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マイクロ波による微小導電性粒子検出に関する研究

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Academic year: 2021

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(1)

九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

マイクロ波による微小導電性粒子検出に関する研究

池田, 誠人

https://doi.org/10.15017/1398403

出版情報:Kyushu University, 2013, 博士(工学), 課程博士 バージョン:

権利関係:Fulltext available.

(2)

マイクロ波による

微小導電性粒子検出に関する研究

2013 年 9 月

池田 誠人

(3)

マイクロ波による

微小導電性粒子検出に関する研究

第 1 章 序 論 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 1

第 2 章 キ ャ ビ テ ィ 法 の 概 要 と キ ャ ビ テ ィ の 構 造 ・・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・ 6 2.1 序

2.2 キ ャ ビ テ ィ の 構 造 2.3 検 出 方 法 の 概 要 3.4 ま と め

第 3 章 理 論 的 モ デ ル ・ ・・・ ・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・ ・・ ・・・ ・・ ・ 13 3.1 序

3.2 摂 動 法 3.3 ま と め

第 4 章 数 値 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン ・ ・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・ 19 4.1 序

4.2 共 振 周 波 数 シ フ ト

4.2.1 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン ツ ー ル 4.2.2 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン モ デ ル 4.2.3 計 算 精 度 の 確 認

4.2.4 数 値 計 算 に よ る 周 波 数 シ フ ト 4.3 キ ャ ビ テ ィ 内 の 電 界 強 度 分 布 4.3.1 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン 手 法

4.3.2 キ ャ ビ テ ィ 内 の 電 界 強 度 分 布 4.4 ま と め

(4)

第 5 章 導 電 性 粒 子 に よ る 共 振 周 波 数 シ フ ト ・・・・・・・・・・・・・・・ 34 5.1 序

5.2 模 擬 サ ン プ ル

5.2.1 模 擬 サ ン プ ル の 作 成 5.2.2 模 擬 サ ン プ ル の 確 認 5.3 実 験 装 置 の 構 成

5.4 共 振 周 波 数 の 環 境 温 度 に よ る 変 化

5.5 共 振 周 波 数 の 変 化 ( シ ミ ュ レ ー シ ョ ン の 検 証 ) 5.6 電 界 導 入 孔 及 び ス リ ッ ト の 影 響

5.6.1 電 界 導 入 孔 5.6.2 ス リ ッ ト 高 さ 5.7 基 本 的 な 検 出 特 性

5.7.1 モ ー ド と 設 定 周 波 数 に よ る 感 度 の 違 い 5.7.2 モ ー ド 毎 の 感 度 分 布

5.7 ま と め

第 6 章 微 小 導 電 性 異 物 の 検 出 ・ ・・・・ ・・・・・・・・・・・・ ・・・・ 57 6.1 序

6.2 検 出 感 度 6.3 検 出 波 形

6.4 フ ィ ル タ ー の 設 計 6.4.1 角 型 フ ィ ル タ ー

6.4.2 メ キ シ カ ン ハ ッ ト フ ィ ル タ ー 6.5 フ ィ ル タ ー に よ る 検 出

6.6 ま と め

第 7 章 実 用 的 シ ス テ ム に 向 け て ・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・ 68 7.1 序

7.2 複 数 周 波 数 の 使 用 ( 幅 方 向 感 度 の 確 保 )

(5)

7.3 サ ン プ ル の キ ャ ビ テ ィ へ の 導 入 7.4 位 置 同 定 法

7.4.1 位 置 の 同 定

7.4.2 複 数 の 粒 子 が 近 接 し て 存 在 す る 場 合 の 対 応 7.5 ま と め

第 8 章 総 括 ・・ ・ ・・ ・ ・ ・・ ・ ・・ ・ ・・ ・ ・・ ・ ・ ・・ ・ ・・ ・ ・・ ・ 83

参 考 文 献 ・ ・ ・・ ・ ・ ・ ・・ ・ ・ ・ ・・ ・ ・ ・・ ・ ・ ・ ・・ ・ ・ ・ ・・ ・ ・ ・ 86

謝 辞 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・・ 88

(6)

記 号 の 説 明

本 論 文 で 使 用 し た 記 号 の 意 味 を 以 下 に 示 す 。 内 容 の 混 同 の 恐 れ の な い も の に つ い て は 、同 じ 記 号 を 異 な っ た 意 味 に 使 用 し て い る 場 合 も あ る 。( )内 の 数 字 は 、記 号 を 用 い た 章 を 示 す 。

Ⅰ . ア ル フ ァ ベ ッ ト

a

: キ ャ ビ テ ィ 寸 法(x 方 向) (3,4)

a

1 : 四 端 子 回 路 の 入 力 (2)

a

2 : 四 端 子 回 路 の 入 力 (2)

b : キ ャ ビ テ ィ 寸 法(y 方 向) (3,4,6)

b

1 : 四 端 子 回 路 の 出 力 (2)

b

2 : 四 端 子 回 路 の 出 力 (2)

c

: 光 速 、c2.998108m/s (4)

CA : 複 数 本 設 置 し た 1 番 目 の キ ャ ビ テ ィ (7) CB : 複 数 本 設 置 し た 2 番 目 の キ ャ ビ テ ィ (7) CC : 複 数 本 設 置 し た 3 番 目 の キ ャ ビ テ ィ (7)

d : キ ャ ビ テ ィ 寸 法(z 方 向) (3,4)

d : 粒 子 の y方 向 の 位 置 で の 2本 の キ ャ ビ テ ィ 間 の 距 離 (7)

d : 体 積 の 変 化 (3)

E : キ ャ ビ テ ィ 内 の 電 界 (3,4)

E

a : キ ャ ビ テ ィ 内 の 電 界 ( 規 格 化 さ れ て い る ) (3)

E

0 : 粒 子 の 位 置 の 電 界 (3)

f

: 摂 動 後 の 共 振 周 波 数 (3)

FEM :Finite Element Method、 有 限 要 素 法 (4)

FlexPDE6: 汎 用 偏 微 分 方 程 式 ソ ル バ ー ( ソ フ ト ウ エ ア 名 称 ) (1,4,8)

f

nmx :PEC 直 方 体 キ ャ ビ テ ィ の 共 振 周 波 数 (4)

f

0 : キ ャ ビ テ ィ の 各 モ ー ド に お け る 共 振 周 波 数 (1,3,4)

(7)

H : キ ャ ビ テ ィ 内 の 磁 界 (3)

H

a : キ ャ ビ テ ィ 内 の 磁 界 ( 規 格 化 さ れ て い る ) (3)

HFSS : 汎 用 電 磁 界 解 析 ツ ー ル ( ソ フ ト ウ エ ア 名 称 ) (1,4,5,8)

H

0 : 粒 子 の 位 置 の 磁 界 (3)

Ly : キ ャ ビ テ ィ を 被 検 査 対 象 物 の 走 行 方 向 と 直 角 に 投 影 し た 長 さ(7)

L

1 : 複 数 本 設 置 し た キ ャ ビ テ ィ 間 の 距 離 (7)

L

2 : 複 数 本 設 置 し た キ ャ ビ テ ィ 間 の 距 離 (7) m :x方 向 の モ ー ド ( 本 論 文 で は m=1) (3,4)

MATLAB: 汎 用 数 値 演 算 ツ ー ル ( ソ フ ト ウ エ ア 名 称 ) (6)

MI 素 子: 磁 気 イ ン ピ ー ダ ン ス 素 子 (1)

M4 : 直 径 4mm メ ー ト ル 規 格 ネ ジ (2)

N : 信 号 中 の ノ イ ズ 成 分 の 標 準 偏 差 (2)

N : 粒 子 検 出 時 系 列 デ ー タ の 通 過 時 間 分 の 点 数 (6) n :y方 向 の モ ー ド ( 本 論 文 で は n=0) (3,4)

N

A 1番 目 の キ ャ ビ テ ィ で の 検 出 数 (7)

N

B 2番 目 の キ ャ ビ テ ィ で の 検 出 数 (7)

N

C 3番 目 の キ ャ ビ テ ィ で の 検 出 数 (7)

OCXO : オ ー ブ ン 温 度 制 御 付 水 晶 発 振 器 (1,5)

PEC :Perfect Electric Conductor、 完 全 導 体 (3,4)

P1 : 粒 子 1 (7)

P2 : 粒 子 2 (7)

Q : 共 振 点 の Q 値 ( ク オ リ テ ィ フ ァ ク タ ー ) (1,2,5,7)

S : 信 号 成 分 の レ ベ ル 変 化 (2)

S/N 比 : 測 定 値 の シ グ ナ ル と ノ イ ズ の 比 (1,2,4,5,6,8)

SQUID : 超 伝 導 量 子 干 渉 素 子 (1)

S パ ラ メ ー タ ー :Scattering Parameter (高 周 波 回 路 パ ラ メ ー タ ー) (2) S11 :Sパ ラ メ ー タ ー の 1 つ 。a1 か ら b1へ の 反 射 特 性 を 示 す (2) S1 2 :Sパ ラ メ ー タ ー の 1 つ 。a2 か ら b1へ の 透 過 特 性 を 示 す (2)

S2 1 :Sパ ラ メ ー タ ー の 1 つ 。a1 か ら b2へ の 透 過 特 性 を 示 す (1,2,5,7,8)

(8)

S2 2 :Sパ ラ メ ー タ ー の 1 つ 。a2 か ら b2へ の 反 射 特 性 を 示 す (2)

t

2本 の キ ャ ビ テ ィ 間 で の 検 出 時 間 の 差 (7)

t

A :CAで の 検 出 時 間 (7)

1

t

A :CAを P1が 通 過 す る 時 間 (7)

2

t

A CAを P2が 通 過 す る 時 間 (7)

t

B CBで の 検 出 時 間 (7)

1

t

B CBを P1が 通 過 す る 時 間 (7)

2

t

B :CBを P2が 通 過 す る 時 間 (7)

TE1 0 x : キ ャ ビ テ ィ の 共 振 モ ー ド (x は モ ー ド を 示 す 整 数 ) (1,3,4,6,7,8)

tp : 粒 子 の キ ャ ビ テ ィ 通 過 時 間 (6)

t

1 P1が CAと CBを 通 過 す る 時 間 差 (7)

t

2 P2が CAと CBを 通 過 す る 時 間 差 (7) U : 摂 動 前 の キ ャ ビ テ ィ 内 の 電 磁 界 エ ネ ル ギ ー (3)

V

c : キ ャ ビ テ ィ の 体 積 (3,4)

V

p : 粒 子 の 体 積 (1,3,4)

vp : 粒 子 の 通 過 速 度 (6,7)

v

s : 被 検 体 の 通 過 速 度 (6,7)

WRJ-10 :X バ ン ド 導 波 管 規 格 ( 断 面 22.9×10.2 mm) (1,2) X バ ン ド : マ イ ク ロ 波 の 周 波 数 帯 域 、8~12GHz (1,2,4)

x :z方 向 の モ ー ド 数 を 表 す 整 数 (3,4)

x

: キ ャ ビ テ ィ を 表 す 座 標 軸 、 (3,4)

x

: グ ラ フ の 横 軸 の 変 数 (5)

x

: メ キ シ カ ン ハ ッ ト フ ィ ル タ ー の パ ラ メ ー タ ー (6)

x

: 被 検 体 上 の 粒 子 の 位 置 の x 座 標 (6)

y : キ ャ ビ テ ィ を 表 す 座 標 軸 (3,4)

y : グ ラ フ の 縦 軸 の 変 数 (5)

y : 被 検 体 上 の 粒 子 の 位 置 の y 座 標 (6)

Z0 : 等 イ ン ピ ー ダ ン ス (2)

z

: キ ャ ビ テ ィ を 表 す 座 標 軸 (3,4)

(9)

Ⅱ . ギ リ シ ャ 文 字

: 全 波 数

   

(3)

x : 伝 播 定 数 (x 方 向 )

 

x

m  / a

(3)

y : 伝 播 定 数 (y 方 向 )

y

n  / b

(3)

z : 伝 播 定 数 (z 方 向 )

z

x  / d

(3)

f

: 共 振 点 の 半 値 幅 (2)

f

: 共 振 周 波 数 シ フ ト (1,3,4)

f

E

: 奇 数 の TE1 0 xモ ー ド で の 周 波 数 シ フ ト (3,4)

f

H

: 偶 数 の TE1 0 xモ ー ド で の 周 波 数 シ フ ト (3)

: 誘 電 率 (3,4)

0 : 真 空 中 の 誘 電 率 (4)

: 透 磁 率 (3)

: 円 周 率 (3,6)

: 角 速 度

  2  f

(3,4)

  x

: メ キ シ カ ン ハ ッ ト フ ィ ル タ ー (6)

Ⅲ . そ の 他

2C2 : 組 合 せ の 個 数 (7)

 : ナ ブ ラ 演 算 子 (4)

(10)

第 1 章 序 論

工 業 製 品 の 微 細 化 、 高 機 能 化 に よ り 使 用 さ れ る 材 料 中 の 異 物 の 影 響 が 大 き く な っ て き た 。 な か で も 配 線 ピ ッ チ や 材 料 の 膜 厚 が 数 十m オ ー ダ ー と な っ て き た 電 子 材 料( 1)で は 顕 著 で あ る 。 例 え ば 、 プ リ ン ト 配 線 板 に 使 用 さ れ る ガ ラ ス ク ロ ス は 10m に 近 づ い て お り( 2)、 ま た リ チ ウ ム イ オ ン 電 池 に 使 用 さ れ る セ パ レ ー タ ー フ ィ ル ム で は 15~40m( 3)で あ る 。異 物 の 中 で も 、特 に 金 属 を は じ め と す る 導 電 性 粒 子 は 、0.1mm を 下 回 る 大 き さ で も そ の 導 電 性 や 経 時 変 化 に よ る 劣 化 や 変 色 な ど 、 次 工 程 に お け る 収 率 悪 化 や 製 品 の 使 用 中 に 影 響 が 現 れ る 可 能 性 も 指 摘 さ れ 、 ク ロ ス や フ ィ ル ム 自 身 の 製 造 過 程 に お け る 全 面 検 査 が 今 後 の 課 題 に な る と 予 想 さ れ る 。 な お 、 い ず れ の 材 料 に つ い て も 他 の 工 業 製 品 と 同 様 に 、 製 造 工 程 に お い て 元 断 ち と 呼 ば れ る 発 生 原 因 の 除 去 な ど そ の 発 生 防 止 の 努 力 や 、 品 質 管 理 の 徹 底 が 進 め ら れ て い る 。 リ チ ウ ム イ オ ン 電 池 は 製 造 工 程 の 一 つ と し て 充 電 後 に エ イ ジ ン グ と 称 す る 保 存 期 間 が 必 要 と さ れ て お り 、 こ の 工 程 に お い て 微 小 短 絡 な ど の 製 造 過 程 で 発 生 し た も の を 含 む 不 具 合 が 取 り 除 か れ て い る( 4)

現 在 工 業 的 に 使 わ れ て い る 金 属 検 知 技 術 は 電 磁 誘 導 や X 線 を 用 い た も の( 5) -( 7)で あ る が 、検 出 下 限 が そ れ ぞ れ 1 mm、0.3mmで あ る 。こ れ ら の 方 法 の 他 に 、 磁 性 体 の 検 出 に 限 れ ば SQUID( 8)や MI セ ン サ( 9) な ど 高 感 度 セ ン サ の 使 用 に よ り 数 十 μmの 検 出 が 可 能 で あ る こ と を 謳 っ た も の も 存 在 す る 。 し か し な が ら 装 置 や メ ン テ ナ ン ス に か か る 費 用 が 高 く 、 ま た 非 磁 性 の も の は 検 出 で き な い た め 、 導 電 性 粒 子 の 検 出 と い う 本 来 の 要 求 を 満 た す こ と は で き な い 。 ほ か に も コ ロ ナ 放 電 を 発 生 さ せ て の 50μm 以 下 の 導 電 性 粒 子 の 検 出 方 法 も 提 案( 1 0)さ れ て い る が 、放 電 に よ る 膜 へ の 影 響 も あ り 適 用 範 囲 は 限 定 的 で あ る 。 ガ ラ ス ク ロ ス や そ の 材 料 で あ る ガ ラ ス フ ァ イ バ ー に 限 っ て は 、 マ イ ク ロ 波 を 用 い て ガ ラ ス フ ァ イ バ ー 中 に 存 在 す る メ タ ル フ ァ イ バ ー と 呼 ぶ 直 径 数 μm、 長 さ 数 mm 程 度 の 金 属 の 検 出 法 が 実 用 化 さ れ て き た 。 導 波 管 に 糸 を 通 し て 反 射 波 に よ り 検 査 す る も の( 11)か ら 、織 物 と し た 状 態( ガ ラ ス ク ロ ス )で 検 査 す る た め に 幅 広 化 へ と 向 か い 、 導 波 管 に 長 手 方 向 の ス リ ッ ト を 設 け 反 射 波 に よ り 検 査 し 、感 度 ム ラ へ の 対 処 と し て 複 数 の 導 波 管 を 並 行 に 設 置 し た も の( 1 2)、導 波 管 の 進 行 方 向 に 直 角 に 被 検 査 対 象 を 通 す こ と で 感 度 ム ラ に 対 処 す る が 導 波 管 断 面 積 を 大 き く

(11)

取 れ な い た め ト ラ バ ー ス と 組 み 合 わ せ て 全 幅 検 査 と し た も の( 1 3)、ま た 感 度 と 安 定 性 を 両 立 さ せ る た め 導 波 管 に 長 手 方 向 の ス リ ッ ト を 設 け た 導 波 管 を 2本 設 置 し て 共 振 周 波 数 の 透 過 波 の 差 を 取 る よ う に し た も の( 1 4)な ど で あ る 。 こ れ ら は い ず れ も 長 さ 2mm 程 度 が 検 知 下 限 で あ り 、微 小 な 粒 子 に は 対 応 で き な い 。ま た 、金 属 は 可 視 光 を 通 さ な い こ と か ら 、 透 過 率 の 違 い に よ る 画 像 検 査 に よ る 方 法 も 候 補 と し て は 考 え ら れ る が 、 無 害 な も の を 含 む 他 の 欠 陥 と 区 別 が つ か な い こ と か ら 、 導 電 性 粒 子 の 検 査 装 置 と し て の 採 用 は 難 し い 。

本 研 究 で は こ の ギ ャ ッ プ を 埋 め る べ く 、 マ イ ク ロ 波 空 洞 共 振 器 ( 以 下 キ ャ ビ テ ィ と 呼 ぶ ) に ス リ ッ ト を 設 け て 被 検 体 で あ る ク ロ ス や フ ィ ル ム を 通 過 さ せ て 、 そ の 共 振 周 波 数 の 変 化 に よ り 粒 子 の 存 在 を 検 出 す る 方 法 ( 以 下 キ ャ ビ テ ィ 法 と 呼 ぶ ) を 利 用 し た セ ン サ に よ り 、50μmの 金 属 粒 子 の 検 出 が 可 能 で あ る こ と を 明 ら か に し 、 工 業 用 の 検 出 器 と し て 使 用 す る た め の ポ テ ン シ ャ ル を 持 つ こ と 、 更 に こ れ ら の 応 用 上 の 課 題 を 挙 げ 、 そ の 解 決 策 を 示 す こ と で 実 用 化 の 目 処 を つ け た 。

原 理 そ の も の は 、Slater の 摂 動 に 関 す る 法 則( 1 5) と し て 古 く か ら 知 ら れ て お り 、ビ ー ズ プ ル 法 と し て 共 振 器 や 加 速 器 の 内 部 の 電 界 分 布 の 測 定 に 用 い ら れ て い る( 1 6)。こ れ ま で 粒 子 検 出 に は 用 い ら れ て 来 な か っ た の は 、 先 に 述 べ た メ タ ル フ ァ イ バ ー の 検 出 の よ う に 数 mmの 長 さ ま で は 実 用 的 に 検 出 可 能 で あ っ た が こ れ 以 下 の 検 出 は そ の 周 波 数 変 化 が 小 さ く 実 用 的 と は 考 え ら れ て い な か っ た た め で あ る 。

本 研 究 ( 1 7) - ( 20 )で は 、 ま ず 次 に 示 す(1)~(5)に よ っ て 47m の 粒 子 ま で の 検 出 が 可 能 で あ る こ と を 実 証 し た 。

(1) Slater の 摂 動 に 関 す る 法 則 に 立 ち 戻 っ て 共 振 周 波 数 の 変 化 を 導 電 性 粒 子 の 大 き さ と 関 連 付 け て 定 量 的 に 把 握 。

(2) シ ミ ュ レ ー シ ョ ン で こ の 関 係 が 計 算 に よ り 再 現 で き る こ と を 確 認 し 、 そ れ を 研 究 用 ツ ー ル と し て 利 用 で き る よ う に し た 。

(3) 検 出 す べ き 幅 を 一 般 的 な リ チ ウ ム イ オ ン 電 池 の セ パ レ ー タ ー の 幅( 2 1)で あ る 50mm と し て こ れ に 合 わ せ た サ イ ズ の キ ャ ビ テ ィ を X バ ン ド の 導 波 管 WRJ-10 に よ り 長 さ 90 mm で 作 成 。

(4) シ ミ ュ レ ー シ ョ ン に よ り 50m の 粒 子 に よ る 共 振 周 波 数 シ フ ト が 10GHz の 共 振 周 波 数 に 対 し て 0.5kHz 程 度 で あ る こ と か ら こ れ を 検 出 で き る 系 を ネ ッ ト ワ ー ク ア

(12)

ナ ラ イ ザ ー を ベ ー ス に 構 築 。

(6) 得 ら れ た 信 号 を 温 度 な ど の 外 乱 の 中 か ら 抽 出 す る た め の 手 法 を 提 案 し 実 証 。 加 え て 、 実 用 上 解 決 す べ き と 考 え ら れ る 3 つ の 課 題 、

(7) キ ャ ビ テ ィ 内 の 感 度 分 布 、

(8) 被 検 査 物 で あ る フ ィ ル ム や ク ロ ス の 導 入 方 法 (9) 幅 方 向 の 位 置 同 定 手 法

に つ い て の 提 案 を 行 っ た 。

本 論 文 は 全 8 章 で 構 成 さ れ る 。 各 章 の 概 要 は 以 下 の 通 り で あ る 。

第 2 章 で は 、 本 研 究 で 用 い た キ ャ ビ テ ィ の 構 造 と 寸 法 に つ い て そ の 設 定 根 拠 と 課 題 を 含 め て 明 ら か に し た 。 キ ャ ビ テ ィ は 50mm の 幅 の フ ィ ル ム を 測 定 す る た め に 70mm の ス リ ッ ト を 設 け た WRJ-10 導 波 管 を 90mm の 長 さ と し て 用 い た 。 ま た 検 出 方 法 と そ の 評 価 方 法 に つ い て 、 測 定 は ネ ッ ト ワ ー ク ア ナ ラ イ ザ ー を 用 い て 透 過 特 性 を 表 す パ ラ メ ー タ ー で あ る S2 1 の 変 化 の 検 出 を 行 い 、 検 出 の 可 否 は こ の 時 系 列 信 号 の S/N 比 に よ り 評 価 で き る こ と を 示 し た 。

第 3 章 で は 、Slater の 摂 動 に 関 す る 法 則 を 元 に 、 キ ャ ビ テ ィ の 大 き さ 、 粒 子 の 大 き さ と 共 振 周 波 数 の シ フ ト 量 の 関 係 を 解 析 的 に 求 め た 。 シ フ ト 量 は 粒 子 の 体 積 に 比 例 し 、 シ フ ト 量 と 共 振 周 波 数 の 比 は 粒 子 の 体 積 と キ ャ ビ テ ィ の 体 積 の 比 と 等 し い こ と を 示 し た 。10GHz の 共 振 周 波 数 に 対 し て 、こ の 体 積 比 が 10- 7オ ー ダ ー で あ る こ と か ら 、100m の 粒 子 よ る シ フ ト 量 は kHzオ ー ダ ー で あ る 。

第 4 章 で は 、こ の よ う に 体 積 の 比 が 10- 7で あ る よ う な 対 象 が 同 時 に 存 在 す る モ デ ル に お い て 数 値 演 算 に よ る シ ミ ュ レ ー シ ョ ン が 有 効 で あ る か を 、HFSS と い う 汎 用 電 磁 界 解 析 ツ ー ル の 固 有 値 解 析 モ ー ド を 用 い た 計 算 に よ っ て 確 認 し た 。 こ の 条 件 に お い て 20Hzの 収 束 条 件 に よ り 計 算 し 、理 論 値 に 対 し て20Hz以 下 の 誤 差 で 収 束 し た 。 こ の モ デ ル を 用 い て 今 回 の キ ャ ビ テ ィ で の TE1 0 1TE1 0 7各 モ ー ド で 50~500mの 粒 子 の 共 振 周 波 数 シ フ ト を 計 算 し た 。 こ れ ら の シ フ ト 量 と 共 振 周 波 数 の 比 は 粒 子 の 体

(13)

積 と キ ャ ビ テ ィ の 体 積 の 比 に 等 し く(

f /   f

0

V

p を 計 算 す る と

3 . 5  10

5m- 3と な り 一 定 の 値 で あ る )、こ れ ら の 数 値 演 算 の 結 果 は Slater の 摂 動 に 関 す る 法 則 か ら 導 い た 結 果 と 一 致 し た 。 ま た 、 キ ャ ビ テ ィ 内 部 の 感 度 分 布 の 検 討 に 用 い る た め 、 有 限 要 素 法 に 基 づ く 微 分 方 程 式 解 析 ソ フ ト(FlexPDE6)を 用 い て キ ャ ビ テ ィ 内 部 の 電 界 強 度 分 布 を 計 算 し た 。 被 検 体 の 幅 方 向 に 共 振 モ ー ド 毎 の 定 在 波 の 腹 と 節 に 相 当 す る 感 度 分 布 が あ る が 、 通 過 方 向 に は 電 界 強 度 が 一 定 で あ り 、 通 過 時 の 時 系 列 信 号 は 単 発 の 矩 形 波 と な る こ と を 示 し た 。

第 5 章 で は 、 本 研 究 を 進 め る た め に 考 案 し た 模 擬 サ ン プ ル の 作 成 方 法 に つ い て 述 べ る と 共 に 、 そ の 副 素 材 で あ る 接 着 剤 の 影 響 は S/N 比 換 算 で 1.2 程 度 で あ る こ と を 確 認 し た 。OCXO を 搭 載 し た 周 波 数 安 定 度

1  10

7の ネ ッ ト ワ ー ク ア ナ ラ イ ザ ー に よ っ て 粒 子 通 過 時 の S2 1 を 測 定 す る こ と で 、 矩 形 波 状 の 変 化 が 得 ら れ る こ と を 確 認 し た 。シ ミ ュ レ ー シ ョ ン の 検 証 と し て 、100m 近 辺 の 粒 子 と 500m 近 辺 の 粒 子 の 共 振 周 波 数 シ フ ト 量 を 実 測 し 、 こ れ に 温 度 補 正 を 行 っ た 結 果 と シ ミ ュ レ ー シ ョ ン 結 果 を 比 較 し て 、+30~-20kHz の ば ら つ き は 残 る も の の 、 両 者 が よ く 一 致 す る こ と を 示 し た 。 キ ャ ビ テ ィ に 設 け た 電 界 導 入 孔 お よ び 被 検 体 を 導 入 す る ス リ ッ ト の 大 き さ が 異 な る 複 数 の キ ャ ビ テ ィ を 用 意 し て こ れ ら の サ イ ズ を 実 験 的 に 決 定 し た 。 次 に 共 振 モ ー ド 毎 の 周 波 数 設 定 と 感 度 の 関 係 を 調 べ 、 ピ ー ク 波 形 の 最 大 ス ロ ー プ に 設 定 す る こ と で 最 も 高 い 感 度 が 得 ら れ る こ と を 示 し た 。 ま た 、 こ の 設 定 に お い て 同 一 の 粒 子 を 用 い て TE1 0 5TE1 0 7で の 感 度 分 布 を 実 測 し て 、 モ ー ド に 応 じ て 分 布 は 異 な る が 同 等 の 感 度 が 得 ら れ る 事 を 明 ら か に し た 。

第 6 章 で は 、 提 案 し た 方 式 に よ る 導 電 性 粒 子 の 検 知 性 能 を 確 認 し 、 そ の 性 能 を 装 置 と し て 実 現 す る た め の 方 策 を 考 案 し 実 証 し た 。45~500m の ス テ ン レ ス 粒 子 で 作 成 し た 模 擬 サ ン プ ル を 用 い て 、50m の 粒 子 で S/N 比 と し て 2 が 得 ら れ る こ と を 確 認 し た 。 ま た こ の 矩 形 波 状 の 信 号 を 自 動 的 に 検 出 す る た め に 、 そ の 形 状 か ら 2 種 類 の フ ィ ル タ ー を 考 案 し て 係 数 計 算 プ ロ グ ラ ム を 作 成 、 こ の パ ラ メ ー タ ー を 用 い て 実 証 を 行 っ た 。47m と 106m の 2つ の 検 出 例 を 示 し た 。

(14)

第 7 章 で は 、 こ の 方 法 を 実 用 化 す る た め の 検 出 性 能 以 外 の 課 題 に つ い て 対 応 方 法 を 示 し た 。 被 検 体 幅 方 向 の 感 度 分 布 に 関 し て 2 つ の 共 振 点 ( モ ー ド ) を 用 い て 重 ね あ わ せ る と 、 幅 50mmに わ た っ て 感 度 0 の 部 分 が な く な る こ と を TE1 0 5TE1 06の 2 つ の モ ー ド を 用 い た 実 デ ー タ で 示 し た 。 次 に 被 検 体 を 導 入 す る た め に 2 分 割 キ ャ ビ テ ィ を 検 討 し 、 締 結 を 十 分 な 力 で 行 え ば 性 能 低 下 な し に 導 入 を 簡 便 化 す る こ と が で き る こ と を 明 ら か に し た 。 最 後 に 被 検 体 幅 方 向 の 位 置 同 定 に つ い て 、2 つ の キ ャ ビ テ ィ を 非 平 行 に 設 置 し 検 出 時 間 差 か ら 位 置 を 計 算 す る 方 法 と 、 そ の 範 囲 内 に 複 数 の 粒 子 が 入 っ た 場 合 に 3 本 以 上 の キ ャ ビ テ ィ を 設 置 す る 方 法 を 示 し た 。

第 8 章 に て 本 論 文 の 総 括 を 行 い 、 本 研 究 を 通 じ て 得 ら れ た 主 要 な 結 果 と 将 来 の 展 望 に つ い て 述 べ た 。

(15)

第 2 章 キ ャビ テ ィ法 の概 要 とキ ャ ビテ ィ の構 造

2.1

空 洞 共 振 器 内 に 導 電 性 粒 子 が 導 入 さ れ た 場 合 に 、 そ の 共 振 周 波 数 が 変 化 す る こ と は 知 ら れ た 現 象 で あ る が 、 こ れ を 特 定 の 用 途 に 用 い る た め に 具 体 的 な 検 討 の 対 象 と し た キ ャ ビ テ ィ の 構 造 及 び 寸 法 と そ の 検 出 方 法 の ア イ デ ア に つ い て 説 明 す る 。 構 造 の 検 討 に あ た っ て は 、 検 出 の 目 的 や 本 研 究 の 手 法 に 適 し て い る こ と は も ち ろ ん で あ る が 、 そ の ほ か に 部 材 の 入 手 性 や 取 扱 い に つ い て も 考 慮 し 、 可 能 な 範 囲 で 高 周 波 業 界 に お い て 一 般 的 に 用 い ら れ る 部 材 を 選 定 し た 。 検 出 対 象 は 工 業 的 に 生 産 さ れ る 電 子 部 品 向 け の フ ィ ル ム や ク ロ ス で あ り 、 広 幅 で 製 造 さ れ そ の 出 荷 時 に 部 品 製 造 に 用 い る た め の 材 料 と し て 製 品 の 幅 に 合 わ せ た 幅 に カ ッ ト さ れ る こ と が 一 般 的 で あ る こ と か ら 、 カ ッ ト さ れ た 後 の 出 荷 検 査 を 想 定 し て 幅 50 mm を 対 象 と 設 定 し た 。 次 に 、 信 号 の 取 得 方 法 に つ い て の 基 本 的 な ア イ デ ア の 説 明 を 、 そ の 方 法 を 用 い る 理 由 を 含 め て 行 っ た 。 ま た こ の 研 究 に お い て 、 得 ら れ た 信 号 の 評 価 に は S/N 比 を 用 い た が 、 そ の 定 義 の 説 明 を 行 っ た 。

2.2 キ ャ ビ テ ィ の 構 造

本 研 究 は 、 数 GHz 帯 を 用 い た 予 備 検 討 を 元 に 、

(1) 感 度 だ け を 考 え る と 周 波 数 は 高 い ( 波 長 が 短 い ) 方 が 良 好 で あ る 。

(2) ス リ ッ ト を 設 け た と き に キ ャ ビ テ ィ の 断 面 が 細 く な る と 開 口 の 影 響 が 大 き く な る

(3) 測 定 器 の 入 手 性 や 将 来 の 実 用 化 に 向 け 、 周 辺 回 路 に 用 い る 素 子 の 価 格 な ど を 勘 案 し て 10GHz 近 辺 の 周 波 数 を 用 い て 進 め る こ と と し た 。

キ ャ ビ テ ィ は 、 図 2.1 に 示 し た よ う に 、 方 形 導 波 管 の 両 端 を 金 属 板 で ふ さ い で 構 成 し た 。 こ の 周 波 数 帯 に 適 合 す る WRJ-10 導 波 管 ( 断 面 サ イ ズ 22.9 mm×10.2mm、 周 波 数 帯 域 8.20~12.40GHz、 遮 断 周 波 数 6.55GHz) に 、 外 形 を こ の 規 格 の フ ラ ン ジ 形 状 に 合 せ た 0.5mm厚 の 銅 板 の 中 央 部 に 孔 を 空 け た も の を 設 置 し 、そ の 外 側 に 同 軸

(16)

導 波 管 変 換 器 を 取 り 付 け て こ の フ ラ ン ジ と 導 波 管 側 の フ ラ ン ジ と で こ の 板 を 挟 み 込 ん で 使 用 し た 。 こ の フ ラ ン ジ を 締 結 す る M4 ネ ジ の 締 め 付 け は ト ル ク レ ン チ で 管 理 し 1.5N/mと し た 。

今 回 の 実 験 で 用 い た キ ャ ビ テ ィ の 長 さ は 、 巾 50mm程 度 の フ ィ ル ム ま で 測 定 す る こ と を 目 標 に 、 こ れ を 通 過 さ せ る た め に 必 要 な ス リ ッ ト で あ る 幅 70 mmを 設 け る こ と を 考 慮 し 、 実 用 的 な 最 小 サ イ ズ と し て 90mm と し た 。 ス リ ッ ト は 幅 22.9 mm 側 の 面 の 中 央 に 長 手 方 向 に 設 置 し た 。 こ の 位 置 と 方 向 は 導 波 管 壁 に 流 れ る 電 流 の 方 向 と 並 行 に な る の で 導 波 管 の 内 部 の 電 界 分 布 に 与 え る 影 響 を 最 小 に す る こ と が で き る 。 こ の よ う な ス リ ッ ト を 設 け た 導 波 管 は 高 周 波 を 用 い て フ ィ ル ム 状 の サ ン プ ル の 特 性 を 測 定 す る 場 合 の ア プ リ ケ ー タ ー と し て 広 く 利 用 さ れ て い る( 2 2)

実 験 を 進 め る に 当 た っ て 、 両 端 の 板 に 設 け た 電 界 導 入 孔 の 大 き さ と ス リ ッ ト の 高 さ は そ れ ぞ れ 1 mm、5 mm を 使 用 し た が こ の 選 定 の 根 拠 と な る 実 験 に つ い て は そ れ ぞ れ 5.6.1 と 5.6.2 で 述 べ る 。

2.3 検 出 方 法 の 概 要

キ ャ ビ テ ィ の 共 振 周 波 数 に 比 べ て 、 数 十m の 導 電 性 粒 子 の 導 入 に よ り 発 生 す る 共 振 周 波 数 の シ フ ト は 、本 研 究 に お い て は 前 者 が GHz オ ー ダ ー で あ る の に 比 べ て 後 者 は kHz オ ー ダ ー で あ り 、 そ の 比 は 10- 6~10- 7と 大 き く 異 な る 。 こ の よ う に 相 対 的 に 微 小 な 周 波 数 変 化 を 検 出 す る た め に は 、 周 波 数 そ の も の を 測 定 す る よ り も 、 空 洞 共 振 器 に よ り 構 成 さ れ て い る キ ャ ビ テ ィ の 共 振 曲 線(Qプ ロ フ ァ イ ル:

Qf

0

f

の 特 徴 的 な 変 位 を 利 用 す る こ と で 、よ り 簡 便 に そ の シ フ ト を 検 出 す る こ と が で き る 。 本 研 究 に お い て こ の 変 化 の 測 定 に は 、S2 1と 呼 ば れ る キ ャ ビ テ ィ の パ ラ メ ー タ ー を 用 い た 。S2 1は S パ ラ メ ー タ ー(Scattering Parameter)と 呼 ば れ る 高 周 波 回 路 の 特 性 を 示 す 表 現 方 法 の 1 つ で あ る 。 対 象 回 路 ( こ こ で は キ ャ ビ テ ィ ) を 図 2.2(a)に 示 す よ う な 4 端 子 回 路 で 表 し た と き に 、 こ の ① と ② か ら の 入 力 a1a2に よ り 反 射 波 S11a1S2 2a2、 透 過 波 S1 2a2S2 1a1が そ れ ぞ れ ① 、 ② に 現 れ る 。b1b2を こ の 回 路 か ら の ① と ② へ の 出 力 と す る と こ れ は 次 の よ う に 表 さ れ る 。

(17)



 



 





 

2 1 22 21

12 11 2

1

a a S S

S S b

b (1)

こ れ ら の S11S1 2S2 1S2 2が S パ ラ メ ー タ ー と 呼 ば れ る も の で 、今 回 は こ の う ち ① か ら ② へ の 透 過 特 性 を 示 す S2 1 を 用 い た 。 キ ャ ビ テ ィ は 対 称 で あ る た め 、S11S2 2

お よ び S1 2S2 1は 等 し く な る 。S2 1の 測 定 は 、図 2.2(b)の よ う に ② 側 を 等 イ ン ピ ー ダ ン ス で 終 端 し て 、 ① 側 か ら 信 号 a1を 印 加 し 、 ② 側 で 出 力 b2を 測 定 し b2/a1を 計 算 す る こ と で 得 ら れ る 。 実 際 の 測 定 は 後 述 の 図 5.5 で 示 す よ う に 、 ネ ッ ト ワ ー ク ア ナ ラ イ ザ ー を 用 い る こ と で 連 続 的 に 行 う こ と が で き る 。

図 2.3 に は 模 擬 的 に 粒 子 が 存 在 し な い 場 合 と 存 在 す る 場 合 の 共 振 点 の シ フ ト を S2 1

の 特 性 と し て 示 し た 。こ の よ う に 共 振 点 の 変 化( 図 で は 横 方 向 の 変 化 )は 小 さ い が 、 そ の 変 化 に 伴 う こ の 共 振 点 周 辺 の 傾 斜 部 分 の 移 動 を 用 い る と そ の 急 傾 斜 に よ り 検 出 さ れ た 信 号 が 拡 大 で き る と 期 待 で き る 。 今 回 は こ の よ う に 、 共 振 曲 線 の 肩 の 部 分 を 狙 っ た 周 波 数 を 外 部 よ り 導 入 し て 、 導 電 性 粒 子 の 導 入 に よ り 変 化 す る S2 1 信 号 を 検 出 し て 用 い た 。 信 号 検 出 特 性 の 評 価 は 図 2.4 に 示 す よ う に 、 検 出 信 号 に 含 ま れ る ノ イ ズ 信 号 の 標 準 偏 差(N)と 、 粒 子 を 導 入 し た 場 合 の 信 号 レ ベ ル の 変 化(S)の 比 を S/N 比 と 呼 び 、 こ の 値 を 用 い て 行 っ た 。

2.4 ま と め

本 章 で は 本 研 究 で 用 い た キ ャ ビ テ ィ の 構 造 と 寸 法 に つ い て そ の 設 定 根 拠 と 課 題 を 含 め て 明 ら か に し た 。 ま た 検 出 方 法 と そ の 評 価 方 法 に つ い て 説 明 し た 。

(1)キ ャ ビ テ ィ は WRJ-10導 波 管 を 用 い て 作 成 し た 長 さ 90mmの 矩 形 共 振 器 と し た 。 (2)フ ィ ル ム 導 入 ス リ ッ ト や 高 周 波 導 入 孔 の 寸 法 は 本 研 究 の 中 で 予 備 テ ス ト を 行 い 決 定 す る こ と を 述 べ た 。

(3)測 定 は 同 軸 導 波 管 変 換 器 を 用 い て ネ ッ ト ワ ー ク ア ナ ラ イ ザ ー で 行 い 、透 過 特 性 で あ る S21の 測 定 に よ り 行 っ た 。

(4)信 号 の 評 価 は 、 共 振 状 態 を 共 振 周 波 数 の ス ロ ー プ 部 分 の 周 波 数 の 信 号 に よ る S21

の 透 過 率 の 時 間 変 化 を 捉 え て こ の S/N 比 に よ っ て 行 っ た 。

(18)

Waveguide to Coaxial Adapter Waveguide to

Coaxial Adapter Microwave Cavity with Slits

Film/Cloth under Inspection

Waveguide to Coaxial Adapter Waveguide to

Coaxial Adapter Microwave Cavity with Slits

Film/Cloth under Inspection

キ ャ ビ テ ィ は 22.9mm×10.2mm×90mm ス リ ッ ト は 70 mm×1 mm を 両 面 に 設 置

電 界 導 入 孔 は 直 径 5 mm を 両 端 に 設 置 (a) キ ャ ビ テ ィ 概 要

(b) キ ャ ビ テ ィ 写 真 図 2.1 キ ャ ビ テ ィ の 外 観 と 概 要

(19)

(a)四 端 子 回 路

(b) S2 1の 測 定

2.2 Sパ ラ メ ー タ ー

S

11

S

12

S

21

S

22

① ②

Z0

Z0

a

1

b

2

a

1

b

1

a

2

b

2

S

11

S

12

S

21

S

22

① ②

(20)

Resonance Frequency Shift with a particle S21

--- no particle with particle S21 CW Mode Signal Resonance Frequency Shift with a particle

S21

--- no particle with particle --- no particle

with particle S21 CW Mode Signal

2.3 本 検 出 法 の 原 理

(21)

0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 0.4122

0.4123 0.4124 0.4125 0.4126 0.4127 0.4128 0.4129 0.413 0.4131 0.4132

Time (sec)

S21 CW Signa l Sign a l Magni tu de Noise

Level

0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20

0.4122 0.4123 0.4124 0.4125 0.4126 0.4127 0.4128 0.4129 0.413 0.4131 0.4132

Time (sec)

S21 CW Signa l Sign a l Magni tu de Noise

Level

2.4 検 出 波 形 の 例

(22)

第 3 章 理 論的 モ デル

3.1

今 回 用 い た 検 出 原 理 で あ る キ ャ ビ テ ィ の 共 振 周 波 数 シ フ ト に つ い て は 、 そ の 体 積 の 微 小 な 変 化 に よ る 影 響 を 取 り 扱 っ た 、Slater の 摂 動 に 関 す る 法 則( 1 5)と し て 知 ら れ て い る 。 こ こ で は そ の 法 則 か ら 、 キ ャ ビ テ ィ 中 央 部 に 設 置 し た 粒 子 に よ る キ ャ ビ テ ィ の 共 振 周 波 数 シ フ ト の 式 を 導 出 し て 、 共 振 周 波 数 シ フ ト と 共 振 周 波 数 の 比 は そ の 粒 子 の 体 積 と キ ャ ビ テ ィ の 体 積 の 比 と 等 し い こ と を 明 ら か に し た 。長 さ 100 mm の キ ャ ビ テ ィ の 体 積 と 100mの 粒 子 の 体 積 の 比 か ら 考 え て 、10GHz の 共 振 点 を 持 つ キ ャ ビ テ ィ で は 検 出 す べ き シ フ ト 量 は 数 kHz オ ー ダ ー で あ る 。

3.2 摂 動 法

Slaterの 摂 動 に 関 す る 法 則 に よ る と 、 キ ャ ビ テ ィ の 共 振 周 波 数

f

0は 、 そ の 体 積 の 微 小 な 変 化 に よ り 次 式 の よ う に 摂 動 後 の 周 波 数 f に 変 化 す る が 、そ の 関 係 は 次 の 式 で 表 さ れ る 。

 

 

H E d

f f f

a a

2 2 2

0 2 0 2

(2)

こ こ で 、

H

a

E

aは そ れ ぞ れ 摂 動 前 の キ ャ ビ テ ィ の 磁 界 と 電 界 の 強 度 で 、

H

a2

E

a2は そ れ ぞ れ キ ャ ビ テ ィ 体 積 全 体 に わ た っ て 積 分 し た 時 に 1 と な る よ う に 規 格 化 さ れ て い る 。

d

は 体 積 の 変 化 で あ る 。 こ れ を 規 格 化 し な い 形 に 書 き 直 す と 次 式 と な る 。

 

 

 

dv E H

d E H f

f f

2 2

2 2 2

0 2 0 2

(3)

(23)

こ こ で 、

H

E

は そ れ ぞ れ 摂 動 前 の キ ャ ビ テ ィ の 磁 界 と 電 界 の 強 度 で あ り 、

は そ れ ぞ れ キ ャ ビ テ ィ 内 を 満 た し て い る 物 質 の 透 磁 率 と 誘 電 率 で あ る 。式(3)の 分 母 は 、

H E dv

U 2 2

2 1 2

1  (4)

で 示 さ れ る 摂 動 前 の キ ャ ビ テ ィ 内 の 電 磁 界 エ ネ ル ギ ー の 2 倍 に 相 当 す る の で 次 の よ う に 書 き 換 え ら れ る 。

 

U d E H f

f f

2

2 2 2

0 2 0

2

  

 

(5)

ま た 、摂 動 と し て 考 え る 場 合 は そ の 周 波 数 変 化

fff

0は 摂 動 前 の 周 波 数

f

0に 比 べ て 非 常 に 小 さ い 場 合 を 取 り 扱 う こ と か ら 、 式(2)の 左 辺 は 次 の よ う に な る 。

  

0 0

0 0 0

2 0 0 2

0 0 0

2 0

2 0 2

2 2 1 ) 2

2 (

f f f

f f

f f f

f f f f f

f f f f f

f

f  



 

 

 

 

 

(6)

式(5)と 式(6)よ り

f f

0は 次 の よ う に 得 ら れ る 。

 

U d E H f

f

4

2 2

0

 

 

(7)

こ の 積 分 は 摂 動 し た 体 積 分 に 対 し て 行 わ れ る 。 体 積

V

pを 持 つ 完 全 導 体(Perfect Electric Conductor, PEC)の 球 で あ る 粒 子 に 対 し て は 式(7)の 積 分 は 次 の よ う に な る( 1 6) ,

( 2 3)

(24)

U E V H

f f

p 4

5 . 3 0

2 0 2 0 0

 

 (8)

こ こ で 、電 界

E

0と 磁 界

H

0は 粒 子 の 位 置 の 値 で あ る 。式(8)は 、共 振 周 波 数 の シ フ ト 量 は キ ャ ビ テ ィ の 形 状 や 共 振 モ ー ド に 関 わ ら ず 、 粒 子 の 体 積 に 比 例 す る こ と を 示 し て い る 。

中 心 に 球 状 の 粒 子 が 置 か れ た 理 想 的 な 直 方 体 の 完 全 導 体 に よ る キ ャ ビ テ ィ を 仮 想 し 、そ の 共 振 モ ー ド TE1 0 xに つ い て 検 討 す る 。 キ ャ ビ テ ィ の 寸 法 ab 及 び d は そ れ ぞ れ 、x、y、 及 び z 方 向 の 長 さ を 示 し ( 図 3.1)、x は キ ャ ビ テ ィ 長 さ 方 向 、 す な わ ち z 方 向 の モ ー ド 番 号 を 表 す 。PEC で あ る 球 状 の 粒 子 が こ の キ ャ ビ テ ィ 中 心 に お か れ た 場 合 、 電 界

E

0と 磁 界

H

0は そ れ ぞ れ の 共 振 モ ー ド お け る 大 き さ を 表 し 、 こ れ は 共 振 モ ー ド の 数 字 に 依 存 す る 。z 方 向 の 奇 数 ( 偶 数 ) モ ー ド に 対 し て 、

H

0

E

0) は キ ャ ビ テ ィ の 中 心 で は 0 で あ る 。

E

0で 表 現 し た 奇 数 モ ー ド で の キ ャ ビ テ ィ に 蓄 え ら れ る 全 電 磁 界 エ ネ ル ギ ー は 次 式 で 表 現 さ れ る( 2 4)

Vc

E U 02

8 1

 (9)

こ こ で 、

V

c

abd

は キ ャ ビ テ ィ の 体 積 を 表 す 。 ま た 、

H

0で 表 現 し た 偶 数 モ ー ド で の 全 エ ネ ル ギ ー は 次 式 と な る 。

c c

z

V a H

x V d

H

U 2 2 02

2 2

2 0 2

8 1 1 8

1

 



 

 

 (10)

こ こ で 、

   

は 全 波 数 ( f を 各 モ ー ド の 共 振 周 波 数 と し て 、2f ) で

a

x

m  /

 

y

n  / b

及 び

z

x  / d

は 伝 播 定 数 で あ る 。TE1 0x に お い て は

m  1

 0

n

で あ る の で 、

2

2

 

x2

 

y2

 

z2

 

z2

1  

x2

z2

  

z2

1d

2

  x

2

a

2

と 表 す こ と が で き る 。

式(9)と 式(10)か ら 、 奇 数 の TE1 0 xモ ー ド で は 共 振 周 波 数 の 摂 動 に よ る シ フ ト は

(25)

c E p

V V f

f 6

0

(11)

で 、 偶 数 の モ ー ド で は

c H p

V V

a x f d

f

 

 

 

2 2

0

1

2

 3

(12)

で 表 さ れ る 。

式(10)と 式(11)を 比 較 す る と 、TE1 0 x モ ー ド の う ち 奇 数 の モ ー ド の 方 が 偶 数 の モ ー ド と 比 べ て よ り 敏 感 で あ る あ る こ と が わ か る 。 相 対 的 な 共 振 周 波 数 の シ フ ト

f / f

0

は 粒 子 の 体 積

V

pと キ ャ ビ テ ィ の 体 積

V

cの 比 に 比 例 す る 。こ の こ と か ら 、キ ャ ビ テ ィ の 体 積 を 小 さ く す る と 共 振 周 波 数 の シ フ ト 、 す な わ ち 検 出 感 度 を 上 げ る こ と が で き る 一 方 で 、 検 出 対 象 の フ ィ ル ム の 幅 を 広 げ る こ と は 、 検 出 可 能 な 最 小 粒 子 の 体 積 を 制 限 す る こ と に な る こ と が わ か る 。 こ の 変 化 は 、 幅 は 長 さ で 、 粒 子 は 体 積 で あ る た め 、検 出 幅 を 3 倍 に し て も 、検 出 す る 粒 子 の 直 径 へ の 影 響 は3

3  1 . 4

倍 に と ど ま る 。 先 に も 述 べ た よ う に 、本 研 究 で は X バ ン ド の 矩 形 導 波 管 に よ り 構 成 し た キ ャ ビ テ ィ を 用 い て 進 め ら れ た 。こ の X バ ン ド の キ ャ ビ テ ィ は 数 十 mmオ ー ダ ー の 長 さ を 持 つ た め 、 そ の ( 内 部 ) 体 積 は

V

c

 10

5

 10

4m3 で あ る 。100m の 直 径 の 粒 子 の 体 積 の オ ー ダ ー は

V

p

 10

12 m3 で あ る こ と か ら 共 振 周 波 数 の シ フ ト は

6 7

0

10 10

/ f

f

E

程 度 と な る こ と が わ か る 。

な お 、Slater の 法 則 の 数 式 的 導 出 は そ の 境 界 を 摂 動 さ せ る こ と に よ っ て 行 わ れ て い る が 、 本 研 究 に お い て 粒 子 を 設 置 を キ ャ ビ テ ィ の 中 心 付 近 に 設 置 し て い る の と 同 様 に 、Slater 自 身 の 実 験 的 検 証( 16 )も 粒 子 を キ ャ ビ テ ィ の 中 心 に お く こ と に よ っ て 行 っ て い る 。

(26)

3.3 ま と め

Slater の 摂 動 に 関 す る 法 則 を 元 に 、 キ ャ ビ テ ィ の 大 き さ 、 粒 子 の 大 き さ と 共 振 周 波 数 の シ フ ト 量 の 関 係 を 明 確 化 し た 。

(1) 共 振 周 波 数 シ フ ト は 粒 子 の 体 積 に 比 例 す る 。

(2) キ ャ ビ テ ィ の 中 央 に お い て は 、 奇 数 モ ー ド の 方 が 偶 数 モ ー ド よ り も 共 振 周 波 数 の 変 化 が 大 き い

(3) 共 振 周 波 数 シ フ ト と 共 振 周 波 数 の 比 は そ の 微 粒 子 の 体 積 と キ ャ ビ テ ィ の 体 積 の 比 と 等 し い 。

(4) 長 さ 100mm の キ ャ ビ テ ィ の 体 積 と 100m の 粒 子 の 体 積 の 比 か ら 、10GHz の 共 振 点 を 持 つ キ ャ ビ テ ィ で は 検 出 す べ き シ フ ト 量 は 数 kHz オ ー ダ ー で あ る 。

(5) 検 出 す べ き フ ィ ル ム 幅 が 広 く な る と 検 出 で き る 粒 子 が 小 さ く な る 。 キ ャ ビ テ ィ の 断 面 積 が 一 定 と す れ ば 、 幅 は 長 さ で あ り 粒 子 側 は 体 積 で あ る た め 、 幅 が 3 倍 に な っ た と し て も 粒 子 径 の 検 出 限 界 は 3

3  1 . 4

倍 の 変 化 で あ る 。

(27)

3.1 キ ャ ビ テ ィ の モ デ ル 形 状 x

y

z

b a

d

(28)

第 4 章 数 値シ ミ ュレ ーシ ョ ン

4.1

前 章 で 、 キ ャ ビ テ ィ の 体 積 と 粒 子 の 体 積 の 比 率 、 共 振 周 波 数 と そ の シ フ ト 量 の 比 は 等 し い こ と が 示 さ れ た が 、 こ の 比 は あ る 一 定 の 幅 を 持 つ フ ィ ル ム 上 の 微 粒 子 を 検 出 す る 場 合 に は

f

E

/ f

0

 10

7

 10

6と 非 常 に 小 さ い 。 こ の よ う な ケ ー ス に お い て 、 数 値 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン が 検 討 に 有 効 な ツ ー ル た り え る か を 確 認 し た 。 こ こ で は ま ず 空 の キ ャ ビ テ ィ に お い て 、 粒 子 の 大 き さ レ ベ ル の メ ッ シ ュ か ら 計 算 を 開 始 し メ ッ シ ュ の 自 動 修 正 を 含 む 繰 返 し 計 算 を 実 行 し て 、 そ の 結 果 が 10GHz に 対 し て 1kHzの 変 化 を 計 算 す る の に 十 分 な 精 度 で あ る か を 確 認 し た 後 に 、 空 の キ ャ ビ テ ィ の 理 論 共 振 周 波 数 と 比 較 し 検 証 し た 。 こ の 方 法 を 用 い て 、 キ ャ ビ テ ィ 中 央 部 に 設 置 し た 50~

500m の 立 方 体 の 粒 子 に よ る 共 振 周 波 数 シ フ ト を 、TE1 0 1TE1 0 7 の 奇 数 モ ー ド に 対 し て 計 算 し た 。前 章 の 理 論 検 討 よ り 、同 じ キ ャ ビ テ ィ で 粒 子 の 位 置 が 一 定 で あ れ ば 、

  f V

p

f /

0

が 一 定 で あ る こ と が 示 さ れ て い る が 、 こ の 関 係 が 保 た れ て い る か を 確 認 す る こ と に よ っ て 、 理 論 検 討 に 対 す る シ ミ ュ レ ー シ ョ ン の 検 証 と し た 。 実 験 と の 比 較 に よ る 検 証 は 5.5 に お い て 行 う 。

4.3 で は キ ャ ビ テ ィ 内 の 電 界 分 布 の 計 算 を 行 っ た 。 本 方 式 に お い て は キ ャ ビ テ ィ 内 の 電 界 分 布 に よ る 、 被 検 体 の 幅 方 向 の 感 度 分 布 は 避 け ら れ な い も の で あ る が 、 そ の 実 体 を 把 握 し 、 次 章 以 降 の 実 験 結 果 と あ わ せ て そ の 感 度 分 布 が 性 能 に 及 ぼ す 影 響 や 、 そ の 対 応 方 法 の 検 討 に 資 す る た め に 計 算 を 行 っ た 。

4.2 共 振 周 波 数 シ フ ト

4.2.1 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン ツ ー ル

内 容 積 の 小 さ な Xバ ン ド キ ャ ビ テ ィ を 用 い て 電 磁 界 解 析 の 数 値 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン を 実 行 す る 場 合 、 高 い 数 値 精 度 が 必 要 で あ る 。 本 研 究 の よ う に 非 常 に 小 さ な 共 振 周 波 数 シ フ ト を 定 量 的 に 確 認 す る た め に 、ANSYS HFSS v14( 2 5)と い う シ ミ ュ レ ー シ ョ

(29)

ン ソ フ ト ウ エ ア を 用 い て 計 算 を 行 っ た 。 こ の ソ フ ト ウ エ ア は ア ン テ ナ や 受 動 デ バ イ ス の 設 計 な ど に 広 く 用 い ら れ る 汎 用 電 磁 界 解 析 ツ ー ル で あ り 、 微 分 形 式 の Maxwell 方 程 式 を 解 く た め に 有 限 要 素 法(Finite Element Method、FEM)を 用 い て い る 。指 定 さ れ た 精 度 を 達 成 す る た め に HFSS は 繰 返 し 計 算 毎 に 体 積 メ ッ シ ュ の 修 正 を 行 っ て い る 。 本 研 究 で は HFSS の 持 つ 計 算 モ ー ド の う ち 固 有 値 解 析 モ ー ド を 使 用 し た 。 こ の モ ー ド で は 損 失 の 無 い 場 合 と あ る 場 合 の い ず れ に 対 し て も 固 有 値 を 計 算 す る こ と が で き る 。

4.2.2 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン モ デ ル

計 算 を 実 行 す る に あ た っ て PEC で あ る

a  22 . 9

mm、

b  10 . 2

mm で

d  90

mm の 直 方 体 の キ ャ ビ テ ィ を モ デ ル 化 し た 。 図 4.1 に 示 す よ う に 、 電 界 お よ び 磁 界 分 布 の 対 称 性 を 考 慮 し 、 境 界 に よ り 領 域 を 分 割 す る こ と で 、 計 算 量 を 1/4 と し た 。 粒 子 と し て PEC の 立 方 体 で あ る 粒 子 を キ ャ ビ テ ィ の 中 心 に 設 置 し た 。粒 子 の サ イ ズ は こ の 研 究 の タ ー ゲ ッ ト で あ る 50 か ら 500m で あ る 。 キ ャ ビ テ ィ の 基 本 モ ー ド で あ る

TE1 0 x を モ デ ル 化 し た 。 数 値 誤 差 を 最 小 限 に す る た め 収 束 の 制 約 を 2107%と し た 。

こ の 制 約 は 繰 返 し 計 算 の 間 の 共 振 周 波 数 の 変 化 の 大 き さ を 規 定 す る 。 例 え ば 共 振 周 波 数 が 10GHz で あ っ た 場 合 は メ ッ シ ュ の 修 正 は 計 算 毎 の 共 振 周 波 数 の 違 い が 20Hz 未 満 と な っ た と き に 終 了 す る こ と に な る 。 た だ し 計 算 機 の メ モ リ ー の 制 約 と 長 大 な 計 算 時 間 を 避 け る た め 、 繰 返 し の 上 限 は 12 回 と し た 。

4.2.3 計 算 精 度 の 確 認

こ の よ う な 微 小 な 導 電 性 粒 子 に よ る 共 振 周 波 数 の モ デ ル 化 は 非 常 に 高 い 計 算 精 度 を 要 求 す る 。 ま た 、 メ ッ シ ュ の 形 状 の 違 い が 計 算 結 果 に 無 視 で き な い 影 響 を 及 ぼ す 可 能 性 が あ る 。 異 な る 大 き さ の 粒 子 を モ デ ル 化 す る と き の メ ッ シ ュ は 異 な る 。 こ れ ら の メ ッ シ ュ の 違 い に よ る 計 算 結 果 の 精 度 へ の 影 響 を 確 認 す る た め に 、 異 な る メ ッ シ ュ の サ イ ズ に よ る 空 の( 粒 子 を 設 置 し な い )キ ャ ビ テ ィ の 共 振 周 波 数 を 計 算 し た 。 こ れ は そ れ ぞ れ そ の 大 き さ の 粒 子 を 設 置 し た 時 の メ ッ シ ュ の 大 き さ が 異 な る こ と に

(30)

対 応 す る 。 数 値 計 算 と 解 析 計 算 に よ る 空 の キ ャ ビ テ ィ の 共 振 周 波 数 の 計 算 結 果 を 図 4.2 に 示 す 。PEC の 直 方 体 キ ャ ビ テ ィ の 共 振 周 波 数 は 次 式( 24 )に よ り 解 析 的 に 計 算 で き る 。

2 2

2

nmx

2

x 2

m 2

n 

 

 

 

 

 

 

 

 

d b

c a

f

(13)

こ こ で n、m 及 び x は 共 振 モ ー ド を 示 す 整 数 で ab 及 び d は キ ャ ビ テ ィ の サ イ ズ 、 108

998 .

2 

c m/s は 光 速 で あ る 。 数 値 計 算 の 解 析 計 算 と の 乖 離 は TE1 0 7を 500m 粒 子 に 相 当 す る メ ッ シ ュ サ イ ズ で 計 算 し た 場 合 に 最 大 と な っ た が 、そ れ で も 高 々20Hz で あ っ た 。 更 に 低 い モ ー ド で は こ の 乖 離 は 10Hz 以 下 で 、 こ れ ら の 結 果 か ら い ず れ の ケ ー ス に お い て も 計 算 結 果 の 精 度 と し て 20Hz 程 度 が 得 ら れ る こ と が わ か っ た 。 4.2.4 数 値 計 算 に よ る 周 波 数 シ フ ト

立 方 体 形 状 の PEC 粒 子 に よ る 共 振 周 波 数 シ フ ト の 計 算 結 果 を 図 4.3に 示 す 。計 算 結 果 の 共 振 周 波 数 シ フ ト は 粒 子 の 体 積 に 比 例 し た 変 化 を 示 し た 。 計 算 の と き に 粒 子 を 設 置 し た 位 置 で は 、 計 算 の 中 で 最 も 高 い 偶 数 モ ー ド で あ る TE1 0 6 で の シ フ ト 量 は 最 も 低 い 奇 数 モ ー ド で あ る TE1 0 1 の 場 合 よ り も 小 さ い 値 で あ り こ れ は Slater の 法 則 か ら 導 き 出 さ れ た 結 果 と 一 致 す る 。 奇 数 モ ー ド の 数 値 計 算 の 結 果 を 表 4.1 に 数 値 で 示 し た 。こ の 結 果 か ら 、共 振 モ ー ド TE1 0 7で は 1辺 が 100m の PEC 立 方 体 粒 子 は お よ そ 5kHz の シ フ ト を 、50m で は 0.6kHz の シ フ ト を 発 生 さ せ る こ と が わ か る 。 ま た 、式(11)は 粒 子 の 位 置 が 一 定 で あ れ ば 比 で あ る

f /   f

0

V

p の 値 が 一 定 と な る こ と を 示 し て い る 。数 値 計 算 の 結 果 か ら

f /   f

0

V

p を 計 算 し た 結 果 を 図 4.4 に 示 す 。こ こ か ら 、計 算 し た 粒 子 の 形 状 と 位 置 に お い て

f /   f

0

V

p

 3 . 5  10

5m- 3と 一 定 で あ る こ と が 示 さ れ た 。キ ャ ビ テ ィ の 体 積 が 2.1105m3で あ る と き 、

 

fVc

/

f0Vp

7.3と な る が 、 こ れ は 式(11)で 計 算 さ れ る 球 形 PEC 粒 子 に 対 す る 同 様 の 比 率 よ り も 約 20%大 き い 値 で あ っ た 。 以 上 の 結 果 か ら 数 値 計 算 と 解 析 計 算 が 良 く 一 致 し 、 ま た Slater の 法 則 に よ る 近 似 か ら 微 小 な 導 電 性 粒 子 に よ る 共 振 周 波 数 シ フ ト の 計 算 結 果 が 得 ら れ る こ と が わ か っ た 。

(31)

4.3 キ ャ ビ テ ィ 内 の 電 界 強 度 分 布

4.3.1 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン 手 法

キ ャ ビ テ ィ 内 部 で の 電 界 強 度 分 布 を 計 算 し て 、 本 検 出 方 法 に 存 在 す る キ ャ ビ テ ィ 内 の 感 度 分 布 の 確 認 を 行 っ た 。 こ の 計 算 は 先 に 示 し た シ フ ト 量 の よ う な 計 算 精 度 は 要 求 さ れ な い 。 計 算 に は シ ミ ュ レ ー シ ョ ン ツ ー ル は 偏 微 分 方 程 式 の ソ ル バ ー で あ る FlexPDE6( 2 6)を 用 い 、こ れ に キ ャ ビ テ ィ の 形 状 の モ デ ル を 図 4.5 の よ う に 設 定 し 境 界 条 件 と し て キ ャ ビ テ ィ の 内 面 に PEC 条 件 を 設 定 し て ヘ ル ム ホ ル ツ 方 程 式

0

0 2

2  

 



E

E c

(14)

の 固 有 値 解 を 計 算 し 、 共 振 周 波 数 と 共 に キ ャ ビ テ ィ 内 の 電 界 強 度 分 布 を 得 た 。 こ こ で 、Eは キ ャ ビ テ ィ 中 の 電 界 強 度 、

は 角 速 度 、c2.998108m/s は 真 空 中 の 光 の 速 度 、と0は そ れ ぞ れ キ ャ ビ テ ィ 内 の 物 質 の 誘 電 率 お よ び 真 空 中 の 誘 電 率 で あ る 。モ デ ル に は ス リ ッ ト と 同 軸 導 波 管 変 換 器 へ の 貫 通 孔 を 含 め た た め 、4.3.2 の 結 果 の カ ラ ー チ ャ ー ト で は こ れ ら に よ る 凹 凸 が 含 ま れ る 。 こ こ で は 分 布 を 中 心 に 考 え た た め 、 共 振 周 波 数 自 身 の 精 度 は 要 求 し て い な い が 、 モ ー ド の 確 認 の た め に 記 録 し た 共 振 周 波 数 を 表 4.2に 示 す 。

4.3.2 キ ャ ビ テ ィ 内 部 の 電 界 分 布

計 算 の 結 果 得 ら れ た キ ャ ビ テ ィ 内 の 電 界 強 度 分 布 の 例 と し て 、TE1 0 5の 場 合 の 結 果 を 図 4.6 に 示 す 。 こ の 図 は そ れ ぞ れ x、yz 軸 を 法 線 と し て 、 キ ャ ビ テ ィ の 中 心 を 通 る 平 面 内 の 強 度 分 布 を 色 で 示 し た も の で あ る 。図 4.6の(a)の 左 右 と(c)の 上 下 の 凸 部 は ス リ ッ ト 部 分 、(a)と(b)の 上 下 の 凸 部 は 電 界 導 入 孔 で あ る 。図 4.6(b)に 示 す よ う に キ ャ ビ テ ィ の y 軸 方 向 か ら 見 た 場 合 は 、TE1 0 5の 1 と 5に 相 当 す る 長 手 方 向 に 並 ん だ 交 互 に 符 号 の 異 な る 5 つ の 円 板 ( 実 際 は 円 筒 ) 状 の 強 度 分 布 が 見 ら れ る 。 こ れ 以

図   2.4  検 出 波 形 の 例
図 3.1  キ ャ ビ テ ィ の モ デ ル 形 状xyzbad
表 4.1 50 か ら 500 m の 立 方 体 PEC 粒 子 に よ る 共 振 周 波 数 シ フ ト の 数 値 演 算 結 果
表 4.2 電 界 強 度 分 布 計 算 で 得 ら れ た 共 振 周 波 数
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