精 神 障 害 者 の 家 族 支 援 に つ い て の 文 献 研 究 − 歴 史 的 経 緯 と 当 事 者 研 究 か ら 支 援 の 方 向 性 を 探 る − 佐 々 木 裕 子 ・早 川 由 美 要 旨 社 会 福 祉 基 礎 構 造 改 革 の 中 、 精 神 障 害 者 福 祉 も地 域 福 祉 へ ・利 用 契 約 制 度 へ とパ ラ ダ イ ム 転 換 が 図 られ 、 利 用 者 主 体 が 大 き く うた わ れ て い る 。,しか し精 神 障 害 者 福 祉 の 分 野 は 歴 史 も 浅 く 、 地 域 生 活 の 支 援 ・推 進 も困 難 な 状 況 に あ る 。 そ の 精 神 障 害 者 支 援 の 鍵 を探 す た め 、 家 族 の 支 援 とい う視 点 か ら 、論 じて い き た い。 精 神 障 害 者 の 過 去 の 歴 史 は 、 人 権 が 踏 み に じ られ た も の だ っ た 。 近 代 以 降 、 歴 史 的 に ど の よ うに 処 遇 を 受 け て き た の か 、最 近 研 究 も増 え て い る。 しか しそ の 影 で 、 家 族 に と っ て も困 難 な 歴 史 で あ っ た こ とが 隠 され て い る。 第1章 で は 、 精 神 障 害 に 関 す る法 や 制 度 の 流 れ を 家 族 の 視 点 で 経 過 を 辿 り、 家 族 が どの よ うに 捉 え られ て き た の か に 注 目す る 。 第2章 で は 、 心 理 教 育 と家 族 会 とい う視 点 か ら 、 家 族 が 病 因 と して 捉 え られ た 時 代 か ら治 療 の 対 象 を 経 て 、 支 援 の 対 象 へ と移 行 した 経 過 を 辿 っ た。 さ らに 家 族 会 の 変 遷 を 法 制 度 と の 関 連 に 着 目 し辿 り、 そ の 上 で 家 族 会 が 担 っ た 役 割 に 注 目 し、 現 在 の 課 題 と今 後 の 支 援 の あ り方 に つ い て 提 言 した 。 第3章 で は 、 当 事 者 研 究 と い う取 り組 み に 注 目 し、 研 究 当事 者 と そ の 家 族 の 関 係 を 考 察 し、 そ の 研 究 内 容 か ら家 族 支 援 に 生 か す 方 向 性 を 模 索 し、 家 族 支 援 の 新 た な視 点 の鍵 を提 言 した い。 【は じめ に 】 社 会 福 祉 基 礎 構 造 改 革 の 中 、 様 々 な 分 野 で 市 場 原 理 が 導 入 され 、 措 置 か ら利 用 契 約 制 度 へ と大 き くパ ラ ダ イ ム転 換 が 図 られ て い る。 そ の 中で 、 精 神 障 害 者 福 祉 の 分 野 も地 域 福 祉 へ ・利 用 契 約 制 度 へ と転 換 され 、 利 用 者 主 体 が 大 き く うた わ れ て い る。 精 神 障 害 者 福 祉 の 分 野 は 、 諸 外 国 か らの 意 見 と 人権 に 関 す る考 え方 の 変 化 や 、 高 騰 す る 医療 費 の 削 減 目的 と精 神 医 療 の 進 歩 な ど と環 境 が 変 化 し、精 神 障 害 者 を 入 院 治 療 中 心 ・社 会 的 入 院 生 活 か ら、 自宅 や 地 域 で 生 活 す る こ とが で き る よ うに 、社 会 復 帰 ・社 会 参 加 ・地 域 生 活 を 支 援 す る方 針 に 、 政 策 転 換 され て い る。 そ れ は 、1999年 に 改 正 され た 精 神 保 健 福 祉 法 に 基 づ い て 、 利 用 契 約 制 度 に よ る 様 々 な 社 会 復 帰 事 業 や 、 地 域 対 策 ・居 宅 支 援 事 業 な どが 開 始 され て い る こ と に も表 れ て い る。 しか し、 「施 設 収 容 か ら地 域 支 援 」 を推 進 す る と い う流 れ は あ る もの の 、 現 状 の 制 度 で は 地 域 生 活 を 送 る 精 神 障 害 者 へ の サ ー ビス は 充 足 して い る とは 言 い が た い 。 そ の 結 果 、 精 神 障 害 者 の 地 域 生 活 を 支 援 ・推 進 す る 上 で 、 精 神 障 害 者 を 支 え る 家 族 に 大 き な 負 担 を 与 え て い る と い え る。 社 会 資 源 の 不 足 か ら選 択 肢 は 少 な く 、 い ま だ 地 域 で 暮 らす 精 神 障 害 者 の 生 活 にお い て 、 家 族 の 役割 93 N工工一ElectrOnlcLlbrarySe-vlce
NaqOyaCltyUnlverslty は 規 定 され 、 様 々 な 面 で 負 担 を 強 い られ て い る。 改 め て 家 族 に つ い て 考 え 直 す こ と は 、 今 後 の 精 神 障 害 者 福 祉 を 考 え る上 で 意 味 が あ る と 考 え る。 こ う した状 況 の 中 、様 々 な精 神 障 害 者 福 祉 に 対 す る 取 り組 み や 、 精 神 障 害 者 自身 が サ バ イ バ ー と い う当事 者 と して 自身 を 講 演 で 語 る と い う機 会 な ど も増 えて い る。 そ う した 実 践 の 一 つ に 、 精 神 障 害 者 が 「自立 」 を 図 る 際 に 、 家 族 か ら物 理 的 ・心 理 的 に 距 離 を保 ち、 精 神 障 害 者 が 「強 め ら れ て い く 」 過 程 が あ る。 この 自立 の 過 程 は ど の よ うな も の で 、家 族 は そ の 過 程 に ど の よ うに 関 わ れ ば 良 い の だ ろ うか 。 これ ま で の 家 族 療 法 や 家 族 支 援 の ア プ ロー チ と され た もの と、 こ の 当事 者 の 自立 の過 程 は 異 な る 関 わ りが 述 べ られ て お り、 こ の 家 族 支 援 過 程 の 具 体 化 の 必 要 性 を感 じる。 そ こ で本 稿 で は 、 第1章 で は 、 精 神 障 害 者 の 方 の 流 れ を家 族 の 視 点 で 追 い な が ら 、 ど の よ うに 捉 え られ て き た か を捉 え 直 す 。 そ して 前 章 で は 、 家 族 会 とそ の 支 援 の 変 遷 か ら、 家 族 病 因 論 か ら 家 族 支 援 へ の 移 り変 わ り と、 家 族 会 の あ り方 を検 討 し、家 族 の負 担 を 浮 き 彫 りに す る。 第3章 で 、 精 神 障 害 者 の 当 事 者 研 究 を 検 討 し、 精 神 障 害 当 事 者 ・家 族 関 係 に 着 眼 し、 当事 者 研 究 を家 族 支 援 に 生 か す 方 向 性 を模 索 す る。 【第1章 歴 史 的 背 景 精 神 障 害 者 の 家 族 に 注 目 した 法 と制 度 の 流 れ 】 こ こで は 精 神 病 者 に 関 す る法 や 制 度 の 流 れ を 家 族 の 視 点 で そ の 経 過 を追 い 、 家 族 が どの よ うに 捉 え られ て き た か 、 注 目す る。 1.精 神 病 者 監 護 法 以 前 わ が 国最 古 の 法 典 ・大 宝 律 令 の 再 編 成 版 「養 老 律 令 」(718年)に は 、 障 害 者 に 関す る 記 載 も含 まれ て い る。 「残 疾 」 とい う軽 度 障 害 ・「癈疾 」 とい う中度 障 害 ・「篤 疾 」 と い う重 度 障 害 の3区 分 で 、 「癲狂 」 と して 「人 が 妄 に つ か れ 狂 に お か され 止 む と きが な い 」 と い う精 神 障 害 も重 度 に 含 ま れ 、税 制 上 の優 遇 処 置 や 犯 罪 時 の 減 刑 が 記 載 され て い る。 家 族 に 関 して は 「看 護 人 は 一 人 、 子 孫 な い しは 近 親 の 者 を あ て る」 と され 、 障 害 者 の 対 象 規 定 や 「福 祉 的 処 遇 」 と と も に 、 家 族 看 護 の 方 針 が この 時 代 にす で に 規 定 され て い た とい え る ω(2)。 江 戸 時 代 に 入 る と 、精 神 病 者 に は 、 加 持 祈 祷 や 冷 水 療 法 、 日常 生 活 ・作 業 療 法 な どが 行 な わ れ 、 数 人 か ら数 十 人 の 精 神 病 者 が 寺 の 宿 坊 や 近 くの 茶 屋 ・宿 屋 ・民 家 に 滞 在 し世 話 を 受 け る 「保 養 所 」 も始 ま っ た 。 こ う した 保 養 所 で 家 族 は 、 患 者 を保 養 所 に 連 れ て き た り、 「患 者 の 様 子 を 見 か ね て縛 り付 け た 」 「実 父 が 患 者 に付 き 添 い 起 居 を共 に し、 熱 心 に 看 護 」 な ど、 実 際 に患 者 と寝 食 共 に した 家 族 も あ っ た よ うだ が 、 詳 細 は 不 明 で あ る ω。 1874(明 治7)年 「恤救規 則 」 が 、 「扶 養 す る 者 の い な い 者 」を 自活 不 能 な 救 貧 対 象 と と ら え 自 助 ・相 互 扶 助 を 勧 め 、 本 人 ・家 族 ・周 囲 の 責 任 で 救 貧 の 努 力 を促 す とい う公 的 責 任 を 回 避 す る 最 初 の制 度 と して 制 定 され た。 ま た1875(明 治8)年 最 初 の 公 立 病 院 ・京 都癲 狂 院 が 設 立 され 、 宿 屋 の 精 神 病 者 預 か りは 廃 止 とな った 。 94 N工工一ElectrOnlcLlbrarySe-vlce
2.「 精 神 病 者 監 護 法 」 制 定:1900(明 治33)年 精 神 病 者 か ら人 と社 会 を守 る とい う、 社 会 治 安 ・防 衛 的 視 点 に よ り私 宅 監 置 を合 法 化 とい う、 精 神 病 者 に 関 す る 近 代 最 初 の 法 律 と して 制 定 。 この 法 律 で は 、 家 族 に 「監 護 義 務 者 」 と して 、精 神 病 者 を 保 護 拘 束 す る 責 任 を 持 たせ た 。 「監 護 義 務 者 」 と は 、後見 人 ・配 偶者 ・親権 を行 う父母 ・戸主 ・親 族会 で選任 した4親 等以 内 の親 族 と され た。 「監 護 義 務 者 」 の 家 族 は 、 警 察 を経 て 行 政 に 願 い 出 て 許 可 を 得 な く て は な らな か っ た 。 さ らに 監 護 に 関 す る 費 用 は 、 被 監 護 者(当 事 者)負 担 で 、困難 な ときは 「監護 義務 者」 で あ る家 族 の 負 担 とな っ た。 そ の 結 果 、 私 宅 監 置 は 増 加 した 。 3.「 精 神 病 院 法 」 制 定:1919(大 正8)年 呉 秀 三 に よ り 「精 神 病 者 の 私 宅 監 置 の 実 態 調 査 」 が 行 わ れ 、そ の 悲 惨 な 結 果 を 基 に公 立 精 神 病 院 の 設 置 が 求 め られ 制 定 され た 。 こ の 調 査 結 果 を5段 階 に 区 分 され 、 そ の 区 分 の 事 例 は 以 下 の 通 りで あ る ω(5)(6)。 「最 佳 良 」 区分 の 事 例 は 、裕 福 な家庭 の男性 ・戸 主で、妻 が監護 義務者 で妻 子 が世話 して いた。 「普 通 」 の 事 例 は 、 中流家庭 で あ る。 「不 良」 「はな はだ不 良者 」 の事例 は、 不潔 な環境 に起居 し 衣 服 も な く 、 栄 養 状 態 も 資 産 状 況 も悪 い 家 庭 で あ る。 「は な は だ 不 良 者 」 の あ る 事 例 は 、 監 護 義 務 者 の 高 齢 の 母 親 と二 人 暮 ら しで あ る。 さ らに 「市 区 町 村 長 の 監 護 扶 養 ・補 助 を受 け る もの 」 は 、 精 神 病 者 と身 体 障 害 者 の 親 子 で恤 救 規 則 の 対 象 者 で 、 「患 者 は 家 族 に よ っ て 一 室 に 閉 じ込 め られ て い る」 と表 現 され た 。 以 上 の 結 果 よ り、 家 族 は 「患 者 の 入 院 に よ り家 族 は 物 質 的 ・精 神 的 に利 益 を 得 る 」 と され 、 国 家 は 「患 者 を 入 院 収 容 す る こ と で 犯 罪 を 防 止 で き 、 国 家 ・社 会 は そ の 安 寧 ・秩 序 が 守 られ る 」 と され 、 公 立病 院 の 設 置 が 促 され た 。 4.「 精 神 衛 生 法 」 制 定:1950(昭 和25)年 精 神 病 者 ・精 神 薄 弱 者 ・精 神 病 質 者 を 対 象 と し、 精 神 病 の 発 生 予 防 ・精 神 的 健 康 の保 持 向 上 の 考 え 方 を 導 入 した 。 精 神 病 院 法 の 隔 離 収 容 主 義 を受 け継 ぎ 、都 道 府 県 に 精 神 病 院 ・精 神 衛 生 相 談 所 の 設 置 を 義 務 化 した 。 家 族 に 関 して は 、 精 神 病 者 を 保 護 す る者 の 名 称 が 「保 護 義 務 者 」 に な り、 ① 治 療 を 受 け させ 、 ② 自傷 他 害 を起 こ さ な い よ う監 督 し、 ③ 財 産 上 の 利 益 を保 護 し、 ④ 診 断 が 正 し く行 わ れ る よ うに ・ 医 師 の 指 示 に従 うこ と と 、治療 協力者 として の義務 内容 が示 され た。加 えて、 自傷他 害の おそれ が あ る精 神 病 者 を 「保 護 義 務 者 」 が保 護 拘 束 で き る と し、 「医 療 保 護 ・同意 ・仮 入 院 」 に つ い て は 、 本 人 の 同 意 が な い ま ま に 、保 護 義 務 者 の 同 意 で 入 院 「で き る」 と され た 。 これ らは 、 一 見 家 族 の 権 利 が 増 え た よ うに 見 え る が 、 実 は精 神 病 者 の 入 院 に 家 族 対 処 を 要 求 す る 、 治 療 協 力 者 の 義 務 役 割 規 定 の 新 た な 明 文 化 と言 え る。 ま た 、 精 神 病 者 や そ の 疑 い の あ る者 を知 っ た者(一 般 の 人)は 誰 で も 、 そ の 者 の 診 察 や 保 護 を 都 道 府 県 知 事 に 申 請 で き た が(23条)、 そ の 申請 書 類 は保 護 者 の住 所 氏 名 の 記 載 が 必 要 で 、 家 族 に 精 神 病 者 の 処 遇 へ の 関 与 を要 求 した も の で あ る。 5。 「精 神 衛 生 法 」 改 正:1965(昭 和40)年 95 N工工一ElectrOnlcLlbrarySe-vlce
NaqOyaCityUniversity l963(昭 和38)年 、 精 神 病 者 の 全 国 実 態 調 査 が 行 わ れ 、 放 置 患 者 の 多 さが 指 摘 され 、 地 域 精 神 医 療 を 理 想 と して 法 改 正 され た。 疾 病0)発 生 予 防 か ら治 療 ・社 会 復 帰 ま で の 一 貫 した 施 策 で 、① 保 健 所 を 地 域 医 療 の 第 一 線 機 関 と し、② 精 神 衛 生 セ ン ター 設 置 、③ 在 宅 者 の 医 療 確 保 の た め通 院 医 療 費 公 費 負 担 制 度 、 ④ 措 置 入 院 制 度 の 改 善 が 行 な われ た 。 こ の 改 正 を 基 に 「保 健 所 に お け る精 神 衛 生 業 務 につ い て 」 の 厚 生 省 通 達1963(昭 和38)年 が 出 され 、1966(昭 和41)年 ∼1968(昭 和 43)年 に か け て 、 各 都 道 府 県 や 名 古 屋 市 に 精 神 衛 生 相 談 員 が 配 置 され 、 保 健 所 で精 神保 健 事 業 や 社 会 復 帰 事 業 、 デ イ ケ アや 集 団療 法 が 開 始 され た 。 家 族 に 対 して は 、 患 者 に 関 す る支 援 と して の 危 機 的 介 入 は 行 わ れ た が 、 あ く ま で も精 神 病 当事 者 を 対 象 と した 精 神 保 健 業 務 で あ り、 直 接 的 な 家 族 支 援 の 事 業 で は な か っ た 。 名 古 屋 市 に お い て も 、1979(昭 和54)年 「保 健 所 精 神 衛 生 業 務 運 営 実 施 要 綱 」 が 策 定 さ れ 、 精 神 病 者 の 「家 族 教 室 」 が 開 始 され た 。 そ の 目的 は 、 精 神 病 者 の 社 会 復 帰 の た め 、 家 族 を 含 め た 地 域 へ の 「普 及 啓 蒙 活 動 で あ り、 家 族 へ の 教 育 ・支 援 で は な か っ た 。 こ こ か ら家 族 は 、 治 療 協 力 者 に 加 え 、援 助 者 (ケア の 提 供 者)と い う役 割 も担 っ た と言 え よ う。 こ の 精 神 衛 生 法 改 正 の 年 に 、 全 国 精 神 障 害 者 家 族 会 連 合 会(全 家 連)が 設 立 し(後 述)、1985 (昭和60)年 名 古 屋 市 に も精 神 病 者 の 家 族 会 が 成 立 した。(以 下 の 記 述 で は 「精 神 障 害 者 」 とす る)ωQ 6.「 精 神 保 健 法 」 成 立:1988(昭 和63)年 1980年 代 、 地 域 リハ ビ リテ ー シ ョン が 立 ち 後 れ て い る 現 状 に 対 して 、 「精 神 障 害 者 の 社 会 復 帰 と福祉 に 関 す る法 制 度 の 改 正 ・整 備 を要 求 す る草 の 根 運 動 」 が 活 発 化 した 。 ま た 患 者 虐 待 ・死 亡 事 件 が 起 こ り法 改 正 を 余 儀 な く され 、 人権 擁 護 と適 正 な 医 療 と保 護 の 確 保 と、 社 会 復 帰 の 促 進 と、 精 神 障 害 者 の 福 祉 の 増 進 及 び 国 民 の 精 神 保 健 の 向 上 を 図 る観 点 か ら成 立 した 。 精 神 障 害 者 の 人 権 と社 会 復 帰 の 促 進 を柱 と して 、 施 設 福 祉 一 辺 倒 か ら社 会 復 帰 制 度 に 関 す る制 度;コ ミュ ニ テ ィへ とい う方 向性 が 初 め て 示 され た 。 家 族 に 関 して は 、 改 定 され て い る項 目 は な く、 名 古 屋 市 で は1989(平 成 元)年 、 家 族 交 流 会 を 催 して い る 。 7。 「精 神 保 健 法 」 改 正:1993(平 成5)年 主 な 改 正 点 は 、① 社 会 復 帰 に 配 慮 し、地 域 に 即 した 創 意 工 夫 と地 域 住 民 の 理 解 と 協 力 を 得 る 、 ② グ ル ー プ ホ ー ム 法 定 化 、 ③ 精 神 障 害 者 社 会 復 帰 促 進 セ ン ター 設 立 、④ 対 象 の 定 義 が 「精 神 分 裂 病 ・中毒 性 精 神 病 ・精 神 薄 弱 ・精 神 病 質 そ の 他 の 精 神 疾 患 」 で あ っ た 。 家 族 に 関 して は 、 保 護 義 務 者 は 「保 護 者 」 に な り(20条)、 精 神 障 害 者 を 引 き 取 る 際 は 、 精 神 病 院 ・社 会 復 帰 施 設 の長 に 「精 神 障 害 者 の 社 会 復 帰 の 促 進 に 関 し、 相 談 援 助 を 求 め る こ とが で き る 」 と権 利 が 設 け られ た 。 さ ら に 「精 神 障 害 者 と同 居 の保 護 者 」 は 、 「負 担 軽 減 の た め」、 保 健 所 が訪 問 指 導 す る とい うケ ア の 対 象 化 と され た。 しか し この 対 象 は 、 母 子 家 庭 ・要 介護 高齢 者 ・発 達 障 害 児 な ど 、家 族 構 成 員 に 何 らか の ケ ー ス ワー ク を 必 要 とす る 事 例 が い る 場 合 な ど、 限 定 され て い た 。 96 N工工一ElectrOnicLibrarySe-vice
8.「 精 神 保 健 お よ び精 神 障 害 者 福 祉 に 関 す る法 律 」(精 神 保 健 福 祉 法)制 定:1995(平 成7)年 ノ ー マ ラ イ ゼ ー シ ョ ン の 考 え 方 ・国 連 主 義 を 踏 ま え 、1993(平 成5)年 「障 害 者 基 本 法 」、 1994(平 成6)年 「地 域 保 健 法 」、1995(平 成7)年 障 害 者 プ ラ ンの 策 定 が 行 わ れ 、 本 法 は 制 定 され た 。 「精 神 障 害 者 の 自立 の 促 進 と社 会 経 済 活 動 へ の 参 加 の 促 進 の た め に 必 要 な 支 援 を行 う」 と い う福 祉 理 念 が 加 え られ 、 精 神 障 害 者 を 福 祉 対 象 者 と し、 障 害 手 帳 が 交 付 され た。 社 会 復 帰 施 設 ・福 祉 ・教 育施 設 や 地 域 生 活 援 助 事 業 を 充 実 させ 、 国 民 は 精 神 障 害 者 に 協 力 す る よ うに努 め る こ と と され た 。 家 族 に 対 す る相 談 指 導 な どの 、 地 域 精 神 保 健 福祉 施 策 が 盛 り込 まれ た。 9.精 神 保健 福 祉 法 改 正:1999(平 成11)年 精 神 障 害 者 の 人 権 に 配 慮 し適 正 な 医 療 と保 護 を 確 保 し、社 会 復 帰 の 一 層 の 推 進 を 図 り、 在 宅 精 神 障 害 者 に 対 す る福 祉 事 業 を 市 町 村 で 推 進 す る 体 制 を 整備 す る と し、保 護 者 の 義 務 の 軽 減 が 挙 げ られ た 。 そ れ は 、① 精神 障 害 者 の 自傷 他 害 防 止 監 督 義 務 の 廃 止 、② 自身 の 意 思 で 継 続 医 療 を 受 け て い る患 者 の 保 護 者 の 義 務 免 除 等 、 で あ る。 在 宅 福 祉 事 業 と して 、 地 域 生 活 支 援 事 業(グ ル ー プ ホ ー ム)、 精 神 障 害 者 居 宅 介 護 等 事 業(ホ ー ムヘ ル プ)、 精 神 障 害 者 短 期 入 所 事 業(シ ョー トス テ ィ)が 創 設 され た 。 精 神 障 害 者 の 居 住 生 活 を支 援 し、 間 接 的 に 家 族 負 担 の 軽 減 に 繋 が り得 る で あ ろ う。 しか しこ れ らは す べ て 努 力 目標 で あ り、義 務 で は な い。 実 施 可 能 か は 、 個 々 の 自治 体 の裁 量 に 任 され 、様 々 な 状 況 の 中 、 どれ だ け 実 践 可 能 が 不 確 か で あ る。 10.歴 史 的 変 遷 の 中 、 家 族 が 背 負 わ され た こ と の 検 討 精 神 障 害 者 の 家 族 看 護 に 注 目 し、 法 や 制 度 の歴 史 を 見 る と、 実 に 養 老 律 令 の 時 点 で 「家 族 は看 護 す る者 」 と され 、 そ の後 も 、 家 族 は 常 に 管 理 ・世 話 を期 待 され て い る。 近 代 に お い て も 、 家 族 は 常 に 社 会 治 安 の た め に 患 者 を監 護 し、 治 療 協 力 者 と して 役 割 を 担 っ て き た。 法 に 記 載 の 「保 護 者 」 とは=「 家 族 」 が 多 く、 現 在 も あ る 家 族 の 負 担 は 、 表1か ら も明 ら か で あ る。 家 族 は 、 監 護 義 務 者 と して 自分 の 家 族 を守 り、社 会 防 衛 と治 安 を維 持 し社 会 を 守 る と い う 「ダ ブ ル ス タ ン ダ ー ド」 の 立 場 を と ら され て い る。 加 え て原 則 家 族 扶 養 で 、 経 済 的 な 負 担 も 家 族 が 背 負 い 、 ど う して も困 難 な 場 合 の み 社 会 扶 養 とい う、恤 救 規 則 と何 ら変 わ りな い 状 況 で 、 処 遇 は 家 族 依 存 とな っ て い る。 そ ん な 状 況 に もか か わ らず 、 精 神 障 害 者 の 実 態 調 査 で は 、 ひ ど い 監 護 状 況 や 結 果 を 、 家 族 の み に 背 負 わ せ 批 判 して い る。 い くつ もの 義 務 が 絡 み あ っ た 複 雑 な 環 境 の 中 で 、 障 害 者 の人 生 全 て を家 族 が 背 負 う結 果 に 至 っ て い る。 精 神 衛 生 法 の 成 立 で 、 家 族 等 の 持 つ 役 割 は 、 「保 護 義 務 者 」 とい う名 称 に な り、若 干 印 象 は 和 らい だ が 、 治 療 協 力 な どの 義 務 内 容 に変 更 は な く 、 家 族 が 担 う負 担 は 解 消 され て い な い 。 具 体 的 に は 、 「家 族 は ○ ○ が で き る」 と権 利 規 定 され て い て も、 実 際 に は 「○ ○ しな さ い 」 とい う義 務 に 匹 敵 す る 内容 で もあ る。 ま た 精 神 衛 生 法 の 改 正 時 、精 神 衛 生 相 談 員 が 配 置 され 支 援 業 務 が 開 始 され た が 、家 族 は 支 援 の 対 象 者 に な り得 ず 、 そ れ どこ ろか 、 精 神 保 健 事 業 の 普 及 啓 蒙 活 動 の 一 貫 と して 社 会 復 帰 や 社 会 参 加 の 地 盤 作 りの 役 割 を担 い 、 一 番 身 近 な ケ ア 提 供 者 とな っ て い る。 家 族 は 、 精 神 障 害 者 と と もに 、 様 々 な 苦 悩 が 予 測 され るの に も か か わ らず 、 障 害 者 の 対 応 ・対 処 の 責 任 を求 め られ 、 ケ ア の 対 象 97 N工工一ElectrOnlcLlbrarySe-vlce
NaqOyaCityUniversity 者 と して 歴 史 の 中で 規 定 され て い な い。 社 会 援 護 策 も な い 中 で 、 治 療 上 の 責 任 ・周 囲 へ の 啓 蒙 活 動 ・経 済 的 扶 養 ・活 動 の 場 作 り ・就 労 の 場 の 確 保 に 至 る ま で 、 ま さ に 包 括 的 に 精 神 障 害 者 の 家 族 の 人 生 の 責 務 を 担 わ され 、 ス テ ィ グマ も負 い 続 け て い る。 家 族 が ケ ア の 対 象 と して 初 め て 規 定 され た の は 、 精 神 保 健 福 祉 法 で の こ とで あ る。 終 わ りの 見 え な い 治 療 協 力 者 と して 期 待 され て き た こ と を思 うと 、 家 族 に 対 して の 福 祉 施 策 が な い ま ま に 、 これ ま で の経 過 に 大 き な 疑 問 を感 じ、 そ の 苦 悩 を 思 い や らず に は い られ な い。 精 神 障 害 者 の 家 族 は 、 家 族 の発 病 に 驚 き 衝 撃 を 受 け 、 理 解 困 難 な 状 況 に 右 往 左 往 し、 手 立 て を 考 え 対応 し、 精 神 障 害 で は な い こ とを願 い 困 惑 しな が ら医 療 機 関 を 受 診 す る。 病 名 を告 知 され 、 は か り知 れ な い 苦 悩 を 味 わ い 、 自身 の 家 族 へ の 関 わ りを 後 悔 し、、発 病 の 理 由 を探 し困 り果 て る。 い つ か は 自 然 に 治 ら な い か 期 待 しな が ら、 近 隣 周 囲 へ の 迷 惑 に 頭 を 下 げ 、 治 療 ・経 済 ・対 応 と行 き詰 ま りな が ら、 何 とか 治 療 や 施 策 に 乗 れ た とこ ろで 、 法 制 上 の 役 割 期 待 で あ る。 何 らか の 支 援 策 が な け れ ば 、 家 族 自身 の エ ン パ ワ メ ン ト ・人 権 復 古 は 起 こ り 得 な い 。 そ こ で 、 改 正 精 神 保 健 福 祉 法 で 、 不 十 分 な が ら 「保 護 者 の 義 務 軽 減 」 と い う施 策 が 挙 げ られ た こ とは 、 重 要 で あ る。 しか し家 族 へ の 負 担 は ま だ 存 在 し、 治 療 協 力 者 ・福 祉 提 供 者 と して 期 待 され て い る こ と も事 実 で あ る。 介 護 保 険 が 導 入 さ れ 、 高 齢 者 介 護 が 家 族 か ら社 会 介 護 へ と価 値 転 換 を果 た そ う と して い る よ うに 、 今 後 精 神 障 害 者 支 援 も 、家 族 か ら社 会 扶 養 ・責 務 ・支援 へ とパ ラ ダイ ム 転 換 が 図 られ る こ とが 望 ま しい と考 え る。 これ ま で 家 族 の 視 点 で 歴 史 を 見 通 した もの は数 少 な い 。 人 権 が 奪 わ れ て き た 障 害 当 事 者 の歴 史 を 考 え る こ とは 重 大 で あ る。 しか し家 族 は 障 害 者 の 影 で 、 多 く の 責 務 を背 負 っ て きた 。 個 人 と し て で は な く 、 「精 神 障 害 者 の 家 族 」 とい うス テ レオ タイ プ 化 され た ス テ ィ グマ の 中 で 生 き る こ と を 強 い られ 、 生 き る ・生 活 に 困難 を生 じ続 け 、 パ ワ レ ス され て き た 。 こ う した 社 会 的 死 に 追 い や られ そ うな 状 況 に あ っ た 歴 史や 法 制 度 が 、 家 族 を 支 援 対 象 と して こ な か っ た 事 を念 頭 に 置 き 、 今 後 の 家 族 支 援 を 考 え 実 践 す る こ とが 必 要 と考 え る。 表1現 在 定め られ てい る保護 者の役割 ① 精 神 障 害 者 に 治 療 を受 け させ る こ と ② 精 神 障 害 者 に 財 産 上 の利 益 を 保 護 す る こ と ③ 精 神 障 害 者 の 診 断 が 正 し く行 わ れ る よ うに 医 師 に 協 力 す る こ と ④ 精 神 障 害 者 に 医療 を受 け させ る に は 、 医 師 の 指 示 に した が うこ と ⑤ 精 神 障 害 者 の 通 院 医 療 費 公 費 負 担 制 度 を 、 保 健 所 長 を経 て 申 請 で き る こ と ⑥ 精 神 障 害 者 の 医療 保 護 入 院 に つ い て 、精 神 病 院 の 管 理 者 に 同 意 で き る こ と ⑦ 精 神 病 院 に 入 院 中 の 者 の 退 院 ・処 遇 改 善 を都 道 府 県 知 事 に請 求 で き る こ と ⑧ 措 置 入 院 か らの 退 院 ・仮 退 院 者 を 引 き取 り、仮 退 院 者 の 保 護 に あ た っ て は 当 該 病 院 の 管 理 者 の指 示 に 従 うこ と。 必 要 が あ れ ば 、 精 神 病 院 や そ の 関 連 社 会 復 帰 施 設 に相 談 し、 援 助 を 求 め られ る こ と 98 N工工一ElectrOnicLibrarySe-vice
【第2章 家 族 会 と 家 族 支 援 の 変 遷 】 精 神 障 害 者 の 家 族 は 、 前 記 し て き た よ う に 支 援 さ れ る 機 会 は 、 乏 し い ま ま 経 過 し て い る 。 こ の 間 「家 族 会 」 の 機 能 は 、 「家 族 が 互 い に 癒 し あ い ・思 い を 共 有 し あ い ・情 報 交 換 を し あ い ・学 習 しあ う」 場 で あ る と 認 識 さ れ て き た 。 し か し最 近 の 医 療 環 境 の 変 化 に よ り 、 入 院 よ り外 来 治 療 へ ・医 療 よ り福 祉 へ と 精 神 障 害 者 福 祉 を シ フ トさ れ て い る が 、 精 神 障 害 者 が 地 域 生 活 を 送 る 上 で の 受 け 皿 が 不 足 し て い る こ と は 、 障 害 者 プ ラ ン で 示 さ れ て い る 通 り で あ る 。 こ う し た 状 況 の 中 で 再 度 家 族 を 「ケ ア の 担 い 手 と し て 」 育 て 社 会 に 出 す こ と が 、 障 害 当 事 者 に 最 も 好 ま しい こ と で あ り 、 経 済 的 に も 効 果 的 で あ る と さ れ 、 実 践 が 試 み られ て い る 。 現 在 も こ の 件 に 考 え られ て い る 精 神 障 害 者 の 家 族 は 、 障 害 者 の 治 療 ・ケ ア を 進 め る 上 で 専 門 的 に は ど の よ う に 捉 え ら れ て き た の だ ろ う か 。 そ の 「家 族 支 援 の 経 過 」 を 簡 単 に 振 り返 る 。 1.家 族 病 因 か ら 家 族 支 援 へ 精 神 障 害 者 を 抱 え る 家 族 を 考 え る と き 、 こ れ ま で 行 わ れ た 統 合 失 調 症 の 家 族 に つ い て の 研 究 を 忘 れ て は な ら な い 。 そ こ に は 脳 と 遺 伝 を 病 因 と す る 見 方 の ア ン チ テ ー ゼ と して 、 研 究 が 進 ん で い っ た 背 景 が あ る 。 統 合 失 調 症 の 家 族 の 研 究 は 、 古 く は1940年 代 に 始 ま っ た 、 家 族 を 病 因 と す る 考 え 方 に 由 来 す る 。 Fromm。Reichmannの 「分 裂 病 を 生 み 出 す 母 親 」(schizophrenogenic mother)は 中 で も 有 名 な 概 念 で あ る 。 こ の 概 念 は 「親 の 病 理 」 が 病 気 を 生 み 出 す と い う も の で あ る(8)。1950年 代 な る と 、 こ の 概 念 は 「二 重 拘 束 理 論 」(double bind theory)を 代 表 と す る 両 親 と の 関 係 性 が 原 因 で あ る と す る 考 え 方 へ と 発 展 し て い く(9)。 こ の 考 え 方 を 追 求 す る 家 族 研 究 や 、 家 族 関 係 の 変 化 を 図 ろ う と す る 家 族 療 法 が 盛 ん に 試 み られ る こ と と な り 、 家 族 が 統 合 失 調 症 の 病 因 と して 受 け 止 め られ る 傾 向 に な っ て い っ た と 言 え る 。1960年 頃 に な る と 、 家 族 と 再 発 と の 関 係 と い う新 た な 視 点 が 登 場 す る 。 こ れ はBrownが 否 定 的 な 感 情 表 現 が 高 い 家 族 ほ ど 再 発 率 が 高 い こ と を 明 ら か に し 、 こ れ をEE (Expressed Emotion:感 情 表 出)と 名 づ け た 。1970年 代 に な る と 、 家 族 に 対 す る 研 究 や 家 族 療 法 の 理 論 は 、 家 族 を 病 因 とす る 視 点 か ら 、 精 神 障 害 者 の 家 族 を 、 機 能 不 全 に 陥 っ て い る 「機 能 不 全 家 族 」 と す る も の へ と 変 化 す る 。1980年 代 に は シ ス テ ム ズ ・ア プ ロ ー チ が 活 発 に 行 わ れ る よ う に な り 、 心 理 教 育(psychoeducation)やSST(Social skill training)が 体 系 化 さ れ て い っ た 。1990年 代 か ら は 、 家 族 自 身 が 問 題 を 解 決 す る 力 を 持 っ て お り、 そ の 力 を 引 き 出 す エ ン パ ワ メ ン トす る と い う 考 え が 受 け 入 れ ら れ る よ う に な っ た 。 こ う し て み て み る と 、 家 族 に 対 す る 見 方 の 変 化 が わ か る。 当 初 、 家 族 は 病 因 か ら 治 療 の 対 象 、 'そ し て 徐 々 に 支 援 の 対 象 へ と 移 り変 わ っ て い る 。 で は 現 在 の 家 族 支 援 は 、 どの よ うな も の が 挙 げ ら れ 、 ど の よ う な も の を 必 要 と して い る の で あ ろ う か 。 2.家 族 支 援 と 心 理 教 育 心 理 教 育 と は 、 再 発 に 関 連 が あ る と 言 わ れ るEEを 低 下 さ せ る 目 的 で 行 わ れ る も の で あ り 、 家 族 支 援 の 一 つ と して 位 置 づ け ら れ て い る 。 家 族 に 対 し 、 知 識 や 情 報 の 提 供 ・コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 99 N工 工一ElectrOnlcLlbrarySe-vlce
NaqOyaCltyUnlverslty や 問 題 解 決 とい っ た 、 対 処 能 力 の援 助 を 目的 と して い る。 これ はAnderson(1980)が 最 初 に 実 践 し、 様 々 な 応 用 が 加 え られ た(1°)。 こ う した 心 理 教 育 は 、 日本 に お い て は 、 家 族 の 交 流 を主 と した 家 族 教 室 を 中心 と して 発 展 して い る。 そ れ は 地 域 社 会 資 源 が 乏 し く、 病 院 を退 院 した 患 者 の そ の 後 の 生 活 は 、 家 族 が 世 話 を す る と い う背 景 が あ る。 当初 の 家 族 教 室 は 、 現 在 の あ り方 と異 な り家 族 病 因 論 の 立 場 を取 り、精 神 分 析 的 な 視 点 を 重 視 し、 疾 病 の 学 習 及 び 家 族 内 で 発 病 の 原 因 探 しを 行 い 、 さ ら に そ の 啓 蒙 活 動 を 行 っ て い た。1970年 代 後 半 以 降 、 家 族 教 室 の機 能 は 変 化 し続 け 、 地 域 ・精 神 保 健 福 祉 の 充 実 の た め の強 化 策 と して の 小 規 模 作 業 所 設 立 な どの 役 割 を担 っ た 。1980年 代 後 半 の 家 族 教 室 で は 、 心 理 教 育 的 ア プ ロー チ を 用 い た 形 態 が 主流 と な っ た 。 全 家 連 が 行 った 全 国 の 家 族 教 室 に 関 す る調 査 で は 、 保 健 所 は68.8%、 精 神 病 院 は34.1%、 精 神 保 健 福 祉 セ ン ター で は64。7%で 家 族 教 室 が 行 わ れ て い る。(保 健 所 は1994年 、病 院 とセ ン タ ー は 1996年 実 施)そ の な か で も心 理 教 育 を用 い た 家 族 教 室 は 、 保 健 所52.5%、 病 院55.4%、 精 神 保 健 福 祉 セ ン ター75%で あ っ た(11)。家 族 に 対 す る 支 援 プ ロ グ ラ ム の 必 要 性 が 高 ま りか ら、 心 理 教 育 が家 族 会 と い う枠 か ら、 公 的 機 関 へ と移 行 して い る の が 分 か る。 しか し、 再 発 防 止 を 心 理 教 育 の み に期 待 す る こ とは 危 険 で あ る。 家 族 が 再 発 の 可 能 性 を 高 め て しま う背 景 に は 、 深 刻 な 社 会 資 源 不 足 の 状 況 が 指 摘 され て い る こ とを 忘 れ て は な らな い(12)。家 族 は 、 当 事 者 を支 援 者 で あ る と同 時 に 、 支 援 を 必 要 とす るケ ア の 対 象 者 で あ る。 した が っ て 、 心 理 教 育 を 用 い 家 族 機 能 を 社 会 資 源 と して 活 用 しよ うとす る姿 勢 は 疑 問 で あ る。 3.全 国 精 神 障 害 者 家 族 会 連 合 会 の 変 遷 と家 族 会 の 役 割 1)全 国 障 害 者 家 族 会 連 合 会 とは 全 国 精 神 障 害 者 家 族 会 連 合 会(以 下 全 家 連)は 、 精 神 障 害 者 の 家 族 会 が 全 国 組 織 化 され た もの で あ る。 全 家 連 の 設 立 の 背 景 は 、1965(昭 和39)年 に ラ イ シ ャ ワー 駐 日大 使 殺 傷 事 件 が 発 生 し、 社 会 防 衛 を 目的 とす る 「精 神 衛 生 法 」 の 改 正 が 行 わ れ た こ とが あ げ られ る。 この 法 律 に反 対 す る 家 族 会 が 活 発 な運 動 を 展 開 し、 そ れ ま で 独 自で 活 動 して き た 家 族 会 を全 国 的 に 組 織 化 す る こ とが 必 要 とい う機 運 の 高 ま りか ら、1965(昭 和40)年 に 全 家 連 が 設 立 した の で あ る。1967(昭 和42) 年 に は財 団 法 人 と な り、 活 動 の範 囲 を 全 国 へ と広 げ て い っ た 。 全 家 連 の 加 盟 団 体 は 、 全 国 に1609団 体(病 院 家 族 会301団 体 、 地 域 家 族 会1308団 体)あ り、 約 13万 人 の 会 員 が い る。 家 族 会 の 重 要 な機 能 は 、 ① 家 族 同 士 の 親 睦 、 ② 支 え あ い とい う 自 己 回復 、 ③ ピア カ ウ ン セ リン グ機 能 、④ 家 族 で あ る 精 神 障 害 者 本 人 へ の対 応 や 病 気 を 学 ぶ 相 互 学 習 機 能 、 ⑤ 社 会 や 行 政 へ 働 き か け る啓 蒙 ・社 会 変 革 機 能 が あ る(13)。全 家 連 は 家 族 心 理 教 育 に 大 き な 役 割 を果 た して い る 。 この 全 家 連 の 活 動 の 一 つ の 、 学 習 機 能 と して の 家 族 教 室 が 存 在 し、 そ こ か ら心 理 教 育 は発 展 して い っ た とい え る。 2)家 族 会 の 設 立 と経 緯 一 法 制 度 と家 族 会 活 動 (1)全 家 連 の 設 立 以 前 家 族 会 の 始 ま りは 、 「病 院 家 族 会 」 に あ る と い わ れ て い る。 精 神 障 害 者 の退 院 後 の 受 け 入 れ 先 100 N工工一ElectrOnlcLlbrarySe-vlce
と な る家 族 が 、病 気 の 知 識 を得 る必 要性 が 重 要 視 され 、 家 族 教 育 を 目的 と した 活 動 が病 院 内 で 行 わ れ 始 め た。 退 院 後 の 精 神 障 害 者 へ の ケ ア は 、 地 域 生 活 を支 え る社 会 資源 が 乏 しい こ とか ら、 家 族 に の しか か る負 担 は 重 く、 家 族 は 孤独 で 孤 立 に 陥 りや す い 状 況 で あ っ た 。 地 域 で 過 ごす 精 神 障 害 者 の 家 族 の た め に 、 苦 しみ を わ か ち 合 う場 所 が 欲 しい とい う欲 求 が 高 ま り、 「地域 家 族 会 」 が 誕 生 す る。 (2)精 神 衛 生 法 の 改 正 頃:全 家 連 の 設 立 と体 系 化 改 正 精 神 衛 生 法 へ の 反 対 か ら、 そ れ ま で 点 在 して い た 家 族 会 を 全 国 組 織 と して 連 合 す る こ と に よ っ て 国 に 対 す る発 言 力 を 強 め 、 精 神 障 害 者 や 家 族 が 置 かれ た 状 況 を社 会 に訴 え 、社 会 福 祉 に反 映 させ る こ とが 目的 で あ っ た 。 (3)精 神 保 健 法 成 立 の 頃:社 会 資 源 を家 族 会 が 代 替 す る 時 代 精 神 保 健 福 祉 法 で は 、社 会 復 帰 施 設 の 法 定 化 が あ げ られ て い た が 、 努 力 義 務 が 多 く 、具 体 的 な 対 策 ・社 会 資 源 不 足 は 、 深 刻 な 状 況 で あ っ た 。 家 族 会 は そ の 追 い 詰 め られ た 状 況 に 対 して 、 自 ら 家 族 の 為 に 、 小 規 模 作 業 所 を設 立 す る と い う動 き が 活 発 に な っ て い く。 (4)精 神 保 健 福 祉 法 の 改 正:家 族 会 の 空 洞 化 作 業 所 の 設 立 ・運 営 に疲 れ 果 て た 家 族 会 は 、 家 族 会 本 来 の 活 動 ・機 能 が 停 滞 して い る とい う実 情 を 指 摘 され て い る 。 社 会 資 源 不 足 を 、家 族 会 が 担 い 役 割 を 果 た して きた こ と に よ っ て 、 家 族 会 が 本 来 持 つ べ き 家 族 同 士 の 親 睦 、 支 え あ い をす る余 裕 が 乏 し く、 機 能 が 低 下 して い る とい え る。 3)全 家 連 の 現 況 と今 後 の 課 題 全 家 連 は 本 来 の 活 動 だ け で な く 、 社 会 資 源 の 不 足 を補 う役 割 を担 っ て き た 。 家 族 会 は 、 家 族 と い う枠 組 み も 法 制 度 の 枠 組 み も超 え て 、機 能 を 「肥 大 化 」 して き た とい え る。 そ の 結 果 、 家 族 会 員 の 高 齢 化 も 伴 い 現 在 の 家 族 会 の 空 洞 化 ・停 滞 して い る 活 動 は 、 家 族 会 の機 能 の 限 界 を 示 して い る の で は な い だ ろ うか。 今 後 の 課 題 と して 、家 族 会 の 限 界 を示 す こ と ・範 囲 を 限 定 す る こ と が必 要 で あ る。 現 在 の 地 方 分 権 の 時 代 の 流 れ や 、 多 様 化 した ニ ー ズ に 、全 国 組 織 の 家 族 会 が 対 応 しき る の は 困 難 が 生 じ る。 地 方 の 家 族 会 の ニ ー ズ と、 中 央 の家 族 会 の ニ ー ズ は 異 な って 当 然 で あ ろ う。 そ こで 、 全 国 組 織 の 会 と して の 限 界 を 示 す こ とで 、 家 族 会 の 本 来 の 目的 で あ る家 族 同 士 の 親 睦 ・支 え あ い の 機 能 を重 視 す る こ とに も繋 が り得 る。 家 族 が 再 発 の危 険 性 を 高 め て しま う背 景 に は 、深 刻 な社 会 資 源 不 足 の 状 況 が 指 摘 され て い る。 今 後 、 医療 環 境 の 変 化 の 中 で 、 精 神 障 害 者 が 早 期 退 院 の促 進 や 、 長 期 入 院 者 の 退 院 が 進 め られ 、 ま す ま す 社 会 資 源 不 足 は 深 刻 化 す る で あ ろ う。 そ の よ うな 中 だ か ら こそ 、 家 族 会 が 法 制 度 の 補 完 的 役 割 を果 た す の で は な く、 家 族 が 互 い の ケ ア の 担 い 手 で は あ っ て も 、 家 族 は ケ ア の 対 象 者 な の で あ る。 【第3章 当 事 者 研 究 】 第2章 で 、 これ ま で の 家 族 支 援 の理 論 の 変 遷 を述 べ た 。 しか し、 あ る精 神 障 害 者 当事 者(精 神 101 N工工一ElectrOnlcLlbrarySe-vlce
NaqOyaCltyUnlverslty 障 害 者 自身 が 当事 者 と呼称 す る こ とが 多 く 、 以 下 精 神 障 害 者 を 「当 事 者 」 と記 述 す る)の 積 極 的 な 社 会 参 加 の 実 践 の1つ に 、 これ ま で の 当 事 者 ・家 族 支 援 とは 異 な り、 「当 事 者 研 究 」 とい う取 り組 み が な され て い る。 そ こで は 、 当事 者 の もつ 課 題 に つ い て 、 研 究 と して の 取 り組 み が な され て い るが 、 そ の 研 究 過 程 は どの よ うな もの か 考 え 、 そ の 過 程 を通 して 家 族 支 援 の 新 た な 方 向 性 を 考 え た い 。 な お 当事 者 研 究 に 関 して は 、 彼 らが 記 述 して い る表 現 を生 か し記 述 す る。 そ れ は 彼 ら 自身 に よ り語 られ た 言 葉 が 、 彼 らの 考 え を最 も 的 確 に 表 して い る か らで あ る。 1.当 事 者 研 究 の 内 容 当事 者 が 語 る 生 き に く さ は 、 い くつ か の 要 因 に 分 け られ る。 一 つ 目は 、 彼 らの もつ 障 害 特 有 の 症 状 で あ る。 幻 聴 ・妄 想 な どに 苦 しむ もの で 、 二 つ 目に は 、 対 人 関係 が 困 難 で 苦 しみ 、 三 つ 目は 、 日常 生 活 そ の も の が 困難 で あ り苦 しみ 、 四 つ 目に 、 労 働 ・役 割 を 持 つ こ とが 困 難 で あ り苦 しむ こ と、 な ど が研 究 で 挙 げ られ て い る。 以 下 に 当 事 者 研 究 で 、 取 り上 げ られ た 生 き に く さの 克 服 過 程 が 分 析 され て い る。 そ の研 究 例 を 挙 げ る。 研 究 例 ① は 、 「被 害 妄 想 と の 出 会 い と 自立 の 研 究 」 で あ る。 研 究 を通 し、 幻 聴 とい う症 状 に 依 存 し、 空 虚 さ と言 う心 の 隙 間 や 生 き る こ との 空 し さ と言 う現 実 を 埋 め尽 く し、 自身 を避 難 させ る 場 と して 、 幻 聴 が 役 割 を 果 た して い た こ とが 分 析 され た 。 ま た 、 駄 目な 自分 に しが み つ き 生 き て い た が 、 自身 で さ え 受 け 入 れ る こ と が で き な か っ た 自分 が 、 周 囲 に 「病 気 の ま ま の あ な た が い い 」 と受 け 入 れ られ る こ とで 安 心 で き 、 悩 む こ と を諦 め 、 失 う もの は 何 も な い と気 づ き 、 自立 し て 生 き る こ と に 向 か うよ うに な っ た と分 析 して い るq4)。 研 究 例 ② は 、 「感 情 の 爆 発 の 軌 跡 研 究 」 で あ る。 欝 積 した 感 情 を 爆 発 させ る 行 為 が 快 感 と な り、 そ の快 感 に 依 存 し、爆 発 直 前 に は 行 き 詰 ま り=息 づ ま り(呼 吸 困 難)を 感 じて い た と理 解 して い る。 研 究 過 程 で 、 感 情 爆 発 に至 る ま で の親 へ の 思 い と、 家 族 の 対 処 の 特 徴 とい う二 点 の原 理 を 振 り返 り過 程 を 明 らか に し、 当事 者 と家 族 との 相 互 作 用 で 起 き て い た 事 を 客 体 化 ・外 在 化 し、 爆 発 に 至 らな い で す む 対 処 を 処 方 箋 と称 して発 見 した と分 析 して い る(15)。 研 究 例 ③ は 、 「どん 底 の 状 態 」 とそ こか らの 「回 復 過 程 研 究 」 で あ る。 現 実 世 界 で の 絶 望 と 自 己 へ の嫌 悪 感 を 、 非 現 実 世 界 の 症 状 の 中 で や り過 ごそ う と して い た とわ か り、 研 究 で これ ま で の 長 い 状 況 ・感 情 を 語 り、 苦 し さ か ら救 っ て ほ しい ・周 囲 に 理 解 され た い 思 い を訴 え 、 ぎ りぎ りの 選 択 の 中 で す が っ た 対 話 が 通 じ始 め た こ とか ら、 どん底 か ら這 い 上 が る こ とが で き 、 サ バ イ バ ー (回復 者)と して 現 実 世 界 に 戻 る こ とが で きた と分 析 して い る(16)。 研 究 例 ④ は 、 こ の研 究 を 通 して 、 「居 場 所 ・自分 探 し」 を して い た 自分 と、 病 気 は 「『が ん ば り ず む 』 か ら 自分 探 しの 標 識 の よ うな役 割 」 を して い た こ とが わ か り、 苦 しい症 状 を な くそ う とせ ず 、 逆 に 症 状 を 自分 自身 の 居 場 所 と して 存 在 を認 め た 。 さ らに 、 病 気 に な っ て か ら頑 張 りをや め る こ と ・関 わ りを 持 つ 人 が 増 え た こ と ・家 族 の 求 心 力 が 戻 っ た こ と を肯 定 し、 生 き て い く た め に 無 理 を し な い 歯 止 め と して の 病 気 と意 味 付 け す る こ とに よ り、病 気 で あ る 自分 を 肯 定 的 に認 め る こ とに 至 っ た 、 と分 析 され て い る(1η。 102 N工工一ElectrOnlcLlbrarySe-vlce
研 究 例 ⑤ は 、 数 々 の 感 情 暴 走 や リス トカ ッ ト(手 首 を切 る行 為)な ど の症 状 は 、虚 しさか らの 逃 避 行 動 で あ る こ とが 理 解 で き た とす る研 究 で あ る。 そ して 、親 元 を 離 れ て 充 実 した 毎 日を過 し て も、 安 定 した 日常 を 壊 し暴 走 し逃 げ 回 る 、 自分 の 行 動 の特 徴 や 背 後 に あ る も の を 分 析 し、幼 少 か ら親 の 絶 対 的 評 価 を 勝 ち 取 っ て き た 結 果 に 依 存 す る こ とか ら、 強 迫 的 に 人 の 評 価 で 生 き よ うと す る 自 己 が 浮 か び 上 が り、 そ う した 自身 の感 情 を 自覚 す る こ とが 辛 い た め に 、様 々な行動 で 回避 して き た こ とが 分 析 され て い る ㈲ 。 研 究 例 ⑥ は 、 自 己虐 待 研 究 で 、 自 己虐 待 と破 壊 行 為 で 他 者 へ の コ ン トロー ル 欲 求 を 示 して い た こ とが 明 らか に な っ た。 自身 の ラ イ フ イ ベ ン トを振 り返 り、 自己虐 待の事 実 と家族背 景 の経過 と 課 題 を 明 確 に 客 体 化 ・外 在 化 し、 現 在 の 自 己虐 待 へ の 介 入 方 法 を 得 る ま で に 分 析 さ れ て い るq9)。 この 当 事 者 研 究 で 明 らか に され た 内 容 か ら 、 家 族 支 援 に 焦 点 を絞 り、 考 察 す る 。 2.当 事 者 研 究 目 的 に 挙 げ られ て い る 「家 族 との 関 係 」 当 事 者 の 語 る内 容 に 、家 族 との 関 係 は ど う描 か れ て い る の か 。 生 き に く さの 克 服 過 程 と、家族 と の 関 係 や 距 離 は ど うな の だ ろ うか 。 研 究 例 ② は 、 「爆 発 」 の メ カ ニ ズ ム を研 究 して 自分 と家 族 を 幸 せ に し よ う とい う 目的 の もの で あ る。 自身 の 不 満 ・不 安 の は け 口 を 、 自身 の 存 在 の 根 源 に な っ て い る親 に 向 け 、 そ の 親 が 自分 を 愛 し気 を遣 うが ゆ え に 安 心 して 「爆 発 」 し親 の 愛 情 を確 認 して い る。 そ の よ うな 自身 と親 の 関 係 性 を認 識 し 自 己嫌 悪 に 陥 りな が ら、 ま た 不 満 ・不 安 を 蓄 積 して い く とい う悪 循 環 を 呈 して い る。 別 の 自 己研 究 例 で も 、 自己 の 存 在 価 値 が 危 うい 状 況 に 陥 っ た 当 事 者 が 、 家 族 に 「な ぜ 生 ん だ 」 ' と、 無 条 件 の 愛 情 欲 求 を 家 族 に ぶ つ け て い る。 研 究 例 自身 に と っ て 、 完 壁 で 目指 す 存 在 で あ る 親 へ の 価 値 が 変 化 した とき 、家族 との境界 が曖 昧 な 自我領 域の 中で 、 自身 の存在 欲求 や 自己実現 へ の 価 値 を 、 「夢 を 壊 さ な い で 」 と親 に ぶ つ け て い る と も 考 え られ る。 ま た複数 の 自己研 究例か ら、 幼 児 期 の 様 々 な 症 状 は 、 親 を 始 め 家 族 へ の 愛 情 欲 求 の サ イ ン で あ り、 自 己 研 究 例 の 取 っ て き た 様 々 な 行 動 の 背 後 に は 、言 い よ うの な い 不 安 と無 条 件 に愛 情 を 得 た い ・承 認 され た い 欲 求 で あ っ た こ と も 具 体 的 に表 現 され て い る。 一 方 、 家 族 も 当事 者 へ の 接 し方 が わ か らず 、 当事 者 に気 を遣 い ハ レモ ノ に 触 る よ うに接 す る こ とや 、 当 事 者 に感 情 を伝 え られ な い こ とか ら物 質 的 に 充 足 させ よ う とす る な ど 、 「そ っ と して お く」 対 応 を 試 み るな ど、 間 接 的 に 関 わ ろ うと して い る 。 非 常 に 困 難 な 状 況 に ど う対 応 した ら よ い の か わ か らず 混 乱 した り何 とか や りす ご そ う と感 情 を 抑 え た り、逆 に感 情 を表 出 させ た り して い る 状 況 に あ る事 が 理 解 で き る。 しか しこ の 対 応 が 、 逆 に 当 事 者 に家 族 との 距 離 を感 じ させ 、 家 族 内 に お い て の 自 己 効 力 感 を 阻 害 して い る。 そ して 、愛 情 ・承 認 ・傍 に い て ほ しい ・対 話 が した い ・自身 の 決 定 を尊 重 して ほ し い な どの 欲 求 を募 らせ て い る。 同 時 に そ の欲 求 へ の 家 族 の 反 応 を確 認 した い とい う欲 求 ・不 安 を 募 らせ て い る。 さ ら に家 族 との 関係 性 の 中 で 自 己 存 在 を 認 め て ほ しい な ど の ス ピ リチ ュ ア ル ニ ー ドを 訴 え 対 話 を試 み 、感 情 が抑 え きれ ず 困 難 な 状 況 を ひ きお こ して い る と い う状 況 も 読 み 取 る こ と が で き る。 103 N工工一ElectrOnlcLlbrarySe-vlce
NaqOyaCltyUnlverslty こ の よ うな 関 係 性 の 中 の 生 き に く さ を 克 服 す る過 程 で 、 当事 者 が そ の家 族 と物 理 的 ・心 理 的 に 距 離 を お く場 合 も多 い。 しか しこ う した 当事 者 の 生 き に く さや そ の 克 服 過 程 で は 、1章 ・2章 で 述 べ て き た よ うに 、 家 族 も何 らか の 苦 悩 を共 に 背 負 っ て お り、 距 離 を取 れ ばす む 問 題 で は な く 、 当事 者 と共 に そ の 生 き に く さは 克服 され るべ き で あ る。 そ こで 、 こ こ で 述 べ られ て い る 当 事 者 研 究 か ら得 られ た結 果 を 、 家 族 支 援 に 生 か す こ と を 考 え以 下 に 述 べ る。 3.当 事 者 研 究 か ら 家族 支 援 に 生 か す 1)強 化(ス トレ ン グ ス)モ デ ル と エ ンパ ワ メ ン ト 当 事 者 研 究 で は 、 「語 る こ とで 強 く な る 」 と述 べ られ て い る よ うに 、 語 りに よ り当 事 者 が 強 く な る 姿 が 顕 わ で あ る。 当事 者 の 、 苦 悩 ・弱 さ ・葛 藤 とい うマ イ ナ ス 経 験 は 、 語 る こ とで ポ ジテ ィ ブ な経 験 に な り、 弱 さを 強 さに 変 え る こ とが 可 能 に な っ て い る。 自分 自身 の 病 気 ・人 に 聞 こ え な い 幻 聴 ・理 解 され な い妄 想 や 、 それ らに よ り苦 しみ ・家 族 内 で 起 き て い る混 乱 の 過 程 を 、 不 特 定 多 数 に 語 りな が ら、 分 析 も 文 責 も 自分 自身 で 行 う。 こ の 考 え 方 は 、 社 会 福 祉 の 援 助 技 術 の 一 っ で あ る 、 強 化(ス トレン グ ス)モ デ ル に 共 通 す る。 三 品 に よ る と 「病 理 や 欠 陥 に 焦 点 を 当 て る の で は な く、 ク ライエ ン トの 強 さや 健 康 な 面 に焦 点 を 当て る こ と を重 視 し、 ク ラ イ エ ン トの 生 活 目標 を 達 成 す る 事 を 第 一 とす る 、 ク ラ イ エ ン ト主 導 モ デ ル 」 ⑳ と 、 説 明 して い る。 精 神 の 病 気 や 障 害 が あ り、 苦 しん で い る状 況 を 嘆 き注 目す る の で は な く、 今 で き る こ と を見 出 し、 ど うす れ ば 今 の ま ま 生 き て い く こ とが 可 能 に な るか 、 とい う可 能 性 を 引 き 出 す 方 向 へ と視 点 の 転 換 を 図 る こ と に よ り、 当 事 者 は エ ンパ ワ メ ン トされ て い く と い え る の で は な い だ ろ うか 。 2)「 あ る が ま ま の そ の 人 を 受 け入 れ る 」 ス トレス コー ピ ング 当 事 者 の 研 究 の 中 で 、 「病 気 ・障 害 か ら引 き 起 こ され る症 状 が あ る ま ま の 自分 を受 け入 れ て も ら え 変 わ る こ と が で き た 」 「症 状 が あ る こ と で 家 族 と の 相 互 作 用 で 起 き た こ とを 客 体 化 で き た 」 「日常 生 活 上 、現 実 世 界 が 苦 し くな っ た 時 に 、 自分 自身 で 作 り上 げ る逃 げ 場 と して の 症 状 ・辛 さ か らの 逃 げ 場 で あ る症 状 を認 め る 」 な どが 起 き て い る こ とが わ か る。 こ こか ら考 え られ る こ とは 、 当 事 者 は 人 生 の 中 で 、 か な り長 く、 辛 い こ とが 起 き る と、 病 気 や そ こ か ら引 き 起 こ され る症 状 に逃 げ込 む とい う対 処(coping)を 身 に つ け 、 こ う した 障 害 特 有 の 症 状 に と らわ れ 、 い わ ゆ る 一 般 的 な ス ト レス 対 処(stresscoping)を 持 ち合 わ せ て い な い と言 え る。 ま た 、 障 害 特 有 の 症 状 の 歴 史 か ら、 「そ の 症 状 も あ っ て の そ の 人 ・そ の 病 気 か ら く る症 状 も そ の 人 の 心 の 一 部 」 と な っ て い る。 で あれ ば 、 障 害 特 有 の 症 状 を排 除 ・否 定 す る関 わ りは 、 そ の 人 自身 を排 除 ・否 定 す る こ と に も通 じ、 当 事 者 に とっ て は 苦 し く不 安 に な る の で は な い だ ろ うか 。 自身 が 苦 しい と き に 逃 げ 込 む 症 状 が な くな る と 、 単 に 楽 に な る の で は な く、 突 然 大 きな 不 安 に 襲 わ れ 買 い 物 衝 動 に駆 られ 、 飲 酒 に 逃 げ 込 む な ど 、不 安 衝 動 は様 々 な 反 応 を 引 き 起 こ す 。 こ う した 事 柄 か ら考 え て も、 精 神 障 害 特 有 の 症 状 を な くす の で は な く、 うま くつ き あ う対 処 を考 え る ほ う が 良 い 。 この 当事 者 研 究 か ら、 当 事 者 同 士 は 、 決 して 批 判 ・非 難 され な い とい う環 境 で 、 心 を 開 き 自信 を持 っ て い く絶 対 的 信 頼 の 過 程 に あ る こ とが 分 か る。 彼 らの 持 つ 関 係 性 は 、 ど こま で も ど の よ うな 状 況 で も 「自然 の そ の ま ま で 人 を 受 け 入 れ 、 孤 立 させ ず 、 評 価 しあ わ な い 関 係 性 の 社 104 N工工一ElectrOnlcLlbrarySe-vlce
会 」 で あ る。 「あ な た は そ の ま ま で 良 い 」 とい う強 烈 な メ ッセ ー ジ が あ る。 そ れ は 、 健 康 な 状 況 に 戻 ろ う と無 理 を せ ず に 、 今 あ る症 状 と と も に生 き て い くカ をつ けて い く とい う対 処 に 焦 点 を 当 て て い る。 幻 聴 な どの 症 状 に 対 して 、 「幻 聴 さん 」 と 人 称 化 し、 そ の 人 の 一 部 と して 認 め る こ と で 、 そ の 症 状 の あ る そ の 人 自身 を 丸 ご と認 め る こ と に 繋 げ て い る。 そ して 「症 状 も失 敗 も認 め受 け 入 れ る」 と い うこ の コー ピ ン グ は 、 障 害 特 有 の 症 状 を ユ ー モ ア で 笑 い飛 ば す カ さ え 持 た せ て し ま うの で あ る。 3)当 事 者 研 究 を 家 族 支 援 に 生 か す こ の 考 え 方 を家 族 支 援 に 生 か し考 え て み る。 当 事 者 研 究 で は 、苦 しい 中か ら語 るこ とで 当事者 は 強 め られ 、 現 実 に 向 き合 い 折 り合 い を つ け る対 処 が で き る と理 解 した 。 当事 者 研 究 で は 、 こ う した 対 処 を行 う当 事 者 の 姿 を 看 守 る こ とで 、家 族 自身 も強 め られ て い く こ とが わ か る。 そ れ は 、 当 事 者 が 何 か に躓 い て も家 族 が 「転 ば ぬ 先 の 杖 を つ く援 助 」 をす る こ の で は な く 、 「転 ぶ こ と も 当 事 者 の 権 利 」 と看 守 る姿 勢 で い る こ とか ら生 ま れ る強 さで あ る。 こ う した 事 を繰 り返 し経 験 す る こ とで 、 家 族 は 自分 と 当事 者 と の 関 わ りを 見 直 す き っ か け を得 て い る。 家 族 が 苦 しむ 当事 者 を 看 守 る こ と は 容 易 で は な い 。 そ れ は 自 己研 究 で 語 られ て い る よ うに 、 家 族 も 当事 者 と共 に 悩 み に 踏 み と ど ま る力 が 必 要 に な る。 「踏 み と ど ま る力 」 とは 、 「待 ち ・忍 耐 す る 力 」 を意 味 し、 「悩 み に 踏 み と ど ま る 力 」 で もあ る。 当 事 者 が 主 体 的 に社 会 活 動 を して い る団 体 で は 、家 族 会 が な く、 家 族 の か か わ りが な い もの も あ る。 ま た 家 族 を近 く に 呼 び 寄 せ る こ と もせ ず 、 あ え て 遠 方 で 離 れ た ま ま に 当事 者 へ の 支 援 が 行 わ れ る 団 体 も あ る。 当事 者 の 自立 過 程 にお い て 家 族 が傍 に い る と 当事 者 の 代 弁 を行 い 、 当 事 者 の 自立 が 阻 害 され る とい う考 え方 を これ らの 団 体 は も っ て い る。 しか し当 事 者 の 自立 の 過 程 に 、 家 族 が 不 要 な の で は な く 、 家 族 の こ と を考 え た 活 動 で あ る と考 え る。 当事 者 の 自立 過 程 に お い て 、 家 族 と物 理 的 な 距 離 をお く こ とで 、 同 時 に 双 方 の 関係 は心 理 的 距 離 も得 られ 、 そ の こ とに よ り互 い に 関 係 を客 体 化 し分 か ち合 う機 会 を 得 る こ とが で き る。 ま た 距 離 を お く こ とで 、 当事 者 の 自立 協 力 者 と して の 家 族 で は な く、 初 め て 「家 族 」 とい う当事 者 に な る こ とが 可 能 に な り、 辛 か っ た これ ま で の 「家 族 」 と い う当事 者 の歴 史 を ふ り返 る こ とや 、 当 事 者 の 様 々 な 感 情 を 吐 き 出 し、 当 事 者 に 遠 慮 な く、 不 安 も 思 い き りぶ つ け る こ と も可 能 に な る。 そ う した 当事 者 研 究 よ り作 られ る過 程 が あ る よ うに 家 族 と い う当事 者 も ま た 、 自 己 の 苦 悩 を語 る とい う過 程 を 経 て 強 め られ て い く(エ ン パ ワメ ン ト)こ とが 可 能 に な る。 そ の過 程 を 経 験 して積 み 上 げ る こ とに よ り 自信 の 回 復 に 繋 が る こ とが 、 当事 者 研 究 の 中 で も語 られ て お り、 これ も 当 事 者 と して の 家 族 に も家 族 支 援 と して 可 能 と な る 考 え 方 で は な い か と考 え る。 家 族 は 、 これ ま で の 経 過 か ら考 え て 、 支 援 を 受 け る 中 で 新 た な 対 処 能 力 を身 に つ け ・強 め られ る 必 要 もあ る 「当 事 者 」 で あ る。 当 事 者 と して の 家 族 は 、 批 判 ・非 難 ・評 価 され な い 、 孤 立 させ な い 、 自然 な そ の ま ま で 受 け 入 れ られ る 関係 性 の 中 で 、 「精 神 障 害 者 とい う家 族 を もっ た 当事 者 」 と して の 苦 悩 を 受 け 入 れ て も ら うこ とが 必 要 な の で は な い だ ろ うか 。 そ う した 安 心 ・絶 対 的 信 頼 感 の あ る 関係 性 を 持 つ こ とが で き る環 境 を 、 専 門 家 は 提 供 す る こ と が 必 要 で あ る。 105 N工工一ElectrOnlcLlbrarySe-vlce
NaqOyaCltyUnlverslty 【ま と め 一 当 事 者 研 究 か らみ た 家 族 支 援 の あ り方 一 】 精 神 障 害 者 の 家 族 が 、 強 い られ て き た 負 担 を 、 様 々 な 方 面 か ら検 証 した 。 歴 史 的 に は 治 療 協 力 者 と して 期 待 され 、 ま だ 当 事 者 の 人 生 と偏 見 の ス テ ィ グマ を 、 家 族 とい う小 単 位 で 支 え 、 支 援 を 受 け る機 会 は 乏 しい 現 状 が あ る。 家 族 は 、 病 因 とい う負 担 を 背 負 い 、 精 神 障 害 を 作 り出 す と して 治 療 対 象 と して経 過 し、 支 援 対 象 者 と して 位 置 付 け られ た の は 、 ご く最 近 で あ る。 家 族 会 は 、社 会 資 源 不 足 を補 完 す る こ とに 重 き を お い た た め 、 支 え あ い機 能 不 足 とな り、相 互 の 支 援 を 請 合 う こ とが 困 難 な 状 況 が 続 い て い る。 また 精 神 障 害 は 、 思 春 期 に 発 症 す る こ とが 多 い た め、 心 理 的 な 母 子 分 離 不 安 の 状 況 の ま ま 、 障 害 の た め に精 神 的 に も経 済 的 に も家 族 に 依 存 して い く こ と に な る。 当事 者 研 究 者 た ち の よ うに 、 あ え て 家 族 が 当事 者 と物 理 的 に 距 離 を取 り、 当 事 者 と して の 家 族 自 身 が 「どの よ うな 人 生 を 送 りた い の か 」 「どん な 目的 ・希 望 を も っ て 生 き て い くの か 」 な どを 、 真 実 の 自分 の 姿 と逃 げ 場 な く向 き 合 い 、 「これ ま で の 当事 者 と して もつ 弱 さ を繋 ぎ絆 にす る 」 と い う要 素 で 当事 者 と して の 家 族 の 語 りを 聴 き き り、 当 事 者 と して 強 ま る よ うに と こ と ん 支 援 され る実 践 が 行 わ れ て い る と い う発 想 を 、 家 族 支 援 に も 生 か す こ とが で き る の で は な い か と考 え る。 今 回 、 当事 者 研 究 を分 析 し家 族 支 援 に 生 か そ う と 考 え た 事 で 、 当 事 者 と家 族 が 「援 助 す る家 族 」 と 「援 助 を 受 け る 当 事 者 」 と して の 関 係 性 で は な く 、 「共 に 強 め あ う ・分 か ち 合 う と い う、 新 た な 関 係 性 」 が 家 族 の 中 で 再 構 築 され て い く過 程 を 理 解 す る に 至 っ た 。 さ らに 当事 者 研 究 者 同 様 、 語 る プ ロセ ス を 通 して 、 家 族 も語 る楽 し さ ・心 地 よ さ を感 じ、環 境 を 支 援 に 用 い る こ と に よ り、 そ の 心 地 よ さ を ス テ ップ に 力 を得 て 、 人 権 を再 復 古 し人 生 の 楽 し さ ・豊 か さ を 回 復 す る こ と も期 待 で き る と考 え る。 当事 者 の 「精 神 障 害 特 有 の 症 状 を な くそ う とせ ず に 、 障 害 と うま くつ き あ う姿 」 を 知 り、 「病 気 は 治 す も の で な く 、 生 か す もの 」 「妄 想 は な くす よ り伝 え る もの 」 と して 、 弱 さ を 逆 に 強 さ に 変 え て い く過 程 に 、 家 族 も 「生 か す 病 気 」 「伝 え られ る 妄 想 」 と して 受 け と り、 寄 り添 い 向 き合 うこ とが で き る な ら 、 新 た な 家 族 関係 と して の 共 生 が 可 能 に な る。 そ う した 自然 な あ る が ま ま を 受 け入 れ る 当事 者 の 姿 か ら、 家 族 自身 も治 療 協 力 者 と して が ん ば る の で は な く 、 その 過 程 を 共 に 歩 む 一 人 の 当事 者 と して の ス タ ンス を 自 己 の 中 で 確 立 す る こ とが で き うる。 そ うす る た め に は 、 あ え て 物 理 的 に 距 離 を 保 つ こ と も必 要 と な る。 一 人 の 当事 者 とい う 「個 」 と して の 受 けい れ られ た とい う経 験 は 、 家 族 とい う当 事 者 グ ル ー プ と して 、 互 い に そ れ ぞ れ の 感 じて い る弱 さ を 繋 ぎ合 い 認 め合 う こ とで 、 そ の 弱 さの 絆 を 強 さ に 変 え る こ と も可 能 に な り、 相 互 支 援 を 行 うこ と も 可能 で あ る。 援 助 者 が こ う した 環 境 を提 供 す る こ とが 家 族 支 援 に 繋 が る と考 え る。 今 後 も 当 事 者 で あ る家 族 が 強 め られ て い く過 程 を 生 か して 、 そ の 家 族 支 援 と具 体 化 す る こ と を 考 え て い る。 真 の 家 族 支 援 や エ ンパ ワ メ ン ト過 程 を 構 築 ・提 言 す る こ とが で き る よ うに 、 様 々 な 一 立 場 の 当事 者 の語 りを聴 き 、 関 わ りを 通 し、 実 践 的 に 考 え る こ とが 必 要 で あ る。 最 後 に 当 事 者 団 体 の 強 烈 な メ ッセ ー ジ を掲 載 す る。 こ こに 大 き な ケ ア リ ン グ の 要 素 が 含 ま れ て い る 。 「精 神 障 害 者 は 関 係 の 病 と言 われ 、 自分 との 付 き合 い が うま くい か な か っ た り、 周 囲 との 人 間 関 係 が 豊 か で な く な っ た り苦 労 して い る。 だ か ら 自分 と向 き合 うこ と ・人 との 繋 が り を大 切 106 N工 工一ElectrOnlcLlbrarySe-vlce
に 日 々 生 活 し て い る 。 こ れ は 全 て の 人 の テ ー マ で あ る こ と を 伝 え た い と 思 い 、 地 域 で の 活 動 に 積 極 的 に 参 画 し 、 得 た 人 と の 交 わ り の 豊 か さ や 自 分 と の 安 心 で き る つ き あ い 方 を 伝 え て い る 」(浦 河 べ て る の 家 「賛 助 会 員 募 集 案 内 」 よ り) 引 用 文 献 q)岡 田 泰 雄:「 日 本 精 神 科 医 療 史 」 ,医 学 書 院,2002,pl3-p11 (2)『 日本 思 想 体 系3「 律 令 」』 ,岩 波 書 店,1976,p39-p41,p226-p228,p467,p552,p692 〔3)橋本 明 他:「 戦 前 の 京 都 ・岩 倉 村 に お け る 一 保 養 所 の 宿 泊 者 の 動 向 に っ い て 」 『日 本 社 会 精 神 医 学 会 雑 誌 』 , Vol.8,No.1,1999,pl5-P23 (4)八木 剛 平 ・田 辺 英:「 日 本 精 神 病 治 療 史 」 ,金 原 出 版,2002,p57-pll3 (5)小林 靖 彦:「 日 本 精 神 医 学 の 歴 史 」 『精 神 医 学 体 系 』 第1巻A ,中 山 書 店,1979,pl25-p151 (6)岡田 泰 雄:「 呉 秀 三 著 作 集 ・第2巻 精 神 病 学 篇 」,思 文 閣 出 版,1982,p195-p226 (7)名古 屋 市 健 康 福 祉 局 障 害 福 祉 部 障 害 福 祉 課:「 名 古 屋 市 に お け る 精 神 保 健 福 祉 」 名 古 屋 市 ,2001,p10-pl3 (8)松本 雅 彦:『 精 神 病 理 学 と は 何 だ ろ う か 』 星 和 書 店 ,1996,pl97-p208 (9)ベイ ト ソ ン:『 精 神 の 生 態 学 』 ,新 思 索 社,2000,p288-p319 (1°)C.Mア ン ダ ー ソ ン:『 分 裂 病 と 家 族 』,金 剛 出 版,1990 m)全 家 連 保 健 福 祉 研 究 所:「 地 域 に お け る 家 族 支 援 プ ロ グ ラ ム 」 ,財 団 法 人 全 国 精 神 障 害 者 家 族 会 連 合 会, 1998,p5-p68 q2)南 山 浩 二:「 精 神 保 健 福 祉 シ ス テ ム の 変 容 と 精 神 障 害 者 研 究(1)」 『静 岡 大 学 人 文 学 部 人 文 論 文 集 』 , Vo1.50No.1,1999 (13)全家 連 保 健 福 祉 研 究 所:「 全 国 に お け る 精 神 障 害 者 家 族 会 実 態 と 展 望 」,財 団 法 人 全 国 精 神 障 害 者 家 族 会 連 合 会,1998,p3-p36 (14)清水 里 香:「 当 事 者 研 究 ① 被 害 妄 想 と の 出 会 い と 自 立 」 『精 神 看 護 』,Vol。4,No.6,2001,p31-p34 (15)河崎 寛:「 当 事 者 研 究 ② 「爆 発 の 研 究 」」 『精 神 看 護 』 ,Vol.5,No.1,2002,p45-p48 (L6)セシ ュ エ ー 著 村 上 仁 他 訳:「 分 裂 病 の 少 女 の 手 記 」 ,み す ず 書 房,1981 (17)松本 寛:「 当 事 者 研 究 ③ ど の よ うに 病 気 に 助 け られ て い る か 」 『精 神 看 護 』,Vo1.5,No.2,2002,p75-p78 (181水野 典 子:「 当 事 者 研 究 ④ 「虚 し さ 」 の 研 究 一 虚 し さ か ら の 逃 避 行 動 」 『精 神 看 護 』 ,V・1.ら,N・ 。4,2002, p49-p53 (19)吉井 浩 一:「 当 事 者 研 究 ⑤ 自 己 虐 待 の 現 実 。 そ の メ カ ニ ズ ム と 自 己 介 入 に つ い て 」 『精 神 看 護 』,Vol.5, No.5,2002,p66-p70 (2°〉三 品 桂 子:「 精 神 障 害 者 の ケ ー ス マ ネ ー ジ メ ン ト と ス ト レ ン グ ス 視 点 」 『ソ ー シ ャ ル ワ ー ク 研 究 』,相 川 書 房,Vol。27,No.1,2001.105,P32-P41 参 考 文 献 1)精 神 保 健 福 祉 研 究 会:『 わ が 国 の 精 神 保 健 福 祉 』.ぎ ょ うせ い,2001 2)橋 本 明:「Gee1の 精 神 医 療 史 一 伝 承 と 巡 礼 に つ い て 」 『精 神 医 学 誌 研 究 』,Vo1.5-2,2001.10,pl8-p28 3)精 神 保 健 福 祉 研 究 会:『 改 訂 精 神 保 健 福 祉 法 詳 解 』,中 央 法 規,2000 4)農 村 山 村 文 化 協 会 出 版 会:『 戦 後 日本 病 人 史 』,農 村 山 村 文 化 協 会 出 版 会 5)赤 須 智 明:「 精 神 障 害 を 持 っ 人 の 家 族 へ 援 助 」 『臨 床 心 理 学 』,VoLl,No.4,2001 6)田 中 英 樹:『 精 神 障 害 者 と家 族 の 為 の 生 活 ・医 療 ・福 祉 制 度 の 全 てQ&A』,萌 文 社,2000 7)後 藤 雅 博:『 家 族 教 室 の す す め 方 』,金 剛 出 版,1998 8)全 家 連 保 健 福 祉 研 究 所:『 家 族 ケ ア の 実 状 と 時 間 の 経 過 に よ る 変 化 』,財 団 法 人 全 国 精 神 障 害 者 家 族 会 連 107 N工工一ElectrOnicLibrarySe-vice
NaqOyaCityUniversity 合 会,1997 9)全 家 連 保 健 福 祉 研 究 所:『 精 神 障 害 者 ・家 族 の 生 活 と福 祉 ニ ー ズ`93一 全 国 家 族 調 査 編 』,財 団 法 人 全 国 精 神 障 害 者 家 族 会 連 合 会,1993 10)全 国 精 神 障 害 者 家 族 会 連 合 会:『 こ こ ろ の 病 い 一 私 た ち100人 の 体 験 』,全 国 精 神 障 害 者 家 族 会 連 合 会, 11)べ て る の 家 の 本 制 作 委 員 会:『 べ て る の 家 の 本 』,べ て る の 家,1997 12)浦 河 べ て る の 家:『 べ て る の 家 の 「非 」 援 助 論 』,医 学 書 院,2002 13)向 井 谷 生 良:「 生 き る 苦 労 を 取 り戻 す 」 『精 神 障 害 と リハ ビ リ テ ー シ ョ ン 』,VoL6.No.1,2002, 14)森 実 恵:『 心 を 乗 っ と ら れ て − あ る 精 神 障 害 者 の 手 記 』,潮 文 社,2002 15)『 社 会 福 祉 研 究 』 特 集 精 神 障 害 者 福 祉 の 課 題 と 展 望,2002、 16)『 響 き 合 う街 で 』 や ど か り 出 版,2002 17)渡 嘉 敷 暁:「 精 神 障 害 者 リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン の 社 会 的 背 景 」 『精 神 障 害 と リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン 』,V・1.4, NQ2,2000,P24-P29 18)谷 中 輝 雄:「 生 活 支 援 形 成 過 程 に つ い て 」 『精 神 障 害 と リハ ビ リ テ ー シ ョ ン 』,VoL4,No2,2000,pl33 -p136 19)田 中 英 樹:「 総 合 的 生 活 モ デ ル の 確 立 を め ざ し て 」 『精 神 障 害 と リ ハ ビ リテ ー シ ョ ン 』,Vol.4,No2, 2000,p137-pl42 (研 究 紀 要 編 集 委 員 会 は 、 編 集 発 行 規 程 第5条 に 基 づ き 、 本 原 稿 の 査 読 を 論 文 審 査 委 員 会 に 依 頼 し 、 本 原 稿 に 掲 載 可 と す る 判 定 を 受 理 す る 、2002年10月3日 付)。 108 へ N工工一ElectrOnicLibrarySe-vice