Postweaning Iron Deficiency in Male Rats Leads
to Long-Term Hyperactivity and Decreased
Reelin Gene Expression in the Nucleus
Accumbens.
著者
西倉 紀子
学位授与機関
滋賀医科大学
学位授与年度
令和元年度
学位授与番号
14202乙第447号
発行年
2020-03-10
URL
http://hdl.handle.net/10422/00012699
doi: 10.1093/jn/nxz237(https://doi.org/10.1093/jn/nxz237)氏
名 西倉 紀子
学
位
の
種
類 博士（医学）
学
位
記
番
号 博士乙第 447 号
学 位 授 与 の 要 件 学位規則第４条第２項
学 位 授 与 年 月 日 令和２年 ３月１０日
学 位 論 文 題 目 Postweaning Iron Deficiency in Male Rats Leads to
Long-Term Hyperactivity and Decreased Reelin Gene Expression
in the Nucleus Accumbens
（離乳後の鉄欠乏は雄ラットにおいて側坐核におけるリーリ
ン遺伝子の表現を減少させ、長期的に続く多動を引き起こす）
審
査
委
員 主査 教授 等 誠司
副査 教授 勝山 裕
副査 教授 扇田 久和
別 紙 様 式3 (課 程 博 士 •論 文 博 士 共 用 )
論 文 内 容 要 旨
X
整理番号45 1
A
T
矣 西 倉 紀 子 学位論文題目Postweaning Iron Deficiency in Male Rats Leads to Long-Term Hyperactivity
and Decreased Reelin Gene Expression in the Nucleus Accumbens
(離 乳 後 の 鉄 欠 乏 は 雄 ラ ッ ト に お い て 側 坐 核 に お け る リ ー リ ン 遺 伝 子 の表現を減少させ、長期的に続く多動を引き起こす） 【研 究 の 目 的 】 胎 児 期 • 乳 児 期 早 期 の 成 育 環 境 (栄 養 、 ス ト レ ス な ど ）は 児 の 体 質 に 変 化 を 与 え 、 生 後 の 発 達 障 害 や 精 神 疾 患 の 発 症 リ ス ク に 大 き く 関 わ っ て い る こ と が 疫 学 研 究 に よ り示されている。 栄 養 素 の 中 で も 、鉄 は 髄 鞘 形 成 に 必 要 な 脂 質 の 生 合 成 に 関 与 し 、
serotonin
やdop・i n e
などの神経伝達物質の合成酵素にも必須の物質であり、欠乏 による認知機能への影響は大きいとされている。 鉄 欠 乏 性 貧 血 が2
歳以 上に発 症した場合は、鉄剤投与により貧血も神経機能の障害 も改善するが、2
歳未満に発症した場合は認知機能の改善は乏しく、治 療終 了10
年後 もその影響は残存するという報告がある。また、乳幼児期は身体発達が急速で身体の 鉄 の 必 要 量 が 多 い た め 、母乳栄養は鉄の吸収率が高いものの含有量が少なく、調製粉 乳で は その逆であり哺乳のみでは鉄欠乏に陥りやすく、現代においても実際には気付 力ゝれずに離乳期を終える児が多数存在すると考えられる。 鉄欠乏により不可逆 的な変 化をも た ら し 、鉄剤治療にはクリティカルピリオドが存 在する こ とが明 らかとなっている。 これらの知見を踏まえ、本研究では未だ明らかと なっていない鉄欠乏が不可逆的な中枢神経系に及ぼす影響を明らかにするために、次 世 代 シ ー ク エ ン サ ー 用 い た 転 写 産 物 の 解 析 を 行 い 、乳 児 期 早 期 の プ ロ グ ラ ミ ン グ へ 与える影響を調査した。 【方 法 】FiSCher344/JCl
ラットを妊娠、 出産させ、子 雄 ラ ッ ト を 離 乳 後 で あ る 生 後2 1
から3 9
日までの期間において、鉄 量 を1 0 %
量 に 制 限 し 、それ以降は十分量を与える鉄欠 乏 群（
I D )
と普通食の対 照群(CN)
の2
群 を 研 究 対 象 とし、以下の実験を行った。1 .
行動実験 オ ー プ ン フ ィ ー ル ド 試 験 • 高 架 式 十 字 迷 路 試 験 を8
、12
週 齢に施行した。2.
モノアミン定量実験 行 動 実 験 後 の9
、1 3
週 齢 に 脳 内 モ ノ ア ミ ン 定 量 を 前 頭 前 皮 質(PFC)
、側 坐 核(NAcc)
、 尾 状 被 殻 、 中脳背側、 中脳腹側、橋 に お い てHPLC
法を用いて施行した。 (備考）1 . 論 文 内 容 要 旨 は 、研 究 の 目 的 • 方 法 • 結 果 • 考 察 • 結 論 の 順 に 記 載 し 、2千字 程度で タ イ プ 等 を 用 い て 印 字 す る こ と 。 2 . ※印の欄には記入しないこと。別 紙 様 式 3 の
2
(課程博士 • 論文博士共用) (続紙)3.
遺 伝 子 発 現 解 析（
RNA-seq
法を用いた解析）13
週 齢 のP F C
お よ びNAcc
の2
領域において次世代シークエンサーを用いた転写産 物（
m R N A )
の 解 析 をRNA-seq
法を用いて施行した。4.
組織形態解析13
週 齢 のP F C
お よ びNAcc
の2
領 域 に お い て 抗synaptophysin
抗体を用いてシナプ スの免疫染色を施行した。 【結 果 】8
お よ び1 2
週齢のオープンフィールド試験おいて、I D
群では総移動距離および辺 縁 部 移 動 距 離 の 週 齢 に 伴 う 減 少 率 がC N
群 よ り 低 く（
p
く0.05 )
、I D
群は成獣になって からも多動が残った。1 3
週齢での脳内モノアミン測定では、dop・i n e
代謝産物であ る3-methoxytyr・ine
、homovanillic acid
がP FC
お よ びNAcc
のそれぞれにおいて増 加 し て お り 、 中 脳 腹 側 で はdop・ine
の低下が認められた。一 方 、NAcc
および中脳腹 側 で はserotonin
の 主 要 代 謝 産 物 で あ る5-hydroxyindoleacetic acid
が増加してい た。RNA-seq
で は 、NAcc
に お け るReelin
遺 伝 子 の 発 現 がID
群で有意に減少していた(adjusted p
く0. 0 1 )
。抗synaptophysin
抗体を用いた免疫染色では、NAcc
のシナプ ス 密 度 がC N
群 に 比 し てI D
群 で 有 意 に 増 加 し て い た（
p
く0.01 )
。 しかしながら、PFC
のシナプス密度には両群間で有意差がなかった。 【考 察 】 今 回の 実験で鉄 制 限 を 行 っ た 期 間 は 、人 間 の9
か 月 か ら2
歳 に 相 当 し 、現在の日本 でも存 在 する離乳期の鉄欠乏性貧血のモ デ ル ラ ッ トと考 え ている 。Reelin
遺伝子は シ ナ プ ス の 可 塑 性 に 関 わ る 重 要 な 遺 伝 子 で あ り 、統 合 失 調 症 や 双 極 性 障 害 、発達障 害 の 一 つ で あ る 自 閉 ス ぺ ク ト ラ ム 症 な ど の 神 経 疾 患 で はReelin
遺伝子の発現の低下 の報告がある。また、シナプス密度は統合失調症では低下、 自閉スペクトラム症では 増加 が 認めら れ るとも報告されている。Reelin
遺 伝 子 はdop・ine
の神経の発達にも 関 連 し て い る こ と が 報 告 さ れ 、発 達 障 害 の 一 つ で あ る 注 意 欠 如 多 動 症 で はdop・ine
神 経 の 機 能 の 低 下 お よ びdopamine
受容体感受性亢進があるとされ、多動や衝動的な 行動 に深く 関 与して いるとされ る。 乳 児 期 の 鉄 欠 乏 に よ りReelin
遺伝子の発現量が エ ピ ジ ェ ネ テ ィ ッ ク な 変 化 に よ り減 少 する こ と で 不 可 逆 的 な 変 化 を も た ら し 、神経 伝 達 物 質 や シ ナ プ ス 形成に も影響を 与 え 、成人期にも行動特性が残る一因となること を明らかにしたのではないかと考えている。 【結 論 】 離 乳後 の鉄 欠 乏雄ラ ットにおいて成獣となってからも多動が残存し、脳内のモノア ミンの変化を引き起こした。 また、NAcc
領 域 に お い てReelin
遺伝子の転写産物は低 下しシナプス密度は増加していた。別 紙 様 式8 (課 程 博 士 •論 文 博 士 共 用)
