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結晶片岩-花崗閃緑岩地質境界における 地下水・表流水の交流特性

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Academic year: 2022

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(1)水工学論文集,第54巻,2010年2月 水工学論文集,第54巻,2010年2月. 結晶片岩-花崗閃緑岩地質境界における 地下水・表流水の交流特性 GROUNDWATER-SURFACE WATER INTERACTION ALONG GEOLOGICAL BOUNDARY OF CRYSTALLINE SCHIST AND GRANODIORITE 広城吉成1・松本大毅2・横田雅紀3・堤敦4・神野健二5 Yoshinari HIROSHIRO, Masataka MATSUMOTO, Masaki YOKOTA, Atsushi TSUTSUMI and Kenji JINNO 1正会員. 工博. 2非会員. 九州大学准教授. 工修. 工学研究院環境都市部門(〒819-0395 福岡市西区元岡744). 九州大学工学府都市環境システム工学(〒819-0395 福岡市西区元岡744). 3正会員 工修 九州大学助教 新キャンパス計画推進室(〒812-8581 福岡市東区箱崎6-10-1) 4正会員 工博 (株)エスジー技術コンサルタント(〒840-0805 佐賀県佐賀市神野西4-18-25) 5正会員 工博 九州大学教授 工学研究院環境都市部門(〒819-0395 福岡市西区元岡744). Around the new campus of Kyushu University, located in western Fukuoka city, groundwater is a major source for drinking water and industrial greenhouse water supplies. For a better management of available water resources in this area, a combined study of a field tracer test and electrical resistivity survey was made to investigate the interaction between groundwater and surface water along geological boundary. The results suggested that; 1) the tracer test using 222Rn can be used to identify locations where an active exchange between groundwater and surface water is present, and that; 2) It is also expected that the groundwater flow should take place along the geological boundary of crystalline schist and granodiorite, because the electrical resistivity showed low resistivity around the geological boundary. Key Words : groundwater-surface water interaction, 222Rn, groundwater level, groundwater quality, electrical resistivity survey, geological boundary. 1. はじめに. 本研究では,放射性同位体であるラドン(222Rn)を用い, 地下水と大原川の交流状況を確認した2).ラドンは半減 期が約3.8日と短寿命であり,地下水中と河川水中で大 きな濃度差をもつという特徴がある.例えば,ラドンを 用いた水文学的研究として,濱田・小前3)による地下水 の浸出と河川水の伏流の定量解析が挙げられる. 本報では,前述のラドン調査結果に加え,地質境界上 に点在する観測井の地下水位変動,地下水水質および地 質境界上を横断した電気探査調査結果と合わせて,結晶 片岩-花崗閃緑岩地質境界における地下水・表流水の交 流を明らかにし,この地域の水循環特性について検討を 行った.. 水に関する問題は多岐・多方面にわたっており,量と しての側面,質としての側面または両者を合わせた両面 から様々に議論されている.九州大学新キャンパス移転 用地である福岡市西区元岡・桑原地区では,施設園芸用 水や飲料水に地下水が利用されている.2000年6月から 九州大学新キャンパス建設のための造成工事が開始され, 林地開発による地下水への影響が懸念されている.その ため1996年より,九州大学新キャンパス周辺では地下水 位の長期観測が行われている.新キャンパス東南地域は 沿岸部に近く,既に地下水の塩水化が確認されている1). 桑原地区を流れる大原川には湧水源(幸の神湧水)があり, 2.調査地域の概要 地域の重要な農業用水源となっている.また、地質境界 (結晶片岩-花崗閃緑岩)が大原川を横切る形で存在し, 図-1は九州大学新キャンパス(伊都キャンパス)の位 それが地下水・表流水相互にどのような影響をもたらし ているか,その解明は地域の健全な水資源利用のため非 置を示している.九州大学伊都キャンパスは福岡市西部 にあり,福岡市西区と前原市,志摩町にまたがっている. 常に重要である.. - 589 -.

(2) N. 博 多湾. (TP.m). 志 摩町. 九 州大学伊都キャンパス 前 原市. 18 17 16 15 14 13. 福 岡市 10km. 0. 大原海岸. W1. 左岸. 7.0m. 右岸. 2.6m 大原川河床 井戸深度不明. 桑原地区 九州大学 伊都キャンパス. 図-3 W1の地下水位と大原川断面との関係. 今津干潟. N 元岡地区. 0. 1km. 図-1 調査対象地域. 結晶片岩分布域. 流下方向. 神楽田. オコナ. A’. Q1. S6. B’ W2 Q3. W1 Q2 S2. N. S3. B Q4. A. 幸の神湧水. W3. 花崗閃緑岩分布域. 0. 500m. 伊 都キャンパス敷地境界線 地 質境界 電 気探査調査側線 地 下水採水地点 地 下水位観測地点 河 川水ラドン濃度調査地点. 図-2 調査対象地域の詳細(地下水位・地下水水質・ラドン濃度調査地点および電気探査側線,地質境界). - 590 -.

(3) 地 下 水 位 標 高. 20. 500. 20. 500. 20. 500. 16. 400. 16. 400. 16. 400. 12. 300. 12. 300. 12. 300. 8. 200. 8. 200. 4. 100. 4. 100. W1 8. W2 W3. 4. 200. 地 下 水 位 標 高. (mm). (TPm). 100. (TPm) 0. 降 水 量. 0. 1996/04. 1996/07. 1996/10. 0. 1997/01. 地 下 水 位 標 高. (mm). (TPm). 1997/07. 1997/10. 0. 1998/01. 0. 1998/04. 1998/07. 1998/10. 1999/01. 1998.4.1~1999.3.31(1510mm). 20. 500. 20. 500. 20. 500. 16. 400. 16. 400. 16. 400. 12. 300. 12. 300. 12. 300. 8. 200. 8. 200. 8. 200. 4. 100. 4. 100. 4. 100. 0. 降 水 量. 地 下 水 位 標 高. (mm). (TP.m). 0. 1999/04. 1999/07. 1999/10. 0. 2000/01. 1999.4.1~2000.3.31(1699mm). 降 水 量. 地 下 水 位 標 高. (mm). (TP.m). 2000/07. 2000/10. 0. 2001/04. 2001/01. 2000.4.1~2001.3.31(1453mm). 2001/07. 2001/10. 2002/01. 2001.4.1~2002.3.31(1936mm). 20. 500. 20. 500. 20. 500. 16. 400. 16. 400. 16. 400. 12. 300. 12. 300. 12. 300. 8. 200. 8. 200. 8. 200. 4. 100. 4. 100. 4. 100. (TP.m). 地 下 水 位 標 高. 降 水 量. (mm) 0. 0. 2002/04. 2002/07. 2002/10. 2003/01. 2002.4.1~2003.3.31(1331mm). (TP.m). 降 水 量. (mm) 0. 地 下 水 位 標 高 (TP.m). 0. 2003/04. 2003/07. 2003/10. 降 水 量. (mm) 0. 0. 2000/04. 降 水 量. (mm). 1997.4.1~1998.3.31(2073mm). (TP.m). 地 下 水 位 標 高. 地 下 水 位 標 高. 0. 1997/04. 1996.4.1~1997.3.31(1280mm). 降 水 量. 2004/01. 2003.4.1~2004.3.31(1576mm). 降 水 量. (mm) 0. 0. 2004/04. 2004/07. 2004/10. 2005/01. 2004.4.1~2005.3.31(1838mm). 孔口標高 W1:17.3 TP.m, W2:16.4 TP.m, W3:3.5TP.m 図-4 W1,W2,W3における地下水位標高変動(TP.m). 総面積は275haであり,造成予定面積は170haを計画して いる.造成予定地以外のエリアは保全緑地として残すこ とになっている. 糸島半島の地質4)は,主に古生代二畳紀~石炭紀の三 郡変成岩類及び中生代後期白亜紀の糸島花崗閃緑岩より なり,これら基盤岩の上位には新生代第四紀完新世~更 新世の未固結な堆積物が分布している.三郡変成岩類は 主として結晶片岩(緑色片岩ないし泥質片岩)からなり, 糸島半島の北部をほぼ東南東‐西北西方向に帯状に分布. しており,その両側は花崗閃緑岩と接している.花崗閃 緑岩は,移転用地の東部を除く地域とその西側に広く丘 陵地を形成して分布しており,粗粒~中粒の花崗閃緑岩 で角閃石と黒雲母を30%程度含み,ペグマタイトやアプ ライトの岩脈がしばしば認められる.伊都キャンパスに おいては東部の変成岩類及び沖積層の範囲を除く地域で 分布しており,全体の8割以上の面積を占めている. 図-2は地下水位および地下水水質調査地点,地質境界, 大原川におけるラドン濃度調査地点,電気探査調査側線. - 591 -.

(4) 位置を示している.W1,W2,W3は自記式地下水位計 によって1時間に1度,地下水位を記録する観測井であり, 24時間分の地下水位データを平均して日平均地下水位と した.またQ1,Q2,Q3,Q4は地下水水質を調査した地 点である.Q1,Q4は民家所有の井戸で,採水は家庭用 ポンプによる汲み上げで,約5分間放流後に採水した. Q2,Q3の地下水の採水は2008年1月25日にベーラー採水 器を用いて行った.Q2は地質調査のための掘削された 井戸,またQ3とW2は同一地点の観測井である.地下水 位観測井であるW1,W3は水位計の固定および井戸の構 造上,採水できなかったため井戸深度が同程度で直近の 井戸(それぞれQ1,Q4)で水質を評価した.井戸のス トレーナー構造についてはQ2,Q3以外は民家所有の井 戸で詳細は不明であった.Q2は地表面から5m以深に, Q3は地表面から50cm程度以深にスリットが施されてい た. 大原川は概ね西から東方向に流れ,S2からS3までの区 間はコンクリートの3面張(川幅約4m)であるが,S3から 下流は砂礫~砂河床へと変化する.図-2中,大原川にて 白丸で表記した地点では,ラドン濃度の測定をおこなっ た.また,S3,オコナ(川幅約7m),神楽田(川幅約7m), S6(川幅約7m)地点ではプロペラ式微流速計を用いて流量 の観測を行った.流量は,スケール等を用いた計測から 概算した断面積と,プロペラ式微流速計を用いて計測し た流速を用いて算定した.なお,観測は2004年12月3日 に行い,近傍の前原雨量観測所での観測前1週間の降雨 量は2mmであり,流況は平水時の流況であった. 図-3には地下水位変化と孔口標高がわかっているW1 と大原川河床標高の関係を示している.水深は20cm程 度,河床勾配は約1/200である.なお,水平方向のス ケールは大原川断面形状(川幅)を示すために考慮して いない.この図より,W1の地下水位が大原川の河床よ り若干高いことがわかる.. 3.結果と考察 (1) 地下水位の長期変動 図-4には地下水位観測井W1,W2,W3の1996年4月か ら2005年3月までの9年間の地下水位変動を示している (W3のみ地下水位調査開始は1998年7月から).また本 調査地域より約5km離れた前原アメダス調査地点におけ る年降水量を図中に示している.この地域の年平均降水 量は約1700mmである. W1,W2の地下水位は多雨年,少雨年に関係なく変動 している.また,W3はW1,W2より孔口標高が低く低 地部に位置し,地下水位の変動幅が小さい.一方,W1 とW2の地下水位変動は似た傾向を示しており,W2は W1より変動幅が大きくなっている.W1とW2の直線距. Na+K. Q1. Cl. Na+K. Ca. HCO3. Ca. Mg. SO4 +NO3. Mg. 2 1 0 Na+K. Q3. 1 2 (meq/l) Cl. Q2 Cl HCO 3 SO4 +NO 3. 2 1 0 Na+K. Q4. 1 2 (meq/l) Cl. Ca. HCO 3. Ca. HCO 3. Mg. SO4 +NO 3. Mg. SO4 +NO3. 2 1 0. 1 2 (meq/l). 2 1 0. 1 2 (meq/l). 図-5 ヘキサダイヤグラム(上段)とトリリニアダイヤグラム (下段). 離は約1000mであり,W1とW3のそれは約1200mである. 地質境界上にあるのはW1とW3であるが,両者の間に地 下水位変動の類似性は見られない.地下水位変動の特徴 から,W1とW2は地下水の応答が連動する同じ水脈と考 えられる. (2) 地下水水質の特徴 図-5はQ1,Q2,Q3,Q4の水質をヘキサダイヤグラム とトリリニアダイヤグラムで示している.図-5上段のヘ キサダイヤグラムから,Q1とQ2においてQ2がQ1より溶 存化学種濃度が若干低いものの,両者は相似形を示して いる.Q3はQ1,Q2とNa+KとMgで異なった形状を示し ている.また,Q4はQ1,Q2,Q3と異なった形状である が,Q1とQ3のヘキサダイヤグラムを合わせた形状と なっている. 次に,図-5下段のトリリニアダイヤグラムから,Q1, Q2,Q3,Q4ともに陰イオンはほぼ同一箇所にプロット されたが,陽イオンにおいて違いがみられた.これはヘ キサダイヤグラムで示されたようにQ1,Q2,Q4では Na+K濃度が高く,Q3,Q4ではMg濃度が高かったため である. 以上,地下水水質結果よりQ1,Q2はほぼ同一の水質, Q3,Q4はQ1,Q2と異なっているものの,Q4はQ1とQ3 を合わせた水質を示していることから,アプライト岩脈. - 592 -.

(5) 3.0 ×10 -2. 15 ラドン濃度 流量. S2. オコナ. ラ 10 ド ン 濃 度 5 (Bq/L). 2.0 流 量 (m3/s). S3. 神楽田. 1.0. S6. かし,図-6では,S3~オコナ間でラドン濃度が上昇して おり,同区間で地下水が大原川に流入していることがわ かる.S3-オコナ間には結晶片岩と花崗岩の地質境界 (図-2参照)が存在し,地下水・表流水の交流が起こっ ていると考えられるが,S3-オコナ間で流量が増加して いないことから,この区間では地質境界に沿って河川を 横切る方向に地下水が通過していることが推察される.. (4)電気探査調査による地下水賦存状況の検討 図-2に示す伊都キャンパス北東部地域を対象に電気探 査を行った(A-A’測線:600m,B-B’測線:400m). 図-6 大原川におけるラドン濃度と流量変化 本報では,比抵抗二次元探査の電極配置の一種である 二極法(ポール・ポール配置)を用いた5),6),7).本手法 が複雑に発達した地質境界に沿って地下水が流れている は,受信信号が大きく,同じ電極展開距離では他の電極 ものと推察される. 配置より可探深度が大きく広範囲の測定が可能であり, 遠電極設置後は移動電極が二つのため測定効率が高いな (3) ラドンによる地下水・表流水の交流解析 どの特長がある. ラドンは化学的に不活性な希ガス元素である.半減期 本探査によって得られた比抵抗断面図を図-7に示す. は約3.8日である.環境に存在するラドンの起源は帯水 A測線では0~140m付近の区間において深度GL-15m程度 層物質内のラジウムである.ラジウムはウラン崩壊系列 から深部へかけて550Ω-m以上の高比抵抗分布が確認で の一種であり,堆積物中ならどこにでも存在する.地層 きる.当区間は,地質図4)より花崗閃緑岩が分布してい 中においてラジウムの放射性崩壊で生成したラドンの一 ることが確認されているが,比抵抗値は新鮮な花崗岩 部は,固相から遊離して周辺の液相や気相に移行し,大 (数千Ω-m以上)ほど高くなく,亀裂や風化が影響して 気や水の循環によって環境に拡がっている.このように いると思われる.一方,140~280m付近の区間では,低 地下水中に拡散したラドンはラドンの放射性崩壊による 比抵抗層(100~350Ω-m)が分布している.この区間は 損失とラジウムの放射性崩壊による供給の割合によって 地質図で示された花崗閃緑岩と結晶片岩の境界に相当し 増加し,約3週間で平衡状態に達する. ている.表層は伊都キャンパス建設造成面などの人工的 一方,表流水中のようにラジウムの供給のない状況下 な整地である.250~430m付近の区間では,横長楕円形 では,ラドンはその放射性崩壊による損失の割合により, 状の高比抵抗(350~650Ω-m)の分布が確認でき,結晶 指数関数的に減少する.従って,地下水中と表流水中で 片岩の一般的な値(200Ω-m以上)を示している.なお, はラドン濃度に大きな差があり,表流水に地下水が流入 比抵抗値は楕円形状にプロットされているが,探査深度 している地点のラドン濃度は,他の地点と比べて高い値 をより深く設定すれば岩盤の形状がある程度確認できる を示す.一般的に,地下水中のラドン濃度は100 ~ と推測される.440~600m区間では,表層に60Ω-m以下 2 -1 -2 10 Bq/L,表流水中では10 ~10 Bq/Lのオーダーである. の低比抵抗分布が確認できる.これは,保水・遮水機能 ラドン濃度は,現地にてポリ容器を用いて試料を採水 を有する沖積粘性土層によるものと考えられる.また, し,試料の量を1Lとした.トルエンは50mL使用し,各 当区間の北側には大原川が流れており,伏流の可能性も 試料の計測時間は抽出から約4時間後,抽出したトルエ 示唆される. ンシンチレーター溶液20mLを液体シンチレーションカ B測線では全体に比抵抗値が小さく(400Ω-m以下), ウンターにより,5分計測を数回実施した.計測に伴う 花崗岩より結晶片岩の比抵抗が低いという一般特性を示 誤差は,液体シンチレーションカウンターで計測された している.その中で,およそ140~210m区間の深部に ラドン濃度にもよるが,今回のラドン濃度レベルでは 300~400Ω-mの周囲に比べてやや高比抵抗の分布域が確 ±2%程度であった. 認できる.これは近接する山体の弱風化~未風化岩盤の 大原川でラドン濃度の測定を行った地点は図-2示した 芯にあたり,測定範囲の条件から楕円形状にプロットさ S2,S3,オコナ,神楽田,S6,そして地下水中のラド れているが,A測線(0~140m,250~430m)と同様に ン濃度としてQ1で測定を行った.Q1でのラドン濃度は 測線を起点側に若干延長し,探査深度をより深く設定す 25(Bq/L)で,大原川のどの地点よりも高い値を示した. れば深部へ向かって徐々に比抵抗値が上昇する現象が確 大原川で行ったラドン濃度結果を図-6に示している. 認できると推測される.また,概ね300~終点400m付近 また図-6にはS3,オコナ,神楽田,S6の4地点の流量も の表層に見られる低比抵抗は,A測線終点側と同様に沖 記載している.4地点とも流量にほとんど増減はなく, 積層の粘性土層と思われる. 見かけ上,大原川から地下水への流出は考えにくい.し 以上,電気探査結果より花崗閃緑岩と結晶片岩の境界 0. 0.0. 0. 400. 800 1,200 湧水からの流下距離(m). 1,600. - 593 -.

(6) 60. A. A’. 40 20. 標 高 (m). 0. -20 -40 -60. -80 -100 0. 40. 50. 100. 150. 200. 250. 300. 350. 400. B’. B. 450. 500. 550. 600(m). 凡例. 20 0. 標 高 (m). -20 -40 -60 -80 -100. -120 0. 50. 100. 150. 200. 250. 300. 350. 400(m). (Ω-m). 図-7 比抵抗断面. 付近は周囲に比べて低比抵抗となっており,地下水が賦 存しやすい状況にあることが示唆された.また,大原川 沿いの低地部地下は低比抵抗領域となっており,地下水 賦存領域になっていると考えられる.. 4.まとめ 大原川のオコナ地点より下流においてはラドン濃度が 減少していることから,地下水の左右岸から大原川への 流入はほとんど無いと推定された.S3-オコナ間には結 晶片岩と花崗閃緑岩の地質境界が存在し,同区間でラド ン濃度が上昇していることから地下水・表流水の交流が 起こっていると考えられるが,S3-オコナ間で流量が増 加していない.したがって,この区間では地質境界に 沿って河川に地下水が通過していることが推察された. 地下水水質結果から,この地域の地下水は地質境界に 沿った向きに流れがあることが示唆された.また,電気 探査結果から,地質境界付近は低い比抵抗であることが 確認でき,地下水が賦存しやすい状況にあり,地質境界 付近に地下水の流れがあることが推測された. 今回,地質境界を中心に地下水位変動,地下水水質, ラドン濃度測定,電気探査調査を行い,地下水と表流水 の交流関係や定性的ではあるが地下水賦存状況を明らか にすることができた.つまり地質境界に沿った地下水の 流れが存在し,その境界付近と交わる大原川では河川流 量は増加しないもののラドン濃度の上昇がみられ,地下 水の流入があること,W1とW2は約1km離れているが地 下水位の変動が類似していることである. 伊都キャンパス周辺は農業用水の逼迫した地域であり, 地元の貴重な農業用水源である幸の神湧水をもつ大原川. の地下水・表流水相互作用の解明や地域の地下水賦存量 の定性的評価は,今後の持続可能な水資源利用のための 有用な知見であり,本報で得られた結果は小河川流域に おける地域水循環解明に大きく寄与するものである. 謝辞:電気探査調査およびそのデータ解析に当たっては, 中央開発株式会社九州支店の山口弘志様,山本茂雄様に 多大なご協力を頂きました.また,水質調査に関しては (独)水資源機構の子川直樹君(当時,九州大学大学 院)に協力頂いた.ここに記して感謝申し上げます. 参考文献 1) 大橋伸行,広城吉成,新井田 浩,神野健二:沿岸低 地部帯水層における淡水及び塩水境界の挙動解析,地 下水学会誌,Vol.47巻,No.2,pp.235 -251,2005. 2) 松本大毅,広城吉成,神野健二,堤 敦:地下水流動 計算と放射性同位体を用いた地下水・表流水交流解析, 水文・水資源学会誌,Vol.22,No.4,pp286-293,2009. 3) 濱田浩正,小前隆美:河川水と地下水の交流解析への 222 Rnの適用,Radioisotopes, 43, pp.770-775, 1994. 4) 唐木田芳文,富田宰臣,下山正一,千々和一:福岡地 域の地質,通商産業省工業地質院地質調査所.1994. 5) 高倉伸一:高密度電気・電磁探査法による比抵抗構造 の調査と解釈に関する研究,京都大学学位論文,2004. 6) 志村馨:電気探査法,近代的地下水調査の技術,昭晃 堂,1965. 7) モニー物探株式会社:高密度比抵抗二次元探査について,. - 594 -. http://www2.odn.ne.jp/mony-geo/PDF/ES-TXT.pdf (2009.9.30受付).

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参照

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