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はじめに 建築物衛生法施行当時 ( 昭和 47 年度末 ) 都内の特定建築物は 710 施設でした その後 法対象規模の拡大もあり 平成 25 年度末現在 特別区に約 6800 多摩 島しょ地区に約 1100 の合わせて 7900 近くの特定建築物の届出があります また 年平均 60 施設の新たな届

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ビル衛生管理講習会資料

平成26年度

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はじめに

建築物衛生法施行当時(昭和 47 年度末)、都内の特定建築物は 710 施設でした。そ の後、法対象規模の拡大もあり、平成25 年度末現在、特別区に約 6800、多摩・島しょ 地区に約1100 の合わせて 7900 近くの特定建築物の届出があります。また、年平均 60 施設の新たな届出があります。 法施行当時は、自動車排出ガスなど大気汚染物質がビル環境に影響しており、空調設 備、給排水設備等の性能、材質なども技術開発の途上でした。また、設備の維持管理方 法も未成熟であり、環境衛生管理基準に従った維持管理が困難な特定建築物が多数存在 していました。 近年、公害防止施策により大気環境が大幅に改善し、特定建築物においても設備性能 の向上、維持管理技術の蓄積などにより、環境衛生管理基準に従った衛生確保を図るこ とが可能となりました。その一方、貯水槽など衛生的な構造設備が不良な特定建築物も 見受けられ、適正な維持管理が困難な原因の一つとなっています。 さて、地球温暖化対策として温室効果ガス排出抑制、東日本大震災による電力危機を 契機とした節電対策など、特定建築物のエネルギー消費量を低く抑えていく政策が続い ています。オフィスビルでのエネルギー消費の約 30%は、空調設備であるとの報告も あるなか、今後、空調設備に限らず省エネ型の技術開発が推進されていくものと考えら れます。 また、PM2.5 や黄砂などが、ビル環境に及ぼす影響、水使用量の減少等により残留 塩素が消失した貯水槽や配管には、従属栄養細菌によるバイオフィルムが形成され、そ こで様々な細菌が増殖することが知られています。湧水槽で繁殖するチカイエカは、米 国やカナダで流行するウエストナイル熱の病原ウイルスを媒介することができます。本 年8 月には、ヒトスジシマカ(やぶ蚊)によるデング熱の国内初の感染例が報告されて おり、新たな病原ウイルスの国内侵入が現実となっています。 今回の講習会では、昨年度の立入検査結果の解説、事例紹介等に加え、特定建築物を 維持管理する上で、重要な感染症として、レジオネラ及びノロウイルスを特集しました。 これら病原体の繁殖場所、感染経路等を知ることで、適切な予防対策の理解を深める とともに、集団感染発生時の備えなど健康危機管理に関する知識習得の参考になること を期待しています。 特定建築物は、空気を調整し、貯水槽を経た水を利用し、ねずみ、害虫の発生を防止 するなど、まさに人工環境で生活する場所です。これからも、より一層の維持管理によ り、建物内の衛生確保に取り組んでいただけますよう、お願い申し上げます。 平成26 年 10 月

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目 次

はじめに 第1章 特定建築物での感染症について 1 レジオネラ症 3 2 ノロウイルス(感染性胃腸炎) 30 第2章 立入検査における事例について 1 受水槽室の給気口が落ち葉やほこりで詰まっていた事例 51 2 測定機器のメンテナンスや測定方法が不適切であった事例 52 3 循環式足湯へのクロスコネクション 54 4 通気管に防虫網がなく、排水槽内にゴキブリが発生していた事例 56 第3章 平成25 年度 アンケート調査について 1 建築物環境衛生管理技術者に対するアンケート調査 59 2 ビルにおけるねずみ昆虫等の防除に関するアンケート調査 65 第4章 平成25 年度の立入検査結果及び指導事項について 1 特定建築物の届出数 75 2 立入検査等の実施件数 76 3 帳簿書類及び設備の維持管理状況(特別区・島しょ地区) 77 4 帳簿書類及び設備の維持管理状況(多摩地区) 86 第5章 飲料水貯水槽等維持管理状況報告書について 1 飲料水貯水槽等維持管理状況報告書について 97 2 飲料水貯水槽等維持管理状況報告書の提出時チェックリスト 100 第6章 ビル衛生管理に関するQ&A 105 資 料 1 ビル衛生検査係担当地区 111 2 建築物衛生法担当窓口 112 3 登録制度 114 4 建築物環境衛生管理基準 116 5 変更(廃止)届出用紙、各種記録用紙(例) 118

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第1章

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1 レ ジ オ ネ ラ 症

レ ジ オ ネ ラ 症 は 、土 壌 や 淡 水( 川 や 湖 )に 広 く 生 息 す る レ ジ オ ネ ラ 属 菌 に よ る 感 染 症 「 感 染 症 の 予 防 及 び 感 染 症 の 患 者 に 対 す る 医 療 に 関 す る 法 律 」( 通 称 : 感 染 症 法 )で は 、4 類感染症に分類されています。レジオネラ属菌は、空気調和設 備 の 排 水 受 け や 加 湿 装 置 、冷 却 塔 、中 央 式 給 湯 設 備 、噴 水 や 滝 な ど の 水 景 施 設 な ど の 管 理 が 不 良 の 場 合 に 検 出 さ れ る こ と が あ る た め 、適 正 な 設 備 の 維 持 管 理 が 重 要 と な り ま す 。 な お 、建 築 物 衛 生 法 で は 、設 備 に 応 じ た 定 期 的 な 点 検・清 掃 等 が 規 定 さ れ て い ま す 。 (1 )疾 病 概 要 ア 概要 レ ジ オ ネ ラ 症 は 、 病 原 体 で あ る レ ジ オ ネ ラ 属 菌 を 含 む エ ア ロ ゾ ル を 吸 入 す る こ と に よ る 感 染 症 で す 。 症 状 に よ り 重 症 化 し や す い レ ジ オ ネ ラ 肺 炎 と 軽 症 の ポ ン テ ィ ア ッ ク 熱 に 分 け ら れ ま す 。 高 齢 者 や 入 院 患 者 な ど 抵 抗 力 の 弱 い 人 は 発 病 し や す く 、 重 症 化 す る こ と が あ り ま す 。( 致 死 率 : 治 療 者 7%、 無 治 療 者 60~70%) 写 真 1 レ ジ オ ネ ラ 属 菌 イ 発生状況 東 京 で は 1994 年 8 月に、研修施設の冷却塔が原因で 45 名のポンティアッ ク 熱 罹 患 者 が 発 生 す る 集 団 感 染 が 発 生 し ま し た 。 そ し て 、 レ ジ オ ネ ラ 症 の 報 告 は 、 こ こ 数 年 間 増 加 傾 向 に あ り ま す ( 図 1 )。 0 100 200 300 400 500 600 700 800 900 1000 H12 H13 H14 H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22 H23 H24 女 男 図1 レジオネラ症患者報告数 (人)

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ウ 感染経路 人 工 環 境 水 ( 循 環 式 浴 槽 水 、 冷 却 塔 、 中 央 式 給 湯 設 備 な ど ) の 中 の 菌 が 、 し ぶ き 等 の エ ア ロ ゾ ル と と も に 飛 散 し 、そ れ を 吸 入 す る こ と に よ り 感 染 し ま す 。 ヒ ト か ら ヒ ト へ の 感 染 は あ り ま せ ん 。 エ 潜伏期間と症状 レ ジ オ ネ ラ 肺 炎 の 潜 伏 期 間 は2~10 日間、ポンティアック熱は 1~2 日です。 レ ジ オ ネ ラ 肺 炎 は 、 全 身 倦 怠 感 、 筋 肉 痛 、 頭 痛 、 高 熱 、 乾 性 咳 → 湿 性 咳 、 意 識 障 害 、 腹 痛 、 お う 吐 、 下 痢 な ど の 症 状 が 起 き ま す 。 ポ ン テ ィ ア ッ ク 熱 は 、 発 熱 、 悪 寒 、 頭 痛 な ど の イ ン フ ル エ ン ザ 様 症 状 を 示 し 、 肺 炎 は 見 ら れ ず 、 予 後 良 好 で 、2~5 日で自然治癒します。 レ ジ オ ネ ラ 症 の 検 査 は 、 患 者 の 尿 中 抗 原 検 査 な ど に よ り 診 断 さ れ ま す 。 (2 )「 建 築 物 環 境 衛 生 管 理 基 準 」 や 「 レ ジ オ ネ ラ 防 止 指 針 」 と の 関 連 レ ジ オ ネ ラ 属 菌 は 、一 般 に 36℃ 前 後 が 最 も 増 殖 に 適 し た 温 度 と い わ れ 、環 境 中 で は ア メ ー バ な ど の 原 虫 や 藻 類 内 で 増 殖 し 、 共 生 関 係 を 形 成 し て い ま す 。 冷 却 塔 な ど レ ジ オ ネ ラ 属 菌 の 繁 殖 に 適 し た 設 備 で は 、 法 令 に 規 定 さ れ た 点 検 及 び 清 掃 を 実 施 し 、レ ジ オ ネ ラ 属 菌 と ア メ ー バ 類 の 発 生 を 防 止 す る こ と が 重 要 で す 。 ア 冷却塔 東 京 都 の 調 査 で は 、 冷 却 塔 下 部 水 槽 の レ ジ オ ネ ラ 属 菌 検 出 率 が 約 50%です (22 ページ参照)。 冷 却 水 の 温 度 は 、 細 菌 や ア メ ー バ な ど の 増 殖 に 適 し て お り 、 冷 却 水 が エ ア ロ ゾ ル と な る た め 、 特 に 、 冷 却 塔 が 外 気 取 入 口 や 居 室 の 窓 な ど に 近 い 場 所 に 設 置 さ れ て い る 場 合 は 、 定 期 的 な レ ジ オ ネ ラ 属 菌 検 査 を 含 め た 管 理 が 望 ま れ ま す 。 イ 中央式給湯設備 中 央 式 給 湯 水 は 、 配 管 で の 滞 留 時 間 が 長 い た め 、 水 温 が 低 い 場 合 に は レ ジ オ ネ ラ 属 菌 が 増 殖 し や す く な り ま す 。 シ ャ ワ ー 等 エ ア ロ ゾ ル が 発 生 す る 可 能 性 の あ る 器 具 の 点 検 ・ 清 掃 も 望 ま れ ま す 。 ウ 水景設備 滝 や 噴 水 等 は エ ア ロ ゾ ル に よ る 飛 散 が 発 生 し や す い た め 、 レ ジ オ ネ ラ 属 菌 の 発 生 を 防 ぐ 維 持 管 理 が 望 ま れ ま す 。 (3 )日 常 の 管 理 に つ い て ア 冷却塔 冷 却 塔 及 び 冷 却 水 管 に つ い て 、 法 令 に 基 づ く 点 検 及 び 清 掃 を 実 施 し 、 レ ジ オ ネ ラ 属 菌 と そ の 宿 主 と な る ア メ ー バ 類 の 繁 殖 を 抑 え ま す 。 冷 却 水 管 の 清 掃 は 、 開 放 型 冷 却 塔 で は 、 冷 却 塔 と 冷 温 水 発 生 器 を 結 ぶ 往 還

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-4-写 真 2 丸 型(向 流 型 )冷 却 塔 写 真 3 角 形( 直 交 流 型 冷 却 塔 ) 管 の 冷 却 水 管 内 の 洗 浄 を 行 い ま す 。 ま た 、 密 閉 型 の 冷 却 塔 に つ い て も 、 同 様 に 冷 却 塔 内 で 外 気 と 接 す る 冷 却 水 の 全 管 路 内 の 洗 浄 が 必 要 で す 。 イ 中央式給湯設備 末 端 の 給 湯 栓 に お い て 、常 時55℃以上とするか、遊離残留塩素濃度 0.1mg/L 以 上 と し ま す 。 夏 期 に 加 熱 装 置 を 停 止 し て い る 場 合 で も 、 末 端 で 遊 離 残 留 塩 素 濃 度 0.1mg/L 以上を確保し、飲料水と同等の管理を行ないます。 ウ 水景設備 定 期 的 に 清 掃 、 消 毒 を 行 い 、 必 要 に 応 じ て 、 循 環 ろ 過 装 置 や 消 毒 装 置 を 設 置 し ま す 。 (4 ) レ ジ オ ネ ラ 属 菌 検 出 時 の 対 応 ア レジオネラ症患者が発生した場合 原 因 と 思 わ れ る 設 備 の 使 用 を 直 ち に 中 止 す る と と も に 、管 轄 す る 保 健 所 に 連 絡 し て く だ さ い 。 そ し て 、 保 健 所 の 指 導 に 従 っ て く だ さ い 。 感 染 拡 大 防 止 措 置 を 行 う こ と が 重 要 で す 。 イ 自主検査等によりレジオネラ属菌が検出された場合 ・ エ ア ロ ゾ ル を 直 接 吸 引 す る 可 能 性 の 低 い 人 工 環 境 水 ( 冷 却 塔 な ど ) は 、 100CFU/100mL 以上検出された場合。 ・エ ア ロ ゾ ル を 直 接 吸 引 す る 恐 れ の あ る も の ( シ ャ ワ ー な ど ) は 検 出 限 界 (10CFU/100mL)以上検出された場合。 以 上 の よ う な 場 合 は 、「 建 築 物 に お け る 維 持 管 理 マ ニ ュ ア ル 」 や 「 レ ジ オ ネ ラ 防 止 指 針 」 に 従 い 、 清 掃 及 び 化 学 的 洗 浄 を 行 い ま す 。な お 、実 施 後 に も レ ジ オ ネ ラ 属 菌 の 検 査 を 行 い 、管 理 目 標 値 以 内 で あ る こ と を 確 認 し ま す 。

< 冷 却 塔 の 具 体 的 な 維 持 管 理 方 法 >

(「 建 築 物 に お け る 維 持 管 理 マ ニ ュ ア ル 」( 厚 生 労 働 省 )よ り 原 文 の ま ま 抜 粋 。写 真 は 添 付 ) < 基 本 的 な 考 え 方 > 平 成 15 年 4 月より、建築物衛生法では、空 気 調 和 設 備 を 設 置 し て い る 場 合 、 病 原 体 に よ っ て 居 室 の 内 部 の 空 気 が 汚 染 さ れ る こ と を 防 止 す る た め の 措 置 と し て 、 ① 冷 却 塔 や 加 湿 装

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置 に 供 給 す る 水 は 水 道 法 の 水 質 基 準 に 適 合 す る こ と 、② 冷 却 塔 や 加 湿 装 置 の 汚 れ の 状 況 を 定 期 的 に 点 検 し 、必 要 に 応 じ 、清 掃 等 を 行 う こ と 、③ 冷 却 塔 を 含 む 冷 却 水 の 水 管 及 び 加 湿 装 置 の 清 掃 を 1 年 以 内 ご と に 1 回行うこと、等が定められた。 こ こ で は 、建 築 物 の 冷 却 塔 や 給 湯 設 備 な ど で 増 殖 し 、易 感 染 性 の 高 齢 者 や 免 疫 不 全 者 に 対 し て 重 篤 な 肺 炎 症 状 を も た ら す こ と が あ る レ ジ オ ネ ラ 症 防 止 る た め の 維 持 管 理 方 法 に つ い て 示 す 。 ※ レ ジ オ ネ ラ 属 菌 レ ジ オ ネ ラ 属 菌 は 、 発 育 至 適 温 度 が 36℃前後であり、水を使用する設備に付 着 す る 生 物 膜 に 生 息 す る 微 生 物 の 細 胞 内 で 繁 殖 し 、こ れ ら の 設 備 か ら 発 生 し た エ ア ロ ゾ ル を 吸 入 す る こ と に よ っ て 感 染 す る 。レ ジ オ ネ ラ 症 の 発 生 の 防 止 対 策 の 基 本 は 、① 微 生 物 の 繁 殖 及 び 細 菌 性 ス ラ イ ム( 生 物 膜 )等 の 生 成 の 抑 制 、② 設 備 内 に 定 着 す る 細 菌 性 ス ラ イ ム 等 の 除 去 、 ③ エ ア ロ ゾ ル の 飛 散 の 抑 制 、 で あ る 。 図 1 - Ⅱ - 1 冷 却 塔 を 用 い た 空 気 調 和 設 備 の 例 図 1 - Ⅱ - 2 冷 却 塔 の 例 ( 左 : 開 放 型 、 右 : 密 閉 型 )

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-6-< 維 持 管 理 方 法 > 1 維 持 管 理 の 留 意 点 建 築 物 の 冷 却 水 は 、 空 調 用 冷 凍 機 な ど の 熱 を 発 生 す る 機 器 と 冷 却 塔 の 間 を 循 環 し て 、発 生 し た 熱 を 冷 却 塔 か ら 放 出 す る の に 用 い ら れ る 。冷 却 水 は 、夏 期 に 水 温 25~35℃程度であり、日射、酸素の供給、大気への開放、蒸発による 有 機 物 質 の 濃 縮 な ど レ ジ オ ネ ラ 属 菌 を 含 め て 微 生 物 や 藻 類 の 増 殖 に 好 適 な 環 境 と な り 、ス ラ イ ム を 発 生 し や す い 。冷 却 塔 で は 冷 却 水 が 菌 に 汚 染 さ れ て い る と 、蒸 発 時 に 菌 を エ ア ロ ゾ ル と し て 空 中 に 飛 散 さ せ る た め 、レ ジ オ ネ ラ 症 防 止 の た め に 最 も 注 意 を 払 わ な け れ ば な ら な い 建 築 設 備 の 一 つ で あ る 。ま た 、冷 却 水 は 冷 却 塔 で の 蒸 発 に 伴 い 徐 々 に 水 中 の カ ル シ ウ ム 、ケ イ 酸 塩 、炭 酸 塩 な ど の 塩 類 が 濃 縮 し 、冷 却 水 系 統 に ス ケ ー ル の 生 成 、腐 食 の 発 生 を 引 き 起 こ す こ と が あ る 。そ の た め 生 物 膜 や ス ケ ー ル の 生 成 を 抑 制 し 、除 去 を 行 う こ と が 重 要 で あ る 。 2 冷 却 塔 の 維 持 管 理 全 て の 冷 却 塔 が 維 持 管 理 の 対 象 で あ る が 、 特 に 易 感 染 性 の 患 者 、 老 人 等 が 利 用 す る 施 設 に お い て 、外 気 取 入 口 に 近 い 冷 却 塔 や 丸 形(カウンターフロー)冷 却 塔 の 場 合 は 、 さ ら に 厳 重 な 管 理 が 必 要 で あ る 。 ( 1 ) 冷 却 塔 の 調 査 ・ 記 録 建 築 物 内 の 冷 却 塔 の 維 持 管 理 に あ た っ て は 、 冷 却 塔 に 関 し て 位 置 と 型 式 と 管 理 の 調 査 を 行 い 、 管 理 シ ー ト を 作 成 す る ( 表 2-1)。 ア 冷却塔型式の調査 建 築 物 内 の 冷 却 塔 の 型 式(角形・丸形の区別)と冷凍容量を調べる。 丸 形 の 冷 却 塔 は 角 形 に 比 べ て 飛 散 水 量 が 多 い の で 、 特 に 注 意 す る 。 イ 冷却塔相対位置の調査 建 築 物 内 の 各 冷 却 塔 に 対 し て 外 気 取 入 口 と 冷 却 塔 の 位 置 を 調 べ て 平 面 図 に 記 入 す る 。特 に 、病 院 な ど で は 病 室 の 窓 と 冷 却 塔 の 位 置 、屋 上 や 庭 な ど 患 者 や 老 人 の 集 ま る 場 所 と 冷 却 塔 と の 距 離 が 10m以内の冷却塔または 飛 散 水 が 届 く と 考 え ら れ る 冷 却 塔 を 要 注 意 対 象 と す る 。 ウ 冷却塔管理の調査 現 状 の 冷 却 塔 の 洗 浄 方 法 、洗 浄 回 数 、薬 注 の 有 無 、薬 注 し て い る 場 合 は そ の 目 的 を 調 べ る 。 ま た レ ジ オ ネ ラ 属 菌 検 査 の 状況 お よ び そ の 結 果 を 調 べ 、 記 録 す る 。

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表 2 - 1 冷 却 塔 管 理 シ ー ト 冷 却 塔 No. 1(例 ) 2 設 置 位 置 第 一 棟 屋 上 NO.1 冷 却 塔 型 式 丸 型 (カ ウ ン タ ー フ ロ ー ) 冷 却 能 力 120RTON 保 有 水 量 500 設 置 年 1975 年 6 月 対 象 第 一 棟 空 調 最 も 近 い 外 気 取 入 口 事 務 室 空 調 用 OA 取 入 口 同 上 距 離 15m 最 も 近 い 居 室 の 窓 第 一 棟 6 階 事 務 室 同 上 距 離 26m (人 が 歩 行 す る )最 も 近 い 場 所 第 一 棟 屋 上 同 上 距 離 12m 冷 却 塔 管 理 責 任 者 ○ ○ ○ ○ 冷 却 塔 管 理 担 当 者 △ △ △ △ 薬 注 の 有 無 有 り 抗 レ ジ オ ネ ラ 薬 注 の 有 無 有 り 薬 注 方 法 比 例 注 入 方 式 薬 剤 名 称 レ ジ オ バ イ オ サ イ ド 223 薬 剤 主 成 分 イ ソ チ ア ゾ ロ ン メ ー カ ー 名 ○ ○ (株 ) 注 入 量 50g/㎡ 担 当 者 名 ○ ○ 電 話 番 号 ○ ○ ○ ○ 一 〇 〇 〇 〇 備 考 1985 年 5 月 エ リ ミ ネ ー タ ー 取 付 エ 対 策 作 業 冷 却 水 管 を 含 む 冷 却 塔 の 清 掃 を 1 年 以 内 毎 に 行 う と と も に 、冷 却 塔 及 び 冷 却 水 は 、冷 却 塔 の 使 用 開 始 時 及 び 使 用 を 開 始 し た 後 、1 ヶ 月 以 内 毎 に 1 回 、 定 期 に そ の 汚 れ の 状 況 を 点 検 す る ( 施 行 規 則 第 3 条の 18)。 特 に 、要 注 意 対 象 の 冷 却 塔 に 関 し て は 、月 1 回 の 洗 浄 を 行 い 、レ ジ オ ネ ラ 属 菌 の 検 査 を 定 期 的 に 行 う か 、化 学 的 洗 浄 の 後 、抗 レ ジ オ ネ ラ 用 空 調 水 処 理 剤 を 投 入 す る 。数 日 以 上 に わ た る 長 期 停 止 後 の 運 転 開 始 時 に は 冷 却 塔 の 殺 菌 処 理 を 行 う 。 ま た 、設 備 の 更 新 計 画 が あ る 場 合 は 、要 注 意 対 象 の 冷 却 塔 を 優 先 的 に 角 形(クロスフロー)に取り替えることや設置位置の変更を検討する。

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-8-( 2 ) 定 期 清 掃 -8-( 物 理 的 な 清 掃 ) 冷 却 塔 の 物 理 的 な 清 掃 及 び 清 掃 に 伴 う 冷 却 水 の 入 れ 替 え は 、設 備 の 保 守 管 理 上 重 要 で あ る 。 し か し 、 物 理 的 な 清 掃 の み で は 効 果 が 持 続 せ ず 、 一 旦 減 少 し た 冷 却 水 中 の レ ジ オ ネ ラ 属 菌 は 、 通 常 、 運 転 再 開 と と も に 増 加 を 始 め る 。 《 物 理 的 な 清 掃 の 一 般 的 な 方 法 》 ア 冷 却 水 の 循 環 を 停 止 し た 後 、 冷 却 塔 下 部 水 槽 の 水 を 排 出 す る 。 イ 冷却塔内部の汚れは、デッキブラシ等を用いて洗い流す。 ウ 充填材の汚れは、高圧ジェット洗浄で落とす。 エ 洗浄により、下部水槽に溜まった汚れは冷却塔の排水 口から排出 し、 冷 却 水 系 に 混 入 し な い よ う に す る 。 オ 冷却塔内部をよくすすいだ後、清水を張り運転を再開 する。なお 、清 掃 に 際 し て は 、 作 業 員 の 安 全 確 保 の た め 、 保 護 マ ス ク 、 保 護 メ ガ ネ 、 ゴ ム 手 袋 等 を 着 用 さ せ る 。 1 - 2 冷 却 水 系 の 維 持 管 理 ( 1 ) 冷 却 水 系 の 維 持 管 理 に 関 す る 留 意 点 冷 却 水 系 の レ ジ オ ネ ラ 属 菌 を 抑 制 す る に は 、 定 期 的 な 清 掃(物 理 的 清 掃 ) を 行 う と と も に 化 学 的 洗 浄 と 殺 菌 剤 添 加 と を 併 用 す る こ と が 望 ま し い 。 化 学 的 洗 浄 は 冷 却 塔 の 運 転 開 始 時 と 終 了 時 に 行 い 、 冷 却 塔 の 運 転 中 は 殺 菌 剤 を 連 続 的 に 投 入 す る こ と が 必 要 で あ る 。 さ ら に 、 洗 浄 殺 菌 効 果 を 維 持 す る た め に ス ケ ー ル 防 止 や ス ラ イ ム 防 止 等 の 水 処 理 を 行 う こ と も 重 要 で あ る 。 ま た 、 冷 却 塔 や 冷 却 水 の 維 持 管 理 状 況 の 定 期 的 な 点 検 や レ ジ オ ネ ラ 属 菌 の 定 期 検 査 の 実 施 は 、 レ ジ オ ネ ラ 属 菌 抑 制 対 策 の 効 果 確 認 と と も に 冷 却 水 系 の 適 正 な 管 理 を 行 う た め 必 要 で あ る 。 表 1 - Ⅱ - 1 冷 却 水 系 に お け る レ ジ オ ネ ラ 属 菌 対 策 水 処 理 の 流 れ 冷 却 塔 管理項目 使用開始時 使 用 中 レジオネラ属 菌殺菌剤[間 欠投入] レジオネラ属 菌殺菌剤[間 欠投入]  +(併用) 総合水処理剤 [連続注入] レジオネラ属 菌殺菌剤[投 入]   総合水処理剤 (レジオネラ 属菌殺菌効果 含)[連続注 入]   レジオネラ属 菌検査(検査 より)   レジオネラ属 菌殺菌剤[投 入] 総合水処理剤 (レジオネラ 属菌殺菌効果 含)[連続注入] レジオネラ属 菌検査(検査 により) レジオネラ属 菌殺菌剤[投 入] 使用終了時  洗浄(化学的洗浄)  レジオネラ属菌対策 ・定期点検(毎月) ・定期清掃(毎月) ・冷却水濃縮管理 (冷却水のブロー) ・細菌検査(レジオ  ネラ属菌検査)  洗浄(化学的洗浄)

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ア 維 持 管 理 の 流 れ ( ア ) 使 用 開 始 時 化 学 的 洗 浄 を 行 う 。 ま た 、 休 止 後 再 開 時 に は 再 開 す る 前 に 殺 菌 等 の 処 理 を す る 。 ( イ ) 使 用 期 間 中 ① 冷却水の殺菌剤処理 洗浄殺菌効果を持続させるための水処理 ③ 定期清掃(毎月1回程度の物理的洗浄) ④ 定期点検(毎月1回程度) ⑤ レジオネラ属菌検査(「第 3 版レジオネラ防止指針(公益財団法人 日 本 建 築 衛 生 管 理 教 育 セ ン タ ー )」「 Ⅳ.1 感染因子の点数化」参考) ( ウ ) 使 用 終 了 時 化 学 的 洗 浄 を 行 う 。 ( エ ) 緊 急 時 レ ジ オ ネ ラ 症 患 者 の 集 団 発 生 が 確 認 あ る い は 推 定 さ れ た 場 合 等 に は 検 水 を 保 存 し た 上 で 化 学 的 洗 浄 に よ り 冷 却 水 系 を 殺 菌 す る 。 ( 2 ) 化 学 的 洗 浄 冷 却 水 系 を 化 学 的 に 殺 菌 洗 浄 す る に は 、 過 酸 化 水 素 、 塩 酸 、 又 は 有 機 酸 な ど の 酸 を 循 環 さ せ る 。 化 学 的 洗 浄 に よ っ て 冷 却 水 系 全 体 が か な り の 程 度 ま で 殺 菌 さ れ 、 レ ジ オ ネ ラ 属 菌 数 も 検 出 限 界 以 下 と な る 。 し か し 、 化 学 的 洗 浄 の 効 果 は 持 続 し な い の で 、 条 件 に よ っ て レ ジ オ ネ ラ 属 菌 数 は 2 週間前後で洗浄前の状態に復 帰 す る 。 こ の 洗 浄 に 用 い る 薬 剤 に よ っ て は 、 ス ケ ー ル 、 ス ラ イ ム も 同 時 に 除 去 さ れ る が 、 腐 食 性 の 強 い 薬 剤 を 使 用 す る 場 合 は 、 系 内 の 金 属 素 材 の 腐 食 防 止 に 十 分 配 慮 し な け れ ば な ら な い 。

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-10-ア 化 学 的 洗 浄 剤 の 種 類 と 特 徴 表 1 - Ⅱ ― 2 化 学 的 洗 浄 主 な 目 的 使 用 濃 度 特 徴 過 酸 化 水 素 又 は 過 炭 酸 塩 ス ラ イ ム 洗浄、殺菌 数 % 有 機 物 を 酸 化 分 解 し 殺 菌 。 酸 素 発 砲 し ス ラ イ ム 剥 離 。 塩 素 剤 : 次 亜 塩 素 酸 ナ ト リ ウ ム 溶 液 等 ス ラ イ ム 洗浄、殺菌 残 留 塩 素 と し て5~ 10mg/L 有 機 物 を 酸 化 分 解 し 殺 菌 。 消 費 量 を 見 な が ら の 補 充 添 加 が 必 要 。必 要 に 応 じ 腐 食 防 止 剤 を 併 用 。 各 種 有 機 系 殺 菌 剤 ス ラ イ ム 洗浄、殺菌 数 百 mg/L ( 薬 剤 の 種 類 に よ り 異 な る ) 金 属 に 対 す る 腐 食 性 低 い 。 イ 洗 浄 の タ イ ミ ン グ ① 冷却塔の運転開始時。 冷却塔の運転終了時。 ③ レジオネラ属菌が 100CFU/100mL 以上検出された場合直ちに洗浄。 洗 浄 後 、 検 出 限 界 以 下 (10CFU/100mL 未満)であることを確認。 ④ 緊 急 時 : レ ジ オ ネ ラ 症 患 者 の 集 団 発 生 が 確 認 あ る い は 推 定 さ れ た 場 合 、 検 水 保 存 の 上 、直 ち に 洗 浄 。洗 浄 後 、検 出 限 界 以 下(10CFU/100mL 未満) で あ る こ と を 確 認 。

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ウ 薬 剤 の 種 類 別 洗 浄 方 法 洗 浄 方 法 の 流 れ は 以 下 の と お り 。な お 、処 理 時 間 、濃 度 は 冷 却 水 系 の 汚 れ 状 況 に よ り 異 な る 。 表 1 - Ⅱ - 3 過 酸 化 水 素 塩 素 剤 各 種 有 機 系 殺 菌 剤 1 冷 却 塔 の フ ァ ン 停 止 2 投 入 予 定 量 に 応 じ て 冷 却 塔 下 部 水 槽 の 水 位 を 下 げ る 。 ↓ ↓ 3 ブ ロ ー 停 止 4 冷 却 水 を 循 環 さ せ な が ら 過 酸 化 水 素 を 徐 々 に 添 加 す る 。 発 砲 す る の で 必 要 に 応 じ て 配 管 途 中 で エ ア 抜 き を す る 。 冷 却 水 を 循 環 さ せ な が ら 薬 剤 を 徐 々 に 添 加 。 必 要 に 応 じ て 同 時 に 腐 食 防 止 剤 を 添 加 。 発 泡 す る の で 必 要 に 応 じ て 配 管 途 中 で エ ア 抜 き 。 冷 却 水 を 循 環 し な が ら 徐 々 に 添 加 。 5 必 要 に 応 じ て 過 酸 化 水 素 濃 度 を 測 定 し 、 洗 浄 状 態 を 把 握 。 残 留 塩 素 濃 度 を 測 定 し 、 所 定 濃 度 を 保 持 す る よ う 補 充 添 加 。 pH を 7.0~7.5 に保 つ の が 望 ま し い 。 ↓ 6 数 時 間 循 環 後 、 亜 硫 酸 塩 な ど で 中 和 。 洗 浄 水 を 全 ブ ロ ー 、 水 洗 。 数 時 間 循 環 後 、 洗 浄 水 ブ ロ ー 開 始 。 緊 急 殺 菌 洗 浄 時 は 12 ~24 時間循環後全ブ ロ ー し 、 物 理 清 掃 。 一 定 時 間 循 環 後 、 洗 浄 水 ブ ロ ー 開 始 。 7 循 環 水 の 汚 れ が 激 し い 場 合 は 循 環 水 洗 を 繰 り 返 す 。 循 環 水 の 汚 れ が 激 し い 場 合 は ブ ロ ー 量 を 多 く す る か 又 は 全 部 ロ ー 。 循 環 水 の 汚 れ が 激 し い 場 合 は ブ ロ ー 量 を 多 く す る か 又 は 全 ブ ロ ー 。 8 系 内 に 清 水 を 張 り 、 通 常 運 転 復 帰 。

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-12-( 3 ) 冷 却 水 の 殺 菌 剤 処 理 ア 多 機 能 型 薬 剤 多 機 能 型 薬 剤 は 総 合 水 処 理 剤 あ る い は 複 合 水 処 理 剤 な ど と 呼 ば れ 、 ス ケ ー ル 防 止 剤 、 腐 食 防 止 剤 、 ス ラ イ ム コ ン ト ロ ー ル 剤 と レ ジ オ ネ ラ 属 菌 の 殺 菌 剤 ( 又 は 抑 制 剤 ) を 含 有 す る も の で あ り 、 ス ラ イ ム コ ン ト ロ ー ル 剤 と 殺 菌 剤 、抑 制 剤 が 同 一 薬 剤 の 場 合 も あ る 。多 機 能 型 薬 剤 は 薬 注 装 置 を 使 用 し 、 連 続 的 に 注 入 し て 、 そ の 効 果 を 発 揮 す る 。 ( ア ) 薬 剤 の タ イ プ 殺 菌 型 薬 剤 : そ の 薬 剤 自 体 が 菌 数 を 減 少 さ せ る タ イ プ 抑 制 型 薬 剤 : 化 学 的 洗 浄 な ど に よ り 一 旦 菌 数 を 低 下 さ せ て か ら 使 用 し 、 菌 数 増 加 を 抑 制 す る タ イ プ ( イ ) 薬 剤 の 注 入 方 法 ① 冷却塔の化学的洗浄を行ったのち、冷却塔水槽に多機能型薬剤を初期 投 入 す る 。 ② 初期導入濃度は 100~500mg/L(薬剤の種類により異なる)である。 ③ 冷却塔の運転開始時、薬液注入ポンプを稼働させ、薬剤を連続的に所 定 の 場 所 に 注 入 す る 。 ④ 薬 剤 の 注 入 量 は 補 給 水 量 比 例 方 式 あ る い は 冷 却 塔 運 転 時 タ イ マ ー 制 御 方 式 に よ り 、 冷 却 水 中 の 薬 剤 維 持 濃 度 が 100~500mg/Lになるよう に 調 整 す る 。 ⑤ 冷却塔の運転期間中、薬剤濃度を分析し薬剤維持濃度を調整する。 ⑥ なお、初期投入濃度及び維持濃度は薬剤の種類により異なるので、個 別 の 水 処 理 計 画 に 基 づ き 実 施 す る こ と と す る 。 イ 単 一 機 能 型 薬 剤 単 一 機 能 型 薬 剤 と は 、 ス ラ イ ム コ ン ト ロ ー ル ・ レ ジ オ ネ ラ 属 菌 の 殺 菌 機 能 を 有 す る タ イ プ を 示 す 。 こ の 場 合 、 腐 食 防 止 ・ ス ケ ー ル 防 止 機 能 を 有 す る 薬 剤 を 別 途 注 入 す る 。 こ の た め 、2 液型薬剤とも呼ばれる。 以 下 に は レ ジ オ ネ ラ 属 菌 へ の 殺 菌 剤 を 記 載 す る 。( 単 一 機 能 型 薬 剤 に は 抑 制 タ イ プ は 使 用 し な い 。) ( ア ) レ ジ オ ネ ラ 属 菌 の 殺 菌 剤 の 例 ① 塩 素 冷 却 水 中 の 残 留 塩 素 濃 度 を 2~5mg/L に維持すれば、レジオネラ属菌 に 対 す る 殺 菌 効 果 が 得 ら れ る 。 ② そ の 他 有 機 化 合 物 冷 却 水 系 に 使 用 さ れ る 殺 菌 剤 の 多 く は 有 機 化 合 物 で あ り 、 そ の 組 成 、 作 用 有 効 濃 度 は 様 々 で あ る

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1 表 1 - Ⅱ - 4 レ ジ オ ネ ラ 属 菌 に 対 す る 代 表 的 な 殺 菌 剤 ( 有 効 濃 度 と 作 用 時 間 の 参 考 値 ) 化 合 物 名 有 効 濃 度 (mg/L)×作 用 時 間 グ ル タ ー ル ア ル デ ヒ ド 7.5mg/L×6 時間、 15mg/L×3.4 時間 2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1、3-ジオール 7.5mg/L×28 時間、 15mg/L×21 時間 イ ソ チ ア ゾ ロ ン 化 合 物 7.5mg/L×22 時間、 15mg/L×18 時間 塩 素 0.5mg/L×0.6 分 過 酸 化 水 素 10000mg/L×2.5 分 (イ)薬剤ごとの添加方法 ① 酸化剤 塩 素 は 酸 化 力 が 強 い の で 、高 濃 度 の 衝 撃 添 加 方 法 は 冷 凍 機 の 熱 交 換 機 材 質 ( 銅 、 S U S 材 ) 又 は 、 配 管 材 質 ( 鉄 、 S U S 材 ) を 傷 め や す く な り ま す 。 低 濃 度 の 連 続 添 加 方 法 が 望 ま し い 。 ② 有機系殺菌剤 連 続 注 入 に よ り 、殺 菌 剤 の 有 効 成 分 を 常 に 残 留 さ せ る こ と も 有 効 で あ る が 、 ラ ン ニ ン グ コ ス ト の 関 係 上 、 衝 撃 添 加 方 法 が 望 ま し い 。 投 入 間 隔 は レ ジ オ ネ ラ 属 菌 数 を 減 少 さ せ た 後 に 菌 数 が 立 ち 上 が る ま で の 期 間 の 殺 菌 効 果 持 続 期 間 が 目 安 と な る 、 季 節 に も よ る が 一 般 的 に は 2~7 日である。 ウ パ ッ ク 剤 ス ケ ー ル 防 止 剤 、腐 食 防 止 剤 、ス ラ イ ム コ ン ト ロ ー ル 剤 と レ ジ オ ネ ラ 属 菌 の 殺 菌 剤 を 含 有 す る 錠 剤 等 の 固 形 剤 を プ ラ ス チ ッ ク 等 の 容 器 に 入 れ た 形 態 の も の と い い 、冷 却 塔 の 下 部 水 槽 、ま た は 、散 水 板 に 固 定 し て 使 用 す る 。冷 却 水 中 に 薬 剤 が 徐 々 に 溶 け 出 す 加 工 が さ れ て い て 、 効 果 は 1~3 ヶ月間持続する。 ( 4 ) 洗 浄 殺 菌 剤 効 果 を 維 持 す る た め の 水 処 理 冷 却 水 中 の レ ジ オ ネ ラ 属 菌 の 洗 浄 殺 菌 処 理 を 効 果 的 に 持 続 さ せ る た め に 、水 処 理 対 策 が 必 要 で あ る 。殺 菌 剤 の 効 果 を 持 続 さ せ る た め の 水 処 理 対 策 と し て は 、 冷 却 水 の 濃 縮 管 理 と ス ケ ー ル 、 ス ラ イ ム 、 腐 食 等 の 防 止 策 が 必 要 と な る 。

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-14-ア 冷 却 水 濃 縮 管 理 ( 冷 却 水 を ブ ロ ー す る ) ス ケ ー ル 防 止 の た め 冷 却 水 を 過 度 に 濃 縮 さ せ な い よ う に す る 。 水 中 に 腐 食 性 イ オ ン が 多 い 場 合 、 過 剰 な 濃 縮 は 腐 食 の 原 因 と も な る 。 一 般 に 濃 縮 の 限 度 は 塩 化 物 イ オ ン も し く は 電 気 伝 導 率 を 目 安 と す る が 、薬 剤 処 理 に 際 し て は 、 処 理 条 件 に 合 っ た 水 質 基 準 値 ( 濃 縮 度 ) を 採 用 す る 。 濃 縮 管 理 に は 図 2 - 1 の 方 式 等 で 冷 却 水 を 強 制 ブ ロ ー す る 。 イ 薬 剤 処 理 冷 却 水 系 に 発 生 す る 障 害 を 防 ぐ た め に 、目 的 に 応 じ て 、下 記 の 薬 剤 が 用 い ら れ ま す 。 ス ラ イ ム 防 止 薬 剤 の な か に は 、 レ ジ オ ネ ラ 属 菌 殺 菌 効 果 を 有 す る も の が あ る 。 ( ア ) ス ケ ー ル 防 止 主 に 炭 酸 カ ル シ ウ ム 系 ス ケ ー ル を 防 止 す る た め 、ホ ス ホ ン 酸 、合 成 有 機 高 分 子 化 合 物 、 重 合 リ ン 酸 塩 な ど が 用 い ら れ て い る 。 ( イ ) 腐 食 防 止 ( 防 食 ) 対 象 と す る 金 属 に よ り 使 用 す る 薬 剤 が 異 な る 。鉄 に 対 し て は リ ン 酸 塩 や 二 価 金 属 系 薬 剤 、 銅 に 対 し て は ア ゾ ー ル 系 薬 剤 が 使 用 さ れ る 。 ( ウ ) ス ラ イ ム 防 止 殺 菌 と 殺 藻 の 目 的 で 塩 素 系 、第 四 級 ア ン モ ニ ウ ム 系 、イ ソ チ ア ゾ ロ ン 系 、 有 機 臭 素 系 な ど 種 々 の 化 学 物 質 が 用 い ら れ て い る 。 こ れ ら の 薬 剤 は そ れ ぞ れ 適 正 な 濃 度 を 維 持 し な け れ ば な り ま せ ん 。そ の た め 自 動 ブ ロ ー 装 置 に 連 動 し て 薬 液 注 入 ポ ン プ を 作 動 さ せ た り 、 冷 却 塔 の 補 給 水 量 に 比 例 し て 薬 剤 を 注 入 す る( 図 Ⅰ ― Ⅱ - 4 )。効 果 の 異 な る 複 数 の 薬 剤 を 個 別 に 注 入 す る 場 合 も あ る が 、 複 合 効 果 を 持 た せ る に は 前 述 の 3 種の薬剤を混合し、一液として注入することもできる。小型冷却塔 で は 乾 電 池 等 を 利 用 し た 簡 易 薬 注 装 置 も 利 用 で き る 。 図 1 - Ⅱ - 3 自 動 ブ ロ ー の 方 式 例

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写 真 4 給 湯 用 貯 湯 槽

< 中 央 式 給 湯 設 備 の 具 体 的 な 維 持 管 理 方 法 >

(「 建 築 物 に お け る 維 持 管 理 マ ニ ュ ア ル 」( 厚 生 労 働 省 ) よ り 原 文 の ま ま 抜 粋 ) < 基 本 的 な 考 え 方 > 平 成 15 年 4 月に施行された政省令改正に よ り 、人 の 飲 用 、炊 事 用 、浴 用 そ の 他 人 の 生 活 の 用 に 供 す る 水 を 供 給 す る 場 合 、水 道 法 の 水 質 基 準 に 適 合 し た 水 を 供 給 す る こ と と さ れ た 。ま た 、給 湯 水 に つ い て 、循 環 ポ ン プ に よ る 貯 湯 槽 内 の 水 の 撹 拌 及 び 貯 湯 槽 底 部 の 滞 留 水 の 排 出 を 定 期 に 行 い 、貯 湯 槽 内 の 水 の 温 度 を 均 一 に 維 持 す る こ と 等 が 、新 た に 告 示 で 定 め ら れ た 。 特 に 中 央 式 給 湯 設 備 に お け る 湯 は 、 一 般 に 水 道 水 を 原 水 と す る も の で あ る が 、 湯 の 循 環・加 熱 に よ り 、消 毒 副 生 成 物 、機 器 や 配 管 材 料 か ら 溶 出 す る 金 属 イ オ ン 等 が 増 加 し て 水 質 が 悪 化 す る 傾 向 に あ り 、ま た 、給 湯 温 度 が 低 い と 一 般 細 菌 や 従 属 栄 養 細 菌 、レ ジ オ ネ ラ 属 菌 等 が 繁 殖 し て レ ジ オ ネ ラ 感 染 症 の 原 因 と な る こ と 等 が 指 摘 さ れ て い る 。 給 湯 水 を 含 め た 給 水 設 備 に お け る レ ジ オ ネ ラ 汚 染 を 防 止 す る た め に は 、建 築 物 衛 生 法 で 定 め ら れ た 維 持 管 理 を 確 実 に 実 施 し 、定 期 的 な 貯 水 槽・貯 湯 槽 の 清 掃 を 行 う ほ か に 水 温 の 管 理 、滞 留 水 の 防 止 、外 部 か ら の レ ジ オ ネ ラ 属 菌 の 侵 入 防 止 を 図 る こ と が 重 要 で あ る 。 こ こ で は 、建 築 物 の 冷 却 塔 や 給 湯 設 備 な ど で 増 殖 し 、易 感 染 性 の 高 齢 者 や 免 疫 不 全 者 に 対 し て 重 篤 な 肺 炎 症 状 を も た ら す こ と が あ る レ ジ オ ネ ラ 症 を 防 止 す る た め の 維 持 管 理 方 法 に つ い て 示 す 。 図 1 - Ⅱ - 4 自 動 薬 剤 注 入 方 式 例

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-16-< 維 持 管 理 方 法 > 2 中 央 式 給 湯 設 備 の 維 持 管 理 の ポ イ ン ト レ ジ オ ネ ラ 汚 染 防 止 対 策 か ら 見 た 中 央 式 給 湯 設 備 の 維 持 管 理 の 要 点 は 、以 下 の 3 点である。 ① 給湯温度の適切な管理 ② 給湯設備内における給湯水の滞留防止 ③ 給湯設備全体の清掃 し か し 、こ れ ら の 対 策 は 省 エ ネ の 視 点 や 、機 器 類 の 腐 食 防 止 の 面 な ど か ら 見 て 相 反 す る 内 容 の も の が 多 く 、ど の よ う な 維 持 管 理 を 実 施 す る か は 、建 築 物 の 用 途 と 給 湯 水 の 使 用 用 途 の 二 面 か ら 検 討 し 、各 施 設 に 適 し た 方 法 を 選 択 す る 必 要 が あ る 。 2 - 1 給 湯 温 度 の 適 切 な 管 理 給 湯 温 度 は そ の 管 理 が 不 十 分 で あ る と レ ジ オ ネ ラ 属 菌 を 含 む 細 菌 汚 染 を 招 く 要 因 に な り ま す が 、 適 切 な 管 理 に よ り レ ジ オ ネ ラ 汚 染 の 防 止 は 可 能 で あ る 。 ( 1 ) 温 度 管 理 の 考 え 方 レ ジ オ ネ ラ 汚 染 の 防 止 対 策 と し て は 、給 湯 設 備 内 の い ず れ の 部 位 の 給 湯 栓 類 に お い て も 、初 流 水 を 捨 て 、湯 温 が 一 定 に な っ た 時 点 で 55℃以上に保持さ れ て い る こ と が 重 要 で あ り 、貯 湯 槽 等 で の 設 定 温 度 を そ れ に 見 合 う 温 度 に 管 理 す る 必 要 が あ る 。貯 湯 式 の 給 湯 設 備 や 循 環 式 の 中 央 式 給 湯 設 備 を 設 置 す る 場 合 は 、貯 湯 槽 内 の 湯 温 が 60 度以上、末端の給湯栓でも 55 度以上となるよ う に 維 持 管 理 す る こ と 。 ( 2 ) 留 意 事 項 給 湯 温 度 で 注 意 し な け れ ば い け な い 点 は 熱 傷 で あ る 。給 湯 温 度 が 高 い ほ ど レ ジ オ ネ ラ 汚 染 の 防 止 効 果 は 増 す が 、同 時 に 熱 傷 の 危 険 性 も 増 す の で 、熱 傷 の 危 険 性 を 防 ぐ 対 策 が 必 要 に な る 。 ま た 、省 エ ネ 、省 資 源 対 策 か ら は 必 要 以 上 に 給 湯 温 度 を 上 げ な い こ と が 望 ま し い が 、そ の 場 合 で も 給 湯 温 度 が 55℃未満にならないように管理すること が 重 要 で あ る 。 レ ジ オ ネ ラ 属 菌 以 外 の 細 菌 汚 染 対 策 に つ い て は 、レ ジ オ ネ ラ 汚 染 の 防 止 対 策 を 実 施 す る こ と に よ り 兼 ね る こ と が 可 能 で あ る 。な お 、給 湯 水 の 水 質 検 査 の 採 水 場 所 は 、施 設 内 で 最 も 湯 待 ち 時 間 の 長 い 給 湯 栓 類 を 把 握 し て お き 、そ の 給 湯 栓 類 か ら 採 水 す る よ う に す る 。

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2 - 2 給 湯 設 備 内 に お け る 滞 留 水 の 防 止 滞 留 水 と な っ て い た 予 備 の 加 熱 装 置 が 原 因 と 思 わ れ る レ ジ オ ネ ラ 症 の 発 生 や 、循 環 経 路 が 短 絡 し 滞 留 水 と な っ て い た 配 管 系 が 、レ ジ オ ネ ラ 属 菌 や 従 属 栄 養 細 菌 の 生 息 域 に な っ て い た と い う 事 例 が 報 告 さ れ る な ど 、滞 留 水 は 細 菌 汚 染 の 原 因 と な る こ と が 示 唆 さ れ て い る 。こ の た め 、給 湯 温 度 の 適 切 な 管 理 と と も に 、給 湯 設 備 内 に お け る 滞 留 水 の 防 止 が 給 湯 水 の 衛 生 を 確 保 す る 上 で 重 要 で あ る 。 ま た 、滞 留 水 に よ る 障 害 は 、細 菌 汚 染 以 外 に 機 器 や 配 管 な ど か ら の 金 属 類 が 溶 出 す る と い う 問 題 を 引 き 起 こ す 。 滞 留 水 を 防 止 す る た め に は 、給 湯 設 備 全 体 で の 保 有 水 量 が 給 湯 使 用 量 に 対 し て 適 正 な 容 量 で あ る こ と 、配 管 内 を 含 め て 死 水 域 が 給 湯 設 備 内 に 生 じ て い な い こ と を 定 期 的 に 確 認 す る こ と 及 び 滞 流 水 の 定 期 的 な 放 流 が 重 要 で あ る 。 2 - 3 給 湯 設 備 全 体 の 清 掃 従 来 、給 湯 設 備 に つ い て は 、ボ イ ラ の 缶 体 検 査 の 一 環 と し て 貯 湯 槽 の 清 掃 が 行 わ れ て い た が 、給 水 設 備 に 比 べ る と そ の 方 法 が 十 分 で は な か っ た 。貯 湯 槽 の み の 清 掃 を 実 施 し て も レ ジ オ ネ ラ 属 菌 を 完 全 に は 除 去 で き ず 、配 管 等 を 含 む 給 湯 設 備 全 体 の 清 掃 が 必 要 で あ る 。加 熱 と 貯 留 を 繰 り 返 し 、残 留 塩 素 の 殺 菌 効 果 が 期 待 で き な い 給 湯 設 備 に お い て は 、給 水 設 備 に 比 べ よ り 徹 底 し た 清 掃 が 必 要 で あ る 。 ( 1 ) 清 掃 部 位 貯 湯 槽 の ほ か に 、 膨 張 水 槽 も レ ジ オ ネ ラ 属 菌 の 侵 入 経 路 と な る 可 能 性 が あ り ま す の で 、清 掃 を 実 施 す る 必 要 が あ り ま す 。そ の 他 の 部 位 に つ い て は 、 以 下 の 通 り 。 ・ 給 湯 配 管 : 内 面 に ス ラ イ ム が 形 成 さ れ て い る 可 能 性 が あ る の で 、 特 に レ ジ オ ネ ラ 属 菌 が 検 出 さ れ た 場 合 に は 、枝 管 等 を 含 め 配 管 全 体 に つ い て 管 洗 浄 を 実 施 す る 。 ・ 循 環 ポ ン プ や 弁 類 : 分 解 ・ 清 掃 を 実 施 す る 。 ・ シ ャ ワ ー ヘ ッ ド や 給 湯 栓 等 の 管 末 器 具 類 : 常 時 空 気 に 触 れ て お り 、 微 生 物 に 汚 染 さ れ る 機 会 も 多 い の で 、 分 解 ・ 清 掃 を 実 施 す る 。

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-18-( 2 ) 清 掃 方 法 ・ 回 数 の 例 部 位 清 掃 回 数 ・ 方 法 貯 湯 槽 ・ 膨 張 水 槽 厚 生 労 働 省 告 示 に 基 づ く 貯 水 槽 の 清 掃 を 準 用 し て 行 う 。 基 本 的 に 清 掃 頻 度 は 1 年に 1 回以上 と す る が 、 開 放 式 の 貯 湯 槽 お よ び 開 放 式 の 膨 張 水 槽 で あ っ て 、 冷 却 塔 が 接 近 し て い る 場 合 な ど 外 部 か ら の 汚 染 の 可 能 性 が 考 え ら れ る 場 合 に は 、 必 要 に 応 じ て 清 掃 回 数 を 多 く す る 。1 ヶ 月 に 1 回 以 上 定 期 的 に 70℃ 程 度 に 昇 温 し て フ ラ ッ シ ン グ を 実 施 す る 。 貯 湯 槽 以 外 の 循 環 ポ ン プ や 弁 類 1 年 に 1 回以上動作確認を兼ねて分解・清掃を 実 施 す る 。 給 湯 配 管 類 1 年に 1 回以上厚生労働省告示に基づく給水系 統 配 管 の 管 洗 浄 に 準 じ て 管 洗 浄 を 行 う こ と が 望 ま し い 。 シ ャ ワ ー ヘ ッ ド や 水 栓 の コ マ 部 6 ヶ月に 1 回以上定期的に点検し、1 年に 1 回 以 上 分 解 ・ 清 掃 を 実 施 す る 。 そ の 他 、 病 院 や 高 齢 者 対 象 の 施 設 に お け る シ ャ ワ ー ヘ ッ ド 1 ヶ 月 に 1 回以上定期的に 70℃程度に昇温して フ ラ ッ シ ン グ を 実 施 す る 。 図 2 - 2 シ ャ ワ ー ヘ ッ ド の 分 解 ・ 清 掃 の 例

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( 3 ) そ の 他 貯 湯 槽 お よ び 膨 張 水 槽 清 掃 作 業 時 に は 、 作 業 従 事 者 を 高 圧 洗 浄 時 な ど エ ア ロ ゾ ル 発 生 に 伴 う レ ジ オ ネ ラ 汚 染 か ら 守 る 等 、 安 全 対 策 の た め 、 マ ス ク 、 防 護 メ ガ ネ 、 ゴ ム 手 袋 等 に よ る 防 護 対 策 を 講 じ る 必 要 が あ る 。 2 - 4 水 質 管 理 ( 1 ) 水 質 検 査 給 湯 水 の 水 質 を 良 好 な 状 態 に 維 持 す る た め に は 、 定 期 的 な 水 質 検 査 に よ っ て 現 状 を 把 握 し 、適 切 な 維 持 管 理 を 行 う 必 要 が あ る 。ま た 、頻 繁 に 多 項 目 に わ た る 水 質 検 査 を 実 施 す る こ と は 困 難 な た め 、週 1 回 程 度 簡 易 的 な 日 常 検 査 を 行 う こ と が 望 ま し い 。 ( 2 ) 水 質 検 査 結 果 に 対 す る 対 策 給 湯 水 の 水 質 検 査 の 結 果 、 基 準 値 を 超 え る 一 般 細 菌 が 検 出 さ れ た 場 合 、 ま た は レ ジ オ ネ ラ 汚 染 が 認 め ら れ た 場 合 に は 、可 能 な 限 り そ の 原 因 を 究 明 し 、対 策 を 講 じ て 改 善 す る 必 要 が あ る 。必 要 に 応 じ て 以 下 の 対 策 を 組 み 合 わ せ て 対 応 す る こ と が 望 ま し い 。ま た 、レ ジ オ ネ ラ 属 菌 の 検 査 を 自 主 的 に 実 施 す る こ と が 望 ま し い 。 ① 給湯水の循環状況について確認し、滞留水をなくす。 ② 換水(強制ブロー)する。 ③ 貯湯槽等を清掃する。 ④ 加熱処理(約 70℃で約 20 時間程度循環)やフラッシングを行う。 ⑤ 高濃度塩素により系内を一時的に消毒する。 ⑥ 貯湯温度を 60℃、給湯温度を 55℃以上に保持する。 ⑦ 細菌検査の回数を増やす。

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-20-< 水 景 設 備 の 具 体 的 な 維 持 管 理 方 法 >

(「 第 3 版 レ ジ オ ネ ラ 症 防 止 指 針 」( 公 益 財 団 法 人 日 本 建 築 衛 生 管 理 セ ン タ ー ) よ り 原 文 の ま ま 抜 粋 ) 3 基 本 事 項 ( 水 景 設 備 の 維 持 管 理 の ポ イ ン ト ) 水 景 施 設 の レ ジ オ ネ ラ 汚 染 の 考 え 方 と し て は 、以 下 の 事 項 が 基 本 と な る 。特 に エ ア ロ ゾ ル の 発 生 し や す い 噴 水 ・ 落 水 の 形 態 で は 、 注 意 が 必 要 で あ る 。 ( 1 ) 清 掃 頻 度 を 多 く す る 。 ( 2 ) ろ 過 装 置 や 配 管 洗 浄 ・ 消 毒 を 定 期 的 に 行 う 。 ( 3 ) 利 用 形 態 を 考 慮 し 、 塩 素 剤 添 加 な ど 消 毒 装 置 を 設 け る 。 ( 4 ) 必 要 に 応 じ レ ジ オ ネ ラ 属 菌 検 査 を 行 う 。 3 - 1 維 持 管 理 に 関 す る 防 止 策 ( 1 ) 定 期 的 な 換 水 ・ 清 掃 を 行 う 。 定 期 的 な 換 水 ・ 清 掃 を 行 う こ と に よ っ て 、 レ ジ オ ネ ラ 属 菌 の 増 殖 を 防 止 す る 。 平 成 12 年度に実施した厚生労働省が行った調査では、清掃頻度が 2 回 未 満 / 年 の 場 合 、 レ ジ オ ネ ラ 属 菌 の 検 出 率 は 66.7%と高率であったが、 12 回以上/年では 16.7%であり、清掃頻度を多くすることはレジオネラ属 菌 汚 染 防 止 の た め に 有 効 で あ る 。 な お 、 同 調 査 で は 、 用 水 の 色 、 濁 り 、 泡 立 ち 、 壁 面 ・ 底 面 の ぬ め り 、 藻 類 の 発 生 な ど の 外 観 に 関 す る 項 目 が 換 水 ・ 清 掃 を 実 施 す る 目 安 と な る こ と も 報 告 さ れ て い る 。 ( 2 ) 残 留 塩 素 を 保 持 す る 。 残 留 塩 素 が あ る 程 度 の 濃 度 で あ れ ば レ ジ オ ネ ラ 属 菌 が 検 出 さ れ な い 。 定 期 的 に 残 留 塩 素 濃 度 を 確 認 し 、 遊 離 残 留 塩 素 濃 度 が 0.2mg/L以上確保 で き る よ う に 、 消 毒 装 置 の 管 理 を 行 う か 、 塩 素 剤 の 添 加 頻 度 を 調 整 す る 。 ( 3 ) ろ 過 器 の 定 期 的 な 清 掃 を 行 う 。 ろ 過 機 器 は レ ジ オ ネ ラ 属 菌 の 増 殖 場 所 と な り や す い の で 、 定 期 的 な 逆 洗 洗 浄 を 行 う 。 ( 4 ) レ ジ オ ネ ラ 属 菌 の 検 査 を 定 期 的 に 行 う 。 夏 期 な ど の 水 温 が 高 い 時 期 に は レ ジ オ ネ ラ 属 菌 が 検 出 さ れ や す い ( 増 殖 し や す い ) の で 、 検 査 頻 度 を 多 く す る こ と が 望 ま し い 。 ( 5 ) レ ジ オ ネ ラ 属 菌 が 検 出 さ れ た 場 合 の 措 置 レ ジ オ ネ ラ 属 菌 検 査 の 結 果 、 レ ジ オ ネ ラ 属 菌 が 100CFU/100mL 以上検 出 さ れ た 場 合 に は 、 直 ち に 噴 水 や 落 水 を 止 め 、 エ ア ロ ゾ ル が 発 生 し な い よ う に す る 。 復 帰 は 、 清 掃 、 消 毒 換 水 等 の 対 策 を 講 じ 、 再 度 レ ジ オ ネ ラ 属 菌 の 検 査 を 行 っ て 不 検 出(10CFU/100mL 未満)であることを確認した後と す る 。

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〔実態調査〕特定建築物のレジオネラ症防止対策に関する調査

1 調査目的 東京都では、レジオネラ症の防止や生息状況の把握などのため、特定建築物の冷却塔 について、レジオネラ属菌の実態調査を継続して行ってきました。その内、平成10 年 度から平成25 年度までの 15 年間の空調用冷却水におけるレジオネラ属菌の検出率の推 移を図1に示しました。 0 20 40 60 80 100 H10 H11 H13 H14 H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22 H23 H24 H25 (年度) 検 出 率 (% ) 図1 レジオネラ属菌検出率の推移(H10~H25 年度) 平成14 年度に建築物衛生法の政省令の改正が行われ、冷却塔の点検・清掃及び冷却 水管の清掃が管理基準に追加されました。その結果、平成15 年度以前は、検出率 60% 以上と高い検出率が見られていましたが、改正後の平成16 年度からは、検出率は、40 ~60%の間を推移するような傾向が見られました。しかし、その後も 50%前後と一定の 範囲で続き、維持管理上の課題が継続していると考えられています。 そこで、政省令改正後の維持管理の中で、最近の5年間のレジオネラ属菌の検出状況 と冷却塔の維持管理状況との関連性についてデータをまとめ、レジオネラ属菌の実態の 把握を行いました。 2 調査概要 (1)調査対象及び調査規模 ア 特定建築物の空調用冷却水におけるレジオネラ属菌363 検体 イ 再検査34 検体(上記調査結果で、レジオネラ属菌が 100CFU/100mL 以上検出され た冷却塔の清掃後を再検査の対象とした) (2)調査期間 平成21 年度から 25 年度までの 5 年間

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-22-(3)調査項目 レジオネラ属菌(検出下限:5 CFU/100mL) (4)調査方法 ア 冷却塔下部水槽から冷却水の採水を行い、レジオネラ属菌検査を行いました。 イ 冷却塔の設備状況や管理方法等について調査を行いました。 3 調査結果 (1)レジオネラ属菌検出状況 平成21 年度から 25 年度までの 5 年間のレジオネラ属菌の検出状況を図2に示しまし た。 レジオネラ属菌が検出された割合は、181 検体で 49.9%でした。その内、100CFU/100mL 以上検出された施設は、126 件(34.7%)でした。 菌数別に見ると最も多い検出数は1,000≦x<10,000CFU/100mL の 61 件で、検出さ れた施設の33.7%でした。さらに、100,000CFU/100mL 以上も 2 件あり、最大では 780,000CFU/100mL でした(図 3)。 50.1% (n=182) 15.2% (n=55) 34.7% (n=126) 不検出 不検出<x<100 100≦ 図2 レジオネラ属菌検出率 図3 レジオネラ属菌検出菌数別の件数

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(2)冷却塔補給水とレジオネラ属菌検出状況 冷却塔に補給している水の種類とレジオネラ属菌の検出状況を図4 に示しました。 補給水に上水を使用している施設では、レジオネラ属菌の検出率は47.4%、雑用系上 水(補給水が上水のうち、冷却塔補給水槽等を設けて、飲用水として管理をしていない 補給水)では51.5%、雨水などの雑用水を使用した施設では検出率は 80%でした(図 4)。 ※ 平成14 年建築物衛生法省令改正により、水道法第 4 条の水質基準を満たす補給水を使用するよう改善指導を 行っている。 図4 冷却塔補給水別レジオネラ属菌検出率 (3)冷却塔方式とレジオネラ属菌検出状況 冷却塔方式とレジオネラ属菌の検出状況を図5 に示しました。 レジオネラ属菌が100CFU/100mL 以上検出された割合は、開放式の冷却塔では 36.1%で、密閉式では 26.4%でした。 図5 冷却塔方式別レジオネラ属菌検出率 (4)冷却塔使用期間とレジオネラ属菌検出状況 レジオネラ属菌が100CFU/100mL 以上検出された割合は、冷却塔の使用期間が通年 では29.4%、夏期のみでは 42.0%でした(図 6)。

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図6 冷却塔使用期間によるレジオネラ属菌検出率 (5)冷却塔の維持管理とレジオネラ属菌検出状況 ア 冷却塔下部水槽の清掃頻度とレジオネラ属菌検出状況 レジオネラ属菌が100CFU/100mL 以上検出された割合は、冷却塔下部水槽の清掃 頻度が1 回/月程度では 25.6%、2~6 回/年程度では 33.6%、1 回/年程度では 45.4% でした(図7)。 25.6 33.6 45.4 37.9 13.3 18.4 17.0 25 61.1 48.0 37.5 75.0 62.1 0% 20% 40% 60% 80% 100% 1回/月程度 n=90 2~6回/年程度 n=152 1回/年程度 n=88 未実施 n=4 不明 n=29 100≦ 不検出<x<100 不検出 図7 冷却塔下部水槽の清掃頻度によるレジオネラ属菌検出率 イ 冷却水への薬剤注入の有無とレジオネラ属菌検出状況 冷却水に抗レジオネラ剤等の薬剤注入の有無によるレジオネラ属菌の検出状況を図 8 に示しました。 レジオネラ属菌が100CFU/100mL 以上検出された割合は、薬剤管理有りでは 32.8%、 薬剤管理無しでは39.4%でした。

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図8 冷却水への薬剤注入の有無によるレジオネラ属菌検出率 ウ 冷却水管清掃の実施状況とレジオネラ属菌検出状況 冷却水管の清掃を実施している施設では、レジオネラ属菌が100CFU/100mL 以上 検出された割合は30.8%、清掃を実施していない施設では 44.6%でした(図 9)。 図9 冷却水管清掃実施の有無によるレジオネラ属菌検出率 エ 冷却水管の清掃方法とレジオネラ属菌検出状況 年1回以上冷却水管の清掃を行っている253 施設の清掃方法とレジオネラ属菌の検 出状況を図10 に示しました。 レジオネラ属菌が100CFU/100mL 以上検出された割合は、化学洗浄では 29.8%、 物理洗浄では77.8%、換水のみでは 40.0%でした。

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図10 冷却水管の清掃方法によるレジオネラ属菌検出率 (6)再検査における水管清掃後のレジオネラ属菌の検出状況 レジオネラ属菌が100CFU/100mL 以上検出された冷却塔のうち、化学的洗浄による 冷却水管清掃が確認できた34 施設のレジオネラ属菌の生息状況について再検査を行いま した(図11)。 34 施設のすべての施設で、再検査の結果、レジオネラ属菌の菌数が減少していました。 特に、24 施設で不検出となり、70.6%で改善がみられました。最大 780,000CFU/100mL 検出された施設も水管を化学的洗浄することによって不検出となりました。また、6 施設 (17.6%)では、100CFU/100mL 未満となり、改善がみられました。しかし、再検査で も、菌数は減少したものの100CFU/100mL 以上検出された施設が、4 施設(11.8%)で した。 図11 化学洗浄による水管清掃後のレジオネラ属菌検出状況

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4 まとめ 平成14 年度に、建築物衛生法の政省令が改正され、冷却塔の維持管理について規定 されました。その後、「建築物における維持管理マニュアル」(11 ページ参照)の中では、 100CFU/100mL 以上検出された場合、直ちに洗浄し、検出限界以下であることを確認 することが示されています。今回の調査結果では、100CFU/100mL 以上検出された割 合は、34.7%でした(図 2)。 冷却塔補給水の種類と検出率をみると(図4)、雨水などを利用した雑用水では、レジ オネラ属菌の検出率が顕著に高くなる傾向にあることが分かりました。 冷却塔の開放式と密閉式の検出率を比較すると(図5)、開放式の方が、密閉型に比べ て、100CFU/100mL 以上検出された割合は、10%程度高くなっていました。しかし、 循環水管の短い密閉型においても、100CFU/100mL 以上検出された割合は 26.4%で、検 出率は43.4%で密閉型においてもレジオネラ属菌対策が必要なことが分かりました。 冷却塔使用期間と検出率(図6)については、100CFU/100mL 以上検出された割合 は、夏期のみ(42.0%)、通年(23.4%)で、夏期のみの施設で検出率が高いことが分かりま した。 冷却塔下部水槽の清掃の頻度については、清掃頻度が高い方が、不検出割合が高くな る傾向があることが分かりました(図7)。 冷却水への薬剤の注入の効果については、薬剤注入によって若干抑えられている傾向 がみられましたが、検出率に顕著な違いは見られていませんでした(図8)。 冷却水管の清掃に関して、化学的洗浄を年1回以上実施することによって、物理的洗 浄や換水のみに比べ、検出率が低く抑えられていることが分かりました(図9、10)。 また、再検査(図 11)の結果、100CFU/100mL 以上検出された施設で冷却水管の化学 的洗浄を行うことにより、すべての施設でレジオネラ属菌数の減少がみられました。そ の内、約70%は不検出となり、冷却水管の化学的洗浄の有効性が確認できました。しか し、化学的洗浄を行ったものの約30%の施設でレジオネラ属菌が再検出され、約 10% の施設では、再度、100CFU/100mL 以上検出されていました。 今後とも水管清掃方法の効果や維持管理について調査を行い、レジオネラ属菌発生防 止に有効な維持管理方法について検証して、感染症リスク低減に向けて普及啓発行って いく予定です。

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・デング熱は、デングウイルスに感染しておこる急性の熱性感染症で、発熱、 頭痛、筋肉痛や皮膚の発疹が主な症状です。 ・ 国 内 で デ ン グ ウ イ ル ス を 媒 介 す る の は 、 ヒ ト ス ジ シ マ カ ( や ぶ 蚊 ) で 、 日 中、屋外での活動性が高く、活動範囲は 50~100 メートル程度です。概 ね 5 月中旬~10 月下旬頃までが活動時期です ・ 成 虫 は 、 冬 を 越 え て 生 息 で き ず 、 卵 を 介 し て ウ イ ル ス が 次 世 代 の 蚊 に 伝 わ るとの報告はありません。 ・ ヒ ト か ら ヒ ト に は 感 染 せ ず 、 蚊 を 介 し て 感 染 し ま す 。 そ の た め 、 長 袖 、 長 ズボンの着用や忌避剤の使用などが効果的です。 ・ ヒ ト ス ジ シ マ カ は 、 ち ょ っ と し た 溜 り 水 が あ れ ば 、 産 卵 後 、 二 週 間 程 で 成 虫 に な り ま す 。 建 物 敷 地 に 放 置 さ れ た バ ケ ツ や 空 き 缶 な ど に 溜 り 水 が な い か、チェックしましょう。

ちょっと一息 ~最近の話題~

デング熱

国内感染症例について

東 京 都 で は 、 施 設 管 理 者 向 け の パ ン フ レ ッ ト を 、 ホ ー ム ペ ー ジ に 掲 載 し て い ま す 。 「施設管理者のための蚊の発生防止対策」 ( 検 索 キ ー ワ ー ド ) 施 設 管 理 者 + 蚊 の 発 生 防 止

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2 ノロウイルス(感染性胃腸炎)

冬期になると『ノロウイルス』という言葉が、よく聞かれるようになります。 ノロウイルスは、秋から冬にかけて特に流行する感染性胃腸炎の原因の一つであり、 近年は集団発生が報告される傾向が続いています。その多くは、食品などを介しての感 染ですが、中には食品を介さずに感染が拡大したと考えられる事例も増加しています。 建築物衛生法では、ノロウイルスの予防措置に関する直接的規定はありませんが、汚 染された手指やおう吐物の飛散等による感染例の報告もあります。そのため、多数の人 が使用し利用する特定建築物においては、レジオネラ症と並んで特段の配慮が必要な感 染症の一つです。 建物内での集団感染の発生の予防に必要な維持管理に加え、清掃の際の作業者の感染 防止のための情報を含めてご紹介いたします。 (1) ノロウイルスについて ア 形状 ノロウイルス(Norovirus)は、電子顕微鏡で観察される形態学的分類では SRSV (小型球形ウイルス)、あるいはノーウォーク様ウイルス“Norwalk-like viruses”と いう属名で呼ばれてきたウイルスです。2002 年の夏、国際ウイルス命名委員会によっ て『ノロウイルス』という正式名称が決定され、世界で統一されて用いられるように なりました。 小型の粒子状ウイルスで、大きさは直径30~38nm(1nm=0.000001mm)、インフ ルエンザウイルスのおおよそ1/3 程度、スギ花粉の 1/1000 の大きさです。 ノロウイルスにはたくさんの遺伝子型があり、また、培養した細胞や実験動物でウイ ルスを増やすことができません。そのため、ウイルスを分離して特定することが困難で あり、感染経路などの解明やノロウイルスを使った研究があまり進んでいません。 スギ花粉 30000nm ノロウイルス 30nm インフルエンザウイルス 100nm 大きさ なんと 1/1000‼ 写真1 ノロウイルス電子顕微鏡写真 (撮影:健康安全研究センター)

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-30-イ 症状 ノロウイルスによる感染性胃腸炎は、感染症法による定点把握対象疾患に分類されて おり、おう吐、下痢、腹痛など、急性の胃腸炎症状を起こします。有効なワクチンが なく、また、治療は輸液などの対症療法に限られますが、健康な方の多くは、数日の 経過で自然に回復します。 ウ 発生動向 統計上は、ノロウイルスによる単独の疾病ではなく、1999 年の感染症法の施行によ り始められた発生状況調査での『感染性胃腸炎』としての報告数より、発生の動向を 推測します。 『感染性胃腸炎』とは、主にウイルスなどの微生物を原因とする胃腸炎の総称で、原 因となるウイルスには「ノロウイルス」、「ロタウイルス」、「サポウイルス」などがあ ります。これらの胃腸炎は、症状のある期間が比較的短く、特別な治療法がないこと から、ウイルス検査を行わず、流行状況や症状から「感染性胃腸炎」と診断されるの が一般的です。 図1 定点医療機関あたりの感染性胃腸炎患者報告数の推移(東京都感染症情報センター) 東京都 ■ 2013.9~ ● 2012.9~ ▲ 2011.9~ ◆ 2010.9~ ▃▃ 2009.9~ 9 月 10 月 11 月 12 月 1 月 2 月 3 月 4 月 5月 6月 7月 8月 9 月 35.0 30.0 25.0 20.0 15.0 10.0 5.0 0 人/ 定点 ロタウイルス ノロウイルス GⅡ ノロウイルス GI サポウイルス 図2 感染性胃腸炎 ウイルス別検出割合

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エ 感染経路 ウイルスや細菌などの病原体の感染経路は、アメリカ疾病対策予防センター(CDC) による「隔離予防策のためのガイドライン2007」に述べられている3つの経路「接触 感染」「飛沫感染」「空気感染」が基本と考えられます。 感染経路 接触感染 →「手指を介した感染」 飛沫感染 →「微生物を含む飛沫が感染源となる人から発生し、空 気中を短距離移動し、感受性宿主の結膜・鼻粘膜・ 口腔に到達する感染」 空気感染 →「飛沫核 (微生物を含んだ飛沫から水分が蒸発した直 径5μm以下の小粒子で空気中を長く浮遊するもの) あるいは病原体を含む塵埃の拡散による感染」 (食品) (昆虫など小動物) ノロウイルスの代表的な感染経路として、以下が挙げられます。 【経路1】加熱不十分な汚染されたカキなどの二枚貝や、感染者によって汚染された 食品の喫食による感染 【経路2】感染者のふん便・おう吐物や、それらの不適切な処理で残ったウイルスが 口から取り込まれることによる感染 手に付着したウイルスが 口から体内へ 感染・発病 不顕性感染 感染者が調理 二枚貝に蓄積し、加熱不十分で喫食 残ったおう吐物・ふん便が乾燥し口に入る トイレから下水に 患者のふん便・ おう吐物の処理 川から海へ ノロウイルスが付着した 食品を食べて感染 出典 : 防ごう!! ノロウイルス食中毒 (東京都健康安全研究センター企画調整部健康危機管理情報課 東京都福祉保健局健康安全部食品監視課) 【経路1】 【経路2】 図3 代表的な感染経路 ウイルスを 排 出 ウイルスを 排 出

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-32-ノロウイルスはヒトの腸管でのみ増殖します。従って、建築物内での汚染原因はヒト由 来のウイルスによるものです。 ウイルスに汚染された食品や手指などを介して口から入り、小腸の細胞に感染します。 ごく少量のウイルスで起こり、10~100 個程度でも感染の可能性があるといわれます。 冬に発生する食中毒の原因としてよく知られるノロウイルスですが、結核のように空気 感染をするのでしょうか? ヒトからヒトへの感染経路として、ノロウイルスが飛沫感染、あるいは比較的狭い空間 などで空気を介して感染拡大したと考えられる報告があります 【事例 1~3】。 この場合は、結核、麻疹、肺ペストのような広範な感染(飛沫核感染) ではなく、限定 された空間内で埃とともにウイルスが空気中に舞い上がり周辺に散らばるような塵埃感染 と考えられています。 【事例1】ホテルレストランにおけるノロウイルスの空気感染が示唆された事例 平成 10 年 12 月、イギリスのレストランで 発生した感染性胃腸炎の集団感染の事例。 食事をしている客の1 人がテーブルでおう 吐し、同じ部屋で食事をしていた126 人中 52 人が 48 時間以内に発症。おう吐した人から 離れたテーブルでも感染者が出ている一方、 同じレストランの別の部屋(レストラン表記 部分)で同じ日に食事をしていた人は全く発 症しなかった(図4)。 おう吐した人からもかなり遠くに座ってい た人も感染したこと、発症率が距離に逆比例 していること、おう吐した客が座っていた場 所は他の利用客の共通動線上にはないことな どから、空気を介した感染の経路 (airbone rute) により、感染したと考えられている。 【事例2】都市型大規模ホテルにおけるノロウイルスによる集団胃腸炎の発生 平成18 年 12 月、都内の大規模ホテルにおいて、発症者 400 名以上(ホテル利用者及 び従業員)の集団感染となった事例。 宴会場前の通路のカーペット上に利用者の1 人が、おう吐した。 適切な消毒を行わないまま、従業員が直ちにおう吐場所を洗剤で清掃したが、この従 業員は翌日発症。素手で処理したため、手指を介して経口感染したと考えられた。 図4 発症者の位置

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施設内の徹底した消毒処理を行うま での数日間、新たな利用者の発症が継 続してみられた。また、発症した利用 者のふん便(71 件)から検出されたノ ロウイルスと、従業員のふん便から検 出されたノロウイルスの遺伝子型が一 致したことから、同一の感染源と推定 された。 おう吐物が従業員や施設利用者を介 して施設内に広がり、ウイルス汚染場 所が拡大された結果、その汚染場所に 触れた他の人にも感染拡大したと考え られる。 また、おう吐物残渣の拡散浮遊や、利用者の通行や掃除機による清掃時などに乾燥粒子 となって巻き上げられ、長時間空中に浮遊したため、利用者に感染拡大したと考えられた。 【事例3】結婚式場におけるノロウイルスによる集団胃腸炎について 平成 18 年 11 月 長野県における発症者 160 名以上(宴会場利用者及び従業員)の集団 感染となった事例。 1 日目に宴会場を利用したグループ の1人が室内でおう吐し、2日目に可 動壁を外して区画を広げて2日目グル ープが使用した。 1 日目、2 日目両グループとも発症 者に席次上(結婚披露宴の円卓)の偏 りはなく、発症率も高かった。また、 おう吐物の清掃に使用したおしぼり、 掃除機のゴミ、1 日目及び 2 日目グル ープ、並びに従業員のふん便から検出 されたノロウイルスの遺伝子型が一致した。 なお、空調は宴会中のみの稼動であったため、2 日目の宴会直前まで室内換気がなされ ていなかった。 1 ヶ所のおう吐場所が感染源と推定され、おう吐物を処理した人を介して施設内にウイ ルス汚染が広がり、汚染場所に接触した他の人にも感染が拡大したと考えられるとともに、 1 日目グループでは、乾燥したおう吐物の残渣が空調によって攪拌され室内に浮遊し、感 染が拡大した可能性がある。また、2 日目グループでは、室内に滞留していたおう吐物の 残渣が区画を広げた室内に拡散浮遊したことにより感染が拡大した可能性がある。発症者 の状況から接触感染だけでなく、おう吐物の残渣が室内に浮遊し、感染を拡大させた可能 性が考えられた。 図5 患者発生の配置 ↑ おう吐場所は室内の風上に位置する場所であった 図6 宴会場の利用状況

表 5  ゴ キ ブ リ の 発 生 場 所・件 数 ( n=562)   表 6  蚊 の 発 生 場 所 ・ 件 数   ( n=296)  ( ア )   ね ず み     238 施設(27.0%)でねずみの発生があったとの回 答 が 得 ら れ ま し た 。 発 生 場 所 に つ い て は 表4 のと お り で 、 厨 房 や 廃 棄 物 保 管 場 所 で 多 く 発 見 さ れま し た 。    厨 房 設 備 が あ る 施 設 で は665 施設中 221 施設(33.2 %)
表 1  建築物環境衛生管理基準  実      施      回      数      等  施行規則(厚生労働省令)等  東京都の指導等  空  調  管  理  空気環境の測定  2月以内ごとに1回、各階で測定  (ホルムアルデヒドについては、建築等を行った場合、使用開始日以降最初の6月~9月の間に1回)浮遊粉じん測定器 1年以内ごとに1回の較正 冷却塔・加湿装置・  空調排水受けの  点検等  使用開始時及び使用開始後1月以内ごとに1回点検し、必要に応じ清掃等を実施  冷却塔・冷却水管・  加湿装

参照

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