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熊本県益城町堂園地区における2016年熊本地震の地表地震断層の詳細な分布と共役断層の活動履歴

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(1)短報 short article. 活断層研究 52号 1∼8 2020. 1. Active Fault Research, No. 52, P. 1~8, 2020. 熊本県益城町堂園地区における 2016年熊本地震の地表地震断層の 詳細な分布と共役断層の活動履歴 岩佐佳哉*1,熊原康博*2,後藤秀昭*3,中田 高*4 Detailed mapping of surface ruptures associated with the 2016 Kumamoto earthquake and faulting history of the conjugated fault in Dozon, Mashiki Town, Kumamoto Prefecture Yoshiya Iwasa*1, Yasuhiro Kumahara*2, Hideaki Goto*3 and Takashi Nakata*4. Abstract   On the 16 April Kumamoto earthquake (Mj7.3), ∼ 31km-long right-lateral surface ruptures appeared along the previously mapped Futagawa and Hinagu faults. The surface ruptures appeared in Dozon, Mashiki Town, recording 2.2m of right-lateral displacement which is the maximum strike-slip displacement of these surface ruptures. Small surface deformations such as flexure of cultivated land and deformation of the waterway and leftlateral conjugated fault also appeared in this area. In order to reveal distribution and amount of small surface deformations, we created a digital surface model (DSM) based on photographs taken by unmanned aerial vehicle (UAV) and RTK-GPS survey and conducted a field survey. As a result, small and conjugated surface ruptures were observed about 100m northwest of the main trace of the strike-slip fault, and amount of these deformations are each about 5―30cm of north-down displacement. The amount of vertical offset of just above the main trace is 25―30cm of south-down offset but the total vertical offset in Dozon is a north-down vertical offset rather than a south-down when summing the vertical offset of the secondary trace and the main trace. We also conducted a trenching survey across the conjugated fault to reveal surface faulting history. While the vertical offset caused by the 2016 earthquake was 20cm down on the south, older strata exposed on the trench walls were offset more than 40cm. Based on the deformational features of exposed strata, we identified at least four faulting events including the 2016 earthquake. The timing of the event before the 2016 earthquake is 500―10,600yrsBP. It indicates that the conjugated fault is also cumulative. It is likely that the conjugated fault and small surface ruptures have repeatedly ruptured simultaneously with the main trace, because the conjugated fault follows the small surface ruptures and is consistent with the timing of events in the main trace.. 地表地震断層の最大横ずれ変位量は益城町堂園地区で記録. 1.はじめに. された2.2mであった(Shirahama et al., 2016) .この付近で は明瞭な主トレースの変位のほかにも,主トレースの北西.  2016年4月16日,布田川―日奈久断層帯の再活動により. 側約100mの範囲内に,耕作地のたわみや水路の変位,主ト. 熊本地震(Mj7.3) が発生し,右横ずれ変位を主体とする長. レースと斜交する左横ずれ変位をもつ共役断層など,主ト. さ約31kmの地表地震断層が出現した (熊原, 2016;第1a図) .. レースよりも変位量が小さく,変位様式が異なる副次的な. *1 *2 *3 *4. 広島大学大学院教育学研究科・院生 広島大学大学院教育学研究科 広島大学大学院文学研究科 広島大学名誉教授. *1 *2 *3 *4. Student of Graduate School of Education, Hiroshima University Graduate School of Education, Hiroshima University Graduate School of Letters, Hiroshima University Emeritus professor, Hiroshima University.

(2) 2. 岩佐佳哉・熊原康博・後藤秀昭・中田 高. 2020. 変位が見られた.幅100mに渡って広範囲に変位が広がるた. るため,小型ドローン(DJI Phantom2)に取り付けたコン. め,個々の変位量は小さいものの,トータルの変位量は大. パクトデジタルカメラ(Nikon Coolpix A)を用いて空撮を. きくなる可能性がある.ある地点における正確な変位様式. 行ない,詳細な地形図を作成した.具体的には,空撮し. や変位量を見積もる場合,主トレース上の変位と副次的な. た写真をもとにSfM-MVS技術を用いた三次元モデル作成. 変位の両方を含めて考慮する必要がある.さらに,これら. ソフト,Agisoft社のPhotoScanPro(1.3.1)を用いてdigital. の副次的な変位は,今回の地震だけで生じたものなのか,. surface model(DSM)を作成した.DSMの作成に用いた. あるいは過去にも繰り返し生じてきたものなのかを検討す. 写真は1,078枚で,写真の地上分解能は平均で約8.64mm/. る必要がある. 以上のことから, 本研究の目的は, 1) 主トレー. pixである.地形モデルに地理情報を与えるためにRTK-. ス周辺で認められた副次的な変位の特徴を明らかにして,. GPS測量によって求めた値を用いて地上基準点(GCP)を. 堂園地区における布田川―日奈久断層帯の変位様式や変位. 設定した.設定した8地点のGCP間の誤差は平均で9.23mm. 量を検討すること,2) 副次的な変位の一つである左横ずれ. である.これらの解析によって得られたDSMの解像度は. 変位をもつ共役断層の活動履歴を明らかにし,累積的な変. 6.91cmである.. 位が認められるかどうかを検討することである..  DSMを基に作成したアナグリフ画像や地震後に撮影さ.  本研究では,主トレース周辺の副次的な変位の分布と変. れた空中写真を用いて判読を行ない,副次的な変位を把握. 位量を把握するために2017年4月15,16日にドローンによ. し,分布図を作成した.また,DSMを用いて副次的な変. る空撮,RTK-GPS測量を実施し,同年8月10,11日に現地. 位に沿って地形計測を行い,地形断面図から垂直変位量を. 調査を行なった.また共役断層の変位の累積性の有無を明. 求めた.具体的には耕作地の表面が地震前にはほぼ水平で. らかにするために,2017年4月9日∼15日にトレンチ掘削調. あったとみなして計測を行ない,変位が認められる場合に. 査を行なった.. は,その基部を副次的な地表地震断層が出現したトレース と見なした.空撮実施時には耕作地に草が生えており,地. 2.堂園地区における地表地震断層の計測と記載. 形断面図では波長の短い凹凸として表現されている.垂直 変位量を求める際には凹凸の頂点の中間を地形面とみなし. 2.1 調査の概要. て計測を行なった.現地において,これらのトレース上で.  本研究の調査範囲は地表地震断層の主トレースとその北. 側溝や水路の破断,撓曲変形など地表の変位があることを. 西側約200m×400mの範囲である(第1b図).なお,主トレー. 確認した.. スの南東側は山地であり,微細な変形を把握することが困 難であるため調査を行なっていない.調査範囲内では主ト. 2.2 調査結果. レースがN55°Eの走向で直線的に延びる(熊原,2016;.  調査の結果,DSM作成範囲で副次的な地表地震断層が. 矢野ほか, 2017) .主トレースは南西部では耕作地に出現し,. 新たに認められた(第1b図).トレースの連続性に基づい. 約3mの幅の中で約5mの間隔をもつ左雁行配列をなしてお. て新たに認められた地表地震断層を便宜的に12条(①∼⑫). り(Lin et al., 2017),北東部では山地斜面に生じている. に分けた.それぞれのトレースの属性は表1に示した.ト. (矢野ほか,2017;山口,2018).主トレースにおける右横. レースは変位様式と分布に基づき南部と北部に分けられる.. ずれ変位量の最大値は南西部で記録された2.2mであった.  南部には7条のトレース(①∼⑦)が,N55°E-EWの走向. (Shirahama et al., 2016).一方,北東部では0.7m程度であ. で延びる.それぞれ主トレースに対し5―35°斜交する.ト. り,本地域では右横ずれ変位量が北東に向かって急激に減. レース①,②の西部では変位が不明瞭であるが,約30m西. 衰する特徴を有する.また,主トレースの垂直変位量は5. 方で認められた道路上の変形(第1b図,Loc. 1,2)にそれ. ―35cmの南落ちを示し,南西部で小さい.この地区の主ト. ぞれ連続する可能性がある.トレース①と④は連続する可. レースは南東部に分布する火砕流堆積面と,現在は本地区. 能性があるが両者の間に池があるため不明である.トレー. の北西を流れる木山川が形成した谷底との境界をなす北西. ス②と⑥は連続する可能性があるが,その間の耕作地には. 落ちの断層崖の低下側に生じた(熊原ほか,2017a)が,出. 明瞭な変位が認められない.トレース③∼⑥のいずれも北. 現した地表地震断層は明瞭な北落ちを示さず,変位地形と. 東に向かって変位量が減少しており,さらに北東側へト. は不調和である.また研究対象地域より南西側では,上記. レースが延びる可能性は低い.トレース⑤と⑥の間は耕作. の断層崖に沿って地表地震断層が認められず,地表地震断. 地が北西に向かって傾動する(第2図a-a ).. 層は断層変位地形が認められない沖積低地へと延びている.  北部では5条のトレース(⑧∼⑫)が認められる.トレー. (堤ほか,2018) .  主トレース周辺の副次的な変位を詳細に観察・記録す. ス⑧の西端はさらに延長する可能性があるものの池があ るため不明である.トレース⑨は副次的なトレースの中.

(3) 活断層研究 52号. 熊本県益城町堂園地区における2016年熊本地震の地表地震断層の詳細な分布と共役断層の活動履歴. 3. 第1図 2016年熊本地震で生じた地表地震断層の分布.a:地表地震断層全体の分布(熊原,2016).赤線は地表地震断層 を示す.b:益城町堂園地区における地表地震断層の詳細な分布.ドローン空撮写真とRTK-GPS測量によるDSMと現地 調査により作成.二重橙線は既知の地表地震断層の分布を示し,大学合同チームが行なった調査と山口(2018)に基づく. 等高線の間隔は5cm.丸数字は表1,第2図の番号と対応する.数字は地表地震断層の横ずれ変位量(cm,LとRは変位の 向きを表す)と垂直変位量(cm,nとsは低下側を表す)を示す. Fig. 1 Surface ruptures associated with the 2016 Kumamoto earthquake. a: Distribution of surface ruptures (Kumahara, 2016). Red lines denote surface ruptures. b: Detailed distribution of surface ruptures in Dozon. The map is based on field survey and DSM based on aerial photograph taken by drone and RTK-GPS survey. Orange double line denotes previously mapped surface ruptures based on field mapping by a team of university researchers and on Yamaguchi (2018). Contour interval is 5cm. Circled numbers correspond to the numbers in Table 1 and Fig. 2. Amounts of lateral offsets (cm, R and L denotes direction of lateral offset) and vertical offsets (cm, n and s denote downthrown side) are shown.. で最も大きな変位量(10―30cm)を示す(第2図c-c ).北東. プする.トレース⑪は最大25cmの左横ずれ変位が認めら. 側では明瞭な変位が認められないが,約50m東方で認めら. れ,主トレースとは逆の変位様式を示す共役断層である.. れた道路の圧縮性の変形(第1b図,Loc. 3)に連続する可. トレースの分布からトレース⑨から⑪は一続きのものと考. 能性がある.トレース⑩はトレース⑨から約10m左ステッ. えられ,トレース⑪の北側が局地的にブロック状に西へ移.

(4) 4. 2020. 岩佐佳哉・熊原康博・後藤秀昭・中田 高. 表1 副次的な地表地震断層の諸元.丸数字は第1b図,第2図の番号と対応する. Table 1 The list of minor surface ruptures appeared in Dozon, Mashiki Town. Circled numbers correspond to the numbers in Fig. 1b and Fig. 2.. Segment. Trend. Length(m). Downthrown side. Amount of vertical offset (cm). ① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨ ⑩ ⑪ ⑫. EW N80°E N60°E N65°E N65°E N55°E N40°E N58°E N43°E N30°W N80°E N60°E. 40 85 35 50 60 40 55 60 200 20 40 55. N N NW NW NW NW NW NW NW SW S NW. 5∼10 10∼15 10∼15 10∼15 10∼15 5∼10 10 15∼20 10∼30 15∼20 15∼20 10. 第2図 DSMに基づく地表地震断層を横切る地形断面.丸数字は地表地震断層の位置を示し,表1,第1b図の 番号と対応する.数字は地表地震断層の垂直変位量を示す.地形断面の測線は第1b図に示す. Fig. 2 Topographical profiles across surface ruptures based on DSM. Circled numbers correspond to the numbers in Table 1 and Fig. 1b. Amounts of vertical offsets are shown. The measured lines are shown in Fig. 1b. 動したことで生じた共役断層と考えられる.トレース⑨は. 30cmの南落ちであるので,差し引きすると南落ちの垂直. 西へ弧状に張り出した幾何学形状をなし,トレース⑨に. 変位は相殺され,北落ちの変位がやや大きい.これは,主. 沿って高さ5―10cmのバルジ状の高まりが認められ(第2図. トレースで認められた南落ちの変位が見かけ上の変位であ. b-b ),逆断層性の変位様式を示すこととも整合的である.. り,幅70m程度の広い範囲で見ると,実際の変位が北落ち.  南部においては,副次的なトレースのすべてで北落ちの. であったことを示していると考えられる.北部においては. 変位が認められ,それぞれの変位量は10―15cm程度である.. 主トレースの変位量がわからないものの,南部と同様に. トレース④∼⑥は互いに並走しており,その変位量の合計. 副次的な地表地震断層には北西側が15―30cm低下するよう. は約35cmである(第2図).主トレースの垂直変位量は25―. な変位が認められる(第1b図,第2図).干渉SARの解析や.

(5) 活断層研究 52号. 熊本県益城町堂園地区における2016年熊本地震の地表地震断層の詳細な分布と共役断層の活動履歴. 5. GNSS測量の結果では,堂園地区の北側に沈降域が認めら. 素年代測定用の試料として炭化物と有機質土壌を採取し,. れており(国土地理院,2019),上記の北落ちの変位が南. (株)加速器分析研究所に委託して年代の測定,暦年較正年. 落ちの変位より大きくなることと調和的である.. 代の計算を行った(表2).暦年較正年代の計算にはIntCal 13データベース(Reimer et al., 2013)を用い,OxCal v4.3 較正プログラム(Ramsey, 2009) を使用した.. 3.共役断層におけるトレンチ掘削調査 3.1 共役断層と調査の概要. 3.2 地層の記載.  トレンチ掘削調査は木山川が形成した谷底から比高約.  壁面に現れた地層は層相の違いによって7つの層(第1∼. 2mの段丘面上の耕作地で実施した(第1b図,第3図) .こ. 7層)に分けることができる(第4a図).. の地点では上述のトレース⑪が生じており,東西走向をな. 第1層:暗灰色の耕作土壌層.地震後に整地が行われたた. し,15―20cmの南側低下,最大25cmの左横ずれ変位が確. め本層に変位は認められない.. 認できた.なお,地震直後には地表に明瞭な亀裂を現地で. 第2層:細礫を多く含む礫混じり砂層.直径10∼60cmの円. 確認することができたが,その後整地が行われたため,. 礫を含む.層理が発達せず,一様に細礫が含まれることか. トレンチ掘削時には地表に亀裂を確認することができな. ら土石流性堆積物であると考えられる.本層は壁面の南側. くなっていた.トレンチは断層に直交するように,長さ. でのみ認められる.西壁面には黒色の有機質層が挟まれ. 7m,幅3m,深さ約2mで掘削した.掘削後,壁面を整形し. ており,そこから採取した炭化物の放射性炭素年代は520 ±20 yrs BP(較正年代(2σ):621―610(3.6%),554―511. た後, 両壁面に水糸を張り,1m四方のグリッドを設けた(第 4a図).断層の活動時期を明らかにするために,放射性炭. (91.8%) calBP)を示す(表2).. 第3図 トレンチ掘削地点のドローン空撮写真.a:地震直後の写真,黒枠は第3b図の位置を示す.b:トレンチ掘削後の 写真.a,b,ともに赤矢印は地表地震断層の位置を示す. Fig. 3 Aerial photographs of the trench site taken by drone. a: Aerial photograph taken on May 15, 2016. Black rectangle shows the location of Fig. 3b. b: Aerial photograph taken on April 15, 2017. Red arrows indicate the location of surface ruptures in a and b. 表2 放射性炭素年代測定結果. Table 2. Radiocarbon ages for samples obtained from the trench wall in Dozon, Mashiki Town. Lab. No.: IAAA (Institute of Accelerator Analysis Ltd.). Lab. No.. Sample Stratigraphic No. unit. Material. Pretreatment. σ13C-corrected age σ13C(‰) (AMS) Libby Age(yrBP) pMC(%). Calibrated age (2σ) (calBP). IAAA―170946. Sam1. Unit―5. organic soil. HCI. −17.86±0.28. 10,580±40. 26.78±0.13. 12,673―12,519(82.4%) 12,429―12,427(13.0%). IAAA―170947. Sam2. Unit―2. charcoal. AaA. −26.26±0.25. 520±20. 93.71±0.26. 621―610(3.6%) 554―511(91.8%). Pre-treatment: HCl (acid), AaA: acid-alkali-acid. pMC: percent Modern Carbon.

(6) 6. 岩佐佳哉・熊原康博・後藤秀昭・中田 高. 2020. 第4図 a.トレンチ壁面のスケッチと放射性炭素年代測定試料の採取位置.黒枠は第4b図の位置を示す. b.トレンチ壁面の断層周辺の正射画像.黄色の水糸は1mグリッド,赤矢印は断層の位置を示す.東壁面は 鏡像である. Fig. 4 a: Sketches of the trench walls with locations of 14C samples. Black rectangles show the location of Fig. 4b. b: Orthoimages around faults on the wall. Yellow thread is 1m square. Red arrows indicate the location of faults. The sketch and image of east wall is a mirror image.. 第3層:茶褐色で細かな角礫を含む砂混じり礫層.層理が. い層が挟まれており,土石流が少なくとも二度にわたって. 発達しないことから背後の斜面からの土石流性堆積物であ. 堆積したと考えられる.F1の南側でのみ認められる.. ると考えられる.西壁面には砂混じり礫層の間に礫が少な. 第4層:赤茶色の粘土層.西壁面においてはF2の南側での.

(7) 活断層研究 52号. 熊本県益城町堂園地区における2016年熊本地震の地表地震断層の詳細な分布と共役断層の活動履歴. 7. み認められる..  一方,東壁面においては第5層と第4層の上面の傾斜が明. 第5層:黒色の有機質土壌層.西壁面から採取した有機質. らかに異なる.第5層は北に向かってたわみ上がっており,. 土壌試料の放射性炭素年代は10,580±20 yrs BP(較正年代. 第4層は第5層が形成した凹地部にのみ堆積している.第5. (2σ) :12,673―12,519(82.4 %),12,429―12,427(13.0 %). 層の変形はF1による断層運動に伴って生じた可能性があ. calBP) を示す(表2).. る.したがって,第5層の堆積後から第4層の堆積前に断層. 第6層:礫混じりの粘土層.. イベントを推定することができる.. 第7層:巨礫を含む細礫層.巨礫が円磨されていることか.  第2層と第5層から得られた放射性炭素年代測定結果に基. ら,本層は木山川の扇状地性礫層であると考えられる.. づくと,イベント2ならびにイベント3の時期は520±20― 10,580±20 yrs BPの間にあったと考えられる(表2).. 3.3 断層構造と断層イベントの認定. イベント4:第6層堆積中∼第5層堆積前.  トレンチ壁面では南落ち変位を示す2条の断層が認めら.  西壁面において,F1のすぐ北側には礫が存在するため. れた.北側の断層をF1,南側の断層をF2とする.東壁面. 第5層の基底と第6層の正確な変位量は不明である.しか. ではF2が認められない.西壁面におけるF1の傾斜は77°N,. し,第5層の基底と第6層の基底をそれぞれ延長させて変位. F2の傾斜は60°Nであり,いずれも高角逆断層である.F1. 量を計測すると,F1に沿って第5層の基底は40cm垂直変位. は2016年熊本地震時にも活動し,地表地震断層が生じた.. し,第6層の基底は60cm垂直変位しており,変位量に差が. しかし,地震後に整地が行われたためトレンチ壁面では第. ある.また,F2に沿っては,第5層の基底では7cmの垂直. 2層以下でF1が認められる.一方,F2は西壁面において第. 変位が認められる一方で,第6層の基底では20cmの垂直変. 3層の基底,第5層,第6層,第7層を変位させているが,第. 位が認められる.F1とF2のいずれにおいても第5層の基底. 2層と第3層の境界は水平であり,変位は認められない.そ. と第6層の基底とでは変位量が明らかに異なっている.さ. の他,断層の形態や地層の変形,変位量に基づいて,以下. らに西壁面では,F1とF2の下盤側における第6層の層厚は. のように4つのイベント層準を認定することができた.な. いずれも上盤側よりも厚くなっている.これに対して,第. お,イベント2とイベント4は西壁面のみで認められた.. 5層の層厚は,断層の両側でほとんど変化していない.こ. イベント1:2016年熊本地震. のことは第6層堆積中または堆積後に断層運動が起こり,.  トレンチ掘削調査地点付近では2016年熊本地震時に15―. 変位した地表を侵食する作用が働いたのち,第5層が地表. 20cm南側低下,最大25cmの左横ずれ変位が地表に認めら. 部を覆って薄く堆積したと解釈することができる. 一方で,. れ,壁面ではF1のみがこれらの変位を担っていることが. 第6層堆積途中に断層運動が起こり,その低下側を埋める. 確認された.本研究のトレンチ掘削調査は地表の変位を整. ように第6層が堆積したのち,第5層が堆積したと解釈する. 地した後に行ったため,地表および第1層に変位は認めら. ことも可能である.これらのことから,第6層の堆積途中. れなかった.なお,西壁面ではF1による第2層の変位は不. から第5層の堆積前までの間に最低1回の断層運動イベント. 明瞭であったが,東壁面では第2層がF1によって分布を限. があったと考えられる.なお,第5層の堆積前には複数回. られていることから,2016年熊本地震時にはF1に沿って. の断層イベントがあった可能性がある.第5層から得られ. 断層変位があったと考えられる.. た放射性炭素年代測定結果に基づくと,イベント4の時期. イベント2:第3層下部堆積後∼第2層堆積前. は約10,600 yrs BP以前と考えられる(表2)..  西壁面において第3層の下面はF2に沿って7cm変位して.  本研究のトレンチ掘削調査では年代測定を実施できた地. いる.第3層には層理が発達しないため,断層面の有無は. 層が限られているため,各イベントの時期を精度良く求め. わからないが,第3層下部堆積以降にF2の変位があったこ. ることができなかったが,同一のトレースにおいて複数回. とは確実である.一方,第2層は土石流堆積物であり,第3. のイベントが認められることから,主トレースに対して副. 層とは不整合の関係にある.第2層の下面には凹凸がある. 次的な共役断層も過去に繰り返し活動してきたことが示さ. が,変位は認められない.したがって,F2による変位は. れた.この断層は,さらに北部の副次的なトレースに連続. 第3層下部堆積以降から第2層堆積前であると考えられる.. するものであり,これらの副次的なトレースにも変位の累. イベント3:第5層堆積後,第4層堆積前. 積性がある可能性が高い.研究対象地域において,熊原.  西壁面において第5層上面はF1に沿って40cm変位してい. ほか(2017b)やLin et al.(2017)が主トレースについて行. る.この変位量は2016年熊本地震時のF1に沿った変位量. なったトレンチ掘削調査では,熊本地震を含めてそれぞれ. よりも明らかに大きい.第2層と第3層は耕地整備などに. 約7,300年前以降に2回,約5,600年前以降に5回の断層運動. よって隆起側に地層が連続しないことから変位量は分から. イベントが示されている.これらの結果と本研究が明らか. ない.. にした結果は矛盾しないこと,一度のイベントにおいて副.

(8) 8. 2020. 岩佐佳哉・熊原康博・後藤秀昭・中田 高. 次的なトレースだけが活動することは想定しにくいことか ら,主トレースと副次的なトレースは同時に活動した可能. 文  献. 性が高いと考えられる.. 4.結  論  本研究では以下のことが明らかになった.1) 地表地震断 層の主トレースから北西側の幅約100mにわたって副次的 な地表地震断層および,共役な地表地震断層が複数認め られ,これらの地表地震断層のそれぞれの垂直変位量は いずれも5―30cm程度であった.2)主トレースの直上にお ける垂直変位は南落ちを示していたが,副次的な変位を含 めて評価すると,むしろ北落ちの変位といえる.この結果 は干渉SARの解析やGNSS測量の結果と調和的であり,あ る地区の変位量を見積もるためにはその直上だけでなく, 幅広い範囲で見積もる必要がある.3) 共役断層を横切るト レンチ掘削調査により,2016年熊本地震を含め少なくとも 4回の断層運動の痕跡を見出し,熊本地震より一つ前と二 つ前のイベントは500―10,600 yrs BP,三つ前のイベントは 約10,600 yrs BP以前であることを示した.4)共役断層のト レースが北部の副次的な変位に続くこと,主トレースにお けるイベント年代(熊原ほか,2017b;Lin et al., 2017) と矛 盾しないことから,共役断層と副次的な地表地震断層は, 主トレースの変位と同時に繰り返し活動してきた可能性が 高い. 謝  辞  本研究の一部は広島大学教育研究支援財団「平成28年 熊本地震に伴う地震断層に関する変動地形学的研究─熊 本県益城町を対象に」(平成29年度)及び科学研究費補助 金基盤研究(A) 「 熊本地震から学ぶ活断層ハザードと防 災教育―活断層防災学の構築を目指して」 (課題番号: JP18H03601,研究代表者;鈴木康弘)の助成により実施し た.本研究は益城町の協力を得て行なった.トレンチ掘削 地点の土地所有者には耕作地を調査地として提供していた だいた.東北大学の高橋直也氏には現地での作業を手伝っ ていただいた.匿名の査読者1名と編集委員の水野清秀氏. 国土地理院,2019,平成28年熊本地震に関する情報,https:// www.gsi.go.jp/BOUSAI/H27―kumamoto-earthquake-index. html#3,2019年7月5日参照. 熊原康博,2016,熊本地震の特徴とメカニズム―地表地震断層 が教えること―,地理,61(10),10―19. 熊原康博・岡田真介・楮原京子・金田平太郎・後藤秀昭・堤  浩之,2017a,1:25,000都市圏活断層図「熊本(改訂版)」, 国土地理院. 熊原康博・鳥井真之・中田 高・後藤秀昭・岩佐佳哉・鈴木康 弘・渡辺満久・遠田晋次・高橋直也・奥野 充,2017b,益 城町堂園及び南阿蘇村河陽のトレンチ掘削調査に基づく布田 川-日奈久断層帯北東部の活動履歴,日本活断層学会2017年度 秋季学術大会,O―1. Lin, A., Chen, P., Satsukawa, T., Sado, K., Takahashi, N., and Hirata, S., 2017, Millenium recurrence interval of morphogenic earthquakes on the seismogenic fault zone that triggered the 2016 Mw 7.1 Kumamoto earthquake, Southwest Japan, Bulletin of the Seismological Society of America, 107 (6), 2687―2702, doi: 10.1785/0120170149. Ramsey, B, 2009, Bayesian analysis of radiocarbon dates, Radiocarbon, 51 (1), 337―360. Reimer, P., Bard, E., Bayliss, A., Beck, W., Blackwell, P., Ramsey, B., Buck, C., Cheng, H., Edwards, L., Friedrich, M., Grootes, P., Guilderson, T., Haflidason, H., Hajdas, I., Hatté, C., Heaton, T., Hoffmann, D., Hogg, A., Hughen, K., Kaiser, F., Kromer, B., Manning, S., Niu, M., Reimer, R., Richards, D., Scott, M., Southon, J., Staff, R., Turney, C., and Plicht, J., 2013, IntCal13 and Marine13 Radiocarbon Age Calibration Curves 0―50,000 Years cal BP, Radiocarbon, 55 (4), 1869―1887. Shirahama, Y., Yoshimi, M., Awata, Y., Maruyama, T., Azuma, T., Miyashita, Y., Mori, H., Imanishi, K., Takeda, N., Ochi, T., Otsubo, M., Asahina, D., and Miyakawa, A., 2016, Characteristics of the surface ruptures associated with the 2016 Kumamoto earthquake sequence, central Kyushu, Japan, Earth, Planets and Space, 2016, 68: 191, doi: 10.1186/s40623―016―0559―1. 堤 浩之・遠田晋次・後藤秀昭・熊原康博・石村大輔・高橋直 也・谷口 薫・小俣雅志・郡谷順英・五味雅宏・浅野公之・ 岩田知孝,2018,熊本県益城町寺中における2016年熊本地震 断層のトレンチ調査,活断層研究,49,31―39. 山口 勝,2018,8K空撮の活断層研究への活用,特に熊本地震 における地震断層の発見について,活断層研究,48,1―11. 矢野健二・矢田 純・宮崎精介・花村 修・黒木貴一,2017, 地表地震断層 ―分布特性と地質断層との関係―,一般社団 法人日本応用地質学会・九州応用地質学会「2016年熊本・大 分地震災害調査団」編「2016年熊本・大分地震災害調査団報 告書」 ,一般社団法人日本応用地質学会,41―46.. には原稿の改善につながる有益なコメントを頂いた.記し て謝意を表します.. キーワード. 2016年熊本地震,地表地震断層,共役断層,トレンチ掘削調査,数値表層モデル 2016 Kumamoto earthquake, surface rupture, conjugated fault, trenching survey, digital surface model (DSM). (2019年 2 月13日受付) (2019年11月28日受理).

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Fig. 1 Surface ruptures associated with the 2016 Kumamoto earthquake. a: Distribution of surface ruptures (Kumahara, 2016)
Fig. 2 Topographical profiles across surface ruptures based on DSM. Circled numbers correspond to the numbers in  Table 1 and Fig
Table 2  Radiocarbon ages for samples obtained from the trench wall in Dozon, Mashiki Town
Fig. 4 a: Sketches of the trench walls with locations of  14 C samples. Black rectangles show the location of Fig

参照

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