若手内観面接者の面接者としての困難に関する探索的検討 -教育プログラム開発のために−
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(2) 若手内観面接者の面接者としての困難に関する探索的検討 −教育プログラム開発のために−. の恐さやリスクの認識を持ち不断の自己省察に努めること、臨機応変な柔軟な対応も含め 内観者に対する具体的な対応の方法を提示することの重要性が示唆された。これらが初心 者向けの教育に取り入れられるとともに、継続的支援として面接者間のスーパービジョン・ コンサルテーションシステムの構築が有効と考えられた。 < key words:Naikan Interview, novice Naikan therapist, education program, difficulties > < キーワード:内観面接、若手内観面接者、教育プログラム、困難 > 1.問題の背景と本研究の目的. 集中内観では型や枠に収まりきらない問題. 日本内観学会は2018年度から内観面接者. やイレギュラーな対応を要する不測の事態. の資格認定制度を確立し、認定医師、認定. も起こりうる。そのため、型や枠を形式的. 心理療法士、認定内観面接士の3つの資格. に真似るだけでなく、それらが持つ本質的. を付与している(本稿では内観面接をする. な意味を十分に理解しておく必要がある。. 人を総称して内観面接者と称する)。内観. このような不測の事態への対応は内観面接. 療法の発展のためには内観面接者を増やす. 者にとって大きな不安となることはもちろ. 必要があるが、より重要なことは面接のク. んであるが、面接を受ける内観者にとって. オリティをいかに保つかである。内観療法. も不利益になる可能性があり、これは倫理. は心理療法(精神療法)の一つとされてい. 的な問題にも発展することもありえる。. るが、心理療法(精神療法)には通常、特. 事実、内観面接者の資格化が議論された. 定の方法論がある。中でも内観療法は面接. 背景には倫理的な問題があり、資格化の議. 構造が明確であり、面接者の対応も他の心. 論は倫理・資格検討委員会の中で議論さ. 理療法よりも画一化されているため、一見. れてきた(真栄城、2007)。堀井(2005). すると内観面接は相対的に容易に見えるか. の報告によれば、「内観者の態度や施設に. もしれない。内観を創設した吉本伊信が. ついて、直接、あるいは間接的に苦情を言. 「二、三回の面接経験があって熱意さえあ. われた」と答えた内観面接者は45.2%に上. れば内観指導者たりえる」といった意味の. る。内観の枠組みがいかに優れていても、. ことを述べたこともあり(村瀬、2007)、. 枠組みの一つである内観面接者がマイナス. 内観面接者は安易になれるという認識を持. の評価を得るようなサービスを提供してい. たれることもある。. たら、それは内観の発展どころか弊害にな. しかし、内観面接者として内観面接を適. りうる。つまり、内観面接者の資格は面接. 切に行うことは容易ではない。恐らく初心. 者が倫理規定に抵触しない必要最低限のレ. 者にとっては、内観面接特有の所作や枠組. ベルを担保する必要がある。. みに慣れることすら簡単ではない。また、. そのためには、そもそも内観療法とは何. 内観がいかに構造化されていたとしても、. か、あるいは困難にどう対応するかについ. − 34 −.
(3) 高橋 美保 李 暁 茹. て、ある程度一貫した共通理解を持つ必要. は中堅の域に達しているといえよう。. があるであろう。内観は吉本伊信という特. したがって本研究では、中堅内観面接者. 定の個人の実践から確立した心理療法(精. となりつつある第2世代が内観面接者とし. 神療法)であることもあり、熟達した内観. て学び始めた若手面接者の頃を中心に今に. 面接者は、吉本伊信の内観実践に答えを求. 至るまで、内観面接者としてどのような困. めながら各々のやり方で実践していると思. 難を体験し、それにどのように対処してき. われる。しかし、内観面接者間で一貫した. たかを明らかにすることを目的とする。. 共通理解があるわけではなく、明示もされ ていない。内観面接には良くも悪しくも面. 2.方法. 接者の個性が影響することから、単純に画 一化することは難しいが(単純に画一化す. 調査手続き. るべきものでもないかもしれない)、内観. 面接は2019年5〜7月にかけて、内観面. 面接者の資格化を進めている今、その試み. 接経験10年以内で上記分類の第2世代に当. は急務であろう。. たる中堅の内観面接者約5名から協力を得. なお、吉本伊信を含む内観の開発と普及. て行われた。インタビューに先立ち、事前. に貢献した最初期の内観面接者に直接の指. 情報提供を依頼した。事前情報として、年. 導を受けた経験を有する内観面接者を第1. 齢、性別、教育機関での専門、現在有して. 世代とすると、その第1世代に面接者の学. いる資格、就労経験、集中内観を受けた経. びを得た世代を第2世代を呼ぶこともでき. 験、内観面接士の資格の有無、面接者にな. るであろう。内観を後世に伝えるために. ろうと思った理由、面接者としての訓練、. は、前の世代が次の世代に内観をどう伝え. 面接者としての経験について文書で回答を. るかが重要となるが、今後、吉本伊信の内. 求めた(表1参照)。調査は半構造化面接. 観面接を直接知らない世代は増える一方で. によって、協力者がアクセスしやすい静穏. ある。さらに、内観が海外に発展しつつあ. な場所で、1時間にわたって行われた。面. る中で、国内にとどまらず海外にもわかり. 接では基礎情報を確認したのち、若手面接. やすく内観面接の知識や技法を伝えていく. 者の頃を中心に今に至るまでの経験を想. 必要もあるであろう。その際に、実際に第. 起してもらい、「内観面接をして困ったこ. 1世代からから内観面接を学んだ第2世代. と」、「ベテランに訊きたいと思っているこ. が、内観面接者としてどのような困難を経. と」、「未だに困っていること」、「解決した. 験したかがわかれば、教育プログラムに入. こととその具体的な対応」などについて尋. れるべき要素が明らかになると考えられ. ねた。. る。なお、現代、第2世代に属する面接者. 分析. の多くは、実質的に5年以上の内観面接経. 面接データは協力者の承諾を得てすべて. 験を有していることから内観面接者として. 音声で録音され、スクリプトに起こされ. − 35 −.
(4) 若手内観面接者の面接者としての困難に関する探索的検討 −教育プログラム開発のために−. 表 1 協力者の概要 年代 性別 資 格 集中内観 内観面接歴 A 30 代 男性 臨床心理士、内観面接士. 2回 7 年. B 50 代 女性 公認心理師、内観面接士、 学校心理士スーパーバイザー. 2回 5 年. C 30 代 男性 臨床心理士、公認心理師. 4回 6 年. D 40 代 男性 精神保健福祉士、産業カウンセラー. 3回 9 年. E 30 代 男性 なし. 2回 9 年. た。著者ら臨床心理学を専門とする研究者. 【 】、ラベルを「」で示す。以下では、大. 2名でスクリプトを読み込み、語りの内容. カテゴリ毎に各カテゴリの内容を説明する. ごとにラベルを付けた。この段階で、KJ法. とともに、カテゴリ間の関連を検討し、若. (川喜田、1986)を援用し、ラベルを類似. 手内観面接者の面接における困難とその対. の概念毎にまとめる作業を繰り返し、最終. 処について検討する。. 的に小カテゴリ、中カテゴリ、大カテゴリ を得た。最後に得られたカテゴリ間の関連. カテゴリの説明. について検討し、仮説モデルを生成した。. 大カテゴリとして、≪面接者になる≫. 倫理的配慮. ≪内観の構造≫≪面接者としてのあり方≫. 本研究は第一著者が所属する研究機関の. ≪面接者自身の体験≫≪心理職としての体. 倫理審査専門委員会の承認を受けて行われ. 験≫≪内観者への対応≫の6つが得られ. た(審査番号:19-93)。協力者には予め、. た。. 紙面にて調査概要を伝えた。面接当日には. ≪面接者になる≫ <面接者の適性>とい. 書面で、協力の任意性、答えたくない質問. う中カテゴリが含まれた。<面接者の適性. には無理して答える必要はないこと、中断. >は「内観面接者の向き不向きをどこでど. や後日撤回の権利、個人情報の取り扱いに. う判断するか」など2つのラベルが含ま. ついて説明し、同意書への署名を以て協力. れる【面接者の適性(向かない人)】と、. の意思と見なした。. 「面接者になっても大丈夫な要件」など8 つのラベルが含まれる【面接者の適性を判. 3.結果. 断する】の2つの小カテゴリが含まれた。 ≪内観の構造≫ <時間軸><物理的空間. 分析の結果、大カテゴリ6、中カテゴ. の意味><面接者間の関係><生活の意味. リ16、小カテゴリ68、ラベル405が生成さ. ><フォローアップの必要性>の6つの中. れた(表2参照)。文中では大カテゴリを. カテゴリが含まれた。<時間軸>は「流れ. ≪≫、中カテゴリを<>、小カテゴリを. がわかっている、見通しが立っている」な. − 36 −.
(5) 高橋 美保 李 暁 茹. 表2 若手内観面接者の面接者としての困難のカテゴリ表 ≪大カテゴリ≫ 面接者になる. <中カテゴリ> 面接者の適性. 内観の構造. 時間軸. 物理的空間の意味 面接者間の関係. 生活の意味 フォローアップの必要性 面接者としてのあり方. 内観の理解 ゆだねる. 面接者自身の体験. 面接者が感じる恐さ. 自己省察・セルフモニタリング. 面接者としての成長と学び. 心理職としての体験. 心理職が内観面接者になる. 内観者への対応. 面接者―内観者関係. 面接の態度・行動. 内観面接の対応. 柔軟な対応. − 37 −. 【小カテゴリ】 面接者の適性(向かない人) 面接者の適性を判断するために 見通しの立て方 内観者を見るスパンの幅 1週間のマネジメント 内観のプロセス 内観を内観者の人生で位置付ける 物理的な空間の配慮 面接者同士の情報共有 面接者同士の連携 面接者間の役割分担 面接者体制の意味 面接者が日常を支える意味 内観者を見る多様な視点 フォローアップの必要性 内観後の危うさ 内観で変えてはいけないところ 内観の本質 どうなればいいというわけではない 内観者にゆだねる 主導者にゆだねる 枠にゆだねる 面接の恐さ、大変さ 面接者の危機意識の重要性 面接者自身の不安や緊張 どういう人かわからない怖さ 内観者からの感謝をどう扱うか 自己省察をするために 助言はするか 自己省察の必要性 セルフモニタリングの重要性 困らないようになる変化 面接者の個性 陪席の意味 面接者から学ぶ ネットワークの必要性 面接者のための講義の必要性 心理職が内観面接をするときの留意点 心理面接との違い 心理職なので困らない 観られることへの意識 依存関係への対応 面接者に合わせる ノンバーバルなやり取りで伝わる 内観者への配慮 内観者へのリスペクト 内観者を受け入れる気持ち 内観者を受け入れなければならない気持ち 内観者を比較・評価する 所作 頷き方 表情 目線 面接者のスタンス アセスメントの必要性 対象者の選び方 嘘と盗みの扱い方 その人のペース 聴く際の心構え 聴き方 言葉への依存 質問への対応 指導の仕方 助言はするか 伝え方 難しい人への対応 留意点 個別対応の仕方 枠の崩し方.
(6) 若手内観面接者の面接者としての困難に関する探索的検討 -教育プログラム開発のために−. どの3つのラベルが含まれる【見通しの立. 含まれる【内観後の危うさ】の計2つの小. て方】、「見張るスパンの長さの違い」など. カテゴリが含まれた。. 3つのラベルが含まれる【内観者を見るス. ≪面接者としてのあり方≫ <内観の理解>. パンの幅】、「その人にとっての良い内観. <ゆだねる>の2つの中カテゴリが含ま. の流れを考える必要性」などの4つのラベ. れた。<内観の理解>は「内観原法への固. ルが含まれる【1週間のマネジメント】、. 執」など2つのラベルが含まれる【内観で. 「外的な興味から内的・本質的な面白さ. 変えてはいけないところ】、「内観の神髄と. へ」というラベルが含まれる【内観のプロ. は何か」など2つのラベルが含まれる【内. セス】、「人生の一瞬だと思って付き合うこ. 観の本質】、「内観者が悩んだり困ることは. と」などの4つのラベルが含まれる【内観. 悪いことではない」など7つのラベルが含. を内観者の人生で位置付ける】の計5つの. まれる【どうなればいいというわけではな. 小カテゴリが含まれた。<物理的空間の意. い】の計3つの小カテゴリが含まれた。<. 味>は「物理的な空間の影響を考慮する」. ゆだねる>は、「その人なりの内観がある. というラベルが含まれる【物理的な空間の. という理解」など8つのラベルが含まれる. 配慮】という小カテゴリが含まれた。<面. 【内観者にゆだねる】、「主導者に対応をゆ. 接者間の関係>は「情報交換と認識の共有. だねる」など5つのラベルが含まれる【主. をする」など8つのラベルが含まれる【面. 導者にゆだねる】、「内観は枠にゆだねる」. 接者同士の情報共有】、「連携の仕方、内容. など4つのラベルが含まれる【枠にゆだね. の伝え方」など7つのラベルが含まれる. る】の計3つの小カテゴリが含まれた。. 【面接者同士の連携】、「内観者の特徴に応. ≪面接者自身の体験≫ <面接者が感じる. じて面接者を当てる」など5つのラベルが. 恐さ><自己省察・セルフモニタリング>. 含まれる【面接者間の役割分担】、「複数の. <面接者としての成長と学び>の3つの中. 面接者の意義」など6つのラベルが含まれ. カテゴリが含まれた。<面接者が感じる恐. る【面接者体制の意味】の計5つの小カテ. さ>には「恐さ」など4つのラベルが含ま. ゴリが含まれた。<生活の意味>は、「日. れる【面接の恐さ、大変さ】 、「感謝される. 常生活全部を支えることで応じる」という. ことが恐ろしいという感覚」など2つのラ. ラベルが含まれる【面接者が日常を支える. ベルが含まれる【面接者の危機意識の重要. 意味】、「お膳に現れる食べ方や掃除の仕方. 性】、「面接者も最初の数日は緊張する」な. を見る」の3つのラベルが含まれる【内観. ど4つのラベルが含まれる【面接者自身の. 者を見る多様な視点】の計2つの小カテゴ. 不安や緊張】、「どういう人が来るかわから. リが含まれた。<フォローアップの必要性. ない不安がある」など3つのラベルが含ま. >は「フォローアップの必要性」など4つ. れる【どういう人かわからない怖さ】、. のラベルが含まれる【フォローアップの必. 「内観者の感謝は醍醐味であり恐ろしさで. 要性】、「多幸感の危うさ」というラベルが. もある」など7つのラベルが含まれる【内. − 38 −.
(7) 高橋 美保 李 暁 茹. 観者からの感謝をどう扱うか】の計5つの. れる【心理職なので困らない】の計3つの. 小カテゴリが含まれた。<自己省察・セル. 小カテゴリが含まれた。. フモニタリング>には「わからないことを. ≪内観者への対応≫ <面接者―内観者関. 自発的に訊く」など2つのラベルが含まれ. 係><面接の態度・行動><内観面接の対. る【自己省察をするために】、「困った時に. 応><柔軟な対応>の4つの中カテゴリが. は自分で内観して自分に気づく」など11の. 含まれた。<面接者―内観者関係>には、. ラベルが含まれる【自己省察の必要性】、. 「観られている緊張感」というラベルが含. 「自分が引っ張っていたことに気づく」な. まれる【観られることへの意識】、「直接的. ど6つのラベルが含まれる【セルフモニタ. な求めには応じない」など11のラベルが含. リングの重要性】の計3つの小カテゴリが. まれる【依存関係への対応】、「面接者を喜. 含まれた。<面接者としての成長と学び>. ばせる面接」など6つのラベルが含まれる. は「自分の中で対応パターンを決める」な. 【面接者に合わせる】、 「面接者の思いが態. ど3つのラベルが含まれる【困らないよう. 度やしぐさに現れてしまう」など6つのラ. になる変化】、「面接者の個性を生かして対. ベルが含まれる【ノンバーバルなやり取り. 応する」など2つのラベルが含まれる【面. で伝わる】、「内観者がいかに敏感になって. 接者の個性】、「一瞬陪席をするだけでは. いるかを理解する」など6つのラベルが含. わからない」など7つのラベルが含まれる. まれる【内観者への配慮】、「内観しに来る. 【陪席の意味】、「モデルとなる面接者がい. こと自体のすごさ」など4つのラベルが含. る」など9つのラベルが含まれる【面接者. まれる【内観者へのリスペクト】、「内観者. から学ぶ】、「面接者の先輩とのネットワー. が目的があってくることを思うと、受け入. クの必要性」の2つのラベルが含まれる. れようと思う」など3つのラベルが含まれ. 【ネットワークの必要性】、「知識的に分か. る【内観者を受け入れる気持ち】、「内観面. るようになるところもある」など8つのラ. 接者は内観者を受け入れなければならない. ベルが含まれる【面接者のための講義の必. という気持ち」など3つのラベルが含まれ. 要性】の計6つの小カテゴリが含まれた。. る【内観者を受け入れなければならない気. ≪心理職としての体験≫ <心理職が内観. 持ち】、「面接者の内観者に対する要求水準. 面接者になる>という中カテゴリが含まれ. が上がる」など4つのラベルが含まれる. た。<心理職が内観面接者になる>は「心. 【内観者を比較・評価する】の計9つの小. 理臨床は能力がある人はうまく使えばい. カテゴリが含まれた。<面接の態度・行動. い」など8つのラベルが含まれる【心理職. >には、「所作の意味(深々と頭を下げて. が内観面接をするときの留意点】、「心理臨. 何度も通う)」など3つのラベルが含まれ. 床は持ち込まない方がいい」など4つのラ. る【所作】、「頷くことの意味」など7つの. ベルが含まれる【心理面接との違い】、そ. ラベルが含まれる【頷き方】、 「表情は色々. して小カテゴリと同じ1つのラベルが含ま. ありうる」というラベルが含まれる【表. − 39 −.
(8) 若手内観面接者の面接者としての困難に関する探索的検討 -教育プログラム開発のために−. 情】、「目線が邪魔をするリスク」など5つ. 「海外の内観者」「退行する」「内観者から. のラベルが含まれる【目線】、「知りたいの. の投影」「重い」「一念を求めてくる」「超. は面接者のあり方や姿勢」など6つのラベ. 越的な内観」「モチベーションが高い」な. ルが含まれる【面接者のスタンス】の計5. どの26のラベルが含まれる【難しい人への. つの小カテゴリが含まれた。<内観面接の. 対応】、「安全を重視する」など5のラベル. 対応>には、「アセスメント(何が起こって. が含まれる【留意点】の計13の小カテゴリ. いるか)が知りたい」の一つのラベルが含ま. が含まれた。<柔軟な対応>には、「自由. れる【アセスメントの必要性】、「次にだれ. 裁量があるところで悩む」など5つのラベ. を対象者として選ぶかの難しさ」など13の. ルが含まれる【個別対応の仕方】、「枠組み. ラベルが含まれる【対象者の選び方】、「嘘. をどこまで壊していいのかわからない」な. と盗みをやるか」など11のラベルが含まれ. ど9つのラベルが含まれる【枠の崩し方】. る【嘘と盗みの扱い方】、「そのペースでい. の計2つの小カテゴリが含まれた。. いのでやるように言う」など5つのラベル. カテゴリ間の関連. が含まれる【その人のペース】、「教えてい. 抽出された大カテゴリと中カテゴリを用. ただいているスタンス」など5つのラベル. いて、カテゴリ間の関係性を図示した(図. が含まれる【聴く際の心構え】、「調べると. 1参照)。≪面接者になる≫段階で<面接. いっていたことを調べているかどうか、項. 者の適性>に関する疑問が見られた。内観. 目に沿って話しているかを確かめる」など. 面接中には、≪内観の構造≫に関する困難. 22のラベルが含まれる【聴き方】、「言った. として、<時間軸><物理的空間の意味>. 内容で内観を判断しがち」など2つのラベ. <面接者間の関係>という3つの要素とそ. ルが含まれる【言葉への依存】、「質問の背. れから構成される<生活の意味>が見られ. 景を理解して対応する」など7つのラベル. た。その際、内観には、面接者、内観者だ. が含まれる【質問への対応】、「指導はでき. けでなく、複数の面接者、同じ施設外の面. ない」など4つのラベルが含まれる【指導. 接者という立場から構成されると考えられ. の仕方】、「助言はしない」など6つのラベ. たため、これらの様々な立場を図中に示. ルが含まれる【助言はするか】、「クライエ. し、その中にカテゴリを配した。最後に、. ントに対する説明のうまさの必要性」など. 集中内観が終了した後の<フォローアップ. 2つのラベルが含まれる【伝え方】、「葛藤. の必要性>も指摘されていた。. がある」「運動したい」「子ども」「親子」. 内観面接中の体験として、≪面接者とし. 「長く話す」「反抗的な態度」「帰りたい. てのあり方≫≪面接者自身の体験≫が得ら. 人」「中断」「持ち込み」「過食」「寝る」. れた。≪面接者としてのあり方≫には<内. 「筆記」「3・4日の山場」「思い出せない. 観の理解>と、内観を内観者や内観の枠、. とき」「内観にならない」「精神病理」「泣. 主導者に<ゆだねる>ことに関する困難が. いてばかりいる」「ディベート」「理論的」. 見られた。≪面接者自身の体験≫には、. − 40 −.
(9) 高橋 美保 李 暁 茹. 図1 若手内観面接者の面接者としての困難の仮説モデル図 注) は大カテゴリ、<>は中カテゴリを示す <面接者が感じる恐さ>とそれに対する. の内容を整理するとともに、教育プログラ. <自己省察・セルフモニタリング>の重要. ムへの示唆を提示する。. 性が指摘され、そのプロセスの中で、<面. 適性とその判断について. 接者としての成長と学び>が起こる可能性. 学会認定制度規則には、認定心理療法士. が示唆された。面接者自身の経験と、心理. であれば「内観療法の専門的な治療者とし. 職としての経験が相まって、≪内観者への. てふさわしい実力」を持つこと、また「優. 対応≫が行われていたが、その際<面接者. れた人格と見識を備えていること」が明記. ―内観者関係>や<面接の態度・行動>な. されている。しかし、本研究では内観面接. ど基本的な内観のあり方に関する困難が見. 者要件に関する疑問が呈されており、抽象. られた。また、様々な<内観面接の対応>. 的な人物評価の曖昧さへの懸念が潜在し. における困難だけでなく、原法通りの枠で. ていると考えられる。現段階では、研修. は対応できない不測の事態に対する<柔軟. の受講が資格要件に含まれているが、今. な対応>の困難も示された。. 後、対外的にも説明可能な形で質を担保 する仕組みが必要といえる。ただし、真栄. 4.考察. 城(2007)が「『内観面接者としての資格 はあるのか』という自問こそ忘れてはなる. 以下では結果を元に、困難の要素毎にそ. まい」と述べる意味における資格について. − 41 −.
(10) 若手内観面接者の面接者としての困難に関する探索的検討 -教育プログラム開発のために−. は、内観面接者の自覚と不断の努力が求め. にはなるが十分条件ではない。人格は心理. られる。. 療法(精神療法)の要件とはなりうるもの. なお、他の心理療法(精神療法)につい. のその絶対的な評価は容易ではなく、今後. ては、日本精神分析協会は精神分析家の説. 学会における検討が求められる。. 明の中で「人間としての成熟や研究能力を. 内観の構造が持つ援助的意味. 含めた達成についての協会の承認を得」る. 内観の構造に関しては、時間、空間、人. としている(日本精神分析協会、2020)。. 間の3つの間の意味を理解しておく必要が. また、ユング心理学では、国際分析心理学. ある。集中内観の1週間のプロセスだけで. 会のユング派分析家資格を取得できる日本. なく、人生における位置づけなど、時間軸. ユング心理学研究所のトレーニング・プ. の感覚を持つことで経験が乏しい面接者も. ログラムの入学許可には「分析という職. 見通しをもって対応できる可能性がある。. 業への個々の志願者の適性についての評. また、部屋の配置や雰囲気の影響や、複数. 価を基盤としてなされる」と記載されて. の面接者がいることの意味や連携の仕方の. おり、その包括的基準として「将来分析家. 理解も必要であろう。面接終了後のフォ. となるための人格の成熟性と安定性」とあ. ローアップは内観の枠ではないが、検討の. る(日本ユング派分析家協会、2020)。ま. 余地があると考えられる。. た、上記の分析家資格取得の道が開ける日. 内観の本質の理解. 本ユング心理学会「認定心理療法士」資格. より根本的なこととして、内観の本質に. の資格審査規程には「社会通念上著しい欠. ついて、面接で困らないレベルで一定の共. 格があると認めた場合、審査を拒否するこ. 通理解をしておく必要がある。これは内観. とができる」としている(日本ユング心理. 面接中に生じるあらゆる困難に向き合う時. 学会、2020)。一方、日本認知・行動療法. に、何度も立ち返るところとなるであろ. 学会では認知行動療法師の資格認定を行っ. う。本研究では心理職という視点からも検. ているが、その資格要件に適性に関する規. 討が加えられたが、内観で「ゆだねる」こ. 程は見られない(日本認知・行動療法学. とが適切であるとすると、心理職としての. 会、2020)。このように適性や人格の成熟. 日頃の実践スタンスを抑制・調整する必要. 性に関する言及の有無は療法によって一様. を感じる心理職もいるかもしれない。その. ではないが、人格を評価に含むのは内観療. ためには、内観面接者の存在意義や役割を. 法に限ったことではなく、心理療法(精神. 明確にしておく必要がある。蘆・森下・真. 療法)の資格に含まれうる要素と考えられ. 栄城(2016)は、面接者の存在意義とし. る。ただし、要件に明確に含まれている場. て、語れる他者、指導者、制限を持つ、を. 合にも、具体的な判断基準は示されていな. 抽出したが、今後、教育プログラムを検討. い。ユング心理学会の資格審査規程のよう. する際には、内観面接者の存在意義は重要. に最低要件を設けるという方法も必要条件. な要素となると考えられる。. − 42 −.
(11) 高橋 美保 李 暁 茹. 内観者に対応するための知識と技法. であろう。. 本研究で、最も多くのラベルが作成され. 枠を超えた対応について. たのは内観者への対応に関するものであっ. 不測の事態に対しては「型を破る」判断. た。面接者―内観者関係の距離感は対人援. が必要となることがある。内観は枠通りに. 助職にとって基礎的な知識であるが、内観. 進むことを前提としながらも、むしろその. は治療の枠組みが強いために、面接者と内. 枠から外れそうになった時の対応にこそ臨. 観者の関係性は他の心理療法ほどの関係. 床的な意義がある。しかし、その対応方法. 性は想定されていない。しかし、真栄城. に確立したものはない。吉本(1983)は、. (2008)が転移と逆転移、性愛の問題を指. 「面接指導の技術や礼儀は一度稽古すれば. 摘しているように、内観特有の危険性につ. 習得できる」としているが、一方で「指導. いて理解しておく必要があるであろう。. 助言者になろうという人は、単なる技術や. 面接の態度・行動、内観面接の対応につ. 礼儀の習得だけでことはすみません。とは. いては、本研究で得られた小カテゴリが参. いってもこれも、経験です」とも述べてお. 考となるであろう。とりわけ、難しい人へ. り、面接者のレベルを層化していたことが. の対応に含まれたバリエーションについて. 窺われる。不測の事態には後者のレベルに. は具体的な対応の検討が必要である。その. おける指導助言が求められるため、経験者. 際、重要となるのはアセスメントである。. の知見を整理して提示する必要がある。ま. 真栄城(2015)は精神病理を理解した上で. た、現実的には内観の本質な理解と、スー. 病理を抱えた内観者の内観遂行を支えるこ. パービジョンなどの具体的な援助要請の仕. との必要性を指摘しているが、病理に関す. 組みづくりの有効性が示唆された。. る知識と対処方略はある程度は必要であろ. 自己省察と自身の継続的な内観の必要性に. う。ただし、これらの転移・逆転移の問題. ついて. や病理に関するアセスメントは精神医学や. 面接者としての成長と学びには対処が含. 臨床心理学などの専門領域で学ぶ内容であ. まれるため、教育システムへの示唆に富ん. り、認定内観面接士にどこまで求めるかに. でいる。経験を重ねる中で次第に困らなく. ついては慎重な検討が必要である。具体的. なったり、個性を活かして対処するなど自. な知識や技法を学ぶというよりも、専門的. 然なプロセスの中で処せられることも窺わ. な次元の理解や対応が必要なケースもある. れた。一方で、それだけでは対処しきれな. ことを予め伝えておくことは最低限必要と. い問題が生じることもある。その際、重視. 考えられる。. されるのが自己省察である。吉本(1981). また、心理職のアセスメントとの大きな. は「内観の面接者になるのは、他の道に比. 違いとして、内観は生活という視点からの. べて容易で優しいが、後々の慢心を防ぐの. アセスメントが可能である。この点は、内. が大変」と述べるように、内観特有の恐さ. 観特異の知見を視点として明示されるべき. がある。そのため面接者自身が内観をする. − 43 −.
(12) 若手内観面接者の面接者としての困難に関する探索的検討 -教育プログラム開発のために−. など自己省察を怠らないことが重要とな. くなるような知識や技法自体を集約し、そ. る。. れを書籍や研修の形で提供する必要があ. 自助努力で対応しきれない場合には、陪. る。. 席や施設内外の先輩面接者から学ぶという. 本研究の限界と課題. 積極的かつ意図的な対処がなされていた。. 本研究で得られた若手内観面接者の面接. これは、臨床心理学教育ではスーパービ. 者としての困難に関する知見は、今後教育. ジョンやコンサルテーションにあたる。大. プログラムに反映されることが期待され. 和内観研修所における陪席ではブライン. る。ただし、本研究の協力者は心理職が多. ド・アセスメントが行われているが(橋. く、施設内の主導者といわれる熟達内観面. 本・真栄城、2009)、陪席の意義と目的、. 接者の関わりにもばらつきがあるため、知. 方法についての検討も必要であろう。. 見の汎用可能性には限界がある。また、一. 教育プログラムの開発に向けて. 定の経験を有する中堅面接者を対象とした. 以上の内容は、いずれも内観面接者の教. ことにより、若手面接者としての経験の想. 育プログラムのコンテンツに含まれるべき. 起がレトロスペクティブな回想となったこ. であろう。同時に、資格取得後の継続的支. とが情報の正確性に及ぼした影響は考慮す. 援として、面接者間のスーパービジョン・. べきである。今後は、様々な背景を持つ面. コンサルテーションシステムの構築が有効. 接者や若手として学んでいる最中にある面. と考えられる。内観面接のスーパービジョ. 接者にも対象を広げる必要がある。. ンについてまとめた大髙・真栄城(2010). 内観面接者の資格については倫理との関. は、スーパーバイザーから所作や態度の模. 係性の中で議論されてきたが、今回の分析. 倣と知識や経験から学ぶものがあったこと. では直接的に倫理と表現されるラベルは抽. に加え、転移について考え自己理解が深. 出されなかった。また、塚崎(2008)は面. まったという。内観は徒弟制によって継承. 接者自身の精神的健康とQOLの必要性を指. されてきた歴史があり、本研究でも内弟子. 摘しているが、本研究ではセルフケアに関. 制の良さが指摘されていた。しかし、資格. するラベルも抽出されなかった。これらに. によって内観面接をする人が現れうる現状. は、中堅面接者を対象に若手の頃の面接者. では、教育システムにそのエッセンスをう. としての経験を抽出したことも関係してい. まく組み込むことが有効であろう。. るのかもしれない。教育プログラムを考え. また、施設外の面接者から学ぶためには. る際には、若手の困難に応えるレベルだけ. 内観面接者同士のネットワークが必要とな. でなく、今後想定される困難に応えるレベ. る。現在は研修所協会がその役割を果たし. ルで検討する必要がある。そのためにも、. ていると考えられる。ただし、その関係が. 今後は面接の熟達者を対象とした研究を重. 得られない、あるいはすぐに意見を求めら. ねる必要があるであろう。. れない場合に備えて、先輩面接者に聴きた. − 44 −.
(13) 高橋 美保 李 暁 茹. 【参考文献】. 理学会認定心理療法士 資格審査規定.. 1)橋本俊之・真栄城輝明:ブラインド・. http://www.jajp-jung.info/images/. アセスメント法による内観面接者養成. shikakukitei_jajp.pdf, (2020年4月4日. 研修について.内観研究, 15⑴ ; 89-94,. アクセス) 12)日本認知・行動療法学会:認知行動療. 2009.. 法師 資格認定規程. http://jabt.umin.. 2)堀井茂男:倫理アンケートの報告.内. ne.jp/j/data/super-vicer/houshi_. 観研究, 11⑴ ; 29-37, 2005.. shikaku.pdf ,(2020年4月4日アクセ. 3)川喜田二郎:KJ法:渾沌をして語らし. ス). める.中央公論社, 1986. 4)真栄城輝明:内観面接者に資格は必要. 13)大髙奈絵・真栄城輝明:内観面接の. か―コーディネーターの立場から.内. スーパーヴィジョン―臨床心理士の. 観研究, 13⑴ ; 11-16, 2007.. 視点から―.内観研究, 16⑴ ; 65-70, 2010.. 5)真栄城輝明:面接者の条件―臨床心理 士の立場から―.内観研究, 14⑴ ; 25-. 14)蘆立群・森下文・真栄城輝明:集中内 観療法における面接者の存在意義―内. 32, 2008.. 観者の視点を中心に―.内観療法22⑴;. 6)真栄城輝明:内観療法における内観面. 37-46, 2016.. 接士の役割(特集 精神療法における 治療者の心性).精神療法, 41⑸ ; 695-. 15)塚崎稔:面接者の条件―医療の立場か ら―.内観療法, 14⑴ ; 11-16, 2008.. 697, 2015. 7)村瀬孝雄:内観 理論と文化関連性.. 16)吉本伊信:内観の実際.内観研修所, 1981.. 誠信書房, 2007. 8)長山恵一:内観面接者「関係」の相互. 17)吉本伊信:内観への招待.朱鷺書房,. 性―「相手の立場に立つこと」と「期 待に添えなかったこと」.内観研究, 11⑴ ; 61-70, 2005. 9)日本精神分析協会:精神分析家と は. http://www.jpas.jp/whois.html, (2020年4月4日アクセス) 10)日本ユング派分析家協会:日本ユング 心理学研究所「トレーニング・プログ ラムのための規定集」. http://www. ajaj.info/images/kiteisyu_20150317. pdf (2020年4月4日アクセス) 11)日本ユング心理学会:日本ユング心. − 45 −. 1983..
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