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数理で脳の働きを解き明かし、学習原理を導く

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Academic year: 2021

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6 研究内容  脳は何のためにあるのかをよくよく考えると、それは 学習のためではないか、と思っています。脳は情報処理 機械ですが、遺伝的にプログラムされた情報処理を実行 するためだけであれば、いくら高度な情報処理であって も、脳のような中枢神経系は必要なかったのではないで しょうか。実際、脳以外の体内の器官でも、様々な機能 を実現する情報処理をタンパク質のダイナミクスで実現 しています。したがって、脳の本質は学習にある、と言っ ても過言ではないと思っています。  私は「素晴らしい学習機械である動物の脳から学び、 コンピュータに応用できる学習原理を知りたい。」そん な想いで動物の脳と行動を 研究対象にしています。数 学を道具として使いなが ら、動物の学習行動とそれ を担っている神経メカニズ ムを、物理学や情報論的な 視点から明らかにすること を目指しています。  近年、人工知能の学習能力の進歩は目覚ましいものが あります。「本当に生体の脳の方が素晴らしいのだろう か?」「もう人工知能は脳を超えてしまっているのでは ないか」そんな疑問も湧いてきます。入出力の枠を決め た範囲で学習能力を問えば、おそらく現在の人工知能が 上回ってしまっている でしょう。しかし、そ の土俵では、脳の凄さ を過小評価してしまう と思います。  我々は膨大な情報を感覚器から刻々と受け取っていま す。そして、膨大な筋肉の出力パターンを制御し、動作 を行なっています。言うなれば、無限の次元から無限の 次元への入出力変換をしているのです。そして、今、受 け取っている感覚情報と全く同じ感覚情報を受け取った 経験は生まれてこのかた一度もないでしょう。にもかか わらず、我々は経験から学習することができ、初めて経 験しているはずの現在の状況に応じて適切な行動をとる ことができます。膨大な感覚情報の時系列の中から、適 切な行動を取るために注目すべき時間単位や感覚特徴の 要素を抜き出し、そして過去のどの経験と近い状況なの かを瞬時に反映して、とるべき行動を選んでいるに違い ありません。何気ない日常の行動であっても、我々の脳 はすごいことを行っているのです。  私は、既存の強化学習理論など機械学習の理論的枠組 みをもとにしながら、無限次元の中で限られた経験から どうしたら学習できるのか、既存の枠組みでは何が足り ないのか、どうすれば 足りない点を補えるの か、という個々の要素 の解決に取り組みなが ら、理論的な枠組みの 構築を目指してます。  また、学習機能の面からのアプローチだけでなく、脳 の中身を調べるアプローチにも取り組んでいます。以前、 本学で同僚であり、東京医科歯科大学に移った礒村宜和 氏との共同研究を続けており、ラットの学習行動に関わ る神経活動から、何か糸口が 得られないか、日々探ってい ます。現在、脳の異なる領域 間を行き交う信号を記録する 新たな技術を礒村研究室との 共同で開発中です。この技術 が完成した際には、脳の様々 研究室紹介 22

数理で脳の働きを解き明かし、学習原理を導く



酒井裕研究室

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7 な領域がどのように統合されて、学習機能を実現してい るのかを探る貴重な知見が得られるのではないかと期待 し、意気込んでいます。 研究体制  理論研究はチームを組んで行うことがあまり相応しく ありません。一人で全てをこなすことが可能ですし、ま た全てを把握している必要もあります。したがって人数 が必要な体制ではありません。これまで大学院生やポス ドクすべて含めても数名程度の小さな研究室でやってき ました。ときどき 1 対 1 でディスカッションし、あとは 一人で集中する、という研究スタイルとなります。しか し日々の楽しい行事の企画などは、礒村研究室と共同で 行っています。日頃から交流を深めながら、何気ない会 話から生まれるイノベーションを大切にしています。  また、礒村研究室に加え、相原威研究室、鮫島和行研 究室、佐々木哲彦研究室、田中康裕研究室と合同で月に 数回、最新論文を巡って徹底的に議論し、論文から本質 を読み取る感性を磨くゼミを行っています。ストーリー に惑わされず明らかにされた事実だけを抽出し、表面的 には明確にしていない実験上や解析上の事情を推察しま す。様々な専門分野の方々と共同で行うことにより、よ り多角的な視点から見る目を養っています。  育成のモットーは「上にモノが言える人材を」。けん か腰になるのではく、相手の主張を理解し尊重しながら、 自分が正しいと考えていることを論理的に伝えられる、 そういう人材になって 欲しいと思っていま す。ここに来たら「教 授がカラスをシロとい えばシロ」ということ はありません。まずは 研究室でモノが言える 雰囲気を目指していま す。 略歴 1995 年京都大学理学部卒業、2000 年京都大学大学院理 学研究科博士課程修了。博士(理学)。同年埼玉大学工 学部・助手。2004 年玉川大学工学部・助教授。2007 年 玉川大学脳科学研究所・准教授を経て 2013 年より玉川 大学脳科学研究所・教授。専門は神経計算論。所属学会 は日本神経回路学会、日本神経科学学会、日本物理学会 など。

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