グローバル・コンパクトの具現
著者 大西 祥世
出版者 法学志林協会
雑誌名 法学志林
巻 110
号 1
ページ 59‑81
発行年 2012‑08‑08
URL http://doi.org/10.15002/00012490
企業・国連・政府の協働による人権の実現
││国連グローバル・コンパクトの具現││
大 西 祥 世
はじめに
企業はこれまでも︑管理職に就く女性の割合を増やしたり︑セクシュアル・ハラスメン卜等のバワ
l
・ハラスメントを防止したりして︑職場における男女平等を推進してきた︒一二世紀に入り︑企業の社会的責任経営
( C
S R
)
が
重視されるようになると︑一層拡充して取り組む企業が増えている︒また︑従業員に対してだけではなく︑企業市民
の一員として︑国内外の地域における女性をエンパワーして︑国際社会︑地域社会に貢献しようという企業も現れて
いる︒近年では︑女性の活躍だけではなく︑障害者︑外国人等マイノリティを活用した多様性の確保(ダイパ
l
シテ
ィ・マネジメント)に取り組む企業も増加している︒
一方︑男女平等の推進の実現には︑政府や国際社会も強い関心を示してきた︒国連女性の地位委員会︑国連世界女
性会議︑女性差別撤廃条約︑
ILO
諸条約等︑国連を中心としたさまざまな枠組みが整備されてきた︒なかでも︑経企業・国連・政府の協働による人権の実現(大西)
五九
法学志林
第 二
O
巻第一号。
済的平等の実現には企業の活動が不可欠である︒しかし︑こうした国際社会の合意は︑国際機関や政府を拘束するも
のであり︑民間セクターである企業に直接の効力を及ぼさなかった︒
このカベを突破しようと︑国連グローバル・コンパクト(﹁以下︑﹁国連
G
C
﹂という︒)と国連女性開発基金(ユニフェム)(当時)は共同して︑二
O
一O
年三月に︑﹁女性のエンパワメント原則﹂(巧o
目白
ぽ回
目宮
当司
自の
三甲
山口
・
︒仲間
L
g
︒以下
︑﹁
W E p s
﹂という︒)を作成した︒これは︑企業が男女平等と女性のエンパワメントを経営の核に位
置づけて自主的に取り組むことで︑企業活動の活力と成長を獲得する指針となるように立案されたものである︒
法政大学現代法研究所国連グローバル・コンパクト研究センターは︑二
OO
七年一二月の設立時から一貫して︑国連
G
C
事務所との強い連携のもとに︑企業における女性のエンパワメン卜に関する研究︑調査にあたり︑W E p s
の
策定会合にもアジア地域からの唯一の参加者として協力してきた︒その一環として国連
GC
研究センターは
W E p s
を日本語に翻訳し(後掲資料参照)︑それは今日国連
G
事務所にも採択されて︑同事務所のウェプサイトを通じて
C
全世界に公表されている︒また︑日本だけではなく︑東アジアにおける企業のジェンダl・イッシュlの取組やダイ
パlシティ・マネジメントが︑
W E p s
の内容と十分に調整されることで︑圏内的にも︑国際的にも︑地域的にもい
っそう力強く︑具体的に︑説得力に富むものになることを考慮して︑日本︑中園︑韓国の参加国の先進企業の取組に
関する調査研究を行った︒
そこで︑本稿では︑
W E p s
の発展と実践を通して︑企業︑政府︑国際社会の協働による人権の実現ならびに女性
のエンパワメントの意義を明らかにし︑その必要性を検討する︒
W E p s
の特徴
国連
GC
は企業の自主的な行動枠組みであるが︑国連
GC
事務
所は
︑
GC
一
O
原則をより具体的・実効的に推進するため︑これを補完するさまざまな取組である﹁原則(宵宮己主
g )
﹂︑﹁
ガイ
ドラ
イン
(間 口一 色︒ ロロ
O)
﹂︑
﹁マ
ンデ
l
ト( ヨ
S E Z )
﹂等を策定してきた︒たとえば︑二
OO
六年に国連環境計画金融イニシアティプと作成した﹁責任ある
投資
原則
﹂
3 Z P E
丘 ‑ ‑ g r 一 回
2 3 5 5 z z g 巳
E S
C
︑二
OO
八年に国際労働機関等と作成した﹁労働原則﹂
( 4
z v
m w
r o
吋
P
E a
‑ g
)
︑g
二O
一O
年に国連児童基金と作成した﹁子どもの権利とビジネス原則﹂3Z
の冨骨E m
y g
p H
M
門戸田口
m F g m m
勺
H e
z o e z m )
等がある︒また︑﹁企業のための人権マネジメント﹂(二
OO
五年
)︑
﹁企
業の
人権
方針ならびに人権影響評価︑人権研修︑人権報告等を実施するための手引き﹂(二
OO
五年
)等
もあ
る︒
W E p s
はこうした取組の一環である︒
GC
一
O
原則のうち︑人権と労働の領域に関する内容を具体化するために︑職場
︑
マー
ケッ
ト︑
コミュニティにおける女性のエンパワメントを推進するしくみの拡充をめざし︑二
O
一O
年三月に︑国連と企業の自主的な盟約の枠組みである国連
GC
とユニフェム(現ジェンダl平等と女性のエンパワメントの
ための国連機関︑略称
U N W o m e n )
が共同で作成した七原別である︒前述のとおり︑企業が男女平等と女性のエ
ンパワメントを経営の核に位置づけて自主的に取り組むことで︑企業活動の活力と成長の促進をめざし︑さらに女性
の経済的エンパワメントを推進するよう期待されている︒
W E p s
の七原則には各々に四
i
六項目の具体的な実践目標が
盛り
込ま
れた
︒
そこ
で︑
W E p s
の七原則をもとに︑その特徴を検討したい︒
企業・国連・政府の協働による人権の実現(大西)
̲.̲
1
、
法学志林
第 二
O巻第一号
六 一
︹原
則
73
四職場︑社内における取組︺
原則一から原則四までは︑職場や社内における取組の推進であり︑企業が経営方針として主に人事戦略に盛り込む
内容である︒日本をはじめ先進国の多くの企業にとっては︑既存の取組と重複する内容が多いが︑そうした実践を再
評価して︑さらに実効性を高める起爆剤として用いることができる︒各々の原則の具体的な内容は次のとおりである︒
原則一は︑トップのコミットメントである︒
CEO
がリーダーシップをとって︑その企業が女性のエンパワメントに取り組むという経営方針を明確にし︑それを達成するためのプログラムを作成して︑実行することを求めている︒
その際は︑社内だけでなく社外のステ
l
クホルダーも︑また︑女性だけではなく男性も巻き込んで︑企業のビジネスに関係するさまざまな立場の人と一緒になって取り組むインクル
l
ジョンの視点が重要とされる︒原則二は︑社員の人事管理である︒男女に平等な報酬︑同一価値労働同一賃金の実現︑管理職や役員への女性の登
用(三
O%
以上)に取り組むこと等がある︒育児休業取得後の復職や︑ワーク・ライフ・バランスの推進も含まれる︒原則三は︑健康︑安全︑安心の確保である︒男女の従業員に︑職場での労働災害を予防するだけではなく︑リプロ
ダクティプ・ヘルスに配慮したり︑セクシュアル・ハラスメントがないといった安全な職場環境や通勤環境を作った
りすることが求められる︒また︑家族の看護休暇制度の必要性等が盛り込まれている︒
原則四は︑女性の能力開発である︒女性の職域の拡大︑教育プログラムの拡充︑ネットワークづくりやメンタ!制
度の導入︑企業聞の好事例の共有等である︒
︹原
則五
1
六マーケット︑サプライチェーンや地域と協働した取組︺原則五と原則六は︑企業が経営方針として主にマーケティング戦略や事業活動の中で取り組むものである︒サプラ
イチェーン︑取引先︑地域コミュニティや政府とともに女性をエンパワーする手法が盛り込まれている︒
原則五は︑サプライチェーンに対する企業ビジネスの影響力を駆使して︑サプライチェーンや取引先等を巻き込ん
で︑性差別のない社会に変えていこうとするものである︒女性が経営する小規模の企業や女性の起業家と取引をする
ことを推奨する︒また︑企業のビジネスや製品が︑人身取引や性的搾取に関与しないよう求めている︒
原則六は︑企業市民として︑本社や事業所が所在する政府や自治体︑大学︑
NGO
等のステlクホルダーとも協働
して
︑
コミュニティにおける女性のエンパワメントという課題に取り組もうとするものである︒フイランソロピlや
助成金等を通じた社会貢献活動も含まれる︒
︹原
則七
進捗状況の報告を通じた︑企業同士の好事例の共有︺
原則七は︑こうした企業の取組に関する情報を公開することを求めている︒企業が方針や計画を作成・公表し︑そ
の進捗状況を公開するものである︒
こうした各原則の内容から︑
W E p s
の特徴は次の三点に整理できるだろう︒
第一に︑企業を規制するためのツ
l
ルではなく︑自主的な取組を促すものである︒これは国連GC
と同じ仕組みで
あるが︑企業は女性のエンパワメン卜を推進するためにどういう取り組みをするのか︑まず
CEO
がサインをして︑自主的に取り組むことを表明する︒女性のエンパワメントや男女平等を進めることは︑企業が成長し成功することそ
のものであるという考え方に基づいている︒
第二に︑女性のエンパワメントに対する企業の姿勢をグローバルな社会に発信するために良いツlルとなるもので
ある
︒
W E p s
を推進する企業同士のネットワークに参加することによって︑国連機関だけではなく︑女性のエンパ
ワメントに熱心な企業同士︑取引先︑投資家︑政府︑
NGO
︑労働組合等との連携するチャネルが聞かれる︒さらに︑
今日の企業は︑国内市場のみを相手にしているところはほとんどなく︑グローバルにビジネスを展開しているため︑
企業・国連・政府の協働による人樹の実現(大西)
ム ハ 一
法 学 志 林 第 二
O巻
グローバル社会からこの分野についての企業の積極的な姿勢を評価されることは︑ 第一号
六回
マーケティング戦略にメリットが
あるだけではなく︑投資先としての魅力を増すことになる︒
第三に︑その企業の良さがジェンダ
l
の視点から﹁見える﹂ようになることである︒圏内だけではなく︑グロl
パルな観点から︑先進的な事例を共有することができる︒
W E p s
に署名すると︑毎年一回︑
W E p s
の事務局に進捗
状況を報告することが求められる︒企業は単に署名をすればよいということではなく︑他の企業と好事例を共有する
ためにも︑報告は
W E p s
の活用に重要な要素とされている︒どの企業も完壁なところはなく︑改善しながら取組を
続けることが重要である︒
W E p s
はそうした企業により高い目標を提示し︑それに向かって常に取り組み続けるこ
とを求めている︒
なお︑署名を希望する企業(従業員一
O
人以上)は︑国連G
C
事務所とU N W o m e
n
が共同で運営するW E p s
事務局に直接電子メールで連絡し︑同事務局から送付された﹁
CEO
ステートメント﹂という用紙( A
四版三枚)に
署名・記入して返送すれば手続が開始される︒手続終了後に同事務局のウェプサイ卜に企業名が掲載され︑広く発信
される︒署名企業に国連
G
C
参加の有無は問われない︒署名後は︑毎年一回進捗状況を公表・報告することが求められる︒また︑希望すれば毎年開催される
W E p s
会合に参加できる︒
W E p s
の始まりと展開
( 一 ) 国
連 G
C と
U N
W o
m e
n による会合の開催!第一回から第四固まで
WEps
は︑先に述べたように︑企業における男女平等の推進と女性のエンパワメン卜について︑七つの行動をピジネスの原則とすることによって︑実現しようとするものである︒国連
G
C
事務所とユニフェム( 現
UNWome
n )
が共同して︑二
OO
九年版の﹁女性の原則﹂の改訂版として作成され︑二
O
一O
年三月に発表された︒WEps
の推進に関する会合は︑毎年一回︑三月八日の﹁国際女性デ
l
﹂の前後に開催される︒﹁女性の原則﹂を作成した二00
九年の会合がWEps
に関する第一回目の会合と位置づけられ︑二O
一二年三月の会合で第四回目となった︒WEps
の目的とこれまでの発展を明らかにするため︑各会合の内容を概観しておきたい︒二
OO
九年の第一回会合は︑国連本部にて︑﹁世界市場経済における女性の地位向上﹂をテ1マに開催された︒同
フォーラムでは︑二
OO
四年にユニフェムとアメリカの投資会社のカルパ!ト社が共同で作成した﹁女性の原則﹂を
︿5
)
改訂し︑二
OO
八年
一
O
月のリl
マンショック以降のグローバルな経済危機のもとで︑ビジネスの中でどのように同原則を活用するか︑国際的に協議された︒
二
O
一O
年の第二回会合は︑﹁平等推進とビジネスlWEps
﹂をテlマに︑ビジネスにおける男女平等の推進をめざ
して
︑
WEps
を企業︑国際社会︑各国政府機関︑民間セクター︑NGO
︑研究機関に広めて推進することが確
認さ
れた
︒
会合の各セッションでは︑企業や国際機関︑
NGO
から︑多くの事例と研究成果が報告され︑同原則が実際のピジ
ネスにおいて︑女性の地位向上とインクル
l
ジョンに役立つことが指摘された︒企業のダイパl
シティ担当者は︑各々の企業における男女平等推進に関するデlタおよび施策や実践を通じたビジネス発展の事例を報告した︒研究者
や
NGO
︑国連機関の担当者は︑経済的な男女間格差や女性の意思決定過程への参画の低さを克服するために︑
W E
ps
を用いて︑トップへの働きかけ︑女性の信用保証の確保︑メンタlプログラム︑企業実践のステlクホルダーと企業・国迎・政府の協働による人権の実現︿大西)
六五
法学志林
第一
一
O巻第一号
占 ハ 六
の共有等が有用であることを指摘した︒さらに︑結論として︑
WEps
を翻訳して各国に広めて活用すること︑ニO
(6 )
一
O
年の国連G
C
リーダーズサミットにおいて企業のトップに働きかけること︑同原則がビジネスにおいて主流になるとともに︑企業の
CSR
報告書に盛り込まれて進捗状況を報告する必要性が議論された︒二
O
一一
年一
月に
︑
ユニフェムが他の三つのジェンダlに関する国連機関と統合されて
U N
W o
m e
n
として発足したが︑その後も国連
G
C
事務所との密接な連携は継続されている︒その発足時にU N
W o
m e
n
事務局長のミチエル・パチェレ氏は五つの優先課題を提示したが︑その一つは女性の経済的なエンパワメントの推進とされた︒また︑
同年六月に発表された﹁
UNWomen
戦略計画二O
一一
ーニ
O
二ニ
﹂に
︑
UNWomen
の主要な事業の一つとして
WEps
に署名する企業を二O
一五年までに五OO
社とする目標値が示された︒このように︑
WEps
を推進する動きは︑ますます強化された︒
ニ
O
一一年三月の第三国会合は︑第二回会合と同じ﹁平等推進とビジネスlWEps
﹂をテlマに︑企業が職場︑マー
ケッ
ト︑
コミュニティおよびその他改善が求められる領域において女性のエンパワメントを前進させるため
W E
ps
をどのように運用するか︑活発に議論された︒潜基文国連事務総長が出席して開会挨拶を行い︑
WEps
を用いてビジネスにおける男女平等を推進し︑よりよい社会を作り出すことが呼びかけられた︒次いで︑パネリストから︑
WEps
を経営の指針にして企業がより一層男女平等に取り組むこと︑好事例を共有すること︑企業の取組に対する政府の積極的な支援が求められること等が報告さ
れ︑議論された︒また︑政府がステlクホルダーの一つとして政策的に企業を支援すること︑とりわけ民間企業に女
性取締役を登用するクオlタ制を法律で規定することの重要性も指摘された︒
また
︑
WEps
をさらに活用するための方針を検討するワークショップが行われたロパネリストから︑男女平等と女性のエンパワメントを推進するために効果的なツlルが報告され︑議論された︒たとえば︑取締役および管理職へ
の女性の登用を増やすために専門的および技術的な研修を実施すること︑トップがリーダーシップをとり強力に関与
する社内委員会を立ち上げること︑透明性を確保して従業員および管理職の人数ならびに賃金等の男女別の統計を公
開・報告すること︑進捗状況を公開・報告する際は政府および国際機関や
NGO
の支援が有効であること︑W E p s
が企業のこうした取組への地図および指標となること︑政府の政策とトップの実践が企業の具体的な前進を強力にパ
ックアップすること等である︒
二
O
一二年の第四回会合は︑﹁持続可能なビジネスに向けた男女平等の推進﹂をテ!マに︑企業が職場︑マ
lケ
ッ
ト︑コミュニティにおいて女性のエンパワメントを実効的に前進させるために
WEps
をどのように活用するか︑また︑二
O
一二年六月に開催される国連リオ+二O
に向けて︑持続可能なビジネスに向けて男女平等が企業にとっていかに不可欠であるかが︑活発に議論された︒
会合の冒頭に活基文国連事務総長が出席して基調講演を行い︑持続可能な発展を実現するには多国籍企業から中小
企業︑投資家から起業家といったさまざまなレベルの企業の貢献が不可欠であるとともに︑そこに女性をエンパワl
する取組がなくてはならないことが強調された︒次いで︑ミチエル・パチェレ
U N W o m e n
事務局
長は
︑
UNWo
m e n
の二
O
一二年の重点課題は女性の経済的エンパワメントと政治参画の促進であり︑国連リオ+二O
会合に向けて︑男女平等をより一層推進すれば国と企業はより高いレベルの成長と成果を得ることができ︑その利益は女性だけ
ではなくすべての人にもた・りされると指摘した︒
また同会合では︑
W E p s
をツ
l
ルとして企業がより一層女性のエンパワメン卜に具体的に取り組むこと︑すなわち︑取締役における女性の割合を二
O%
または三O%
に高めること︑女性の従業員が取締役や執行役員に昇進するた企業・国迎・政府の協働による人権の実現(大西)
六七
法学志林
第一
一
O
巻第一号﹄ ︑ ︑
‑ 官 ︑
/︐
J
めのパイプラインを構築すること︑企業の実践を加速させるには投資家の役割が大きいこと︑企業や投資家︑政府︑
NGO
︑研究機関等のマルチ・ステl
クホルダーによる対話のため政府による積極的な支援が求められること︑企業は透明性を確保して進捗状況を報告すること︑企業が持続可能なビジネスを追求する際には男女平等と合わせて実践
すること等の必要性および重要性がパネリストから報告され︑議論された︒
また︑女性の取締役を増やすため︑能力のある女性の取締役候補者をリスト化し︑広く一覧できるウェプサイトを
国別に参照できるリンク集や︑企業が
W E p s
に関する取組を報告する際にどのような視点および内容を盛り込めば
よいかの一例を示すガイドの草案が提案され︑国連リオ+二
O
会合での公表をめざして協議を行うことが報告された︒さら
に︑
W E p s
に基づき取り組んだ実践の進捗報告書を公表し︑国連
G
C
およびU N W o m e
n
を財政的に支援した企業に対する﹁
W E p s
チャンピオン・プログラム﹂の計画案が示された︒﹁
W E p s
チャンピオン﹂は︑二
O
一二年六月から運用が開始される予定の
W E p s
ウェプサイトにエントリーした企業の取組が好事例として紹介される
機会を得るとともに︑所定の金額の拠出を求める取組である︒
他方︑二
O
一一年一一月に︑W E p s
の展開方針を議論する﹁
W E p s
リーダーシップグループ﹂が設置された︒
議長
は︑
W E p s
会合のコーディネータ
l
を二O
一O
年から三年連続して務めたリンダ・タ!ウェラン氏である︒メンパ
l
は企
業︑
NGO
︑研究者︑国際機関︑政府から選出されたこ六人であり︑日本からは株式会社資生堂副社長
(当時)の岩田喜美枝氏が任命された︒
(二)国際社会における活用の広がり
二
O
一O
年九月に東京で︑﹁APEC
ウィメンズリーダーズネットワーク( W L N
)
﹂の会合がAPEC
エコノミー
の民間人を中心に約五
OO
人が参加して開催され︑その議論の成果として﹁APEC
首脳及び閣僚への提言﹂が採択された︒同宣言は︑
APEC
首脳及び閣僚に対し︑﹁女性のための新たな経済機会の創出( W E p
s
の推進が可能となる環境の構築も含む)﹂および﹁
APEC
エコノミー聞の地域経済・社会・市場の域内統合を推進するあまねく広がり持続可能な成長を促す
( z o z m F S g
円
Z
5 5 5 § z m
g d
三﹃)
指針
とし
て︑
W E p s
を支持する﹂とした内容を
含む政策提言である︒すなわち︑女性がさらに活躍することで経済成長を実現すること︑経済活動に女性は貢献する
こと︑こうした取組は男性も巻き込んで一緒に行うこと等を実現するために︑
W E p s
をツlルとして用いるよう︑
各国政府に提言した︒
こうして
W E p s
は︑国連
G
C
およびU N W o m e
n APEC
エコノミー問での議論にも反映され︑だけではなく︑ますます国際的な原則として活用されるようになった︒その動きは国連全体にも広がった︒たとえば︑国連総会第二
委員会﹁グローバル・パートナーシップ決議﹂は︑国連
G
C
の活動を根拠づけるものとして一九九九年以降二年に一回決議されているが︑最新の二
O
一一年一二月に採択された決議(﹀¥C
・N¥
∞ ∞
¥ ﹁
怠 ¥
・
2 同
H)
は︑国連
GC
に参加して
いる企業の各国における地域連絡事務所である﹁グローバル・コンパクト・ローカル・ネットワーク﹂
( G C L N )
の役割と
W E p s
推進の重要性を強調したものとして注目される(共同提案国一日本を含む五
0
カ国
)︒
すな
わち
︑
二
O
一一年決議は︑グローバル・パートナーシップの促進にジェンダl視点の取り入れる意義と必要性がとくに強調され︑その際には
W E p s
への評価に留意することとされた(前文)︒さらに︑
GCLN
に対
して
︑
W E p s
を推進す
るとともに︑企業が職場︑
マー
ケッ
ト︑
コミュニティにおける男女平等を推進するためにさまざまな方法で
W E p s
を普及・啓発することを要請した(パラ一一)︒
また︑同決議は︑
CSR
を促進するための政府の役割を強調するとともに︑国連と民間セクターのパートナーシツ企業・国迎・政府の協働による人権の実現(大西)
九
法 学 志 林 第 二
O
巻第 一 号
七O
プ推進における
GCLN
の役割を評価した(パラ五︑パラ一八三加えて︑同決議は︑国連事務総長に対して︑二年後の総会までに︑国連と民間セクターのバ
l
トナ
l
シップに向けた国連ガイドラインの執行と︑GCLN
の活動強化に向けた報告を提出することを求めた(パラ一一一)︒
このように
W E p s
は︑当初は国連
G
C
とU N W o m e
n
の共同事業であったが︑今日では前述したような港基文国連事務総長のたいへん積極的な姿勢にも後押しされて︑国連の主要な取組の一つにもなっているといえよう︒すな
わち︑企業︑国連︑政府の協働による男女平等︑女性の人権およびエンパワメントの実現を推進するための国際的な
公序の一つとして発展しているのである︒
世界各国の企業における活用の促進
(一)世界各国の企業における
W E
p s
の活用とそのメリット
先述した
W E p s
会合における報告等によって公表された︑企業の
W E p s
の活用例やそのメリットに関する具体
例を
︑
W E p s
の七原則に沿って整理してみたい︒
原 則
﹁リーダーシップによるジェンダ
l
平等の促進﹂では︑企業として女性のエンパワメントに引き続き取り組むことを再確認するために
W E p s
に署名した(帝人)︑女性が団結して声をあげることでトップを動かし女性の参
画を促進した(コペル社)という例がある︒
原則二﹁均等な機会︑インクル
l
ジョン︑差別撤廃﹂では︑多様性と女性の参画を支援するため︑多国籍企業のある製鉄会社では︑管理職と女性従業員で構成される特別な委員会を設置し︑女性従業員の要望を明らかにした上で︑
研修やプログラムを実施した(ニュ
l
モント・マイニング社)︒原則三﹁健康︑安全︑暴力からの自由﹂では︑
D
V
被害者が職場に復帰しやすくするために︑就職の紹介を行った(アデコ・スペイン社︑
アグ
パル
社)
︒
原則四﹁教育と研修﹂では︑伝統的に女性が就く仕事と男性が就く仕事を区別していた障壁を取り除くための教育
プロジェクトを通じて︑男女ともに働きやすい企業として若者へのアピールに努めた(エア1フランス社)︑企業の
ジェンダ
l
行動計画を策定し︑女性の少ない職域に女性をインクルl
ジョンするプログラムを導入し︑専門的な研修を行ってキャリアを発展させることで︑女性の従業員が全社員の半数になり︑女性の中間管理職が増え︑さらに従業
員満足度が全体的に向上した(ブラジル銀行)という例がある︒
原則五﹁企業開発︑サプライチェーン︑マーケティングの実務﹂では︑女性起業家の役割拡大を認識し︑特別な金
融サービス︑小額融資貸付︑商業ロlンなどをスタートするとともに︑小規模から中規模のビジネスを運営する女性
起業家のためにオンラインの情報センターを提供した(スタンダードチャータード銀行)︑企業ブランドイメージを
高めることで女性をエンパワメントする企業文化を酪成した(ユニリ
lパ社)︑サプライチェーン・ダイパ!シテ
ィ・プログラムを策定し︑女性とサプライヤ
l
(とくに中小企業)を結び付け︑両者の成長と購買層の拡大によるピ
ジネスの展開をめざした(アルカテル・ル1セント社)︑サプライチェーンとの契約にジェンダl条項を挿入した
(ファイザー社)︑自社の取引金額の大きさを活かしてサプライチェーンに女性が経営する地元企業を巻き込むことに
よって女性とコミュニティ︑女性と経済を結び付けた
( I B M
社)という取組がある︒
原則六一︐コミュニティにおけるリーダーシップと参画﹂では︑女性従業員を採掘現場で大きな責任を伴う担当者に
企業・国迎・政府の協働による人権の実現(大西)
七
法学志林
第一
一
O巻第一号
七‑
配属し︑さらに︑彼女たちが地域コミュニティや住民と接する機会を多く持つことを奨励することによって︑女性が
働くモデルを地域に提示する﹁女性主流化プログラム﹂を実施した(ニュ
l
モン
ト・
マイ
ニン
グ社
)︒
原則七﹁透明性︑成果の測定︑報告﹂では︑
WEps
の七原則を︑企業の男女平等報告書の指針とした(ウエストパック銀行)例がある︒
このように国連
G
C
事務所とU N W o m e n
は ︑WEps
が実際に力強く企業によって実施されるように︑この原則を支持し︑自社で積極的に取り組もうとする企業の
CEO
に対して︑両機関が作成した﹁
CEO
ステ
ート
メン
ト﹂
に署名して︑その前向きな姿勢を明らかにすることを推奨した︒この呼びかけに応じて
CEO
が署名した世界各国の企業は︑二
O
一O
年三月現在で三九社であったが︑同年一O
月末に一一七社に増加した︒署名は徐々に増加し︑二O
一二年四月現在で四一四社となった︒その内訳を本社の所在地別に分類すると︑グローバルは一六社︑アジア・オセ
アフリカは三八社︑北米は一一社︑南米は五三社︑アニアは一七
O
社 ︑
ヨーロッパは一一八社︑中東は八社である︒
署名企業数が多い国は︑順に︑日本が一四七社︑スペインが五一社︑ブラジルが四三社︑南アフリカが三五社である︒
他方︑中国の署名企業はなく︑韓国は一社(ファッション流通企業のソンジュ・グループ)が署名した︒
なお︑国連
G
事務所は︑二
C
OO
九年に世界各国の企業に対して︑
WEps
の七項目に基づいてアンケートを実施し︑国連
G
C
参加企業八三社から回答を得て︑二O
一O
年三月に発表した︒二O
一一年にも同様のアンケートを実施し︑同一一一社から回答を得て︑二
O
一二年三月に取りまとめた︒(二)日本における国連
G
加
C
盟 企 業 の ジ ェ ン ダ
l
・イッシュ!の取組
日本における
WEps
署名企業は︑二O
一二年二月の時点では二九社であったが︑同年三月に急に増加して一四七【表】企業における女性のエンパワメントの取組一世界各国と日本の比較
国連GC事務所アンケート回答企業 日本のGC参加企業
2 0 0 9
年2 0 1 1
年2 0 0 9
年 度2 0 1 1
年 度( 8 3
社) (11 1
社)( 9 9
社) (11 3
社)原則
1 3 1
社( 3 7 . 3 % ) 4 5
社( 4 0 . 5 % ) 1 8
社(18.2%) 3 4
社( 3 0 . 0 % )
原則
2 4 2
社( 5 0 . 6 % ) 6 3
社( 5 6 . 8 % ) 6 3
社( 6 3 . 6 % ) 9 6
社( 8 5 . 0 % )
原則
3 1 6
社(19 . 3 % ) 2 5
社( 2 2 . 5 % ) 3 0
社( 3 0 . 3 % ) 4 1
社( 3 6 . 3 % )
原則
4 4 6
社( 5 5
.4%)5 7
社( 5
1.4%) 2 3
社( 2 3 . 2 % ) 2 4
社( 2
1.2%)
原則
5 1 9
社( 2 2 . 9 % ) 2 3
社( 2 0 . 7 % ) 2 6
ネ土( 2 6 . 3 % ) 2 9
社( 2 5 . 7 % )
原則
6 2 8
社( 3 3 . 7 % ) 3 6
社( 3 2
.4%)3 1
社( 3
1.3%) 4 3
社( 3 8
.1%) 原則7 1 7
社( 2 0 . 5 % ) 2 5
社( 2 2 . 5 % ) 6 1
社( 6
1.6%) 8 6
社( 7 6
.1%) ワーク・ライフ・バランス‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ 8 7社( 8 7 . 9 % ) 9 9
社( 8 7 . 6 % )
企業・国連・政府の協働による人権の実現(大西)
一四
七社
の中
には
︑
c s
R
報告書を毎年公表している企業もあるが︑その大半が大阪府堺市を拠点とする中小・零細企業 社となった︒
であ
り︑
c s
報告書等によってそのジェンダ
R
l・イ
ッシ
ュ
1
の取
組を網羅して把握することは極めて困難となった︒
そこで︑日本の国連
GC
および国連グローバル・コンパクト・ジ
ャパン・ネットワークの参加企業の
CSR
活動におけるジェンダ1
・ィ
ッシ
ュ
l
の取
組を
︑
W E p s
の七原則に沿って整理し︑前述
した国連
GC
事務所アンケート回答企業の取組と比較した︻表︼︒
国連
GC
事務所のアンケートは企業が自ら回答し︑他方︑日本企業
の取組は筆者が企業の
CSR
報告書等により整理したことには留意しなければならないが︑日本企業の特徴として︑育児・介護休業制
度の整備等のワ
l
ク・ライフ・バランスの取組に熱心であり︑また︑男女別デ
l
タを公表する企業が多いといえるだろう︒加えて︑日本企業の先駆的な取組例には︑次のようなものがある
とい
えよ
う︒
原則一では︑
c s
R
報告書のトップコミットメントにてW E p s
署名に言及した企業がある(資生堂︑花王︑シャープ)︒
原則こでは︑女性の活用や女性の活躍促進の必要性を強調したの
七
法学志林
第一
一
O巻第一号
七回
は九六社と多いが︑このうち︑ポジティブ・アクションの数値目標を公表した企業(イオン︑資生堂︑日本製紙グル
ープ
︑
ニコン︑中日本高速道路︑積水化学工業︑
JSR
︑シャープ︑帝人︑T O T O )
があ
る︒
原則三では︑女性が相談しやすいよう女性相談員を配置したり(ロ!ム)︑セクシュアル・ハラスメントやパワ
ー・ハラスメントの相談件数を公表した(セイコー‑エプソン︑
コス
モ石
油︑
ユニ・チャーム︑荏原製作所︑
アス
テ
ラス)例がある︒
原則四では︑全女性社員とその上司が参加するダイパ
l
シティ推進セミナーを全社で開催する例( J
S R
)
があ
る︒
原則五では︑サプライチェーンに対して︑人権への配慮を求め︑その状況を確認したところがある(東芝︑三井物
産︑大阪ガス︑小松製作所︑武田薬品工業)が︑これは女性のエンパワメントに関することに限定されないことに留
窓する必要があろう︒また︑バリューチェーン全体における取組として︑倫理委員会常任委員六人を男女両性で構成
した(武田薬品工業)例がある︒
原則六では︑日本国内のコミュニティに関する取組として︑
NGO
への支援や女子スポーツ振興等がある︒他方︑海外の現地法人の取組も活発で︑たとえば︑アラブ首長国連邦では女性の働き口が少ないとして︑ニ
O
一一年度に女性のインターン五人を受け入れた(横河電機)︑低所得の農業従事者や移民女性等をサポートする社会事業の起業家
として六事業九人を選抜し︑支援した(目立ファウンデーション︑米国)︑タイの工場で従業員の育児支援制度を整
備するとともに社内に授乳室を設置した(カシオ)例があるc
原則七﹁透明性︑測定︑報告﹂では︑第三者意見においてジェンダ
l
・イッシューへの取組への厳しい指摘を公表した(キッコーマン︑三井化学)︒また︑男女別デ
l
タを積極的に公表した例もある︒たとえば︑海外現地法人やグループ企業における︑従業員数や管理職数の男女別デlタの公表(リコl︑日産︑アンリツ︑ニコン︑
DOWA
︑シャ
l
プ)︑男女別の時間外労働比率や有給休暇取得率を公表(損保ジャパン)︑GRI
ガイドライン﹁L
A
一四(
基本
給与の男女比)﹂への応答に﹁性別による給与の区別なし﹂と明記(クレアン︑住友林業)︑労働
CSR
指標による調査の実施(帝人)がある︒
なお
︑
ワーク・ライフ・バランスは別に集計したところ︑日本企業が積極的に取り組んでいることがわかった︒た
とえば︑男性の育児休業取得比率が子どもが生まれた男性社員の四
O%(
旭化成)︑育児休職の最初の一五日間を有
給化して男性一一人が取得した(味の素)︑女性の育休復職率がほぼ一
O O
% (
富士通︑ベネッセ︑電通)の例があ
る (三)中園︑韓国における国連
G
C 加盟企業のジェンダ l
・ イ
ッ シ
ュ
l の
取 組
法政大学国連
G
C
研究センターでは︑日本︑中園︑韓国の三か国における企業のCSR
活動を調査し︑その東アジアの共通規範や基準について︑中国の清華大学経済管理学院ならびに韓国のハンギョレ経済研究所のメンバーととも
に︑共同研究を行った︒前述の日本の国連
G
C
加盟企業のジェンダl
・イ
ッシ
ュ
l
の取組についての研究と同様︑中国チ
l
ムおよび韓国チームは︑W E p s
に基づき︑各々の国の国連
G
C
加盟企業における取組の検討を行った︒中国は︑﹁女性は天の半分を支える﹂という毛沢東の言葉どおり︑女性が働くこと︑仕事と家庭の両立は当然とさ
れている︒この意味では︑男女の雇用機会均等は進んでいるといえよう︒たとえば︑採用︑賃金は男女で平等である
とともに︑女性の健康への配慮や︑母性保護の方策が充実しているcこうした点から︑ジェンダ
l
・イ
ッシ
ュ
l
の問
題は﹁ない﹂とされがちである︒しかし︑管理職への女性の登用率は高くなく︑セクシュアル・ハラスメントへの対
応等は十分ではない︒他方︑鉄鋼メーカーのコスコ社は︑女性従業員の働く権利に高い関心をもち︑夫の転勤にとも
企業・国連・政府の協働による入植の実現(大西)
七五
法学志林
なう勤務地変更を求めることができる︒パソコン・メーカーのレノポ社は︑管理職に対してジェンダ
l
バランスへの第一
一
O
巻第一号七六
配慮を促している︒女性従業員への研修を実施し︑女性の管理職比率も高い︒インターネット検索サイトを運営する
パイドゥ社は︑役員の女性比率を高めた︒今後は︑こうした課題についての取り組みの充実が求められるであろう︒
他方︑韓国は︑日本と同様に﹁
M
字カ
lプ﹂と少子化が深刻な社会問題として認識されている︒女性は結婚︑出産︑
育児をきっかけに退職する率が高く︑かっ︑出生率が低いという問題である︒韓国の二
OO
九年の出生率は一・一五であり︑日本の一・三七を下回り︑
OECD
加盟国の中で最も低い︒そこで︑商社のユl
ハンキンパリl
社は︑社員の出生率を高くすることが企業の社会的責任であるとして取り組んで︑一・八に上界させた︒また︑ロッテ百貨庖や
化粧品会社のアモレ・パシフィック社は︑顧客の大半が女性であることから女性社員の活用を重視し︑女性リーダー
を育成するため既婚女性従業員への研修を実施した︒
なお︑国連グローバル・コンパクト韓国協会(以下︑﹁
GCKN
﹂という︒)は︑二
O
一一年の第三回WEps
会合に参加し︑周年四月に韓国の国連
G
C
加盟企業を対象としたWEps
に関するセミナーを開催した︒同セミナーを契機に︑韓国政府や企業とともに
WEps
を積極的に推進し︑同年一一月にGCKN
が主催した﹁グローバル
CSR
会
議﹂(於・韓国ソウル市)のテ
l
マの一つとされ︑採択された﹁ソウル宣言・行動計画﹂に﹁人権︑WEps
﹂の推進が盛り込まれた︒
このように韓国においても
WEps
が積極的に活用されている︒その背景には︑韓国は深刻な少子化とそれにともなう労働力不足が社会的に問題視され︑それが経済や企業の成長に与える悪影響を逆転させるには女性のエンパワメ
ントが必要であるとの認識が企業に急速に広まったことと︑国連の漉基文事務総長が
WEps
の第三回および第四回会合に熱心に参加したこと等があるといえよう︒
おわりに
この
よう
に︑
W E p s
を活用すると︑各国の企業の取組の特色や傾向はもちろん︑企業が女性のエンパワメントに
関する自社の取組を評価・点検する際に︑積極的に評価できる面と︑国際水準からみた場合にどういう取り組みが不
十分か︑またどういった内容を強化すればより一層女性のエンパワメントを進めることができるのかといった面を計
る物差しにも適用できることが明らかになった︒他方︑
W E p s
に改めて署名をするまでもなく︑従前より男女平等
に取り組んでおり今後も同様に進めていくという企業もあるが︑署名をしてトップの方針を改めて表明することで︑
国際的な人権水準の実現︑進捗状況の測定︑好事例の共有等のメリットがあると恩われる︒さらに︑各々の企業だけ
ではなく︑国連および政府等のステ
l
クホルダーにおいても︑その取組を比較・検討する際に有用なツ!ルであることがわかった︒
さらに︑これまでの検討から︑企業が
W E p s
の内容を経営に位置づける意義は次の三点に整理できるだろう︒
第一に︑男女平等の推進によるビジネス発展の積極的提唱である︒
W E p s
は︑企業の発展︑サプライチェーン︑
マーケティング戦略において女性のエンバワメントを促進する重要性を説いている︒しかし︑実際の取組はまだまだ
不十分である︒また︑
W E p s
は︑企業における男女平等の推進は︑差別を撤廃するとともにインクルlジョン(社
会的包摂)が必要であるとしている︒これは︑平等の推進のためには単に均等な機会を与えればよい︑という形式的
平等やノ
l
マラ
イゼ
l
ションの達成だけでは不十分で︑性差別や障害︑国籍等により差別されている人々を社会に巻き込んで包摂することで平等を実現し︑さらにはそうした人々の経済的な活躍の場を広げることでビジネスも発展さ
企業・国迎・政府の協働による人権の実現(大西)
七七
法 学 志 林 第 二
O
巻第一号七八せようとする考え方である︒
第二
に︑
W E p s
では︑実効的に男女平等を進めている企業のビジネスを発展させるため︑ベンチマークを作成し
て︑企業の方針や活動の成果を測定し︑評価し︑報告・公表することが重視される︒しかし︑こうした活動には︑負
担を感じる企業もあるだろう︒他方︑これは自社の取組の進捗状況および他社との比較をする指標となるだけではな
く︑新しい︑思い切った取組の実践の可能性を示し︑企業にとってプラスになるという見方もある︒とくに︑日本と
韓国の国連
GC
参加企業では︑共通して︑第一子出産による離職率の高さと︑指導的立場にある女性比率の低さを問
題視する︒その解決のためには︑
W E p s
が主張するように︑結婚︑育児︑介護を理由とした退職者をなくして︑男
女とも働き続けられるようにすることが重要である︒こうした課題には企業もこれまでも取り組んでいるが︑効果的
で思い切った対応は十分にとれているとはいえないだろう︒企業活動のあり方︑組織編成のあり方そのものの大胆な
見直しとともに実施することが必要である︒
W E p s
はそのための具体的な実践の参考になる︒
第三に︑国際社会に向けたアピールである︒企業の非財務的な面として︑女性のエンパワメントやダイパ
l
シテ
ィ
の推進を企業価値として評価する取組が広がっている︒たとえば︑
c s
R
に関する自主的な指標の一つである﹁GR
ーガイドライン﹂は︑二
O
一一年三月にバージョンが﹁三・O
﹂からコニ・こに改訂された際に︑男女平等に関す
る条項を追加した︒また︑二
O
一O
年一一月に公表された﹁ISO
二六0 0
0
﹂は︑組織の社会的責任の重要な要素として︑﹁組織のマネジメントでの男女の参画︑雇用と報酬の平等︑活動の平等︑コミュニティ開発での配慮﹂およ
び﹁ステ
1
クホルダー参加における男女平等の重要性﹂を指摘した︒なお︑野村詮券は︑男女賃金差別事件の控訴審において原告に有利な内容で和解したが︑その背景にはストックホルムの
SRI(
社会的責任投資)の投資適格情報会社が野村ホlルデインダスを投資適格リストから除外したので︑その後に同社が平等な雇用機会と働きやすい職場
環境等をうたった倫理規定を制定し︑同投資適格リストに復帰したとの見解がある︒このように︑女性のエンパワメ
ントを推進する企業は︑よい投資先として国際社会から評価される傾向があり︑企業が
W E p s
に基づきビジネスを
展開することは︑国際社会およびマーケットへの効果的な企業アピールとなる︒
加えて︑企業が
W E p s
を自らの規範としてそのビジネスをさらに発展させること︑ならびに︑多くの企業におい
て自主的に取り組まれている男女平等推進の施策・事例を具体的に取り上げて
W E p s
といった適切な指標を用いて
考察することは︑圏内でも国際的にも︑人権の実現および経済的な男女平等の具体的な推進に貢献すると恩われる︒
その内容は︑日本においては︑第三次男女共同参画基本計画の方向性とも合致しており︑すでに先取した企業もある︒
すな
わち
︑
W E p s
は︑企業の自主的な取組の原別であるが︑企業︑国連︑政府が協働して女性のエンパワメントを
促進する際にも基軸となる︑重要な視座を提供するのである︒
*本研究は︑二
OO
九年度1
二O
一一年度の科学研究費補助金基盤研究( B
)
﹁国連グローバル・コンパクトの諜
題上東アジアにおける実践的意義を中心に﹂(研究代表者・江橋崇︑課題番号二一三三
0 0
0
七)の成果の一部である
国連
GC
の詳細は︑江橋崇編﹃グローバル・コンパクトの新展開﹄(法政大学出版会︑ニ
OO
八年)︑同﹃企業の社会的責任経営││CSRとグローバル・コンパクトの可能性﹄(法政大学出版会︑二OO
九年)︑同﹃東アジアのCSR11国連グローバル・コンパクトの新たなチャレンジ﹄(法政大学出版会︑二
O
一一
年)
︒
(2
)
法政大学現代法研究所国連
GC
研究センターはこれまでの四回の会合を通じて参加した︒第一回目と第二回目の会合は︑同センタ
ーがアジアからの唯一の参茄者であった︒第三回目は︑日本から研究者二名およびアメリカ現地法人の八名が参加し︑日本政府国連代 ( l)
企業・国連・政府の協働による人権の実現(大西)
七九
趨緋~#棋110柑鞍|酢くO
*同話1<若g,~~@~...)~o掠E回rm~'田*~ミ必信~~制11柑~吋bトス=-令部費:出〈会..lI11刊誌$~...)~。
(∞) 圃増。υ静態慮。叫干、今、・ムhttp://www.unglobalcompact.org/docs/issucs̲doclhuman̲rights/WEPs/WEPS̲JPN.pdf
主主将,1<国産車~tE!l-IQ時:::>Z~oEωロ田*働欝}韮~剖l~'!æ:li!正~1{tI
r
相主!:iQH入てひ-...入.L.Q~宮Q課事」ベJ髭Jどる,1101 1砕!1献に...)~i診凶仏ωt10 1 11叶垣J会小「判記QH入之トー弐入4睡冨」ベJ...)~。
(噌)http://www.unglobalcompact.org/Tssues/human̲rights/5March2009̲rnain.html
(回)http://www.unglobalcompact.org/Issues/human̲rights/5March2009̲ Women̲Principles.html
(∞) http://www.unglobalcompact.org/NewsAndEvents/2010̲Lcadcrs̲Summit/index.html
(r‑) 判記Q=--~ヘーぶトhQ想起'相主!i!1:f.定-þ時時-RG~器~'$It件盤景~\l-降昇華螺ど判記Q~"間足当期'何割Q邸時!!;~H入てひ弐入.L.'
~..lI~き時翠il!l~士、時駅何時給Q珊蛍Q同陣田下J~時。;:::>Z~Oeωロ「江J~:"\m入~~吋blOOIIIh口、1ト斗J(1101 11叶1
m::
1 1151由)http://www.unwomen.org/wp‑contcnt/uploads/2011101/VisionAndl00DayActionPlan̲en.pdf
(∞) 国掴曙トト「溜抵説怯ベJ
r
領土包¥圃盤:出J.J~輯ベJ溜高綱1111!1lr'(110111叶)111111ぽ01<閣誕車1r
、ローてえどとよ持主:‑tQ<aI輯Q(4:出斗Q坦坦下士J<4:出信号~-tJgr砂(110い!尉.~tJ;:栴担)。
( c::n ) http://www.unglobalcompacL.org/doC'̲c;/issues̲doc/human̲rights/WEPs̲ CEO ̲ Statcment̲of̲Support ̲ Signatories.pdf
(宮)http://www .unglobalcompact.org/docs/issues̲ doc/human̲rights/Resources/Companies ̲Lcading̲ the ̲ W ay. pdf
ト~>.ト!J*~主主~tQ樹事業手J~'田*Q権-<.'モト国QUO∞UO:;l話'話回Q∞出、会-h石田神_)~。
(:::) EBASHI Takashi, LEE Won Jae and
Y
ANG Bin cd., ''Being Responsible in Bαst Asiα‑CSR Practices 01 Global CompαctMembers in Chinα. Japan and Korea‑", Hosei University Press, 2011
(包)主堕料館1
r
剣奇襲lヒ寄1'(1ト‑..l...入.L.CCorporate Action Statement)J (制10腎田)撫1,野〈嬰'判記QH入ミト弐入ムI!!S~
様々主'圃摺Gr-<.輯QP!摺'齢制'事手権れふ-41:'一、」申齢制_)'ミJ~)>.tfκ!1~t:-時-<'!I!骨制G~摺申岩輔が帰。判記Ql担問奮
起を争体J..y~'相主自体』吋心!哩二君主当!1肱摺-I't1キJ時リベ)!l~!;;'I'判記QH入て1:'...入ムI!!S~Q製鋼申制4呼称時。
(包)..y~剤駅224ミ「寵」ニ斑世静Q高摺~回器10-揮富ふ入もおか4一樹輔ベJ1ES'fベJ悟暗記4].t1{tli十一I:'-:L・!J-J(同田主主)樹事業‑u組事
摺巴砂(1100同時)1(<回。
(ヱ).g:~~1ilR制球E鶴田li'í何割QH入てひ-...入ιms~J報I![~\園田11酔(110111社)斗』図。
︹追記︺二
O
一二年五月に︑中川正春男女共同参画担当大臣と古川元久国家戦略担当大臣を共同議長とする﹁女性の活臨による経済活性化を推進する関係閣僚会議﹂が設置された︒閉会議は同六月に﹁女性の活躍促進による経済活性化行動計画﹂を策定した︒
同計画は︑経済社会で女性の活闘を促進することは減少する生産年齢人口を補うという効果にとどまらず︑新しい発想によるイノベ
ーションを促し︑さまざまな分野で経済を活性化させる力となるとの認識のもとで作成された︒国際的な取組とも連携して企業のトッ
プ等男性に向けた広報を政府が展開したり︑消費者︑就職希望者︑市場関係者等のさまざまなステlクホルダーに対し︑企業の女性の 活躍状況の可視化を促進する取組を﹁見える化﹂するための総合プランを二
O
一二年度中に策定したりすることとされた︒具体的には︑経営トップの方針および企業の女性活躍の状況や向上のための取組について︑企業の情報開示を促進する新しい仕組みを検討する等で
ある︒同計画の考え方や具体化するための方策は︑
WE ps
と共通するものであり︑企業・国迎・政府の協働による人権実現の取組の
ますますの充実と展開が期待される︒
他方︑国迎グローバル・コンパクト事務所と
UN Wo me
nは︑同年六月に︑企業による取組とその進展の状況をWEpsに基づい
て明らかにするとともに︑企業同士および他のさまざまなステ
l
クホルダーをつないで実施を促進しようする仕組みを開始した
(FE
句い
と毛
市匂
ユロ
己主
ω︒
・ ︒吋 側
己 ︒
企業・国迎・政府の協働による人権の実現(大西)
1¥