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数学 的活動 に視点 をあてた授業構成 の研究

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(1)

BulletinofFacultyofEducation,NagasakiUniversity:Curriculum andTeachingNo.42(2005)25‑41

数学 的活動 に視点 をあてた授業構成 の研究

〜授業の相 と授業評価の観点か ら〜

平岡 賢治*・酒井 一男* *

(平成

1 6

1 0

月2

9

日受理)

A St ud yo fCo ns t r uc t i o no fLes s o nso fMa t he ma t i c s i nwhi c ht heAs pec ti sAppl i edt oMa t he ma t i c a lAc t i vi t i es

‑Fr o m t hevi e w o fAs s es me nta ndAs pe c to fLes s o ns‑

Ke n j iHI RAOK

A*

・Ka z uoSAK朋H ( Re c e i v e dOc t o b e r2 9 ,2 0 0 4 )

1 は じめに

21

世紀を迎え,生徒をめ ぐる状況や社会の変化 に対す る教育の様々な課題 に対応 してい くために,新 しい教育の在 り方が問われ,教育改革が進め られている また, これか らの 社会 を担 う児童 ・生徒 が主体的,創造的 に生 きてい くため,一人 ひ とりの児童 ・生徒 に

「確 か な学力」 を身 に付 ける ことが重要 であ る (文部省,

1 9 9 9 a

, 文部科学省,

2 0 0 2

,

2 0 0 3 )

。特 に,中学校数学科では,次の

2

点が強調 されている。 (文部省

,1 9 9 9 b,p. 2 ‑ 3 )

(ア) 児童 ・生徒の創造性の基礎を培 うため,例えば,多面的にものを見 る力や論理的に

考える力などを身に付 けられ るようにす ること

(イ) 実生活 と数学 との関連 を意識 し,様々な 日常事象の中に不思議 さを感 じ取 り, これ を積極的に解明 してい く態度を育て るよ うにす るため, 自ら課題を見っけ,主体的に 問題 を解決 してい く活動が重要

このように,学校教育では,児童 ・生徒が主体的,創造的に生 きる力を身 に付 けること が重要である 筆者達 は,変化の激 しい社会や リカ レン ト社会 などを生 きてい く生徒が, 主体的,創造的に生 きてい くようにす ること, また将来の社会や資源が乏 しいわが国では, 諸外国以上 に学校教育で育成す ることが必要であると考えている。

一方,筆者達 はこれまでの経験か ら,生徒が様々な活動に対 して受動的な傾向が強 くなっ ていることを感 じている。 このことは,情報化社会や少子化などの社会的環境 もあるが, 学校教育 において教師が指示 しす ぎることも 1つの原因であると考えている 特 に,授業 では受動的な傾向が強 く,小学校 ・中学校を通 して,知識や技能を伝達す るだけの教え込 みによる授業が多 いことも大 きな要因であろう この解決には,授業を児童 ・生徒 にとっ て主体的 ・創造的な学 びの場 にす ることが重要である 特 に,算数 ・数学教育では,身近 な事象の数学化や,具体的な操作 ・実験か らの数学化を通 して,数学 の創造や認識を高め

*長崎大学教育学部 **長崎県西彼杵郡長与町立長与第二中学校

(2)

26 長崎大学教育学部紀要 教科教育学

No. 4 4( 2 0 0 5

年)

る数学的活動 の経験, さ らに, この活動 を通 して驚 きや感動 の体験,数学の面 白さを体感 す ることが必要である このためには,主体的に学ぶ意欲 を高める問題解決的学習 の実践 を通 した授業改善が大切であると考え る

実際に,授業改善 を試みている教師は少 な くない。筆者 の一人 も,身近 な事象や操作的 な活動 を利用 した問題解決的学習 に取 り組んだ り, いろいろな実践例を授業 に取 り入れて きた。 しか し, これ らは十分満足 い くものではな く,課題 も多 く残 った。 これまでの授業 実践の成果や課題 をまとめると次のよ うになる

情意的側面

成果 :生徒 は楽 しそ うに,興味 ・関心 を示 し,積極的に学習 に取 り組むよ うになる ま た,生徒 に数学 の有用性 を感 じさせ ることがで きる

課題 :操作的な活動 の操作 を楽 しませ ることはで きるが, その後 の数学的な内容 になる と受動的 になることが多 く,教師主導で授業 を進め るよ うになる。

認知的側面

成果 :生徒が 自らの力で数学的な法則や性質 などを見出 した場合 は,その理解の定着が 図れ る。 また,数学的な見方や考え方 も高 め られ る

課題 :身近 な事象 を数学化す る段階が,教師にとって も,学習す る生徒 にとって も,お 互 いに難 しく感 じる この ことが答 えを求 めればよいとい う状況を生み,数学的 知識 の意味の理解が不十分 になることが多 い。

教育課程的側面

課題 :時間内に授業 のね らいが達成で きないことが多 く,授業が進 まない。 その結果, 単元の導入や章末のそれぞれ1時間程度の実施 になる

これ らの課題 は身近 な事象の数学化や操作的な活動,問題解決学習 による数学的な知識 の理解が,効果的 に展開 されて いない ことに原因があ ると考 えている さ らに,教 師が

「数学 を創造 し,認識 を高 めていけるよ うな数学的活動」 の理解 を十分で きていない こと に原因があると考えている

筆者 の一人 は,中学校数学の選択教科で実施 したグラフの移動 と変換の授業 について, 生徒 の数学的な考 え方 を考察 した (酒井,

2 0 0 0 )

。 この研究で は,生徒が数学的な考 え方 について十分理解で きていない実態が明 らかにな り,授業 において数学的な考え方 を育て る方策 の必要性 を強 く感 じた。 この実践的研究か ら,次の課題が明 らかにな った。

授業 を生徒 にとって主体的 ・創造的な学 びの場 にす るための方策

問題解決的学習 による授業 の改善

身近 な事象や具体的な操作 を もとに,新 しい知識や数学的な見方や考え方を身 に付 ける数学的活動 の研究

身近 な事象 に関わ る問題 に数学的な知識 ・技能 ・見方や考え方 を活用す る能力 を高 める授業 の研究

本研究で は,「授業 を生徒 にとって主体的 ・創造的な学 びの場 にす る」観点 に立 ち,吹 の

5

点 を研究 目的 として設定す る。

(1) 数学 的活動 を捉 え る視点 を明 らか にす るために,数学 的活動 を誘発す る要因 を考察

(3)

平岡賢治 ・酒井一男 :数学的活動 に視点をあてた授業構成の研究〜授業の相 と授業評価の観点か ら〜 27

す る

( 2 )

授業 にお け る問題解決 の相 を明 らか に し, 問題解決 的学習 によ る授業構成 につ いて 考察す る。

(3) 評価 に関す る基本的な考 え方 を考察 し,授業評価 の視点 を明 らか にす る

( 4 )

実践的事例研究 を行 い,授業改善 のための方策 を明 らか にす る

( 5 )

数学的活動 に視点 を当てた問題解決的学習 による授業構成 の方法 を構築す る

2

数学的活動 を誘発する要因

中原

( 2 0 0 0 )

は,算数 ・数学 的活動 を 『子 ど もが主体的 に取 り組 む,算数 や数学 をっ く り出す活動』 と述べてい る この視点 に立 って,本節 で は 「授業 を生徒 にとって主体的 ・ 創造的 な学 びの場 にす る」 ための数学的活動 につ いて考察す る

(1) 学習指導要領解説 の算数 的 ・数学 的活動

小学校学習指導要領解説算数編 (文部省,

1 9 9 9 C )

, 中学校学習指導要領解説数学編 (文 部省,

1 9 9 9 b)

,高等学校学習指導要領解説数学編 (文部省

,1 9 9 9 d)

に述べ られて い る算 数 的 ・数学的活動 は,小学校 で は外的 な活動, 中学校で は外的な活動 と内的 な活動 の相互 的 ・循環的活動,高等学校 で は内的 な活動 を中心 と して捉 えている。 これ は,児童 ・生徒 の発達段階を考慮 した ものであ り,各学校で扱 う数学的内容 と密接 に関係 している。 また, 基本的 に算数 的 ・数学 的活動 の具体的活動 内容 は,次 のよ うにま とめ ることがで きる。

観察,操作,実験 な どの数理 を ともな う活動 やその活動 を振 り返 り,身近 な事象 を数 学化す る活動

既習 の知識 や数学的な見方 ・考 え方 を活用 して考察 ・処理 し,新 たな知識 を獲得す る 活動

新 しく獲得 した知識 や数学 的な見方 や考 え方 を身近 な事象 に活用す る活動

問題 を解決す る活動 やそれを振 り返 り,発展的 に考 えた り,一般化す る活動 さ らに, これ らの活動 は,大 き く分類す ると次 の

2

つの側面 に分 け られ る

(7) 身近 な事象 を数学化 し,数学 の世界で考察 ・処理 し, さ らに身近 な事象 に活用す る とい う側面

(イ) 問題 を解決 し, それを振 り返 り,発展 させ た り,一般化 した りす る側面

( 2 )

数学的活動 の先行研究

(7)の側 面 の先 行 研 究 と して,

H. Fr e ude nt hal ( 1 97 3, 1 9 6 8 )

の数 学 的 活 動 ,

A. Tr e f f e r s ( 1 9 87 )

の数学化, 島田

( 1 97 7 )

の数学 的活動,

S. Kr ul i k( 1 97 7 )

4

つの段階 の問題解決 のス ト

ラテ ジーが,(7)と(イ)の両方 の側面 と して,大谷

( 2 0 0 2 )

の数学 的活動 と社会数学 的活動が, (イ)の側面 と して,

G. Pol ya( 1 9 5 4 )

の問題解決 のス トラテ ジーが考 え られ る。

以下 で は, 島田

( 1 97 7 )

の数学 的活動 (図

1

) との関連性 を中心 に,先行研究 を考察 し, 学習指導要領 に述 べ られて い る数学 的活動 との関連性 につ いて考察 す る

。・ S. Kr ul i k

4

つの段階 の問題解決 のス トラテ ジーを詳 しく表 し, さ らに数学 の世界 の発展的な活動 まで 表 しているのが島田の数学的活動 であ ると考 え る 大谷 の分析 を参考 に, 島田の数学的活 動 と

H. Fr e ude nt hal

の数学 的活動 や

A. Tr e f f e r s

の数学化 の関係 を分析 す ると,次 のよ う

(4)

28 長崎大学教育学部紀要 教科教育学 No.44(2005年)

にな る

島 田 の現 実 の世 界 の問題 に条件 ・仮 説 を設 定 し, さ らに抽 象 化 , 理 想 化 あ るい は簡単 化 して数 学 の こ とば で い いか え る 活 動 (f‑ g)は,

H. Fr e ude nt hal

『現 実 の 数 学 化 』 に 対 応 し, ま た ,

A. Tr e f f e r s

の 『水 平 的数 学 化 』 に も対 応 して い る また, 島 田 の数 学 の世 界 にお け る類 例 を一 般 化 し体 系 化 す る活 動 , 数 学 の世 界 の 内部 の統 一 し向上 を求 めて現 実 の 世 界 の 役 割 を 果 た す 活 動 は ,

H. Fr e ude nt ha l

の 『数 学 の数 学 化 』 に対 応 して い る と考 え られ る さ ら に ,

A. Tr e f f e r s

の 『鉛 直 的数 学 化 』 は島 田の

数学 の世 界 の内部 にお け る一連 の過程 に対応 して い る と考 え られ る

大 谷 は, 島 田 の数学 的活 動 を準 拠枠 と して捉 え, 大 局 的視 野 で は

H. Fr e ude nt hal

の数 学 的活動 を もとに検討 し,局所 的視 野 で は,

G. Pol ya

の問題解 決 を もとに検討 して い る。

す なわ ち, これ らの数学 的活動 の関係 を結 びっ けて考察 して い るのが,大谷 の数学 的活動 と社 会 数学 的活動 で あ る また, 島 田 の数 学 的活動 と

G. Pol ya

の問題 解 決 の相 の関係 に つ いて考察 し, 問題解 決 の過程 と数学 的活動 の全体 的過程 は実質 的 には重 な り合 って い る と して い る しか し, 筆者達 は, これ まで の経験 か ら島 田の数学 的活動 は単元 を1つ の代 表 とす る長 期 的 な もの と して捉 え,

G. Pol ya

の問題解 決 の相 は個 別 の問題 に関す る解 決過 程 と捉 え る と, 島 田の数学 的活動 の一部分 にな る と考 えて い る また, 島 田が 「実 際 の授 業 にあ って は, その段 階 に応 じて, この全過程 の一部 を取 り上 げて い る と見 られ る」 と述 べて い るよ うに, 島 田の数学 的活動 の一部 を取 り上 げて い るのが授業 で あ り,授業 の一部 が

G. Pol ya

の問題 解 決 の相 と考 え る ことが で き る こ こで, 島 田の数学 的活動 と学 習 指 導要 領 の解説 に述 べ られて い る数学 的活動 の具体 的 な内容 を もとに整理 す る と,次 の よ う にな る

現実 の世 界 の問題 を,現 実 の世 界 の経験 か ら現実 の世界 の知 識 や数学 の既 習 の知 識 を も とに理解 し,抽象化 ,理想化 あ るい は簡単化 して数学化 して い く そ して,数学化 した数 学 的 モデル に考 察 の対 象 を転化 し,数学 の理論, す なわ ち既習 の知 識 や演梓 な どの数学 的 な見方 や考 え方 を活用 して,考察 した り,処理 した りす る。 既習 の知識 だ けで は うま く進 まな い場 合 には,新理論 の開発, す なわ ち新 しい知識 を獲得 す る必要 が あ る。 また,類例 な どが あ る場 合 には, その類例 に考察 の対象 を転化 させ,一般化 な どの数学 的 な見方 や考 え方 を活用 して考察 し,一般理論 や アル ゴ リズムな どの新 しい知識 を獲得 す る さ らに, 新 しく獲得 した知識 を活用 す る現実 の世 界 の問題 を数学 的 な見方 や考 え方 を活用 して考察

し,現実 の世 界 の数学 を理解 す る

(3) 数学 的活動 を誘発 す る要 因

学 習指 導要 領 の解 説 に は, 「算 数 ・数学 科 の 目標 は算 数 ・数 学 的活 動 を通 して達 成 され

(5)

平岡賢治 ・酒井一男 :数学的活動 に視点 をあてた授業構成 の研究〜授業の相 と授業評価の観点か ら〜 29

るもの」 と述べ られている。各学校種 の 目標 は, それぞれの発達段階 に応 じて定 め られて いるが,基本的にはほとん どの部分で共通 している また,学習指導要領の改善の基本方 針 (文部省,

1 9 9 9 b)

「(ア)創造性 の基礎 を培 うため, ・・・・。(イ)実生活 と数学 との関係 を意 識 し, ・・・・主体的に問題 を解決 してい く活動 の重要性 を述べている」 とあ り,数学的活動

を通 して,次の4項 目を身 に付 けた り,高 めた り,育て ることを目標 に している

基礎 ・基本的な知識や技能 の獲得

数学的な見方や考え方 の育成 とその能力の高揚

創造性 の基礎の育成

数学的な知識や技能,数学的な表現 ・処理,創造性の基礎 となる資質や能力,数学 的な見方や考 え方 などの数学 を積極的に活用す る態度 の育成

『創造性 の基礎 の育成』 に関 しては,中央教育審議会 における算数 ・数学科 (小学校, 中学校,高等学校) の改善 の基本方針で,「基礎的 ・基本的な知識 ・技能 を基 に して多面 的に ものを見 る力や論理的 に考 え る力など」 と述べている 小学校学習指導要領解説算数 編 (文部省,

1 9 9 9 C )

の教科 目標 の説 明 には,既習事項 を活用 しなが ら新 しい知識 や方法 を生み出 してい く創造的,発展的な学習 の重要性が述べ られている 中学校学習指導要領 解説数学編 (文部省,

1 9 9 9 b)

の教科 目標 の説 明で は, 「単 にで き上 が った数学 を知 るの でな く,事象 を観察 して法則 を見っ けて事柄 の性質 を明 らかに した り,具体的な操作や実 験 を試み ることを通 して数学的内容 を帰納 した りして,数学 を創造 し発展 させ る活動 を通 して数学 を学ぶ ことを経験 させ, ・・・・ことが大切である」,高等学校学習指導要領数学編 (文部省

,1 9 9 9 d)

の改訂 の趣 旨で は,「論理 的思考力,想像力及 び直観力な どの創造性 の 基礎」 と述べて いる また,「ほか に も創造性 の基礎 と して重要 な ことが幾っかある 学 習 に興味 ・関心 を もち,数学的 に考察 ・処理す る力 もその一つである 例えば,興味 ・関 心、を もって試行錯誤 を行 い,新 しい知識や技能 などを見 出す。次 に, それを既習事項 など と比較 して体系的に整理 し, よ り新 しい ものを創造 してい く過程 には,数学的に考察 し処 理す る力が必要 である それには,数学的な見方や考 え方 の認識や数学 の方法の理解 など が重要 な もの となる さ らにまた,数学的な表現 ・処理 の美 しさや数学的な見方や考え方 のよさを認識す る豊かな感性 なども創造性の基礎 と して重要 である。」 と述べている

このよ うに 『創造性 の基礎 の育成』 は,生徒の興味 ・関心 などの情意的な面,基礎的 ・ 基本的な既習の知識や技能 の活用, そ して帰納的推論や演梓的推論 などの数学的な見方や 考 え方 の活用 を通 して,新 しい知識や方法 などを生み出 し,創 り出 してい く活動 と捉え る ことがで きる 筆者達 は, この 「創造性の基礎 の育成」 を数学 を活用 して考察の対象 を新 しい ものに転化 させ, さ らに新 しい ものを創 り出 してい く活動 と捉え ると同時 に,数学 を 創造 の手段 と して活用す る活動 と考えている

ところで,

K. De v l i n( 2 0 0 0 )

は,数学的活動 を通 して,身 に付 けた り,高 めた り,育て る ものを次 のよ うに述べている

「数学 には次の4つの側面があ り,

1.計算,形式的推論,問題解決 と しての数学

2.

知 るための方法 と しての数学

3.

創造の手段 と しての数学

4.

数学 の応用

数学教育 はこれ らすべての側面 を示 さなければいけない。」

(6)

3 0

長崎大学教育学部紀要 教科教育学

No. 4 4( 2 0 0 5

年)

この

4

つの側面を,学習指導要領 との対比で考えると,次の

4

項 目

1.計算,形式的推論,問題解決 としての数学 ・・・基礎 ・基本的な知識や技能の獲得

2.

知 るための方法 としての数学 ・・・数学的な見方や考え方の育成 とその能力の高揚

3.

創造 の手段 としての数学 ・・・創造性の基礎の育成

4.

数学の応用 ・・・数学的な知識や技能,数学的な表現 ・処理,創造性の基礎 となる 資質や能力,数学的な見方や考え方 などの数学を積極的に活用す

る態度の育成 と,それぞれ対応 させ ることがで きる

見方 を変えると, これ ら

4

項 目を身 に付 けた り,高めた り,育て るために数学的活動を 行 うと考えてよい。すなわち, これ ら4項 目が数学的活動を誘発 していると捉えることが でき,筆者達 は, これ らを数学的活動を誘発す る要因 と考える

先 にまとめた数学的活動を,数学的活動 を通 して身 に付 けた り,高めたた り,育てる

4

項 目で捉えると次のようになる

現実の世界の問題を, 日常の経験や知識 と算数 ・数学 を学習す ることによって身 につけ た既習の知識 (既習の知識を活用することを通 してさらに知識の獲得を図る)を もとに理 解 (身近な事象に活用されている数学的な知識や考え方を理解 し,数学を活用する) し, 抽象化,理想化あるいは簡単化 して数学化 (事象を数学的な見方や考え方を用い,考察 ・ 処理すること)す る。数学化 によって作 られた数学的モデルを考察の対象 に転化 (事象の 見方を変えることによって,新 しい対象へ転化 させ,創造性の基礎を培 う) し,数学的な 味方 ・考え方や数学的方法の活用など既習の知識を活用 して,考察 。処理す る 既習の知 識だけではうま く進 まない場合 には,新 たな考え方や方法を導入 (新 しい知識を獲得する こと)す る必要がある 類例などがある場合 には,その類例 に考察の対象を転化 させ,一 般化などの数学的な見方や考え方 によ り,数学的な本質 を考察 した り, アルゴ リズムなど の新 たな数学的な見方や考え方 などの新 しい知識を獲得す る さらに,新 しく獲得 した知 識 を現実の世界の問題 に適応す ることによ り,数学的な見方や考え方の活用や現実の世界 の数学 を理解す ることが可能 になる

以上の ことか ら,筆者達 は数学的活動 を誘発す るものとして,次の

4

要因を提案す る

知識の獲得

・既習の知識 (日常生活 における過去の経験 も含む)を活用す ること

・新 しい知識を獲得す ること

数学的な考え方

・事象を数学的な見方や考え方を用い,考察 ・処理す ること

創造性の基礎

・事象の見方を変えることによって,考える対象を新たな対象へ転化 させ ること

数学の活用

・身近 な事象 (他教科の題材 も含む) に活用 されている数学的な知識や考え方 を理解 す ること

筆者達 は, これまでの経験か ら,授業 における生徒一人 ひとりの数学的活動 は, これ ら 4要因が相互 に関係 しなが ら行われるもの と考えている。身近 な事象の中にある数学を, 生徒がそれまでに獲得 した既習の知識や数学的な考え方を用いて,その事象を理解 したり,

(7)

平岡賢治 ・酒井一男 :数学的活動 に視点 をあてた授業構成の研究〜授業の相 と授業評価の観点か ら〜 31

そ こに潜 む数学 を見 出す活動 で あ る 既習 の知識 を活用 す るため に数学 的 な考 え方 を 用 いて考察 ・処理 した り, 逆 に数学 的 な考 え方 を用 いた考察 ・処理 をす るため に既 習 の知 識 を活用 す る 新 しい知識 を獲得 す る ため には数学 的 な考 え方 が必要 で あ る ま た, これ らによ って, 思考 の対象 が転化 さ れ, 創造性 の基礎 を培 い, さ らに他 の事象 への活用 につなが る

筆者達 が行 った中学校第

1

学年 の方程式 の導 入 で等式 を生 み 出 して い く学 習 で は,

上皿てんびんの左右の皿 に載せ られているものの

2

つの重 さ (数量)の関係 を,文字式で 学習 した既習の知識 を活用 (知識 の獲得) して,記号化 (数学的な考え方) し,等式 を創 り出 し,上皿てんびんの左右 の皿 に載せ られているものの重 さの関係か ら等式へ考察 の対 象 を転化 (創造性 の基礎) し,上皿てんびんに活用 されている数学 を理解 (数学の活用) す る

このよ うに, これ ら

4

つの要因 は相互 に関係 していることか ら,筆者達 は図

2

のよ うな 四面体 ダイヤグラムで表 している (平岡,

2 0 0 4 )

0

3

授業構成の考え方

( 1 )

教師の役割

大村 と苅谷夫妻

( 2 0 0 3 )

, I

教 え ることの復権』の中で,「最近 の教師は教 えな くな っ た」 とい う課題 を提示 し,大村 の実践 などを対話形式でまとめ,今 日の教育 に一石 を投 じ ている。 その中で,苅谷 は 「教え る目標 と手段 と しての学習活動 との関係 をはっきりと見 通せないために,教師 は教えな くなる そ こには,次の二つの タイプの 「教えない」教師 が いる ひとつ は,生徒の 自主性 にまかせ ることが 「自ら学 び, 自ら考え る」教育 になる と見 なす教師であ り,二番 目は,知識 の伝達 に終始す ることで,教 えた ことになると思 っ ている教師である」 と教 えない教師 について述べている

数学的活動 を誘発す る4要因 は,数学的活動 を通 して身 に付 けた り,高めた り,育て る もので もあ った り, これ ら4要因 は苅谷が言 う 「教え る目標」 と考え ることがで きる。 い いかえ ると,数学的活動 (数学) をで きるよ うにす ることが教え る目標である。教え る方 法 は授業構成 の方法 となる 筆者達 は,教授 ・学習法 として問題解決的学習 を取 り入れ る ことで,「生徒 にとって主体的 ・創造的な学 びの場」 に授業 を改善 して い くことを考 えて いる しか し,現場教師にとって,問題解決的学習 はい くつかの課題 を授業で扱 うとき, それぞれにつ いて問題解決学習 を考え るなどの課題があ り,十分満足 い くもので はなか っ た。 これまでに実践 していた問題解決的学習 による授業 は,

1

単位時間を

1

つの問題解決 の過程 で構成 して いた。具体的 には,「問題 を把握す る‑見通 しを立 て る‑解決 を実行す る‑考 えを深 める‑全体 を振 り返 りまとめ る」 とい う問題解決の過程で授業 を構成す るこ とが多か った。 そ こで,問題及 び思考 の レベルが上昇 してい くよ うな問題解決的学習 によ る授業 の構成 を考え る この学習 における教師の役割 は,次の

3

つに整理で きると考えて

(8)

3 2

長崎大学教育学部紀要 教科教育学

No . 4 4( 2 0 0 5

年)

いる これ らの教師の役割 は,授業や授業前の教師の活動である

① 授業 をデザイ ンし,生徒の学習の場 を設定す る

② 生徒が数学的活動 によ り問題 を解決で きる授業構成 を行 う

③ 生徒 が問題解決後,生徒相互 の社会的相互作用 を通 して反省的思考 を促 し,原問題 への適応や条件 の変化 などで新 たな課題 を考察す る

( 2 )

授業 における問題解決の相

中原

( 1 9 9 5 )

は,問題解決指導のあ り方 と して,次の

3

っの タイプに分類 している

1

の タイプは,数学的な概念や法則 を問題解決的 に指導す るもので 「方法型」,第

2

の タ イプは,教科書 の特設単元 などの中にあるい くっかの問題 を通 して行われ る問題解決指導 で 「特設型」,第3の タイプは子 どもが当面 した現実的問題場面 につ いて,子 ども自身が 問題 を設定 しその解決を扱 う学習で 「設定型」, とそれぞれ呼んでいる

「特設型」 と 「設定型」 は構成的 アプ ローチ と共存で き,お互 いに補完す る役割 を果た す よ うに位置付 け られ,「方法型」 は協定的構成主義 に立っ教授 ・学習 と競合す るもので あると している しか し,「方法型」 にはい くっかの問題点があると指摘 している さ ら に,「方法型」 の教授 ・学習 にはい くつかの タイプがあ るけれ ど も,基本的 には

G. Pol ya

型 ない しその修正 に基づ くものが多 いと し, その問題 を改善す る方策 と して,次の

2

点 を 挙 げている

概念や原理 ・法則などの構成 ・理解 を主 たるね らいとす る授業 は, それに適 した方 法的原理 に基づいて計画,展開す ることによって, そのね らいがよ りよ く達成 され る

数学的な知識 の構成 には反省的に思考す る過程 を明確 に位置付 けた教授 ・学習が必 要 とされ る。

さ らに,反省的思考 につ いて は,「前段階 において,人間がある対象 に対 して操作的活 動 を行 い,次の段階 においてその操作的活動 を反省的に思考 し,それによ って本質の抽象 や一般化,論理化が行われていると考え られ る こうした思考 は,数学的な概念形成や問 題解決 において とりわけ重要 な役割を果 たす思考 と言えよ う。」 と述べている

筆者達 は,「特設型」 と 「設定型」 は授業構成 の中で生徒 の学習が効果的 に進 め られ る よ うに設定す る必要があ り,授業構成 は,基本的 には 「方法型

の問題解決的学習を考え る

G. Pol ya

型 の授 業構成 を基 本 に考 え, 教 授 ・学 習法 と して は

R. Cha r l e s /F. Le s t e r ( 1 9 8 2 )

の問題解決の指導 を参考 に して,

G. Pol ya

の問題解決 の相 の応用を考えている

G. Pol ya ( 1 9 5 4 )

の問題解決の相

G. Pol ya

は,問題解決の過程 を次のよ うな

4

つの相 に区分 し, それぞれの相 における教 師の問 いや質問を述べている

理解 :問題 を理解す ること

未知 の もの,わか っていることは何か,条件 は何か。条件 を満足 させ うるか,十分 か,不十分か。図をかけ,適当な記号 を導入せ よ 条件 の各部 を分離せよ。

計画 :計画を立て ること

前 にそれを見 た ことがないか。似 た問題 を知 っているか。未知 の ものをよ くみよ 未知 の ものが同 じか, よ く似 た問題 を思 い起 こせ。似 た問題 を使 うことがで きない か。問題 をいいかえることがで きるか。条件 の一部 を残 し,他 をすてよ。 データ,

(9)

平岡賢治 ・酒井一男 :数学的活動に視点をあてた授業構成の研究〜授業の相 と授業評価の観点か ら〜 33

条件 をすべてつか ったか。

実行 :計画を実行す ること

解答 の計画を実行す るときに,各段階を検討せよ。

検討 :振 り返 ってみ ること

結果や議論 を試す ことがで きるか。結果をちが った仕方でみちび くことがで きるか。

それを一 目の うちに捉え ることがで きるか。他 の問題 にその結果や方法 を応用で き るか。

R. Ch a r l e s /F. Le s t e r

の問題解決の指導過程 と問題解決の相

R. Cha r l e s / F. Le s t e r

は,

G. Pol ya

の研究 に基づ いて授業 モデルを展開 した

Le Bl anc

の 研究 を発展 させ,問題解決の指導過程 を次の

3

つ に区分 し, それぞれの過程 における教師 の指導活動 を述べている

O

BEFORE:

問題 について,全体で議論す る時期

学級 に対 して問題 を読み,用語 や言葉 について討議す る。問題 の理解 に関 して学級 全体で討議 させ る。可能 な解法のス トラテ ジーについて学級全体で討議す る。

O DURI NG:

個人 または小 グループで解決の作業 を している時期

子供 たちを観察 した り,質問 した りす る 必要 に応 じて ヒン トを与え る 必要 に応 じて発展 させた ものを与 える 解 を得ている子供 たちに問題 に答え ることを要求す る

O

AFTER

:全体で解決の試みにつ いて議論 している時期

解 を示 させた り,討議 させた りす る。発展 させた問題 を討議 させた り,解かせた り す る。問題 の特別 な特色 について討論 させ る。

また,子 どもの問題解決の過程 を次の

3

つの柏 に区分 し, それぞれの相 におけるス トラ テ ジーを述べている。

問題 を理解す ること

問題 を読 む。何 を見出そ うと試みているかをきめる 重要 な資料 を見出す。

問題 を解 くこと

パ ター ンを探す。挿絵 をか く 推測 しチェ ックをす る 整理 した目録 を作 る。数式 を書 く 表 を作 る。論理的な推論 をす る 具体物 を用 いた り実演 した りす る もと にたどって考え る。問題 を簡単 にす る

問題 に答え ること,答えを評価す ること

重要 な情報 をすべて用 いたかを確かめる や った ことをチェ ックす る 答えが意味 があるか どうかを きめ る 答えを完全 な文章 に書 く

本稿では,問題解決的学習 による新 しい知識の獲得 をね らいとす る授業構成 について, 考察 して いる

G. Po l ya

R. Cha r l e s /F. Le s t e r

の問題解決 の過程 は生徒一人 ひ とりの数 学的活動 を考察 しているが,教授 ・学習法 と しての問題解決の相 を考え る場合,学習 して い る集団 にお ける相 を考 え ることにな る

G. Pol ya

の 「理解」, 「計画」, 「実行」 の相 と

「検討」 の相 の 「結果や議論 を試す,結果 をちが った仕方でみちび く, それを一 目の うち に捉 え る」 活動 や

R. Cha r l e s / F. Le s t e r

の 「問題 を理解す ること」, 「問題 を解 くこと」,

「問題 に答 え ること,答 えを評価 す ること」 の相 は

R. Char l e s / F. Le s t e r

の教 師の指導過 程 の

̀ ̀ BEFORE'

'と

" DURI NG"

で行われ る生徒 の活動 である。 これ らの活動 は連続的

(10)

34 長崎大学教育学部紀要 教科教育学 No.44(2005年)

であ り,生徒一人 ひとりは問題 を理解 し,考えを深め,問題を解決す る この時,「計画」

の相で,理解の不十分 さや誤解 に気づいたな らば,改めて 「理解」の相 に戻 る必要がある

「実行」の相で も, うま くいかず,改めて計画の練 り直 しや問題の理解が必要 にな り,「計 画」や 「理解」 の相 に戻 ることもある また,解決が得 られた後 も,「検討」 の相 の上記 の活動を もとに,理解の不十分 さや別の解決方法などに気づいたな らば,改めて 「理解」,

「計画」,「実行」 の相 に戻 ることになる このよ うに, これ らの問題解決の過程 は可逆的 と考えることができる すなわち,

R. Char l e s /F. Le s t e r

の教師の指導過程甲

̀ ̀ BEFORE"

̀ ̀ DURI NG' '

において,学習 している集団全体 と しては,問題 に視点 を当て,問題 を 考察の対象 とし,生徒一人一人が 自ら考察す ることを通 して,理解を深め,試行錯誤 しな が ら問題を解決 している。筆者達 は, これ らの過程を授業 における問題解決の[垂画 の相

と呼ぶ。

R. Char l e s /F. Le s t e r

の教師の指導過程の

̀ ̀ AFTER'

'では,学習 している集団全体で, [垂画 の相 を振 り返 ることを通 して,「結果や議論 を試す,結果をちが ‑た仕方で導 く, それを一 目の うちに捉える,他の問題 にその結果や方法を応用す る

などの活動を行 って いる この過程 は, 自らの考えと他の考えについて集団全体で議論す ることを通 して,結 果や方法が集団全体 に共有 されていき,解決 された結果や方法 に視点が移 り,その結果や 方法を考察の対象 とし,新 たな問題の[

垂 画

へ とっなが ってい く相 と考え,筆者達 はこの 過程を授業 における問題解決の

の相 と呼ぶ。

この園 の相が,新 しい知識を獲得することをね らいとする授業ではとて も重要 になっ て くる 生徒一人 ひとりの問題解決を,学習集団全体の社会的相互作用を通 して反省的に 思考 し,問題の本質的抽象や一般化,論理化などを行 う過程である これは中原

( 1 9 5 5 )

の 「方法型」の問題解決的学習の問題を解決す る方策の1っであ り,授業を構成す るとき 明確 に位置付 ける必要がある また,[垂画 の相 と園 の相 を授業の中で効果的に展開

し,授業のね らいを達成で きるようにす ることが大変重要である

( 3 )

授業構成の方法

生徒が主体的に活動 し,生徒 自らが数学 をす るとい う考えの

DoMa t h

(古藤

,1 9 9

1), 生徒が主体的に問題 を変え,新 しい問題 をっ くりだすための方略である

What l fNot?

( S. I . Br own/M. I . Wal t e r ,1 9 9 0 )

,島田のオープ ンエ ンドアプローチ,能田

( 1 9 8 3 )

のオー プ ンアプローチ,片桐

( 1 9 8 8 )

の問題解決の過程,中原の構成的アプローチを もとに,吹 の内容を授業構成 に活用 していきたい。

生徒が主体的に数学 を創 り上 げてい くことがで きるような授業

生徒の多様な考え方を活かす ことがで きるような問題を取 り入れた授業

生徒の一応の問題解決後 に,教師及 び生徒同士の社会的相互作用を通 した反省的思 考を明確 に位置付 けた授業

問題が問題を生み,問題を発展 させていけるような授業

授業構想 の段階で考察内容 による レベル(例えば,教材の数学化,数学的考察,教材へ の適用)を設定 し,問題解決の相を[垂 ]の相 と

団 の相で構成 し,各教材 と指導のね らいを考察 した授業構成 を考える これは,「生徒の一応の問題解決後 に,教師及 び生徒 同士の社会的相互作用を通 した反省的思考を明確 に位置付 け,問題が問題を生み,問題を

(11)

平岡賢治 ・酒井一男 :数学的活動に視点をあてた授業構成の研究〜授業の相 と授業評価の観点か ら〜 35

発展 させていけるような授業」であ り,問題解決の相 における生徒たちの数学的活動 と, 数学的活動を誘発す る要因によって,生徒 たちの思考の レベルに視点 を当てた授業構成で

ある

v anHi e l e( 1 9 8 6 )

の学習水準理論 は,長期 にわたる学習 に対す るものであるが,筆者 達 は, この理論 を思考水準理論 の基礎 と考え,授業構成 に適応 させ るために

,v anHi e l e

の学習水準理論 について考察す る

。v anHi e l e

は, オ ランダにおける高校教師 としての教 育実践上の課題であった,幾何指導 における生徒の学習の困難性を克服す るために,思考 の水準を考察 ・研究 し,次のような幾何学の学習 における思考水準 を設定 した。それぞれ の水準の不連続性を最 も顕著な特性 と述べ,水準間の切れ目の存在 について説明 している。

第1水準 :視覚的水準 第

2

水準 :記述的水準 第

3

水準 :理論的水準 第4水準 :形式論理学

5

水準 :論理的な法則の性質

平林

( 1 9 87 )

は, この理論を次のよ うな図でまとめている また,学習対象 と学習方法 が区別 され, ある水準での学習方法 は,その次の水準では学習対象 にな ってお り,水準の 飛躍 は 「方法の対象化」 として捉えて ることがで きると述べている。

水 準

1

・. 2 3 4

5

対 象 身のまわりのもの

7

図 〆 性 質 7 命 題 7 論 理

筆者達 は, この学習水準理論 において,次の

3

点を授業構成 に活用す ることを考える。

生徒の学習の困難性を克服す るための思考水準 の設定

水準の最 も顕著な特性である思考の不連続性の考察

水準の飛躍 としての 「方法の対象化」

前述の, 中学校第1学年 の方程式 の導入の等式を生み出 してい く学習では,「数量の問 の関係に関心をもち,等式や方程式の意味を考える」を授業のね らいに設定 し,生徒にとっ ての具体的な事象を 「理科で学習 した重 さの量 り方」 と捉え,次のように方法や結果を考 察の対象 に してい くと考えている

レ ベ ノ

レベル1 レベル

2

レベル

3

内 容 具体的な事象の考察 数学的モデル化 表現方法の考察 考察の対象 粘土の重 さ 左右の重 さの関係 等 式 方法 .結果 左右の重 さあ関係 / 等 式 / 方程式

(12)

3 6

長崎大学教育学部紀要 教科教育学

No. 4 4( 2 0 0 5

年)

問題解決型の授業では, このように

1

単位時間の授業内容 に

3

つの レベルが存在 してい ると考えることがで きる 異 なる レベル問では生徒 にとって不連続的考察の部分が多い。

これまでの経験か ら考えると,問題解決で得 られた結果や方法を,新たに考察の対象 とす る場面 に相当 している 例えば, (創造性の基礎 :考察の対象を転化 させ ること)が誘発 す る数学的活動の場面 などもある この場面では,生徒相互の社会的相互作用や教師によ る導 きが必要 な場面である。 これを匪 団 の相か ら新 たな問題の[垂 画 の相 に移 ‑てい く 場面であると考え, この ことは レベル間の移動 と考えている すなわち,生徒 にとって得

られた結論を思考の対象 とす る場面である。

授業では,生徒が数学の有用性を実感 し,興味 ・関心を引 き,学習意欲を高めるために, 教師はで きるだけ身の回 りの具体的な事象を教材 として扱 うことが必要である。 (荏 :特 に単元の導入の段階であ り,単元の途中では,既習の知識を もとに した生徒 にとっての数 学的な具体的な事象を扱 うことが効果的な場合 もある。) そ して,生徒 にとっての異体的 な事象を もとに数学的な認識が高 まってい くよ うな授業構成が重要である。 そのため,吹 のような問題及 び思考の レベルか らなる問題解決型の授業構成を考える

生徒 は, 《具体的な事象 に関する数理をともなう問題》を (過去の経験や既習の知識) や [数学的な見方や考え方] を もとに恒 垂 ]し,学級全体で圏 す る(レベル1)。そ し て, (対象を転化 させ),数学化 された問題へ と変化 させ る。 また,新 たな画 が始 ま り,新 しい問題 を (既習の知識) や [数学的な見方や考え方] を用 いて考察 ・処理 し, 恒 垂]す る さ らに国 す ることで, (考察の対象を転化 させ),問題 を発展 させ る (レベル

2

)。そ して,新 たな[垂 画 が始 まり, (既習の知識 または新 しい知識) や [数学 的な見方や考え方] を用 いて考察 ・処理 し,[垂 画 す る。 さらに匡 団 す ることで数学的 な認識を高め,授業のね らいが達成 され る(レベル

3

)。 この最後の過程で, 《身の回 りの 具体的な事象 に関する問題》を扱 い, 《新 しく獲得 した知識を活用する》 こともある

このよ うに

1

時間の授業の中で数学的な認識を

3

つの問題解決の過程を通 して高めるこ とで,具体的な事象か らその授業のね らいが達成 されると考える それぞれの過程の問で は,考察の対象が問題解決の結果や方法に転化 されている そ こで,筆者達 は,それぞれ の過程を

1

つの レベルとして とらえ,次のよ うな

3

つの レベルで授業を構成 してい く

レベル1:具体的な事象 に関す る問題を設定 し,理解 ・検討を通 して数学化す る。

[垂直享コ‑ 《具体的な事象 に関する数理をともなう問題》 について,問題の意味を (過 去の経験や既習の知識)や [数学的な見方や考え方] を もとに理解す る。

国 ‑

個 々で考えていたものを学級全体で振 り返 り,共有す ることで, (考察の対 象を数学化 された対象 に転化 し),新 たな問題を作 る

レベル

2

:レベル

1

を もとに数学化 させた問題を理解 し,検討す ることで問題を発展 させ る

[垂

垂 可 ‑

新 たに出た問題 について, 慨 習の知識)や [数学的な見方や考え方] を用 いて考察 ・処理 し,理解を深める

国 ‑

さらに学級全体で議論をす ることによ‑て検討を重ね,条件や見方を変える ことによって (考察の対象を転化 し),問題 を発展 させ る。

レベル

3

:レベル

2

を もとに発展 させた問題を理解 し,検討す ることで,数学的認識を高 める

(13)

平岡賢治 ・酒井一男 :数学的活動 に視点 をあてた授業構成の研究〜授業の相 と授業評価の観点か ら〜 37

[垂

‑・発展 させ た問題 につ いて, (既習の知識 または新 しく獲得 した知識) や [数 学的な見方や考え方] を用 いて考察 ・処理 し,理解 を深める

匪 匡萱 ≡ 針

全体 を振 り返 り,新 しい知識 の獲得 などの授業 のね らいの達成 を学級全体 の もの と し,数学 的認識 を高 める

授業を構成す るとき,次のよ うなダイヤグラムを利用 した図を用 いて,授業構成を行 う

レベル

3

レベル

2

レベル

1

[垂

二 ] ‑

T

[頭

重 □‑

萱∃

T

例えば, 中学校第 1学年 の方程式 の導入 において,等式の理解の授業 を次 のよ うなダイ ヤグラムを利用 して授業構成 を行 った。

レベル

3

いろいろ な数量 の関係を等式 で 表 す。

レ ノレ

2

上皿 てん びんを 利用 して,別 の 方法で求 め られ ないか考 え る

レベル

上皿てんびんを 利用して粘土 の 重さを量 る。

文字の値が求めら れるものとそうで ないものを考え, 方程式,方程式の 解の意味を知る

† (記号化) てんびんの左右 の重 さの関係 を 式で表 し,等式 の意味を知 る

† (数量 の間の関係) 左右 の重 さの関

係 を意識す る

4

評価の考え方

筆者達 は数学的活動 を誘発す る

4

要因 (知識 の獲得,数学的な考 え方,創造性の基礎, 数学 の活用)が重要であ り,授業 は問題及 び思考が

3

つの レベルで上昇す るよ うな問題解 決的学習で構成で きると考えている 授業の 目標 と構成方法があれば, それが どこまで達 成で きたか とい う評価 を行 うことがで きる

長 崎(2003)の評価 に関す る考 えを もとに,評価 の 目的を考察す ると,大 き く2っ に分 け られ ると考え る

1

つ は,生徒が何 を理解 しどのよ うな能力 を身 に付 けたのか とい う情報 を得 ることを通 して,今後 の学習の方向性や学習方法,学習内容 などを理解で きるよ うに す ること, もう1つ は,教師が教育活動 についての資料 を分析 し,授業 を改善で きるよ う にす ることである

本稿 の主 な目的 は 「授業 を生徒 にとって主体的 ・創造的な学 びの場 に (改善)す る」 こ

(14)

38 長崎大学教育学部紀要 教科教育学 No.44(2005年)

とで あ る す なわ ち,授業改善 で あ り,授業評価 が特 に重要 とな る 授業 で は教 師 は発 問 や周 りの生徒 の発言 ・提案 に対 す る生徒 の反応 を理解 し,評価す るために生徒一人 ひ とり の数学 的活動 を捉 え る視点 を持っ ことが必要 にな る。 この視点 と して,数学 的活動 を誘発 す る4要 因 を考 え る ことがで きる 前述 の よ うに, 「知 識 の獲 得」, 「数学 的 な考 え方 」,

「創造性 の基礎」, 「数学 の活用」 の視点 か ら生徒 の活動 を評価 し, その評価 を もとに,坐 徒 たちの望 ま しい方 向を考 えた り,対処 の仕方 を示 す ために,各 レベルの教 師の発問や レ ベル間の上昇 を考察 す ることを通 して,授業改善 して い こうと考 えて い る

問題解決的学習 の レベル1は,生徒 に とっての具体的 な事象 を考察す る レベルであ った。

生徒理解 と教材研究 を もとに,授業 のね らいを達成 す るために,大多数 の生徒が解決可能 な問題 を設定 す るよ うに留意 して い る そ こで, レベル1にお ける生徒 の数学 的活動 を捉 え,分析 す る ことで,生徒 の学習 に とって必要 な内容 の理解度 や能力 の定着度 を見 ること がで きる す なわ ち, この レベル1の生徒 の数学 的活動 を捉 え,分析 す る ことで, その後 の授業 の診 断的評価 がで きる

また,生徒 の数学 的活動 を誘発す る4要 因で捉 え,生徒 の思考 の対象 が変容す る場面 を 授業 にお ける問題解決 の相 で捉 え ることで,形成 的評価 が実施 で きると考 えて い る。 しか し,授業者 が, その よ うな評価 を実践 で きるよ うにな るためには,生徒 の数学 的活動 や変 容 す る場面 を捉 え る目を養 う必要 が あ る そのためには,定期 的 に授業 を分析 す る必要 が あ る そ こで,次 の よ うな方策 で授業 を分析 す ることを通 して,指導 と評価 の一体化 を 目 指 して い る 授業記録 を もとに,生徒 への ア ンケー ト結果 ・感想 を参考 に しなが ら,教 師 の活動 と生徒 の活動 に視点 を当て,数学 的活動 を誘発 す る

4

要 因 と問題解決 的学習 につ い て,次 の

3

つ の ことを行 う

① 数学 的活動 を誘発す る

4

要 因 の検討

② 数学 的活動 を誘発す る4要 因 を もとに各 レベル及 び レベル間の上昇 の考察

③ 問題解決 的学習 の

3

つの レベルの改善

さ らに,分析結果 を もとに,

3

つ の レベルの理解 ・検討 を明記 した授業構成 を示 し,授 業 を改善 す る

5

まとめ (1) 成果

これ までの授業実践 か ら,授業 にお ける生徒 の数学 的活動 の状況 や変容 の場面 を,数学 的活動 を誘発す る

4

要因で考察す ると,生徒 の活動 を具体 的 に捉 え ることがで きた。 また, 生徒 の変容 の状態 を問題解決 の視点 で考察す ると,生徒 に とっての具体 的 な事象 か ら授業 のね らいに向か って変容 して いた。考察 の対象 を転化 させ,新 たな理解 を繰 り返 しなが ら 変容 し,前述 の

3

つ の レベルに対応 して いた。 さ らに, 問題解決 的学習 で授業構成 し,数 学 的活動 を誘発す る要 因 を もとに授業 を評価す ることで,授業 の本質 的 なね らいや生徒 に

とっての具体 的 な事象 を授業者 が捉 え ることがで きるよ うにな った。

生徒 の具体 的 な活動 は計 画 とは異 な る こともあ り,授業分析 ・評価 を通 して, レベルの 上昇 の捉 え方 に問題 が あ る ことや,発 間や机 間指導 な どの問題点 が見 えて きた。 この経験 を通 して,教材研究 や生徒理解 を深 め る ことにな った。 これ らの ことは, よ り良 い授業へ 改善 す る方法 を提示 して い る 実 際の授業 で は,生徒 の活動 が計画 とは異 な ることも多 い。

(15)

平岡賢治 ・酒井一男 :数学的活動 に視点をあてた授業構成の研究〜授業の相 と授業評価の観点か ら〜 39

しか し,生徒 の変容 を数学的活動 を誘発す る

4

要因の観点か ら考察す ることで,生徒の数 学的活動 を捉え るとともに,授業構成の段階で授業改善す ることがで きる 実際 に,授業 の後,印象評価ではあるが授業 を評価 し,改善 を加えた結果,他 のクラスの授業で は,坐 徒 の数学的活動が 自然 に流れ, その後の授業 まで効果的に流れ ることも多か った。

これまでの授業後 の生徒 の感想で は,次のよ うな意見が多か った。

身近 な題材 を利用 した授業だ ったので,楽 しく,わか りやすい。

最初 は漠然 と しているが,授業が進むにつれ, いろいろな ことがわか り,楽 しく, お もしろ く,わか りやすい。

身近 な事象や具体的操作 を活動 に取 り入れ,多様 な方法 を考えさせ ることで,生徒 の興 味 ・関心 や学習意欲を高 めることがで きた。 また,昨年度か らの長与第二中学校 における 実践 を通 して, 日頃の生徒 の会話 の中で,「中学校 にな って,授業が進むにつれ, いろい ろな ことがわか り, とて も楽 しい。数学 が好 きにな った。」 とい う意見 を聞 くことが多 く な って きた。生徒 または教師によ って,授業の中で考察の対象を転化 し, レベルを上 げて い くことによ り,生徒 は数学的な認識 の高 ま りを感 じてお り,数学的活動 を通 して数学 の のよさや楽 しさを体験 し, これ らを楽 しめるよ うにな って きている すなわち,生徒の数 学 に対す る意識が変容 している さ らに, このよ うな授業 を積み重ね ることで,生徒 は自 主的に数学化 をす ることがで きるよ うになると期待で きる

そ して,『方程式』 の授業後の生徒 の感想 の中に次の ものがあ った

今 日の授業 もとて もわか りやす く,内容がよ くわか った。

いっ もと変わ らない授業だ った。

昨年度か らほとん どすべての授業 を, このよ うな授業構成で実施 したところ,生徒 の数 学的活動 は自然 に流れ,わか りやすか ったよ うである 実際, テス ト結果 を これまでの経 験 と比較す ると,平均点が正負 の数で約8点,文字式で約 30点良か った。正負の数 の学 習 において,単 に計算がで きるよ うになることをね らいとせず,計算法則 などを生徒が見 出す ことがで きるよ うに授業を構成 した。生徒 は帰納的推論や一般化 などの数学的な考え 方 を活用 して,計算法則 などを見出 していた。 この経験が文字式 の学習 に生か され,生徒 の力 を伸 ばす ことがで きた。 また,授業者が教え込むので はな く,生徒が発見 し,知識 を 構成 し, さ らに活用す ることを通 して,生徒 は基礎 ・基本的な内容 を定着 させてお り, こ の ことも生徒の力を伸 ばす ことにつなが った。 さ らに,社会的相互作用 を通 して,生徒 は 数学的 コ ミュニケー ション能力 を高 め,数学的に表現で きるよ うにな り,根拠 まで話せ る よ うにな って きている 授業のね らいに向か って,思考 の レベルが上昇 してい くよ うな授 業をデザイ ンし,実践す ることで,主体的 ・創造的な態度や数学的な見方や考え方 を育て, 創造性 の基礎 を培 うことがで きると考え られ る

以上の ことを もとに総合的に考察す ると,本研究の研究結果 は次のよ うにまとめ られ る

① 生徒 にとっての異体的な事象か ら授業のね らいに向 けた数学的活動 を4要因で捉え ることで,生徒 の数学的活動が 自然 に流れ る授業を構成で きた。

② 授業 における問題解決 の相 を もとに生徒 の問題及 び思考 の レベルが上昇す るよ うな 問題解決的学習 による授業 を構成 し,実施 した結果,生徒 にとっての具体的な事象の 考察か ら授業 のね らいに向けて,生徒 たちは考察 の対象 を転化 し,新 たな理解 を繰 り 返 し,数学的認識 を高めなが ら変容 していた。 そ して, この変容 は,筆者達が考え る

(16)

4 0

長崎大学教育学部紀要 教科教育学

No . 4 4( 2 0 0 5

年)

3つの レベルに対応 していることがわか った。

③ 授業 の生徒 の活動 や変容す る場面 を,数学的活動 を誘発す る4っの要因で考察す る ことで,生徒 の活動 を具体的 に捉 え,授業 を評価す ることがで き,教材研究や生徒理 解 を深 め, よ り良 い授業へ改善す ることがで きた。

④ 実践事例 の授業記録 や ア ンケー ト結果 ・感想, テス トの結果か ら,問題解決的学習 を通 して,生徒 は次 のよ うな力 を身 に付 け,育てていることがわか る

既習 の知識 を活用 した り,新 しい知識 を獲得す ることを通 して,基礎的 ・基本的 な知識 や技能 を身 に付 けている

数学的な見方 や考 え方 を活用す ることを通 して,事象 を数理的 に考察す る力 を高 めている

考察 の対象 を転化す る活動 を通 して,創造的 な態度 や思考力 を育てている

身近 な事象 に活用 されている数学 を理解す ることを通 して,数学 の有用性 を感 じ, 数学 を活用す る態度 や力 を育 てている

( 2 )

今後 の課題

今後 は,実践事例 を増 や し,研究 を深 めてい くことで,様 々な教材や生徒集団 に対 して, レベルが上昇 す る場面 での数学 的活動 を明確 に し,授業 の中で生徒が変容 す る場面 を捉え ることがで きるよ うに していきたい。 また,実践 を通 して,数学的な活動 が 自然 に流れ る 授業へ改善 されて きている。 これ は,授業者 の実践力の高 ま りと生徒 の数学 に対す る変容 が影響 して いると考 え られ る しか し, まだ,授業者 による指示や導 きによ って, レベル を上昇 させている面がある。実践 を重ね るとともに,

" DoMat h"

" What l fNot ? ' '

などの教授 ・学習法 を活用 した り,検討 の相 と反省的思考 についての研究 を深 め, さ らに, 授業 を生徒 に とっての主体的 ・創造的な学 びの場 に改善 して いきたい。

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