音楽科教育における言語指導行為の研究(I) : 指示を中心に
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(2) . . 北海道教育大学紀要 (第1部C) 第40巻 第1号 Journalof Hokkai do Un iver i i ty ofEducat ion I C) Vo s t l on (Sec .40 .l , No. 平成元年10月 october ,1989. 音楽科教育における言語指導行為の研究 (1) --指示を中心に--. 原. 秀. 夫. は じめ に 音楽科における教授行為は実に多様である それは指揮 伴奏 範唱 範奏 言語指導行為 学 . , , , , , 習形態の組織, 教育機器の使用, 板書等である ここで言う教授行為とは 次のような意味 である . , . 「発問 指示 説明から始まっ て 教具の提示や子 どもの討論の組織におよぶ 現実に子 どもと向き , , , , あう場面での教師の子 どもに対する多様な働きかけとその組み合わせ」( 1 注 ) 斉藤勉は 「教師の教授行為 には, 『言語的』 メ ッセージと 『非言語的』 メ ッセージの両面が含めら 2 荏 ) 音楽科の場合 教授行為をこの両面にあてはめて考えてみると 次の れている」と述べて いる( . , , 表のよう に整理することができる . A. 「言 語 的」 メ ッ セ ー ジ. ‐発問‐説明‐助言‐評価表現等 [ 裏書 B. 「非言語的」 メ ッセージ. [響き警ら 驚 喜 参 : 墓 藁情. のり競 音楽の授業は, 何らかの音楽活動 (歌唱・器楽・鑑賞等) によっ て大部分占められているのがふ つうである, しかし, 音楽の授業記録をいくつか分析して みると 教師の言語指 導行為が想像以上 , に多いことがわかる. 言語指導行為は, 一般に指示・発問・説明・助 言・評価表現等に分類. される. この 「言語」 にあまりにも無自覚であるというのが音楽科の指導の現状ではなかろうか 教師が . いかに高い音楽的力量を持っ ていても, 言語が適切でないために児童・生徒が少しも変わっていか なかっ たり, あるいは授業そのものが成立しない場合も多いのである , たとえば次のような指導言である. 「もっ と大きな声で歌いなさい」 「もっと美しく歌いなさい 」 「曲想を生かしながら歌 いましょう 「発声に気をつけて歌いなさい 」 」 このような漠然とした 言語を連ねていって, 児童・生徒をはたして動かすことができるのであろ うか. これまでの音楽科教育研究は, このような指示や発問の問題をなおざりにしてきたのではな いかと考えられる. それは次のような事に原因があるよう に思われる .. ① 音楽科の伝統的な教科観. これは,「音楽は言語を越えたものを表現する芸術である したがっ て言語による指導は非本質的 , である」 といっ た教科観である.. ② 音楽科の伝統的な授業観 101. ‘ ● .・ ー ・ ′ . ●.● ● ●. ・ . . . ● ●・・ .. 篠.
(3) . 篠 原 秀 夫. これは, 「音楽的な力量こそ が授業を左右する」 といった授業観である.. ③ 音楽科の授業研究に関する立遅れ これは, 「授業を分析 し, 文章化して検討する」習慣が他の教科 と比べて少ないことである. 授業 を分析 し, 文章化するように なると, 言語が気になる ものである. これらの中でも, 特に①の音楽科の伝統的な教科観には問題 が感じられる. 教師は,「音楽」と「音 楽の指導」 は異なることを認識する 必要がある. 音楽科の指導においては, 指揮・伴奏・範唱等の 「非言語的」 メ ッセージは大切である. しかも 音楽的力量の高い教師ほ どその度合は高いと言える. しかしだからと言っ て, それは指示・発問等 の 「言語」 による働きかけの不必要性を意味するものではない. 授業を展開させるうえで, 教師の 言語指導行為は不可欠である. 児童・生徒は, 教師の,「言語」 によ って動くのである. 授業において, 指導言が不適切なため, ああすればよかったと悔やまれることがよくある. しか まうこと も何をどう反省すべき か不明のまま, . 次の時間もまた次の時間も同 じくりかえしをしてし ・うに悪いのか,,それを反省 も多い. そ れはどこに問題があるのであろうか. 指導言の どこがどのよ 究の重要性があると考える するべく理論的背 景がないのである. ここに言語指導行為研 . 指示・発問・説明等の 教師の 「言語」 は, 教育内容・教材 解釈と深く関連している. また, 教師 ていくことは, の児 童・生徒の理解にも関連している. したが・ って, 指導言に関する問題を検討 し, 教材開発や授業構成を進めていく上できわめて重要であると思われる. 本研究は, 音楽学習の中でも実技指導 に焦点をあて, 特に指示の具備す べき条件を中心に考察し ようとするものである. 音楽科における言語指導行為研究の序 として位置づけたい.. 工. 音楽学習における指示の重要性. 近藤幹雄は, 教師が児 童・生徒に与える刺激を次の3つに整理している ㈱) . ①音による刺 激 ②言葉による刺激 ⑧指揮およ び身体運動による刺激 また近藤は,「言葉による刺 激は, 授業の中における教師の活動の中で最も重要なものであり, 他. 注 4 ) の 2 つ の 刺 激 よ り も 数 多 く 用 い ら れる と 思 わ れ る」 と 述 べ て い る( .. :実際, イメー ジ, 児童・生徒の演奏の 特徴, 呼吸や発声等の 表現技術の説明等, 言語 . ・教材の持つ の助けな しに指導を進めること は不可能である. 「言語・が発せられているのであろうか. と ,ころで音楽の授業 では, 通常 ÷授業時に どのくらいの, ・トを占めてい また, 指示はその中で どのく らいのウエイ ・るもの なのであろうか. ベテラン教師によ る授業を2つ取りあげて みる. 実技指導が中心である授業の 中から一般的だと思われるものを選ん だ, ひとつは小学校の合唱の 授業であり, もうひとつは中学校の合唱の授業である. 授業の大まか な流れは次のように なっ ている. ○小学校5年生 教材 「鳥の歌」 ト練習 ・合唱 .反省 ,,・愛唱曲の歌唱.・課題の確認 .合唱 .歌詞の朗読 .パ ー. ○中学校3年生 教材 「大地讃頒」 ・既習曲の歌唱 ・課題の確認 ・パート練習 .全体練習 .合唱 .録音 .反省 1 4分1 1 0秒) 教師が発言して 4分( 5分の授業のうち約・ , 時間を計算してみると, 小学校の方は, 4 14分40秒) 0分の授業のうち約15分 ( いる (指導内容に関係のある発言である) . 中学校の方は, 5 教師が発言している, したがっ て, -授業時の約÷は教 勤ゞ発言しているこ 雛 なる, 102.
(4) . . この数値に関しては, いろいろ指摘される点があるかもしれない しかし 一般的に音楽 の授業 , . が何らかの音楽活動 (歌唱・器楽・鑑賞) によって占められているという理解からすれば この数 , 値は予想以上に高いと言える.. う に な る.. ・発問. 18% ・説明. 8% ・助言. 4% ・評価表現. 27% ● ●指示. ● ●● ●●. ・. ○小学校指導事例 43%. ○中学校指導事例 ・発問 12% ・説明 7% ・助言 8% ●評価表現 15% .指示 58% これらの数値から, 音楽の指導にお ける言語指導行為は’ おもに 「指示」 「発問」 「評価表現 に 」 よっ てなされると言っ ても過言ではない であろう また 指示の割合は他の言語指導行為と比べて , , 高い. 音楽の授業の中では, 特に実技指導の場合, 指示の割合が高くなると言える , 実技指導では, すでに述べた伴奏, 範唱・範奏等の非言語指導行為が大きな役割 をはたす これ . は誰しも認めるところであろう. しかし, これと並ん で指示も重要な役割をはたすのである 指示 . の適・不適が指導を左右するとさえ言っ てもよいであろう たった, 1つの指示が, 児童・生徒を動 . かし, 表現を大 きく変えることも多いのである,▲たとえば 「大きな声 で歌いましょう という指示 」 , と「黒板にはねかえるような声で歌いましょう」 という指示では 児童・生徒の声はおのずと変わっ , て く る の で あ る.. 1 1. . .●. ● ● ● .. それでは次に指示の割合を見てみた い, すでに述べたよう に 言語指導行為は 「指示」 「発問 , 」 , 「説明」 「助言」 「評価表現 の5つに分類できる 先の2例の場合 5つの割合を分析すると次 」 のよ . ,. .● , . ● .●●.● , .・. .・ . . ・. 音楽科教育における言語指導行為の研究 (1). 指 示 の 分 類. 注 5 ) 「授業のなか で児童・生徒に行動 活動 作業 横須賀薫は, 指示を次のように定義づ けている( . , , などを命じたり, 要請したりす るものである」 また久喜吉和は,「授業をすすめる中で, 教材を媒介として 子 どもが目のまえの教材と どうかか , わっ ていくか, そのかかわり方 (学習方法) を子 どもに伝達 し 教材の内容を正しくとらえさせる , 注6 ) た め の 行 為」 と 定 義 して い る( ,. これらを踏まえ, 筆者は指示を次のようにとらえる 「児童・生徒の活動を促す .教師の言語を中 . , 心とした指 導行為」 前出の久喜は, 指導場面に応じて指示を次 の7つに分類している{ 7 注 ) . ・ 1. 学習の目あてを決める指 示 2. 学習方法を理解させる指示 3 学習形態を変える 指示 . 4. 考すを深めさせる指示 5. グループで学習させる指示 6 個別に学習される指示 7 練 . ,. 習させるための指示 この分類は, きわめて具体的 である. しかし, 分類の基準が若 干暖昧であるよう に思われる そ . こで, 何を対象にしているか, すなわち指示対象に関して次の3つに分類を試みた . A. 学習活動 の導入や転換に関する指示 . B. 学習形態・学習方法に関する指示 C. 学習内容 (行動・思考) に関する指示. 103.
(5) . 』篠、 原 秀 夫. そ ,れぞれの例を取り あげてみる. えば次のような指示である, Aは, た と ・ ① 「今日から合奏の練習ですね, この前の時間, 役割を決めました, 自分の楽器を用 意して・くださ い.・静 か に, そ し て 手 早 ぐ です よ‐」. をいろ いろ 』 ② 「『はだかの 王さ ま』,の勉強を始めま ,しょう. 今日はね, 『はだかの王さ ま, ,の歌い方 う 工夫するの, それとね, 歌にあった動作を作りましょ .」 これらは, 児童・生徒を学習に向かいあわせる時の指示である. 次にBの例として2つ あげてみる. ① 「男女に分かれて合唱体形を作りなさい. 男子, ピアノの方へ一列. 女子, 黒板の方へ 一列. ど ち ら が 早 い か ラ ー イ ド ン.」. ② ,「それでは, どんな感じで歌うか各班で話,し合って 決め,.黒板にそれぞれの 班のめあてを書いて から練習しなさい.」 ①は学習形態に関す るものであり, ②は学習方法に関するものである. Cに関しては, 次のような例 があげられる. ① 「黒板にはねかえるよう な声で歌ってみましょう一」. ② 「ろう そくの炎を吹きけす ように息を吐いてみよう.」 ③ 「今の景気よく鳴っ ていた楽器の名 前は何ですか. 覚えていたら書き なさい.」 ④ ,「『は だ か の 王 さ ま』 は い く つ の ふ し,の,ま と ま り か ら で き て い る の か 調 べ て み ま し ょ う.」. ①②は行動面に関するものであり, ③④は思考面に関するものである. ①②は, 「指示」の形をと るのに対し, ③は 「発問」+ 「指示」 の形である. また④は, 発問の機能を持った指示(発問的指示) と言える. したがっ て, ④のよう な指示は指示のような形をしているが, 発問の範瞭に入れた方が よ い の か も し れ な い,. A~Cの3つの指示は, 授業を行う上でい ずれも重要であるが, その中でも学習内容と直接関連 ,具備すべき条件」・では’ このCを中心に考察していく, するCは, 最も重要である.・次章の 「 ところで, 指示を機能の側面から分類す ると, 次の3つに整理することができる . ・ A. 「指示」. (行動を明示する指示) B. 「発問的指示」 (思考させながら, 結果としての行 動を明らかにする指 示) C. 「かくれ指示」 ㈱) (教師と児 童・生徒の間での暗黙の共通理解) ・「 CL 、 ロ ロ ) 」 (合い言葉 1 「 かく れ指示 C2 「発 問」+「か く れ 指 示」. A~Cを簡単に説明 してみる. Aの 「指示」 は一般的な指示である.つまり,児童・生徒に有無も言わさずに行動を伝達する指示 である.「合唱の体形になり なさい」「リコー ダーをケースから出しなさい」等が例としてあ げられる. Bの 「発問的指示」 は, 前述 した発問の機能を持った指示である. たとえ ば, 「先ほど説明したり. 104.
(6) . 音楽科教育における言語指導行為の研究 (1). ズムはどこに使われている のか, 先生のピアノ演奏を聴いて見つけなさ い」 のように 思考を促し , ながら, 結果として の行動を明示するものである , Cの 「かくれ指示」 は, 教師と児童・生徒の間での暗黙の共通理解 (習慣的につくられる約束) である, つまり, 教師が明確な指 示をしなくても, 児童・生徒は暗黙の 「かくれ指示」 によ って行 動するのである. 「かくれ指示」は 次の2つのタイ プが考え られる C は 簡単な合い言葉のような指示である , . , , , これは, 指導の積み重ねから説明が不要になり, 気づかせればいいだけの簡単な言葉である たと . え ば次 の よ う な 指 示 で あ る 「『ホ ッ ペ ア ッ プ』 … も っ と 笑 顔 で ( )「『満 月』・ ・・・も っ と 口 の 奥 」 注9 . ㈱ 『 )「 を 広く 開 けて」 注9 )「『ヒ ッ プ ア ッ プ . ホ ー ム ラ ン』 … 声 を 遠 く へ 飛 ば して」( ・. ・もっ と 尻 』・′ 注9 )「『バ ス ト ア ッ フ 9 { 注 )「 『 を 持ち 上 げて一( … 胸 を 高 く して グ チ ラ リ ン 』・‐ ・ 』 ,歌 詞 の 1 ・2 フ 」. 住 9 )「『目線』 … 前方約35度上を見て ( レーズ先を読み取っ たらすぐ前を見て」( 9 ) 一性 C2 は,指示が発問の中にかくれている場合である 次は「発問 +「かくれ指示 の典型的な例である 」 」 . . 「発 問」 シュ ーベルトの音楽で何か知っ ている曲はありませんか . 「かくれ指示」 知っ ている人は手をあげなさ い 手をあげた人に先生があてます . .. 1 1 1 指示 の 具 備 す べき 条 件 次に, 指示の具備すべき条件について考察してみたい 指示の具備すべき条件を検討していく場 . 合, 次の2つの側面から考えていかなければならないであろう すなわち A 作用的側面 (指示 . , . の出し方) とB. 内容的側面 (指示の内容) である 今回の研究は 主としてB 内容的側面を中 . , . 心に行った. 指示の条件に関しては, 多くの研究者が考察を行っ ている その中で 坂本光男の7つの条件( 1 注 0 ) . , は示唆に富むものである. 1. 自信をもってはっ きり指示すること 2 具体的でわかりやす い内 . 容であること 3, 短く, 簡潔な指示である こと 4 1回の指示ですべてに徹底できるよう にす . ること 5. 1度出した指示は, やたら変えない 6 子 ども の活動を中断させるような指 示を出 . 7 指示は明る いトーンで子 どもに投 げかけること . また向山洋一は, 授業の原則十カ条の中で指示に関連することを次のように述べている( 1 1 注 ) ●指 . 示の意味を説明せよ ●1時に1事 を指示せよ ●指示 発問は短く限定して述 べよ ・指示は全 , 員にせよ .指示の追加はしてはならい ・最後の行動まで示してから動かせ 向山の条件 は ど , ちらかと言うとAの作用的側面, つまり指示の出し方が中心と言える , これらを筆者なりにまとめてみると次のようになる . して は な ら な い. A 側面モ迄臓 器 憲三 ・作用的 個別指示をしないこと . . と B ,内容的側面 { 喬纂 豪 ≦ 105.
(7) . 篠 原 秀 夫. 1 2 ) 「明確な言葉 注 さらに佐々 原正樹は, 指示の具備すべき条件に関して次のように整理している( , で指示せよ, そのためには, 1. 正確な指示ではなく, 適切な指示をせよ 2. 具体的行動目標を 指示せよ 3. AをさせたいならBと指示せよ」 1 3 荏 ) 「指示の言葉に必 佐々 原の条件1は, きわめて重要である, 佐々原は次の ように述べている( . 要なのは正確さではない. 受け手である子 どもたちにとっ て適切であるかどう かである.」この条件 1 4 注 ) は, 宇佐見寛の述べる語用論的範囲の 問題であると思われる. 宇佐見は次のように述べている{ . i ) を次の3部門に分けるのは, 一般にかなり定着した分類である. t 記号論 ( emi o c s i ) ……記号と記号との関係を研究する t 統辞論 ( t ac cs syn i ) ……記号と意味の関係を研究する 意味論 ( t c s seman i ) ……記号とその 使用者である人間との関係を研究する 語用論 ( cs pragmat ……途中省略…… 意味論における 「正確さ」 と語用論における 「適切さ」 とは区別すべきである. 宇佐見の論は, 意味論的に正確な言葉を用いるの ではなく, 語用論的に適切な言葉 が大切である と い う こ と で あ る.. 語用論的に適切であるということは, 言葉の伝達関係 からみて適切でなけれ ばならない. 言葉の 伝達は, 送り手から受け手側のある解釈 を目ざして行われる. つ まり, 受け手側にその解釈が成り 立て ばよいのである. 送り手から受け手に伝えたい情報 があるとする. 受け手の方は, すでに何らかの情報 を蓄積して いる. 受け手は, それとの関係で送り手からの言葉を解釈す るのである. したがっ て語用論では, 次の両面が問題となる. ①送り手 (指導者) の伝えたい情報 ②受け手 (児童・生徒) の情報に関. する蓄積度 語用論と意味論の関係に関しては, たとえ ば次のような例 がわかりやすいであろう.「斜腹筋をし めなさい」 と指示するよりは, 「おへそをひきしめて ごらん」 と指示する方 がより効果的である. ま た, 「大きな声で歌い ましょう」 と指示するよりも, 「もっ と高い星まで, みんなの声をと どかせま しょう」 と指示する方が, 児童・生徒の声は違ってくる. 「お へ そ を ひ き し め な さ い」 や 「も っ と 高 い 星 ま で, み ん な の 声 を と どか せ ま し ょ う」 と い う 指 示. は, 意味論から言え ば間違っ た指示である. しかし, 児童・生徒に与え得る 効果の大きさからすれ ば, 語用論的に適切な指示なのである. によって, 自然に斜腹筋をしめる状態ができあがる. 先の例では, おへそをひき しめさせること・ 「 どくような声」 がイメージとしてできあ が 高い星までと 童・生徒の頭の中に 児 また後の例では, り, 次の生き 生きとした歌唱活動へとつな がっ ていくのである. した がっ て, 意味論的には不正確な指示であっ ても, 語用論的に適切である場合 があり得ると言 え る.. このような条件の他に, 筆者は知的好奇心を促すような指示の 重要性を考えている. 指示はたん に児 童・生徒を動かすのではなく, 自発的に彼らを動かせる機能をもたなけれ ばならない. な拡散的好奇心と, 知的 l バ ーライ ン (Be r yne ,D.E) は, 知的好奇心を, 何にでも広く示すよう 一ライ ンは特殊的好奇 心を誘い な面な ど特殊なものに示す特殊的好奇心に区別している. また, バ・ 「 「 「 「 「 驚き 不調和 出す刺激特性(照合変数) として, 新奇さ」 変化」 」 「複雑さ」 「暖昧さ」 不明瞭 」 1 5 注 ) つまり 環境刺激が適度の近奇性 や適度の複雑さをもっと, 人の関心を刺激 さ」をあげている{ , . 106.
(8) . 音楽科教育における言語指導行為の研究 (1) す る と い う の で あ る.. 波多野誼余夫・稲垣佳世子も 同様の観点から 人間は決して怠 けものではないが すべてのもの , , に対して興味や関心をもつのではなく, 対象が 「適度に新奇」 であることがその前提となることを 6 性1 ) 指 摘 して い る{ .. したがっ て, 知的好奇心 を誘発するには 新奇性・意外性と いっ た条件が必要となると言える , . この条件に関して, 八木正 一 は次のような例をあげている( 注 1 7 ) 「たとえば 教材曲を歌っ ている , . 時に, どう しても高い声がのびない場 合がある そんな時 筆者は伴奏を中断して 『みんなおしり . , の穴はあるね? きたない話だけど, うんこを切る時のようにおしりの穴をつぼめて00のところ をうたっ てごらん』 と突然指示する 学習者たちは一瞬キョ トンとする 予期 しない不連続な展開 . . だから である, 経験的な言いかたではあるが つ ぎの瞬間にはがぜん盛り上がり 高い音が変わ っ , , て い く.」. .この条件は 副次的なものかもしれない , . しかし, 指示の具備す べき条件として考慮し取り上 げ る価値があると考える. またこの条件は, 内容的側面だけでなく .作用的側面の条件としてもとら , えることができる であろう. 以上を踏まえて, 音楽科の実技指導における指示の具備すべき条件を次のように整理することが ・. で き る.. ・. ・ , ,. .. 1時に1事であること (1度にたくさんの指示を出しても効果はない), A. 作用的側面 (指示の出し方 ) . ,. 追加と変更をしないこ ●と. (指示の追加や変更は混乱を招く) 個別指示をしないこと (指示は必ず全員に伝えなければならない) 具体的であること. B翻. ( 作用的側面の条件でもある ) 鰹 重義. 指示の具備すべき条件を取りあげてきたわけであるが 音楽科の実技指導において特に重要である , と思われるのは 「適切さ」 である それは宇佐見にならえば 意味論的に正確な指示ではなく 語 . , , 用論的に適切な指示である. この語用論的に適切 な指示を考えていく上で, その基盤となるのは間接性の原理であるゞ 間接性 1 8 ) 「教師は教えねばならないことを教えてはならない 住 に関して, 吉本均は次のように述べている( . . それを子 どもたちの学びたいもの, 追求したいものに転化し 発展させて いかなくてはならないの , で あ る.」. 1 9 注 ) また, 岩下修は次のよう に述べ原則化している( -「『させたいこと』を直接言って はだめ である. AをさせたいならBと言え, である この原則により 子 ども達を知 的に動かすことが できる さ , . .」 らに岩下は, この原則に関して次 のように述べている健2 0 ) 「Aという状況とB の言葉の間に生じる . 落差が, 心が動かすのである. 『AとBとの落差』を埋めようとして働く好奇心 は あるいは人間の , 生理的反応といってよいのかもしれない 私は この生理的反応の仕方の中に 人間の 『知 を見 , . 』 , るのである.」 この岩下の言葉は, 間接性の根本原理をあらわ していると言える . 107.
(9) . 篠 原 秀 夫. 意味論・語用論の関係を岩下の原則にあてはめてみる. Aは意味論的に正確に 表現したものであ る. これをそのまま表現するのではなく, Aの内容を語用論的に適切なBに置きかえて表現するの で あ る,. 一 般に,適切でないと思われる指示を検討してみる と,「AをさせたいならBと言え」のBのレパー. トリー が極めて多いと言える, 実技指導においては, 「AをさせたいならBといえ」という間接性の原理に基づきながら, 語用論 的に適切な指示を与えていくことが重要であると考える.. W. 実技指導における適切な指示. それでは, どのようにすれ ば語用論を意識した適切な指示, つまり Bに相当する指示を作り 出し ていくことができるのであろうか. 基本的には次の作業が必要になると考える. 第 一 は, 教育内容の分析である. 適切な指示を生み出すためには, 教育内容の構造 を撤密に分析 することが重要である. そのためには, 教材となりうる 音楽作品がどのような構造を持っているの か, 分析をしなけれ ばならない. また, その作品を表現する ために必要な技術の構造も明らかにし ておかなけれ ばならない. しかも, それをできる限り言語で表せること が大切なのである. 第二は, 児童・生徒の実 態に関する分析である.、適切な指示を生み出すためには, 第一の作業と 合わせて児童・生徒の実態に関して, いろいろな角 度から分析をして おかなけれ ばならない. つ ま 「 り, 「児童・生徒が教育 内容の, どの部分に関して どれだけ認識しているか」 , 児 童・生徒にとっ て 「 「 難しい箇所, 比較的平易な箇 所は どこか」 , 児童・ , 児童・生徒はどの部分に関心を持っ ているか」 生徒に どのように働きかけたら, どのように動くか」 等の分析である. 実際には, これらの作業 が総合的に行われなけれ ばならない.. A. 教育内容の分析 (教材の分析, 技術の構造の分析等) B. 児童・生徒の実態に関する分析 (認識能力, 興味・関心の分析等) この場合, これらの分析 をいかに適切な指示へと結びつけていったらよいであろうか. すなわち, どの ようにして言葉を選 び, 指示を作っ ていっ たらよいかという問題がある. この点に関して, 筆 者は次の3点 を考えている, ( ) 共通のイメー ジを喚起させる指示 1 2 1 注 } 岩下修は, Bの言葉を求めて次のような仮説を設定 している{ . 「AをさせたいならB といえ」 -- Bの言葉の見つけ方 「ゆれのないモノ」 を提示することによ り, 子 どもを知的に動かすBの 言葉を作り出すことができる. 「ゆ れの な い モ ノ」 と して 次 の 6 点 を 考 え る. ,. ①物 ②人 ③場所 ④数 ⑥音 ⑥色. 108.
(10) . 音楽科教育における言語指導行為の研究 (1). 岩下の仮説は特に語用論を意識したものではない しかしBの言葉を探っ ていく上で貴重な仮説 . と言える. 重要なことは, 岩下のいう 「ゆれのないモノ」 を提示することにより 児童・生徒の頭 , の中に共通のイメージを喚起させることである. したがっ て 「ゆれのないモノ」 は 児童・生徒が , 共通に知覚体験した ものでなければならない . ここでは, 岩下の①~⑥の要素を参考にしながら, 実技指導における適切な指示を具体的に取り あげてみたい. 岩下のあげている① ~⑥の要素がすべてを網羅しているとは言いきれない そこで . 具体的に指示を取り上 げていくなかで, 筆者なり に考えた要素も加えて みたい ,. ① 物. 物に関しては次のような例があげられる . A. う す い絹 の ベ ー ル を か ぶ せ る よ う に 歌 い ま しょ う .. B. 口を大きく開けて.く じらが大きな口を開け,海水も魚もドンドンはいる・ように吸いま しょ 注2 2 ) う( .. C. ロウソクの火を吹き消すつもりで息を吐いて ごらん .. ・ D. 舞 台 の 上 の フ ァ ・ツ シ ョ ンモ デル (あ る い は アイ ド ル ス タ ー) に な っ て 歌 っ て み よ う.. Aは美しくやわらかい声を要求する時, B・Cは呼吸法の指導の時 Dは歌う姿勢の指導の時 , に有効な指示である. これらの指示の場合, Aではうすい絹 のベール Bではく じらの大きな口 , , C で は ロ ウ ソ ク の 火, D で は フ ァ ッ シ ョ ンモ デ ル (アイ ド ル ス タ ー) と い う 「物」 が 決 定 的 に 重. 要である, Dは物というよりも, 人といった方がよ いのかも しれない これらの 「物 の提示が 」 . , クラスの どの児童・生徒の頭の中にも共通のイ メージを作り出すのである .. ② 人. 人に関しては次のような例があげられる . 2 注 3 ) E. 上を見なさい. 目線は先生だよ. 浮気しないでね( . F. 小 錦 に な っ た つ も り で, どっ し り か ま え て ご ら ん .. G. 水戸黄門の最後に印篭が出てきて黄門さまがうれしそう に笑う所があるでしょ みんなも . 注2 4 ) 黄 門 に な っ た つ も り で お 腹 か ら 笑 っ て み よ う( .. E・Fは姿勢の指導の時, Gは発声指導の時に有効な指示である これらの指示は 「人」 がポ . ・ イ ントとなり, イメージの喚起につながっ ている つまりEは先生 Fは小錦 Gは水戸黄門で , . , ある. これらの中でも, Eの先生という 「ゆれのないモノ」 は 児童・生徒にとっ て極めて大き , な存在と言える.. ③ 場所 場所に関しては次のような例があげられる. H. 息 を い っ ぱ い 吸 い ま.し ょ う. 手 や 足 の 先 ま で ず ー っ と 息 を 入 れ る よ う に 吸 い ま し ょ う低2 5 ). 1. 自分の声を通りの向こうの家までとばして ごら ん . J. お 風 呂 に 入 っ て い る 時 の よ う に リ ラ ッ ク ス して 歌 い な さ い ,. Hは呼吸法の指導の時, 1は伸びのある豊かな声を要求する時 Jは脱力を要求する時に有効 , 109.
(11) . 篠 原・ 秀 夫. な指示である. H~}は, 「物」 というよりは 「場所」 が重要である. すなわちHは手や足の先, 1は通りの向こうの家, Jはお風呂である.・これらの場所 が 「ゆれのないモノ」 となり, 児童・ 生徒の頭の中に共通にイメー ジされるのである.. ④ 数 数に関しては次のような例があげられる. 6 ) 注2 K. 髪 の 毛 2 ~ 3 本 分 あ げて み よ う( L. そ こ は f (フォ ルテ) 百個 です.. M. 百万円のっ ぽをたなの上に置く気持ちで音を大切に置いて ごらん. Kにリコーダーのサミング (裏穴のあげしめ) の指導の時, Lはf (フォ ルテ) を強く要求し たい時, Mは音の出 だしが乱暴になっ ている時に有効 な指示である. これらの指示は, 「数」が重 Kは髪の毛2~3本, Lはf百個, Mは百万円のっ ぽである. , 要な要素となっ ている. すなわち, Mは物や場所が組み合わされている指示例 である. 「物」 や 「場所」 は 人によっ て浮かぶイメージは多少異なる. しかし数は, ほとんど共通のイ , メー ジとして児童・生徒の頭の中に浮か ぶと言える. ⑥ .音 音に関しては次の ような例があ げられる. N」 熱い スープをフーフー言いながらさ ますように, 最後まで息を吐ききって ごらん. , ○. 朝, すずめがチュ ンチ ュ ン鳴く ような感じで’ タ ンギングをしてみよう. . P. 教室の窓 ガラスがビリ ッ ビリ ッ とするくらい歌っ て ごらん. Nは呼吸法の指導の時, 0はリコー ダーのタ ンギングの指導の 時, Pは伸 びのある 豊かな響き ・なっている. しか の声を要求 する時に有効な指示である. これらの指示は 「音」●が重要な要素と し, N~Pの場合は純粋 な音そのものではなく, すべて擬声語の範噂のものである. すなわち,… 「 N は フ ー フ ー, 0 は チ ュ ンチ ュ ン, P は ビ リ ッ ビ リ ッ で あ る. 副 次 的 な 要 素 で は あ る が, 音」も. r 児童・生徒に共通のイメ ージを持たせることができる . ⑥. 色. 岩下の⑥の色に関しては, 適切な指示例を多く見つけることができなかった. その中で,一比較 的わかりやすい と思われる例を1つあ げてみる. Q. 舞台の照明 が青から赤に パッ と変わるよう に, 思い切 っ て雰 囲気を変えて歌って みま しょ 注2 7 ) う( .. Qは転調するフ レーズの練習の 時に有効な指示である. この指示は, 「青」 から 「赤」 の変化と い う 「色」 が 重 要 な ポイ ン ト と な っ て い る. こ の 「色」 も 「ゆ れ の な い モ ノ」 と して, 児 童 ・ 生. 徒の頭の中に共通にイメ ージされるのである. ⑦. 動作. 岩下の①~⑥の要素の他に, 筆者の考えた要素として 「動作」 を取りあ げてみる. 次は動作に 関する指示例 である. . 1 10.
(12) . 音楽科教育における言語指導行為の研究 (1). R. 肩をもっ と遊ばせてごらん. S. 男子は女子の声を家の土台のように下からしっ かり支えてあげなさい . T. その音を上 にのせておいで. .Rは肩の脱力 を要求する時, Sは合唱の音楽づくりの指導の時に有効な指示 である. またTは 歌唱指導において, 上行 ~下行のフレーズの中で一番高い音が上がりきらなない時の指導に有効 「 「 な指示である. Rは 「遊 ばせ る」 , Sは 支える」 , Tは のせる」 という動作が重要なポイ ント となっている. これらの動作が, 「ゆれのないモノ」 となっ て児童・生徒の頭の中に共通にイメー ジさ れ る の で あ る .. この動作に関しては, 「物」・「場所一 等の要素とは異なり 児童・生徒によって微妙にイメージ , の差が出てくる可能性がある. しかし, ある程度共通のイメージを持たせることができるのでは ないかと考える. 以上, 岩下の要素を基に筆 者なりの要素も加えながら 実技指導における 具体的指示例を取り , あげた. これらの要素は常 に単独で捉えるべきものではない 実際に指示を作 り上 げていく場合 . には, 様々 な形で組み合わさ れなければならない これらの要素を意識的に指示の中に提示して . いくことによ り, 児童・生徒の頭の中に共通のイメージを喚起させる指示を作り出 していく こと が でき る.. ( 2 ) 意識を他に向けさせる指示 語用論的に適切 な指示を作り出していく場合,( 1 )で述べた指示と並んで次 の指示も重要である . つまり, 意識を他に向 けさせるような指示を作り出していくことである これは 児童・生徒の意 . ,、 識を別のところにもっていくことによ り, 教師が目標とする ことが結果的に達成さ れるような指示 であ る.. 具体的な指示例をいく つか あげて みる. A. お 腹 で歌 っ て み よ う.. ながら歌っ てごらん.. 2 注 8 ) B. 耳 た ぶ に も 空 気 を 入 れ て み よ う( .. C. お へ そ を ひ き し め. D. おしりの 穴をしめなが ら歌っ て ごらん .. Aは肩や胸の脱力を要求する時に有効な指示である 「肩の力をぬきなさい」と欠陥のある個所を . 指摘しても, 逆にますます力が入 ってしまい逆効果 になる場合がある このような時 身体の別 の . , 部分に焦点をそらすことによっ て脱力をねらうのである つまりこの指示の場合 児童・生徒の意 . , 識を・「お腹」 という 他の箇所に向けさせることによって, 目的である肩や胸の脱力をねらうのであ る.. Bの指示も同じ脱力をねらいとする指示 である. 下あごに不必要な力が入っている時 「あごの力 , をぬきなさ い」 と指示するよりは, 「耳だぶにも空気を入れて みよう」 と耳たぶの方に意識を向けさ せ る の で あ る.. C・Dは, 斜腹筋を使わせて高い音を要求する時に有効 な指示である 児童・生徒に 「斜腹筋を . ひきしめなさい」 と指示しても, なかなか思うようにいかない場 合が多い このような時 おへそ , , をひきしめさせ ることによっ て, またお しりの穴をしめさせることによ って 自然に斜腹筋を使わ , せ る こ と に な る の であ る . 111.
(13) . 篠 原 ,秀 夫. ( ) 「ほめ言葉」+指示 3 副次的ではある が, 次の指示も加えておきたい. 「ほめ言葉」+指示の形である. ほめ言葉は評価 表現の範瞭である. このほめ言葉は, 児童・生徒を動かすのに有効に働く場合 がある. これを指示 と組み合わせることによっ て語用論的に適切な指示を作り出すこと ができる. いくつか例をあ げてみる. A. 出だしが大 変よくそろっ ていたよ. もう 一度演奏してみよう. B. ク レ ッ シ ェ ン ドか ら の 盛 り 上 が り が か っ こ よ か っ た ね. も う 一 度 聴 か せ て ね,. C. このクラスはリコ ーダーが上手だね. きっ と次の曲もす ぐにできるように なるね. Aは出だしがそろっ ていない時の 指導において, Bはク レッ シェ ンドを要求した い時, Cは次曲 への 意欲を持たせたい時に使っ てみたい指示である. これらの指示は, 必ずしも良い結果につ ながるとは限らない. それは, これらの指示の中に 「だ ましの要素」 が入っ ているからである. したがっ て教師は, 使用する状 況, 児童・生徒の実態, 児 童・生徒との信頼関係等を充分に考慮しながら使用 しなけれ ばならない.. V. 適切な指示の追求. 以上, 語用論的に適切な指示に焦点をあて, それを作り出す手だてを中心に考察してきた. 実技指導においては, 特に共通のイメー ジを喚起させる指示が重要である と考 える. すなわち, 指示の中に 「ゆれのないモノ」 を提示していくことによっ て, 児童・生徒の 頭の中に共通のイメー ジを喚起させるのである. そのためには, 前述した 基本的な作業が大切である. とりわけ児 童・生徒の認識能力の実態を把 握することは重要である. 小学校1年生と6年生, 中学校1年生と3年生では, 認識能力は明らか に異っ ていると言える, また同じクラス内において も, 児童・生徒間には認識能力の差がみられる の で あ る.. 教師は, こう した児 童・生徒の認識能力の実態, 興味・関心を充分に分析 し, 把握しておかなけ れ ばならない. また, 児童・ 生徒に身につけさせたい技術の構造も, できるか ぎり分析し理解して おかなけれ ばならない, これら・ の分析を基に, 指示の中に提示する言葉 を選んでいくの である. したがって同じ指導内容 であっ ても, 学年が異なれ ば, また クラスが異なれ ば, 指示語は当然異なっ てくると言える. 1 しかしながら, このようにして作り出した指示を実際に使用 した場合, 教師のイメー ジと児童・ ・生徒の感覚 と 生徒のイメージがすれち がいになることもある. あるいは, 教師のイメー ジが児童. なじまないこともあるの である. このような場合, ひとつのイメー ジにこ だわるのではなく, 様々 なイメージの組み合わせによっ て対応していかなけれ ばならない. したがって, 1つの指示が児童・生徒に どのように受けとられ て いるのかを適確に判断し, それに対応す る指示を臨機応変に作り出していく必要があ る .. ・′. 言語指 導行為は, 指示にか ぎられるものでは当然ない. 発問・説明・助言・評価表現も指示と同 様重要な役割をはた している. 今後は, 指示とともに他の言語指導行為にも視点を向けることを考 112.
(14) . 音楽科教育における言語指導行為の研究 (1) え て い る.. また指示に関して は, 指示の具備すべき条件の追求とともに 適切な指示を作り出す手だてをさ , らに追求していきた いと考えている.. )王. 1) 藤岡信勝 「教材を見直す」 『岩波講座 教育の方法3 子どもと授業』 岩波書店 19 87年 p 78‐ 1 79 .1 . 2) 斉藤勉 r現代授業論双書5 9 もの・こと・ことばを教えること」 明治図書 19 86 p 2 6 . . 3) 近藤幹雄 『音楽指導の技術』 国土社 19 75年 p .30 . 4) 近藤幹雄 注( 3 )の文献 p 3 1 . . 5) 岩浅農也・横須賀薫編 「子どもが見える授業技術入門⑥ 教師の話し方と表現力』 国土社 19 84年 p .47 . 6) 久喜吉和 『若い教師のための授業入門⑤ 発問・助言・指示の技術』 明治図書 19 84年 p .11 . 7) 久喜吉和 注( 6 )の文献 p 05 ‐1 28 .1 . 「指示」 の明確化で授業はよくなる』 明治図書 1 8) この用語は岩下修にならって使用した. 岩下修 『 98 6年 p .43“44 .. 9) 竹内秀男 C Iにびびく合唱指導 -- 子どもの音楽的変容をさぐる --』 教育芸術社 1 98 8年 p .40 . 1 0 ) 坂本光男 「どんな 『指示のあり方』 がよいのか」r授業研究』 No 00 明治図書 19 7 5年 p 56 .2 .53‐ . 11 ) 向山洋一 『教育新書1 授業の腕をあげる法則』 明治図書 19 85年 p 2‐ 7 0 .1 . 1 2 ) 佐々原正樹 「指示の言葉 -- してよいことダメなこと」 「授業研究』 No 2 8 明治図書 19 8 6年 p .9 .25 . ) 佐々原正樹 注 ( 13 12 ) の文献 p ‐2 2を筆者が要約した. .21 1 4 ) 宇佐見寛 「意味論的正確と語用論的適切」 『現代教育科学』 No 18 明治図書 1 98 3年 p .3 .120 . 1 ) D. E. バ」ライ ン 『思考の構造と方向』 橋本七重・小杉洋子訳 明治図書 197 5 0年 p ‐ 286 .285 . 16 ) 波多野誼余夫・稲垣佳世子 『知的好奇心』 中公新書 3 18 19 73年 p .48‐51 . 17 ) 八木正一 「音楽指導における指示語に関する一考察」『埼玉大学紀要教育学部 35号』 1 98 6年 p 4‐95を .9 筆者が要約した. 1 ) 吉本均 「授業にとって発問とは何か」『授業研究』 No 8 5 明治図書 1 983年 p .25 .15 . 1 9 ) 岩下修 『教育新書67 AをさせたいならBと言え』 明治図書 1 9 89年 p ‐16を筆者が要約した. .12 2 0 ) 岩下修 注Q 9 0の文献 p ‐ 43 .42 . 1 2 ) 岩下修 注Q 9 )の文献 p 1 1 4 1 15 . ‐ . 2 2 ) 渋谷伝 「歌唱呼吸法の実践研究」 『教授学研究年報』 宮城教育大学教授学研究会 1975年 p 4 .0 . 23 ) 音楽之友社編集部 「鎌田雅子先生の指導を観る」 「教育音楽 中・高版』 音楽之友社 19 8 8年 6月 p .18 . 2 ) 下田正幸 『合唱指導のためのわかりやすい発声法』 音楽之友社 1 4 987年 p .41 . 2 ) 渋谷伝 注解 5 )の文献 p 0 .4 . 26 ) この指示は, 高知大学教育学部吉田孝氏から教えていただいた . 27 ) 竹内秀男 注( 9 )の文献 p .30 . 2 8 ) 渋谷伝 注◎の文献 p .28 . (本 学 講 師. 釧 路分校). 113.
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