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ドイツにおける用益賃貸借保護法につ

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(1)ーワイマール後期よリナチス期までi. 次. 藤. ドイツにおける用益賃貸借保護法につ いて. 目. はじめに 第一章農地賃貸借特別法の一般法化への試み. ナチス期の農地賃貸借法 序. 小作法草案. 一 序 二 立案作業 三. 一. 第二章. 二 用益賃借人保護法 三 ナチスの農地賃貸借法 む す び. ドイッにおける用益賃貸借保護法について︵藤井俊二︶. 井. 俊. 二六七. 二.

(2) じ. め. に. 早稲田法学会誌第三〇巻︵一九七九︶. は. ︵1︶. 二六八. 今日のわが国において農地賃貸借がますます重要なものとなってぎていることは︑多くの人々が既に指摘しており︑. 筆者も前稿において指摘した︒すなわち︑農業経営の改善のために農地を集積する手段として現代では賃貸借が最良. の手段であり︑また食糧自給化のために農産物を増産する場合にも収益性のある生産規模をもつ農業経営が農地を効 ︵2︶ 率的に利用することが必要であり︑そのためにも賃貸借による経営規模の拡大が必要であろう︒このような農地の流 ︵3︶. 動化に奉仕すべき農地賃借権はどのよう構成されるべきかが論争され︑賃借権の物権化論争について新局面をむかえ. たとされている︒本稿は前稿に引き続きこの問題の解明のための前提作業として近代ドイッの農地賃貸借法発展に関. する歴史的認識作業を目的とする︒前稿ではドイッ民法典︵︼WO切︶の成立期からワイマール初期の用益賃貸借保護法. ︵評畠富9暮8益霊凝︶までにおけるドイッにおける農地賃貸借立法の展開過程を検討してきたわけであるが︑そ. こにおいて閃Oωは用益賃貸人の保護から出発するもので︑用益賃借人にとっては極めて不利なものであった︒第一. 次大戦中戦後の食糧不足という間題に直面して農産物の増産のためにそして小規模経営保護のために用益賃貸借保護 ︵4︶ 法が制定され︑そこにおいては賃料の規制と存続保護が一体として規定されてきたことを確認した︒. 本稿では︑インフレーションの収束したことを理由とするようになったインフレ対策用の法律たる用益賃貸借保護. 法の改正の要求に応えた一九三〇年の小作法草案がωOωの中において農業用益賃貸借をどのよう規制しようとした. かということを検討する︵第一章︶︒しかし︑結局小作法草案は可決されず︑従来の用益賃貸借保護法がなお効力を.

(3) 有していたわけである︒一九二九年に世界恐慌が発生し︑それによる農業恐慌に用益賃貸借法がそれにどのよう反応. し︑一九≡二年に政権を獲得したナチスがその独自のイデオ・ギーに基づいてどのような農地賃貸借立法を行なった. ︵1︶. 代表的なものとしては︑稲本洋之助﹁﹃賃借権の物権化﹄について﹂社会科学の方法六三号︑鈴木禄弥﹁不動産賃借権の. 食糧自給率を引き上げるために農地賃貸借が有用であると考えるものとして︑梶井功﹁土地政策と農業﹂一六頁以下参照︒. ﹁ドイッにおける農地賃貸借法の展開﹂︵早大大学院法研論集一六号︶一八一頁以下︒. かを検討する︵第二章︶︒. ︵2︶. 亜所有権化について﹂同八六号︑原田純孝﹁農地賃貸借の法構造とその特質﹂社会科学研究三︑六号︒. ︵3︶. 序. 第一章. 農地賃貸借特別法の一般法化への試み. 度改革に関する資料﹂︹農水省︺所収︶一八頁︒. ︵4︶ 拙稿・二〇六頁以下︑ヴォルフガンク・ヴィンクラi﹁土地所有権と農業経営﹂︵田山輝明他訳﹁西ドイッ農地賃貸借制. 一. 一九二〇年代︑ドイッにおける農地賃貸借を規制する法律は二本立になっていた︒すなわち︑農地賃貸借は︼WOゆ ︵1︶. とワイマール共和国成立時に制定された用益賃貸借保護法︵一九二〇年六月九日︶によって規制されていた︒この用. 益賃貸借保護法は私法的契約の自由に対する介入︑すなわち︑用益賃借権の存続保護︵いわゆる社会的用益賃貸借保 ︵2︶. 護ωoN一巴R勺8算ω魯暮N︶および賃料規制︵いわゆる経済的用益賃貸借保護誰暮の3鋒島3震評9一8ビ蕊︶を. 二六九. 行なうものであった︒もっとも︑ライヒ政府は︑このような用益賃貸借保護立法は第一次世界大戦直後の食糧・通貨 ドイッにおける用益賃貸借保護法について︵藤井俊二︶.

(4) 早稲田法学会誌第三〇巻︵一九七九︶. ︵3︶. 二七〇. 危機に対処するための応急処置であると明言していたので︑その施行期間は一九二二年五月三〇日までに限定されて ︵4︶. ︵5︶. いた︒しかし︑インフレーションは一九二二年五月に至っても依然として収束していなかった︒いやそれどころか︑. ますますひどいものとなっていた︒それゆえ︑用益賃貸借保護法の施行期間は一九二四年九月三〇日まで延長された︒ ︵6︶ 一九⁝二年末には︑いわゆる﹁レンテンマルクの奇蹟﹂によって︑インフレーションは一応収束することになった︒ ︵7︶. そうなると︑インフレ!ションが克服されたならば︑用益賃貸借保護法を必要とする状況はなくなったとする意見が. 強くなってきた︒ 一九二四年二月二二日の命令で施行期間が延長された後に︑﹁一九二五年七月二三日の施行期間の ︵8︶ 延長に関する法律﹂は激しい反対にあって︑過半数をわずかに越える賛成しか得られなかった︒この法律の議決に際. して︑ライヒ議会は用益賃貸借保護法をできるだけすみやかに廃止し︑国9Wにおける用益賃貸借法︵評9#9算︶ ︵9︶. を現在の経済状況に相応するように新たな規制をなすべきであると決議した︒しかし︑当時︑関係各界においては新. ︵10︶. 規制について全く準備をしておらず︑それゆえ︑用益賃貸借保護法の施行期間は︑結局︑一九三〇年三月三一日まで. 立案作業. 延長された︒. 二. 小作法草案作成の準備作業の段階において既に用益賃貸人・用益賃借人双方から以下のような要求が提出されてい た︒. 用益賃貸人の利益代表団体﹁ライヒ用益賃貸人保護同盟︵男⑦一畠霧9暮Nε且αR<o壱ぎ窪霞とは用益賃貸借保.

(5) ︵11︶. 護法の廃止を主張し︑ωO国における用益賃貸借法の改正に反対していた︒とりわけ︑契約の自由を制限することに は真向から反対し て い た ︒. これに対し︑用益賃借人の利益代表団体﹁用益賃借人労働協同体︵︾旨巴富鴨旨①冒零訂津α霞霊o鐸震︶﹂は用益. 賃貸借保護法の拡張を主張していた︒すなわち︑①賃料の最高限度額の統制︑②用益賃借物件についての用益賃借人 ︵12︶. の修繕義務の制限︑③賃料減額請求権の導入︑④告知保護︵閤酵α蒔§暢零言言︶︑⑤用益賃貸人の法定質権の制限 等々がそれである︒. ライヒ食糧省︑ライヒ労働省およびライヒ司法省は︑農業の専門家と討議した後に︑協同して﹁小作法の草案に関. する大綱︵O毎ロユ慧鴨︷母α窪国暮矩仁牒①ぎ8ピき9帥9霞8①言霧︶﹂を作成した︒この大綱の作成に関与した農 ︵13︶. 業の専門家はほとんどが用益賃借人側の代表者であり︑ライヒ食糧省もライヒ労働省も用益賃借人の利益を擁護しよ. うとする傾向があることと相まって用益賃借人側の要求が大部分受け容れられた︒この大綱は︑なおライヒ司法省に ︵14︶ o洋器9房︶﹂として告示された︒. よる若干の改正を受けた後に﹁農業用益賃貸借法の新秩序に関する大綱︵O歪区注鴨霊同虫諾Z窪o艮壼凝号ω 一碧血毛嘗房3鋒藍魯窪勺. この大綱に対しては︑当然のことながら︑用益賃貸人の側から反対の意思が表明された︒しかし︑結局は︑この大. 二七一. 綱を基礎としてつぎに検討する小作法草案が作成された︒つぎの項では小作法草案の個々の規定についても検討する ことにしよう︒. ドイッにおける用益賃貸借保護法について︵藤井俊二︶.

(6) 三. 早稲田法学会誌第三〇巻︵一九七九︶. 小作法草案. 二七二. 小作法草案−正式には︑﹁農業用不動産の用益賃貸借に関する法律草案︵国暮≦ロ牒①旨80窃9器ωまR象①. 評o洋置昌&旨8富庄幽魯震O貰且ω慈畠Φ︶﹂ーは一九二九年七月に完成され︑一九三〇年二月二四日にライヒ. 参議院︵国Φ一3巽暮︶に提案された︒この草案は前述した大綱とほとんど同一のものであった︒さて︑つぎに小作法 草案の基本思想を検討してみよう︒. ︵16︶. ⑥ 草案の根本思想. 理由書によると︑小作法草案は︑まず第一に︑用益賃貸借関係が農地から国民の食糧を収穫するための用益賃貸人. と用益賃借人の労働協同体︵診旨露富鴨ヨ①ぎ8冨津︶であることから出発しているという︒理由書はさらに以下のよ. うに述べている︒この労働協同体において︑用益賃貸人は農業経営の基礎︑すなわち農地を提供し︑用益賃借人はそ. の資本と労働力を提供する︒しかしながら︑土地は生産して補給できるものではないから︑用益賃貸借条件を決める. に際しては︑用益賃貸人が農地の賃貸借を切望している用益賃借人よりも有利な立場にあることは自明なことであ. る︒このことは︑とりわけ大土地所有者が小規模農業経営者に農地を賃貸しようとする場合に生じる︒このような経. 済的力関係は︑結果として︑用益賃貸借契約における労働協同体思想の消滅ということになり︑用益賃借人にとって. ︵17︶. 非常に不利益なことになる︒小作法草案はこのような状況の生じることを阻止しなければならず︑そのためには︑現. 在の実際の用益賃貸人と用益賃借人の経済的力関係の下では契約の自由を制限せざるをえない︒. 第二に︑農業用益賃貸借は︑自作農が優勢なドイッにおいても重大な意味を有している︒すなわち︑土地の備蓄を.

(7) 植民地によって補充することのできないドイッでは︑食糧増産のために自国内に存在する土地を可能な限り有効に利. 用しなければならない︒農業について専門知識を有しない土地所有者が経済的視点からすると望ましくかつ必要な土. 地改良に対して同意を与えず妨害することがしばしばあったが︑農業の専門家たる用益賃借人が食糧増産のために安. ︵19︶. 心して長期的計画をもって資本の投下をなしうるようにしなければならない︒したがって︑土地改良に対する補償な ︵18︶ らびに用益賃貸借関係の終了に関する新規制が草案の本質的な部分である︒. ⑥草案の規定. 使用賃貸借︵匡冨富︶に関する規定に対する一般的準用規定︵民法五八一条二項︶を排除して︑小作について. 以上のような根本思想に基づいて︑草案はつぎのように規定した︒. 1. は﹁農業用不動産の用益賃貸借︵評9二きα惹誹ω9鋒島魯R9⁝房叶欝ざ︶﹂という新しい標題の下に一小節が設. 用益賃貸人は︑用益賃借人が通常の経営法則に従って不動産を使用収益し︑果実を収取できる状態で不動産を. けられ︑使用賃貸借の規定は準用されなくなった︵五九〇条︶︒この結果︑使用賃貸借法の規定の多くのものが草案 ︵20︶ の中でそのまま繰り返されなければならないという煩雑な事態が生じている︒ 2. 用益賃借人に引渡す義務を負う︵五九〇条a一項︶︒用益賃借人は賃借不動産を通常の経営管理が可能な状態で返還し. なければならない︵五九六条b︶︒用益賃借人が通常の経営法則に反するような不動産の使用収益を行ない︒かつ用益. 賃貸人が書面によって警告をしているにもかかわらず︑なおこのような使用収益を継続している場合には︑用益賃貸. 二七三. 人は不作為の訴を提起することができる︵五九三条︶︒これらの規定は農産物の増産という目的に相応するものであ ドイッにおける用益賃貸借保護法について︵藤井俊二︶.

(8) ︑. ︑. ︑. ︑. ︑. ︑. 早稲田法学会誌第三〇巻︵一九七九︶. ヤ. ヤ. ︑. ︑. ︑. ︑. ︑. ︑. ︑. ︑. ︑. 二七四. ︵21︶. り︑契約の給付の内容を法律によって通常の経営法則に従った使用収益に限定しようとするものである︒. ヤ. ヤ. ヤ. ち. ち. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. 3 小作契約は書面を用いて締結されなければならず︑この方式を遵守しなかった場合には︑不動産の占有が移転 ヤ. ヤ. ヤ. ち. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. 用益賃貸人ならびに用益賃借人は用益賃貸借不動産の用益賃借人への引渡時の状態を調査し︑その結果を書面. されている場合に限り三年の期間で契約されたものとみなされる︵五九〇条b︶︒. ヤ. 4 ヤ. ︵農場明細書O暮ωび①のo冒9薯昌西︑建物明細書O①鼠区魯oω38まg昌騎︶に記載することを要求できる︵五九〇条 ︵22︶ c︶︒用益賃貸地上の建物の修繕に関する紛争を解決しようとするものである︒. 用益賃借人は用益賃貸借不動産上に存在する建物の蝦疵を理由として賃料の一部につき支払義務を免れる︒用益賃. 貸人は︑契約締結時に存在した理疵が自己の過失によるものである場合においては︑その環疵につき損害を賠償しな. ければならない︵五九〇条d︶︒この規定は一WOω上の賃貸借の場合における堰疵担保責任の原則であるが︵民法五. 三七条および五三八条︶︑草案は︑従来しばしば用益賃借人が用益賃借物件の修繕や堰疵修補に対する請求権を放棄 ︵23︶. させられ︑これらに関する義務のみを負担させられるという状況があったことを考慮した︒それで︑用益賃借人が予. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. 測不可能な経済的負担を課せられないように配慮した︒すなわち︑用益賃貸人の暇疵担保責任を制限もしくは免除し. ようとする場合には︑担保責任を制限・免除すべき暇疵が契約書において明示して列挙されていなければならない. ︵五九〇条e︶︒不動産の引渡時に理疵が存在していた場合であって︑用益賃借人がそれを修補し︑かつ契約終了時に. 修補による不動産の経済的価値の増加が現存している場合には︑用益賃借人は修補のために支出した費用の補償を契 約終了時に用益賃貸人に請求することができる︵五九一条︶︒.

(9) ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. 用益賃借人は不動産の通常の修繕については自己の費用で行なわなければならない︒この場合に︑用益賃借人は用. 益賃借不動産上に存在する建築用資材︵石︑木材︑砂利︑砂等々︶の移譲を用益賃貸人に請求することができる︒そ. の他の修繕は用益賃貸人の義務である︵五九一条a︶︒また︑住宅が健康を害する状態になっている場合には︑用益. ︵24︶. ︵25︶. 賃借人は契約を即時告知することができる︵五九一条b︶︒これは使用賃貸借の規定を導入したものである︵民法五四. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. つぎに有益費償還に関する規定である︒食糧の増産という草案の二つ目の柱を支えるものである︒. 四条︶︒. 5. 用益賃借不動産の合目的的な改良のために用益賃借人が費用を支出しその改良によって不動産の経済的価値が増加. ヤ. ヤ. ヤ. ち. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. した場合であって︑かつ用益賃貸人が改良について書面で同意を与えていた場合においては︑用益賃貸人はこの費用. を補償しなければならない︒裁判所は︑改良が合目的的であり︑その改良が不動産の価値を用益賃貸借期間を超えて. 増加させる場合であって︑用益賃貸人がその経済的状況からして補償をなしうる場合または用益賃貸借期間中には土. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. 地改良の効果は現われないが︑期間満了後に改良による経済的価値の増加という効果が確実に現われるだろうことが. 予見できる場合には︑用益賃借人の申立に応じて用益賃貸人に代って同意を与えることができる︵五九一条e︶︒こ ヤ ヤ れと逆に︑用益賃貸人が不動産を改良した場合には︑改良作業が終了した次の年度からの賃料増額を請求することが. できる︵五九二条︶︒用益賃借人が土地の改良とはならない設備を設けた場合には︑用益賃貸借終了時に設備のみを 収去することができるが︑通常の修繕となる設備は収去できない︵五九二条b︶︒. 二七五. 用益賃借人は不動産の経営上の用途につき賃貸借期間を超えて経営管理の方法に影響を及ぼす変更を加えようとす ドイッにおける用益賃貸借保護法について︵藤井俊二︶.

(10) 早稲田法学会誌第三〇巻︵一九七九︶. 二七六. る場合には︑用益賃貸人から書面による許可を得なければならない︒しかし︑用益賃貸人が重大な理由なしに許可を. 拒否する場合には︑裁判所が用益賃借人の申立に応じて用益賃貸人に代って許可を与えることができる︵五九二条. c︶︒経営上の用途変更によって不動産の価値が増大した場合にも用益賃借人が補償を請求することができるのは改 良の場合と同様である︵五九一条e︶︒. 6 用益賃借権の転貸︵q葺oε8耳︶はωOωにおけると同様に用益賃貸人の許可を得ることが要件とされてい. る︵五九三条a︑民法五九六条一項︶︒しかし︑用益賃借権の譲渡︵名o穽o壱8拝︶については︑用益賃貸人が重大. な理由なしに許可を拒否している場合には︑裁判所がその許可を用益賃貸人に代って与えることができる︵五九三条. b︶︒裁判所が許可を与えることができる場合として︑用益賃借人が重病で経営の継続をすることができない場合お. よび用益賃借人が内地植民によって移住地︵ω一8一震曾亀⑦︶を取得し︑そのために用益賃貸借関係の継続が困難とな. った場合が列挙されている︒なお︑譲受人が不動産を通常の経営法則に従って経営管理するであろうことを用益賃借. 人が保証しない場合および譲受人の財産状態が用益賃貸借関係から生じる債務を弁済できない場合には︑重大な理由. が存在する場合とされる︒裁判所が用益賃貸人に代って許可を与える場合には︑譲受人は契約期間中に用益賃貸借関. 係から生じる権利義務を承継する︒譲受人が債務を履行しない場合には︑用益賃借人が損害賠償義務を負う︵五九三. 農業属具︵冒奉韓畦︶付の用益賃貸借についての規制は︼WO切におけると異ならない︒つまり︑農業属具が. 条c︶︒. 7. 用益賃貸不動産とともに共同用益賃貸︵蜜一ε8拝︶され︑用益賃借人が用益賃貸借終了時に同種・同量・同質の農.

(11) 業属具を返還すべき場合には︑用益賃貸人が属具品の消耗につき補修しなければならない︒家畜の通常の滅失につい. ては用益賃借人が家畜の仔から補償しなければならない︵五九三条d︑民法五八六条︶︒農業属具を用益賃借人が評 ︵26︶. 価額で承継したときには︑両当事者は用益賃貸借終了時に増加価値もしくは︑減少価値を補償しなければならない. ︵鉄の属具①一ω窪Rぎ奉暮震︶︵五九三条eー五九四条a︑民法五八七条ー五八九条︶︒インフレーション期に ︵27︶ は評価額につき議論があったが︑一応インフレーションは収束したので議論されなくなっていた︒. 8 用益賃借人は反対給付として賃料を支払わなければならないのだが︑賃料は必ずしも金銭の形式をとる必要は. ないが︑契約締結時においてその給付の貨幣価値が契約において明示されるべきである︵五九〇条a二項︶︒しかし︑ この方式の不遵守からは何の法的効果も生じない︒ ︵28︶. 用益賃借人が用益賃貸人に対して反対債権を有している場合であっても︑従来は通常の場合特約によって用益賃借. 人の相殺権は排除されていた︒このような特約は用益賃借人にとっては極めて不利なものであるから禁止される︵五 九四条b二項︶︒. 用益賃貸人もしくは用益賃借人の給付が一般的経済状況の変化によってもはや公平に合致しなくなった場合には︑. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. 各当事者は給付を公平に合致するように確定することを裁判所に請求することができる︒用益賃借人が自作地も含め. て二〇ヘクタール未満の土地を経営管理し︑経済的窮境という圧迫のもとで用益賃貸借契約を締結した場合には︑告. 知期間の開始前に契約更新後の用益賃貸借条件を適切なものに変更するように裁判所に請求することができる︒用益. 二七七. 賃貸人が変更された契約条件で契約を締結することを拒否する場合には︑用益賃貸借契約は告知期間の満了とともに ドイッにおける用益賃貸借保護法について︵藤井俊二︶.

(12) ︵29︶. 早稲田法学会誌第三〇巻︵一九七九︶. ︵30︶. 終了する︵五九四条c︶︒. 二七八. ︵31︶. 9 用益賃貸借権の存続保護の方法としては二つの道がある︒一つは契約の最短期間を規制する方法であり︑もう 一つは告知の困難化である︒草案は第二の道を選択した︒. 告知はすべて書面によって行なわなければならない︒告知は用益賃貸借年度末についてのみ行なうことを許される︒. 告知は告知期間の遅くとも第一作業日になされなければならない︒告知期間は農場もしくはブドウ畑や果樹園の場合 には二年︑その他の農業用不動産の場合には一年である︵五九四条e︶︒. ヤ. ヘ. ヤ. ち. ヤ. 告知の実質的要件は以下のとおりである︒. 告知は重大な理由が存在する場合にのみ有効である︒重大な理由の構成要件にはつぎの三つのものがある︵五九五 条︶︒. ①用益賃借人が契約更新後の期間に関する条件の適切な変更を拒絶し︑同時に変更についての裁判に服すること. 用益賃貸人が自らもしくは自己の親族に用益賃貸不動産を経営管理させようとする場合︒この場合の親族とは. も拒絶すること︒ただし︑用益賃借人がこの裁判に服する場合には︑告知は不可能となる︒. ②. 用益賃貸人の配偶者︑婚約者︑直系血族︑直系姻族ならびに第三親等までの傍系血族および第二親等の傍系姻族であ. る︒ただし︑用益賃借人が自作地を含めて二〇ヘクタール未満の不動産を経営管理している場合であってかつ用益賃. 借人の生活にとって用益賃借地の経営が重大な意味を有する場合には︑告知は無効である︒. ③ 用益賃貸人が本質的に同種であって︑同価値を有する代替不動産の用益賃貸借契約の締結を用益賃借人に申込.

(13) み︑用益賃借人が十分な理由なしにこの申込を拒否した場合もしくは一ヵ月以内に承諾の意思表示をしない場合︒用. ヤ. ヤ. ヤ. 益賃貸借不動産が変更することによって用益賃借人に特別の負担が課せられることになり︑用益賃貸人がこの負担を 補償しない場合には︑十分な理由があるものとみなされる︒. ヘ. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. 草案の五九五条aはドイッの小作法にとって全く新しい規定である︒すなわち︑用益賃貸人は用益賃借人に一年分 ヤ. の賃料に相当する金額を離作料︵>げN信鴨鴨匡︶として提供することによって理由なしに告知することができる︒た. だし︑用益賃貸借不動産の面積が二〇ヘクタール未満の場合または農場の用益賃貸借関係が未だ九年を経過していな. い場合︑その他の不動産については三年を経過していない場合︑さらには用益賃借人が用益賃借不動産を三〇年間継 続して経営管理している場合はこの限りではない︒ ヤ. も. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. 一〇〇ヘクタール以上の農地の用益賃貸借の場合でありかつ期間が一八年以上の場合には︑用益賃貸人は理由を示. ヤ. さず︑離作料も提供せずに告知することができる︵五九五条b︶︒. このように用益賃貸人の告知権については様々な制限が存在するのであるが︑他方︑用益賃借人の告知権には制限 がない︒. 用益賃貸人が即時告知をなしうる場合は五九五条e︑五九六条に規定されている場合に限られる︵五九六条c︶︒す. なわち︑用益賃借人もしくは用益賃借権の譲受人が警告されているにもかかわらず通常の経営法則に反する不動産の. 利用を継続している場合︑用益賃借人が用益賃貸人の権利を著しく侵害する場合︑とりわけ用益賃借権の無断譲渡・. 二七九. 転貸または用益賃借人の義務を解怠する場合︑用益賃借人が違法な行為をなし︑用益賃貸関係を継続できないほど破 ドイッにおける用益賃貸借保護法について︵藤井俊二︶.

(14) 早稲田法学会誌第三〇巻︵一九七九︶. 二八○. 壊した場合︵以上五九五条e︶︒用益賃借人が六ヵ月分の賃料の支払を遅滞している場合︑賃料の支払が三ヵ月毎に 行なわれる場合には履行期から三ヵ月後に即時告知をすることができる︵五九六条︶︒. 用益賃貸借が即時告知された場合には︑用益賃貸人は先払いされた賃料を返還しなければならない︵五九六条b︶︒. 用益賃借人が死亡したときは︑用益賃貸人も用益賃借人の相続人も告知権を有する︒告知期間は六ヵ月である︵五. 当事者相互の債権の担保について以下の規定がなされる︒. 九七条1︶︒. 10. 用益賃貸人は用益賃借人が不動産上に持ち込んだ物や未分離果実に対して法定質権を有する︵五九七条e︶︒共同. 用益賃借した属具に対する債権について用益賃借人は用益賃貸人所有の農業属具に対する法定質権を有する︵五九七. 条f︶︒用益賃借人は用益賃貸借関係から生じる債権について用益賃借不動産に保全抵当権を設定することを請求で きる︵五九七条︶︒ωO田には存在しない用益賃借人の担保権が規定された︒. ︵鋤︶. ︵33︶. このような詳細な規定を有する草案は︑緊急法にすぎない用益賃貸借保護法の民法典への導入︑市民法の典型たる. 即08訂冨魯39暮. ωoヨR犀量に窪釜ヨ穿薯ξ︷oぎ︒ωいき音9︒畠茜oω09︒9切︒﹃凶︒耳害︒﹃霊区&旨の9鉱計漣ωo注039件. ぎ畠80弩o℃鐵零70ロ. ご謡︒ω﹂Oヌω9ヨ置. 民法典の契約自由への干渉に対する批判が強く︑結局︑立法機関によって可決されるには至らなかった︒ ︵1︶ 詳細については拙稿一九五頁以下︒ 拙稿二〇七頁︑ヴィンクラi・前掲論文一八頁︑℃o昌浮F寓㍉妻o目9句. =●≦ U器Uo仁890一 昌α毛凶﹃8畠鋒二一魯o℃8耳話o窪噛U器σ昌α宅一旨ω畠緯二一90哨碧ゴ賃8窪. ︵2︶. 注. ピ似昌Oo﹃P一く・↓o芦一〇ωρω900ω●. ︵3︶=≡o夏.

(15) シュトルパー﹁現代ドイッ経済史﹂︵坂井訳︶八二頁以下︒. 一〇ωO︒ω●一ω野. ︵4︶. シュトルパー・前掲書一〇一頁以下︑ハウスホ!ファ;﹁近代ドイッ農業史﹂︵三好・祖田訳︶二五〇頁︒. ℃旨8FFU器℃8びヨo賃9算α8U窪房9窪沁oざ冨即一漣い@ド︵以下℃餌930q9窪と略す︶. ℃ユ富oF頃8げヨo賃ooげ梓−ω︒N.. ︵5︶. ︵7︶. ︵6︶. 一〇ωドω︒Nρ. 9三〇F田. 90勾90﹃Bα震い弩音碧窪. ︵8︶. 一Wo吟冒α⁝磯h警α魯国旨譲自暁o首①のO①の090の麟ぴR象o℃8算一きユ註旨ωo富筐凶魯震O歪昌儀の呂o犀9ωoユo窪薗ご巽 い餌ロα宅胃房9臥 障ωo昌畠Φ旨㊦盈這ωρψ旨9︵以下ω①の急昌α仁昌磯と略すy℃o昌津犀. ≦o自o一︸薗如・ρψお・. ︵9︶. No凶け零ぼ簿山畦<①ε丹耳oきZ鉾ω﹂8Pでは﹁切Oωにおける農業用益賃貸借法改正に関する提案はどのような状況に. 勺ユ房oF勺8ず90貸g﹃梓. ω﹄●切①αq急づ儀仁昌αq一ω﹂N①︒. ︵10︶. あろうとも受け容れられない﹂と述べられていたと伝えられている︵d一一ユoF鐸鉾ρψ曽︶︒. たとえば︑レーニンクは﹁ライヒ土地同盟︵閃o凶昌の一きαげ仁区と︵土地所有者や用益賃貸人の利益代表組織︶. ¢一一ユoF鐸 ︒ρω●曽●. から専門家. ︵n︶. ︵2 1︶. dニユoF帥●勲ρψ8. 9三〇F騨勲ρ堕認︒大綱の一般的な考察についてはOユ8一F零> 菊9段ヨα段ピ昌ユ℃8算℃おωOがある︒. =①沖一〇〇し8曾ψ鵠・以下. h梓︶﹂︵用益賃借人や中小規模の農業経営者の利益代表組織︶から専門. ︵3 1︶. は召集されず︑﹁ドイッ農民団︵U窪890ωき震39. ︵4 1︶. 切〇四急昌畠仁昌騨ω﹂ミ︒. ζ一#色言ロ槻と略す︶︒. 家が召集されたと述べている︵い3ぎ堕霞窪亀仁昌磯号ω甘昌器構冒ωユ窪a≦貯89鋒房器9. ︵16︶. ︵15︶. 二八一. この問題は﹁賃借権の物権化﹂の問題とに関連するだろう︒当. レーニンクは契約の自由を制限することは現代的法発展の過程に内在するものであり︑草案もこの発展方向を押し進めた ものであると評価している︵い蜜ぎ鱒客葺①一ε昌単ψ癖伊︶︒. ︵17︶. ドイッにおける用益賃貸借保護法について︵藤井俊二︶.

(16) ︵18︶. 早稲田法学会誌第三〇巻︵一九七九︶. 二八二. 時︑ヘーデマンやレーニンクは用益賃借権も用益賃貸借保護法によって物権化したものとみなしていた︵=a①ヨ帥昌Pω碧冨早. 希︒耳一8トω︒ω塁い3凶据uU一〇〇霊巳ω呂05且9①巴ω島凝一一90ω菊①︒算﹂Oo︒ρω︒ミ一︒︶︒. o●第一次大戦中戦後混乱期にみられた国民的飢餓状態と︑戦前に比しての外国食糧依存度の上昇とい 切£急5畠縄昌鯨ψ旨o. う経験は︑食糧を増産しなければならないという意識をほとんどあらゆる社会階層にうえつけた︒外国の食糧への依存度は︑. たとえば小麦は一九〇九−一三年平均の三一%から二四年の三七%へ上昇し︑以後二七年の四四%へと上昇し続けていた. 本稿では︑切R8耳帥げ魯ビ弩α&属零げ鋒. おωρω﹂8ヌに掲載されている草案に依っている︒. ︵加藤栄一﹁ドイッ農業および農業政策﹂︹日高他編・﹁マルクス経済学﹂所収︺五六七頁︶︒. d一一ユoF勲9 0.ρω﹄斜.. ︵19︶. ︵20︶. 閃o唱¢昌山唱ロ堕ψ旨S. d一三〇F箇●帥.O●ψ鷲.. o・有益費償還の意義につきω畠ヨ箆 ω£急昌α仁昌Oq・ω・旨O. d一三〇ダ簿︒印.ρω︒N¢. ︵23︶. 切ooq急昌ユ唱昌堕ω﹂Noo.d=﹃凶oF鉾鉾O︒ω・お唐●. ︵21︶. ︵24︶. ︵22︶. ︵25︶. ﹁鉄畜は死亡しない︵田器醤≦魯雪胃耳旨o︶﹂という格言に由来する︵民8890戸界︶ピきα惹濤ω9鋒8﹃8窪・一8ρ. d一一ユoF箇●曽︒ρω︒O一︒. ω﹂Oo o・︶︒9注oF鐸鋭ρψ曾が民法五八六条を鉄の属具に関する規定であると説明しているのは誤りである︒. P些ρψ8・. ︵26︶. ︵27︶. インフレーションはおさまったのであるから︑著しい経済変動はもはや生じない︒﹁↓般的経済状況の変化﹂という概念は. d一一二〇F薗・角●O・ω︒ωoo●. ︵29︶. ︵28︶. むしろ法的安定性をおびやかすとして︑このような変化は緊急法︵Zo賃8拝︶によって調整されれぽよいという批判が強か. o9ω●㎝&︒︶︒. 一〇G. った︵Oユωo一F騨勲O.¢o oω厭ピ首℃ヨ曽昌P閃 Nβ﹃Zoロαqoω雷犀ロ昌のαoの冨昌α名マ冨oげ鉱二8﹃o昌勺帥oゲ賃oo﹃房矯U8一9曾画辞.

(17) ︵30︶. m.曽︒O●ω・O. 映●. ドイッ農業評議会は最短期間について農場︵ピ雪山騎舞︶の場合は九年︑個別耕地︵︸巽器εの場合は三年が適当であると提. <屯●ωo ﹃ 目 凶 鼻. d=二〇プ. 勲印●O.ω.刈O.︶︒. 昌ユ︑. ドイッ農業評議会︑ライヒ産業同盟︑ドイッ家屋所有者同盟等がこの草案に反対していた︵9試oF鋭勲O●ω﹄P︶︒ま. 螢︒鐸O︒9 0 ㎝ ︶ ︒. D畠ヨ置計 案していた︵国霞魯欝昌9釦勲Pψ討Oヌ︶︒他方︑最短期間を規制することは硬直的であると考える者もいた︵o. ︵31︶. ︵32︶. U一四N︸一〇ωρω9NOS. た︑学界では規定の仕方があまりにカズイスティ!クであるとの批判もあった︵ω&窪げo一βU9国導妻葺hoぎ窃ピ. ヴィソクラー・前掲論文一九頁︒. ℃帥色#αQoωo陣N①ω. 第二章 ナチス期の農地賃貸借法 序. ︵33︶. 一. 一九二九年一〇月ニューヨークの株式市場が大暴落した︒いわゆる世界恐慌がはじまったのである︒この影響はド ︵1︶. イッ経済にも当然波及してきた︑そしてドイッ農業もその例外ではなかった︒ ︵2︶. ︵3︶. 小麦の価格は一九二九年一一月から一九三三年までにほぼ二分の一に下落し︑ライ麦の輸出はほぼ完全に停止して. しまった︒その結果︑ドイッの農民は過重な負債を負い︑その支払は不能となっていた︒. このような状況の下で︑一九三三年一月三〇日にナチスは政権を獲得することになる︒もっとも︑当初はナチスと. 二八三. 国家人民党との連立政権であり︑食糧大臣は国家人民党の党首フーゲンベルクであったから︑その農政はナチス本来 ドイッにおける用益賃貸借保護法について︵藤井俊二︶.

(18) 早稲田法学 会 誌 第 三 〇 巻 ︵ 一 九 七 九 ︶ ︵4︶ のものとはいえなかった︒. 二八四. フーゲンベルクは世界恐慌の影響によって支払切れないほどの負債を負った農業を救済するために従来からなされ ︵5︶ てきた負債対策を承継し拡大した︒すなわち︑いわゆる東部救済︵Oω什匡浮︶をドイッ全土に拡大した︒一九三三年. 二月一四の﹁農業強制執行保護に関するライヒ大統領命令︵<ρα窃菊㊤9ω冥器置o暮9まR8三碧α宅算零ぎ零. ︵6︶ 一一9窪<o一一の賃9ざロ鴨零言9︶﹂である︒この命令の要点は農地および農業属具に対する強制執行を一九三三年一 ︵7︶. ︵8︶. ○月一三日まで停止するということであった︒さらに︑農民の債務を整理するために六月一日に﹁農業債務整理法. ︵Ooω09N自勾o鵯言昌㎎α震一きα&旨ω畠鋒象9窪ω号信一身震憲一9凶のωo︶﹂を制定した︒ これは農業︑林業および. ︵9︶ 園芸の経営者の借財を整理して︑できるかぎり年賦償却の方法を確立してこれを更生することを目的としていた︒. このような恐慌下では︑一般的な債務者保護以外に過大な負債を負っているために借賃を支払うことのできない用 ︵10︶. 益賃借人を保護すべきであるという要求が生じてきた︒つまり︑借賃の支払の遅滞を理由とする告知から用益賃借人 を保護する法律を制定することであり︑そのために用益賃借人保護法が成立した︒. 二 用益賃借人保護法. ぎoP<o一一の霞o畠仁づ鴨ω3舞N露且℃餌o窪R−. 扁九三二年九月二七日の﹁農事調停手続︑強制執行保護および用益賃借人保護に関するライヒ大統領命令︵<ρ ︵n︶. Ooω閑o一3聲感ω一αo暮自βびo﹃一きα惹昌ωo富臣90ω<R目一辞ピb鴨くo焦. の99N︶﹂が最初に借賃不払を理由とする告知から用益賃借人を保護するものであった︒この命令は三章において︑.

(19) 用益賃貸借調停所︵勺8げ9ぎ蒔呂磯器目け︶. は︑賃料支払の遅滞が農産物価格の下落や悪天候︑家畜の伝染病等の用. 益賃借人が回避することが不可能な事情に基づいている場合には︑用益賃借人の申立に応じて賃料支払の遅滞を理由 ︵12︶. とする告知を無効とみなすことができると規定している︒この命令が一九三三年四月二二目の﹁用益賃借人保護法. ︵O①ω①9ま霞勺跨拝段零ど言︶﹂に承継された︒クレッシュルによると︑用益賃借人保護法はドイッにおける農地. ︵13︶. 賃貸借保護立法にとっては一九二〇年の用益賃貸借保護法とともに新たな展開のもう一つの出発点と評価されてい る︒つぎにその規定内容について検討してみよう︒. @告知保護. 用益賃貸人が用益賃貸借関係を告知した場合に︑用益賃貸借調停所は用益賃借人の申立に応じて一定の要件が備わ. っている場合を除いて告知を無効と宣告する︵一条一項︶︒この宣告がなされると︑用益賃貸人は一九三三年一二月. 三一日までは宣告後新たに生じた賃料の不払︑その他の重大な理由なくしては告知をすることができない︵一条二項︶︒. 用益賃貸借保護法によると告知された契約は更新されうると規定されていた︒﹁更新される︵<段鼠昌鴨旨とという言 ︵14︶. 葉は契約の存続していることを前提とするから︑既に消滅してしまった契約︑すなわち即時告知された契約の更新は ︵15︶. 認められないと解されていた︒これに対して用益賃借人保護法は告知を無効とするわけであるから︑即時告知された 契約も更新されることになるとされている︒. 二八五. 一年より短い期間で更新することはでき. 用益賃貸不動産の買主が一九三三年一二旦三日までに告知する場合には︑用益賃貸借調停所は用益賃借人の申立 に応じて告知された契約を一年間だけ更新することができる︵二条二項︶︒ ドイッにおける用益賃貸借保護法について︵藤井俊二︶.

(20) 早稲田法学会誌第三〇巻︵一九七九︶ ︵16︶. なかった︒. 用益賃貸人や買主による告知が有効とされるのはつぎの場合である︒ ①用益賃借人が通常の経営を継続することができない場合︵一条一項︑二条二項︶︒ ②用益賃借人の財産について和議もしくは破産手続が開始された場合︵五条︶︒. ③農業債務整理法による用益賃借人の債務整理が不可能であることが証明された場合︵五条︶︒. 契約期間の延長. ④告知の理由となった賃料支払の遅滞が一九三〇年一二月三一日以前に生じた場合︵五条︶︒. ⑥. 二八六. 用益賃貸借関係が一九三三年一〇月三一日までに期間を満了する場合には︑用益賃貸借調停所は用益賃借人の申立 に応じて一年間だけ契約を延長すると宣告することができる︵二条一項︶︒. つぎの場合には延長は認められない︒ ①用益賃借人が通常の経営の継続をなしえない場合︵二条一項︶︒. ②用益賃貸人が用益賃貸不動産を自らもしくは自己の親族によって経営しようとする場合︵二条一項︶︒ただし︑. 用益賃借人が土地を明渡すに際して自己の農業属具を投げ売りしなければならない場合には︑用益賃貸人が自ら経営. 管理をしようとする場合であっても︑契約は延長されうる︵八条a一項︶︒もっとも︑契約の延長が公益に反する場. 合または用益賃貸人が不動産の返還を非常に必要としており︑用益賃借人が不動産を留置することは用益賃貸人の不 利益となる場合は延長は許されない︵八条a二項︶︒.

(21) 契約の延長の場合にも︑告知を有効とする要件の①︑②︑③が適用される︵五条︶︒. 用益賃借人保護法の施行日︵六月一五日︶前に満了する用益賃貸借関係は︑下級行政官庁が用益賃借人による通常. の経営の継続の可能性を証明する場合には︑用益賃貸借調停所長は用益賃借人の申立に応じて契約を一九三三年一〇 ︵17︶. 旦三日まで延長すると宣告できる︵四条︶︒この規定によって施行前に期間の満了する用益賃貸借関係も救済を受. けられることとなった︒二条一項による契約の延長の場合と同一の要件により延長が認められない︒. ︵18︶. 以上のようにして︑用益賃借人が賃料の支払を遅滞しても通常の経営を継続できる等々の事由があるときは︑告知. できないという農民救済法が制定された︒用益賃借人保護法はその後も施行期間が延長され︑結局︑一九三七年九月 ︵19︶. 三〇日の﹁用益賃貸借緊急法の継続適用と補完に関する法律︵O①ω①言帥びR毛o冨お巴ε昌凶§α国おぎN毒閃号ω. ナチスの 農 地 賃 貸 借 法. 勺帥990霞9鐸ω︶﹂によって一九四〇年八月一四日まで延長された︒. 三. ︵20 ︶. フーゲンベルクの農政は自由主義的であると批判していたナチスの農政部指導者ダレが一九三三年六月三〇日に食 ︵22︶. 糧大臣に就任した︒これによって六月三〇日以降においてナチス本来の農政が行なわれることになった︒. ダレは一九三〇年にナチス党農業綱領を起草しているが︑一章ではドイッの国際金融界への隷属からの解放はドイ. ︵麗︶. ツ民族の食糧の自給自足の達成によってはじめて可能になると規定し︑三章では土地財産は全民族の共同の福利に利. 二八七. 用すべき義務を負うまたドイッの土地は所有者の不労所得の源泉となるべきではないと規定している︒以上の綱領に ドイッにおける用益賃貸借保護法について︵藤井俊二︶.

(22) 早稲田法学会誌第三〇巻︵一九七九︶. 二八八. 沿って用益賃貸借立法もなされてゆくことになる︒ ︵23︶ ナチスの農業立法で最も重要な﹁ライヒ世襲農場法︵勾o一昌器きぎ凝oωo言︶﹂は前文において農民たる能力を有す ︵24︶. ︵25︶. る者に帰属する農林業用地は自活農場︵>畠震き訂彗閃︶を最小限とし︑一二五ヘクタールを最大限として︑これを. 世襲農場とすると規定している︒. ︵26︶. 用益賃貸借の領域でも︑一九三五年六月二八日法は用益賃借人保護の対象を一二五ヘクタール以下の不動産に限る と規定した︒. さらに︑前述した一九三七年法によって大幅な改正がなされた︒まず︑用益賃貸借緊急法の施行期間を限定しない. ヤ. ヤ. ヘ. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. こととした︵結局︑前述したように一九四〇年八月一五日にライヒ用益賃貸借保護令︵国①一魯88耳零ぎ日9身仁昌凶︶. が発効するまで適用される︶︒さらに︑用益賃貸借契約は用益賃貸借地の規模にかかわりなく従来の用益賃貸借緊急. 法において規定されていた期間を超えて適切な期間で更新されるものとする︵二条一項a︶︒農産物の増産にとって ︵27︶. 不利益となる契約条項は廃止もしくは変更される︵二条一項b︶︒用益賃借人は︑国民の食糧の確保のために必要で. あり︑郡農民指導者︵因お冨訂ま彗旨ぼR︶が同意している場合にのみ︑用益賃貸借調停所に申立をなすことができ る︵二条一項︶︒. 一九三七年の改正によって︑用益賃借人保護法がナチス的に改造されたと評価されている︒すなわち︑従来の法に ︵28︶. よると個々の契約上の給付等︵賃料や期間︶が新たに確定されていたのであるが︑三七年法においては用益賃貸借契. 約の全内容を農業政策的に望ましい方向で変更することが可能になったからである︒つまり︑この規定は契約当事者.

(23) の利害対立の調整ということを背後に押しやり︑民族共同体︵<o一駐鴨ヨ︒冒零富3の利益が個人の利益よりも優先 ︵29︶ すべきだという思想に基づいている︵公益は私益に先立つ︹ナチス党綱領二四条︺︶︒この思想からすると︑用益賃貸. 人と用益賃借人は土地を国民の食糧を確保するために管理するのであり︑両者とも土地の収益性を増大させるために 共同して義務を負うことになる︒ダレは用益賃貸借についてつぎのように述べる︒. ﹁ドイッの土地はわが民族の生活圏であり︑勤勉な同胞の労働の基礎である︒したがって︑ナチスの見解からする. と︑用益賃貸借契約は土地と労働の義務共同体︵勺岳o窪①凝①ヨ巴房畠鉱什︶にのみなりうる︒それゆえ︑用益賃貸人. と用益賃借人は一般的な民族秩序︑身分秩序ならびに土地秩序の枠内で土地の収益性を維持︑上昇させ︑わが民族の ︵30︶. 食糧を確保のために協力しなければならない︒用益賃貸条件は社会的正義と正当な賃貸借価格に相応するように規制 されるべきである﹂と︒. 一九四〇年には︑よりナチス的な用益賃借保護法の制定が企図された︒その意図するところは︑用益賃借人を保護. するのではなくて︑用益賃貸借が国民経済の中において果すべき任務を保護することである︒そのために︑用益賃貸. 借関係は長期的かつ計画的に農場を経営管理できるように長期契約にすることが望ましい︒そして︑用益賃貸借契約 ︵31︶ の内容は農場経営が最高の能力を発揮するように形成できるようにしなければならない︒ ︵32︶. かくして︑一九四〇年七月三〇目付の﹁用益賃貸借緊急法の統一に関する命令つδ&畦く段巴昌9島魯琶晦山$ 男8げ言o賃9算ω︶﹂︵ライヒ用益賃貸借保護令︶が発せられた︒. 二八九. 前文では︑四〇年法はナチス的世界観を前提としており︑それゆえ四〇年法をナチス的秩序としてナチス的精神を ドイッにおける用益賃貸借保護法について︵藤井俊二︶.

(24) 早稲田法学会誌第三〇巻︵一九七九︶. もって解釈すべきであると規定されている︒つぎに個々の規定を検討してみよう︒. @ 存続保護. 二九〇. 小作官庁︵︸8び貫ヨ什︶は民族の食糧の確保のためまたは土地の使用収益の健全な分配のために必要とされる場合. には︑④告知を無効として契約の適切な期間を確定すること︑⑭期間の満了した契約を適切な期間で更新すること︑. ◎その他の理由から解約された契約を解約されなかったものとし︑その契約の期間を適切に確定することができる. ︵33︶ ︵三条一項︶︒ただし︑用益賃借人が農業経営に不適任である場合︵例︑ユダヤ人である場合︶︑用益賃貸借不動産が. 公用収用される場合︑用益賃貸人自ら用益賃貸不動産を経営しようとする場合︑あるいは用益賃貸人が自ら経営しよ. うとする場合であって︑それが用益賃借人の経済生活の基盤を奪う結果となりうる場合においては不動産の経営管理. が用益賃貸人にとって決定的意義を有する場合または用益賃貸借関係が土地の使用収益の健全な分配とはならない場. 合には︑小作官庁は三条一項の権限を行使できない︵三条二項︶︒この場合には︑申立権者は当事者ならびに郡農民 指導者である︵二九条二項︶︒. 用益賃貸借官署が三条に基づき契約期間を確定した場合にも︑契約の継続が国民経済上もはや是認しえない事情ま. たは用益賃貸人にとって著しく過酷となるだろう事情が生じたときには︑用益賃貸人は契約期間の途中であっても小. 契約内容 の 変 更. 作官庁の許可を得て告知をなすことができる︵四条︶︒. ⑥. 小作官庁は︑契約内容が国民経済的視点からすると正当化されえず︑とりわけ農業生産の向上を阻害する場合には︑.

(25) 期間満了 前 の 解 約. 申立に応じて契約内容を変更することができる︵五条︶︒申立権者は三条の場合と同一である︒. @. 用益賃借人がドイッの土地の経営管理には不適切である場合︵例︑ユダヤ人︑反ドイッ活動をしている者︶であり︑. 州農民指導者より申立のある場合には︑小作官庁は契約期間満了前に契約を解約することができる︵六条︑二九条二 項︶︒. ︵34︶. 郡農民指導者や州農民指導者は公益の代表者として﹁公益は私益に先立つ﹂という思想を用益賃貸借の領域で具体 化する任務を負っているものであった︒ ︵35︶ 四〇年法はその後一九五二年六月二五日に現行小作法が発効するまで有効であった︒. ︵36︶ なお︑賃料は一九三六年一一月二六日の﹁価格引上禁止に関する命令︵<ρ菩段α器<①旨9<自勺﹃①一器旨αど凝窪︶﹂. によって他の財産や給付とともに包括的に規定されていた︒すなわち︑賃料額は一九三六年一〇月一八日時点の額で. ハウスホーファー.前掲書二六四頁︒. 停止されることになった︵一条︶︒したがって︑ライヒ用益賃貸借保護令には賃料の規制は含まれていないわけであ る︒. ︵1︶. ︵3︶ シュトルパー・前掲書二一四頁︑磯辺秀俊﹁ナチス農業の建設過程﹂三四頁以下︒. ︵2︶ シュトルパー・前掲書二一四頁︒. 二九一. 美濃部亮吉﹁独裁制下のドイッ経済﹂一七〇頁以下︑戸原四郎﹁ナチスの農業政策﹂︵日高他編﹁マルクス経済学﹂所収︶. 五九一頁︒. ︵4︶. ドイッにおける用益賃貸借保護法について︵藤井俊二︶.

(26) ︵5︶. 早稲田法学会誌第三〇巻︵一九七九︶. 二九二. 当初は︑債務法自体の枠組はそのままにして︑負債について政府保証や利子補給を行ないかつ短期の債務を長期・低利の. れるようになり︑強制執行保護法や債務整理法が制定されるようになってきた︒このような救済措置がとくに東部ドイッに. 債務への変更︵債務変更qBω3三α 昌頒︶を促進した︒しかし︑恐慌が深まるとともにこれだけでは不十分であると考えら. ついてなされていたので東部救済と称した︵ハウスホーファー・前掲書二七〇頁︑原田薄﹁ワイマール・ドイッ資本主義の. ︵8︶. ︵7︶. ︵6︶. 美濃部・前掲書二〇五頁以下︑磯辺・前掲書一五八頁以下︑我妻前掲書二二五頁以下︑詳細については︑山田晟﹁ドイッ. 菊O切一・一.ω︒ωω刈.. 美濃部・前掲書二〇二頁以下︑我妻栄﹁民法研究1﹂二二四頁以下参照︒. 肉Oω一●一︐ω●Oド. 農業政策と東部援助問題﹂︵唯物史観三号︶︶︒. ︵9︶. ︵10︶. 勾Oω一●一9ω︒餌刈QQ︒. 男ユ房oF℃帥o冥ロo霞ooげ稗︸oo.ω●. 農業債務整理法について﹂︵法協六〇巻一︑二︑四ー六号︶参照︒. ︵1 1︶. 国O田じHω﹄曽・我妻・前掲書二二六頁︑磯辺・前掲書一五三頁以下参照︒. ︵14︶. O薗β905UR昌⑦直o勺似o窪Rωoげ9斜U閃N. 国ρNO︒餅一〇器.一白︒這oo卜o●ψωOO. 一〇ωoo●ω.謹ω●. 図3窃90F騨鉾O・ω﹂OO・ハウスホーファー・前掲書二八○頁参照︒. ︵12︶. ︵15︶. Oロ旨げ05帥︒餌.ρω●N麻oo.. ︵13︶. ︵16︶. O鳶旨びR. ・. ︵17︶. 国Oω一︒一●ω・一■O㎝一︐. く笹●リユけωoFり碧﹃90#g耳︸ψ. ●. ︵18︶. 磯辺・前掲書四〇頁︑美濃部・前掲書二一一頁︑戸原・前掲論文五九二頁︒. 聾︒口●O●ω.N轟伊. ︵19︶. ︵20︶.

(27) ︵21︶. ダレの思想については︑R・ヴァルター・ダレー﹁血と土地﹂︵長場訳﹁新独逸国家大系第一巻﹂所収︶︑美濃部.前掲書. 我妻・前掲書二五二頁以下︑永川秀男﹁ナチス農民政策﹂三六頁以下︑大野英二﹁ナチスの農業綱領﹂︵経済論叢一一五. 一七四頁以 下 参 照 ︒. ︵22︶ 巻一・二号︶参照︒. o伊世襲農場法についてはわが国で多くの研究がなされている︒たとえば︑西村勉﹁ナチス世襲農場法関係 ︵23︶ 勾O匹・一ψ①o. 一〇号︶︑我妻・前掲書二二六頁︑二. 七〇頁以下︑谷口知平﹁独乙世襲農地法と我家督相続制﹂︵志林四二巻一号︶︑金沢理康﹁独乙新世襲農園法論﹂︵早法一五. 令﹂︵法協五三巻六ー一〇号︶︑山田晟﹁独逸世襲農場法について﹂︵法協五五巻九︑. N所収︶等がある︒なお︑ヘルペルト・バッケ﹁農業及び内地植民政策﹂︵近藤訳﹁新独逸国家大系第一〇巻﹂所収︶参照︒. 巻︑﹁法制史論集﹂所収︶︑吾妻光俊﹁ナチス民法学の精神﹂︑椿寿夫﹁ナチスドイッ・スイスの家産制度﹂︵家族問題と家族法. 閑Oω一︒H●ψoo一〇・. ナチスの農村における基盤たる中小農民を保護しようとする政策の具体化である︵戸原・前掲書五九四頁︶︒. 4︶. ︵2. ナチスの農業政策上世襲農場制とならんで重要なものにライヒ食糧団体︵幻o一畠旨似ぼω9昌山︶がある︒農民層の維持のた. ーユ諾o F ︸ 8 窪 昌 o 賃 8 ゴ け 矯 ω ・ ↑. ︵25︶. ︵26︶. めには︑負債整理等の事後的措置よりも︑価格政策等による経営の安定化措置が必要とされた︒食糧団体制はこれを課題と. ︵27︶. した︒一九三三年九月一三日に﹁ライヒ食糧団体の臨時設置ならびに農産物の市場および価格の統制に関する法律︵Ooωo旨. 麟げ震αo昌くoユ似q節ロひq8︾虞︷鼠β自8勾o凶9弩似ぼ9き儀oω仁昌α寓器撃餌ゲヨo昌Nξ匡 ぺ算qμα寄①一巽o⑳oピ5磯窪﹃. 二九三. ℃ユ30FU一〇590勾o凶9眉8耳零ゲG言o巳ロロ昌oq︑U一一忠9ω9露↑︵以下U一と略す︶ ハンス・ファブリチゥス﹁ナチ. ℃ユ富oFb8ゲヨo#8耳︸ω●q●. 食糧団体の代表者である︒. 置βα毛算零冨窪8冨国﹃N8鵬三ω8︶﹂が制定された︵閑9罪一.908︶︒郡農民指導者はライヒ食糧団体の地方組織たる郡. ︵28︶. ︵29︶. ス党綱領﹂︵今中訳﹁新独逸国家大系一巻﹂所収︶二八四頁︒. ドイッにおける用益賃貸借保護法について︵藤井俊二︶.

(28) ︒m.O●ω.. ooド. 二九四. 勾o凶o房03げo凝Φωo貫昌⇒亀勾o凶o房℃8鐸ωoげ暮No鼠p仁昌騎︶国oo窪α8閑o一〇げω昌餌ぼωけ帥昌αoω矯. 早稲田法学会誌第三〇巻︵一九七九︶ ℃ユ80FU一︑ω︒8↑. o o一︒. ︵30︶. oび. ユびoFUトω・O謡●. ●一.ω●一〇〇9. O℃ω︒. ℃ユ30FUトω︒O漣●ω帥仁oび国. 勾Oω一. 一〇. ︵31︶. ︵33︶. ︵32︶. ℃. ヴィンクラー・前掲論文一八頁︒. ω曽. 閑Oω一︒一●o D●Oqq●. ︵34︶. ︵36︶. す. び. ︵35︶. む. 以上︑我々はドイッにおける農地賃貸借立法のワイマール後期からナチス期に至る間の展開過程について認識作業 を行なってきた︒それは︑つぎのように総括されうるものである︒. まず第一に︑第一次大戦後のインフレーションが一応収束するとともに高まった用益賃貸借保護法改正を要求する. 声に応えて小作法の民法典への編入の試みがなされた︒小作法草案は︑用益賃借人が用益賃貸人よりも弱者であると. いうことを前提とし︑とくに小規模賃借経営︵二〇ヘクタール未満︶を保護するために賃料の規制と存続保護を一体. として規定していた︒また︑外国から輸入する食糧に対する依存度の上昇に対する危機感から生じた農産物の増産に. 対する要求を考慮し︑用益賃借人が賃借不動産の改良のために投下した資本の回収手段︑すなわち有益費の償還請求.

(29) ︵1︶. 権について非常に詳細な規定を置き︑用益賃借人に通常の経営法則に従って経営管理することを義務付けた︒増産を. 目的とする規定は農地の面積による保護の差を設けない︒つまり︑賃料の規制と存続保護は小農保護のための社会法. 的性格を有するものであり︑有益費の償還の規定は資本家的経営にも投下資本の回収の手段を与える市民法的性格を 有するものと考えられていたのだろう︒. しかし︑小作法草案は結局成立しなかったので︑引き続き用益賃貸借保護法が適用されてきたが︑世界恐慌が生じ. たことによってドイッの農地賃貸借法は新局面をむかえた︒ここにおいても用益賃借人保護と農産物の増産が用益賃. 貸借規制の目標とされた︒そのために告知保護が強化されたのだが︑ナチスの農政によって用益賃貸借保護の目標が ︵2︶. 食糧自給ということになったとき︑存続保護と賃料の規制は結局非常に統制的なものとなった︒しかも保護の対象は 当初中規模︑その後大規模経営にまで拡大されていった︒. かくして︑ドイッにおける農地賃貸借立法はワイマール期からナチス期にかけて一貫として用益賃借権の存続保護 と賃料の規制を一体として規定したことを確認できるだろう︒. さて︑以上のことから確認できたようにドイッにおける農地賃貸借立法は外見上賃料の規制と存続保護の一体的規. 定がなお連続してなされてきたのであるが︑それが真に連続性をもった法発展の過程なのかどうか︑すなわちナチス ︵3︶. 期の立法は特殊ナチス的性格を有するものとしてワイマール期の立法とは断絶しているものなのかという問題が残る. 二九五. であろう︒しかし︑筆者の貧しい研究では現在直ちにこの重要な問題に解答を用意することはできないので︑問題の 指摘だけにとどめ将来の課題としたい︒ ドイッにおける用益賃貸借保護法について︵藤井俊二︶.

(30) 早稲田法学会誌第三〇巻︵一九七九︶. ︵4︶. 二九六. さらに︑我々に残されている課題は第二次大戦後における西ドイッの農地賃貸借法の展開過程を検討することであ. り︑それによって現代の工業国家における農地賃貸借法の直面する問題を解決するための手がかりを得なければなら. わが国でも農地賃借人の投下資本の回収の手段として有益費償還請求権が注目されている︵鈴木禄弥﹁不動産賃借権の亜. ないだろう︒ ︵1︶. 食糧自給のためには農業機械の効率的な利用のできる大規模農場に期待をかけなければならず︑中小農民を民族の血の源. 所有権化について﹂︹社会科学の方法八六号︺五頁︑梶井・前掲書二二九頁以下︶︒. 最近においては︑ナチス法学の研究を精力的に進めていられる広渡助教授は﹁西ドイッの法律学はナチス期をドイッの法. 〇一頁︶︒. 泉として重視するナチス・イデオ・ギーも現実の必要性の前では後に退かざるをえなかったのであろう︵戸原・前掲論文六. ︵2︶. ︵3︶. いる︒. ち. ヤ. ち. 西ドイッの現行小作法︑小作法改正案および小作取引法草案については田山他訳・前掲書四三頁以下において翻訳されて. 帝国におけるブルジョア法の﹃転換﹄﹂︹東大社研編﹁ファシズム期の国家と社会5﹃ヨー・ヅパの法体制﹄﹂所収︺四頁︶︒. の世界における近代から現代への決定的な移行・転換が推進されたのではなかろうか﹂と述べられている︵広渡清吾﹁第三. む. の発展段階とドイッ資本主義の特殊の形成条件に規定されて極めてラディカルな形態をとりながら︑第三帝国においては法. 発展における﹃中間休止期﹄として学問的検討の対象から排除する傾向が強い﹂と指摘しつつ︑だが﹁世界資本主義の一定. ︵4︶.

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