バングラデシュの新聞から自然災害を読む (アジ研
図書館を使い倒す)
著者
溝口 常俊
権利
Copyrights 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア
経済研究所 / Institute of Developing
Economies, Japan External Trade Organization
(IDE-JETRO) http://www.ide.go.jp
雑誌名
アジ研ワールド・トレンド
巻
208
ページ
43-43
発行年
2013-01
出版者
日本貿易振興機構アジア経済研究所
URL
http://hdl.handle.net/2344/00003801
文部省の海外科研で一九八四年に初めてイン ドに入り、南インドの定期市調査をタミール大 学との提携のもと開始しようとした矢先、イン ディラ・ガンジー首相の暗殺があり、インドで の調査ビザが下りないという事態が発生した 。 苦慮したあげく、ツーリストビザで入れるバン グラデシュに行こうということになった。 以後 、 ほ ぼ 毎 年 の よ う に バ ン グ ラ通 い が 始ま っ たが、一九八七年八月、今世紀最大の洪水と報 道された最悪の年の最悪の日、八月一九日に現 地に入った。首都ダッカからタンガイルの村に バスで向かったが、途中で国道が水没していて 運行不可となった。そこから村まで船をチャー ターし、やっとの思いで到着したものの、民家 は流され、住民は避難生活をしいられていた。 ダッカにもどり 、七 、八月の新聞 ︵ Bang la-desh Observer ︶に目を通したら 、八月の中 旬から月末まで連日一面のトップ記事に洪水 ニュースが載せられていた。中身を検討すると 死者数は洪水のアタックによるよりも、水が引 いた後の消化器系の病気によることがわかっ た。物価欄をみると八月中旬から米、塩、チリ ︵唐辛子︶ 、タマネギなどの食の必需品の値段が いずれも急騰していた。満足に食材を買うこと ができない貧しい人が、栄養不足の体で、あふ れ出た汚水にふれ、腹を壊し、犠牲になったの である。 翌年バングラデシュの知人から連絡が入っ た。今年も今世紀最大の洪水です、と。数年後 の九四年も大洪水であった。一〇〇年に一回の 大洪水が一〇年に一回の割合で発生している 。 地球温暖化の影響か、あるいは上流部のネパー ル・インドでの森林伐採が原因なのか、事態は バングラ一国で解決できるような問題ではない ことは確かだ。 二〇〇九年から文科省の科研﹁洪水常襲地に おける二一世紀型水環境社会の構築﹂プロジェ クトを走らせており 、二〇一一年からは名大 ・ 東大チームでの ﹁グリーン ・ ネットワーク ・ オブ ・ エクセレンス ︵GRENE ︶﹂ 事業で 、バングラ デシュと日本における自然災害記録の収集を担 当している。この二つの研究のため、かつて現 地で新聞分析したことを思い出し、この際、分 析対象時期をバングラデシュ建国 ︵一九七一︶ 以来現在に至るまでの全期間に拡げることを決 意した。決意したのはいいが、四〇年間分の新 聞を読むには現地に入って少なくとも一年は滞 在しなければならない。それを覚悟したが、京 大東南アジア研究所の知人に所蔵の有無を尋ね たら、アジア経済研究所にあるのではないかと 紹介された。 そし て 、 ア ジ 研 図 書 館 。 バ ングラデシ ュ 建 国 の翌 年から 当 新 聞 社 が 廃 社 ︵二 〇〇八 年 ︶ す る まで の 全 新 聞 が 見 事に 揃 っ て い た 。 二 〇 一 一 年 一 二月 か ら 私のア ジ 研 通 いが 始 ま っ た 。 一 〇 時 の 開館 に 間 に 合 うよ う に 名古屋を出 て 、 五 時半 の 閉館時ま で 、 マ イ ク ロ フ ィ ル ム で の 閲覧複写を し 続 け た 。 新幹線代もば か に なら な い の で 、 休 憩は昼食 時 の 三 〇 分 と 三時 の コ ーヒ ー ブ レイ ク の一 〇 分 と 決 め 、 コ ピ ー し 続 け た 。 初 回 に 受 付 の方から 賛 助 会 員 に入ると コ ピ ー 代 が 一 枚二 〇 円から 一 〇円 に割り 引 かれます と お 勧 め があ っ た の で 、 即入会 。 コ ピ ーする の は新聞 一 日約 一 〇 ペ ー ジ の内 、 ト ップ ペ ー ジ、 物 価 欄 の ある ペ ー ジと国 内 記 事 ペ ー ジ の 三枚に絞 っ た も の の 、 一 日頑張 っ て 八 ∼ 一 〇 カ 月分 が 精 一 杯 で あ っ た 。 とにかくコピーし続けるので、受付の方には 迷惑のかけっぱなしであった。紙の補充はまだ しも、トナーがどんどん減るのでその交換にお 手を煩わせた。こんな厄介者に対しても皆さん 親切で、複写した大量のコピーを丁寧にパック して大学まで送ってくださっている。 図書館にはバングラデシュの新聞だけではな く多数の AA諸国の新聞、 統計書が揃っている。 私は図書館員各位とマイクロリーダーを使い倒 しはしたが、豊富な所蔵資料に対してはそれら を使い倒すレベルにはとてもとても至っていな い。 ︵みぞぐち つねとし/名古屋大学大学院環境学研 究科科長︶