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排出閾値 (100 トン / 年または 250 トン / 年 ) を温室効果ガス規制に適用してしまうと 対象施設数や許可発行に係るコストが膨大となるため 規制対象を発電所や製造施設などの大規模固定排出源に限定することを目的に 新たに基準値を設定したうえでの規制である 概要は以下の通り 1 NSR に

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平成 26 年 9 月 10 日

米国における固定排出源への温室効果ガスの規制動向

米国では、米国環境保護庁(EPA:US Environmental Protection Agency)が、移動 発生源の自動車に対して、燃費規制を通 して温室効果ガスの規制を行っている。 一方、固定排出源からの温室効果ガスは、 後述するように EPA が排出規制の提案 を行っている段階である。米国最高裁判 所の審判を端緒に、最近の動向を解説す る。 2014 年 6 月 23 日、米国最高裁判所で、EPA の温室効果ガス規制を巡るある審判が出た(1)。 そして、この審判に対して、EPA だけでなく、規制強化を支援する団体も、更には規制に 反対する団体からも歓迎する旨のコメントが出されている。それは、この審判の意味する ところの複雑さによるものと考えられる。温室効果ガス規制をめぐるこれまでの経緯を以 下に述べる。 1. 2014 年 6 月 23 日の米国最高裁判所の判決 1.1. 審判の概要

2013 年 10 月 13 日、米国裁判所は「大気浄化法(Clean Air Act)に基づき自動車から排 出される温室効果ガスへの規制が、同じく温室効果ガスを排出している固定発生源への規

制適用を誘発するとした EPA の判断が妥当かどうか」を審議すると発表した(2)。それに対

する 2014 年 6 月 23 日の審判の概要は以下のとおりである。(3)

① 大気汚染物質(SO2・NOx など)への規制根拠となっている大気浄化法の基で、既

に適用されている発生源への温室効果ガス排出規制への取り組みを支持する。

② ただし、EPA が提案する「調整規制(Tailoring Rule)」には反対する。

①は 7 対 2 の投票結果で賛成、②は 5 対 4 で反対であった。 1.2. 「調整規則」(Tailoring Rule)について(4、5、6、7) 「調整規則」は、許可取得対象となる基準汚染物質(SOx や NO2など)に対する現行の

2014 年度

1

1

2

2

1. 2014 年 6 月 23 日の 米国最高裁判所の判決 ··· 1 2. 気候変動行動計画

(Climate Action Plan) ··· 2

3. EPA「新設発電所への

CO2排出規制案」 ··· 3 4. EPA「Clean Power Plan」

(既存発電所への CO2排出規制案) ·· 4

(2)

排出閾値(100 トン/年または 250 トン/年)を温室効果ガス規制に適用してしまうと、対象 施設数や許可発行に係るコストが膨大となるため、規制対象を発電所や製造施設などの大 規模固定排出源に限定することを目的に、新たに基準値を設定したうえでの規制である。 概要は以下の通り。 ① NSR による PSD 許可証の取得が必要 ・ 新規大型固定排出源(施設):年間 10 万トン CO2-eq 以上の排出 ・ 主要な改変を伴う既存施設:年間 7.5 万トン CO2-eq 以上の排出増加 ② TitleV 操業許可プログラムの取得が必要 ・ すべての主要な固定排出源:年間 10 万トン CO2-eq 以上の排出

新規発生源査定(NSR:New Source Review)とは、大気浄化法で定められた建設前 (preconstruction)の許認可プログラムのことである。基準汚染物質(criteria pollutant)とし

て鉛、CO、NOx、オゾン、粒状物質、SO2の 6 種を排出する新規固定発生源や大改修を行

う既存固定発生源が対象となる。

「国家環境大気質基準」(NAAQS:National Ambient Air Quality Standards)達成地域では、

「利用可能な最善の制御技術」(BACT:Best Available Control Technology)の採用を義務付

ける、環境悪化防止(PSD:Prevention of Significant Deterioration)許可証の取得が義務付け られている。一方、未達成地域(Non-attainment Area)では、最も厳しい技術的な基準であ

る「最低限達成可能な排出割合」(LAER:Lowest Achievable Emission Rate)を満たす許可が

義務付けられている。 PSD 認可証は、発電所、製造施設など大気汚染物質の大規模発生源の新規建設または改 修を対象に適用されるもので、NAAQS を満たし環境を保全することで、経済発展を抑制 せず大気汚染の防止を図ることを目的に、NOx、VOC、SO2、微小粒子状物質など、大気 汚染物質の最大濃度を規定している。 TitleV 操業許可プログラムは大気汚染物質を排出する固定排出源(大・中規模)の操業に必 要となる許認可であり、事業者は必要な書類を提出した上で、各種の報告義務を負う。 2. 気候変動行動計画(Climate Action Plan)

第 1 期オバマ大統領の就任当初の政策としては、「グリーン・ニューディール政策」と「医 療保険制度改革」が柱であった。このうち、「医療保険制度改革」は ACA(Affordable Care Act)、通称「オバマケア」が 2010 年に議会を通過し大統領が署名し成立した。この法案も 今回の内容と同じく、共和党の特に保守派からの激しい反対にあっている。そして今回と 同様、この法案の妥当性について 2012 年6月に米国最高裁判所は合憲の審判を下している が、2014 年 6 月 30 日には宗教上の理由によるオバマケアの一部適用除外認めるなど、運 用面でもまだ課題がある。

(3)

一方、グリーン・ニューディール政策は「グリーンエネルギーで 500 万人の雇用を生む」 ことを目標に、クリーンエネルギーへの投資、エネルギー効率の向上、石炭のクリーンコ ール技術支援、原子力発電の継続、石油のエネルギーセキュリティー確保、温室効果ガス 削減のための排出量取引の導入などの政策を提案してきた。ところが、オバマ政権第 1 期 中にシェール革命が起こり米国のエネルギー事情は一変した。グリーン・ニューディール 政策はシェール革命の影響をもろに受け、思ったほどの成果は上げられなかった。このた め、第 2 期の大統領選挙戦ではオバマ大統領は殆どこの政策には言及しなかった。 第 2 期就任演説でオバマ大統領は、気候変動対策の必要性に言及した。グリーン・ニュ ーディール政策の反省を踏まえ、環境問題への対応という切り口での提案である。2013 年 の一般教書演説では、議会に対し超党派での気候変動対応法案の策定を呼びかけるととも に、議会の協力が得られなくとも大統領・行政府の権限により出来る対策を実行すること を宣言した。 この具体的な方針として、オバマ大統領は 2013 年 6 月 25 日、ジョージタウン大学にお

いて気候変動行動計画(Climate Action Plan)を発表した(8)。この計画の柱は下記の 3 点で

ある。 ① 温室効果ガス排出量削減(2020 年までに 05 年比で 17%削減)。 ② 気候変動による影響への対応・対策を行う。 ③ 気候変動問題の国際的な取り組みにおいて米国のリーダーシップを取り戻す。 特に、①は、国連気候変動枠組条約第 15 回締約国会議(COP15)のコペンハーゲン合意 で米国が提出した自主目標「2020 年までに温室効果ガス排出量を 2005 年比で 17%削減す る」に沿ったものである(9)

また、同日、オバマ大統領は「発電部門炭素汚染基準(Power Sector Carbon Pollution

Standards)」の大統領覚書に署名した(10)。米国 CO2排出量全体の約 1/3 を占め、国内最大 の CO2排出源である火力発電所を念頭に、大統領はこの覚書で EPA に対し新規発電所の温 室効果ガス排出規制案を 2013 年 9 月 20 日までに公表し、パブリックコメントを踏まえ速 やかに最終規則を公表するよう指示した。また、既存発電所への温室効果ガス 排出規制は 2014 年 6 月 1 日までに提案し、2015 年 6 月 1 日までに最終規則公表、2016 年 6 月 30 日までの公布を指示した。 3. EPA「新設発電所への CO2排出規制案」 オバマ大統領の指示を受け、EPA は、2013 年 9 月 20 日、新設発電所を対象にした排気 ガス規制案を発表した(11)。さらに、2014 年 1 月 8 日、変更はないものの最終規則案とし て「連邦政府官報(Federal Register)」に発表し、60 日間のパブリックコメントを募集した (12)

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規制案は、電力販売向けでかつ 25MW 以上の施設において、以下に分類される。 ① 天然ガス火力発電所(天然ガス火力固定燃焼タービン)からの CO2排出量制限 (単位:1 メガワット時あたりの CO2排出量をポンドにて表記) ・ 850MMBtu/h 超えの大発電施設:1,000 lb CO2/MWh ・ 850MMBtu/h 以下の小発電施設:1,100 lb CO2/MWh ② 石炭火力発電所(化石燃料燃焼ユーティリティボイラー、石炭ガス化複合発電IGCC) からの排出量制限 ・ 12 ヶ月操業期間以上の場合:1,100 lb CO2/MWh ・ 84 ヶ月操業期間以上の場合:1,000 lb CO2/MWh

今回の提案は二酸化炭素地下貯留(CCS: Carbon Capture and Storage)技術の一部適用を

踏まえた規制値としている(13)

EPA は CCS の普及を支援するため、資源保全再利用法(RCRA:Resource Conservation and

Recovery Act)の有害廃棄物管理規則を改定する最終規則を2013 年12 月19 日に発表した。

EPA は、火力発電所や工業プラントから回収され Class VI の井戸(CCS 用の井戸) に圧

入される CO2については、人間の健康や環境に著しいリスクを及ぼすものではないもの判

断し、RCRA の規定する危険廃棄物から条件付きで除外した(14)。2014 年 3 月 31 日、これ

に関連して、EPA は石炭火力発電所 FutureGen による Class VI 井戸への CCS について、認

証に向けたパブリックコメントの募集を開始した(15)

ただし、発電所における CCS へ適用は未だ実績がなく、コスト面等の課題も指摘されて いる。現状については、後述する。

4. EPA「Clean Power Plan」(既存発電所への CO2排出規制案)

2014 年 6 月 2 日、EPA は、既存化石燃料発電所の CO2削減を目的とする気候変動対策案”

Clean Power Plan”を発表した(16)。EPA の 2030 年に向けた目標は以下のとおりである。

① 2005 年比で、化石燃料発電所からの CO2排出量を 30%削減する。 ② NOx および SO2を 25%以上削減する。 ③ 930 億ドルを気候変動対策、公衆衛生に投じる。 ④ エネルギー効率を高め、消費電力を抑制することで、電力料金を約 8%下げる。 ①については、大気浄化法に基づき既存発電所の CO2排出を規制するため、各州に発電 部門において達成すべき CO2排出基準を設定し、達成するための行動計画の提出および実 施を義務付けた。EPA はこの規制で、既存対策と合わせて発電部門 CO2を 2030 年に 2005 年比 30%削減できると見込んでいる。 各州に適用される排出基準は州の排出削減ポテンシャルに応じて設定され、2030 年の値 として、最小はワシントン州の約 0.10kgCO2/kWh から、最大はノースダコタ州の約

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0.81kgCO2/kWh まで幅を持たせている。これに対して、現在の既設の火力発電所の CO2/ 排出量は、石炭火力で平均約 1.02kgCO2/kWh、LNG 火力で平均約 0.51kgCO2/kWh、最新の LNG コンバインドサイクル発電でも平均約 0.37kgCO2/kWh であり、個々の発電所の取り 組みだけでは達成が難しいケースも想定される。このため、EPA は達成手段を発電部門に おける対策に限定しておらず、需要側管理や再生可能エネルギー買取制度、排出権取引制 度など幅広い施策を選択できるとしている。

Clean Power Plan は各州と連邦政府の協力のもと進められる。ガイドラインに沿って各州

が裁量権を持ち、CO2排出量削減に向けた具体的な目標を定めるとしている。各州が計画 を EPA に提出するまでのタイムラインにも柔軟性あり、2016 年 6 月が提出期限だが、最 終計画の提出までに 2 段階のプロセスを踏むオプションも用意されている。 以上、新規ならびに既存の発電所における CO2排出規制案を概観してきたが、当然のこ とながら、実施には多くの課題が山積している。これらの課題を、以下の項目に沿って解 説する。 ・ 政策からみた課題(共和党 vs 民主党、発電関連業界 vs 環境団体) ・ 法律からみた課題(EPA による温室効果ガス規制が妥当かの最高裁判決) ・ 技術からみた課題(CCS 開発状況) 4.1. 政策からみた課題(共和党 vs 民主党、発電関連業界 vs 環境団体) 民主党と共和党の基本的な対立構図は以下のとおりである。 ・ 民主党:大気浄化法による EPA の温室効果ガス排出規制に向けた動きを強化させ たい。 ・ 共和党:EPA の権限はく奪、もしくは弱体化により、規制強化を阻止したい。 特に、2010 年 11 月 2 日の中間選挙で下院の過半数を野党・共和党が奪取して以降、新 規立法がほぼ不可能な「ねじれ」状態が続いている。このためオバマ大統領は、2013 年の 一般教書演説での述べたとおり、COP15 で提出した米国の温室効果ガス削減の中期目標 (2020 年までに 2005 年比で温室効果ガス排出量 17%削減)を、新規立法が不要な EPA に よる温室効果ガス排出規制策定プロセスにて実現を図ろうとしている。 これに対して共和党は、EPA の権限縮小を図る法案や、規制を先延ばしする法案等を提 出し、規制阻止に向けた動きを進めてきた。ただし、「ねじれ」状態は基本的にどの法案も 成立が難しいため、特に与野党の意見が異なる場合は成立しない状況になっている。また、 EPA の権限を弱体化させる試みに対してオバマ大統領は拒否権を発動するだろう、という 見方もある。 このため、規制の成否の鍵となるのが、2014 年 11 月の中間選挙である。共和党が引き

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続き下院の過半数を占めると予想される中、上院まで共和党が過半数を奪取すれば、これ らの規制に大きなブレーキがかかる可能性がある。逆に、民主党が上院の過半数を維持で きれば、後述する「法律からみた課題」が司法判断によりある程度クリアされたこともあ り、よりよい規制手段を見つければ前進するものと予想される。それだけに、気候変動対 策が中間選挙の 1 つの争点ともなっている。 また、当然ながら、環境保護団体などは賛成しているが、化石燃料発電事業者やその関 連団体、ティーパーティや発電所を多数保有する一部の州政治家は反対している。 4.2. 法律からみた課題(EPA による温室効果ガス規制が妥当かの最高裁審判) 改めて、審議結果を以下に示す。ただし、上述の EPA による新規・既存の発電所の温室 効果ガス排出規制案は、大気浄化法の新規発生源業績基準(New Source Performance Standard)に沿っているため、今回の直接の審議対象とはなっていない。

① 大気汚染物質(SO2・NOx など)への規制根拠となっている大気浄化法の基で、既

に適用されている発生源への温室効果ガス排出規制への取り組みを支持する。

② ただし、EPA が提案する「調整規制(Tailoring Rule)」には反対する。

①は EPA の固定排出源の温室効果ガス排出規制への取り組みを支持するものであり、最 高裁判所のお墨付きが得られたと解釈される。一方、②の調整規制に反対する理由として 裁判所は「どの行政機関も政策目標を”調整する”権限は有していない」としている(1) ここで該当する政策は大気浄化法であり、その経緯を少し振り返る。 1963 年に制定され、1970 年、1990 年に大幅改定されている大気浄化法は、固定汚染源 と移動発生源からの大気汚染物質の排出を規制し、国民の健康と福祉を守ることを目的と する包括的な連邦法である。 大気浄化法の中で、6 種の基準汚染物質(Criteria Pollutants)である、CO、鉛、NOx、オ ゾン、微小粒子(PM)、SO2のうち、特定カテゴリーでは年間 100 トン以上排出する事業 所、それ以外では、年間 250 トン以上排出する大規模な新規発生源に対して、NSR(新規 発生源審査)に基づき BACT(Best Available Control Technology)の基準を満たす PSD 許可 が義務づけられている。

温室効果ガス規制については、ブッシュ政権は 2002 年 2 月 14 日、「気候変動イニシアテ

ィブ」(Global Climate Change Initiative)を発表はしたものの、これは米国経済の規模に応

じて温室効果ガスの排出量を引き下げる自主的な取組であり、規制には至らなかった。こ のため、州での対策が先行することとなり、さらには、連邦政府の温室効果ガス削減の取 組が不十分として、マサチューセッツ州は EPA に提訴した。2007 年 4 月 2 日、最高裁判

所は CO2含む温室効果ガスが大気浄化法の大気汚染物質の定義に該当すると判決を下し、

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温室効果ガス削減方法として理想的と考えられる Cap-and-Trade 方法が検討されていた が、Lieberman-Warner 気候変動法案(2008 年)、Waxman-Markey の気候変動法案(2009 年) とも成立には至らなかった。このため、オバマ政権と EPA は、排出量の規制を検討するこ とになった。規制で問題となるのがどこまでを対象とするかであり、先述の 100 もしくは 250 トン/年の数値をそのまま使用してしまえば、対象施設が膨大となるため、「調整規制」 が策定された経緯にある。 裁判所は、EPA が「調整規制」の策定目的である大規模発生源に対象を絞る考えそのも のは支持するものの、閾値(年間 7.5 万もしくは 10 万トン)を設定する手法は否定した。 すなわち、「方針」は Go サインが出たものの、一つの「手段」が否定されたこともあり、 関係者のコメントは殆ど全てが歓迎の方向である。 EPA のコメントは、「最高裁の審判は、我々の温室効果ガス削減努力が勝利したことを 意味する。EPA 初め、関係行政機関は最大の大気汚染物質である CO2の削減に向け、規制 強化を行うことができる。」(3)としている。 一方、業界関係者のコメントは、「調整規則」があって初めてこの規則は運営可能なもの となるとし、この審判は規制強化を否定したものとらえている。1例としてAFPM(American

Fuel & Petrochemical Manufacturers)のコメントに、「我々は、最高裁が EPA の権限に適切な

制限を与えたことに感謝する。最高裁は行政機関が政策目標を変更してはいけないことを 明確にしてくれた。そもそも大気浄化法は CO2のような一般にある汚染物資への規制を意 図してはいない。この審判によりこの規則は修正されるであろう。」(3)とある。以上から、 今後 EPA がどのような修正案を出すかが焦点となる。 4.3. 技術からみた課題(CCS 開発状況) 技術面でも課題がある。EPA は、新規発電所に関わる規制案の数値を設定する際に、CO2

削減の最適な手段(BSEM:Best System of Emission Reduction)として CCS の一部導入を想

定している。しかし、発電所から排出される CO2は大量であり、米国における発電所 CO2 の実用ベースでの適用事例はまだない。 米国での現在建設中の発電所での CCS 導入検討事例として、2010 年 6 月より建設を開 始したミシシッピ州のケンパー郡エネルギー施設がある。EPA はこれを有力な事例をとら えており、EPA の Moniz 長官も 2013 年 11 月に訪問している(17)。発電所の概要は下記の とおりである(18)

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・ 企業:Mississippi Power、Southern Energy、KBR ・ 場所:Kemper County、Mississippi

・ 原料:石炭

・ 発電規模:582 MW (年間 350 万トン の CO2を捕捉)

・ 技術: TRIG™ 技術を用いた Pre-combustion IGCC (65% の CO2を捕捉)

・ CO2:パイプラインを経由して油田の EOR に活用 ただ、この施設は以下の特殊要因があり、多くの火力発電所に適用可能な一般解ではな いとも指摘されている。 ・ 同発電所は Southern Energy が所有する炭鉱に隣接し石炭の輸送コストがかからな い。 ・ 回収した CO2を近隣油田の EOR(石油増進回収法)の材料として販売できる。 また、ケンパー発電所は DOE から 2.7 億ドルの助成金を得ており、4.12 億ドルの税控除 も認められている。しかし、建設費用は、当初の予算は 29 億ドルだったが、55 億ドルに まで膨らんでしまっている。更に、2014 年 6 月運転開始予定であったが、2014 年 4 月 30 日、Southern Energy は「本発電所は 2015 年 3 月 31 日まで動くことはない」と延期のコメ ントをだしている。延期の最大の理由は、度重なる建設コスト増とみられている。このよ うに、現状技術ではコスト面の課題が指摘されている。

「The Carbon Capture and Sequestration Technologies Program」によると、米国ではケンパー 発電所が唯一の建設段階であるが、先述の FutureGen をはじめ 4 発電所による CCS が計画 中とのことである(18)。以上から、発電所への CCS 適用は有望ではあるものの、コスト面 の課題をクリアしての実用化が待たれる状況でもある。 5. おわりに 2014 年 6 月 23 日の最高裁判所の審判を端緒として、政府、EPA による固定排出源への 温室効果ガスの規制を概観してきた。要約すると以下になる。

・ 大統領の「Climate Action Plan」を土台に EPA が新規・既存発電所への温室効果ガ ス規制を検討。 ・ 新規発電所の EPA 規制案は CCS の一部導入が前提で、発電所単独ではクリアが厳 しい。 ・ 発電所の CCS 適用もコスト面等で課題があり、実用化が待たれるところである。 ・ 米国最高裁判所は規制の「方針」は OK したが、一つの手段である「調整規則」は 否決した。よって、規制対象を絞り込む手法の見直しが必要となり、EPA の今後の 動向が注目される。 ・ 政治的には 2014 年 11 月の中間選挙の結果が、規制検討に影響を及ぼすと考えられ る。

(9)

米国はプラグマティズム(Pragmatism)の国家と言われている。プラグマティズムとは、 物事そのものではなく、物事による「有用性」に最も大きな価値を置く哲学である。今回 の事例も、まず大統領の指示のもと EPA が環境対策のための規制案に対して、各人が自己 利益を目的に、立法、行政、司法を含めたあらゆる手段を使って、自分たちにとって「有 用」なものは何かを見つけ出そうとしているプロセスであるように見える。そういうプロ セスを経ることで、ある意味、最も現実的な方向性が見いだせるのかもしれない。いずれ にしても、この規制は 2014 年 11 月の中間選挙が大きな山場となるが、それ以外にも、シ ェール革命に見られたようにコストダウンに関わる技術革新が、CCS 等の技術に起こるこ とでも、大きく変わる可能性を秘めている。 <参考>

1) Supreme Court of the United States : Decision on 6/23/14 - Utility Air Regulatory Group v. EPA

2) Supreme Court of the United States; " 10/15/13 Order List in 2013 Term Court Orders " in there; "The petitions for writs of certiorari are granted limited to the following question: “Whether EPA permissibly determined that its regulation of greenhouse gas emissions from new motor vehicles triggered permitting requirements under the Clean Air Act for stationary sources that emit greenhouse gases.” The cases are consolidated and a total of one hour is allotted for oral argument. "

3) ITTA(International Technology and Trade Associates Inc.) UPDATE on 24 June 2014, "US Environmental Policy - Supreme Court Upholds EPA Regulation of Greenhouse Gas Emissions but Rejects the Tailoring Rule"

4) EPA, Federal Register - June 3, 2010 , 40 CFR Parts 51, 52, 70, et al. "Prevention of Significant Deterioration and Title V Greenhouse Gas Tailoring Rule ; Final Rule"

5) IGES オープンフォーラム(2011.2.28);IGES 気候変動グループ 福田 幸司、エリ ック・ザスマン、"米国:気候変動関連政策を巡る国内動向および連邦議会の動き " 6) NEDO ワシントン事務所:デイリーレポート 2013 年 10 月 21 日号、"米国最高裁 判所、固定排出源に対する環境保護庁の温室効果ガス規制を審理すると発表 " 7) 環境省地球環境局(2010 年 6 月)「米国における最近の動向について」

8) The White House issued on June 25, 2013, ”President Obama's Plan to Fight Climate Change”

9) The White House issued on December 18, 2009 " Remarks by the President at the Morning Plenary Session of the United Nations Climate Change Conference "

10) The White House issued on June 25, 2013," Presidential Memorandum -- Power Sector Carbon Pollution Standards"

11) EPA, News Releases on September 20,2013," EPA Proposes Carbon Pollution Standards for New Power Plants / Agency takes important step to reduce carbon pollution from power plants as part of President Obama’s Climate Action Plan "

(10)

Greenhouse Gas Emissions From New Stationary Sources: Electric Utility Generating Units "

13) 大和総研 ESG ニュース、2014 年 6 月 23 日、「米環境保護局、発電部門における

新たな CO₂ 排出規制案を発表」

14) EPA, News Releases on December 19,2013," EPA Rule Provides a Clear Pathway for Using Carbon Capture and Sequestration Technologies "

15) EPA, News Releases on March 31, 2014," U.S. EPA Seeks Public Comment on Proposed Carbon Sequestration Permits in Central Illinois "

16) EPA, News Releases on June 2,2014," EPA Proposes First Guidelines to Cut Carbon Pollution from Existing Power Plants/Clean Power Plan is flexible proposal to ensure a healthier environment, spur innovation and strengthen the economy "

17) The Washington Post, report on May 17, 2014," Intended showcase of clean-coal future hits snags "

18) The Carbon Capture and Sequestration Technologies Program, in the "Power Plant Carbon Dioxide Capture and Storage Projects ", " Kemper County IGCC Fact Sheet: Carbon Dioxide Capture and Storage Project "

以上 本資料は、一般財団法人 石油エネルギー技術センターの情報探査で得られた情報を、整理、分析

したものです。無断転載、複製を禁止します。本資料に関するお問い合わせは[email protected]

までお願いします。

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「インドの石油・エネルギー産業」 を予定しています。

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