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青年期の向社会的行動と自己抑制型行動特性に関する研究 [ PDF

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Academic year: 2021

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(1)青年期の向社会的行動と自己抑制型行動特性に関する研究 キーワード. :. 青年期、向社会的行動、自己抑制型行動特性、社会的スキル、 九州大学大学院人間環境学府発達・社会システム専攻 寺門. とも子. 1.目次. 会性を身につけそれを行動化し、社会化していくには困. 序章 本研究の課題と方法. 難な状態にある。その模様は『ユースカルチャーの現在』. 1.問題の所在. にも取り上げられ、少年非行やいじめ、学級崩壊、家庭. 2.本研究の意義. のしつけ、奉仕活動、ひきこもりなどがテーマとなって. 3.本論文の構成. いる。また看護大学に入学後に、高校時代からの摂食障. 第1章 先行研究の検討. 害を悪化させ不登校状態となったり、過喚気発作を頻繁 におこすなどメンタルヘルスに起因すると思われる症状. 第1節 心理学領域における研究 1.社会心理学における研究. を示す学生が増加しつつある。このような学生のみせる. 2.教育心理学における研究. さまざまな反応や、その背景にあるユースカルチャーを 理解するには世代間のギャップがある大人には困難であ. 第2節 教育学領域における研究. る。看護大学に入学してくる学生には人の役に立ちたい. 第2章 本研究の視点 第1節 向社会的行動と自己抑制型行動特性. 他者を助けたいという希望を持っていることが多い。そ. 第2節 向社会的行動と社会的スキル. のような社会に向けての思いやり、愛他性などの積極的. 第3節 向社会的行動化を阻むもの. な行動は社会に歓迎されることであり、行動化は期待さ れている。しかし高校生から大学生という時期はまだ自. 第3章 高校生の向社会的行動と自己抑制型行動特性 第1節 調査の概要. 己確立していない場合もあり、「イイコ」として自己抑. 第2節 高校生の向社会的行動. 制型行動特性によって行動していることもある。メンタ. 第3節 高校生の社会的スキル. ルヘルスの障害で苦しむ学生はいわゆる「イイコ」が多. 第4節 高校生の自己抑制型行動特性. い。宗像は自己抑制型行動特性についての尺度開発を行. 第5節 向社会的行動・社会的スキルと自己抑制型行. っており、この行動特性はそれをとり続けることで慢性 のストレスを生じさせるという。自己確立が未熟な学生. 動特性との関係. は過剰に適応しようとしていい子を演じ続けストレス対. 第4章 高校生の社会意識 第1節 高校生の主張. 処が出来なくなり、いろいろな症状を呈してくることに. 第2節 高校生の社会活動の実際. なる。 本研究は、青年期にある学生の思いやりや愛他性など. 1.高校生のボランティア活動 2.高校生の近隣との関係. の向社会的行動および社会的スキルの実態を把握し、そ. 3.高校生の友人関係. の背景にあると思われる自己抑制型行動特性について関. 終章 研究のまとめと今後の課題. 連性を検討することを目的としている。今回の研究では 青年期の対象として高校生を選んだ。大学に入学する前. 第1節 研究のまとめと看護教育への適用可能性. の状態の向社会性やその行動化がどのようになっている. 第2節 今後の課題. か、 向社会的行動をおこすために必要な社会的スキルと、 2.概要. 自己抑制型行動特性について明らかにしその関連性を検. 序章:研究の課題と方法. 討することは、大学入学後の学生のストレス対処をスム. 青年期にある学生は発達課題である独立性を達成して. ーズにし、不健康な状態に陥ることを回避し、学習の主. いかなければならない。しかし日本における現在の青少. 体者である学生自身の力を引き出していくことにつなが. 年のおかれている状況は、不況やグローバル化にともな. るものと考える。大学入学直後の生活の場、友人関係、. って犯罪が増加し、親子関係の変容など社会の複雑な変. 学習スタイルの変化など、青年期の学生にとっての大き. 化に影響を受けストレスフルであり、スムーズに向社. な環境の変化や、セクシュアリティの危機など発達課題 1.

(2) の達成にも適用でき、それらの変化に柔軟に対応してい 調査結果より以下のことが明らかになった。. くための方法を見いだすことが可能になると考える。. ・対象高校生の属性は性別男子127名(53.8%) 女子109名(46.2%)、きょうだい数はひとりっ. 第1章・第2章:先行研究の検討と本研究の視点 本研究の視点として向社会的行動と自己抑制型行動特. 子10人(4.2%)で、89.0%が2∼3人きょう. 性、社会的スキルを取り上げている。これは向社会的行. だいの中で育っている。. 動化を阻むものとして現代社会は青年期の学生にとって. ・高校生の向社会的行動得点は平均値58.5で高い傾. 積極的な向社会性を行動化していくために困難な状況が. 向にあり、項目別にみると他者から頼まれたり、その状. あり、そのような現代社会を生きぬくために自己抑制型. 況に自分しかいない場合に行動化されている。自分に援. 行動特性をとることが手がかりとなっているのではない. 助を求めている人がいる場合それに応じて手助けをする. かという仮説にもとづいている。. という社会的規範を身につけている。また自分の方から. 向社会的行動に関する研究は、1964年にアメリカ. 声をかけるなどの積極的な行動をとることはなかなか出. でおこったキティ・ジェノビーズ事件という殺人事件に. 来ないようである。性別では女子の方が向社会的行動を. 対して人々の冷淡な傍観者的態度をきっかけに盛んに行. とっている。. われるようになった。日本においてもおもに社会心理学. ・高校生の社会的スキル得点は平均値48.2でかなり. 領域で思いやりや愛他性などの向社会的行動に関する多. 高い傾向にある。項目別では自分が失敗したときすぐに. くの研究がなされている。 しかしこれらの研究は幼児期、. 謝ることや自分とは違った考えの人ともうまくやってい. 学童期を対象としたものと大学生を対象にしたものが多. けるなどである。しかし、初対面の人との会話や自己紹. く、社会に向けて大人として行動化していく段階の高校. 介、相手から非難されたり、トラブルへの対処、怖さや. 生(17、8才)から大学生になっていく過渡期にある. 恐ろしさを感じた場合の解決などの項目は低かった。. 学生を対象に向社会的行動を研究したものはあまりみら. ・高校生の自己抑制型行動特性得点の平均値は11.0. れない。そこで今回この段階にある青年期の向社会的行. で高い傾向にある。91.5%が7点以上で中程度から. 動に注目した。. かなり高い群に入っている。項目別では自分にとって重 要な人には自分のことをわかってほしいと思う、人の顔 色や言動が気になるほうである、人から気に入られたい. 第3章:調査の概要 今回の調査の対象に選んだ2つの高校は、M市、K市. ほうであるなどが高かった。他者から認められたい気持. にある県立高校でほとんどの生徒が大学進学を目指して. ちが強く、 自己の感情を抑制していく傾向を持っている。. いる。調査依頼は各高校の進路指導室の担当教員を通じ. ・向社会的行動得点と社会的スキル得点、自己抑制型行. て行い、クラス担当教員から生徒に質問紙を配布しても. 動特性とは正の相関があった。向社会的行動は社会的ス. らい無記名とし、留め置き法とした。実施時期は200. キルが高いほど行動化され、自己抑制型行動特性が高い. 3年6月から7月である。文系理系からそれぞれ選択し. ほど行動化されるといえる。(表1参照). クラス単位で調査を行った。高校2年生238名(M校 が123部、K校が115部)で回収率は100%であ った。有効回答率は99.5%であった。 調査内容は ①向社会的行動(菊池の開発した尺度を使用) ②社会的スキル(菊池の開発した尺度を使用) ③自己抑制型行動特性(宗像の開発した尺度を使用) ④属性(年齢、性別、きょうだい数) ⑤その他 ボランティア活動の経験の有無(頻度・内容) 今後のボランティア活動参加希望 地域の社会活動への参加の有無(頻度・内容) 近隣の大人との関係、 お互いを理解し合える友人の有無。 2.

(3) これはボランティア希望のある生徒は活動の感想も肯定 的で、社会活動を行っており、近隣の大人との関係もよ いということである。(表2参照) 表1 各尺度間の相関 . ・対象高校生の友人関係は両極性があり、理解し合える 友人がいますかという質問にどちらとも言えないという.   項目. 向社会的 行動. 社会的ス キル. 回答が38.1%、ほとんどいないが4.7%であった。. 自己抑制型 行動特性. 高校生にとっての重要他者は友人であるという統計結果 があるが、今回の結果はその重要他者の友人との関係に. 向社会的行動.   社会的スキル.  .470   **. 自己抑制型行動 特性.  .255 −.062   **.  .. も確信が持てない生徒たちが40%近くにのぼるといえ.    . る。. 表2 ボランティアに関する項目間の相関 ボランティ 社会活動 ア希望. **p<.01  *p<.05. 活動感想. 社会活動.  .192   **. 活動感想.  .507   **.  .089. 近隣関係.  .257   **.  .127.  .262   **. 友人関係. −.019.  .143    *.  .125. 近隣関係. 第4章:高校生の社会意識 次に高校生の社会意識について、自由記述内容、社会 活動の実際としてのボランティア活動、地域との関係、 友人関係の結果から以下のようなことが明らかになっ た。 ・自由記述から見えてくる高校生の主張は、大人への批 判的な意見が最も多く、次に日本の社会への言及、少年.  .198   **. **p<.01  *p<.05. 犯罪増加への意見、子どもの教育や教育一般への意見、 その他の教育への不満、親への不満などがあった。また 少数だが大人への好意的なメッセージもあった。 ・高校生はボランティア経験を持つものが76.7%と 多かった。また社会活動には参加者の68.8%がポジ ティブな感想をもっており、チャンスがあればボランテ ィア活動をしたいという希望も33.7%が持っている ことがわかった。また高校生が経験したボランティア活 動は約70%が河川や海岸の清掃活動であった。社会活 動としては地域の清掃活動の他に廃品回収や地域でのス. 終章:研究のまとめと看護教育への適用可能性 本研究で、青年期の向社会的行動は行われており、社 会的スキルもある程度のレベルにあることがわかった。 またその背景にあると思われる自己抑制型行動特性の得 点は高いものであった。思いやり、愛他性などの積極的 な向社会的行動は、青年期においては自己抑制型行動特. ポーツなどがあげられていた。 ・対象高校生の44.5%が近所の大人や老人とコミュ ニケーションをとっていると答え、挨拶程度まで含める. 性に関連して行われていく可能性があることがわかっ た。この結果は青年期の向社会性を育て高めるために有 用である。しかしこのことは一方で慢性ストレスをため. と85.0%となる。 ・ボランティアに関する項目間での相関をみると、ボラ ンティア希望と社会活動、ボランティア希望と活動の感 想、 ボランティア希望と近隣関係で正の相関がみられた。 3. ていくことにつながっていく可能性もあることを忘れて はならない。青年期の学生個々がもつ社会的背景は現代 社会の変化の影響を少なからず受けており、彼らは自己.

(4) 抑制型行動特性による対処をしているといえ、また大人. 看護教育において実習は特徴的な学習場面であるが、. の側も、イイコ行動特性があり、向社会的行動がとれ、. 他者との関わりを通して社会性を発達させるとともに自. 社会的スキルが高い学生に対して安心感をもつ傾向があ. 己と他者の相違に気づくことができる、いわば向社会性. る。そうなると学生は自分の気持ちや本音を言える場は. を段階的に身につけていく機会となり、その過程では社. なくなってしまう。友人関係が希薄であればますますい. 会的スキルも身につけることになり向社会的行動を実践. い子を演じ続けることになっていく。いろいろな場面で. できる基礎的能力を高めるチャンスであるといえる。し. 過剰適応していかなければならない状況がおこることに. かし同時に対象者のニードが最優先とされ、専門家とし. なる。. てのあるべき姿が求められる。そのため過剰に適応しな. 自己効力は「ある行動を起こす前にその個人が感じる. ければならない状況がありストレスも高い。自己確立が. 遂行可能感、自分自身がやりたいと思っていることの実. 未熟で専攻学部の選択時の意志決定が曖昧であることは. 現可能性に関する知識、あるいは自分にはこのようなこ. これらのストレスに対処出来なくなる可能性があり、メ. とがここまでできるのだという考え」で、それは自然発. ンタルヘルスの障害を起こしてくることになるのではな. 生的に生じるのではなく自ら創り出すものであるとバン. いだろうか。これらのことから、高校生から大学生へ移. デューラは述べている。青年期の積極的な向社会的行動. 行するこの時期の青年期の状況を理解し、自己抑制型行. が他者依拠ではなく、自己の選択として意志決定され、. 動特性をもつ学生が、思いやりや愛他性などの向社会的. それが行動化されることにより、自信となり自己効力と. 行動を行い自己を肯定し、そのことを自己効力へと発達. なっていくことが必要であるといえる。. させていけるような教育的配慮と支援が強く求められ. 第3章で述べたように高校生は大人の社会に対する批. る。. 判的な意見を持っていた。これは自己抑制型行動特性を もちながらも社会意識もあり社会に対する批判もできる. 3.主要引用文献. ということであり、自分の意志決定によって向社会的行. ・ハヴィガースト著荘司雅子監訳2000,『人間の発. 動を行っていくことができる可能性が高いといえる。ま. 達課題と教育』,玉川大学出版部.. たボランティアや社会活動への希望を持つ学生は向社会. ・宗像恒次著1996, 「行動科学からみた健康と病気」,. 的行動もとれると思われる。しかし今回の調査で彼らが. メヂカルフレンド社.. 行っていたのは河川や海岸の清掃活動が大半を占めてい. ・アルバート・バンデューラ編本明寛他訳,2003,. た。これらの活動が自分の住む地域にある河川や海岸な. 『激動社会の中の自己効力』,金子書房.. どの帰属意識に影響したり、一緒に活動することで仲間. ・住田正樹2001,「21世紀における青少年育成に. 意識が強まる可能性もあるが、思いやりや愛他性などの. 関する研究−アンビシャスな青少年を育てるには−」,. 向社会性を育むには対人場面での継続的なボランティア. 89−101.. を行い、人と人との交流を体験していくことが有効であ ると思われ、この時期のボランティア内容の見直しが必. 4.主要参考文献. 要であると考える。. ・N・アイゼンバーグ,ポール・マッセン著菊池章夫訳,. この研究を始めた動機は、看護大学生の入学直後にみ. 1980『思いやりの発達心理』,金子書房.. られるメンタルヘルスが原因と思われるいろいろな心身. ・菊池章夫著1998『また/思いやりを科学する』,. の健康状態への疑問からであった。石井らの大学生の学. 川島書店.. 習に対する意欲に関する調査研究によると、335大学. ・中田栄2000『向社会的行動における自己統制の役. の学生33,432名を対象に行った調査の結果、保健・. 割とその規定要因の検討』,風間書房.. 看護学系の学生は他の学部の学生に比べて積極的に学習. ・石井秀宗、椎名久美子、櫻井晴夫2003「看護大学. 活動を行っているが、同時に専攻学部への低適応群で、. 生の学習活動と学習意欲等に 関する研究」,Qual i t y. 大学・学部の選択にあたり親や教師に勧められたとする. Nursi ng, Vol . 9 No. 11, 2003.. 学生の割合が最も高くなっていることが示されている。 これらの結果は保健・看護学系の大学生の現状を表すも のであり、進路決定の際に自分での選択や意志決定が出 来ていない学生が他の学部に比べて多いものと考えられ る。 4.

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