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玉 国際裁判における判決解釈手続

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全文

(1)

二七三

玉 田

国 際 裁 判 に お け る 判 決 解 釈 手 続

一節

「解

(2)

( 5 6 ‑3・4) 7 44

二七四

は じ め に

国際裁判における判決解警続(‑2reCOulSen

in te rp re ta tio n, th e pr OC ed ur e 0

!in

te rp re ‑a tio

n)は、判決の意義

や範囲を明らかにするための嘉であり,その起源は

=

世紀

中世

仲 ‑

判に遡る

とは言え、同手続が今日の (‑

姿を現すのは完道半ば以降の仲裁裁判手続においてであり一九

七年のハ

グ条約(国際紛争平和的処坪条

約)第八二条がその法典化の成果であったD同条は、「判決ノ解釈及執行こ関シ当事者間二起〜コ‑アルヘキ一切ノ

紛争ハ'反対ノ規約アルニ非サレハ,該判決ヲ言渡シタル裁判部ノ裁判二付スヘシ」と規‑る。常設国際司法裁

判所規程および国際司法裁判所規程の第六

条(後段)は、ハ

グ条約八二条を受け継いだものであ牛次のよう

に規定している。「判決の意義又は範囲について争がある場合には,裁判所は,いずれかの当書の要請によってこ

締約招㌍棋損な諸税蓋り入れる形で'国際法委員会の仲‑続規則モデル=九五八年⁝三条

本稿は'この判決解警続の分析を通じて、判決の不明瞭性と不確‑の関係を明らかにしつつ、判決の既判力

が有する特殊な性質(不確定性)を解明することを目的とする。まずは筆者の問題関心を明らかにするために,判決の明瞭性要請と確定性要請の関係を説明しておこうじ

一般に、国際裁判の判決には明瞭性が求められ,矛盾や唆味な点がないことが求められる〇この判決の明瞭性は, l・.bl

次のように国際裁判の二つの機能から要請される。

1に'国際裁判の法解釈適用機能からの要請である。国際裁判は,一般性を有する法規‑個別状況に適用す丁ヽ‑1̲■、一̲.・・1‑

る過警具体化し、個別規‑創造する機能を有するため,具体化の帰結たる判決には,法規範の不明瞭性や不確

(3)

(9)定性を排除することが求められる。

第二に'国際裁判の紛争解決機能からの要請である。国際裁判は、訴訟当事国に詳細な義務を課すことによって;‑i;紛争を確完的に解決する機能を有しており'訴訟当事国は、判決を「完全に

(in

tegralc

m cn t)

」履行し、「判決の文

言をそのままの形で

(te tle s qu el les )

履行しなければならない」(常設国際司法裁所・

ルギー商事会社事件1九(12)三九年判決)。ところが

'

判決を完全に履行するためには'訴訟当事国が判決の指示内容を的確に理解することを要(13)する。指示内容を理解し得なければ'判決の履行に該当する行為を特定し得ないからである。

以上のように'判決の明瞭性は判決の確定性に密接に関連しており、不明瞭な判決は訴訟当事国の間に複数の解(14)釈の余地を認めるため、判決不履行の口実を与える危険がある。実際に'判決の不明瞭性は、判決中の矛盾や遺漏I̲5)と同じ‑'判決の履行不能原因として主張されてきた。例えば、スペイン王仲裁事件(国際司法裁判所一九六

判決)において、ニカラグアは、問題となった1九

六年の仲裁判決が「省略

(om iss ion

s)、矛盾

(c on tr ad icti o

ns)'(ーJ,

(L7 1

不明瞭(o

bs cu コ tie s)

により履行不能である」と主張している(ただし裁判所は

張を退けている)

ここで'判

手続は、不明瞭な判決を明瞭にすることにより、上記の明瞭性要請と確定性要請を同時に実現

するための手続と位置付けることができる。第1に'判決解釈手続は、原判決において解釈適用された法規範をさ(18)らに具体化するという意味で'国際裁判の法解釈適用機能を補完する。この観点から'同手続は「法の確実性」や︹19)(20︺「権利の安定性」を確保し、さらには、国際法の発展や完全化に寄与するものと評さ第二に'判決解釈手続.1..=;は、原判決の不明瞭性を払拭することによって判決不履行の口実を排除Lt判決に終結性を斎すという意味で、国・23)際裁判の紛争解決機能を補完する。この観点から、同手続は判決の「補正」であると許さ実際に、上記のハ

〟グ条約(一九

七年)やその他の条約における判決解釈手続は'判決の「解釈」だけでなく'判決の「執行」に関

する紛争も対象としている。また、英仏大陸棚事件において'原判決二九七七年仲裁判決)に異議を唱えていた

二七五

(4)

r7iJj 法

( 5 6 ‑3・ 4) 746

二七六「2)英国は、仲裁裁判所による判決解釈(1九七八年仲裁判決)を義務的なものと認めており、解釈判決が原判決の実(26一効性を確保する機能を有することが示されて

以上のように、判決解釈手続は「不明瞭(=不確定)」である判決を解釈Ltこれを「明瞭(=確定)」にする手

続として定式化されている。では'この定式の中で'原判決(解釈の対象となる判決)の既判力はどのように位置

付けられるのであろうか.ここではまず'次の二点を想起する必要がある.第1に'判決解釈手続は既判力を有す

る判決を対象とするという点であり(以下'既判力発生説)、第二に'判決解釈手続は原判決の既判力を敦損しない

という点である(以下'既判力維持説)Oすなわち'判決解釈手続は、不明瞭(=不確定)ではあるが既判力を有する

判決を解釈することによって明瞭(‑確定)にする手続であり'しかも原判決の既判力を穀損しないと考えられて

いるのであるrJでは、不明瞭(=不確定)な判決の既判力は'如何なる状態にあるのであろうか。また'不明瞭な

判決を明瞭にすることは'既判力との関係で如何なる意味を有するのであろうか。本稿では'これらの問題を明ら

かにするために、以下の諸点を検討する。第1に'判決解釈手続の前提とされている判決の「不明瞭性」と「不確

定性」の意味内容を明らかにする(第一章)D第二に'判決解釈手続と既判力原則の関係を検討し'同手続において

原判決の既判力が如何にして維持されるのかを明らかにする(第二章)。第三に、不明瞭性の具体的内容として、判

決の既判事項の客観的範囲を巡る争いが判決解釈手続の中で扱われている点を検討する(第三章)O最後に、判決解

釈に見られる解釈遡及と解釈連鎖の問題を扱い'原判決の既判力の一側面を明らかにする(第四章)

(5)

7 4 7

国際裁判 における判決解釈 手続

第 一 章 判 決 解 釈 手 続 の 前 提 の 再 検 討

第一節判決の不明瞭性

判決の「不明瞭性」とは何を意味するのであろうか。1股に'不明瞭な文章が解釈を要するのと同様に、不明瞭︼砺Eな判決も解釈を要すると言われる。それ故'判決解釈手続の制度目的は「不明瞭な」判決を明瞭にすることであり、(28)︹gi)判決の不明瞭性が手続開始の前提とみなされている(以下'不明瞭前提説)Oこの不明瞭前提説は'訴訟実務だけで

な‑、実定法上で採用されることもあるo例えば'第1次大戟後に設置された仏=喚混合仲裁裁判所の裁判所規則

第七八条では'「[混合仲裁]裁判所は、[判決の]主文が不明瞭

(ob scu r

)'不完全

(in co m p‑e t)

あるいは矛盾して︹3)いる(contradictoire)場合に'判決を解釈することがで

定されている。同様

の 規

定は英国=メキシコ請(引.Sj)求委員会手続規則四八条'あるいはエリーリア=エチオピア国境委員会の手続規則にも見られる。このように、不

明瞭前提説が採用される結果、判決解釈請求は「明瞭化請求」(are

qu est for

c‑

ar ific atio

n)と許さ

ところが'判決の「不明瞭性」を判決解釈の必要条件とすること

は '

論理的には難しい。第一に'法文が明瞭か「34一L35︺否かの判断が主観的なものであ‑、明瞭性(又は不明瞭性)の客観的な基準を設定し得ない以上'判決が明瞭か否t36一かを決定し得からである。第二に、仮に客観的基準に依拠せずに、「不明瞭である」という決断主義的な判断がL[可能であったとしても'「不明瞭であるから解釈する」(又は「明瞭であるから解釈は不要」)という定式において/3)は'「不明瞭である」という判断自体が既に「解釈」でいう問題を回避し得ない。例えば、原判決が明瞭か否

かの点で争いが生じた場合'判決は「不明瞭」であ‑'解釈されなければならないということになるのであろうか。

この間題を解く鍵は、判決解釈手続における「紛争」概念にある。国際司法裁判所規程六

条(判決解釈手続)は'

二七七

(6)

7 48

( 5 6 ‑ 3・4 )

判決の「不明瞭性」ではな‑'「判決の意義又は範岡に関する紛争」が存在することを求めているのである(以下'

紛争要件)。常設国際司法裁判所規程六

条の起草段階では'判決の意義や範囲が「不明確」

(u nc er t

ainty)である一39一140ノ︹=.場合(仏文では疑義douteまたは論争dispute)という文言が用いられていたが'この文言は後に修正され'「紛

争」(disp

ut e一 CO n

teStati

o

n)という文言が採用されるに至っている。そこで以下'紛争要件における「紛争」概念

の内容を分

析 す

ることによって、不明瞭前提説の妥当性を検討することにしよう。

第1に'国際判例上'国際司法裁判所規程六

条の「争」(di

sp ute 一C On teS tat io

n)は同三六tT二八条の「紛争」(4Pハ4(dispute.diff6r

en d)

と同一視されており'「二つの見解の対立」

(l ' op po sit io n de

deuxprete

nt io n

s)を意味する。」45)ただし、規程六

条の「紛争」概念は柔軟に解釈されてお‑'「見解の対

」が外交交渉などの特売の形式で示され

⁚16

)(17こることを要さない。以上の定式は判例上で繰り返し採用されてお‑'デシェルー湖事件(仲裁親判所一九九五午判

汰)において仲裁裁判所は次のように述べている。「判決の解釈請求が受理可能であるためには'当事国間に不合意︹舶一(disa

gr e

e

m en ()

がなければならず'この点は国際判例上の要請である。i第二に'当事国間の「見解の対立」は、判決中の「特定の争点」に関するものでなければならず'判決が明瞭か

否かという抽象的な見解の対立だけでは'紛争要件を満たさない。例えば'庇護事件判決の解釈請求事件(国際司

法裁判所一九五

年判決)(以下'庇護解釈事件)では'「[原]判決は執行を不可能にするような欠快を含んでい「LL:iる」というコロンビアの主張に対して'ペル

は'「判決は明白な明瞭性(une

cta r

teev

id en t

e)を有しており、.7,[‑]解釈すべき点はない」と反論した。そこでコロンビアは'両国間に「明らかな見解の対立」'すなわち「紛「52ノ争」が存在すると主張したが'裁判所は次のように述べてコロンビアの主張を退けた。「当事国の一方が判決を不明

瞭であると述べ、他方がこれを完全に明瞭であると述べたとしても'この事実だけをもって規程六

条の意味にお

ける紛争

(u ne co nt es ta t

ion)とみなすことはできないo紛争があるためには'特定の争点

(p oin ts

definis)につい

(7)

ての両国間の見解の相違

(un e

di

ve rg en ce de v ue

s)が求められるo裁判所規則七九条二項[現行規則九八条二項]

もこの点を認めており、判決解釈請

には﹃争点を明確に示すこと﹄

(H nd ica tio

nprecise

du ou

d

es

p

oin ts co nte s

t6S)/53ノが求めら。このように'「紛争」が存在するためには、具体的な「特定の争点」について

「見解の相

」が

求められるため、判決が不明瞭であるか否かという抽象的な見解対立だけでは「紛争」要件を満たさないのである。

以上よ‑、裁判手続上'不明瞭前提説がそのままの形では採用されていないことがわかる。すなわち、判決の「不

明瞭性」は'当事国間の「紛争」を生ぜしめる要因と位置付けることはできても'それ自体が判決解釈手続の直接

的な訴訟物とはみなされない。それ故'判決解釈手続は'実質的には判決の不明瞭性を根拠としつつも'手続上は'(54)不明瞭な判決から生じる新たな「紛争」を解決するための手続と考えられる。

第二節判決の不確定性

次に問題となるのが'判決の不確定性の内容である。上記のように'判決の不明瞭性は不確定性に密接に関連し

ているが'判決の「不確定性」の内容は論者によって促え方が大きく異なる。極端な説によれば'不明瞭な判決は

不確定であるだけでな‑'そもそも有効性が否定されるという.例えば'セル

(S ce tle )

は次のように述べる。「仲

裁判決が様々な解釈を要請し、明確性(c

la rt

e)を欠‑場合、すなわち、判決の中の幾つかの点について理解し得

(incompre

he ns ible

sJ場合であっても

'

当該判決が確定的なものとみなされ'訴訟を終結させる[・・・]という

奇妙

そのような場合は、むしろ判決は全体として'あるいは部分的に存在しない

(n

ex ist e pa s)

(5)ということができる」。実際に'判決の不明瞭性を根拠として、判決の無効が主張されることがある。例えば

' シ

ミザル事件(仲裁裁判1九二年判決)では'敗訴国であった米国の連出した仲裁委員(A.

M ill

s)が'「仲裁判決(56」は暖味で不明確

(eq

uiv

oc

alandun

ce rta

in.)であるため無効であり'実施不可能である」

と 主

張し、これに同調し

二七九

(8)

7 5 0

( 5 6 ‑ 3・4 )

二八

5.(舶,.た米国が判決の効力を否定した(両国間の紛争は一九六三年の条約で最終的に解決されて)。また、判決中の

「矛盾」を根拠として判決の無効を主張する例もある。例えばビ

ゲル海峡事件(仲裁裁判一九七七年判決)にお59)いて'敗訴国アルゼンチンは'仲裁判決の「無効宣言」の中で判決理由の「矛盾」

(co ロtr a dic ti on )

を指摘した(た

、仲裁裁判長フツツ

ーリ

(G.Fitzヨaurice)によって'アルゼンチンの無効

言が

効であると判断さ一60)れ

いる)D

以上のように'稀ではあるが'判決の不明瞭性を根拠として判決の無効が主張されることがある。これらの主張

の根拠としては'判決の不明瞭性が'伝統的な仲裁判決の無効原因

(le s ca us es

de

nu Eit e)

の一つである判決理由r6](6欠如(de

fa ut

demotifs)に類似するためであると考えられているDで

は '

既判力発生説の主張するように、判決解

釈手続は有効な判決を前提とすると言えるのであろうか。この間題を解決する鍵は'判決解釈の対象である「判決」

概念にある。そこで以下'この概念について検討しょう。

判決解釈手続における解釈の対象は「判決」であり(国際司法裁判所規程六

条)'命令と勧告的意見は除外され・63)6)るが'他方で判決には本案判決だけでなく先決的抗弁判決も含まれこれは

'

後者にも既判力が認められるから

である。ただし'一つの判決が全体として解釈の対象となるわけではない。デシェル‑湖専件(11九九五年)で仲

裁裁判所が述べるように'「解釈は特定の表現や項に関して求められなければならず、判決全般(thejudgmentin(66)

ge ne r

al)に対して求められ得るものではない」(傍点玉田).従って'判決解釈の対象は判決のT部分であるという

なるが、ここで想起すべきは'紛争要件において「特定の争点」に関する紛争(見解の対立)の存在が求め

られることである。すなわち'解釈対象とみなされるのは、原判決中の「特定の争点」であり'その内容について'

第七・八判決の解釈事件(常設国際司法裁判所1九二七年判決)(以下'第七判決解釈事件)において裁判所は次の

ように述べている。「裁判所規程六

条の第二文[判決解釈手続]が設けられたのは、判決中で拘束力をもって決定

(9)

「67)されたもの(cequiaet6decid6av

ec

forceo

btig

atoire)を詳細にするためである」。すなわち'判決解釈手続にお

ける解釈の対象は'原判決において「拘をもって解決されたもの」'すなわち既判事項

()a ch o

sejugee.res(甜ljud1.Ca

ta )

である。以上よ‑、判決解釈手続においては'原判決が既判力を有しており'その有効性に関する疑義が(69ノないことが前提とされている。従って'既判力発生説が妥当する。

以上'第一章の検討から'判決解釈手続の前提とみなされている判決の「不明瞭性」と「不確定性」の意味がそ

れぞれ明らかになった。

第一に'判決の「不明瞭性」については'それ自体に客観的な定義が定められている訳ではない。判決解釈手続

においては'判決中の「特定の争点」(既判事項)の「意義や範囲」に関して当事国間に見解の相違(紛争)が存在

することが求められるだけであり(紛争要件)'「不明瞭な」判決は前提とされていないのである。

第二に'判決の「不確定性」については'判決の不明瞭性を根拠として判決の無効を導く主張も見られるが、判

決解釈手続においてはこの説は探附されておらず'既判力発生説が認められている(この意味で'判決解釈手続は'

判決の不明瞭性を根拠とする無効確認訴訟と区別される)。他方で'上記のように判決の「意義や範囲」に関する見

解対立が生じる点(紛争要件)をもって、判決が「不確定」であるということも可能であ‑'この場合'判決の「不

明瞭性」=「判決の意義や範囲に関する見解対立(紛争)の存在」「不確定性」という図式が成立する。ただし'

既判力発生説が認められている以上'「不明瞭=不確定」な判決であっても'既判力を有することが前提とされるこ

とになる。

そこで次に問題となるのが'原判決に認められる既判力が判決解釈手続を通じて如何なる影響を受けるのかとい

う点である。以下'判決解釈手続と既判力原則の関係について検討し'この点を明らかにしよう。

二 八 一

(10)

岡 法 ( 5 6 ‑ 3・4 ) 7 5 2

第 二 章 判 決 解 釈 と 既 判 力 原 則 の 関 係

判決解釈手続と既判力原則の関係に関しては、同手続が原判決の既判力を穀娼しないと解する点で大多数の学説「70ノは一致している(既判力維持説)。この説によれば'判決の解釈は原判決の主文の意味を詳細にするだけであり'原

判決の内容を変更するものではないという。あるいは、判決解釈は新たな問題の決定を含むものではないため'原

判決の既判力には何らの影響も与えないと説かれる。またへ以上のような点から'原判決の既判力を殿損する判決・「再審手続に比べ'判決解釈手続は危険なものではな‑、再審要件の万が解釈要件よりも厳格であると許される。で

は'判決解釈手続は原判決の既判力に何らの影響も与えないのであろうか。この点を明らかにするために'以下で

は'第一に判決「解釈」の意味を明らかにし(第二即)'第二に判例上で認められている既判力維持説(既判力原則

の優越性)とその具体的効果を検討し(第二節)'第三に判決訂正と判決解釈の関係について検討することにしよう(第E節)

第一節判決「解釈」の意味

判決解釈手続と既判力原則の関係を検討するためには、まず次の二点を明らかにしてお‑必要がある。第lに'

判決解釈手続が不服申立手続(v

oie s d e re c ou r

s)の1つとみなされていることの意味であ‑'第二に判決「解釈」

の意味である。

第一にtl股に判決解釈手続は不服申立手続のT類型として「解釈訴訟」(ler

ec ou rs en in te rp ret atio n. 1a vo

le︹71)(75

.

du

re co ur s en in te rp re ta tio

n)と称され'この開法が訴訟実務でも採用されている

o 国 際 裁

判に

ける不

申立手

(11)

続は'上訴手続や再審手続'無効確認訴訟を含む多義的な概念であり、原判決の既判力を段損するものとみなされ∵ている。それ故へ一見すると'判決解釈手続も既判力を段損する手続であるようにも見えるが'厳密には'判決解lJ:17:釈手続を不服申立に含めず、上訴手続や判決訂正手続と区別する見解が多く見られる。すなわち'判決解釈手続は(80)/81)真の不服申立手続では'あ‑までも確認手続

(u ne pr oc ed u re d e co

nfir

m a

tion)に過ぎないというのである。

また、国際司法裁判所規程六

条では'「判決は'終結

と L t

を許さない

(sa ns re co ur

s,

w i

th

ou t

appeJ)」と

(

82)規定されており'裁判所規程で定められた手続(再審手続)以外の不服申立請求

は 禁

止されてい以上より'「判

決解釈訴訟」という通常の用語法だけから、判決解釈手続が既判力原則に抵触するという結論を導くことはできな

.10‑∨

第二に'判決「解釈」の意味を明らかにする必要がある。判決「解釈」についてはへ判例上で正の定式が確立

しており'第七判決解釈事件(一九二七年判決)において常設国際司法裁判所は次のように述べている。「解釈」と

いう表現は'「裁判所が問題となっている判決に付そうとした﹃意義﹄と﹃範囲﹄を詳細に示すこと(ndication

precise)である。[‑]裁判所規程六

条第二文が設けられたのは'判決において拘束力をもって決定さたもの

詳細にする(prec)ser)ことを裁判所に認めるためであり'このような目的を有さない請求は当条項の範囲に含姐漣Eまれ。さらに同判決によれば'「解釈とは'裁判所が既に述べ'判示したものを説明する

(ex pli qu e

r)だけでI,ある」という0同様に'チュニジア=リビア大陸棚事件の再審・解釈請求事件(国際司法裁判所1

九 八

五年判決)(以下'大陸棚解釈事件)では'「請求の目的は'解釈'すなわち判決の意義と範囲の明瞭化(ac︼ar

ific atio

n)を求

めるものでなければならと述べられている。以上のように'判決解釈手続における判決の「解釈」とは'判I.・JL‑決の意義や範囲の「詳細化」や「説明」と定式化されている。

では、判決の「説明」あるいは「明瞭化」は、原判決の既判力に何らの影響も与えないのであろうか。「解釈」は

(12)

7 5 4

し 5 6 1 ‑3・4 )

二八四\7′すべて多かれ少なかれ創造であるという点を想起すれば、判決「解釈」にも何らかの創造的要素が介在することは・8),t舶t否定し得O実際に'判決解釈によって原判決の既判事項が拡大されることを危倶する'あるいは'判決「90」解釈手続は既判力原則の修正であるとl亭っ見られる。例えば'ゾレ(NoEer)は次のように述べている。「判

決解釈は、仲裁官の用いた文言を単に説明するだけに止まらない。判決解釈は'原判決に何らかのものを付け加え'・qこ原判決を発展させ'完成させるのである」。こうした懸念はtT九世紀仲裁裁判の時代に遡るO既に当時'判決「解

釈」によって原判決が修正される危険が認識されていたため'判決解釈請求を提起するために両当事国の同意が求・′92)められていたのである。例えば、万国国際法学会

(ln sti tu t)

の採択した国際仲裁手続規則案(一八七五年)の二四

条は'「判決の解釈は'両当事国が求めない限‑認められない」と規定していた。同条の起草者ゴールドシユミッ‑

(G o‑d sc h m id

t)によれば、両当事国の同意が求められるのは'「解釈という口実のもとに'判決が事後的に改変さ′94)れる危

を考慮に入れなければならない」からであるとされている。このように、解釈という名の下に原判決が修(95)正される危険があることが古くから認識されていたのである。

これに対して'国際判例では一貫して既判力維持説が採用されており、判決解釈手続においては原判決の既判力

が敦損されないことが認められている。では'判決解釈手続において'原判決の既判力はどのような形で維持され

るのであろうか。この点を次に検討しょう。

第二節既判力原則の価越性

国際判例においては既判力維持説が支持されてお‑'例えば第七判決解釈事件二九二七年判決)において常設

国際司法裁判所は次のように述べている。「解釈は'[原判決の]既判事項に何も付加するものではな‑'原判決の・7L・決定事項の範囲内においてのみ拘束力を有。では'その根拠はどのように説明されるのであろうか。国際判例

(13)

7 5 5

国際裁判 における判決解釈手続

において既判力維持説の根拠を最も明確な形で提示したのは'カメル

ンとナイジェリアの間の陸地と海の境界事

件判決の解釈請求事件(以下'陸地海洋解釈事件)(一九九九年判決)である。本件で裁判所は次のように述べてい

る。「判決解釈請求の受理可能性の問題については特別の注意を払わなければならない。それは、[原]判決の確定

(ca ra ct

eredefinitif)を穀損しない(nepasporteratt

ein t

e)ようにLtまた判決の執行を遅滞させないように

する必

があるからである。裁判所規程六第一に

'

判決は﹃終結とLt上訴を許さない﹄と規定している

ことには理由がない訳ではない。同条は続いて'﹃判決の意義又は範囲について争﹄がある場合'当該判決は当事国

の請求に基づいて裁判所によって解釈されると規定する。裁判所規程六

条の文面と構造は'既判力原則の優越性

(Ja p rim a ut b du p r in cip e d e t

.

au to

rite

de ta cho s

e

ju ge

e)を言い表している。同原則は維持されなければならない

L97 )

で あ

る」

コロ

判事

指摘

るように'裁判所の

う既判力原則の優越性とは、原判決の「既判力を保持するこ(98)とであり'判決解釈請求は既判力を問題とするものではない」ものと解される。また'裁判所によれば、この既判

力原則の優越件は'裁判所規程六

条の第一文(判決の終結性)と第二文(判決解釈手続)の規定順序から導かれ(那.るというので

このように'判例上'既判力原則の優越性(既判力維持説)が認められてお‑、その帰結として'原判決の既判

力を覆すような解釈請求は'「解釈」請求とはみなされない。ところが'この定式は単に「判決の解釈」と「既判力︼旧Eの維持」を等価とみなす規約あるに過ぎない。そこで、以下、既判力維持説の具体的効果を検討することに

ょってその内容を明らかにすることにしよう。

第一に、原判決の既判力を「再検討する」請求は認められない。F

ou rc h et

事件二九二九年l

月1四日判決)

において仏=喚混合仲裁裁判所は次のように述べている。「[本件の]解釈請求は'実際には攻撃されている判決の

根本そのものに対する請求であり'確定的に判示されたものについて議論しようとするものである」。それ故'当該

二八五

(14)

( 5 6 ‑3・4 ) 756

八六・T解釈請求は'「間接的な方法で'確定的と宣言された判決を再検討する(reくenirsur)効果を有するであろ、γ」。同

様に'陸地海洋解釈事件二九九九年判決)において国際司法裁判所は'「[原]判決に付与された既判力を再検討川」する

(re m et tr e en ca

use)ことなしに[解釈]請求回を審理することはできないであろう」と述べ'ナイジェリア{1‑3一の解釈

請 求

理不能と結論付けている。このように、原判決の既判事項を「再検討」する請求は認められな

第一一一に'原判決の既判力を「修正」する請求は認められない。英仏大陸棚事件判決の解釈請求事件(仲裁裁判一

九七八年)(以下、英仏大陸棚解釈事件)において仲数裁判所は次のように述べている。「﹃解釈﹄とはまった‑付随

的なプロセス(un

pr oc es

suspu

re m e

nt

au xil ia ir e )

であ‑'裁判所が拘束力をもって決定した点を説明する・仙}

(e x p liq

uer)のに資

す る だ

けであ‑

'

これ

修正する

(m o

difier)ものでは。同様の判断はデシェルー湖事件

(一九年判決)においても見られる。同事件において

'

チリは分水界境界線を引‑ことを専門家に求めつつ'

それが不可能な場合には直線境界線を引‑ことを求めた。この請求に対して仲裁裁判所は'分水界に代えて直線堤

界線を認めることは、「[第二判決を本当に修正すること(areal

m od i fic at i o

n)であ‑'単なる解釈を超えるもの

となろ、γ」と述べ、チリの請求を棄却また'エリーリア=

境委員会(二

〇 〇

二年六月二四日の..i決定)は、境界線の決定

(〇

二年四月一三日)に対するエチオピアの解釈請求に対して次のように述べている。「解

釈という概念は、決定に対する上訴の可能性を認めるものではなく'決定によって明確に解決された問題を再開す

るものでもない。既に述べたように'本委員会の手続規則二八㌧二九条[決定の解釈手続]はtT一

〇 〇

二年四月一・畑︺三口の決定を実質的に修正することを認めておらず、その拘束性に影響を及ぼすものでも。以上のように'原

判決の既判事項を「修正」する請求は認められない。(▲‑9第三に、判決解釈請求の装いのもと'実質的に原判決の「再審」を求める請求は認められ英仏大陸棚解釈

事件二九七八年判決)において仲裁裁判所は次のように述べている。「判決解釈請求は[⁝]判決の﹃再審﹄や

(15)

﹃取消﹄

(an nu ler )

のための手段として用いられるものではない。これらの手続[再審手続や取消手続]は異なるrM︺範晴の手続であり'異なる考慮が適用される」。同様に、大陸棚解釈事件(l九八五年判決)において裁判所は次の

ように述べている。「チュニジアの解釈請求がさらに遠い射程に達し、﹃判示されなかった点についての解決を得る﹄川′ことまで求め'あるいは判決の再審に達するような場合には'当請求には一切の回答が与えられないであろう」。こ

のように'判決の再審が原判決の既判力を投損するものである以上'判決の再審請求に相当するような解釈請求は

認められない。(;)第四に'原判決時に当事国が請求していなかった事項について解釈を求める請求は認められない。これは、わいゆるno71ultrapetita規則(不告不理の原帥)を判決解釈手続に適用したものであ‑、庇護解釈事件二九五

年判

汰)において裁判所は次のように述べている。「[判決の解釈]請求は'[‑]判決において決定されていない点につ

いての解決を得ることを目的とするものであってはならない。裁判所規程六

条のその他のあらゆる解釈方法も'・ー‑ーノ判決が確定的で上訴に服さないという同条の規定を無意味なものとするであろう」。実際に'本作のコロンビアの解

釈請求は'「解釈判決という間接的な方法を通じて'当事国が裁判所に付託しなかった問題についての解釈を得ようr旧ノとするものである」と判断され'棄却されている。このように'判決解釈手続においてnoT⁝lt71aPetita規則が適用︼雌(されるのは'当事国の請求事項(I)etita)が訴訟物を決定し'これが既判事項の客観的範囲を形成するからである。

なお'事件によって当事国の請求事項の特定方法は異なり'当事国の最終申立

(co nc lus ion

s)によって特定される

場合と'当事国間のコンプロミによって特定される場合に分かれる。例えば庇護

釈事件二九五

年判決)では'叩.「[判決]解釈は'以前に当事国の最終申立(c

on clu s

i

on

s)によって画定された判決の限界を超えることはない」と

述べられており、請求事項が最終申立から特定されている。他方で'第三判決解釈事件(常設国際司法裁判所一九

二五年判決)では、「裁判所規程六

条に基づく一九二四年判決の解釈は、コンプロミによって定められた判決その

二八七

(16)

7 5 8

法 ( 5 6 ‑ 3・4 )

二八八Lはノものの範囲を超え得ない」と述べられており、請求事項はコンプロミによって特定されている。

以上のように、既判力原則の優越性の具体的な効果として、原判決の既判力に否定的効果を与える「解釈」請求

は棄却されるO実際の判決解釈手続でも、多‑の解釈請求がこうした理由に基づいて棄却されているO他方で、実

際に原判決が解釈される場合、原判決の意味内容が解釈された結果として'判決主文が訂正

(re ctif ic

ation)される

事例が見られる.この場合'原判決の既判力は維持されているのであろうか。以下'この間題が大きな争点となっ

た英仏大陸棚解釈事件二九七八年判決)を検討することにしよう。

第三節判決解釈と判決訂正

川判決主文の訂正

英仏大陸棚解釈事件には大き‑分けて二つの争点があったが、そのうちの一つは'原判決二九七七年)中の理

由と主文の間の矛盾である。七七年判決の判決理由第二

二項では、大陸棚境界線は「チャネル諸島の領海基線か.川∵らl海里の距離に引かれる」とされてお恒、判決主文第二項において詳細な座標点が示されると同時に境界線が「州ご付属の地図上に記さL,Oこれに対して英国は'判決の地図上の境界線は「チャネル諸島から1海里の漁業水域

と重複」Lt原判決の主文と理由の間に「明らかな尭離」

(un e

div

er ge nc e m

an

ife st

e)が存在するため、境界線図(mlと判決文を訂正すべきであると主張し、判決解釈請求を提起した。こうして本件では'判決主文と判決理由の間に「El].矛盾がある場合'いずれが既判事項を構成するのかという問題が捉起されたのであるが'解釈判決へ一九七八年)

において'仲裁裁判所は以下のような三段階の判断を経て'判決主文を訂正するという結論に達した0

第Tに、仲裁裁判所は'判決理由と判決主文の間の「矛盾」を認め、次のように述べる.「判決理由第二

二項に

おいて裁判所が示した境界線と判決主文第二項に示された境界線の間に東経(unedi<

er g en ce )

が存在するという

(17)

7 5 9

国際裁判 における判決解釈手続

英国の主張が認められる。従って'チャネル諸島の北西の境界線に関して'判決理由二

二項における仲裁裁判所(竹叫)の意図の示され方と'判決主文第二項におけるこの意図の示され万の間に矛盾

(u ne co nt ra dic t io

n)が存在

第二に'仲裁裁判所は判決主文よりも判決理由を優先し'次のように述べる。「

[

理由と判決主文の間の]矛

盾は'判決理由に示された認定に有利なように解決されなければならない。というのは、そうでなければ、七七年‑,.判決において示された裁判所の意図が妨げられることになる(se

ra tt mi se e

n

6c he c)

からである」。この判断にあ

たって裁判所は、原判決の判決理由二

二項と二

三項に示された判断が判決の「最も重要な要素」

(un 61e

me

nt

.:L

prim

or dia 一)

であり、裁判所の「意図」を表すものであると述べている。

(第三に

'

裁判所は判決主文に示された境界画定線の「訂止」

(u ne re ct‑ fic ati o

n)を七八年判決の主文にお

いて次のように結論付けているo「チャネル諸島の北方と西方の境界線についてはt

a

.一九七七年判決の主文第

二項に示された境界線は'同判決第二

二項において当該境界線の決定のために適用すべき諸原則について裁判所

が明示した認定を正しく適用したものではない'‑

b

.七七年判決の第二

二項は裁判所の意図を表すものであり'

それ故'チャ,*ル諸島の北方と西方の境界線の特定は次のように訂正される(serarectifIbe)[・・]」o

以上のようにー本件において裁判所は'判決理由が裁判所の「意図」を表す「要素一であるとし、こ

れと矛盾する判決主文を「訂正」した。ここで問題となるのが、こうした判決主文の訂正により'原判決の既判力

が如何なる法的影響を受けるのか、という点である。この点に関しては、原判決の既判力が維持されているという・T;.,,i‑;見解も見られるが'仲裁裁判所自身が原判決(七七年判決)の主文に既判力を認めている以上、七八年判決は七七.価)年判決の主文を訂正することによって、その既判力を変更していると考えざるを得また'この点で注目すべ

きは'仲裁裁判所の以下の判断であるQすなわち仲裁裁判所は'本件の二つ目の争点(大西洋区域における境界線

の訂正請求)に関しては'判決主文と判決理由の間に矛盾が存在しないことから、「既判力原則が適用され、当該区

二八九

(18)

7 6 0

岡 法 ( 5 6 ‑3

・4

)

二九

城の境界線の訂正に関する英国の請求を認めることはできない」と結論付けている。すなわち'原則として判決の

訂正は既判力原則と抵触するものと捉えられているのである。

以上のように'仲裁裁判所が原判決の主文の内容を訂正したことから、本件の仲裁判決を契機として'判決解釈⁚し手続と判決再審手続の類似性が指摘されるようになっO例えば、判決解釈は判決の適合(uneadap

tatio

n)や訂ド正(unerectification)に止まるものではな‑'再審と区別されないと許ささらに厄介なことは'本件で仲裁

裁判所自身が次のように述べていることである。「本件のように判決解釈請求が認められ'判決主文の適合

(u ne ce rt aiロ e ad ap ta

tion)を斎さざるを得ないような場合、解釈請求が﹃解釈﹄プロセスの範囲内に入るのか、それ

﹃再

求に該当するのかを決定するのは難しい」。このようにへ裁判所自身が判決解釈と判決再審の類似性を

認めているのであるU

ところが、本件における裁判所の判断から、判決解釈手続が原判決の既判力を致損することがあ‑得ると結論付

けるのは早計である。というのは'本件における判決主文の訂正が判決解釈として行われたのか否かを明らかにす

る必要があるからである。この点を次に検討しょう。

佃訂正権限と解釈権限

本件における判決解釈手続の根拠条文は'英仏間の仲裁コンプロミ10条二項であ‑、次の

うな

規 定

である。

「判決の採択後三ケ月以内に'各当事国は判決の解釈と範囲に関する当事国間のあらゆる紛争

(no

nt

es ta t‑o

n)を仲(EQij}裁裁判所に付託することができる」。同条英文では'「判決の意義と抱囲に関するあらゆる紛争」(anydisputeb

et

w

ee

nthe

Pa rtie s as to the m ean ing

and

sno p

eofthedenision)という茎言が用いられていたため'裁判所は同

条 が

国際

司法裁判所

程六

質的に異

るところはない」と判断し、両者を同lのものとみなしているt。続いて裁

(19)

判所は'同条が判決主文の訂正権限を含むか否かという問題を検討する。

この点について裁判所は'同条が「判決主文の訂jEを行う権限を裁判所に認めているという点について疑いはな∵・1'・.い」と述べており、主文訂正権限を判決解釈権限から導いているようにも見ところが'仲裁裁判所は続いて、

主文訂正権限が「内在的権限」に基づ‑ものであることを明らかにする。この点についての裁判所の説明は'次の

二段階で構成されている。

第一に'本件における主文と輝由の間の矛盾は、判決理由中の認定を誤って適用したことに起因しており、「単純いに技術的な理由に基づ‑ものである」という。裁判所はこの誤りを「資料的誤り」(uneerre

ur m

aterielle)である(州一とし'誤記

(u ne er re ur de ptu m

e)や計算間違い(uneerreurde

cat cu lo u

de

c

hiffr

es )

に類似のものとみ.

第二に、裁判

'

判決主

文 を

訂正する権限を裁判所の内在的権

に根拠付ける。すなわち、「適切な司法運営の

利益のために資料的誤‑を正す

(no rri

ger)必要がある場合、仲裁裁判所がそのような乗離を訂正する

(r ec 旨 er )

権限を有することが一般に認めら

ており」、それ故、「訂正権限は必ずしも仲裁条項において言及される必要

なrー‑1ノII.い」という。それ故'「誤りを訂正する権限は、資料的誤りを訂正する固有の権限

(p ou vo

trpro

pr e)

であ町」、内(川イ在的権限(unpouvoir

inh er en t)

であるというのであるO・山11このよう'本件の仲裁

判所は'判決主文を訂正する権限を裁判所の内在的権限に基礎付けてお申,この判断

は大陸棚解釈事件二九八五年判決)において踏襲されている。同事件で裁判所は次のように述べている。「裁判所

は当然に

(

ofco

ur s

e)'自らの判

中 の

﹃資料的誤り﹄(err

eu rs m a

t6r

iell es )

と呼ばれるあらゆる誤りを訂正すi.る権限を

では'判決解

権限と判決訂正権限はどのような関係にあるのであろうか。1股に、両権限は密接に開通してお(㈹︺り'明確に区別するのは難しいと指摘される。この点について、上記の英仏大陸棚解釈事件において裁判所は次の

二九一

(20)

7 62

( 5 6 ‑3・4 )

二九二

ような区別を提示している。「判決解釈問題が解決され'判決中に矛盾が存在することが認められるまでは'判決訂/rJ7)正の問題は生じない」。すなわち'判決主文と判決理由の間の矛盾(資料的誤り)を認定する部分は判決解釈権限のLJ行使であるが'この矛盾を理由に判決主文を訂正する部分は判決訂正権限の行使とされてお恒,二つの権限は明確

に区別されているのである。

以上より'判決訂正権限は内在的権限であり'判決解釈権限と区別されるものであるため'本件へ英仏大陸棚事

件)において原判決の主文がT引正されたことを根拠として'判決解釈手続が判決の既判力を敦損する場合があるt

と結論付けることはできない。

以上'第二章の検討から次の点が明らかになった。第一にへ判決の「解釈」は'原判決の既判事項の「説明」や「詳細化」を意味するものである。第二に'判決の「解釈」は原判決の既判力を穀椙するものではない(既判力維

持説)。第三に'判決主文の訂正は'判決訂正権限(内在的権限)に基づ‑ものであ‑'判決解釈とは区別される。

以上より'判決解釈手続においては原判決の既判力が尊重されることが明らかになった。ところが'この定式を

具体的な事案において適用する際に'一つの問題が生じるO判決を解釈するためには'まずもって解釈の対象であ朋lる既判事項が特定されている必要があるからである。例えば、個別具体的な「解釈」請求が実質的に再審請求であ

る、と結論付けるためには'原判決中の既判事項が特定されている必要がある。実際に'大陸棚解釈事件二九八

五年判決)において'解釈請求国のチュニジアは'大陸棚境界線が北緯三三度五五分‑束経l二度の点を通るべき

であるという八二年判決の指示は、拘束力をもって決定された事項ではないと主張し、これに対してリビアは'

「チュニジアの請求は解釈請求ではな‑再審請求である」と反論した。この点について裁判所は'リビアの主張は'・1‑0)「何が拘束力をもって決定されたのかという点についての特定の見解(aparticu‑arくiew)に依拠するもので

と述べている。すなわち、チュニジアの「解釈」請求が再審請求であると結論付けるためには'問題の座標点の指

(21)

7 6 3

示が既判事項であることが前提となるのである。ド・ヴィシエが指摘するように'「[判決の]解釈は'判示された

もの

(c e q ui a et e ju ge )

を説明することに他ならないため'何よりもまず、国際法上の既判力原則の範囲を把握す

Lー〜ー )

べきであ

」という

とになる。では'判決中の既判事項はどの部分であり、どのようにして特定されるのであろ

うか。この間題を次に検討しよう。

第 三 章 既 判 事 項 の 客 観 的 範 囲 の 特 定

上記のように、判例上で認められている既判力維持説を具体的に適用するためには'原判決の既判事項の範囲を

特定する必要があるが、ここでは次の二つの問題を区別する必要がある。第一に、判決の既判事項をどのようにし・湖一て特定するのかという手続的問題であり'第二に'判決の既判事項がどの部分を指すのかという実体的問題である。

以下'二つの問題を順に検討しょう。

第l新手続開原

判決中の既判事項

(la ch os e ju ge e . re s ju dic a

ta)はどのようにして特定されるのであろうかO一般にへ「ある事件。。。,。。,,。(1‑3)において何がレイシオ

シ デ ン

ダイである

は、その裁判で裁判所が行ったことの解釈を通じて決まる」と言わ

れる(傍点玉田)。すなわち、判決(既判事項)を「解釈」するための「解釈」(既判事項の特定)が必要であると

いうことになる。ここで'判決解釈には二つの解釈プロセスが混在していることに注意する必要がある。第一のプ

ロセスは、「解釈」の対象(既判事項)を「特定」するプロセスであり(範囲特定プロセス)'第二のプロセスは、

特定された既判事項の意味を明かにするプロセスである(意味説明プロセス)。では'第一プロセスはどのような形

(22)

岡 法

( 5 6‑3・4 ) 764

二九四

で実施されるのであろうか。この点を以下、判例を通じて明らかにしよう。⁚=Jlノ解釈の対象を如何に特定するのかが問題となった最初の事件は第七判決解釈事件(T九二七年判決Jである。そ

こで'まずは本件を詳細に検討しょう。

第七判決(上部シレジアのドイツ人利益に関する事件のl九二六年本案判決)において'裁判所はドイツの主張Lー‑5‑を認め、ポーランドの収糊措置がジュネ

ヴ条約に違反すると認定した(判決主文二項回)。この判断に際して裁判

所は'バワリア窒素会社からヒ部シレジア窒素会社へのホルジョウ工場の譲渡の合法性を認め、その登記を確認し

たがう他方で判決理由の中には次のような「柏不明のが含まれていたCすなわち'「もしポーランドが登記の愉′効力を争う場合は'管轄裁判所が下す判決によってのみ取消すことができるであろう」という二郎である。判決後、

この即を巡ってドイツとポーランドの間に見解の相違が生じた。ポーランドは当該文節に触れつつ、‑二部シレジメア窒素会社への所有権移転と登記を国内訴訟において取消す権利が認められたと解LJさらに'実際に上郡シレ

ジア窒素会社を相手取って自国の地方裁判所に訴訟を捉起し、自国政府がホルジョウ工場の所有権を有すると主張(糊ノした。他方でドイツは、第七判決においてホルジョウ工場に関する上部シレジア窒素会社の所有権が確認されたと

解したため'常設国際司法裁判所に判決解釈請求を提起Ltポーランドの見解は「第七・八判決の正しい解釈

(un e

・ー00ノ

b on ne in

terpretationJと合致しと主張した。このように'本件では判決理由中に含まれたl節を巡って当

国間の

解が対立しているのであるが、これが判決解釈に相当するのか否かという点について'裁判所は次のよう

に述べている。「見解の相違

(u ne di く e r ge nC e d e くu eS )

が裁判所規程六

条における解釈請求の対象とな‑得るた

めには'問題となっている判

中で拘

力をもっ

て 解

決されたものについて当事国間に見解の相違がなければなら

ない。とは言え、このことは'当事国間でその意味が議論されている点が'明らかに判決中の拘束力を有する部分

に関するものでなければならないという訳ではないD特定の争点

(te lou tel

point)が拘束力をもって決定さ

(23)

7 6 5

∴ーれたのか否かという点についての見解の相違も'同[規程六

条]の範囲内に入る」(傍点末EE)O本件では、ホ

ルジョウ工場の民法上の所有権移転の確認という争点」が

'

第七判決において拘束力をもって

(a

veceff

et o b

‑iga

toi re )

解決されたのか否かという点について見解の対立があったため'裁判所は「第七判決の意義と範囲に.個関する争点について正しく紛争が存在と判断した。すなわち'判決理由中の特定の部分(文節)が既判事項・rに含まれるか否かが判決解釈の枠内で扱われるというのである(なお'後述のように'裁判所は本件で問題となっ

た判決理由中の文節につき、これを既判事項であると認めている)0

第七判決解釈事件における上記の定式は、その後の国際裁判で踏襲され'確立した定式となっている。まず、英

仏大陸棚解釈事件(一九七八年判決)において仲裁裁判所は次のように述べている。「特定の争点が判決中で拘束力

をもって解決されたか否かという問題についての解決を得るために解釈を求めることも認められるところであり(第七判決解釈事件‑l頁)'この日的のためには'判決理由を参照することができる(onpeutserefer

e

r

au x m oti fs )

」。さらに、この定式は大陸棚解釈事件二九八五年判決)においても確認されているおける

チ ュ ニ ジ

アの第二解釈請求は、原判決(l九八二年判決)の判決理由において裁判所が提示した大陸棚境界画定の

ための座標点の法的拘束力を問題とするものであった。八二年判決は、境界画定線の方向転換の基点をガベス湾の.=・最西点としつつ、それが「およそ

(a p p ro

ximately)北緯三四度一

分三

秒であるように思わと述べたもの

の、この座標点を判決主文には記載

なかったため、当該座標点を巡って当事国の間で見解が分かれた。チュニジ

アは、判決主文に記載されていないため'座標点は拘束力を有さないと主張したが'他方でリビアはこの座標点が「〝gノ確定的なものであると主張/この点について裁判所は,紛争要件に関する先例を採用し'「特定の争点が拘束力(1‑7)をもって決定されたか否かという点についての見解の相違」も両国間の「見解の相違」に含まれると述べ以■●●●●●●●●●●■●一●●●●●上のような両国間の見解の相違に鑑みて'「八二年判決[原判決]の中で何が拘束力をもって決定されたのかという

二九五

(24)

766

( 5 6 ‑3・4)

二九六

点について紛争が存在と判断した(傍点玉田)。なお、最終的に裁判所は問題の座標点には法的拘束力がないi.と判断している。

以上の事例から明らかなように、判決解釈手続の中には'原判決の既判事項を「詳細にする」という第二プロセ

スとは別に、特定の争点が既判事項に含まれるか否かを決定する第一プロセス(範囲特定プロセス)が含まれてい

るOその根拠については幾つかの考え方が見られる0第一に、「解釈」を広‑捉えることによ‑'第一プロセスを∵「解釈プロセスの正当な実施」であるとする見解がある。第二に'原判決の既判事項を特定する過程は'裁判所が

解釈権限を有するか否かを決定する過程であるため、裁判所の管轄権決定権(裁判所規程三六条六項)によって認(mlめられるという見解も見られる。ところがここで'判決解釈手続においては、判決の意義又は範囲に関する紛争が

対象とされる点を想起すべきであろう。すなわち、判決解釈手続の中には'判決の「範囲」を特定するプロセスが

当然に認められると解するのが妥当である。実際に'英仏大陸棚解釈事件二九七八年判決)において'英国は、

原判決の特定の部分が拘束力を有するか否かは判決の「範囲」に関する紛争であるとし'これを判決の「意味」に

関する紛争と区別している。以上より、判決の「範囲」を特定する第一プロセスが判決解釈手続において認められ

ていることが明らかになった。そこで'次に既判力の客観的範囲に関する実体的問題の検討に移ろう。

第二節実体間堤一ー‑3)既判事項

(la ch os e ju ge e)

とは、「紛争を終結させるために裁判官によって解決されたもの」であ‑、既判力

()

.

au to rit e d e ta ch os e ju g6

e)を有する部分である.ところが'判決中のどの部分が既判事項を構成するのかとい虻Eう問題(実体問題)

ては、未だに議論が残っている。判決主文が既判力を有するという点について学説分岐

は見られないが、判決理由にも既判力が認められるか否かという点で見解が分かれるのであるO

(25)

川判決理由と判決主文の関係

判決理由が既判力を有するか否かを検討するに先立って、まずは判決理由と判決主文の関係を明らかにしてお‑

必要がある。「判決理由」

(la m ot

iv

at 10 n

Le

m Ot if)

は一般に'判決主文を根拠付ける事実と法に関する理由又は根/I拠の給体と考えられている

。 こ

こで注

すべき点は'判決理由が「理由の総体」(‑'enseヨ

b

‑ed

es m ot ifs )

と捉えらI/iれている点であり(以下'理由総体説)'実際の裁判例でもこの考え方が採用されることがある

例えば

'

カリフォ

ルニア布教基金事件(常設仲裁裁判所7九

二年判決)において裁判所は次のように述べているo「訴訟中に審議さ

れた点に関する判決のあらゆる部分({○

亡te S ‑es p ar {ie

s)は'互いに意味を明かにLt補充しあうものである。そ︹ー‑7)れらはすべて'判決主文の意味と範囲を詳細にL

t

既判力を有する点を特定するのに資するものである」。このよう・[.に、裁判所は判決理由を一体のものとして捉え'これが判決主文の解釈に資すると判断している。ただし、理由総

体説は'総体としての判決理由が主文を解釈Lt既判事項を特定するのに資すると述べるに止まり'既判事項の範

閑を判決理由全体に広げようとするものではない。この点は、ダンテッヒ郵便業務事件(常設国際司法裁判所⁚九

二五年勧告的意見)において明確にされている。裁判所は'「少なくとも決定主文の範囲を超える限り'決定中の理■㍉・由

こ es m o

{ifs)は関係当事国間において拘束力を有きと述べつつ、続いて布教基金事件における上述の定式

化を紹介

'「裁判所はこの判断に同意するがtだからと言って'決定中の理由のすべてが判決を構成することには3E3=内ならない」と述べる。このように'裁判所は'既判事項の客観的範囲を特定するにあたって'判決主文の範囲を超

える判決理由の拘束力を否定した。では逆に、「判決主文の範囲を超え」ない限りにおいて'判決理由も既判力を有

すると言えるのであろうか。この点を以下で検討しょう。

二九t

(26)

同 法 ( 5 6 ‑ 3・4 ) 768

二九

主文限定説と理由包含説

既判事項の客観的範囲に関しては'従来から二つの説が対立してきた。既判事項を判決主文(tedisp

os itif )

に限(脱l定する説(以下'主文限定説)と'一定の場合に判決理由

(‑a m ot

i<atio

n

Je

m ot ‑∫)

を既判事項に含める説(以下へ/理由包含説)である。主文限定説を採る場合'必然的に判決解

の対象

決 主

文に限定されか。

主文限定説を帝も明確に打ち出したのはアンチロッテ判事であ‑(第七判決解釈事件の反対意見)へ次のように主

張している。「[判決]解釈請求が対象とし得るのは'原判決の拘束的部分であり'このことは、判決主文の意義と

範囲しか対象とし得ないことを意味する。というのは'明らかに[判決の]拘束力は判決主文にのみ認められ'判脚断理由(considerants)には認められないからである」。主文限定説によれば'事実認定や先決的問題の解決が判決

に到達するための手段

(te m oy en )

に過ぎず'既判を有さないのとHじように、判決主文に至る手段である判決

理由にも拘束力が認められ

いう。なお、主文限定説は実売法上でも採用されている。例えば、欧州人権裁判

所における判決解釈手続(裁判所規則七九条二項)では、「判決解釈請求は、解釈を求める判決の主文の争点を詳細.i・>・に示す」ことが求められており(傍点玉師)、判決理由の解釈は排除されてまた、ユングハンス(lunghans)

事件(ドイツ=ルーマニア混合仲就裁判所l九四

年判決)において裁判所は次のように述べている。「[二九年判

決で示されたルーマニアの金銭賠償義務の性質については.]三九年判決の最後の判断理由(c

on sI

.

d dr a 7Zt S fin au x)

により、裁判所はこれを実質価値に相当するものとみなしている。とは言え'裁判官が付随的に

(in c id e m m en 〇

(揃)述べた見解でー判決主文に取‑込まなかったものは'原則として既判事項を構成しない」。このように

'

裁判所

は、主文を解釈するために判決理由を参照しっつも'最終的には判決理由の既判力を認めておらず'あくまでも主

文限定説を採用している。‑/.他方で、既判力は判決主文だけでなく判決理由にも及ぶという見解(理由包含)が今日では多数を占める。そ

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