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アジア経済研究所編「アジア動向年報2012」 (新刊 紹介)

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Academic year: 2022

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アジア経済研究所編「アジア動向年報2012」 (新刊 紹介)

著者 奥田 聡

権利 Copyrights 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア

経済研究所 / Institute of Developing

Economies, Japan External Trade Organization (IDE‑JETRO) http://www.ide.go.jp

雑誌名 アジ研ワールド・トレンド

巻 203

ページ 50‑50

発行年 2012‑08

出版者 日本貿易振興機構アジア経済研究所

URL http://doi.org/10.20561/00045841

(2)

  アジア経済研究所 は 一 九 七

〇 年 以 来

﹃ ア ジ ア 動 向 年 報

﹄ を 毎 年 発 行 し て き

た︒五月二五日に刊行された﹃アジア動向年報2012﹄はその最新版で︑二〇一一年におけるアジ

ア地域の動向を分析したものである︒﹃アジア動向年報﹄は︑その豊富な内容からアジア地域の専門家や企業・官公庁の国際業務担当者などの必携書としての評価を得ている︒また︑国内外に専門家が少ない国・地域もカバーすることが本書のひとつの特徴である︒アジア地域に関してこれほど充実した内容を備えた刊行物は本書以外には見当たらない︒本書の各国・地域編の体裁は発刊以来四〇年余にわたって基本

的には変わっておらず

︑バックナン

バーをそろえることによる長期の時系列的比較も可能である︒本年もまたアジアの二四カ国・地域について︑研究所内外所属の専門家が新聞・雑誌などの現地資料を駆使するとともに現地調査も適宜行って詳細な分析を行った︒

  本書は大きく分けて主要トピックス編と各国・地域編からなる︒各国・地

域編では二〇一一年一年間の国内政

治・経済・対外関係を分析した論文のほか︑現地資料をもとに作成された重要日誌︑参考資料︑主要統計を収録している︒

  主要トピックス編ではアメリカ・アジア関係を取り上げて

東アジアを中心とするアジア情勢の総合的把握に努めた︒

  本書の主要な部分をなす各国・地域編は︑韓国︑北朝鮮︑モンゴル︑中国︑

香港

︑ 台 湾

︑ A S E A

N︑

ベ ト ナ

ム︑

カンボジア︑ラオス︑タイ︑フィリピン︑マレーシア︑シンガポール︑インドネシア︑東ティモール︑ミャンマー︑バングラデシュ︑インド︑ネパール︑スリランカ︑パキスタン︑アフガニスタンおよびロシア極東を分析対象とする︒

  二〇一一年のアジア地域の動向を︑本書を通じて見てみよう︒

  二〇一一年には欧州財政危機が深刻化するにつれ︑先進国を中心に経済活動が停滞の度を深めたが︑アジア諸国の経済は平均七・九%の成長を実現し︑

前年に引き続き世界経済をリードし

た︒とはいえ︑世界経済減速の影響は免れがたく︑アジアの二〇一一年における成長実績は前年の九・五%に及ば なかった︒アジアの中でもNIEsは先進国経済停滞の影響を比較的強く受け︑平均経済成長率は前年比約半減となる年四・二%にとどまった︒

  成長の鈍化のほか︑アジア諸国に共

通した問題としては物価高があげられる︒エネルギーおよび食糧価格の高騰が物価高を主導したが︑特にモンゴルやベトナムなどのような比較的低所得

の国々おいて物価上昇幅が大きかっ

た︒また︑エネルギー価格上昇は需給のひっ迫を随伴し︑産業生産の阻害要因ともなった︒物価高に対し︑各国は前年に引き続き︑政策金利の引き上げや預金準備率の引き上げといった金融引き締めが実施された︒ただ︑こうし

た引き締め策は東日本大震災や欧州財政危機︑タイの大洪水などダウンサイド・リスクの下で発動されたため︑各国は難しいかじ取りを迫られた︒

  アジア域内での相互依存は引き続き深化し︑事実上の中台FTAである経済協力枠組み協定︵ECFA︶の発効などの成果が見られた︒その一方で︑東日本大震災やタイの大洪水によって域内サプライチェーンが寸断され︑工業生産に支障が生じるなど︑相互依存

のリスクも示された︒

  アジアが抱える政治的諸問題については︑まずミャンマーでの劇的な民政復帰が特筆される︒これは同国の国際社会への本格的復帰を後押しすると見られ︑今後の動きが注目される︒北朝鮮では金正日総書記が死去し︑息子の金正恩に権力が継承されたが︑今後の方向については未確定な部分が多いままである︒中国の海洋権益への主張は 引き続き強かった︒黄海での中国漁船員による韓国海洋警察官殺害︑南シナ海では中国艦船によるフィリピンおよびベトナムの漁船への発砲や石油探査活動への妨害などの事件が発生し︑周辺諸国の対中警戒感を引き起こした︒これと関連し︑アメリカはイラクやアフガニスタンから撤退する一方で中国との対決姿勢を鮮明にしている︒パキスタンでは米軍特殊部隊がウサーマ・ビン・ラーディンを殺害したが︑これは一〇年来の﹁テロとの戦い﹂の一区切りとなり︑アフガニスタンからの米軍撤退を進める要因となった︒また︑経済中心の活動を長らく続けてきたASEANが地域安全保障にも積極性を見せるようになっている︒カンボジア・タイ国境確定での仲介のほか︑中国とASEAN諸国との間で南シナ海での領有権紛争の平和的解決を確認した﹁南シナ海行動宣言﹂のガイドライン作成といった動きが見られた︒  本書の内容は研究所ウェブサイトでの閲覧も可能である︒研究所の賛助会法人会員の方々は最新版の閲覧が可能で︑その他の方々にも五年後には公開される予定である︒  アジア地域が世界経済および国際政治においては果たす役割は日増しに大きくなっている︒同地域に関する読者の現状理解および将来展望の一助となることを執筆者一同︑切に願うものである︒︵おくだ  さとる/アジア経済研究所地域研究センター動向分析研究グループ長︶

アジア経済研究所

  

編 ﹃ ア ジ ア 動向年報2012 ﹄

 

アジア経済研究所

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奥田 聡

 ■

新刊 紹介

50

アジ研ワールド・トレンド No.203 (2012. 8)

参照

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