pp.283-290. 鎌野育代・伊藤葉子(2012)中学生たちは,家庭科の保育・家族学習におけるロールプレイングを 通して何を学ぶのか?,千葉大学教育学部研究紀要,60,pp.259-266. 鎌野育代(2013)家庭科の保育体験実習における中学生の「幼児との関係性」の変容,日本家庭 科教育学会誌,56(4),pp.203-211. 鎌野育代(2016)家族学習のロール・プレイングにおける中学生の家族関係に関する学びのプロ セス,日本家庭科教育学会誌,58(4),pp.210-221. 叶内茜・倉持清美(2014)中学校家庭科のふれ合い体験プログラムによる効果の比較:幼児への 肯定的意識・育児への積極性と自尊感情尺度から,日本家政学会,65(2),pp.58-63. 叶内茜・倉持清美(2015a)ふれあい体験時の幼児とのかかわりから引き出された中学生の経験 内容:生徒のナラティブ分析から,保育学研究,53(2),pp.151-161. 叶内茜・倉持清美(2015b)中学生における幼児とのかかわり方と心情の関連:幼児とのふれ合 いを拒否した生徒の事例に着目して,日本家庭科教育学会誌,58(3),pp.164-171. 片田江綾子(2010)家族について教えるということ:家庭科教員の家族教育体験に関する現象学 的研究,日本家庭科教育学会,53(1),pp.22-31. 河村美穂(2013)家庭科における調理技能の教育:その位置づけと教育的意義,東京:勁草書房, pp.207-221. 木村温美・田辺幸子(1976)家庭科教育目標の明確化について(第 1 報)表現法の日米比較,家 政学会誌,27(8),pp.37-43. 教育課程審議会.(1988)幼稚園,小学校,中学校及び高等学校の教育課程の基準の改善につい て(答申),文部時報 2 月号,pp.42-92. 倉持清美・伊藤葉子・岡野雅子・金田利子(2009)保育現場における中・高校生のふれ合い体験 活動の実施状況と受け止めかた,日本家政学会,60(9),pp.817-823. 黒光貴峰・新馬場有希・徳重礼美(2010)鹿児島県における家庭科教育の実施状況:中学校家 庭科教員の実態,鹿児島大学教育学部研究紀要.教育科学編,62,pp.203-215.

(23)

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(24)

1. 序論 文部省(1999a)「第 2 章 第 8 節 技術・家庭」,中学校学習指導要領.(国立教育政策研究所学 習指導要領データベース, https://www.nier.go.jp/guideline/h10j/chap2-8.htm, 2020.1.6.最終アクセス) 文部省(1999b)「第 2 章 第 8 節 家庭」,小学校学習指導要領.(国立教育政策研究所学習指 導要領データベース, https://www.nier.go.jp/guideline/h10e/chap2-8.htm, 2020.1.6.最終アクセス) 村田晋太朗・山本亜美・永田夏来(2017)実践論文に見る中学校家庭分野「家族」教育の現状と 課題:全日本中学校技術・家庭科研究会機関誌「理論と実践」を対象として,日本家庭科教育 学会誌,60(1),pp.24-30. 中間美砂子,伊藤圭子(1997)中学校技術・家庭科カリキュラムの検討:技術・家庭科家庭系列 (仮称)担当教員を対象とした調査を中心に,日本教科教育学会誌,20(2),pp.49-56. 中村純子・夫馬佳代子(2007)中学校技術・家庭科におけるロールプレイングの教育的効用につ いて(第 1 報):中学生のシナリオの分析をもとにして,岐阜大学教育学部研究報告,56(1), pp.105-130. 中村純子・夫馬佳代子(2008a)中学校技術・家庭科におけるロールプレイングの教育的効用に ついて(第 3 報):家族とのかかわりをみつめ直すロールプレイングを取り入れた教材の開発, 岐阜大学教育学部研究報告,57(1),pp.79-88. 中村純子・夫馬佳代子(2008b)中学校技術・家庭科におけるロールプレイングの教育的効用に ついて(第 2 報):中学生の授業後のアンケートの分析,岐阜大学教育学部研究報告,56(2), pp.137-144. 中村純子・夫馬佳代子(2008c)中学校技術・家庭科(家庭分野)担当教諭のロールレプイングの 取り入れに対する意識調査,岐阜大学教育学部研究報告(自然科学),32,pp.69-78. 中西雪夫(1993)技術・家庭科「家庭生活」領域の学習内容の検討:移行期における佐賀県公立 中学校の家庭科担当教員の意識調査から,佐賀大学教育学部研究論文集,40(3),pp.9-23. 岡野雅子・伊藤葉子・倉持清美・金田利子(2011)家庭科の幼児とのふれ合い体験と保育施設で の職場体験の効果の比較,日本家庭科教育学会誌,54(1),pp.31-39. 岡野雅子・伊藤葉子・倉持清美・金田利子(2012)中・高生の家庭科における「幼児とのふれ合い 体験」を含む保育学習の効果:幼児への関心・イメ-ジ・知識・共感的応答性の変化とその関連, 日本家政学会,63(4),pp.175-184. 岡陽子・三好智恵(2018)メタ認知に着目した資質・能力型ポートフォリオの開発と有効性の検

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(26)

2. 学習指導案に⾒る「家族・家庭⽣活」領域の⽬標に関する現状と課題

2. 学習指導案に見る「家族・家庭生活」領域の目標に関する現状と課題

2.1.

本章の背景及び目的

本章の目的は,学習指導案の記述から,目標の性質を具体的に読み取る方法について検討し, 「家族・家庭生活」領域における目標の現状と課題を明らかにすることである. 村田ら(2017)は,全日本中学校技術・家庭科研究会機関誌『理論と実践』にある実践論文を 分析し,次の課題を明らかにした.目標の記述が一部欠如している論文や教育評価の記述が希 薄な論文が多いこと,目標や評価に課題が含まれていることである.目標は,指導や評価の指針 となり,実践の改善に際して最も重要な要素の一つと言える(石井,2015). 分析の対象とした『理論と実践』にある実践論文は,4 ページという限定的な紙幅の中に,実践 研究の目的や方法,成果などの概要で構成されている.そのため,題材全体の傾向を分析する資 料に適している.しかし,1時間単位の授業における教育目標に関する課題を明らかにするには情 報量が少なく具体的な改善の視点を得るには適していない.そこで,本章では学習指導案に着目 する.学習指導案は,1 時間単位で本時の目標や学習活動・内容,指導上の留意点や評価規準の 計画が記述されており,資料全体を通じてどのような目標が設定されているか解釈可能であると 考える.だが,これまで学習指導案を資料として,目標を分析した研究は確認できていないため, 先述したように,RBT(L. W. Anderson et al.,2001)を用いた学習指導案の分析方法につ いても検討する必要がある.

2.2.

研究の方法

2.2.1. 対象となる文献 本章は,教師用指導書に着眼する.教科書に付随している教師用指導書には,教科書に盛り込まれ ている学習内容の解説書や年間指導計画案,教科書に準拠した学習指導案などがセットになって販 売されており,各学校に概ね所蔵されている.そのため,多くの教員の授業づくりの参考資料となって いる.例えば,東京書籍(2016)が出版している教師用指導書には,入門編,授業展開編,指導計画・ 評価編,ワークシート編,研究編,実習編,提示資料,DVD-ROM の 8 資料が盛り込まれている.その 中でも,指導計画・評価編は,「3 学年間を見通した指導計画例,学習のまとまりごとの学習指導案,学 習内容に沿った具体的な観点別評価規準例,評価問題例で構成しています(東京書籍,2016)」と説 明されており,概ね教科書見開き 1 ページごとの学習指導案が掲載されている.なお,2019 年度現 在,2017 年改訂の移行期間であると同時に教科書の編集が行われている段階であり,教師用指導

図 Ⅳ-2    生 徒 に提 示 した 3 つの問 題

参照

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