小規模校におけるスキー授業の改善・充実 : 新十津川町立花月小学校におけるアルペンスキー,歩くスキー併用授業
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(2) No.51. 1997.3. 小規模校におけるスキー授業の改善・充実 ∼新十津川町立花月小学校におけるアルペンスキー,歩くスキー併用授業∼. 三浦 裕(旭川校保健体育科教育学) 高橋 一徳(新十津川町立花月小学校) 伊藤 徳之(釧路校保健体育科教育学) 掘口 創平(旭川市立東陽中学校). DevelopmentandImprovementofSkiing Lessonsin SmallScaled RuralSchool. −SkiingLessons ComposedofDownhillSkiing andAruku−SkiatKagetsuElementarySchool in Shintotsukawa−. YutakaMIURA(AsahikawaCampus) KazunoriTAKAHASHI(KagetsuElementarySchool) NoriyukiITO(KushiroCampus) SouheiHORIGUCHI(AsahikawaToyoJuniorHighSchool) はじめに. 「生きる力」がことさら新しい観点であるということで. 近年の日本の社会においては機械化や情報化などが急. はなく,逆に教育の本質的な理念であると言うことである。. 速に進む中で,家庭は少子化・高齢化・核家族化の様相. 問題は,「生きる力」や新しい学力観をどのようにと. を呈してきている。このような変化は人々の個人化を促. らえるのか,そしてそれに基づき実際の授業をどのよう. 進させるとともに,物事の価値観の多様化を促し,生活. につくるのか,さらにはどのようなことが子どもの力とな. そのものを幅広くまたさまざまに変容させる契機ともな. るのかなどについて,まず整理し検討を加えることである。. 今回対象とされた花月小学校の場合には,農業の大規. り得る。このため,社会的な要請を基盤とした教育にお. いても,それらの変化に柔軟に対応することが求められ. 模化と機械化などによる人口流出のため児童数が減少し. てきている。したがって,「生きる力▼」をスローガンと. てきているが,小規模校におけるこのような特色を生か. した新しい学力観は,まさに現代社会の今日的な要請で. した新しい学力観に基づく授業づくりは今日的な課題の. あると言えよう。このような「】生きる力」は必要不可欠. ひとつである。. であり,これを欠落させた教育は基本的に教育とは呼べ. このため本稿では,よりよい授業づくりを目指すため. の基礎的研究として,北海道における冬季の代表的な学. ない。. しかし,このことは決して目新しいものではない。な. 習内容であるスキー授業を事例に,小規模校における新. ぜならばそれは,いっの時代であっても,またどのよう. しい学力観に基づく体育授業のあり方について研究を行. な教育観であっても,その根底には「生きる力」を育て. うものである。. るということが意図されていなければ,今日の社会は成. 立していなかったからである。裏返して言うならば,現. 1 研究の目的. 在はど表立って声高かにうたわれたわけではないが,こ. 本研究ではよりよいスキー授業づくりを目指すための. れまでにも「生きる力」は意図されてきたわけであり,. 基礎的研究として,新しい学力観に基づくスキー授業へ. −− 1 −一.
(3) 三浦 裕・高橋 一徳・伊藤 徳之・堀口 創平. の改善・充実を図るための検討を行い,その結果を踏ま. 意点」という項目において,「地域や学校の実態を考慮. えながら学習指導計画を立案・作成することを目的とし. するとともに,個々の児童の運動経験や技能の程度など. ている。. に応じた指導が十分行えるよう工夫すること」と示され. ている2)。 2 研究の方法と内容. 現在求められている学力観は,「生きる力_」を前面に 押し出している。このことばが提示されてきたねらいに. 授業づくりを行う場合に考慮しなければならないさま. は,次の方針があるとされている3)。. ぎまな要因や相互関係を明らかにするとともに検討を加. えることによって,よりよい授業づくりを目指したス. ①心豊かな人間性の育成. キー授業の学習指導計画を立案・作成する授業研究である。. 教育活動全体と通じて,子どもの発達段階や各教科 等の特性に応じ 豊かな心をもち,たくましく生き. 今回本研究で対象とされたのは新十津川町立花月小学. 校(田中達校長)のアルペン系スキー授業(第4∼6学. る人間の育成を図ること. 年:男子17名,女子18名,合計35名,指導者5名)およ びノルディック系スキー授業(第5∼6学年:男子12名,. ②基礎・基本の重視と個性教育の推進 国民として必要とされる基礎的・基本的な内容を重. 女子12名,合計24名,指導者2名)の異学年共習のスキー 授業であり,平成9年1月30日から同2月20日までの計. 視し,個性を生かす教育を充実するとともに,幼稚 園教育や中学校教育との関連を緊密にして各教科等. 3回(うちスキー遠足1回)にわたって実施する予定で. の内容の性一貫性を図ること. ある。実施場所は新十津川町立そっち岳スキー場および. ③自己教育力の育成. かもい岳スキー場(スキー遠足)である。. 社会の変化に主体的に対応できる能力の育成や創造. 性の基礎を培うことを重視するとともに,自ら学ぶ. 3 新しい学力観とスキー授業. 意欲を高めようとすること. 1)新しい学力観. ④文化と伝統の尊重と国際理解の推進. 教育課程審議会は昭和62年12月に「教育課程の基準の. わが国の文化と伝統を尊重する態度の育成を重視する. 改善」についての答申を行っているが,その中で小学校. とともに,世界の文化や歴史についての理解を深め,. における体育科(教科レベル)に係る改善の基本方針と. 国際社会に生きる日本人としての資質を養うこと. して,次の事項を挙げている1)。 以上の内容を受け,評価の4観点は次のように示され. (D生涯体育・スポーツと体力の向上を重視する観点か. ら,児童が自ら進んで運動に親しむ態度や能力を身. ている4)。. に付け,心身を鍛えることができるよう,児童の心. ①関心・意欲・態度. 学習することへの関心をもち,進んで課題に耽り組. 身の発達的特性と運動との関連を考慮して内容の改 善を図る. もうとしている. ②各種の運動の楽しさや喜びを味わわせ,各種の運動. ②思考・判断. 自ら考え主体的に判断して,課題を解決したり,創. の基礎的・基本的な能力を養うことに重点を置く. ③「体操の領域」については,体力を高める運動の学. 造したりすることができる能力を身に付けている. 習が一層効果的に行なわれるよう各学校段階別の内. (診技能・表現. 容を改善すること. 考え判断したことをもとに表現したり行動したりで. ④自然とのかかわりを深める観点から,地域の実情に 応じ,雪遊びやスキーなどを積極的に取り扱うなど. きる技能を身に付けている ④知識・理解. 新たな課題の解決を目指して考えたり,判断したりす. の改善を図ること. ⑤集団行動の内容については,基本的な行動様式を重. ることに役立っように内容などについて理解している. 視し,その取り扱いについては,各運動領域におい. それぞれの項目は観点別による学習状況の観点から, 「十分満足できると評価されるもの」をA,「 ̄おおむね. て一層効果的に指導ができるようにすること. 達成したもの」をB,「努力を要すると判断されるもの」 をCとして表示されることとなっている。. これらを受けて各領域は具体的な内容に関して改善さ. れることとなるが,従前より「内容の取り扱い」の部分. 2)スキー授業. で示されていた④の内容については(現行の指導書にも. 従来より,スキー授業は積雪・寒冷地域における冬季 の代表的な学習内容のひとっである。無雪地域では,も ちろんスキー学習自体が実施できないので,これまでめ. 示されている),特記(格上げ)された改善項目となっ ている。また同じく同書には,「指導計画の作成上の留. − 2 −.
(4) No.51. 小規模校におけるスキー授業の改善・充実. スキー授業の経緯というものは,地域性を生かした学習 内容であるとともに,現在中学校などで導入が進められ. まず第一に,「かしこい子」である。これは基礎的な 力を身につけ,自ら進んで学んでいこうとする自主性・. ている選択種目のはしりであると言うこともできる。こ. 自発性をもった創造力のあるかしこい子の育成をねらい. のような意義をもつスキー授業ではあるが,まったく問. としている。ここ数年子ども自らが「基礎的な力」を身. 題点がないというわけではない5),8)・7)。. につけることを重視し,特に「思考力・判断力・表現力_」 に重点を置いている。. そのうちスキー授業のとらえ方や学習内容などについ. て例を挙げるならば,子どもが身につける力やそのために. 次が「心ゆたかな子」である。子どもらしい明るさや. 取り組む学習の内容が不明瞭であったり,また技術指導の みに偏重し,授業ではなく講習会まがいのレッスン方式. 純粋さ,素直さをもち,思いやりのある個性豊かな子の 育成をねらいとしている。具体的には,子ども一人ひと りが個性を発揮し,豊かな自己表現を目指すことができ. などが未だ数多く見受けられるからである。これまでの スキー授業の多くは,技能指導に偏重しその改善・充実 に焦点が当てられることが多かった。もちろん技能指導. るよう,児童自らが獲得した基礎的・基本的な力を創造 的に生かしながら,現代社会に生きていく資質や能力を 高めていくことが重要とされている。. は体育科教育の領域でも取り扱う内容でもあり,また技能 は運動・スポーツを行っていく場合の重要な要素でもある。. 三番目は「じょうぶな子」である。文字通り明るく健. しかし,古い体育観から脱却し,よりよいスキー授業. 康的で,進んで運動に取り組んでいこうとする精神的に. づくりを目指すために,まずおさえておかなければなら. も意欲や関心のある子の育成をねらいとしている。この. ないことは,スキー授業もまた体育の授業(単元)であ るという再認識である。このことはしごく当然のことで. 心などの五感や手足などの身体を馬区使しながら,意欲的. はあるが,しかし,授業である以上,子どもが身につけ. に行動・実践する能力および態度の育成であり,これら. 内容としては,子どもが経験や体験を通して自分の頭や. る力とは何か,あるいはそのための具体的な内容とは何. は自己実現にむけて働く実践力の原動力になるものとお. かなど,学力観についての整理や検討が必要とされてく. さえられている。. ることとなる。これらのことが理解されてくるようになれ. 3)花月小学校におけるスキー授業の経緯. ば,上述のような偏向した授業はなくなってくるであろう。 したがって,スキー授業といえどもひとつの授業とし. 和48年10月15日に新十津川町スキー協会が設立されてい. てとらえることが必要であるとともに,新しい学力観に. る。この協会の主たる行事は町民スキー大会,スキー教. 基づきながら検討・工夫し,地域性や小規模校の特性を. 室,講習会および検定であった。同年,花月小学校でも. 生かすことのできるスキー授業へと改善・充実を図るこ. 町民スキー大会への参加を実施したが,それは授業とし. とが求められてきているのが現状である。. てではなく学校行事として取り扱われていたようである。 当時の史料が不足しているため,花月小学校に保管され. 花月小学校の学校体育にスキーが導入される以前の昭. 以上のような内容から,現在求められている新しい学 力観に基づくスキー授業については,以下に述べるよう. ている断片的な資料に基づく内容からしか推察すること. はできないが,昭和55年12月21日に町営そっち岳スキー. な観点が考慮されるべき要因として挙げられる。. 場がオープンしたころから体育授業にアルペンスキーが. 4 花月小学校の沿革. 導入されるようになってきている。その後,歩くスキー. 1)校下の状況8). も体育授業に導入されるようになってくるが,現在のと. 新十津川町は北海道石狩川中流の純水田地帯に位置し,. ころ導入のきっかけや内容など,詳細な経緯については まだ明らかになっていない。. 砂川市や滝川市など地方の小市に隣接する都市近郊型の. 農村であるが,近年では農業の近代化の波により経営規 模の拡大と機械化が進んだ結果,人口流出が起こってき. 5 学習指導計画の立案・作成について. ている。. これらの事柄を受け,スキー授業を改善・充実するた めの方法として,新しい学力観および生涯体育・スポー. この新十津川町にある花月小学校は明治24年に下徳富. ツを指向する立場から,学習内容の設定にあたっては次. 小学校として創立され,その後昭和43年に現在の花月小 学校へと校称変更がなされ,今年で開校105周年を迎え. のような点に留意した。. る歴史ある学校である。全校児童数は64名であり,その うち保護者が農業を営む児童数は45名であり全体の70.3%. 1)心豊かな人間性の育成という観点から,自然の中で 行なわれる運動を重視するとともに,その環境の中で. を占めているが,近年では児童数が減少の傾向にある。. 自己の発達段階や能力に応じて適切に運動ができる能. 2)花月小学校の教育目標8). 力とたくましくじょうぶに生きる人間性の育成を図る. 花月小学校では,次の3つの目標を掲げている。. 2)基礎・基本を重視する観点から,生涯体育・スポー. ー 3 −. 1997.3.
(5) 三浦 裕・高橋 一徳・伊藤 徳之・堀口 創平. 板に伝えるかが主要な運動学習となる。. ツの基礎的能力を養うために学習内容を洗練し,個に. 一方,ノルディック系のスキー学習では自力で推進力. 応じた学習内容を設定するとともに,自発的に考え判 断したことをもとに運動することができる技能を身に. を生み出さなければならないため,スピードのコント. つけ,個性を生かした弾力的な授業が展開できるよう. ロールが比較的容易であり,いかに合理的に推進力を獲. 内容や特性などを明確にし,その一貫性を図る. 得することができるかが主要な運動学習となる。. 3)自己教育力の育成という観点から,学習することに. このように運動特性の異なる両者を組み合わせること. 関心・意欲をもち,自ら考え主体的に判断して,課題. によって,学習環境のバリエーションを広げ内発的動機. を解決したり,創造したりするための思考力や判断力. づけとしての興味や関心をひくとともに,児童一人ひと. を身につけることのできるかしこい子の育成を図る. り(個)に応じた運動課題を設定し自ら学ぶ意欲や思考. 力・創造性を育てながら,スキーという運動がもつ生涯. 4)文化と伝統の尊重という観点から,自己が生活して いる地域社会の特性や自然および地域で継承されてい. 体育・スポーツへの方向性と両者のスキーがもつ楽しさ. る文化的・歴史的な運動についての基礎的知識を身に. や喜びを味わうことができるものと考えられる。 また,小規模校であるが故の指導者数の充実や異学年. つけるとともに,これらについての理解を深める力の. 共習の授業であることに加えて,歩くスキーの用具は学. 育成を図る. 校の備品であることなど,花月小学校の特性を生かすこ 6 花月小学校におけるスキー授業. とができる授業づくりとなっている。. 体育授業におけるスキーは大きく2つの形態に分ける ことができる。ひとつ目がアルペン系スキーであり,も. 8 学習指導計画 以上の検討に基づき,以下の学習指導計画を作成した。. う一つがノルディック系スキーである。北海道において は,従来よりアルペン系スキーが主流を占めているが, 割合は少ないものの地域や学校によってはノルディック. 体育科学習指導案. 系スキーおよび歩くスキーが実施されてきている。両者. 児 童 アルペンスキー:. ともにそれぞれ特色をもつスキー形態であり,また実施. 第4∼6学年 男子17名,女子18名,合計35名. にともなうさまざまな障害も持ち合わせているので,形 態だけでどちらが優れているという判断をすることは適. 歩くスキー:. 第5∼6学年 男子12名,女子12名,合計24名. 切ではない。 通常は,同一学年において両者のうちどちらか一方だ. 場 所 アルペンスキー:. けを実施する学校が多いため,ねらいに沿って学習内容. 町営そっち岳スキー場およびかもい岳ス. を精選・設定することが求められている。しかし,実施. キー場. 校数は少ないものの同一学年で両者を実施している学校. 歩くスキー:. もみられる。今回対象とされた花月小学校はその一例で. 屋外グラウンド. あり,先に述べた学習指導計画の主旨に則り,スキーを幅. 指導者 高橋一徳他. 広くとらえることによって授業を充実させるねらいがある。. 1単元名 「めざせ!長野オリンピック」. 7 アルペン系スキーとノルディック系スキー. 2 単元について. 現在求められている学力観は,「生きる力」と言われ. アルペン系スキーもノルディック系スキーもともに自 然とのかかわり合いが深く,また両者とも従来より地域. ている。北海道に生まれ生活する子どもたちにとって,. における冬の代表的な運動・スポーツであるため,学習. 冬の積雪や寒冷などは避けて通ることのできない自然環. にあたっては前述の5の1)∼4)に適した学習内容で. 境である。このため,積雪寒冷地域に生活する子どもた. あると考えられる。. ちにとって,「生きる力」とは充実した冬を過ごす力で. それぞれの特色として,アルペン系スキーでは重力に. もある。スキーは冬の運動・スポーツの中でも,子ども. よる落下運動が滑降のための原動力となるのに対して,. たちが最も楽しみにしている身近なもののひとつである。. もともと北欧で発祥したとされるスキーは,冬の野山. ノルディック系スキーはキックとストックによって生成. を自由に動き回る用具として,「滑る」,「回転する」,. される力が主たる推進力となっている。したがって,ア ルペン系スキー学習ではあまり筋力がなくてもスピ⊥ド. 「跳ぶ」などの総合的な運動要素が含まれていたと言わ. による爽快感やスリルを味わうことができるため,ス. れている。したがって,アルペンスキーと歩くスキーの. キーを操作するためにどのような運動を行ってその力を. 両者を取り扱うことは,スキーの源流をたどることにも. ー 4 −.
(6) No.51. 小規模校におけるスキー授業の改善・充実. つながり,スキーがもつ本来の意味や価値に触れること. 自然に満ちたコースでアルペンスキーや歩くスキー. ができるとともに,生涯体育・スポーツの基礎を培うこ. を楽しみながら,必要に応じた技能を身につけるこ. とができるものと考えられる。長野は次回のオリンピッ. とによって学習(体験)の場を多様にまた弾力的に. ク冬季大会の会場であり,この地名を知っている子ども. 設定する。. も多い。子どもたちには日本選手の活躍や調和のとれた. 2)安全な学習環境の確保と,倫理観を育成する場の設定. 総合的なスキー運動をイメージアップさせながら,幅広. ビステやリフトなどスキー場でのルールおよび自. くスキーの楽しさを味わわせたい。. 然の中でのマナーなど,事故やけがの防止と自然や. 生命を尊ぶ倫理観を育成する場を設定する。. アルペンスキー:今もっている力で斜面を滑り降り. 3)自らの活動に課題意識をもち,自主的に課題を発見. たり,さまざまな斜面やいろいろ. ・設定したり,自発的に課題に取り組む場を設定する。. な滑り方に挑戦したりすることが. 今もっている力で自分に合った滑り方やコースを. 楽しい運動である。. 楽しみ,自主的・自発的な学習によりさらにその力. 歩 く スキー:普段歩くことのできない冬の田畑. を高めることに挑戦することができる場を設定する。. や山道などを滑ってみたり,より. 4)課題を解決するために自己・他者評価を活用する. 長い距離に挑戦したりすることに. とともに,集団で活動する場を設定する. よって多様な自然に直に触れるこ. 個人・グループごとに課題についての自己・相互. とが楽しい運動である。. 評価を行うことによって状況を確認し合い,学習意. 3 児童の実態. 欲を喚起しながらめあてをもって自主的・自発的に. 花月小学校におけるスキー授業は,スキー場でのアル. 学習することができる場を設定する。. ペンスキー学習(合計3回,15時間扱い)と学年ごとに 確保・設定された歩くスキーの授業から構成されている。 アルペンスキー授業は第4∼6学年合同,また歩くス. 5 目 標 アルペンスキー:. キー授業は第5∼6学年合同の授業形態をとっている。. 自分に合った滑りを味わうとともに,安全に留意し. 第5∼6学年での異学年共習の合同体育は今年度から経. ながらいろいろな滑り方について考え,意欲的に挑. 験しており,児童は違和感なく授業に取り組んでいる。. 戦することによってさまざまな滑り方や斜面・コー. 子どもたちは小さな頃からよくスキー場に行くため,経. スを楽しむ. 験が豊富で意欲的に取り組む子が多いが,歩くスキーに. 歩くスキー:. 関しては学校に用具が整備されある程度は経験している. 冬の自然について理解し,野山を思いどおりに移動. ものの,あまり得意ではなく敬遠しがちな子も多い。. するための技能を身につけ,意欲的に学習課題につ. いて考えたり取り組むとともに,いろいろな滑りの. アルペンスキーでは子どもの多くが急な斜面や起伏の. あるコースを滑りたがったり,より上手に滑ることを楽. 楽しさや喜びを味わう. しみにしているが,急斜面やハイスピードに恐怖感を抱 く子もいる。. 6 評. 歩くスキーでも普段行けなかった場所に簡単に行くこ. 価 略. とができることに征服感や克服感・達成感を味わい,ま. 9 アルペンスキー授業の全体計画. た思いもしないコースを自分に合った滑り方で滑ること に楽しさを感じている子も多いが,自力で滑ることに慣. れていない子にとっては体力的に疲れる,手足が冷たい などの声も聞かれる。. 4 指導観. 以上のことから,本単元については本文でも述べたよ. うにスキー授業をおさえることとし,具体的には以下の ような手だてに基づいて,子どもたちがスキーの楽しさ. や喜びを求め味わえるように指導・支援していきたい。 1)試行的・弾力的な学習(体験)の場の設定 広々とした多様な斜面やコースをもっゲレンデや. 叫 5 −. 1997.3.
(7) 三浦 裕・高橋 一徳・伊藤 徳之・堀口 創平. 10 アルペンスキーの学習指導計画 段階. 指導の留意点. 学習内容と活動. 時間. 1.集合・挨拶 健康状態の把握 用具・服装の点検 2.スキーをはかないで準備運動を十分に行う 3.学習についての道筋を理解し,見通しをもつ. はじめ. ・顔色や発汗,初滑りの確認 ・帽子,ファスナー,締め貝,ストック の握り方 既習内容の確認. 4.スキー場でのルールやマナー,注意・連絡事項の説明 ・リフト乗降時のマナーの説明 乗車時 3時間. に他のスキーヤーの滑りを観察させる. く知識・理解〉. 5.グループ分けのため移動する(階段登行・開脚登行). ・技能的等質グループ(5班)に分ける. りい1. 冬の自然環境を理解するとともに,自ら目標をもち,今の自分にあった力でいろ いろなコースや滑り方を楽しむ 中. なか. 7.自分にあった滑り方で滑るく技能,思考・判断〉. ・示範はシュテムターン. 8.自分に適した滑り方かどうか確認する〈思考・判断〉. ・TTで役割分担を決め,話し合し よってグループ分けをする. 9.グループに分かれ,個人・相互評価を行い,課題を見つ・評価や課題が適切かどうか確認 ・基本的・基礎的技術の説明と示範 けるく技能,思考・判断〉 10.課題を確認し,適した滑り方を見つけ,練習するく関心・技術指導のみに偏らず,スキーの特徴 緩. ・態度,思考・判断,技能〉→リフト. 的な運動を重視する. 11.リフト待ちの並び方や乗車時のマナーを守るく知識・理解〉・イメージをっかみやすいことばがかけ 中. 今できる滑り方で,いろいろな斜面やコースに挑戦しよう. 急. 柵 ̄スを自分に合うよう っけ. に て. できそうな滑り方でいろいろな斜面に挑戦し,グループで協力し合いながら,十 分にスキーを楽しもう 9時間. 中. できそうな滑り方でいろいろな斜面やコースに積極的に ・安全への留意(無理をさせない). 負. ・グループごとに巡視し,観察す 挑戦するく意欲,思考・判断,技能〉 いろいろな滑り方や新しい滑り方に挑戦する〈意欲・関心,技能〉 ・危険はないか,適切な練習か斜 16.グループで協力しながら,トレインやフォーメーション うか確認・アドバイスする. に挑戦してみる〈思考・判断,技能〉. ・トレインやフォーメーションの壬 きまり示範. まとめ. 17.集合 健康状態の確認 整理運動. ・健康状態の確認. 18.本時のまとめと次時の予告. ・スピードオーバー. ・いろいろな滑り方やコースに挑戦することができたかど. うか,グループで話し合う 3時間. や転倒・衝突,リブ. 卜乗車時など安全面に十分注意させる. 総. ・練習方法の方向づけ ルールやマナー の遵守 アドバイス. 囚 ⊂コ. なかったかどうか,発表する ・これらを確認しながらもう一度挑戦してみる. − 6 −.
(8) No.51. 小規模校におけるスキー授業の改善・充実. 1997.3. ‖ 歩くスキーの学習指導計画 段階 学 習 内 容 と 活 動. 時間. 指導の留意点. 1.集合・挨拶 健康状態の把握 用具・服装の点検. ・表情や顔色,用具・服装の確認. ・帽子,手袋,ウェアー,ストックの握. はじめ. ラ 3.学習についての道筋を理解し,見通しをもつ. り方を確認する 板はワックスレス. ン 4.スキー場でのルールやマナー,注意・連絡事項の説明〈知識・理解〉. ・既習内容や自然についての説明 ・寒さや発汗の処置についての説明. 1時間. ・男女混合・異学年のグループTT bし. 冬の自然環境を理解するとともに,仲間と協力して基本的な滑り方を身につけなが グ. ら,自分にあった力でいろいろなコースや雪上を自由に移動して,滑りや自然を楽しむ. なか. ン),踏みかえの確認をするく知識・理解〉. 蹴りとストックの突き放し 新雪での. ン. 登行 踏みかえ 適度な前傾 安定し. 8.平地や起伏のある斜面を自分にあった滑り方で滑る〈技能,思考・判断〉 た確実な滑降 ・TTで役割分担を決める. ド. ・グループごとに巡視し,取り組みのよ うすを観察・確認,アドバイスする 10.各グループに分かれ,個人・相互評価を行い,課題を見・評価や課題が適切かどうか確認する つけるく技能,思考・判断〉. ・技術のはか,安定した滑りかどうか確. 習するく関心・意欲・態度,思考・判断,技能〉. ・イメージをっかみやすいことばがかけ. 2時間. 認する. やアドバイスをする. 庭. ・発汗の処置 用具の後始末. 今できる滑り方や楽しみ方で,いろいろな斜面やコースに挑戦しながら,自然の 中で珍しいものを見つける探検ツアーにでかけよう 学校の裏山へ探検ツアーに行く く関心・意欲〉. ・事前にコースを下見し,危険個房. 裏. り方について話し合う 〈意欲・関心,思考・判断,技能〉. まとめ. ・健康安全の確認 用具 寒さ・発汗. 15.コースを進みながら,面白そうな場所を見つける〈関心・意欲〉 天候の把握 ツアー(3∼5km)のき 16.いろいろな滑り方や新しい滑り方に挑戦するく意欲,技能〉 まり 自然に対する理解とマナー 内 発的動機づけ. 山. 18.グループで協力して,自然の中にある珍しいものを探し 出し,名前を当てたりしながら,生命の営みを観察するく関. ・植物,生き物の足跡・糞,穴などに留. 心・態度,思考・判断〉. 意させる. 19.適切な帰路コースを選定し,力の弱い子に合わせた滑走 スピードで滑りを楽しむ〈技能,思考・判断〉. ・健康状態の確認寒さ・発汗の処置 用貝の後始末. 21.本時のまとめと次時の予告. ・自然や生物の営みを認識させる. グ. ラ ン ・いろいろな滑り方や探検ツアーに積極的に挑戦すること ド. ・図鑑や記録紙などを用意しておく ・帰路コースの確認とTTの配置. 20.集合 健康状態の確認 整理運動. 3時間. ・TTの役割分担と学習内容の確認. ・歩くスキーのいろいろな面白さを提示. ・全体の評価および次時の予告. ができたかどうか,グループで話し合う. ・決まりを守りながら,自然や生き物のようすを感じとれ たかどうか,発表する. ー−− 7−・.
(9) 三浦 裕・高橋 一徳・伊藤 徳之・掘口 創平. 6)三浦 裕,「寒冷地体育の現状と課題∼(5)道内の. 12 おわりに. 小学校におけるスキー授業の二次的分析−」,北海. 本研究では,小規模校におけるスキー授業を改善・工 夫するための基礎的研究として,新しい学力観に基づく. 道教育大学紀要,第一部C,第40巻,第1号,pp.. 学習指導計画についての検討ならびにその立案・作成を. 115−128,1989.. 7)三浦 裕,「スキー授業におけるつまずきの背景一. 行った。. これまでのスキー授業は,どちらかと言えば技能指導. 指導計画および学習環境の整理と改善−」,北海道. に偏向しがちであった。内面化された技能は,運動を行. 教育大学教科教育学研究図書編集委員会(田中邦明,. う際の重要な要素ではあるが,しかしこれのみによって. 加藤富夫,三浦 裕,佐々木 宰,百瀬 響)編著, 『子どもの学びとつまづき−「わからない・できな. 運動が成立・展開しているわけではない。スキー授業も 授業である以上,これからの体育授業における学習指導. い」を活かす教科教育−』,東京書籍,1997年3月. 計画の立案・作成にあたっては,将来の日本の社会に生. 発行予定. 8)新十津川町立花月小学校,「学校概要」および『教. きる子どもたちに身につけてほしい力,つまり学力をま ず授業づくりの中核としておさえることが重要である。. 育課程』.. アルペンスキーと歩くスキー(ノルディックスキー). とでは,運動(形態)や用具などが異なるため,技術体 系のはか,具体的な楽しみ方や達成の喜びなどの内容が すべて同一とは限らず,それぞれに特色をもつ長い歴史 に支えられた北国の冬の代表的な身体文化である。した がって,両者は対略するものでもなく,また一方が絶対 的なものでもない。両者を併用することができれば,そ れは非常に恵まれた学習環境が整備されたことになろう。 今回対象とされた花月小学校のように,両者を併用して 授業展開を図ることができるのは,地域のもつ特色に加 え,教員や父兄の理解や協力など,小規模校ゆえの特色 を十分に活かした授業づくりへの基本的な取り組み姿勢. があるものと考えられる。. 最後に,スキー授業の実施時期の関係から,現時点に おいてはまだこの学習指導計画による授業は実施されて. いない。このため,実施された後にその具体的な授業展 開や学習成果,評価などについて検討されることが求め られてこよう。これらの点については今後の課題としな. がらも,小規模校におけるさまざまなスキー授業につい て検討を加え,その充実を推し進めていきたいと考える。. 参考・引用文献. 1)文部省,『小学校指導書 体育編』,p.70,東洋館 出版,1989.. 2)同上書,p.11.. 3)文部省,『小学校 教育課程一般 指導資料 新し い学力観に立っ教育課程の創造と展開』,p.4,東 洋館出版,1993. 4)同上書,p.74−77. 5)三浦 裕はか5名,「寒冷地体育の現状と課題∼ (3)北海道の小学校におけるスキー授業について−」. 北海道教育大学紀要,第一部C,第38巻,第1号, pp.201欄216,1987.. −一l1 8,・,・−l.
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