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宮原論文に対するEditorial Comment
秦野 雄
東京医科歯科大学 循環器内科 助教 たこつぼ心筋症は精神的・身体的ストレスを 契機に発症する一過性の心筋障害であり,半数 以上の患者において精神神経疾患を合併してい ることが知られている.精神神経疾患を合併し ている患者が多い理由として,急性脳障害によ る血中カテコラミン濃度の上昇,セロトニン・ ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)等 の薬剤の影響,ストレス耐性が低く交感神経興 奮が生じやすい,等の機序が考えられている. 急性脳障害の原因としては,くも膜下出血,頭 部外傷,てんかん,等が含まれており,電気痙 攣療法もこの範疇に含まれるものと考える. 宮原らはうつ病に対する電気痙攣療法施行後 に心原性ショックを合併したたこつぼ心筋症の 症例を報告した.電気痙攣療法施行後にたこつ ぼ心筋症を発症した症例報告は過去にも存在し ているが,心原性ショックを契機に診断された症 例は稀であり,学ぶことの多い症例報告である. 本症例の発症時心電図において,aVR 誘導の ST 低下を認め,V1 誘導では ST 上昇を認めな い.これらの所見は,たこつぼ心筋症と急性冠 症候群の鑑別診断に有用である.また,経過中 に深い陰性 T 波と QT 延長を認めることもた こつぼ心筋症の特徴である1).心エコーでは, 冠動脈支配領域に一致しない左室壁運動異常と ともに,左室流出路狭窄の有無や心尖部血栓の 有無などを確認することが治療方針の決定に重 要である. たこつぼ心筋症にショックを合併する頻度は 10%程度とされ,ショックを合併していない患 者と比較して院内死亡リスクが高い2).左室流 出路狭窄の有無によって治療を分けて考える必 要があり,左室流出路狭窄を合併している場合 は,輸液負荷やβ
遮断薬の使用を考慮し,カテ コラミン使用による病態の悪化に注意を要す る.本症例では心雑音が聴取されず,カテコラ ミン使用による病態の悪化も認めなかったこと から,左室流出路狭窄の合併はなかったものと 考える. たこつぼ心筋症の長期予後改善につながる薬 物療法については一定の見解が得られておら ず,本症例においても退院時にたこつぼ心筋症 に対する薬物投与は行われていない.予後改善 に寄与する薬剤は,β
遮断薬ではなく,ACE 阻 害薬または ARB であるとする報告もあるが3),β
遮断薬の種類(β
1 選択性,α
受容体遮断作 用,内因性交感神経刺激作用,血液脳関門通過 性)や,心不全・心原性ショック合併の有無など を層別化することによって異なる結果が得られ る可能性もあり,さらなる検討が必要な領域で ある. 文 献1) Kosuge M, Ebina T, Hibi K, et al:Simple and ac-curate electrocardiographic criteria to differenti-ate takotsubo cardiomyopathy from anterior acute myocardial infarction.
2010;55:2514-2516
2) Di Vece D, Citro R, Cammann VL, et al:Out-comes associated with cardiogenic shock in takot-subo syndrome. 2019;139:413-415 3) Templin C, Ghadri JR, Diekmann J, et al:Clinical
features and outcomes of takotsubo(Stress) car-diomyopathy. 2015;373:929-938