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博士論文

経口製剤投与後の薬物血中濃度の 変動要因の解析に関する研究

平成 28 年 3 月 杉原 正久

岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科

博士後期課程創薬生命科学専攻

(2)
(3)

目次

総論の部 ... 1

緒言 ... 1

第 1章 経口投与製剤のヒトBE試験における変動要因 ... 4

1-1 データベースの作成 ... 5

1-2 個体内変動と個体間変動の相関 ... 8

1-3 薬物の膜透過性、溶解性と変動の相関 ... 13

1-4 薬 物 の 膜 透 過 性 、溶 解 性 デ ー タ を 用 い た BE試 験 の 被 験 者 数 の 推 定 と そ の 妥 当 性 の 検 証 ... 16

1-5 代謝酵素の影響 ... 17

1-6 考察 ... 21

第2章 胃排出速度の変動に及ぼす製剤の影響 ... 25

2-1 腸溶性顆粒の胃排出速度に及ぼす粒子径の影響の検討 ... 25

2-1-1 セチリジン塩酸塩腸溶性顆粒の調製 ... 26

2-1-2 イヌ経口投与試験 ... 29

2-2 2種のランソプラゾール製剤のヒトBE試験における吸収の変動に関する検 証 ... 33

2-3 考察 ... 39

結 論 ... 42

謝 辞 ... 44

実 験 の 部 ... 45

第 1章 実 験 の 部 ... 45

第 2章 実 験 の 部 ... 54

(4)

引 用 文 献 ... 61

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1

総論の部

緒言

医薬品の開発過程では、薬物投与後の血中濃度の測定およびその解析が、様々なステ ージで繰り返し実施される。開発の初期ステージでは、主にマウスやラットなどの小動 物における血中濃度を測定することによって、経口吸収性、体内動態、薬効薬理(PK/PD) 等の薬物の基本的な特性が評価される。開発の中後期のステージ、特に経口剤の製剤開 発の過程では、イヌなどの大動物を用いた試験により、ヒトにおける吸収性、体内動態 を推定するとともに、臨床製剤化のための製剤処方が決定される。さらに、臨床試験で は、健常な被験者あるいは患者における血中濃度の測定が実施され、ヒトにおける体内 動態を確認するとともに、有効性、安全性が検証される。一方、臨床ステージの後期以 降では、プロトタイプ製剤から市販製剤への処方変更、剤形変更や、上市後の剤形追加、

ま た ジ ェ ネ リ ッ ク 医 薬 品 の 開 発 に お い て は 、 先 発 医 薬 品 と の 生 物 学 的 同 等 性

(Bioequivalence)を検証する目的で、ヒトにおける同等性試験(BE試験)が実施さ れる。

BE試 験 は 、同 一 有 効 成 分 を 同 量 含 有 す る 異 な る 2 つ の 製 剤 の 治 療 学 的 同 等 性 を 保 証 す る た め に 行 う 様 々 な 試 験 の 総 称 で あ り 、一 般 的 に は 被 験 者 に 投 与 し た 後 の 血 中 の 有 効 成 分 濃 度 を 測 定 す る こ と に よ り 、 生 物 学 的 利 用 率

(Bioavailability) を 比 較 す る 試 験 の こ と を 指 す 。BE 試 験 は 、 通 常 、 対 照 製 剤 と 試 験 製 剤 を 交 互 に 投 与 す る 2 剤 2 期 の ク ロ ス オ ー バ ー で 実 施 さ れ 、 血 中 濃 度 - 時 間 曲 線 下 面 積(AUC)と 最 高 血 中 濃 度(Cmax)を 評 価 パ ラ メ ー タ と し て 、そ の 対 数 値 の 平 均 値 の 差 の 90% 信 頼 区 間 が log(0.80)~log(1.25)で あ れ ば 同 等 と 判 定 さ れ る 1~3)123

本 邦 に お い て は 、 経 口 剤 の BE 試 験 の 実 施 に は 、in vitro で の 溶 出 試 験 に よ っ て 試 験 製 剤 と 対 照 製 剤 の 溶 出 挙 動 を 、数 種 類 の 試 験 液 と 試 験 条 件 下 で 確 認 す る こ と が 必 須 と な っ て い る 3)。し か し 、こ れ ら の 試 験 で 溶 出 挙 動 に 類 似 性 が 得 ら れ た と し て も 、ヒ ト BE試 験 に お い て 必 ず し も 同 等 と な る と は 限 ら な い 。そ の 理 由 と し て 、 次 の 二 つ の ケ ー ス が 考 え ら れ る 。

一 つ は 、製 剤 自 体 が 非 同 等 の 場 合 で あ る 。こ れ は 、in vitroで の 薬 物 の 溶 出 性 と ヒ ト 消 化 管 内 で の in vivoで の 溶 出 性 が 異 な る た め に 、in vitro 溶 出 試 験 で は 二 つ の 製 剤 の 真 の 違 い を 検 出 で き な い 場 合 で あ り 、現 在 、よ り in vivo

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2

近 い in vitro 試 験 系 の 構 築 を 目 指 し て 、 多 く の 研 究 者 が in vitro-in vivo correlation(IVIVC)の 検 証 に 取 り 組 ん で い る 4~6)。も う 一 つ は 、経 口 投 与 後 の 薬 物 の 血 中 濃 度 推 移 の 個 体 内 変 動 が 大 き く 、製 剤 の 同 等 性 が 検 証 で き な い 場 合 で あ る 。BE試 験 に お い て は 、個 体 間 変 動 と 個 体 内 変 動 の 2 つ の ば ら つ き が 観 察 さ れ る 。ク ロ ス オ ー バ ー 法 を 用 い た 臨 床 試 験 で は 、被 験 者 間 の 変 動( 個 体 間 変 動 )は キ ャ ン セ ル ア ウ ト さ れ る た め 、同 等 性 の 判 定 に は 影 響 を 及 ぼ さ な い の に 対 し 、 被 験 者 内 の 変 動 ( 個 体 内 変 動 ) の 大 き い 薬 物 で は 、AUC や Cmax の 信 頼 区 間 の 幅 が 大 き く な り BE の 検 証 が 難 し く な る 。456

血 中 濃 度 推 移 に 大 き な 個 体 内 変 動 が 認 め ら れ る 薬 物 の BE の 検 証 に お い て 、 欧 米 で は reference-scaled average BE (RSABE) ア プ ロ ー チ7)が 用 い ら れ て い る 。こ れ は 、対 照 製 剤 を 繰 り 返 し 2 回 投 与 す る 2 剤 3期(partial replicate design) や 、2 剤 4 期 (full replicate design) の プ ロ ト コ ー ル で 試 験 を 行 う こ と に よ り 、そ の 個 体 内 変 動 を 求 め 、そ の 大 き さ か ら ク ラ イ テ リ ア を 広 げ る 方 法 で あ る 。 一 方 、 日 本 で は 信 頼 区 間 の 幅 が 広 い 場 合 で も 、 平 均 値 の 差 が log(0.90)~log(1.11)の 範 囲 内 で あ れ ば 同 等 と 判 定 す る こ と が 可 能 で あ る も の の 、こ れ を 適 用 す る た め に は 数 種 の 溶 出 試 験 条 件 に お い て 二 つ の 製 剤 の 溶 出 性 が 類 似 し て い る こ と を 証 明 す る 必 要 が あ り 、よ り 緻 密 な 製 剤 設 計 と そ の 検 証 の た め の 試 験 が 要 求 さ れ る 。

経 口 剤 の BE 試 験 に お い て 、同 じ 被 験 者 で あ っ て も 、試 験 日 や 投 与 の タ イ ミ ン グ の 違 い に よ っ て 薬 物 の 血 中 濃 度 推 移 に 変 動 が 生 じ る 理 由 と し て 、消 化 管 内 の pH、水 分 量 、内 容 物 あ る い は 消 化 管 運 動 性 な ど 、被 験 者 の 消 化 管 の 生 理 的 状 態 の 変 化 が 、薬 物 の 溶 解 や 吸 収 に 影 響 を 及 ぼ す こ と が 考 え ら れ る 。し た が っ て 、そ の 様 な 生 理 的 状 態 の 影 響 を 受 け や す い 薬 物 あ る い は 製 剤 ほ ど 、大 き な 個 体 内 変 動 が 生 じ る こ と に な る 。

経 口 投 与 さ れ た 薬 物 の 吸 収 挙 動 を 考 え る 上 で 、そ れ ぞ れ の 薬 物 の 物 理 化 学 的 特 性 か ら 、 吸 収 に お け る 律 速 段 階 を 把 握 し て お く こ と は 極 め て 重 要 で あ る 。 Amidon ら は 、 医 薬 品 の 経 口 吸 収 性 を 簡 単 に 整 理 ・ 理 解 す る た め の 指 標 と し て biopharmaceutics classification system(BCS)を提唱した(Figure 1)8)。BCSでは 薬物を溶解性と膜透過性によってClass 1からClass 4の4種類に分類し、それぞれの 経口吸収における律速段階を明らかにしている。溶解性と膜透過性がともに高いClass 1に分類される薬物は、経口吸収に問題はなく、投与後小腸からほぼ完全に吸収される。

したがって、Class 1薬物の吸収における律速段階は胃から小腸への移行過程となる。

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3

膜透過性が高いものの溶解性が低いClass 2の薬物では、消化管内での溶解過程が吸収 の律速となり、小腸滞留時間内に溶解されなかった薬物は未吸収となる。一方、溶解性 は高いものの膜透過性の低いClass 3の薬物の吸収は膜透過過程によって律速され、吸 収率は膜透過性に依存する。膜透過性と溶解性ともに低いClass 4の薬物では、両過程 によって吸収が律速されるために、吸収率の改善は困難であり経口剤には不適な薬物と 判断される。

本研究では、BCS 理論に基づいて、大きな個体内変動を示す薬物の特性を明らかに することを目的として、まず、実際のヒトBE試験の結果から、薬物血中濃度推移にお ける個体内および個体間変動と薬物の溶解性、膜透過性との関係を網羅的に解析した。

さらに、薬物の消化管からの吸収における個体内変動に及ぼす製剤的な要因として粒子 径の違いに着目し、粒子径の違いによって胃排出速度がどのように変動するのかに関す る検討を行った。以下、得られた結果を2章にわたり論述する。

Figure 1. Biopharmaceutics classification system8)

Class 1

溶解性、膜透過性には問 題なし

⇒胃排出過程が律速

Class 2 溶解性に問題

⇒消化管内での溶解過 程が律速

Class 3 膜透過性に問題

⇒消化管膜透過過程が 律速

Class 4

溶解性、膜透過性ともに問 題

⇒吸収は低く改善は困難

膜透過性

溶解性

高 低

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第1章 経口投与製剤のヒトBE試験における変動要因

ジェネリック医薬品が 認 可 さ れ る た め に は 、新 た に 製 造 し た 製 剤( 試 験 製 剤 ) が 市 販 さ れ て い る 先 発 製 剤( 標 準 製 剤 )と 生 物 学 的 に 同 等 で あ る こ と を 、ヒ ト を 用 い た 臨 床 試 験 に よ っ て 証 明 す る 必 要 が あ る 。 厚 生 労 働 省 か ら 公 示 さ れ た

「 後 発 医 薬 品 の 生 物 学 的 同 等 性 試 験 の ガ イ ド ラ イ ン 」3)に よ れ ば 、 ヒ ト BE 試 験 に 用 い る 被 験 者 の 例 数 と し て「 同 等 性 を 判 定 す る の に 十 分 な 例 数 で 試 験 を 行 う .例 数 が 不 足 し た た め に 同 等 性 が 示 せ な い 場 合 に は ,本 試 験 と 同 じ 方 法 に よ り 例 数 追 加 試 験 を 1 回 行 う こ と が で き る . 追 加 試 験 は 本 試 験 の 例 数 の 半 分 以 上 の 例 数 で 行 う 」 と さ れ て い る 。 し た が っ て 、 ヒ ト BE 試 験 の 効 率 化 を 図 り 、 必 要 以 上 の 被 験 者 に 対 し て 試 験 を 実 施 す る こ と を 避 け る た め に 、試 験 計 画 を 立 案 す る 段 階 で 、対 象 と な る 製 剤 の BEを 証 明 す る た め に 必 要 な 試 験 規 模( 被 験 者 の 例 数 ) を 予 め 予 測 す る こ と は 極 め て 重 要 で あ る 。

製 剤 間 に 差 が 無 い 場 合 、BE を 証 明 す る た め に 必 要 な 例 数 は 、投 与 後 の 薬 物 血 中 濃 度 の 個 体 内 変 動 の 大 き さ に 依 存 す る 。当 然 、対 象 と な る 薬 物 あ る い は 製 剤 の 生 体 内 挙 動 の 個 体 内 変 動 が 大 き く な る ほ ど 、製 剤 間 の BEの 検 証 は 困 難 と な り 、 よ り 多 く の 例 数 が 必 要 と な る 。Yamashita と Tachiki 9)は 、 経 口 剤 の BE試 験 で 非 同 等 と 判 定 さ れ る リ ス ク に つ い て の 要 因 解 析 を 行 い 、BCS Class 1と Class 3 に 分 類 さ れ る 薬 物 で 、投 与 後 の AUC/dose 比 が 18 × 10-6 h/mL 以 上 と な る 場 合 に は 、 概 ね 24 例 以 下 の 被 験 者 に よ る 同 等 性 検 証 が 可 能 で あ り 、 大 き な リ ス ク は な い こ と を 示 し た 。逆 に 、AUC/dose 比 が 18 × 10-6 h/mL 以 下 と な る 薬 物 で は 、経 口 投 与 後 の 血 中 濃 度 の 個 体 内 変 動 が 大 き く な り 必 要 例 数 が 増 え る 、つ ま り 、BE の 検 証 が 難 し く な る こ と を 報 告 し て い る 。こ れ は Class1 薬 物 の 場 合 は ク リ ア ラ ン ス が 大 き く な る こ と と 、Class 3 薬 物 の 場 合 は 膜 透 過 性 が 悪 く な る こ と に よ る 吸 収 率 の 低 下 が 原 因 で あ る と 考 察 し て い る 。 ま た 、 Sakuma ら10)は 異 な る 企 業 間 の 製 剤 で の 臨 床 試 験 結 果 を 比 較 し 、Class 1 と Class 3の 薬 物 で は 製 剤 処 方 の 違 い に 関 わ ら ず 同 様 な 結 果 が 得 ら れ る こ と を 報 告 し て い る 。一 方 、BCS で Class 2 ま た は Class 4 に 分 類 さ れ る 薬 物 に つ い て は 、AUC/dose 比 とBE試 験 の 必 要 例 数 間 に は 明 確 な 関 連 は 認 め ら れ て お ら ず 、 溶 解 性 の 低 い 薬 物 で は 消 化 管 内 で の 製 剤 か ら の 溶 出 が 以 後 の 吸 収 に 大 き く 影 響 す る た め 、血 中 プ ロ フ ァ イ ル の ば ら つ き に は 薬 物 自 体 の 特 性 だ け で な く 、製 剤 処 方 も 影 響 し て い る 可 能 性 が 指 摘 さ れ て い る 。

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5

この様に、経口剤のヒトBE試験における個体内変動の要因として、対象となる薬物 の物理化学的および動態的な特性と、製剤的な特性の二つのファクターが考えられるも の の 、BCS class 2 に 分 類 さ れ る 難 溶 解 性 薬 物 を 含 め て 、個 体 内 変 動 の 原 因 と な る 個 々 の 要 因 に 関 す る 定 量 的 な 評 価 は 行 わ れ て い な い 。本 章 に お い て は 、ま ず 、 薬 物 自 体 の 要 因 に つ い て の 詳 細 な 解 析 を 行 い 、 得 ら れ た 結 果 に 基 づ い て 種 々 薬 物 の 個 体 内 変 動 を 予 測 す る こ と が 可 能 で あ る か ど う か を 検 証 す る こ と を 目 的 と し て 、沢 井 製 薬 株 式 会 社 で 行 っ た BE試 験 の デ ー タ を 基 に 、以 下 の 様 な 検 討 を 行 っ た 。

1-1 データベースの作成

沢井製薬株式会社で行った113のBE試験(速放性製剤、74化合物)について、薬 物の物理化学的性質、薬物動態特性およびヒトBE試験の結果から経口投与後のAUC、 Cmax、Tmax(最高血中濃度到達時間)、MRT(平均滞留時間)に関する情報を入力 し、データベースを作成した(実験の部Tables 7, 8)。

剤形別の内訳は、素錠が31製剤、フィルムコーティング錠67製剤、口腔内崩壊錠5 製剤、カプセル剤8製剤、顆粒剤とドライシロップがそれぞれ1製剤であった(Figure 2)。薬 効 別 で は 、 抗 う つ 剤 な ど の 精 神 神 経 用 薬 、 血 圧 降 下 剤 、 高 脂 血 症 薬 、 糖 尿 病 薬 な ど の 生 活 習 慣 病 薬 、抗 ア レ ル ギ ー 薬 、抗 菌 薬 な ど 広 範 囲 の 薬 物 が 含 ま れ て い た 。

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デ ー タ ベ ー ス に お け る 各 薬 物 の BCS Class は 、 溶 解 性 の 指 標 と し て 次 式 に 従 っ て 求 め た Dose Number(Do) を 、 膜 透 過 性 の 指 標 と し て Drug Delivery Foundation で 公 開 さ れ て い る BCS デ ー タ ベ ー ス11)に 記 載 さ れ て い る cLogP を 用 い て 各 ク ラ ス に 割 付 け た 。

Do /

(Eq. 1)

Eq. 1 に お い て 、Dose は 投 与 量 (mg)、Cs は 水 に 対 す る 溶 解 度 (mg/mL)、

Voは 製 剤 投 与 時 の 飲 水 量 (mL) で あ る 。 薬 物 の Dose と し て 、 ア メ リ カ 食 品 医 薬 品 局 (Food and Drug Administration; FDA)12 )お よ び 欧 州 医 薬 品 庁

(European Medicines Agency; EMA)2)に よ っ て 公 示 さ れ た BCS ガ イ ド ラ イ ン で は 、そ の 薬 物 の 最 大 投 与 量 を 使 う こ と と さ れ て い る が 、今 回 は 含 量 違 い 製 剤 間 の 差 も 検 証 す る た め 、実 際 に BE試 験 を 行 っ た 製 剤 に 含 有 さ れ て い る 薬 物 量 を 用 い た 。 ま た 、Vo と し て は 日 本 の ガ イ ド ラ イ ン で 推 奨 さ れ て い る 飲 水 量 で あ る 150mLを 用 い た(FDA, EMA の ガ イ ド ラ イ ン で は 250mL)。水 に 対 す Figure 2. The breakdown of pharmaceutics of 113 oral drug products.

UCT : uncoated tablet, FCT : film coated tablet, ODT : oral disintegrating tablet, CAP : capsule, GR : granule, DS : dry syrup

UCT, 31

FCT, 67 ODT, 5

CAP, 8 GR, 1 DS, 1

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る 溶 解 度 Csは 、ebastine、itraconazole 以 外 は 沢 井 製 薬 で 測 定 し た 値 を 用 い た 。ebastine、itraconazole に つ い て は ADMET Predictor version 7.2

(Simulation Plus, Inc., Lancaster, CA, USA)で 計 算 し た 値 を 用 い た 。な お 、 溶 解 度 が 1000 mg/mL以 上 の 場 合 は>1000と 表 記 し 、1000 mg/mLと し て 計 算 し た 。

今 回 の 解 析 に 用 い た 74 化 合 物 113 製 剤 に つ い て 、Do と cLogP の 関 係 を Figure 2 に 示 し た 。Kasim ら は 、溶 解 性 の ク ラ イ テ リ ア を Do=1、膜 透 過 性 の ク ラ イ テ リ ア を cLogP=1.5 と す る こ と に よ っ て 、 薬 物 の BCS ク ラ ス を 簡 便 に 判 別 で き る こ と を 示 し て い る13)。Figure 3 に お い て も 、Do=1、cLogP=1.5 を ク ラ イ テ リ ア と し て BCS ク ラ ス 分 類 を 行 っ た 結 果 、55% の 製 剤 が BCS Class 1に 分 類 さ れ 、24% が Class 2、17% が Class 3 に 分 類 さ れ た が 、Class 4に 分 類 さ れ た も の は 4% と 極 め て 少 な か っ た 。 こ れ は Class 4薬 物 の 経 口 剤 と し て の 開 発 の 難 し さ を 表 し て い る と 考 え ら れ る 。ま た 、本 研 究 で は 、そ れ ぞ れ の 製 剤 に 含 有 さ れ る 薬 物 量 を 用 い て Do を 算 出 し た た め 、cefcapene pivoxil と cefdinirに つ い て は 、 低 含 量 製 剤 が Class 3、 高 含 量 製 剤 が Class 4 に 分 類 さ れ 、 製 剤 含 量 に よ っ て ク ラ ス が 異 な る 結 果 と な っ た 。

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8 1-2 個体内変動と個体間変動の相関

先 に 述 べ た よ う に 、BE 試 験 に お い て は 、個 体 内 、個 体 間 の 2 つ の 変 動 が 観 察 さ れ る 。個 体 間 変 動 は 、性 別 、年 齢 、体 格 や 遺 伝 的 な 違 い で 吸 収 、分 布 、代 謝 、排 泄 の 各 過 程 に 違 い が 生 じ 、結 果 と し て 被 験 者 間 に 薬 物 の 血 中 濃 度 の 違 い と し て 表 れ る 。一 方 、個 体 内 変 動 は 、同 一 の 製 剤 を 同 一 の 被 験 者 に 投 与 し た と き に 現 れ る 結 果 の 違 い の こ と で あ り 、被 験 者 の 体 調 な ど に よ る 生 理 的 条 件 の 変 化 や 、日 間 変 動 等 が 要 因 と 考 え ら れ る 。デ ー タ を 解 析 す る に 当 り 、そ れ ぞ れ の 指 標 と し て 、 以 下 に 示 す 2 つ の パ ラ メ ー タ を 用 い た 。

Figure 3. BCS Classification of 113 oral drug products according to dose number (Do) and cLogP.

The point of axes intersection is Do = 1 and cLogP = 1.5.

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個 体 内 変 動(Vintra)を 表 す 指 標 と し て 、BE 試 験 の パ ラ メ ー タ の 分 散 分 析 の 結 果 か ら 得 ら れ る 残 差 の 変 動 ANOVA CV(%) を 用 い た (Eq.2)。

ANOVA CV % 100 exp 1 Eq. 2

2: 分 散 分 析 に お け る 残 差 平 均 平 方

個 体 間 変 動(Vinter)の 指 標 と し て は 、BE試 験 に お け る 試 験 製 剤 の パ ラ メ ー タ の 相 対 標 準 偏 差 RSD(%) 用 い た (Eq.3)。

相対標準偏差RSD(%) 標準偏差

平均値 Eq. 3

分 散 分 析 の 残 差 は 、総 変 動 か ら 薬 剤 と 被 験 者 の 変 動 を 差 し 引 い た も の で あ り 、 薬 剤 間 差 に つ い て は 考 慮 さ れ て い る が 、厳 密 に は 同 一 の 製 剤 で 検 討 す る こ と が 必 要 で あ る 。本 研 究 で は 、BE試 験 の 結 果 を 用 い た の で 、試 験 製 剤 と 標 準 製 剤 の ば ら つ き の 違 い に よ る 差 も 含 ま れ る こ と に な る 。し か し 、い ず れ も 生 物 学 的 同 等 性 が 検 証 さ れ 、後 発 医 薬 品 と し て 承 認 さ れ て い る も の で あ る の で 、製 剤 に 違 い は な い と 判 断 し た 。

通 常 、BE 試 験 は ク ロ ス オ ー バ ー 法 で 行 わ れ て お り 、個 体 間 変 動 に つ い て は キ ャ ン セ ル ア ウ ト さ れ る た め 、個 体 間 変 動 の 大 き さ は 、BE 試 験 の 検 証 に は 影 響 を 及 ぼ さ な い 。 一 方 、 個 体 内 変 動 が 25~30%以 上 の 薬 物 で は 、90%信 頼 区 間 で 生 物 学 的 同 等 性 を 証 明 し よ う と す る と 、実 現 不 可 能 な ほ ど の 例 数 で 試 験 を 行 わ な け れ ば な ら な く な る14)と さ れ て い る 。本 研 究 で は 個 体 内 変 動 の 大 き さ の ク ラ イ テ リ ア と し て は 25%を 用 い た 。

AUC、Cmax、Tmax、およびMRTにおける個体内変動(Vintra)と個体間変動(Vinter) の関係を示した(Figure 4A, 4B)。VintraとVinterの絶対値を直接比較することはでき ないものの、AUCおよびCmaxに関して、Class 3の薬物では、全薬物から計算した0 を通る回帰直線より上側に多く分布しており、相対的にVintraが大きくなる傾向が認め られ、この傾向は特にAUCにおいて顕著であった。一方、Class 1とClass 2薬物で

は Vintraが相対的に大きくなる薬物もあれば、Vinterが相対的に大きくなる薬物もあり、

一定の関係性は認められなかった。Class 4薬物は、膜透過性が低く、溶解性も低いこ とから、個体内、個体間変動とも大きくなることが予想されたが、本研究における結果

(14)

10

はいずれについても、大きな変動は観察されなかった。

TmaxおよびMRTは、ともに時間に関するパラメータである。Tmaxでは Vintra

Vinterの広がりがその他のパラメータと異なり、両パラメータが相関する傾向が認めら

れた。BE試験において、Tmaxは薬物の血中濃度が最も高かったサンプリング時間を 表しており、その変動の幅はサンプリングポイントの幅に制限されることから、個体内 と個体間変動に大きな差が出なかったと考えられる。また、MRT にも Vintra と Vinter

の間に特徴的な関係は認められなかった。経口投与後のMRTは薬物の吸収と血中から の消失にかかる平均時間の和として表されることから、吸収過程における変動を解析す るためのパラメータとしては不適当と考えられた。

以 上 、AUC と Cmax に お い て Vintraと Vinterの 間 に 同 様 な 関 係 が 認 め ら れ た も の の 、Cmax は 薬 物 の 吸 収 率 お よ び 吸 収 速 度 に 依 存 す る パ ラ メ ー タ で あ り 、 そ の 変 動 に は BE 試 験 実 施 時 の 採 血 時 間 の 設 定 の 仕 方 な ど の 人 為 的 な 要 因 も 影 響 を 及 ぼ す 可 能 性 が あ る こ と か ら 、以 下 の 検 討 で は AUC を 用 い た 解 析 を 行 う こ と と し た

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11

Figure 4A. Correlation of intrasubject variability (Vintra) and intersubject variability (Vinter) in AUC and Cmax.

The dotted line is a regression analysis of the 113 formulations.

(16)

12

Figure 4B. Correlation of intrasubject variability (Vintra) and intersubject variability (Vinter) in Tmax and MRT.

The dotted line is a regression analysis of the 113 formulations.

(17)

13 1-3 薬物の膜透過性、溶解性と変動の相関

Figure 4 に お い て Class 3薬 物 で は 相 対 的 に Vintraが 大 き く な る 傾 向 が 認 め ら れ た 。Class 3 薬 物 の 消 化 管 か ら の 吸 収 は 膜 透 過 に よ っ て 律 速 さ れ る こ と か ら 、 ヒ ト 消 化 管 膜 に 対 す る 透 過 性 (Peff) と AUC の 変 動 の 関 係 を 検 討 し た 。 今 回 の 検 討 で は Peffと し て 、ADMET Predictor 7.2 (Simulations Plus Inc.) に よ っ て 各 薬 物 の 物 理 化 学 的 性 質 に 基 づ き 算 出 し た 値 を 用 い た 。

Figure 5に 、 す べ て の 製 剤 に 関 し て Peffと Vintra (a)お よ び Vinter (b)の 関 係 を 示 し た 。全 体 と し て は Peffと AUC の 変 動 の 間 に 明 確 な 相 関 は 認 め ら れ な か っ た も の の 、Class 3 薬 物 に 限 っ た 場 合 に は 個 体 内 変 動 で r=-0.775(p<0.001)、

個 体 間 変 動 で r=-0.715(p<0.001) と 有 意 な 相 関 性 が 認 め ら れ た 。 こ れ は 、 薬 物 の 膜 透 過 性 が 低 く な る ほ ど 、経 口 投 与 後 の 吸 収 に 大 き な 変 動 が 観 察 さ れ る リ ス ク が 高 ま る こ と を 示 す 結 果 で あ り 、膜 透 過 が 著 し く 低 い 薬 物 で は 、BEの 検 証 に よ り 多 く の 被 験 者 が 必 要 に な る も の と 考 え ら れ た 。

Figure 5. Effect of drug permeability (Peff) on intra- and intersubject variability in AUC.

Figure shows the relation of Peff to Vintra (a) or Vinter (b), respectively. The green dotted line represents a regression line only for the Class 3 drugs.

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次 に 、薬 物 の 溶 解 性 と 吸 収 お け る 個 体 内・個 体 間 変 動 の 関 係 に つ い て 解 析 を 試 み た 。Figure 6 に Doと Vintra (a)お よ び Vinter (b)の 関 係 を 示 し た 。 こ の 場 合 も 、全 体 と し て はDoと AUCの 変 動 の 間 に 相 関 は 認 め ら れ な か っ た も の の 、 Class 2 薬 物 の 場 合 に は 、 有 意 で は 無 か っ た も の の 、Do が 大 き く な る ほ ど 個 体 内 変 動 が 大 き く な る 傾 向 が 示 さ れ た 。一 方 、個 体 間 変 動 に は そ の 様 な 傾 向 は 認 め ら れ な か っ た 。

BCS Class 2 に 分 類 さ れ る 難 溶 解 性 薬 物 で は 、固 形 製 剤 と し て 経 口 投 与 し た 後 の 吸 収 が 、薬 物 の 消 化 管 内 で の 溶 解 速 度 も し く は 溶 解 度 に よ っ て 律 速 さ れ る こ と が 知 ら れ て い る15)。溶 解 速 度 律 速 と は 、消 化 管 内 で の 薬 物 の 溶 解 速 度 が 膜 透 過 速 度 よ り も 低 い た め に 、消 化 管 内 滞 留 時 間 内 に 吸 収 が 完 了 し な い ケ ー ス で 、 こ の 時 、薬 物 の 吸 収 率 は 投 与 量 に 依 存 せ ず 一 定 と な り 、吸 収 に 飽 和 は 観 察 さ れ な い 。ま た 、微 紛 化 な ど の 製 剤 学 的 な 工 夫 に よ っ て 溶 解 速 度 を 上 昇 さ せ る こ と に よ り 、比 較 的 容 易 に 吸 収 率 の 改 善 が 可 能 で あ る16)。一 方 、溶 解 度 律 速 の 場 合 に は 、消 化 管 内 で の 薬 物 の 溶 解 度 が 低 い た め に 投 与 さ れ た 薬 物 が 完 全 に 溶 解 せ ず 、吸 収 率 が 低 く な る 。ま た 、投 与 量 を 増 加 し て も 吸 収 量 が 一 定 以 上 に は 増 加 し な い た め 、 吸 収 率 に 低 下 が 観 察 さ れ る ( 吸 収 飽 和 )17)

吸 収 が い ず れ の 過 程 に よ っ て 律 速 さ れ て い る か は 、 対 象 と な る 薬 物 の Maximum absorbable dose(MAD, 最 大 吸 収 量 )18~20)を 指 標 と す る こ と で 、 Figure 6. Effect of Do on intra- and intersubject variability in AUC. Fig shows the

relation of Do to Vintra (a) or Vinter (b), respectively.

(19)

15

判 定 可 能 で あ る 。MAD と は 、薬 物 が 飽 和 溶 解 度 で 消 化 管 内 に 存 在 し た と き に 滞 留 時 間 内 に 吸 収 さ れ る 得 る 最 大 量 を 表 し て お り 、 次 式 に よ っ て 算 出 さ れ る

(Eq.4)。181920

MAD (Eq. 4)

こ こ で SA は 小 腸 の 表 面 積 、SITTは 薬 物 の 小 腸 滞 留 時 間 で あ る 。MADが 薬 物 の 投 与 量 (Dose) よ り 小 さ い 場 合 は 、 薬 物 の 溶 解 度 が 低 い た め に 、 投 与 さ れ た す べ て の 薬 物 が 一 定 時 間 (SITT) 内 で 消 化 管 か ら 完 全 に 吸 収 さ れ な い 、 と 考 え ら れ る こ と か ら 、 吸 収 は 溶 解 度 律 速 と な る 。 逆 に 、MAD が Dose よ り 大 き い に も か か わ ら ず 吸 収 率 が 100%と な ら な い 場 合 に は 溶 解 速 度 律 速 と 考 え ら れ る 。

Eq.1と Eq.4 か ら MAD / dose は 次 式 の よ う に 表 す こ と が で き る 。

MAD

dose (Eq. 5)

Eq. 5に お い て SASITT お よ び Voは 定 数 で あ る の で 、MAD / Dose は Peff / Doに 比 例 す る こ と と な る 。そ こ で 、こ の Peff / Do を 新 し い パ ラ メ ー タ と し て 定 義 し 、 各 薬 物 の AUC の 変 動 と の 相 関 を 検 討 し た (Figure 7)。Figure 7 中 の 縦 の 破 線 は 、SASITT に そ れ ぞ れ ヒ ト に お け る 生 理 学 的 な 値 と し て 用 い ら れ て い る 800cm2 20)、3.5時 間21, 22)、Voに BE試 験 で 用 い た 飲 水 量 150mL を 代 入 し て 求 め た Peff / Do の 値 (0.149 × 104 cm/s) を 示 し て い る 。 こ の 値 に お い て MAD/Doseは 1 と な る 。

BCS Class 2 薬 物 で は 、 個 体 内 変 動 の 値 が 25%以 上 を 示 す 薬 物 は 、Peff / Do が 0.149 × 10−4 cm/sよ り 大 き く な る 、 す な わ ち 、MAD>Dose と な る 薬 物 で は 12 個 中 1 個 で あ っ た の に 対 し 、Peff / Doが 0.149 × 10−4 cm/s よ り 小 さ く な る 、 す な わ ち MAD<Dose と な る 薬 物 の 場 合 、25 個 中 5 個 あ り 、 吸 収 に お け る 個 体 内 変 動 が 大 き く な る 傾 向 が 示 さ れ た 。一 方 、個 体 間 変 動 に は そ の 様 な 傾 向 は 認 め ら れ な か っ た 。Class 2薬 物 で MAD が 投 与 量 よ り 小 さ い 場 合 、 そ の 吸 収 は 溶 解 度 律 速 と な る た め 、消 化 管 内 の 溶 液 量 や 滞 留 時 間 な ど の 変 化 に 伴 っ て 吸 収 可 能 な 薬 物 量 が 変 動 し た 結 果 、経 口 投 与 後 の AUC に 大 き な 個 体 内 変 動

(20)

16

が 生 じ た も の と 推 察 さ れ る 。 一 方 、Class 2 薬 物 で も 、 吸 収 が 溶 解 速 度 律 速 で あ る 場 合 に は 、MAD の 変 化 は 吸 収 量 の 変 動 に は 直 接 影 響 し な い た め 、個 体 内 変 動 も 比 較 的 小 さ か っ た も の と 考 え ら れ る 。

1-4 薬 物 の 膜 透 過 性 、溶 解 性 デ ー タ を 用 い た BE試 験 の 被 験 者 数 の 推 定 と そ の 妥 当 性 の 検 証

こ れ ま で の 解 析 結 果 を 基 に 、薬 物 の 膜 透 過 性 、溶 解 性 の デ ー タ か ら ヒ ト BE 試 験 に お け る 被 験 者 数 を 推 定 し 、沢 井 製 薬 に お い て 実 施 さ れ た 実 際 の BE 試 験 の 情 報 と 照 ら し 合 わ せ る こ と に よ っ て 、 そ の 妥 当 性 の 検 証 を 試 み た 。

Dilletiらは、ANOVA CVが25%のとき、検出力80%を達成するのに必要な例数は、

製剤間に真の差がない場合、1群12例と報告している23)。本研究において、Figure 5a

に示した Class 3薬物の回帰直線で、個体内変動が25%を上回ると予測される膜透過

性は0.27 × 10−4 cm/s で あ っ た 。 膜 透 過 性 が 0.27 × 10−4 cm/s 程 度 の 値 を 示 す Suplatast Tosilate製 剤 に 関 す る 沢 井 製 薬 に お け る 実 際 の BE 試 験 で は 、1 群 10 例 の 予 試 験 に お い て 同 等 性 が 検 証 で き な か っ た た め 、 さ ら に 例 数 を 増 や し て 本 試 験 を 行 い 、同 等 性 が 検 証 さ れ て い る 。さ ら に 、本 研 究 で 用 い た 薬 物 の う ち 、0.27 × 104 cm/s 以 下 の 膜 透 過 性 を 示 す 薬 物 は 4例(5 製 剤 )で あ っ た が 、 そ の う ち3試 験 は 1群 12~14 例 で 試 験 が 実 施 さ れ 、同 等 性 が 検 証 さ れ て い る 。

Figure 7. Effect of Peff / Do on intra- and intersubject variability in AUC. Fig shows the relation of Peff / Do to Vintra (a) or Vinter (b), respectively.

The vertical dotted line marks a threshold of Peff / Do (0.149 × 10−4 cm/s).

(21)

17

以 上 の 結 果 は 、 膜 透 過 性 が 0.27 × 10−4 cm/s を 下 回 る Class 3 薬 物 を 含 む 製 剤 の BE試 験 で は 、 多 く の 場 合 1 群 12 例 以 上 の 試 験 が 必 要 で あ る こ と を 示 し て い る こ と か ら 、 本 研 究 で の 解 析 結 果 の 妥 当 性 を 示 唆 す る も の と 考 え ら れ る 。

一 方 、BCS Class 2 に 分 類 さ れ る 薬 物 で 吸 収 が 溶 解 度 律 速 で あ っ た 13 化 合 物 、15 製 剤 の ヒ ト BE試 験 の う ち 、3試 験 で は 1 群 10 例 の 予 試 験 で は 同 等 性 が 検 証 さ れ ず 、 例 数 を 増 や し た 本 試 験 に よ っ て 同 等 性 の 検 証 が 可 能 で あ っ た 。 ま た 、 他 の 6 試 験 に お い て も 1 群 12~16 例 で BE 試 験 を 行 う こ と に よ っ て 、 同 等 性 が 検 証 さ れ て お り 、吸 収 が 溶 解 度 律 速 と な る 薬 物 を 含 む 製 剤 で は 、1 群 12 例 以 上 の 試 験 を 設 定 す る こ と が 妥 当 で あ る と 考 え ら れ た 。 今 回 パ ラ メ ー タ と し て 用 い たPeff / Doと Vintraの 間 に 有 意 な 直 線 関 係 が 認 め ら れ な か っ た た め 、 正 確 な 例 数 設 計 を 行 う こ と は 困 難 で あ っ た も の の 、以 上 の 結 果 は 、膜 透 過 性 か ら の 推 定 と 同 様 、 本 研 究 の 解 析 結 果 の 妥 当 性 を 示 唆 す る も の と 考 え ら れ る 。

薬 物 の 膜 透 過 性 、溶 解 性 に 関 す る 情 報 は 、簡 単 な in vitro試 験 で の 測 定 、あ る い は in silico で の 推 定 が 可 能 で あ る こ と か ら 、 実 際 の BE 試 験 前 に 対 象 と な る 薬 物 の Peff お よ び Peff / Do を 算 出 す る こ と に よ り 、BE 試 験 の 効 率 化 が 可 能 に な る も の と 期 待 さ れ る 。

1-5 代謝酵素の影響

こ れ ま で の 検 討 に お い て 、BCS Class 2お よ び Class 3 の 薬 物 に つ い て 、経 口 投 与 後 の 吸 収 に 大 き な 個 体 内 変 動 が 生 じ る 要 因 を 明 ら か に し て き た 。し か し 、 Figure 3で は 、Class 2、Class 3の 薬 物 だ け で は な く 、 い く つ か の Class 1 薬 物 に お い て も 大 き な 個 体 内 、個 体 間 変 動 が 認 め ら れ て い る 。Figure 5~7 で 明 ら か に し た 要 因 で は 、こ れ ら Class 1 薬 物 の 変 動 の 大 き さ を 説 明 す る こ と は で き ず 、薬 物 の 物 理 化 学 的 性 質 と は 直 接 関 係 の な い 他 の 要 因 が 経 口 投 与 後 の 血 中 濃 度 推 移 に 影 響 し て い る 可 能 性 が 考 え ら れ る 。

経 口 投 与 後 の 生 物 学 的 利 用 率 (Bioavailability、BA) は 消 化 管 か ら の 吸 収 率(Fa)と 、小 腸 で の 初 回 通 過 代 謝 の 回 避 率(Fg)お よ び 肝 臓 で の 初 回 通 過 代 謝 の 回 避 率(Fh) の 積 と し て 表 わ さ れ る 。Class 1 薬 物 は 膜 透 過 性 、 溶 解 性 と も 高 く 、Faは ほ ぼ 100%と な る と 考 え ら れ る こ と か ら 、経 口 投 与 後 の 血 中 濃 度 推 移 に 大 き な 個 体 内 変 動 が 見 ら れ る 要 因 と し て 、Fg・Fh が 変 動 し て い る 可 能 性 が 考 え ら れ る 。そ こ で 、そ の 要 因 と し て 薬 物 代 謝 酵 素 の 影 響 に つ い て 検 討 を 行 っ た 。

(22)

18

Table 1 に 、CYP450系 の 代 謝 酵 素 の う ち 、 多 く の 薬 物 の 代 謝 に 関 与 す る こ と が 報 告 さ れ て い る CYP3A4お よ び CYP2D6の 基 質 と な る 薬 物 を 抽 出 し て 示 し た 。さ ら に Figure 8 に 、CYP3A4お よ び CYP2D6の 基 質 と な る 薬 物 の 血 中

AUC の Vintra と Vinterの 関 係 を 示 し た 。CYP2D6 の 基 質 と な る 薬 物 は ほ と ん

ど が 回 帰 直 線 の 下 側 に 分 布 し 、個 体 内 変 動 に 比 べ て 、個 体 間 変 動 が 大 き く な る 傾 向 を 示 し た の に 対 し 、CYP3A4の 基 質 薬 物 で は 上 側 に 分 布 す る も の が 多 く 、 個 体 内 変 動 が 大 き く な る 傾 向 が 認 め ら れ た 。

Table 1 List of API’s related to CYP450

Compound CYP

isoform Km

(µM) Ref Alprazolam CYP3A4 575 [24]

Amiodarone Hydrochloride CYP3A4 310 [24]

Amlodipine Besilate CYP3A4

Atorvastatin Calcium CYP3A4 33 [24]

Benidipine Hydrochloride CYP3A4 3.8 [25]

Brotizolam CYP3A4 595 [26]

Cabergoline CYP3A4 Cilnidipine CYP3A4 Clarithromycin CYP3A4 49 [24]

Donepezil Hydrochloride CYP3A4 Doxazosin Mesilate CYP3A4

Ebastine CYP3A4 3.85 [27]

Fluconazole CYP3A4 Fluvastatin Sodium CYP3A4

Fluvoxamine Maleate CYP2D6

Itraconazole CYP3A4 0.0444 [27]

Lafutidine CYP3A4 &

2D6

Loratadine CYP3A4 &

2D6

Milnacipran Hydrochloride CYP3A4 Mosapride Citrate CYP3A4

Nilvadipine CYP3A4 Paroxetine Hydrochloride CYP2D6

Pranlukast CYP3A4 Pravastatin Sodium CYP3A4

Propiverine Hydrochloride CYP3A4

Quazepam CYP3A4 Risperidone CYP2D6 106 [24]

Simvastatin CYP3A4 21 [24]

Tamoxifen Citrate CYP3A4 &

2D6 98 [24]

Tandospirone Citrate CYP3A4 &

2D6 7.21 [28]

Terbinafine Hydrochloride CYP3A4 Ticlopidine Hydrochloride CYP3A4

Toremifene Citrate CYP3A4 124 [24]

Zolpidem Tartrate CYP3A4 114 [24]

(23)

19

CYP2D6に は 、種 々 の 遺 伝 子 多 型(SNPs)が 報 告 さ れ て お り 、日 本 人 で は 代 謝 活 性 が 低 い Poor Metabolizer の 割 合 は 1%以 下 と さ れ て い る も の の 、代 謝 機 能 が Extensive Metabolizer の 半 分 以 下 と な る Intermediate Metabolizer が 30~40%存 在 す る こ と が 報 告 さ れ て お り29)、 そ れ ら 被 験 者 の 試 験 へ の 組 み 入 れ の 分 布 に よ り 、 個 体 間 変 動 が 大 き く な っ た も の と 推 察 さ れ た 。 一 方 、 CYP3A4 に つ い て は 、 代 謝 機 能 に 大 き な 影 響 を も た ら す 遺 伝 子 多 型 は 知 ら れ て お ら ず 、 そ の こ と が 個 体 間 変 動 が 比 較 的 小 さ か っ た 要 因 と 考 え ら れ る 。

CYP3A4 の 基 質 薬 物 の う ち 、 酵 素 に 対 す る 親 和 性 Km値 が 文 献 24~28)で 報 告 さ れ て い る 薬 物 に つ い て Vintra と の 相 関 を 調 べ た と こ ろ 、 有 意 な 相 関 (r=- 0.717, p<0.001) が 認 め ら れ た (Figure 9)。 こ の 結 果 は 、CYP3A4に 対 す る 高 い 親 和 性 が 、経 口 投 与 後 の BAの 個 体 内 変 動 の 要 因 で あ る こ と を 示 す 結 果 と 考 え ら れ る 。CYP3A4 は 、ヒ ト に お い て 、肝 臓 CYP 酵 素 の 含 有 量 の 40%、小 腸 で は 82%を 占 め る 最 も 含 有 量 の 高 い ア イ ソ フ ォ ー ム で あ る た め30)、 そ の 活 性 の 変 動 は 薬 物 の BA に 大 き な 影 響 を 与 え る 。 小 腸 の CYP3A4 は 、 食 品 中 に 含 ま れ る フ ラ ボ ノ イ ド 、カ テ キ ン な ど で 阻 害 さ れ る こ と が 報 告 さ れ て い る こ と

か ら 31~34)、 そ の 影 響 に よ っ て 同 一 の 被 験 者 に お け る 代 謝 活 性 が 変 動 し 、 大 き

な 個 体 内 変 動 を 生 じ た 可 能 性 が 考 え ら れ る 。31323334

Figure 8. Intrasubject variability (Vintra) and intersubject variability (Vinter) in AUC of CYP3A4 and CY2D6 substrate drugs.

The dotted line indicates a regression analysis of the 113 formulations.

(24)

20

Figure 9. Effect of Km value in CYP3A4 mediated metabolism on intrasubject variability (Vintra) in AUC. The Km values were quoted from the literatures (references 24~28) those obtained in the in vitro experiment using human liver microsomes.

(25)

21 1-6 考察

本章では、沢井製薬で BE試験を実施した経口速放性製剤74(化合物113)試験に ついて、経口吸収における個体内変動の要因を明らかにする目的でヒトBE試験のデー タを解析した。その結果、経口投与製剤における血中濃度推移の高い個体内変動をまね くリスクファクターを、以下のように同定することが出来た。

1)吸収が膜透過律速となる薬物(BCS Class 3)において、膜透過性が極めて低い 薬物

2)溶解度の低い薬物(BCS Class 2)において、吸収が溶解度によって律速される 薬物

3)すべてのBCS Classの薬物でCYP3A4代謝酵素に高い親和性を有する薬物

上記の1)および2)に関しては、いずれも消化管からの吸収における律速過程に起 因した要因であり、特に1)の低膜透過性に関しては、YamashitaとTachiki 9)の報告 を支持する結果であった。彼らの報告では、非同等となるリスクをAUC / Dose(= F / CLtot)と言うパラメータを用いて評価しているため、膜透過性の程度とリスクとの関 係を定量的に評価することは困難であった。今回、Class 3薬物の膜透過性と個体内変 動の間に有意な相関が認められたことから、個々の薬物の膜透過性データから、BE試 験における血中AUCの個体内変動の程度、さらには必要被験者数の大まかな推定が可 能となり、実際の医薬品開発への適用が期待される。

Tanakaら35)はBCS Class 1とClass 3薬物の経口吸収率に及ぼす消化管管腔内水分 量の影響に関してラットを用いた検討を行い、消化管内水分量が多い場合にはClass 3 薬物(atenolol)の吸収率が顕著に低下すること、および、Class 1薬物(metoprolol) では水分量の影響は小さいことを報告している。これは、水分量が多い場合には消化管 内の薬物濃度が低く保たれるために、膜透過性の低いClass 3薬物は十分に吸収されな かったためと推察されている。消化管内の水分量は、被験者の体調(下痢、便秘など)

や摂食状況など、生理的な要因で大きく変化するため 36~38)、同じ被験者でも試験日時 によって異なっている可能性がある。したがって、対象となる薬物のヒト小腸膜透過性 が低い場合には個体内変動のリスクを考慮した症例設定を行い、BE試験の効率化を図 ることが重要と考えられる。363738

一般に、薬物の難溶解性は経口投与後の吸収におけるばらつきの原因の一つと考えら

(26)

22

れている。しかしながら、これまで、溶解度とばらつきの関係を定量的に評価した研究 結果は報告されておらず、本研究においても、Figure 6では、溶解性(Do)は個体内 変動および個体間変動には、いずれも相関が認められなかった。同じような結果は、

Yamashitaと Tachikiも報告しており 9)、AUCおよびCmaxの 90%信頼区間の幅と Do の間に相関は認められてない。これらの理由の一つとして、多くの難溶解性薬物の 製剤では、製剤処方の最適化によって溶解性を改善し消化管内での溶解速度のばらつき が抑えられていることが考えられる。

BCS Class 2薬物の吸収は、溶解過程により律速されるが、その溶解過程には溶解度

律速と溶解速度律速の2種類がある。このうち、溶解速度律速の場合、微粒子化などの 比較的シンプルな製剤改良によって溶解速度を上昇させることが可能であるため、その 様な製剤として投与した場合には、吸収におけるばらつきは低減され、個体内変動も抑 えられる。したがって、Class 2薬物であっても吸収が溶解速度律速であれば、通常、

個体内変動のリスクにはならないものと考えられる。

一方、吸収が溶解度によって律速される薬物の吸収改善を行うためには、その溶解度 自体を上昇させる必要があり、塩形成、固体分散体、共結晶、非晶質化などを利用した 過飽和製剤化39)が適用される。過飽和溶解とは、熱力学的に平衡な溶解度以上に溶質が 溶媒中に溶解する現象で、通常、溶解している溶質濃度は、一過性の過飽和溶解の後、

時間の経過とともに平衡溶解度まで低下する。一般に、過飽和状態は熱力学的に不安定 であり、経口投与された薬物の過飽和溶解は消化管内のpH、内容物、水分量などによ る影響を受け、過飽和の程度およびその持続時間は容易に変動することが知られている。

したがって、過飽和製剤化された薬物の吸収は、これら要因によって大きな個体内変動 を示す可能性が考えられた。本研究では、MADから導いた新たなパラメータ、Peff / Do を導入することによって、難溶解性薬物の律速過程を簡便に判別し、溶解度律速となる 薬物では個体内変動が大きくなることを示した。さらに、これら薬物ヒトBE試験の結 果より、溶解度律速となる薬物を含む臨床製剤の多くはBEを検証するために12例以 上の症例が必要であったことから、BE試験の被験者数を決定する上で、本パラメータ の有用性が示された。

Figure 7において、溶解度律速薬物のVintraと Peff / Doとの間に有意な相関が得られ なかった理由として、図中、Itraconazole と Simvastatin の 2 つの薬物が極めて大き

なVintraを示したことが挙げられる。これら2種の薬物は、いずれもCYP3A4の良好な

基質であることが報告されていることから、消化管内での溶解のばらつきに加えて、

CYP3A4 による初回通過代謝のばらつきも関与している可能性が考えられる。実際、

(27)

23

この二つの薬物を除いた残りの薬物では、両パラメータの間に有意な相関(R=0.659,

p<0.05)が得られていることから、今後、個体内変動に関する様々な要因を同定し、そ

れらを用いた重回帰分析等を行うことによって、より正確な被験者数の推定が可能にな るものと期待される。

一方、個体間変動に関してClass 2薬物の律速過程との関連性が認められなかった理 由として、吸収における個体間変動には、消化管の生理的条件の変化に加えて、胃酸や 胆汁酸などの分泌能、消化管(特に胃)の形状、消化管トランスポーターの発現量など、

各被験者の基本的な薬物吸収能に関する要因が複合的に関わって起きており、今回の様 に条件を絞った解析を行っても、特定の変動要因を抽出できなかったものと考えられる。

Davitらは180の薬物の1010試験に及ぶBE試験についてレビューし、初回通過代 謝がBAのばらつきの最も重要な要因の一つであることを明らかにしている40)。そこで 本研究においても、多くの薬物の代謝に関わっていることが知られている、CYP3A4 と

CYP2D6 の基質なる薬物について、個体内変動と個体間変動の関係を調べた結果、

CYP3A4で代謝される薬物はVintraが大きく、CYP2D6で代謝される薬物はVinterが大 きくなることを示した。さらに、CYP3A4の基質薬物に関して、そのKm値とVintraの 間に有意な相関が認められたことから、CYP3A4による初回通過代謝の変動が、BAに おける大きな個体内変動の要因であることを明らかとした。CYP3A4 は 、 ヒ ト 小 腸 に お け る 全CYP酵 素 量 の82% を 占 め る 最 も 含 有 量 の 高 い ア イ ソ フ ォ ー ム で あ る 30)こ と か ら 、特 に 小 腸 で の 初 回 通 過 代 謝 の 変 動 が 大 き な 要 因 と 推 察 さ れ る 。

通常、BE試験を実施するにあたっては、CYP3A4で代謝される薬物の場合、グレー プフルーツジュース41~4243)やセントジョーンズワート44)などのCYP3A4を阻害あるいは 誘導することが知られている食品、薬物の使用は禁止している。しかし、被験者が休薬 期間中にこれらの食品・薬物を服用しているか否かは被験者の自己申告に頼っている。

また、緑茶などの一般食品などでも CYP3A4 の阻害が報告されている 34)ことから、

CYP3A4 に対する親和性の高い薬物の場合、これらの変動要因を排除するためには、

休薬期間も含めた入院措置など、プロトコールへの介入が今後の課題と考えられる。

今回、CYP3A4 による個体内変動の程度を推定する目的で、それぞれの薬物の Km

値を用いた。Km値は、ミクロソームなどを用いたin vitro代謝実験で比較的簡便に測 定することが可能であるため、BE試験前に必要な被験者数を推定する上で有用なパラ メータと考えられる。しかしながらBAや血中濃度推移への CYP3A4代謝の全体的な 影響を評価するためには、CYP3A4による代謝固有クリアランス(Vmax/Km)あるいは 代謝占有率(fm)などの評価も必要と考えられる。これまで、これら値を実測した報告

(28)

24

例は少ないものの、平成26年に厚生労働省から公表された「医薬品開発と適正な情報 提供のための薬物相互作用ガイドライン」45)では、経口投与時のクリアランスに対する、

in vivoにおける代謝の寄与率(Contribution Ratio, CR)の重要性が説かれており、今 後、その様な情報がインタビューフォーム等で公開されれば、より詳細な解析が可能に なるものと期待される。

以上、本章では、薬物自体の物理化学的および動態的特性の観点から、BE試験にお ける薬物血中濃度推移の個体内変動の要因を明らかとし、それら薬物特性からBE試験 における必要例数の予測についても可能であることを示した。ただし、本研究では各要 因を分離して評価しているが、薬物によってはその個体内変動に様々な要因が関与して いる可能性があるため、今後、複数の要因が関与する場合の評価方法の検討が必要であ ると考えられる。次章においては、製剤的な観点から経口投与後の吸収の変動要因に関 して検討を行った結果について論述する。

(29)

25

第2章 胃排出速度の変動に及ぼす製剤の影響

第 1 章では、薬物の物理化学的および動態的特性に基づいて、消化管からの吸収に おける変動要因に関する解析を行った。一方、固形製剤を経口投与した場合には、製剤 側の要因によって薬物の吸収に個体内変動が生じる可能性がある。通常、錠剤、カプセ ル剤などの固形製剤は、投与後、まず消化管内で崩壊して二次粒子となる。製剤が胃内 で崩壊した場合、胃内での薬物の溶解速度が十分に速ければ、薬物は速やかに溶解し溶 液として小腸に移行する。しかしながら、薬物の胃内での溶解度が低い、あるいは二次 粒子が腸溶性である場合には、粒子のままで胃内から排出されるため、小腸への移行速 度は粒子の特性に影響される。

胃から小腸への製剤の排出は、MMC(Migrating Motor Complex)46, 47)と呼ばれる 消化管の運動サイクルに大きく依存する。MMCの生理学的意味は、その強収縮により、

胃や小腸内の食物残渣やバクテリアを洗浄し押し流すものと考えられている48)。MMC は4つのPhaseからなっており、Phase Ⅰと呼ばれる静止期の後、Phase Ⅱの間欠期 で不規則な弱い収縮が起きる。さらに Phase Ⅲの強収縮期において、housekeeping waveとも呼ばれる強く頻繁な収縮によって胃内容物をすべて排出した後、Phase Ⅳの 移行期へとつながっていく。ジェネリック医薬品の開発では、ヒトBE試験を実施する

前にin vitroにおいて製剤の崩壊、薬物の溶出性を確認し、標準製剤と同等な製剤を調

製・選択する。しかし、これらin vitro試験では、製剤およびその二次粒子の消化管内 移行性を評価することはできないため、胃排出速度に違いがあった場合には非同等の原 因となる。また、製剤あるいは二次粒子の粒子径や比重などによって胃でのMMCの影 響の受け方が異なる 49~52)ことから、製剤によっては同じ被験者でも投与のタイミング によって胃排出速度が大きく変化し、その後の吸収における個体内変動を引き起こす可 能性が考えられる。49505152

この様に粒子径の違いが、胃排出速度に影響を及ぼすことは知られているが、その違 いが実際の薬物の吸収および血中濃度推移の変動に及ぼす影響、特に個体内変動にどの ような影響を与えるかは明らかではない。そこで本章では、粒子径の違いが個体内変動 に及ぼす影響を明らかにすることを目的として、種々の製剤を調製し検討を行った。

2-1 腸溶性顆粒の胃排出速度に及ぼす粒子径の影響の検討

これまで、製剤中の粒子の大きさや比重が胃排出挙動に及ぼす影響について、腸溶性 製剤などを用いて国内外で多くの研究が行われており、一般的には直径2 mm未満の粒

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26

子については、比較的容易に胃幽門を通過し十二指腸・小腸へと排出されるため、食事 等の影響を受けにくく、吸収速度の変動も小さくなることが報告されている49, 53, 54)。 本項では、製剤の粒子径の影響をより詳細に解析することを目的として、薬物、剤形、

添加剤等が同じで粒子径のみの違う腸溶性顆粒を調製し、ビーグル犬を用いた経口投与 試験を実施した。モデル化合物としては第1章で検討したデータベースから、それ自体 の吸収における個体内変動の小さい薬物として、小腸での膜透過性、溶解性が高く、か つ代謝の影響の少ないセチリジン塩酸塩を用いた。

2-1-1 セチリジン塩酸塩腸溶性顆粒の調製

本項における腸溶性顆粒の調製の目的は、粒子径と胃排出時間の関係の評価である。

薬物自体は酸にも安定であるので、耐酸性はそれほど重要ではないため、胃から排出さ れた腸溶性顆粒から薬物が速やかに溶出することを優先し、耐酸性の目標値は 120 分 で10 %以下と設定した。中性状態における溶出は速い方が望ましいため、5分で30 %、 10分で80 %を目指して調製した。

Table 2. Formulations of enteric-coated granules

Component (g)

enteric-coated granules (200µm)

enteric-coated granules (600µm)

enteric-coated granules (1200µm)

Core Particle Celphere® CP-102 600.0 ― ―

Celphere® CP-507 ― 600.0 ―

Ceolus® PH-101 ― ― 590.0

L-HPC (LH-21) ― ― 6.0

HPC-L ― ― 4.0

Water ― ― 600.0

Cetirizine Dihydrochloride 1.0 1.0 1.0

HPC-SSL 10.0 10.0 10.0

Talc 1.0 1.0 1.0

Water 190.0 190.0 190.0

Enteric Layer Eudragit® L30D-551) 240.0 72.0 48.0

Macrogol 6000 24.0 7.2 4.8

Talc 24.0 7.2 4.8

Water 800.0 240.0 160.0

Total1) 900.0 698.4 669.6

Active Compound Layer

1) The amount of solid

(31)

27

Table 2に、今回調製した3種の腸溶性顆粒の処方を示す。製造方法は、核粒子にレ

イヤリングする方法を用いた。粒子径200 µmおよび600 µmの顆粒には、核粒子とし て結晶セルロースの球形核粒子である粒子径100~200 µmのCelphere® CP-102と、

粒子径500~700 µmのCelphere® CP-507を用いた。粒子径1200 µmの顆粒の核粒子 は、結晶セルロースを造粒し、分級したものを用いた。それぞれの核粒子に転動流動層 装置を用いてセチリジン塩酸塩をレイヤリングし、さらに腸溶性コーティング基剤であ るEudragit® L30D-55でコーティングした後、分級し、粒度を調整した。また、Figure 10には、今回調製した3 種類の腸溶性顆粒の顕微鏡写真および粒子径分布の測定結果 を、Table 3には粒子径分布より得られたD50値および粒子の密度を示した。3種の腸

溶性顆粒はほぼ設計した値の粒子径、粒度分布を示し、密度についてもほぼ同様であっ た。

Figure 10. Photographs and particle size distribution of three kinds of cetirizine enteric-coated granules

enteric-coated granules (200 µm)

enteric-coated granules (600 µm)

enteric-coated granules (1200 µm)

(32)

28

Table 3 Characteristics of three kinds of cetirizine enteric-coated granules enteric-coated

granules (200 µm)

enteric-coated granules (600 µm)

enteric-coated granules (1200 µm) Particle size (D50) 204 µm 662 µm 1203 µm

Density 1.43 g/cm3 1.46 g/cm3 1.43 g/cm3

各顆粒からのセチリジン塩酸塩の溶出試験(パドル法)の結果をTable 4に示した。耐 酸性については目標通り120分で10 %程度以下と十分な値が得られていた。また、中 性(pH 6.8)での溶出は5分で30 %、10分で80 %以上を目標に調製したが、200 µm の粒子で若干低めになった。これは溶出試験のベッセル底部へのマウント形成の影響に よるもので、粒子が細かいため形成されたマウントの内部への水の浸透が弱まったため、

溶出が抑えられたと考えられた。そこでフロースルーセル溶出試験で粒子自体からの溶 出性を確認したところ、3種類の腸溶性顆粒からの溶出速度はほぼ同程度であった

(Figure 11)。3種類の腸溶性顆粒は粒子径のみが違う同一処方、同一剤形の腸溶性

顆粒であり、これらを用いた経口投与試験により、胃排出速度に及ぼす粒子径の影響を 明らかにすることが可能と考えられた。

Table 4 Assay and characteristics of dissolution of three kinds of cetirizine enteric-coated granules

enteric-coated granules (200 µm)

enteric-coated granules (600 µm)

enteric-coated granules (1200 µm)

Assay 101.0 % 95.0 % 101.0 %

Dissolution

pH1.2, 120min 10.8 % 6.3 % 6.8 %

pH6.8, 5min 38.0 % 31.7 % 39.4 %

pH6.8, 10min 44.8 % 75.1 % 79.4 %

(33)

29 2-1-2 イヌ経口投与試験

調製した 3 種類のセチリジン塩酸塩腸溶性顆粒を絶食下ビーグル犬に経口投与し、

その血中濃度から解析を行った。この時、溶液の胃内排出速度の指標としてアセトアミ ノフェンの水溶液を、胃MMCのPhase Ⅲにおける強収縮期にのみ胃内から排出され るシングルユニットの腸溶錠(錠剤径 7.2 mm)としてアスピリン腸溶錠を、カセット としてそれぞれの腸溶性顆粒と同時投与した。したがって、試験は3剤カセット投与の 3 期クロスオーバーとして実施した。なお、アセトアミノフェン、アスピリンともに、

胃排出後には小腸から極めて速やかに吸収されることが知られている。また、アスピリ ンは体内で速やかに代謝を受けてサリチル酸となる55)ことから、サリチル酸の血中濃度 を指標とした。

Figure 12にアセトアミノフェン、アスピリン(サリチル酸)および粒子径の異なる

3種の腸溶性顆粒投与後のセチリジンの血中濃度推移の平均値を示した。水溶液として 投与したセトアミノフェンは、投与直後より血中に検出されたことから、胃から速やか に排出されたことが示された。一方、アスピリン腸溶 錠は血中への薬物出現時間が明ら かに遅く、平均2時間程度のラグタイムの後、血中に薬物が確認された。一方、セチリ ジン塩酸塩腸溶性顆粒では、粒子径の違いにより AUC、Cmaxには大きな変化は認め られなかったが、粒子径が600 µmと1200 µmの顆粒では、血中に出現するまでのラ グ タ イ ム が平均でも30分程度と長くなる傾向が認められた。

Figure 11. Dissolution profiles of three kinds of cetirizine enteric-coated granules by flow-through cell dissolution system

(34)

30

Figure 12. Concentration – time profiles after oral administration as enteric-coated particles, enteric-coated tablet and solution. Results represented mean (n=6) ± SD.

(35)

31

投与後、最初に薬物が血中に初めて検出された時間を、それぞれの薬物の吸収ラグタ イムと考え、イヌごとの値をFigure 13に示した。アセトアミノフェンでは個体、試験 時期にかかわらず常に最初のポイント(15分)で血中に薬物が観察され、溶液は胃MMC

のPhaseに関わらず、幽門から速やかに排出され、小腸に移行することが確認された。

一方、アスピリン腸溶錠の場合、吸収ラグタイムは個体ごと、および試験時期ごとに大 きく変動しており、本腸溶錠のように大きな錠剤は、胃MMCのPhase Ⅲの強収縮期 にのみ小腸へ排出されるものと考えられた。この強収縮はイヌやヒトでは90~120分 のサイクルで起きるとされており46)、投与のタイミングによって胃排出時間が変動す ることによって、経口投与後の吸収に個体間変動のみでなく、大きな個体内変動が生じ たものと判断された。

Figure 14に、各粒子径の腸溶性顆粒投与後のセチリジンおよびサリチル酸について

吸収ラグタイムの分布を示した。なお、図には示していないが、溶液として投与したア セトアミノフェンは先に示したように全て15分で血中に検出されている。粒子径200 µmの腸溶性顆粒の場合、0.5 ± 0.2 時間(平均 ± 標準偏差)と他の顆粒と比較してラ

Figure 13. Time for the first appearance of cetirizine and salicylic acid in plasma after oral administration of acetaminophen solution and enteric-coated aspirin tablet to each beagle dogs (n=6).

(36)

32

グタイムの個体間変動の分布は小さく、ラグタイムも短いことが示された。一方、粒子 径600 µmの腸溶性顆粒ではラグタイムは1.3 ± 0.7時間、1200 µmの腸溶性顆粒では

1.1 ± 0.6時間と長くなり、その分布も広がることが明らかとなった。統計的に有意な差

は示されなかったが、粒子径の違いによって胃MMCの影響の受け方が異なっており、

その結果、吸収ラグタイムに変動が生じたものと推察された。

Figure 15 は同時投与したセチリジン塩酸塩腸溶性顆粒とアスピリン腸溶錠の吸収

ラグタイムをイヌ個体ごとに比較した結果を示している。粒子径200 µm、600 µmの 腸溶性顆粒の場合、いずれの個体においても、アスピリン腸溶錠に比べてラグタイムは 短くなったのに対して、1200 µm の腸溶性顆粒の場合では、アスピリン腸溶錠との差 が小さく、同じラグタイムの個体も認められた。以上の結果は、胃内の一次粒子の粒子 径が大きくなるほど、その胃排出は胃MMCの影響を強く受けること、また、特に粒子

径が1000 µmを超える場合には、アスピリン腸溶錠と同様にPhase Ⅲにおいて排出さ

れる可能性が高くなることを示唆するものと考えられる。

一般に、胃幽門部には通常2 mm程度の隙間が開いており、溶液および2 mm以下 の小さな固体は、胃の収縮がない場合でも幽門を通過できると考えられている 49, 54)。 しかし、本研究で得られた結果より、胃排出における粒子径の閾値は、イヌにおいては Figure 14. Distribution of time for the first appearance of cetirizine and salicylic acid in plasma after oral administration of different particle size of enteric-coated cetirizine granules and enteric-coated aspirin tablet to beagle dogs

参照

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