【ABSTRACT】
This paper describes the effects of interventions from parent support programs. In this study, we collected empirical data about a parent support program. We conducted interventions with two parents who had raised children with autism spectrum disorder (ASD). We applied two intervention methods. The first intervention was parent training (PT), which we conducted with the goal of modifying parenting skills. The second was Social StoryTM, which we conducted to evaluate the quality of parent interactions.
Each parent experienced both the intervention methods. The dependent variables were parent narratives and the stress scale (DDPSI). Parent narratives were then categorized, while the stress scale results were used to calculate total scores. The dependent variables were then compared between the two intervention methods. Most parental attention was focused on child behavior at the time of the PT program, while most parental attention was focused on the feelings and consciousness of the children at the time of the Social StoryTM program. The magnitude of the stress scale decreased when the PT
program was applied. However, a comparison of intervention methods revealed differently decreasing stress tendencies. With the Social StoryTM program, the level of parent attention may have been
influenced by the focus on the feelings and consciousness of the children. However, in this study, the mental health of the parents, individual characteristics, and behavioral tendencies has a strong influence on the results. So, it’s necessary to continue to accumulate cases.
【KEY WORDS】
自閉スペクトラム症 親支援 ペアレントトレーニング ソーシャルストーリーTM
ストレス autism spectrum disorder, parent support program, parent training, Social StoryTM, stress 人間関係学研究 第 巻 第 号
The Japanese Journal of Human Relations, Vol. ‐ ‐ 事 例
自閉スペクトラム症児の親に対する支援の効果
―ペアレントトレーニングとソーシャルストーリー
TMの比較―
遊 馬
結
*金 谷 裕 香
*大 石 幸 二
*The effects of intervention methods for parents of children with autism
spectrum disorder : Comparing parent training with Social Story
TMYUI ASUMA
*YUKA KANATANI
*KOUJI OISHI
*Ⅰ.目的
自閉スペクトラム症のある子ども (以下、ASD 児) の親に対する支援技法の つにペアレントトレーニン グ(以下、PT)がある。PT は子どもの行動特徴を理 解し、応用行動分析 (applied behavior analysis : ABA) や認知行動療法(cognitive behavior therapy : CBT) などの行動理論に基づく諸技法を用いて子どもの適応 行動を増やし、不適応行動を減らすための対応を親に 指導するアプローチである(水内・阿部・小暮、 )。 そして PT は、①親の参加動機が高く、②ある程度の 育児知識や養育技能を有し、③精神的健康度が高い場 合に、ストレス低減と子どもの行動変容についての高 い効果が期待できることが確認されている(原口・上 野・丹治・野呂、 ;前田・山本、 )。 一方、PT に比べ、親を対象とする実証研究論文こ そ少ないが(PT: 件、SS: 件;CiNii Articles に より検索)、ASD 児の社会的な状況理解を促進するた めの介入技法の つとしてソーシャルストーリーTM (以下、SS)がある。ASD 児にとってわかりやすい 方法(説明文;Thiemann&Goldstein, )を用い、 特定の状況で必要な社会情報の共有が目指されている (Gray&Garand, ;岡田・大竹・柳原、 )。SS が ASD 児にとって理解困難な部分を説明するものだ とすれば、それを目にした親は、ASD 児が何を理解 し難く、どのような説明をすれば伝わるのかを SS の 内容から理解できるはずである。そのため、親と ASD 児の間でも SS は有効に働く可能性がある。国際学会 誌に発表された 篇の実証研究論文に関する岡田ら ( )のレビューによると、SS の効果が示される のは、①高機能の ASD 児を対象とし、②コミュニケ ーションや対人的行動の変容を目標とする場合であ る。ま た、Thiemann&Goldstein( )に よ る と、 ③高い言語能力(言語表出と文章読解の技能)と視知 覚能力(視覚的手がかりに注目しそれを弁別・識別す る技能)を有することも介入が成功する前提となる。 SS はわずか ∼ 行で示される社会状況を明示した 物語(Gray&Garand, )であることから、応用の しやすさという利点があり、カウンセリングなどの場 面で容易に取り入れることが可能である。しかし、わ が国では親を対象とする実証研究論文がほとんど存在 しない(具体的には、福田・井上、 の 件しか存 在しない)ため、PT と SS の効果に関する直接的な 比較ができない。 PT は、親が ASD 児の行動上の問題(以下、行動問 題)を改善しようとするものであり、SS は、親が ASD 児の社会的な状況理解を促進しようとするものであ る。そのねらいにはそもそも差異が存在する。よって、 両介入技法にはそれぞれ親に対する支援として固有の 価値があると考えられる。PT では ASD 児の行動生起 のメカニズムの理解に繋がるであろう。一方、SS で は ASD 児の社会的な状況における振る舞いへの共感 的態度の獲得に繋がるであろう。しかし、実際に両介 入技法は ASD 児の親にとってどのように作用するの だろうか。この点は、いまのところ不明であり、その 解明のためには実施過程の分析が求められる。 効果評価についてまとめている水内ら( )や岡 田ら( )では、①親の育児知識(KBPAC など) や、②親の養育技能(行動観察など)、③親のストレ ス(GHQ や QRS[Questionnaire on Resources and Stress : Holroyd, ]など)、④ ASD 児の行動変容 (問題改善など)が測定されている。これらは何れも 典型的かつ明確な指標であるが、親が PT ないし SS の実施過程でどのように子どもの行動を理解したか、 ないしは子どもの状況を共有・共感したかについては 十分明らかにできていない。この点を明らかにするこ とで、① PT と SS の効果と限界が何によってもたら されるのか、②どのような親に PT ないし SS を実施 するとよいか、③どのような内容(養育上の課題)に 対して PT ないし SS を実施するとよいか、について 示唆を得ることができる。 とくに PT については、プログラムの途中でのドロ ップアウトが問題視されている(米倉・堤・金平・岡 崎、 )。親の負担を考慮することは、養育への関 心が低い、あるいは ASD のあるわが子に拒否的であ る親に対する支援を検討する際に重要であろう。プロ グラム短縮化の努力(杉原・米山、 、 )とと もに、PT や SS が親に及ぼす作用を検討することに より、このような親の参加動機を高めることが可能に なる。その知見は、親に対する支援を地域で広く展開・ 普及しようとする場合に活用することができる。地域
での展開・普及の典型的なモデルとして野津山・堤・ 嶋崎・加藤・奥本・柿原・澁谷( )が実施した汎 用性を目指したプログラムがある。“典型的”とする 理由は野津山ら( )が、①市民センターでの実施、 ② 回 時間(うち講義は 分)×全 回、③精選さ れた内容(標的行動の選定/効果的なほめ方/行動の 機能分析)、④簡便な指標(KBPAC[Knowledge of Behavioral Principles as Applied to Children:志賀、 ]と GHQ[The General Health Questionnaire] 精神健康調査票、子どもの変容の実感)のようにコン パクトだからである。このようにコンパクトなモデル・ プログラムを、PT と SS のそれぞれの利点を生かし ながら作成することができれば、ドロップ・アウトを 防ぎつつ、多様なタイプの親に対して、必要な支援を 広く行き渡らせることができるかもしれない。そして、 そのような展開・普及が達成されれば、その予防効果 は絶大なものであると考えられる。 そこで本研究の目的は、PT と SS の実施過程で、 ① ASD 児の親の子どもの理解や行動問題への対応に どのような違いが見られるかを、親の「語り」から捉 えること、また、②そのような違いが親のストレスに どのような差を生むかを、ストレス尺度の得点から検 討することである。 Ⅱ.方法 .参加者 ( )選定基準:第 著者が不定期に面接を行って いた母親(以下、「親」と記載)に声を掛け、参加者 を募集した。具体的には、①子どもが自閉スペクトラ ム症ないしその疑いを医師から指摘されていること、 ②現在自分の子育てに悩んでいること、③費用は無償 であること、④研究の必要性から質問紙調査や宿題な どの協力を求める場合があることを知らせ、研究参加 の希望が表明された場合に、本研究への参加に関する 仮登録をした。 X 年 月に第 著者が改めて事前 面接を行い、①研究の目的、②研究の方法、③成果の 予測、④中断・辞退の自由などを説明し、正式登録を 済ませた。また、主訴を聴取した。ただし、正式登録 後であっても日本版 GHQ 精神健康調査票・ 項目短 縮 版(GHQ :中 川・大 坊、 )の 得 点 が 点 を 超えた場合は登録を解除することとした。GHQ は 神経症者の病状把握や評価、発見に有効な質問紙形式 のスクリーニング・テストである。GHQ では、総 得点が 点を超えると、心身の健康リスク(身体不調・ 神経症傾向や抑うつなど)が予測される。よって、参 加者の選定条件を総得点が 点以下の者とし、総得点 が 点以上の場合は、参加登録を解除した。 本選定基準に基づいて、介入の希望者 名を参加者 とした。何れの親に対しても、本研究開始以前に組織 立った介入は行われていなかった。 ( )親:A、B という 名の親を参加者とした。 A と B はともに 歳台であった。A は子どもが社会的 に適切に振る舞えず、攻撃的になること(たとえば、 ①挨拶の時に相手と目を合わすことがない、②話者に 注目して話を聞くことができない、③友だちが自分の 主張に耳を貸さないとカッとなって手が出るなど)を 問題視していた。一方、B は子どもが結果を予測せず 衝動的に行動してしまうこと(①クラスメートにつら れて友だちに悪口を言ってしまう、②クラスメートの 挑発に乗ってお尻を見せてしまう、③[後になって本 人の言い分を聞くと了解できるものの]自分勝手な解 釈をして誤解を受けるような言動をするなど)を問題 視していた。そして、これらの主訴を後述する PT や SS の実施手続きを作成する際に考慮した。 なお、SS 適用の効果は不明だったが、PT 適用の効 果はある程度期待できるものと考えられた。それは、 先行研究も踏まえ①親の参加動機の高さ、②育児知識 や養育技能の保有、③精神的健康度の高さが確保され ると認識したためである。 ①親の参加動機の高さについては、第 著者による 本研究への参加の呼び掛けの際に、明確な主訴・強い 参加意思・より良い育児への志向が語られたことから そのように捉えた。 また、②育児知識や養育技能の保有については、行 動理論に基づく親の子どもへの関わり技能についての 知識を測ることができる KBPAC の得点(満点は 点) から判断した。その結果、A が 点、B が 点であっ た。志賀( )が報告した治療プログラム下の自閉 症・精神遅滞児の親の得点(平均値 .点)と比べて、 両者は平均点前後に分布していた。ただし、B は、行
動理論に基づく子どもへの関わり技能についての知識 を、相対的に多く有していたと言える。このことから、 後述する PT への応答性については A と B で差(A <B)が生じる可能性も推測された。それは PT が多 くの場合、ABA や CBT の枠組みに準拠して実施され るためである。 さらに、③精神的健康度の高さについては、GHQ の得点(満点は 点)を用いて判定した。A が 点 (相対的に点数が高かったのは「不安と不眠」)、B が 点(相対的に点数が高かったのは「身体的症状」) で、その得点は極めて低く、精神的健康度は高く、情 緒的に安定しており共に神経症傾向などのリスク要因 は見られなかった。 ( )子ども:A の子どもは男児 a(小学校 年生)、 B の子どもは女児 b(小学校 年生)であった。a は 医療機関から「広汎性発達障害(PDD)」の診断を受 けていた。児童向け知能検査である WISC‐Ⅳ( X‐ 年 月)の全検査 IQ(FSIQ)は 、言語理解指標 (VCI)は 、知覚推理 指 標(PRI)は 、ワ ー キ ングメモリー指標(WMI)は 、処理速度指標(PSI) は であった。IQ(知能指数)は生活年齢と精神年 齢の比を表したものであり、平均値は である。VCI と PRI の値が高いことから、言葉を用いて理解・表 現する能力や、視覚情報に基づいて推理・判断する能 力を有していると推定された。これは、Thiemann& Goldstein( )が指摘している SS が成功するため の前提条件を満たしていた。しかし VCI と WMI の値 の差から、聞き逃しや早合点をしやすく、その結果誤 解が起こりやすいと推察された。さらに PRI と PSI の値の差から、思い通りに物事が運ばないときはフラ ストレーションが溜まりやすく、行動が激しくなると 予測された。実際、a は学校や放課後児童クラブなど で、友だちから挑発されるなどして攻撃的なふるまい を示すことが少なくなかった。 b は医療機関から「自閉スペクトラム症(ASD)」 および「注意欠如・多動症(AD/HD)の疑いあり」 の診断を受けていた。WISC‐Ⅳ知能検査( X‐ 年 月)の FSIQ は 、VCI は 、PRI は 、WMI は 、 PSI は であった。PRI の値の低さから、視覚に基づ いた推理・判断に課題(偏り)があると考えられた。 こ れ は、Thiemann&Goldstein( )が 指 摘 し て い る SS が成功するための前提条件の一部(視覚的手が かりを弁別・識別できる高い能力を有すること)を、 十分に満たしてはいないものと考えられた。しかし WMI の値の高さから、過去の経験を想起してその状 況を言語的に了解し具体的な作業をする能力は優れて いると推察された。言葉を用いて理解・表現する能力 や視覚情報に基づいて推理・判断する能力それ自体に は問題がないと考えられた。実際、b は学校での小集 団の活動(班での討議や清掃、当番など)で、自らの 経験に基づいて独特な解釈を行ったり、後先を考えず に思いつきのように語り、振る舞うことで他児との間 に違和感が生じる場面が多かった。 .倫理審査受審・承認 本研究の実施に先立ち、参加者に対して、①研究の 目的、②研究の方法、③予想される利益やリスク、④ 参加・中断・辞退の自由、⑤結果の公表、⑥個人情報 の保護などについて第 著者が説明を行い、書面にて 同意を得た。Y 大学心理学研究倫理委員会の審査を受 け研究計画についての承認を得た上で実施された(承 認番号: ‐ および ‐ )。 .期間と場面 X 年 ∼ 月に親に介入(PT と SS の両方)を 行った。各親への介入の実施回数は、A が 回(SS: 回+PT: 回)、B が 回 (PT: 回+SS: 回) であった。A と B の介入は順序効果を相殺した。場 面は Y 大学構内の個人情報が保護される一室であっ た。A と B への介入に際しては原則として第 著者 と第 著者の 名が同席し、対面着座にて介入(面接) を行った。なお 回あたりの面接実施時間の目安は 分(範囲: ∼ 分)であった。この時間は、親から 提示された質問の個数やその回で扱う標的行動に係る 協議により変動した。面接実施時間中になされた親の 「語り」を分析対象とした。 .実施手続き 名の親が PT と SS の両方の介入を経験した。 ( )PT:PT では、行動問題について機能的行動 アセスメントに基づく効果的な対応のスキル習得が目 標とされた。①アセスメント、②標的行動の選定と機 能的行動アセスメントの講義、③行動問題のふりかえ
り、④行動の分類に関する講義と宿題、⑤効果的なほ め方の講義と全体のまとめという内容を含んだ。ロー ルプレイは行わなかった。なお、PT の作成にあたっ ては Whitham( )を参照し、親の主訴に応じて 作成した。 ( )SS:SS では、ASD の特徴を有する子どもに とって分かりやすいルールの提示と、その効果的な伝 達のスキルの促進が目標とされた。①アセスメント、 ②標的行動の選定、③ SS の導入(第 著者が作った SS を親と確認・修正し、家庭で親が子どもに SS を読 み聞かせる)とふりかえり、④全体のまとめという内 容を含んだ。なお、SS の作成にあたっては第 著者 が事前に専門講習を受講し、SS の日本紹介者で、SS に関するわが国の第一人者である専門家の校閲を直接 受ける形で、 つのシナリオを完成させた。このシナ リオには親の主訴を盛り込むようにし、必要に応じて Gray( )も参照した。また、その遂行にあたっ ては、適宜スーパーバイズを受けた。 .研究デザイン 本研究の仮説は、介入技法として PT と SS はそれ ぞれ効果的であるものの、効果の現れ方が異なるとい うものであった。そのため、介入を希望した A と B に対する PT と SS の順序効果を相殺した上で、子ど もの理解や行動問題への対応(何に焦点化した「語り」 が生起するか)を質的に整理し、ストレス低減を量的 に比較した。 なおストレスについては、介入に先立ち事前に初期 値を測定した。そして、この初期値と比べて、PT と SS の何れでストレスが低減するか、またその変化量 の大きさはどうかを検証した。 .従属変数 PT および SS 下の①子どもの理解や行動問題への 対応を質的に整理し、②ストレス低減を量的に検討す るために、①については直近の子どもの様子(行動問 題)に関する「語り」(逐語記録)を整理して、親が 何に焦点化していたかそのカテゴリーを抽出した。カ テゴリーの抽出にあたっては、( )逐語記録の中から 主訴として語られた行動問題に関する部分に着目し、 ( )その行動問題に対して親がどのように対応(し ようと)したかについて直接言及している箇所をサン プリングした。また、②については発達障害児・者を もつ親のストレッサー尺度(Developmental Disorder Parenting Stressor Inventory : DDPSI;山根、 ) を用いた質問紙調査を行った。DDPSI は、発達障害 の子どもをもつ親が、子どもの年齢にかかわらず普遍 的に経験するストレッサーを測定するために作成され たものである。 .分析方法 ( )親の語り:親が感じる子どもの問題について、 自由な語りを得るようにした。ただし、親の語りを得 る際は、発言を促すためのおおまかなガイド(本文末 部の Appendix を参照)を定めていた。親が語る行動 問題について「事実のみ(Event : E)」、「行動のメカ ニ ズ ム(Mechanism : M)」、「子 ど も の 気 持 ち・特 徴 (Character : C)」、「行動のメカニズムをもとに自ら が 考 え て 行 っ た 対 応 の 振 り 返 り(Reflection of Behavior : RB)」、「子どもの気持ち・特徴をもとに自 ら が 考 え て 行 っ た 対 応 の 振 り 返 り(Reflection of Emotion : RE)」のように操作的に定義し、これらの カテゴリーに従って分類を行った。RB と RE は、親 が自分自身の対応を振り返るものであるため、養育ス キル(行動問題への効果的な対応のスキル)の長期的 な維持と新たな行動問題解決のための「柔軟性」(野 口・大橋・大石、 )に対して肯定的な影響を与え ると考えた。よって、RB や RE に分類されるような 語りに変化が生じるものと予想した。 ( )DDPSI:「理解・対応の困難( 項目)」、「将 来・自立への不安( 項目)」、「周囲の理解のなさ( 項目)」、「障害認識の 藤( 項目)」という 因子か ら構成される計 項目の評定尺度である。山根( ) に従い、各項目の出来事をどのくらいの頻度で経験し たかを表す経験頻度( ∼ の 件法)と、その出来 事に対する嫌悪性( ∼ の 件法)の 側面の積で 因子の合計点を算出し、条件間で比較した。DDPIS は、その値が小さければ小さいほどストレスが低いと いうことを表している。 .信頼性の検討 親の語りのカテゴリー化は第 著者が行い、第 著 者との間で合議による判別を行った後、質的研究法(M -GTA や TEM など)を専門とする本研究と関わりの
Fig. 親の「語り」に見られたカテゴリー Fig. ストレッサー尺度(DDPSI)の合計得点 ない研究者のスーパーバイズを受ける形で妥当性を高 めるようにした。一方、第 著者と第 著者の間で DDPSI による合計点に関する一致率を算出した結果、 一致率は %であった。 Ⅲ.結果 .親の「語り」のカテゴリー分類 Fig.に親の「語り」に見られたカテゴリーの生起 率を示した。行動問題について「事実のみ(Event : E)」 に言及しているのは PT による介入中の典型例であっ た(図中の薄灰矢印表示)。一方、「子どもの気持ち・ 特徴をもとに自らが考えて行った対応の振り 返 り (Reflection of Emotion : RE);対応‐児童と表示」に 言及しているのは SS による介入中の顕著な例であっ た。「子どもの気持ち・特徴(Character : C)」に言及 しているのは、PT と SS とで差がなかった。 PT で典型的であった「事実のみ」の具体例として は、「きょうだいと張り合って、相手のことを押す」「ピ アノの先生の一言がきっかけで練習しなくなる」「ク ラスメイトを卓球のラケットでぶつ」などであった。 一方、SS で顕著であった「対応‐児童」の具体例とし ては、「楽しすぎて(興奮してしまうと)周りの声が 入らなくなる」「準備すべきものが複数あると(うま く整理できず)忘れ物をしてしまう」「頭では分かっ ていても(カッとなると)実行できない」「学校で(ク ラスメイトから受けようとして)友だちに面白い名前 で呼びかける(いわゆる「いじる」という行為に該当)」 などであった。 前者の「事実のみ」では、行動の善し悪し(行動が もたらす結果:後続事象)について考えさせ、より適 切な対応(代替行動)の吟味と練習(行動リハーサル) が求められる。後者の「対応‐児童」では、そのよう に行動した子どもの事実の理解(どのように教示やフ ィードバックを与えると、どのような結果がもたらさ れるかということについての予測)と行動の意図を実 現することができるような他のより適切な対応の吟味 と練習が求められる。 .DDPSI によるストレスの評価 Fig.に DDPSI の合計点を示した。一番左の「参考 値」は、山根( )がこの「発達障害児・者をもつ 親のストレッサー尺度」の信頼性と妥当性を検討した 際の神経発達症群の親 名が示した平均値である。 介入を行う前の DDPSI の合計点を「初期値」として 表し、この初期値とそれぞれの介入実施後の DDPSI の合計点を比較した。順序効果を相殺した上で、PT 後の合計点と SS 後の合計点を図示した。 まず、本研究の参加者は山根( )の対象者と比 べ て 初 期 値 の 段 階 で 合 計 得 点 が 低 く な っ て い た ( .%)。特に「将来・自立への不安」と「周囲の 理解のなさ」の得点が相対的に低くなっていた。その 一方で、「障害認識の 藤」の得点は相対的に高くな っていた。 参加者の初期値と比較すると、PT 後は「将来・自 立への不安( .%)」と「理解・対応の困難( .%)」 において得点が半減していた。また、SS 後は「周囲 の理解のなさ( .%)」と「理解・対応の困難( .%)」 において得点が減少した一方、「将来・自立への不安 ( .%)」と「障害認識の 藤( .%)」におい
て得点が上昇した。それでも、SS 後の合計点が参考 値を上回るということはなかった。 このことから DDPSI により測定される発達障害児・ 者をもつ親のストレッサーは、介入する技法により異 なる変化を示したということができる。 Ⅳ.考察 .介入が子どもの理解や行動問題への対応に及ぼし た影響 親の「語り」の分析から、PT では行動問題の事実 に親の注意を引きつけたという側面がある。これは、 場合によると目の前で起きている出来事のみに、親の 関心や注意を引きつけてしまうことにもなりかねな い。それは結果として、日々出くわす出来事や事態に 「柔軟」(野口・大橋・大石、 )に対応すること を阻む結果にも繋がるであろう。一方、SS では子ど もの気持ち・特徴の理解をふまえて自らの対応を振り 返ることに親の注意を引きつけたという側面がある。 SS が「高機能の ASD 児に対して社会的状況の的確な 理解を助ける」と い う Gray&Garand( )の 見 解 に照らして、このことには一定の意義がある。しかし 同時に、場合によっては目の前の行動事実から親の関 心や注意が離れてしまうことに繋がる虞がある。その 場合にもやはり、日々出くわす出来事や事態に「柔軟」 に対応することは難しくなるかもしれない。また、SS では自らの対応が ASD のあるわが子との情報の共有・ 共感を促すことに結びついたか否かということが内省 されるため、感受性の鋭い親が SS で習得した理解や 支援の方法をふまえて、わが子と関わった際に一向に 行動問題が改善しない場合にはストレスがかえって高 まるという危険性も考えられる。この点には十分に気 をつける必要があるであろう。 .介入がストレス低減に与えた影響 本研究では介入の順序効果を相殺した上で、DDPSI の初期値と PT 後および SS 後の合計点を比較した。 また、参考値として山根( )の平均値との比較も 試みた。初期値を含めて本研究の参加者は低い合計点 を示した。これは参加者の選定を慎重に行い、GHQ の得点が 点未満の精神的健康度が高い事例に参加 者を限定したことが影響していたと考えられる。つま り山根( )の調査対象者 名の中には、GHQ の得点が 点を超える事例が含まれていたことが予想 される。この点は、本研究で実施した介入技法の普及 や拡張を考えた場合の論点の つになるだろう。 一方、 PT 後の合計点と SS 後の合計点の比較では、 PT においてストレスを低減させるようなより一層の 効果があると考えられた。これは、SS が親の内省を 強く喚起することが要因であるかもしれない。ただ因 子ごとにみると、一概に PT が SS を上回る効果を示 すとは言い難い側面も見られた。「将来・自立への不 安」の得点は、PT 後に下降したが、SS 後に上昇した。 一方、「周囲の理解のなさ」の得点は、PT 後は変化 がなかったが、SS 後に下降した。なお、「障害認識の 藤」の得点は、両条件でもともと高く、「理解・対 応の困難」については、何れの条件でも低減していた。 よって詳しく見てみると、PT は「将来・自立への不 安」に係るストレスを低減させ、SS は「周囲の理解の なさ」に係るストレスを低減させる効果があると言え るだろう。もしかすると PT の効果は、子どもの行動 問題への対処可能性を高める効果があり、SS の効果 は、親自身の自他との関係性に対する知覚を高めると いう効果があるのかもしれない。とくに SS では、① 社会的状況に関連する具体的情報、②その状況で他者 が示し得る反応、③それに対して発することができる 言明ないし望ましい社会的な反応が、 ∼ 行ほどの 端的な物語として提示される(Thiemann&Goldstein, )。その手法には、① ASD 児に視覚的な手がかり となる具体的情報を提示することと、②社会的状況で 他者が示し得る反応をはっきりと記述することが盛り 込まれるために、社会的状況における自他との関係性 に対する知覚を高めるのかもしれない。ただし本研究 では子どもの行動変化に関するデータを収集していな いため、その実証的な分析は今後の研究に委ねなけれ ばならない。 .親に対する支援の実施に関する示唆 本研究により、① PT と SS の効果と限界が何によ ってもたらされるのかについては、介入実施者が提示 した刺激ばかりでなく、親が何に注意を向け、どのよ うに弁別したか、ということが つの要因になると考 えられた。そして、これは親の主訴やプログラムへの
参加動機が何に置かれているかということが関連して いると考えられた。また、②どのような親に PT ない し SS を実施するとよいかについては、先行研究同様、 親の精神的健康度や情緒的安定性に留意し、これを考 慮することには一定の意義があると考えられた。さら に、③どのような内容(養育上の課題)に対して PT ないし SS を実施するとよいかについては、子どもの 障害を含む特性理解や本人との情報共有を優先するの か、それとも子どもの行動問題を改善するための対応 するスキルの獲得を優先するのかということが、両者 を区分する基準となることが示唆された。 しかし本研究では、①登録すべき親について、GHQ で 点以上の事例も対象とすることができる余地が あること、② SS を適用できる子どもの VCI と PRI が 共に高い(何れも WISC‐Ⅳによる)事例を対象とし た場合に、得られる結果が変動する可能性があること、 ③ 本 研 究 で は 家 庭 で の 取 り 組 み 状 況 の 整 合 性 (integrity)の確認を行っていないこと、④参加者数 が合計 名と少ないために、個々の親の特性や行動傾 向などが結果に強い影響を与えていること、などの検 討課題が残されている。引き続きこれらの点について 改善をはかりつつ、事例を蓄積して知見の確からしさ を高めていくことが今後の課題となる。 引用文献 福田誠・井上雅彦( )高機能自閉症児におけるソ ーシャルストーリーによる行動変容―家庭場面にお けるストーリーの段階的導入による読み聞かせ効果 の検討―.LD 研究, , ‐ .
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