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巻 頭 言
「もう一度問い直したい、コンテンツツーリズムとは何か」
岩崎 達也
コンテンツツーリズム学会理事
九州産業大学商学部商学科教授
2011 年に本学会は発足したが、当初まだ新鮮だった「コンテンツツーリズム」という言
葉も、学際的な領域でも実務の領域でも多く見聞きするようになり一応の市民権を得たよ
うに思える。だが、ここからが正念場である。
アニメの「聖地巡礼」や大河ドラマのツーリズムなど時折大きな盛り上がりを見せるが、
近年はメディアの仕掛けや自治体の地域おこしの側面が多く見られ、旅の主体である個人
の存在やその内面世界の分析が少し希薄化しているのではないか。かつて、旅は鉄道の敷
設によりその空間的広がりを得、メディアの発達によって「疑似イベント」化したと言わ
れたものの、観光対象への想いの喚起や「まなざし」の多様性を得た。人はコンテンツを
拠り所にしてその地を旅することで通常の旅とは異なる何を得るのだろうか。
コンテンツツーリズムは、2005 年に国土交通省総合政策局・経済産業省商務情報政策
局・文化庁文化部から出された「映像等コンテンツの制作・活用による地域振興のあり方
に関する調査」のなかで「地域に『コンテンツを通じて醸成された地域固有の雰囲気・イ
メージ』としての『物語性』『テーマ性』を付加し、その物語性を観光資源として活用する
ことである」と定義している。
私もいくつかの自治体から依頼されて、地域おこしやブランド化に携わった。その地域
の文化・歴史資源の掘り起こしを通じてアイコンとなるコンテンツを決め、もしくは作り
出し、それに物語を付加し地域ブランドの再生や生成を行ってきた。ほとんどの旅行者が
旅への意思決定をするとき、その土地ならではのストーリーを欲するからである。しかし、
自戒も込めて思う。コンテンツツーリズムとは、送り手側の思惑とは別に個人が生成する
旅であり、その定義も個々で異なるものであるはずだと。
いま自らに「コンテンツツーリズムとは何か」と問いかけた時、恥ずかしながら明確な
答えを持っていない。「いま必死に考えている」という状況である。これからコンテンツツ
ーリズム研究が深化し、裾野を広げていくためには、研究者それぞれが、その専門領域に
おいてコンテンツツーリズムと何かをもう一度考え、また議論しながら深化させていく必
要があるだろう。多様な視点での、個々の想いに満ちた論文がたくさん集まることを願っ
ている。