トン ネ ル 工 学 論 文 集 第18巻/pp.1-10,2008.11
変 換 解 析 シ ス テ ム に よ る
ノ ン コ ア 削 孔 トン ネ ル 切 羽 前 方 予 測 技 術
Evaluation of Geological Characteristics Ahead of the Tunnel Face Using Both Conversion Analysis of Non-Core Drilling Parameters
And New Parameter "Normalized Drilling Velocity Ratio"
桑 原 徹1・ 畑 浩 二2・ 稲 川 雄 宣3・ 平 川 泰 之4
Toru Kuwahara, Koji Hata, Yusen Inagawa, Yasuyuki Hirakawa
1正会 員 理博 株 式 会社 大林 組 技術 研 究所 地盤 技 術 研 究 部(〒204 -8558東 京都 清瀬 市 下 清 戸4-640) E-mail:[email protected] 2正 会 員 工博 株 式 会社 大林 組 技術 研 究 所 地盤 技 術 研 究部(〒204-8558東 京都 清瀬 市 下 清 戸4-640) 3正 会 員 株 式 会社 大林 組 技 術 研 究 所 地 盤 技 術 研 究部(〒204 -8558東 京都 清 瀬 市 下清 戸4-640) 4正 会 員 株 式会 社 大 林 組 生産 技 術 本 部 トンネ ル 技 術 部(〒108-8502東 京都 港 区 港 南2 -15-2 品川 イ ン タ ー シ テ ィB棟)
The authors propose the new drilling parameter named "Normalized Drilling Velocity Ratio" for
evaluation of geological characteristics ahead of the tunnel face, using conversion analysis of non-core
drilling parameters. This new parameter, enable to neglect the change of feed pressure which gives
large effect to the rock evaluation, is suitable for rock mass classification and also for detecting of fault
zone. We showed the relation between the new drilling parameter and tunnel rock mass classification
using tunnel excavation data, and also discussed relations among the parameter, geology, groundwater,
deformation, and construction methods.
Key Words: tunnel excavation, geological characteristics ahead tunnel face , drilling logging,
normalized drilling velocity ratio, rock mass classification
1.は じめ に 山岳 トンネル の施工 に際 し,ト ンネル の前方 を的確 に 予 測す る ことは安全 で合理 的な施 工を行 う上で不可 欠で あ る.前 方 予測調査 技術 として は過 去 に様 々な手法 が試 み られ て きた1)が,調 査可能 な深度 や精度,現 場計測 や デ ー タ解析 に要す る時間 な どに問題 が あった.結 果 と し て,施 工サ イ クル を乱 さず に常時利用 で き る技 術 として は,油 圧 ジャ ンボに搭 載 され た ドリフ ター を利 用 した ノ ン コア削孔調 査技術(削 孔検 層,穿 孔検層,穿 孔探査 等 とも呼ばれ る)に 絞 り込まれ てきた と言 える. ノンコア削孔調査 は,ド リフ ター に設置 され た専 用の 計測 システ ムを利用 して,削 孔時の機 械デー タを取得 し, そ のデー タか ら切羽 前方 の地質特性 を定量 的に評価す る もので ある.一 般 的に,ノ ン コア削 孔で は削孔速度(穿 孔速 度),打 撃圧,回 転圧,フ ィー ド圧(以 上は計測値) お よび打撃 エネル ギー(削 孔エネル ギー,投 入 エネル ギ 一 等 と も呼 ば れ る ,計 算 値)が 表 示 され る.削 孔 速 度 や 打 撃 エ ネ ル ギ ー の 大 小 関 係,ピ ー ク 変 動 な どか ら地 山 の 良 否(硬 軟,断 層 破 砕 帯 の存 在 な ど)や 地 山 分 類 を判 断 して い る.ノ ン コ ア 削 孔 デ ー タの 評 価 に 際 して の 理 論 的 背 景 は,Hustruid et al2)ほ か に よ っ て 資源 分 野 で発 展 した 削 孔 理 論 に よ る.削 孔 速 度 や 打 撃 エ ネ ル ギ ー に よ る地 山 評 価 は,フ ィ ー ド圧 一 定 の 大 前 提 が あ るが,不 均 質 帯, 亀 裂 集 中 帯,断 層 破 砕 帯 な どの 地 質 の 悪 い 地 山 で は,フ ィー ド圧 が 大 き く変 動 して しま う場 合 が 多 い.こ の よ う な 場 合,削 孔 速 度 や 打 撃 エ ネ ル ギ ー は 大 き な変 動 を 生 じ, 波 形 の ピー ク も多 数 現 れ,ど の 変 化 が 地 山 の変 化 に対 応 して い る の か,判 断 が 難 しい 状 況 に あ っ た. 本 研 究 で は,大 型 花 崗岩 供 試 体(1×1×2m)を利 用 した 削 孔 実 験,現 場 で の 削 孔 実 験,既 往 ノ ン コア 削 孔 デ ー タ の 分 析 を行 い,削 孔 パ ラ メ ー タ の評 価 に 際 して フ ィー ド圧 の 影 響 を 検 討 した.そ の 結 果,フ ィー ド圧 の影 響 を考 慮 した 変 換 解 析 シ ス テ ム を 開発 し,そ の 有 効 性 を確 認、した.
この システ ムは削孔速度 を基本 と した評価 方法 で,フ ィ ー ド圧 の変動 をキ ャンセル した 「正規化 削孔速 度比」 で 地 山 を評 価す る.こ の正規化 削孔速度 比で は判 断 に迷 う よ うなデ ー タの変動 が極 力押 さえ込 まれ てお り,地 山評 価 に直結 した もの と考 えてい る. 2.変 換 解 析 シス テ ム に よ る ノ ン コ ア 削 孔 デー タ 解 析 方 法 (1)削 孔速度 とフ ィー ド圧の相 関関係 削孔パ ラメー タの 中で,削 孔 速度 とフィー ド圧 の 関係 を把握す るた めに,以 下の3つの段階 を経 て検討 を行 った. a)大 型花崗岩供 試体の削孔実験 最初 に大型花 崗岩供試 体(1×1×2m)を利 用 した削孔 実験 を行 った3).実 験 に用 いた花 崗岩 供試 体の物理 力学特 性 を表-1に 示 す.こ こでは,実 験 のパ ラメー ター として フ ィー ド圧,回 転数,打 撃圧,ビ ッ ト磨耗 の4項 目につい て比較 削孔 実験 を行 った.こ れ らの実験デ ー タを利 用 し て,回 転数,回 転圧,打 撃圧,ビ ッ ト磨耗度 が与 え る影 響 を確 認 しなが ら,削 孔速度 とフ ィー ド圧 の関係 を調べ た.図-1は フ ィー ド圧 を異 な る4種 類(2.9,3.8,4.4,5.8 MPa)に 設定 した際の削 孔速 度の変化 を示す これ か ら均 質 な花 崗岩 にお いては,フ ィー ド圧 が減少 す る と削孔速 度 も減 少,逆 にフ ィー ド圧 が増加 す る と削孔速度 も増加 す ることを確 認 した. これ を概念 的に示す と図-2の よ うにな り,均質な岩体 中での削 孔デー タか ら,フ ィー ド圧 と削孔速度 の変化 に 関 して一定 の関係 が得 られ ることが期待 で きる. b)現 場 削孔実験 次に図-2の 関係 を原位 置 で確認 す るた めに,施 工 中の トンネル切羽 で,岩 質条件 が ほぼ同様(流 紋岩質凝 灰岩) と推 定 され る区間 にお いて,フ ィー ド圧 を段階的 に変 え た現場削 孔実験 を実施 した(図-3).実 験対象 とした流 紋岩 質凝 灰岩 の物理力 学特性 を表-2に 示す. す なわち,前 方 がほぼ同一地 山 と推 定 され る切羽 にお いて,削 孔間隔 を1mと して,計3本 の ノンコア削孔実験 表-1 花崗岩の物性試験結果 表-2 流 紋岩 質凝灰岩 の物 性試験 結果 を実施 した.削 孔 ご とに フィー ド圧 を変化 させ た結果 を, 図-3に 示す.図 は,フ ィー ド圧 を4.9MPa(青 色 の実線), 39MPa(橙 色の実線),29MPa(灰 色 の実線)に 設定 した 際の,そ れぞれ の削孔速 度の変化 であ る.破 線 の水 平線 は,20mの 測 定区間 におけ る,各 フィー ド圧 に対す る平 均的 な削 孔速度 を表す.こ れ らの測 定結果か ら,大 型供 試 体 と同様 な削孔速度 とフィー ド圧 の関係 を確認 した. c)既 往の ノンコア削孔デー タの分析 最後 に,付 加 体 の砂 岩頁岩層,層 状 チ ャー ト,緑 飴 層 か らな る トンネル 地 山で実施 した既往 の ノ ンコア削 孔 デー タに関 して,上記a),b)と同様 な観 点か ら検討 を行 った. ここでは,同 じ切羽 か ら前方探 査 あ るいは水抜 き削 孔を 繰 り返 し実施 し,結 果 的 に同一 区間で複 数 回の ノン コア 削孔デ ー タが取 られ た場合 があ る.こ の よ うな同一 区間 で測 定 した ノ ンコア削孔デー タを,ト ンネル 全線(ノ ン コア削孔 の実施 区間約1700m)か ら抽 出 した.そ の結果, 検討対象 とな るデ ー タは5区間(総 延長220m)に お いて認 め られ,そ の うち3区間(総 延長140m,相 関デー タ として は5カ所)に おいて フ ィー ド圧 と削孔速度の関係 が得 られ た.今 回前方 探査 を実施 した地 山は,非 常 に不均質 で破 砕性 で あったた めに,同 じ切 羽か らノンコア削孔 を行 っ て も,前 提条 件 とな る同 じ岩 質条件 を満 たす場 合が限 ら れ ていた ため に,す べ ての該 当区間で必ず しも相 関関係 が得 られ なか った もの と考 え られ る. 図-4に 検討 結果 の1事例 を示す.こ の事例 で は,同 じ 区間で実施 した2本の ノン コア削孔 において,フ ィー ド圧 (上図)が 橙 色 の実線 か ら青色 の実線へ の変化 に対 応 し て,削 孔 速度(下 図)は 橙 色 の実線 か ら青 色の実線 に変 化 した.こ こでは,上 記a),b)の観 点をさ らに進 めて,削 孔 速度Vの 変化∼ フ ィー ド圧Fの 変化(ΔV∼ ΔF)の 相 関 と して捉 えた.フ ィー ド圧,削 孔速度 の平均 的な変化 を灰 色 の実線 で示す と,フィー ド圧 の変化 ΔFと 削孔速度 の変化 ΔVは ほぼ一定 になる.こ のよ うな削孔速 度Vの 変 化 ∼ フィー ド圧Fの 変化(ΔV∼ ΔF)の 相 関 を,5区 間(総 延長220m)の 削孔デー タか ら抽 出 した. なお今 回原位 置地 山で削孔速度Vの 変化 ∼ フィー ド圧 Fの 変化(ΔV∼ ΔF)の 相 関 を抽 出す る場 合は,可 能 な 図-2 フ ィー ド圧∼ 削孔速度 に関す る概 念図
図-1 フィー ド圧 ∼削孔速 度に関す る大型花 崗岩供試体 を用いた ノン コア削孔実験
図-3 フ ィー ド圧 ∼削孔速度 に関す る現場 ノンコア削孔 実験
範 囲 で20∼30m区 間 の 平 均 的 な傾 向 を判 読 した.こ れ は 岩 質 に よ っ て は 削 孔 速 度 の ば らつ き が 大 き い た め に,仮 に5m以 下 の 短 い 区 間 で 多 数 の相 関 関 係 を抽 出 して も, 真 の傾 向 を見 誤 る可 能 性 が あ る と考 え た た め で あ る. (2)削 孔 速 度 ∼ フ ィー ド圧 の 相 関 式 削 孔 速 度 ∼ フ ィー ド圧 の相 関 関 係 は,前 出b)現 場 削 孔 実 験 お よびc)既 往 ノ ンコ ア 削 孔 デ ー タ の 分 析 結 果 を ま と め て,削 孔 速 度Vの 変 化 ∼ フ ィー ド圧Fの 変 化(ΔV∼ ΔF)の 相 関 と して捉 え,回 帰用 デ ー タ を プ ロ ッ トし,回 帰 式 を作 成 した(図-5).す な わ ち, 1)ΔFお よび ΔVは,ΔF→ 増 な らば ΔV→ 増,ΔF→ 減 な らば ΔV→ 減 で あ る.ΔV∼ΔFの 関 係 は,Vあ る い はFの 大 き さ 自体 に は依 存 しない と考 え る. 2)回 帰 用 デ ー タ は,現 場 削 孔 実 験 か ら2点(図-3),既 往 削 孔 デ ー タ(図-4ほ か)の5点 の,合 計7点 と した. 3)回 帰 式 は,ΔV∼ ΔFの デ ー タ分 布 を 最 も 良 く回 帰 出 来 る とい う観 点か ら,3次 の 多 項 式 と した. (3)正 規 化 削 孔 速 度 比 の 定 義 と算 定 削 孔 速 度V(測 定 値)に 対 し て,フ ィ ー ド圧49MPaに お け る 削 孔 速 度 を基 準 と して,こ れ を換 算 削 孔 速 度V'と す る.換 算 削 孔 速 度V'を 求 め るた め に,上 記 の 削 孔 速 度 ∼ フ ィー ド圧 の3次 多 項 式 を補 正 式 と して利 用 す る . す な わ ち,実 際 の測 定 で は フ ィー ド圧 は 常 に 変 動 して い るが,仮 に フ ィー ド圧 を4.9MPaと 一 定 に 出 来 た場 合, そ れ に対 応 す る仮 想 の 削 孔 速 度V(こ こで は 換 算 削 孔 速 度V'と 呼 ぶ)に よ り,フ ィー ド圧 の 変 動 影 響 を除 去 した 条 件 で 地 山 の 評 価 が 可 能 とな るは ず で あ る.換 算削 孔 速 度V'を 求 め るた め に,削 孔速 度Vの 変 化 ∼ フ ィー ド圧F の 変 化(ΔV∼ ΔF)の 相 関 式 を利 用 す る. と こ ろ で,ド リフ ター 削 孔 に 際 して の 最 適 な フ ィ ー ド 圧 は メ ー カ ー(機 種 フ ィ ー ド圧 の 制 御 方 法)や 地 山 の 硬 軟 に よ っ て も異 な り,削 孔 時 の 初 期 設 定 と実 際 に 測 定 図-5 削孔 速度Vの 変化 ∼フ ィー ド圧Fの 変化 (ΔV∼ ΔF)の 相 関 され る結果 も異 な るの で,最 適 な基 準値 は一概 に言 い難 い.こ こでは,今 回の実験 を通 じて多 く利 用 され た初期 設 定の フィー ド圧4.9MPaを 換 算削孔速度V'計 算 時の基 準値 とした.な お 基準 とした フィー ド圧 の値 を変 更す る と換 算削孔速度V'も 変 わ り,最 終的 な指標 であ る正規化 削孔速度 比 も変化 す るので,削 孔 デー タ相 互 の比較 を行 うた めには,フ ィー ド圧 の基準 埴 を常 に一定 にす る必要 があ る. 以下 に計算の 手順 と正規化削 孔速度 比の定義 を示す. ただ し, i:i番 日の削孔デー タ F(i):フ ィー ド圧(MPa) V (i):削 孔 速度(cm/min) V'(i):換 算削孔速度(cm/min) 1)実 測 フィー ド圧 と基 準 フィー ド圧 の差 を計算
(1)
2)換 算削孔速 度V'計 算 のための補正値 を計算(2)
a,b,c,d:係 数 式(2)は,図-5「 削 孔 速 度Vの 変 化 ∼ フ ィ ー ド圧Fの 変 化 」 中 の相 関 式 に相 当 す る. 3)換 算 削 孔 速 度V'の 計 算(3)
(4)
4)正 規化 削孔速度比 の計算 こ こで適 当な閾値 と定数 を設 定 して,新 しい削孔パ ラ メー ター 「正規化 削孔速度比」 を以下 に定義 した. 正規化 削孔速度比NVRの (5)(6)
(7) こ こ で,0.0≦NVR(i)≦1.0 V'(max),V'(min)は,換算削孔速度V'(i)の分布範 囲の中 か ら,削 孔開始時 な どの ノイ ズ除去のた めの上 限閾値お 図-6 原位 置 と大型供 試体 にみ る削孔速度Vの 変化 ∼ フィー ド圧Fの 変化(ΔV∼ ΔF) の違 いよび下限閾値 であ る.Bは,0.0≦ 正規化 削孔速 度比 ≦1.0 とす るた めの任意 の値 であ る.削 孔 デー タの相互比 較 を す るため には,A,Bは 常 に一 定値 にす る必要が ある. (4)ΔV∼ ΔF相 関式 の課 題 大型 花 崗岩 供試 体 を利 用 して行 った各種 条件下 での削 孔デー タ3)を利 用 して,削 孔速 度Vの 変化∼ フ ィー ド圧F の変化(ΔV∼ ΔF)の 相 関を得た.フ ィー ド圧 の変動量 ΔFに 対す る削孔速 度の変動 量 ΔVは,供 試体岩 体 よ り も原位置 岩盤 のほ うが,約2倍 程大 きい(図-6).す な わ ちフ ィー ド圧 の変 動 に対 して,原 位 置の地 山で は,削 孔速度 の変化 が非 常に大 きい と言 える。 これ は供試 体岩 体 は一様均 質,原 位 置岩盤 は岩質 や亀 裂 による大 きな不 均 質性 とい う違 いに よるもの と考 え られ る. 今回 の ΔV∼ ΔF相 関式 は,原 位 置 での流紋岩 質凝灰 岩,お よび 不均質,破 砕 性の砂岩 頁岩層,層 状チ ャー ト, 緑 色岩層 中での削孔 デー タか ら得 られ てい る.ま た相 関 式 は,0.2≦ ΔF≦1.7の 範囲 で得 られ てい る(図-5)が, 実際の削 孔デー タには ΔF≧2℃ の場合 もあ り,誤 差 を生 ず る原 因 となって い る可能性 もあ る.今 後,軟 岩 も含 め て各種 の岩 質,地 質条件で のデ ー タを蓄積 し,今回の ΔV ∼ ΔF相 関式 の適用性 や限界 を把 握す る必要が あ る. 3.変 換 解 析 シ ス テ ム に よ る ノ ン コ ア 削 孔 切 羽 前 方 予 測 の事 例 (1)事 例 研究 の概 要 岐 阜県 の タラガ トンネル 八幡工 区(L=2,074m)に お い て得 られ た既往 ノン コア削 孔デー タに対 して,前 出 の変 換解 析 を行 った.地 質 条件 は,付 加 体 の砂岩 頁岩,層 状 チ ャー ト,緑 色岩 類 で,全 体 と して不均質 で破 砕 帯状 を 呈す. ノ ンコア削孔デー タの解 析お よび分析 ・考察 は,① 変 換解 析 システムに よる正 規化削孔速度 比の算 出,② 正規 化削 孔 速度比 に基づ く地 質特 性の考察 ③ 正規化 削孔速 度比 に基づ く地山分類表 の作成,④ 推 定地 山分類(ノ ン コア削孔)と 実績 地 山分 類(施 工実積 に基 づ く支保 パ タ ー ン)の 対応性 検証 ,の 順 に行 った. 解 析結 果 は,一 般 的な1回 の ノン コア削孔(L=30∼ 55m)毎 に結果 を示す のではな く,調査 区間全線 を通 して 示 した(図-7∼ 図-9). (2)正 規 化削孔速度 比 と トンネル地山の地 質 ノ ンコア削孔デ ー タか ら算 定 され た正規化 削孔速 度比 と切 羽 の地 質観 察 に よって確認 され た地質 構成 を図-7 に示す.地 質構成 は5つ に分 け られ,岩 質の特 徴は以下 の通 りで ある. ① 砂岩 層 砂岩 層 中には薄層 の頁岩,軟 質 の頁岩,薄 い破砕 部 を しば しば含 む。 ② 砂岩 頁岩互層 砂岩優勢 の互層 と,頁 岩優 勢 の互層 があ る. ③ 層状 チ ャー ト層 層状 チ ャー ト,塊状 チ ャー トを主 体 とす る.層 状 チ ャー トには薄層 の頁岩層 を伴 うこ とが 多 く,層 状チ ャー トと頁岩の互層 にな る場 合 もある. ④ 緑 色岩 層 塊 状 あるいは層 状 の緑 色岩(玄 武 岩類) を主体 とす る.頁 岩,薄 層粘 土層 を挟 んだ り,赤 褐 色 の 変 質 を呈す る場 合もあ る. ⑤ 泥質海 底 地 滑 り堆 積物 層状1脆 弱,粘 土化,不 均 質 な泥 質堆積 物か らな る.粘 土 層や緑色岩 類を頻繁 に 含 む. 正規化削孔 速度比 は,図-7か ら概 ね0.25∼0.50の 範 囲 に収 ま る.正 規 化 削孔速度 比は地 山が悪 い ほ ど大 き く, 地 山が良 いほ ど小 さい. 正規 化削孔速 度比 の変動 を見 る と,正 規化 削孔 速度比 が平 均値 に対 して土0.025程度 の範囲 に収 ま るあま りば ら つ かない部分(図-7の 距離約420∼700mな ど)と,正 規化 削孔 速度 比 が平均値 に対 して スケール オーバ ーす る よ うな ノイズ的 な値が頻発 す る著 しくば らつ く部分(図 -7の 距離約770∼800mな ど)と があ る .こ こでは便宜 上,前 者 を"Noiselessな部分",後 者 を"Noisyな 部分"と 呼ぶ. 設計用 地質断面 図で は,弾性 波探査,高 密 度電気 探査, ボー リング調査 の結果,図-7に 示す6箇 所 で断層破砕 帯 (F2∼F7)が 想 定 され た.掘 削時 の切 羽観察 で確認 され たの は,3箇 所(F1,F3,F4)で あ る.正 規化 削孔速度比 の 大 きな ピー ク("Noisyな 部分")と して,距離770∼800m, 1100∼1170M,1300∼1400m付 近 の3箇 所 が代表 的であ るが,こ れ らはF1,F3,F4断 層 にそれぞれ対応 している. す な わち,"Noisyな 部分"は 破砕 帯 による不均質性や 力 学的異方性 を,"Noiselessな 部分"は岩盤 の相対 的 な均 質 性 を示唆 してい る もの と推定 され る. 正規 化 削孔速度 比 の"Noisyな 部 分"に関す る具 体的 な 地質状況 の説 明 として,以 下 にF1,F3,F4断 層 な どの特 性 を示 す. ①F1断 層 頁岩優 勢の砂岩 頁岩 互層 か らな る.頁 岩部 では軟質化 ∼粘 土化 が顕著 であ る.断 層破砕 帯 の走 向は トンネル 軸 に平行 に近 く,砂 岩 頁岩 互層 と層状 チ ャー ト を境 界す る断層 で ある.角 礫 を介在 した粘 土 を挟 む破砕 帯 であ る. ②F3断 層 層 状 チ ャー トと砂 岩 頁岩 互層 を境界す る断 層 であ る.断 層破砕 帯 は,砂 岩 頁岩互層側 で顕著 で,幅1 mの 脆弱粘 土化 した頁岩 層が数 列 に分 岐す る.切 羽 中央 に トンネル 軸 にほぼ平 行に連続 す る粘 土化 帯が見 られ る. ③F4断 層 頁岩 優勢 の砂岩 頁岩互層 で,頁 岩部 では粘 土化 が著 しく,砂 岩部 も亀裂が多 く破砕 状 を呈す る.チ
ャー ト部は破砕 化 し,亀 裂 内は湿潤状態 で粘 土を挟 む. ④F5∼F7断 層 これ らは正規化 削孔速 度比の局部 的 な ピー ク として現れ てお り,緑 色岩層 や泥質 岩海底地 滑 り 堆積物 中の脆弱部 に該 当す る もの と判断 され る. (3)正 規 化削孔速度比 による地山分類 正 規化 削孔速度 比の増減 パ ター ンは,掘 削実績 に よる 地 山分類 の変動 と良 く対応 している(図-7)こ とを利 用 して,正 規化 削孔速 度比 に よる地 山分 類(案)を 作成 し た(表-3). 正規化 削孔速度比 がば らつか ない"Noiselessな部分" を標 準 として,ま ず 地 山分 類(B∼DII)∼ 正規化 削孔 速 度比 の関係 を得た.次 に正規化 削孔速 度比 が非常 にば ら つ く"Noisyな 部分"に 関 しては,正 規化 削孔速 度比 か ら 判定 され る標 準的 な地 山分類 の ランク よ りもワンラ ンク 下げ るこ とと した. 評価 に際 して の この よ うな差別化 は,"Noiselessな 部 分"は相対 的に均質 な岩盤,"Noisyな 部分"は破 砕帯 に よ る不均 質性や 力学的異 方性 を示す 岩盤 とい う,切 羽状 況 等か らの定性 的な判断 に よってい る. 表-3の 地 山分 類表 に基 づ いて ノン コア削 孔調査 区間 の推定地 山分類 を求 めた.距 離約270∼2100mの 内,距 離 300∼400m,1800∼2000mを 除 く区間 で,正 規化 削孔速度 比に よる推 定地 山分類(図-7赤 実線)と 掘削実績 に よ る地 山分類(図-7青 実線)で 良好 な対応 が認 め られ た. (4)正 規 化削孔速 度比 と従来の 削孔パ ラメー ター 正規化 削孔速 度比 と従 来の削孔 パ ラメー ター(特 に, 削孔速度,フ ィー ド圧,打 撃エネル ギー)の 比較 を図-8 に示す.図 か ら,正 規化 削孔速度 比は,削 孔速度 や打撃 エ ネル ギー と比 べて,そ の変動傾 向や ピー クの有 無が分 り易い と考 え られ る. 1回 の ノン コア削孔の記録(L=30∼55m)に は有意性 を予想 させ る削 孔速度や 打撃エネル ギー の変動 も しば し ば認 め られ る.また図-8の よ うに全 区間 を通 じてみ る と, DIIへ と地 山が悪 くなるほ ど削孔速度 は速 くな る傾 向 に ある,低 フィー ド圧 は比較的DIIに 多い,大 量 ・突発湧 水 の発 生 は全体 として はフ ィー ド圧 の低 下や削孔速 度の 低 下 とは関係 が無 い,な どの特徴 が認 め られ る.し か し, デー タのば らつ きや ピー クの多 さか ら,1回 毎 の削 孔デー タ と全 区間を通 じた削孔デ ー タとを,統 一 的に評価す る こ とは困難 で あった. この よ うな事態 に至 った原 因 と しては,フ ィー ド圧 の 変動 の大 き さが考 え られ る.今 回の地 山は,塊 状 と層 状 岩盤 の繰 り返 し,粘 土化帯,亀 裂の多 い破砕 性岩 盤 な ど の非 常に不均 質な岩盤 か ら構成 され てお り,安 定 したフ ィー ド圧 で削 孔す るのは困難 であ った.以 上 の よ うな理 由によ り,前 方 予測 に適 用可能 な詳細 な地 山分類 基準 の 表-3 ノンコア削孔に よる地 山分類(案) 作成 は,今 回 の削孔速 度,打 撃 エネル ギー か らは 困難 と 判断 した. (5)正 規化削 孔速度比 と補助 工法 該 当地 山は,全 体 として破砕 帯状 を示す付加 体 の堆積 岩 類 な どで あ るた めに,大 量湧 水 ・変 状 ・崩落 を生 じ, 各種 の補 助工法 が施 工 された.こ こでは正規化 削孔速度 比∼切羽 の地質 ∼湧水 ・変状 ・崩 落状 況∼補助 工法実施 内容 の関係 について整 理 した(図-9). 大 きな補助 工法は5回 実施 された.こ れ らは,100mm 以上の 内空変位 の発生,数m3の 土砂流失 ・土砂崩 壊,50 ∼300リ ッ トル/分の大量湧水 に伴 って ,縫 い返 し,シ リ カ レジ ン注入式 フォ アポー リング,長 尺 ロ ックボル トの 増 し打 ちが施 工 された. 変状個 所の地質 状況 を以下 に示 す.以 下の変状 区間① ∼⑤ の番号 は,図-9中 の①∼⑤に対応 している. 変状 区間①(F1断 層)頁 岩優 勢の砂岩頁岩 互層か らな り,頁 岩 部は軟質化 ∼粘 土化が進 んで い る.断 層破 砕帯 の走 向は トンネル 軸 に平行 に近 く,砂 岩 頁岩互層 と層状 チ ャー トを境界す る断層 で,角 礫 を介在 した粘 土を挟む 破砕 帯で ある. 変状 区間②(F4断 層 隣接部)F4断 層 に隣接す る区間で, 粘 土化 と鏡 肌が顕著 な頁岩優 勢互層 と軟弱 な 白色凝 灰岩 層 が特徴的で ある.今回確 認出来た3本 の断層 の中では, F4断 層 の規模 が最 も大 きい.断 層 区間では,頁 岩部 は粘 土化 が著 しく,砂 岩部 も亀裂が 多 く破 砕状 を呈す る. 変状 区間③,④,⑤ 凝灰岩 質 の緑 色岩 が泥質岩 中に 混在 す る,泥 質の海底 地滑 り堆 積物 で ある.明 確 な岩種 区分 が難 しい.全 体 と して,顕 著 な変 質,粘 土化,脆 弱 化 を示す.厚 さ数十cmの 粘 土層 としば しば互層 を呈す る. 変状 区間で は粘 土化,脆 弱化 した凝灰岩 質∼頁岩 質 が相 対的 に多い. 以上 か ら,変 状 区間① ②は,断 層破 砕帯 に伴 う頁岩部 の脆弱化,変 状 区間③④ ⑤は海底 地滑 り堆積 物 中の脆弱 化 した凝灰岩 質∼頁岩質 の部分 に対応 してい る. これ らの5箇 所 を正規化 削孔速度 比 との関係 で整理す
る と,1)地山が急激 に悪 化 して い く場 合(図-9図 中①, ②,③),そ の 中で も大量湧水 を伴 う場合(②,③),2)DI ∼DIIの 悪 い地 山が長 い区間続 く場 合(図-9図 中④ , ⑤)の2ケ ー スに分 け られ る.正 規化 削孔速度比 に よる と地山が急激 に悪化 した区間は6箇 所認 め られ る(図-9 中の桃色楕 円で示 した 区間)が,そ の内3箇 所(①,②, ③)で 補助 工法 が施工 された.ま た変 状 区間④,⑤ は, 高 い正規化 削孔速 度比 が長 く続 く区間 の 中で,局 部的 な ピー クに対応 してい る. 以 上か ら,補 助 工法が 実施 された5箇 所 は,断 層破 砕 帯や 海底地 滑 り堆積 物 の脆 弱部 と対応 してお り,正 規化 削 孔速度比 の変動 パ ター ン とも対応 してい る.こ れ らの 事 実か らも,正 規 化削孔 速度比 に よる トンネル 地 山の前 方予測 は有用 な方 法 と考 え られ る. 4.ま とめ 本研 究 では,ノ ンコア削孔の削 孔実験 お よび デー タ分 析 に基づ いて新 しい削孔パ ラメー ター を導入 し,事 例研 究 を実施 した.事 例研 究 では,地 質,変 状,補 助 工法 な ど との関係 も精査 し,新 しい削 孔パ ラメー ター 「正規化 削孔速 度比」 の有 効性 を検証 した.す なわち, 1)ノ ン コア削孔切羽 前方予測 に際 して は,フ ィー ド圧 の 変動影 響 を考慮す るこ とは不可欠 で ある.今 回新 た なパ ラメー ター と して,フ ィー ド圧 を考慮 した 「正規 化削孔 速度 比」 を提 案 した.こ れ は削孔 速度 を基本 としたパ ラ メー ターで あ る.フ ィー ド圧変動補 正 の効 果 として,削 孔速度 や打撃 エネル ギー に見 られ る大 きな変動 と多数 の ピー クが低減 され,判 断 が容易 なデー タ とな った.正 規 化 削 孔速度比 の増減傾 向は,切 羽 の地質観 察結果 お よび 掘劇実績 に よる地 山分 類 の変化 と対応 す る.こ れ か ら, 正規化 削孔速度比 ∼地 山分類 との対応表 が作成 可能 であ る. 2)ノ ン コア 削孔 に よ る前方予 測 を一 回 の予測 区間(約 30m∼50m)の み で評価 す ると,判 断 を誤 る場合 も多い と 考 え られ る.し たが って,実 施 済み の削孔デ ー タに,最 新 の 削孔デー タを追 加 しなが らデー タ編集 を行 い,削 孔 デー タ全 体 の中で の該 当区間 の地山評 価 を考 え るべ きで あ る.今 回 は トンネル の ほぼ全 線 区間 につ いて,正 規化 削孔速度 比に よる統 一的な地 山評価 をお こなった. 3)正 規化 削孔速度比 ∼切 羽での地質観 察結果∼湧水 ・変 状 ・崩 落状況 ∼補助 工法の 関係 を整理 した.補 助 工法が 実施 され た 区間は,断 層破砕 帯や 海底地滑 り堆積物 の脆 弱部 と対応 してお り,正 規化 削孔速 度比 の変動 とも対応 して い る.こ の よ うな情報 のデー タベー ス化 によ り,切 羽前方予 測の有効性 を高 めるこ とが出来 る. 謝辞:本 研 究結果 の内容 を御 理解 いた だき,論 文 発表 を許可 して頂 いた岐阜 県県 土整 備部道 路建設 課 の関係 各 位 に深 い感謝 の意 を表 します.ま た古河 ロ ック ドリル株 式会社 殿 には ドリフター のメカニ ズムや削 孔理論 に関す る情報提 供等 の御 協力 を頂 きま した.記 して感 謝 の意 を 表 します. 参 考 文 献 1) ジ ェオ フ ロンテ研究会 新技術相 互活用分科会 前方 探査WG: トンネル切羽 前方探査技 術 技術資料, 1997.
2) W. A. Hustrulid, C. Fairhurst: A theoretical
and experimental
study of the percussive drilling of rock , Int. J. Rock
Mech. Min.
Sci, Vol.
8, pp. 331-333, 1971.
3) 稲 川雄宣, 畑 浩二, 桑原 徹, 中岡健 一: ノ ンコア
削孔 に よる切羽前 方予測技術 の基礎 的研 究-大 型花
崗岩供試 体 を利用 した削孔実験-, 土木学会 トンネル 工学委員 会, トンネル工学 報告集第16巻, pp. 107-H2, 2006.