九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
酸応答性カーボンナノチューブ分散剤およびナノ チューブコンポジットハニカム膜の開発に関する研 究
内山, 直行
http://hdl.handle.net/2324/1398366
出版情報:Kyushu University, 2013, 博士(工学), 課程博士 バージョン:
権利関係:Public access to the fulltext file is restricted for unavoidable reason (3)
(別紙様式2)
論 文 要 旨
区 分 甲・乙 氏 名 内 山 直 行
論文題名
酸応答性カーボンナノチューブ分散剤およびナノチュー ブコンポジットハニカム膜の開発に関する研究
論 文 内 容 の 要 旨
カーボンナノチューブ(以下:CNT)は1991年の発見以来、それが持つ種々の際立った特性(強度、熱特 性、電気特性、光特性、高比表面積など)のために、基礎および応用研究分野において多くの研究者の 興味を集めているナノ材料である。
しかし、CNTを実用的に用いる場合は、カーボンファイバーのようにそれ自身を編みこみ織物と した上で、マトリックス材と複合化するような手法を用いることは出来ず、更にナノ材料特有の強 い凝集力を持つため、CNTを効率的に分散させ、高分子などのマトリックス材と複合化することで、
形あるものに加工することが可能となり、種々の応用へ展開することかが可能となる。CNTを分散 させることはCNT特性を引き出すためにも非常に重要であり、これまで、水、有機溶媒、バルク材料等 にCNTを分散させるために種々の分散手法が検討されてきた。
CNT応用における、センサー、ドラッグデリバリー、フォトリソグラフィーによる回路配線などの分野において は、刺激による応答にてその特性変化が求められる分野も数多くあり、CNT分散液やCNTコンポジット固体 を、刺激により変化させることが可能であれば、その応用範囲は更に広がるものである。
一方、材料として扱う際には「形」にしなければならず、フィルム、塗膜としての薄膜、バルク 体など用途に応じ成形する必要がある。また「形状」を精密に制御することで機能付与も可能とな る。
ポリマーなどにおける形状の精密制御法としてはフォトリソグラフィー、インプリントなどによ るトップダウン手法と分子による自己組織化などによるボトムアップ手法に大別され、同様にCNT
(ポリマーコンポジット)においてもトップダウン手法とボトムアップ手法による形状制御の検討 が行われてきた。分子の自己組織化によるボトムアップ手法は実用化へ向けた課題あるが、多くの 可能性を秘めており、ブロックコポリマーなどの自己組織化によるハニカム構造体などが活発に研 究されている。ハニカム構造体はその特異構造から撥水性、細胞培養における効果的な足場材、セ ンサー部材、触媒担体などに応用が期待される構造体である。
以上のような背景の基、本研究では新規の酸応答性カーボンナノチューブ分散剤、および カーボ ンナノチューブ/ポリマーコンポジットハニカム膜を開発した。これらの研究成果を以下の4章に まとめた。
第1章では本研究の背景となるCNTについて、その合成法や基本特性について述べた。
第2章では酸応答性カーボンナノチューブ分散剤として、ヘミアセタール部位をポリマーに組み込む 設計を行った。ヘミアセタール部位は酸に対して非常に敏感な官能基であるため、それをポリマー中へ導入 することにより、酸というトリガーを用いて簡便にポリマー構造を変化させ、その特性を大幅に変換させること が可能であった。本研究では、カーボンナノチューブ(CNT)と相互作用の強いピレン及び酸応答性部位とし てヘミアセタールを導入したポリマーを分子設計、合成し、これがCNTの分散剤として機能することを示した。
このヘミアセタール導入ポリマーにより作製されたCNT分散液は、「酸」を用いて分散状態から凝集状態へと 変換させることが可能であった。ここではその応答特性を明らかにした。ここで示した新規酸応答性CNT分 散剤としてのポリマーは、その目的に合わせ種々にデザインが可能であることから、応用性に富んだCNT分 散剤の合成手法となりうるものであるとともに、CNT機能化の観点からも展開が期待できることを示した。
第3章ではカーボンナノチューブ(CNT)/ポリマーコンポジットによるハニカム構造膜作成 に関し、CNT構造、ポリマー、溶媒の影響を明らかにした。CNT、CNT分散性ポリマーおよび両親 媒性ポリマーからなる疎水性有機溶媒カーボンナノチューブ分散液を、高湿度下、基板にキャスト することにより、CNT/ポリマーコンポジットによるハニカム構造膜作成が可能であった。CNTは 径の細い多層カーボンナノチューブ(MWNT)、CNT分散性ポリマーはピレン骨格を有するCNT強 親和性ポリマー、両親媒性ポリマーはアクリル酸-長鎖アクリレート共重合体を用いることで規則性 の高いハニカム構造膜を得ることが出来た。また酸に対して敏感な官能基であるヘミアセタール部 位を持つCNT分散性ポリマーを用いることにより、酸というトリガーを用いて簡便にポリマー分子 構造を変化させ、その膜特性を向上させることが可能であったことを示した。
第4章では以上の成果を総括して本研究の結論を示した。