平成20年1月 (2008)〕
原 著
父 親 の 育 児 幸 福 感
一育児 に対す る信念 との関係―
長野県看護大学
清水
嘉子
抄 録 本研究は育児 している父親の肯定的な情動 を「育児幸福感」 とし,肯
定的な情動 を感 じる際の 事情か ら,育
児幸福感 と育児事情の実態 を明 らかにした。さらに,育
児幸福感 と育児信念 との検 討 を行った。6歳以下の乳幼児の父親に調査用紙 を配布 し,La2arusの理論による7項 目の肯定的 な情動である安心,希
望,愛
情,喜
び,感
謝,同
情,誇
りについて育児中に感 じる頻度 を4段階 評価 した。また,そ れぞれの情動 を感 じる育児事情 について自由記述 を求めた。調査用紙は250名 に配布 し159名 か ら回収 された。 結果 として欠親が育児中に感 じる肯定的な情動の中心 は,「同情」「誇 り」「安心」「希望」であ り,つ
いで「感謝」があげ られ,「喜 び」「愛情」は少なかった。 また,父
親の育児中に感 じる各 情動頻度 と各情動事情の記述件数 とは必ず しも一致 しなかった。育児幸福感 を感 じる際の育児事 情 は 12項 目に分類で きた。主 とした育児事情 は,「子 どもの成長・発達・健康」お よび「子 ども の しぐさ」などの子 どもを中心 とした構成であ り,そ
の他 として「周囲の援助・声かけ 。つなが り」などであ り,子
どもや妻に対する感謝や同情 としての記述が多 く認め られた。また,育
児に 対す る信念が今後 もかわ らない と信 じることが育児幸福感 とわずかなが ら関係 していた。 キーワー ド :父 親,母
親,育
児幸福感,育
児信念,育
児事情I.緒
言 親に とって子 どもを育てることは,人
間性 を豊 かに し,生
きる実感が湧 き,発
達課題 を達成する 過程 として意義深い行為である。わが回の父親に 関す る研究では,1990年代か ら積極的に取 り組 ま れているが,そ のほとんどは家事・育児の協力,役 割適応,父
性意識の発達,子
どもの発達や母親の 育児行動への影響 な どに関す る ものであ る1∼ 11)。 海外では父親の育児へのかかわ り方 など父親 と子 どもとの関係研究 鬱ヽ131が行われている。 しか し, 父親の育児参加が増えつつある今 日,父
親が どの ような経験 をしているのか十分解 明されていない のが現状である。 また,育 児に対する支援研究は,育 児ス トレスの 対処や ソーシヤルサポー トの視点か ら行われてい るが,育
児の楽 しみや喜 びなどの育児幸福感 を高 559 める視点か らの研究は少ない。筆者は育児ス トレス の研究H151において Lazarusの ス トレス理論16∼ lSlを用い,ス トレスを否定的な情動 としてとらえ , 否定的な情動 を感 じる際の育児事情 に焦点 を当て た。Lttarus 6.Ю)は,情動 には肯定的な情動 と否定 的な情動があるとしてお り,肯
定的情動研究につ いては否定的情動研究に比べ十分に解明されてい ない現状にある。父親の子育てに伴 う肯定的感情 を明 らかにすることにより,父
親 と看護者の接点 が少ない中で,よ り有効 な支援 を検討す るうえで 意義があ り,父
親の育児研究の課題 と考える。 幸福感は,一
般的に「心の充足感 を中心 とした 本人が現時点で実感す る感情」ととらえることが で き,Argyle‐'Olは幸福 について「情緒的側面 と, 認知的・熟慮的側面 に大別で きる」としている。幸 福感の研究は,SWB(SubieCtive well― being:主観的幸福感)研 究 として特 に
QOL(Qu』
五y of hfei 生活の質)研
究の発展の中で生 じている。人間の 豊か さの研究の中で,SWBは
個人の認知構造や心 理状態 を反映するQOLの
より主観的側面を示す も の と考えられている〕)。 本研究では育児中に感 じる肯定的な情動 を「育 児幸福感」として とらえ,父 親の育児幸福感 と,幸 福感 を感 じる際の育児に関連 した出来事 (育児事 情)を 明 らかにす ることを目的 とした。さらに,本 研究で明 らかにされた育児幸福感 と認知や評価に 影響す ると考え られている信念 “∼pが
関連 して いるのではないか との仮説に立ち検討 を行った。 Ⅱ.研
究方法1.調
査対象 6歳以下の乳幼児 をもつ父親 250名2.調
査方法1)調
査施設Stt Y,H幼
稚園 (2個所)2)調
査期間 平成 16年9∼ 10月3)倫
理的配慮.
本研究の調査 に先立 ち劫稚 園長に調査の 目的, 方法,意
義,守
秘義務,研
究の協力お よび協力拒 否が可能であることなどを説明 し,研
究の協カヘ の承諾 を得た。対象者に文ヽすしては本調査の 目的 , 方法,意
義,守
秘義務,研
究の協力お よび協力拒 否が可能であること,特
定の個人的情報が遺漏 し ない よう処理する旨 (コー ド化 し廃棄する)を
明 記 した依頼文 を作成 した。依頼文 と調査用紙 を園 教諭 よ り母親に配布 し,夫
(父親)に
渡 して もら うことを依頼 した。調査用紙の回収は国で行われ た。研究への同意は調査用紙への回答 をもって同 意の意思表示 と判断 した。3.調
査内容1)対
象者の属性 父親の年齢,子 どもの数,育 児に紺する考え(育 児信念)や
その強さの回答 を求めた。2)調
査項 目 信念 とは,「理屈を越 えて堅 く信 じ込むこころ」 と一般的に考えられ,本
研究では育児信念を,育
児 に対す る考 え とその強 さ (変化の不変性)と
と らえた。そこで,「子 どもを生 む価値」盟'および「 よ い親の概念」20から育児に対する考え方 を参照 と して,信念の基本概念 として考えられている態度, 努力,価
値,役
割,愛
情 に該当する項 目を各1項 目ずつ研究者が作成 した。ただ し愛情 については さらに1項目付加 し6項目とした(表5)。育児信 念6項
目に対す る考えとして2選
択肢 (“賛成", “反対"),考
えの強さとして5選
択肢 (“絶対変わ らない",“たぶん変わる",“わか らない",“たぶ ん変わる",“絶対変わる",“絶対変わる")と した。 また,父
親が育児中に経験する肯定的な情動に ついて,Lazarusの理論による7項 目に着 日し(①安心,② 希望,③愛情、④喜び,⑤感謝,⑥ 同情
,②誇り),各 項目に紺する頻度を
4段階
(“いつも
あ る"“あ る程 度 あ る"“た まにあ る"“まった くな い")で回答 し,そ れぞれ に想 い起 こ した育児事情 の 自由記述 を求めた。4.デ
ー タの分析方法 収集 した 自由記述 の内容 を研究者が 1つ の内容 を意味す る記述文 に分 けて整理 した。 また,親
と しての共通点,相
違点 を明 らか にす るため母親 の 育児幸福 感 で明 らか に された14分類 熟)を基準 に しなが らも,分
類 が難 しい内容 は新 しい項 目と し た。分類 され た結果 に対 して,母
性看護領域 の教 員 に確 認 を求め,一
致 した結果 を最終分析結果 と した。一致 しない項 目につ いて は,話
し合 い合意 を得 た。さ らに,情
動 の頻度 (“いつ もあ る"を 4 点,“あ る程 度あ る"を
3点,“た まにあ る"を
2 点,“まった くない"を
1点とす る)と
育 児信 念 (“賛成"2点
,“反対"1点
とす る),育
児信 念 の 強 さ(“絶対 変 わ らない 力 を5点,“たぶ ん変 わ る" を4点
,“わか らない"を 3点,“たぶ ん変 わ る"を 2点,“絶対 変 わ る"1点
とす る)と ピア ソ ンの相 関分析 を行 った。7項目の情動 の頻度 と6項目の 育児信 念 の強 さの相 関分析 を行 った。 また, 7項
目の情 動 の頻 度の合計値 を育 児幸福 感 と して, 6 項 目の育児信念 に対す る考 え方 の合計値 お よび信 念 の強 さの合計値 の相 関分析 を行 った。 Ⅲ.結
果1.調
査用紙 の 回収率 調査用紙 の 回収 は 159名,有効 回答 は 159名,回 収率 は 63.6%で あ った。2.対
象の属性 父親 の年齢 の平均値 は367■8.6歳 (最小値 26 歳,最大値 53歳),子どもの数の平均値 は1.7± 1.6平成 20年 1月 (2008)〕 人 (最小値1人
,最
大値4人)で
あ った。3.父
親の育 児幸福 感1)育
児 中 に感 じる肯定 的 な情動 の頻度 育児中に感 じる①安心,②
希望,⑤
愛情,①
喜 び,⑤感謝,⑤
同情,⑦誇 りの情動別頻度では,各 平均値が安心 は24±09,希
望 は2.3■ 0.9,愛 情 は 19± 0.9,喜 びは 19■o8,感
謝は2.1±08,同
情 は32±11,誇
りは2.7± 1.0であった。2)父
親の育児幸福感 を感 じる際の育児事情件数 とその内容 ①情動別事情件数 (表1) それぞれの情動 を感 じる際の育児事情 として自 由記述 に上が った内容は,喜
びが95件 (202%)、 愛情が85件(180%),安
心が78件 (16.7%),感 謝が72件 (15,3%),希望が72件(153%),誇
り が46件 (9,8%),同情が23件 (4.9ο/ο),父
親の感 じる情動別事情数は計471件であった。 ②育児事情別内容 とその頻度 (表2) 自由記述の内容 を分析 した結果,育
児幸福感を 感 じる際の事情 を 12項 目に分類で きた。 育児幸福感 を感 じる際の事情別内容は,「子 ども の成長・発達・健康」 として,子
どもの成長 を感 じたとき,以
前 よ り進歩 してで きるようになった とき,新
しいことがで きるようになったときなど の事情があ り,147件
(31.2%)と ,もっとも多 く No 事 情1
子 どもの成長・発達・健康2
子 どもの しぐさ3
子 どものイ子在4
周囲の声かけ 援助・つなが り5
子 どもとの コミュニケーション6
子 どもの優 しさ 。愛情7
子 ども・自分・家族の将来8
自分の生 き方・成長9
自然に感 じる10
家庭円満・ 日常生活H
子 どもに必要 とされる12
物事への共感 561 の育児事情 を含んでいた。ついで,「子 どもの しぐ さ」として,かわいい笑顔,寝顔 を見たとき,習 っ たことを恥ずか しそ うに一生懸命やってみせ る, 遊んでいる姿などで68件 (14.4ο/ο)で
あった。さ らに,「子 どもの存在」として,生
まれて きて くれ てあ りが とうの気持ち,子
どもがいるか ら頑張れ る,生
きていける,救
われるなどで67件(142%)
であった。これ らの3項目が育児事情全体の約60%を
占めていた。 また,件数は少ないが「周囲の援助・声かけ・つ なが り」 として,妻
の頑張 り,妻
が一生懸命育児 している,妻
が 自分ので きない分 を補って くれる など妻に対するもので39件 (3.3%),「 子 どもとの コ ミュニケーション」 として,子
どもと遊んでい るとき,一
緒 にお風 呂に入った とき,子
どもに接 した とき,顔を合わせたときなどで32件 (6.8%), 「子 どもの優 しさ・愛情」 として,親
の こ とを気 遣って くれた とき,プ
レゼ ン トを くれた とき,兄
弟 をかわいが っているときな どで29件 (6.3%), 「子 ども,自分・家族の将来」として,子 どもの将来 が楽 しみ,こ
の先 どのように育って くれるか,子
どもの将来に夢 を感 じる,元
気 に育 ってほ しいな どで25件 (5,3°/ο),「自分の生 き方・成長」として, 自分 自身が成長 したと思えたとき,自分の気づか ないことに気づかされたとき,自
分が親に育て ら 表1
父親の育児幸福感 を感 じる際の情動別事情数 件 数 喜 び 愛 情 情動項 目 感謝 希 望 誇 り 同情 安 心 3 4 0 7 1 5 0 0 0 2 0 0 合計件数471(%)
95(202) 85(180) 78(16,7) 72(15,3) 72(153) 46(98) 23(49)No 事 情
1
子どもの成長 発達 健康 表2
父親の育児幸福感を感 じる際の事情別内容 と件数 件 敷 合計件数 (96)宅
itti鶴
亀
繰堤税 憩ま金
Fitモ濫 報そ
こ
隠
!曳洗鯨漏憂爾足И
7血
か
なった。 かわいい笑顔.寝顔 を見た とき。 習 つた こ とを恥ず か しそ うに,一生懸 命や って 見せ て くれ る。遊 ん でい る姿。子 どもら しい しぐさを見た とき。子 どものか わいい部分 を見た とき。頑張 ってや って いる 68(144) 姿。 無邪気 な姿. 生まれてきて くれてありがとうの気持ち。子どもがいるからがんば,とる。子どもがいるから生きてい ける。子どもにつらいときなど教われることがある。子どもにス トレスを忘れさせてもらうことがあ る。疲れているとき気分転換になる。子どもがいるから今の自分がある。事ととしての喜びを感じさせ てくれる。 67 (142) 妻のが んば り。茅ズが 一生懸 命育児 して い る。妻が 自分ので きない分 を補 って くれ る。毎 日長 い時 間 を 育児 にす筆やす妻 に感謝。妻や零 'に 助 け られてい る。親や妻 の気持 ちに感謝。妾や周 囲の 人に助 け られ 39(83) てい る。 周囲 のすべ て とのlヂl係が あ る。 内 容2
子どものしぐさ 3 子 どもの存 在 4 周囲の声かけ1丼ぇ助 つなが り 5 子どもとのコミュニケーション 子どもと遊んでいるとき。一緒にお風呂にはいったとき。子どもに接 したとき。顔を合わせたとき。抱 きしめたとき。話をしたとき。「パパお帰 り」というとき。信頼I刃係を感じたとき。泣いているのをあ 32(68) やして泣きやんだとき。甘えてきたとき。 #見のことを気遣ってくれたとき。ブレゼントをくれたとき。兄弟をかわい力iっているとき。自分のこ とを子どもが考えてくれること。自分のためにお菓子を残 しておいてくれたとき。送 りと出迎えをい つもしてくれる。他人に親切にしているとき。生き物を大切にしている。子どもからの感謝の言葉を 開いたとき。子ども同士の友情を見たり聞いたりしたとき。お母さんを助けているとき。 29 (62) 子 どもの将 来が楽 しみ。 この先 どの よ うに育 って くれるか。子 どもの将 来に夢 を感 じる。元 気 に育 っ てほ しい。何 か スポー ツをや ってほ しい。大事 なこ とを引 き継 いでほ しい。 どん な子 に育 って くれ る か楽 しみ。子 どもには無 限の可能性 が ある。健康 で 人に迷惑 を力Чすない ような人間 にな ってほ しい。明 る く優 しい思 いや りのあ る子 になって ほ しい。何事 も全力 でや ってほ しい。平均 に何 事 もで きれ ばい 25 (53) 自分 自身が成長 した と思 えた とき。 自分 にかけてい るこ と,気づ か ない部分 を気づ か され た とき。 自 分 も子 ども も成長 で きる。 自分が オ見に育 て られ たこ と。 自分 自身 を見直す いい機 会 を与 え られた。逆 に教 え られ るこ とが あ る。親 と して どんな こ とで もす る。 20 (42) いつて もどん な ときで も。ま くわか らないがいつ もかわいい。あた り前 の こ と。普通 の親の気持 ち。何 とな く。 親 と しての本能。 とにか く大切。 家族 を もった こ と。家族の存在が徳 しにな ってい る。家 族が いつ も一緒 にい る とき。 日々生活。 1日 何 もな く元気 でい る こ と。 税 を慕 って くれ る。標 られ る とき。「 パパ」 とい って くっつい て きた とき。「抱 っ こ して」 とい うとき。 助 け を求め られ た とき。 子 どもに とって 自分が大切 な存在 だ と感 した とき。 妻 は大変 であ る。子 どもが母 親 に叱 られてい る とき。祖 父母 に叱 られてい る とき。子 ど もが他 の子 に うま くとけ込め ないで い る とき。一 人っ子 なので寂 しいので は。子 どもが悲 しい,寂しい思 いを した とき。自分 の時代 と違 いすべ ての面でハ イ レベ ルで就職活動 も大変。育児で疲 れ た妻の顔 を見た と き。 妻 が育 児 に追 われ母 親 同士の交遊が なか なか とれ ない こ と。周囲の 人の育 児 に関す る喜 びや楢み に同 感す る。性 格 的 にマ イナ スの要素が 自分 と同 じと感 じた とき。 13 ( 28) 12 ( 25) 12(26) 7(15) 471 6 子 どもの優 しさ・養情 7 子 ども 自分 家族の将来 8 自分の生 き方 成長 9 自然 に感 しる 10 家庭 円清 日常 生活 11 子 どもに必要 とされ る 12 物事へ の共感 れたことな どで20件 (42%),「自然 に感 じる」と して,い
つで もどんなときで も,よ
くわか らない がいつ もかわいい,あ
た り前のこと,何
とな くな どで 13件 (28%),「家庭円満,日常生活」として , 家族 をもったことや家族の存在が癒 しになってい る,家族がいつ も一緒 にいるな どで 12件 (25°/ο), 同 じく「子 どもに必要 とされ る」 と して,親
を 慕 って くれる,頼
られるとき,「パパ」といったと き,抱
っこ して とい うときなどで 12件(25%)で
あった。 もっとも件数の少なかった育児事情 は,「物事 へ の共感」 として,妻
は大変である,子
どもが母 親や祖父母 に叱 られているとき,子
どもが他の子 に うまくとけ込めないでいるとき, 1人
っ子なの で寂 しいのではなどで7件 (1.5%)であった。表 1の すべての情動反応 を伴 う育児事情は「子 ども の存在」であった。ついで「子 どもの成長」「子 ど ものしぐさ」「子 どもの優 しさ 。愛情」「自分の生 き方・成長」であった。 また,471件 中の育児事情間の関連では,自由記 述の同一文章内に関連性をもった記述の表記はみ られなかった。平成20年1月 (2003)〕
4.父
親の育児幸福感 と育児信念1)育
児信念に対する考え方 とその強さ (表3) 育児信念に姑する考え方で賛成が過半数を示 し ていた項 目は,「父親は子 どもに対 し愛情 をいつ も 抱 いている ものだ」が748°/ο,「子育ては自分 に とって価値がある」が74.2%,「 父親は子 どもに対 して無償の愛 を与えるものだ」が65.4%,反
対が 過半数 を示 していた項 目は,「子育ては女の仕事 だ」が742%,「
子 どもに対 して完璧 な父親でなけ ればな らない」が660%で
あった。「子 どもが よく 育つ も悪 く育つ も100°/ク親の努力にかかっている」 に反対 した ものが 45.9%を 占めていた。 また,信
念の強 さにでは,す
べ ての項 目におい て「絶対変わ らない」 と「たぶん変わ らない」 を 含めると最大で635ο/οか ら最小で416%を
占め,父 親の信念 に対す る変化の可能性 は低いことが示 さ れた。 5632)育
児幸福感と育児信念 (表4,5)
育児幸福感と育児信念の強さに弱い相関が認め られた(r=0.226,p<005)。
育児信念の強さと 各情動頻度の相関では,「子どもに姑 して完壁な父 親でなくてよい」の信念に対 して変わらないとす る父親は「希望」 と弱い相関が認め られた(r=
0.221,p<0.05)。 「子 どもに対する無償の愛を抱 き与えるものだ」の信念に対 して変わらないとす る父親は「希望」(r=o.259,p<0.01),「
愛情」 (r=0353,p<0.01),「 感謝」(r=o.301,p<0.01), 「誇 り」(r=o253,p<0,01),「
同情」と弱い相関 が認められた (r=0.199,p<0.05)。 「子 どもに対 し愛情をいつも抱いているもの」の信念に対 して 変わらないとする父親は,「愛情」(r=o,247,p<
0,01),「感謝」と弱い相関が認められた(r=0.291, p<0.01)。 「子育ては自分にとって価値がある」 の信念に対 して変わらないとする父親は「愛情」 表3
父親の育児信念に対する考え方 と強さ 絶対 変わ ら(%) ない 39 245 59 371 30 189 53 333 51 321 69 434 たぶん 変わる(%) 42 264 27 170 44 277 39 245 42 264 32 201 わか ら ない (%) n= 159 (96) たぶん絶対 変わる(96)変わる(93) 信念項 目 子どもに対 して完壁な父親でなければならない 父著lとは子どもに対して無債の愛を与えるものだ 子どもがよく育つも悪く育つも1側 %l見の努力にかかっている 子育ては自分に とって価値がある 子育ては女の仕事だ 父親は子どもに対し愛情をいつも抱いているものだ ■ ■ 9 2 a 6 27 路 3︲ 20 15 H 17 107 11 69 16 1αl 9 57 16 101 12 75 9 6 2 6 5 0 *欠損値は削除 して表示 表
4
父親 の育 児幸福 感 と育児信 念 Pearsonの相関分析 信念 に対す る考 え 信念の強 さ 0070 0226* 育児幸福感 ;育 児幸福感 ―肯定情動を感 じる頻度 (7情動の合計)*p<005
表5
父親 の育 児信 念 の強 さと情 動頻度 の相 関 Pearsonの 相関分析 安心希望
愛情
喜び
感謝
同情
誇 り 信 念 子 どもに対 して完璧な父親でなければならない 父親 とは子 どもに対 して無償の愛を与えるものだ 子 どもが よく育つ も悪 く育つ も100%親の努力にかかっている 子育ては自分にとって価値がある 子育ては女の仕事だ 父親は子 どもに対 し養情をいつ も抱いているものだ
**p<001
*p<005
0017 0142 0033 0152 0090 0090 03144 0192 0286ヰ 0115 0378■ 0069 0118 0253‡ 0060 0261孝 0271手 0135 0221孝 ■ 0084 02594 03534 0331二 〇〇71 0060 0355孝 017944 0171 0096 0247孝 0090 011(12 03014 0199‡本 0087 0047 0198‡ ‡ 0085 0213*孝 0093 02914 0076 え方 と強 さ 25 157 104 654 55 346 118 742 11 69 119 748 105 660 24 151 73 459 10 63 118 742 11 69 賛成 (96) 反対 (%) 情 動(r=0.355,p<0,01),「 誇 り」(r=o.261,p<0.01), 「感謝」と弱い相関が認め られた
(r=0.198,p<
005)。 また,「子 どもが よ く育つ も悪 く育つ も100 ° /ο親の努力にかかっている」の信念 に対 して変わ らない とする父親は「希望」(r=0331,p<0.01),
「喜 び」と弱い相関が認め られた(r=0286,p<
0.01)。「子育ては女の仕事 だ」の信念 に対 して変わ らない とする父親は「喜び」(r=0378,p<001),
「誇 り」(r=o271,p<0.01),「
希望」(r=o179,
p<0.05),「感謝」と弱い相関が認め られた(r=
0213,p<0.05)。 しか し,育
児信念 と安心の情動 頻度 とは相関が認め られなかった。 Ⅳ.考
察1.父
親の育児幸福感 を感 じる際の情動反応 父親が育児中に感 じる肯定的な情動の中心 と なったのは,「同情」「誇 り」「安心」「希望」であ り,ついで「感謝」があげ られ,「喜 び」「愛情」は 少 なかった。「同情」「誇 り」「安心」「希望」は父 親の育児幸福感の主たる情動 ではあるが,感
謝, 喜 び,愛
情 について も見逃せ ない情動 といえる。 特 に母親 との比較2)では,母
親の研究では,子
どもの年齢が3歳以下のため単純に比較すること は難 しいが父親は同情や誇 り,安
心 に高い値 を示 してお り,こ
うした情動 は父親の育児幸福感の特 徴 と考 え られた。 育児幸福感の主たる育児事情は,子
どもを中心 に構成 されているが,妻
に対する同情や誇 りの情 動 も生 じていた。喜 びや愛情 の情動頻 度が少 な かったのは,父
親は子 どもと接す る時間が少ない ことが関係 していると推察 された。 同情 は「周囲の声がけ・援助 。つなが り」「物事 へ の共感」「子 どもの存在」の3項目であ り,ど
ち らか というと幸福感の中でも特異な情動 といえる。 これは「同情」という言葉が,「共感J「共鳴」「賛 成」といった肯定的な意味のほかに,「哀れみ」や 「情け」などの否定的な意味をもつ ことが影響 して いると考えられる。また,「同情」は,情
動作数 と しては もっとも少なかったが,感
じる頻度 として は,も
っとも高かった。 また,感 じる頻度では誇 りや安心,希 望が高 く, 感謝,愛
情,喜
びが低かったことか ら,情
動 を感 じる頻度と育児事情の記述件数が比例 していない ことが明 らか となった。育児事情 は具体的な項 目 のほうが例 をあげやす く,件
数 も多 くな りやすい が,そ
の情動に伴 う育児事情の中で,抽
象的な項 目の占める割合が高 くなると,具
体的な例があげ に くかったことが,情
動 を感 じる頻度 と育児事情 の記述件教の順位の違いに関係 していた と考えら れた。 次 に,育 児幸福感を感 じる育児事情では,「子 ど もの存在」と「周囲の声がけ・援助 。つなが り」「子 どもとのコミュニケーション」 と「子 どもの優 し さ・愛情」に順位の逆転がみ られたが,母
親 と同 様の結果 を示 していた24)。 母親の育児幸福感で認 め られていた「妊娠・出産・育児の経験」は,父
親にはみ られない幸福感であった。一方,父
親の 育児幸福感は,子
どもを中心 としなが らも,妻
に 紺す る感謝や同情 に関す る ものが特徴 といえる。 母親 と父親の比較に関 した先行研究において養護 の能力か,児に対する敏感性必),アタッチメン ト?p に差はないとされ,本
研究結果 において も父親 と 母親は,親
としてほぼ共通 した育児幸福感 を抱い ていることが明 らかになった。 また,これ らの情動の調節は,否 定的情動を調整 する右半球が大脳新皮質において優位であるハ∼鉤)。 このことは,人
間の情動 は通常否定的な調整 を受 けやす く,育
児などス トレスを感 じやすい状況下 では肯定的な情動 を感 じに くく,幸
福感 を感 じる ことが困婁佐な状態 にある。肯定的な情動の中枢で ある視床下部が動機づけ行動の起 こりやすい部位 であることか ら,本
研究で着 日した肯定的な情動 を強化することによって育児に対する積極性 を促 す ことがで きると考 えられた。 また,本
研究の結 果か らも,子
どもの存在や関係に目を向けること に加 えて妻や家族 とのポジイテイブな側面に意識 を向けてい くことが,父
親の育児幸福感を高める ことに通 じると考えられた。具体的には,遊
びを とお して子 どもとかかわる場面を増や し関係性 を もつ こと,妻
と子 どものことの会話 をす ること, 家族 との時間を大切 に してい くことが有効であろ う。このことは父親 としての意識の発達に もよい 影響 をもた らす といえる。。また,妻 に対す る感謝 や誇 りなどの感情 を言葉で伝 えることで,互
いの 育児幸福感が高め られると考 え られた。平成20年1月 (2008)〕
2.父
親の育児幸福感 と育児信念 育児 は人 としての成長 に影響 してお り,そ
の成 長を支えるのは日々の育児行動の 1つ ひとつであ る。父親の育児信念は,子 どもへの愛情の必要性や 育児の価値 を認め,親
としての完璧 さや努力の必 要性や育児 を女性 のみの仕事 とは考えていないな ど先行研究 とほぼ同様の傾向を示 していた嬌,31)。 また,信
念 に対す る強 さ,つ
ま り不変性 について も変わ らない とする傾向 も同様の結果を示 してい た。このことか ら, 3回にわたる育児信念の研究 結果 は,現
代の子育て している親の傾向を示 して いると考えられた。 また,育
児信念の強 さと安心 を除 く情動が弱い 相関を示 してお り,「今後 も変わ らない」とする不 変の信念 をもつ ことが,父親の育児 に対す る認知, 評価 に何 らかの影響を及はしていると考えられた。 しか し,育
児幸福感が高 まることによって強固な 信念 をもつに至 るのかの因果関係の解明は今後の 課題 として残 されている。本結果が弱い相関にと どまっていることか ら,む
しろ父親の育児幸福感 には他の要因が関係 していると考え,他
の影響要 因を明 らかにす る研究に取 り組 む必要がある と考 える。V.結
語 父親が育児中に感 じる肯定的な情動の中心 は, 「同情」「誇 り」「安心」「希望」であ り,ついで「感 謝」があげ られ,「喜び」「愛情」は少なかった。ま た,情
動の頻度 と記述件数 とは必ず しも一致 しな かった。これ らの情動に関連 した育児事情は,主
として「子 どもの成長・発達・健康」お よび「子 どもの しぐさ」などの子 どもを中心 とした構成で あ り,子
どもとの関係の中で育児幸福感が認め ら れていた。さらに,「周囲の援助・声かけ 。つなが り」や「 自分の生 き方・成長」「家庭円満 。日常生 活」「物事への共感」があった。また,育
児に対す る信念が今後 もかわらない と信 じることが育児幸 福感 とわずかなが ら関係 していたが,本
結果 を受 けて育児幸福感に影響する要因は他にあると考え るべ きである。男女共同参画の時代にあってさま ざまな角度か ら父親への支援 を検討 してい くこと が課題 となる中で,本
研究で明 らかにされた父親 の育児幸福感 とその育児事情に着 目し,肯
定的な 565 情動 を喚起す る働 きかけが重要になって くると考 える。 (謝辞:最後に本研究にあた り,調 査にご協力い ただ きましたお父様方,お
よびStt Y,H幼
稚園 の皆様に深 く感謝いた します) 文 献1)柏
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-568.平成 20年 1月 (2008)〕 567
Fatheris happiness in childcare
― Relationship with childcare beheve―
Nagano College of Nursing YoshikO Shimizu
Abstract
This study deines the happiness that fathers experience during chndcare as a positive emotiOn,and sheds light on the facts and situations that contribute to the happy emotions experienced by fathers
during childcare The study also exaHlines the relationships bet、 veen happiness experienced during childcare and factors such as the tilne fathers spend inv01ved in childcare and housework,and the
conidence they have in their own vie、 vs on childcare,
A questionnaire was distributed to fathers with children aged six or under,asking theni tO evaluate on
a four―point scale the frequency of experiencing each of the seven emotions that are described as positive
emotions in Lazarusis theory:peace,hope,Iove,ioy,gratitude,sympathy,and pride The questionnaire
also included open―ended questions asking、 vhat chldcare circumstances cause theni to experience each
of the emotional ranges There were 159 responses out of 250 questionnaires distributed to those fathers
The study revealed that sympathy,pride,peace and hope were the maior positive emotions that fathers felt during chldcare,foHowed by gratitude On the other hand,the frequency of feehng iOy and
iove was iow.It、 vas also found that the frequency of experiencing each of the positive emOtiOns during childcare did not necessarily correiate、 vith the nunber of tirnes they mentioned the corresponding
emotion in their responses to the open― ended questions Responses on the circumstances under which happiness had been experienced during childcare、vere divided into 12 categories,、 vith most related tO
children,such as"childrenis growth,deveiopment and healthW and‖ chldrenls gestures and actionsr'One
of the other categories is Wsupport from others,and communication opportunities and ties、 vith others W With regard to the enotionai ranges,gratitude to their children and wives and sympathy for the■ l were
frequently expressed in their responses to the open― ended questions.