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科学文化育成を目指して I 市民とのリサーチ・コミュニケーション『アストロノミー・パブ』の評価

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Academic year: 2018

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(1)

科学 文化 育成を 目指し て

I

市民 とのリ サー チ・コ ミュ ニケー ション 『ア ストロ ノミ ー・パ ブ』 の評価

縣 秀彦(自然科学研究機構 国立天文台)

Cultivation of science culture I

Evaluation of the research communication "astronomy pub" with citizens

Hidehiko AGATA

National Institutes of Natural Sciences, National Astronomical Observatory of Japan

Abstract

Science plays an important role in technology and economic development. But science also plays intellectual and cultural roles. Science is the same over the world but public culture vary, and Public Understanding of Research (PUR) activities have to reflect these differences. Goals and approaches of outreach are somewhat different in various countries. Robert Semper (2005) has classified the public understanding of research (PUR) as follows. The PUR Culture in Europe - “Dialogue”, in US -“Understanding”, and in Japan - “Interest and Awareness”.

“Science Café”s, popular in the U.K., are starting to become popular in Japan. Science Cafés are seen as a good way to relax and enjoy scientific discussion. But in Japan, cafés are as not relaxing for the general public as they are in the U.K., and a science café might feel quite similar to a normal science lecture. For a interactive communication in Japan, other methods are needed. So we devised a scientific communication method more adapted to Japanese Culture. Through these kinds of activities we hope that astronomy will stimulate the public’s intellectual curiosity and be have an effect of being an entrance to science. We hope that many institutions, universities, and citizen perform similar activities and contribute to science becoming a culture.

I.はじめ に

第 3 次 科 学 技 術 基 本 計 画 ( 文 部 科 学 省 ,

2006)(平 成18年3月28日 閣議決定)は,「社

会・ 国民に支持さ れ,成果を 還元する科学 技 術 」 を 基 本 姿 勢 に ,「 研 究 者 等 と 国 民 が 互 い に対 話しながら, 国民のニー ズを研究者等 が 共有 するための双 方向コミュ ニケーション 活 動で あるアウトリ ーチ活動を 推進する.こ の ため ,競争的資金 制度におい て,アウトリ ー チ活 動への一定規 模での支出 を可能にする 仕 組み の導入を進め る」と宣言 している.科 学 技術 に対する国民 意識の向上 が科学技術の 発 展に おいて不可欠 であること が関係者の共 通 理解 となりつつあ る.

そ の よ う な 時 代 背 景 を 受 け て か ,「 サ イ エ ンス ・カフェ」が ,日本でも しばしば行わ れ る よ う に な っ た . 例 え ば ,2006 年 の 科 学 技

術 週間 では 全国 20 箇 所で実 施さ れた .しか し ,筆者の知 る限りではこ のような活動 が, 研 究者と国民 の双方向コミ ュニケーショ ン活 動 として,ま たは,科学技 術に対する国 民意 識 の向上に対 してどのよう な効果がある のか に ついて客観 的な評価はほ とんどなされ てい な い(Uematsu, Y., et.al., 2006 Shang,Y., 2006

Agata,H., 2006 ま た は , 北 海 道 大 学,2006 な

(2)

II.研 究のねらい

科 学(または科 学技術)に ついて,市民 と 研究 者が議論でき るサロンが 「サイエンス ・ カ フ ェ 」 で ,1998 年 頃 か ら 英 国 で 実 施 さ れ てい る.最初に20∼30分 程度,研究 者側が 研究 の紹介等をし ,その後, 参加市民と1 時 間 程 度 対 話 ( 討 議 ) す る の が 一 般 的 で あ る (Grand,A., 2006) . も と も と 欧 州 で は , 対 話 文化 が重視され, 多くの市民 にも対話文化 が 浸透 しているもの と推察され る.しかし, 日 本の 場合,カフ ェで友人同 士話題が弾ん でも, 見知 らぬ同士で対 話が始まる という光景は 一 般的 ではない.科 学は世界共 通とは言え, 科 学を 理解する過程 や科学を楽 しむ文化は, そ れぞ れの国・地域 の文化・歴 史等によって 異 なる のではないだ ろうか.欧 州での科学普 及 に お け る キ ー ワ ー ド が 「 対 話 (Dialogue)」, 米 国 が 「 理 解 (Understanding) 」 で あ る の に 対 し , 日 本 は 「 興 味 関 心 (Interest)」 と 「 参 加 意 識 (Awareness)」 と 指 摘 さ れ て い る (Semper,R., 2005).

こ のため,講演 会よりはリ ラックスした 雰 囲気 で聞ける等の 利点はある ものの,欧州 と 同じ カフェ形式で は市民のニ ーズを研究者 が 共有 する場とはな り得ないの ではないか, す なわ ち,厳密な意 味で双方向 コミュニケー シ ョン が成立しにく いのではな いかと考えた . そこ で,日本の文 化に適応し た双方向コミ ュ ニケ ーション方法 を考案し実 施・評価する こ とに した.

III.アストロノミー・パブの 概要

自然 科学 研究 機 構国 立天 文台と NPO 法 人 三鷹 ネットワーク 大学は,研 究者と市民と の 双方 向コミュニケ ーションを 通じ,研究者 の 社会 リテラシーの 向上と,市 民の科学リテ ラ シー の形成・向上 を目指して ,2005 年 11月 より 毎月1回の「 アストロノ ミー・パブ」 を JR 三鷹駅前の三 鷹駅前協同 ビル3階で ,一 般市 民に参加を呼 びかけて実 施している.

三 鷹ネットワー ク大学は, 学校教育法上 の 大学 ではなく,三鷹市 が主に出資 し近隣の14 大学 ・教育機関が 単位互換を 含めた大学サ テ ライ ト機能として 駅前ビルの 1フロアを利 用 する とともに,三 鷹市民向け のカルチャー 教

室 等 を共 同実 施し てい る NPO 法 人 であ る.

図 1 アストロノミー・パ ブの流れ(模式 図)

ア ストロノミ ー・パブの特 徴は,要約す ると 次 の6点で ある.

① 人 数 を 絞 る :30 名 以 内 ( 必 ず 一 言 は 会 話 を 交わせる人 数)

② アルコール が入る:打ち 解けた雰囲気 で会 話 しやすくな る.

③ 最 初 に ス テ ー ジ で 研 究 者 と ゲ ス ト が 対 談 ( 対決)をす る:これによ って市民がど ちら か に感情移入 したり,自分 の代弁者のよ うに

ス ク

リー ン

当日の流れ

市 民

対談

対談

研究者

ゲスト

全体は2時間程度

まず、飲み物を手に

取る

最初の30分は着席 で研究者とゲストの

会話を楽しむ

ゲストは研究者でな

くてもかまわない。 芸術家やメディア人 など、なるべく多彩で 市民に身近なゲスト を呼ぶ。

市 民

対話

研 究

ゲ スト

中盤の1時間程度

研究者とゲストはフロ

アに降りて参加者と

飲みながら立食で会

気の利いた料理と飲

み物のもてなし

参加者一人あたり講 師を5分以上束縛し ないをルールとする

市 民

対話 フロア

ス テ

ー ジ

飲 み物 食 べ物 テーブル

ス ク

リー ン

市 民

対談

対談

研究者

ゲスト

まとめの10分程度

まとめの対談

みんなで歌を合唱

とか

記念写真を撮るとか

まとめ方もホスト役

の研究者次第

オプションとして 4Dシアターや

(3)

感じ る・・・その 後のフロア での会話につ な がる .

④30∼40分 の対談のあと は,市民か らの質 問に 答え,その後 ,フロアに 降りて参加者 と 会 食 . た だ し ,「 参 加 者 一 人 あ た り 講 師 を 5 分以 上束縛しない 」を唯一の ルールとする . ⑤気 の利いた料理 と飲み物を 提供する ⑥駅 から至近な会 場である: 終了後も二次 会 で盛 り上がること も可.また 帰宅の足も確 保 しや すい

表 1に例として 6回目まで の内容を示す . 毎月 第3土曜日の 19:00 ∼ 21:00 に 実 施し, 応募 倍率は毎回2∼3倍で あるが,毎 回のア スト ロノミー・パ ブは三鷹ネ ットワーク大 学 で 1 ∼ 2 を 争 う 人 気 イ ベ ン ト と な っ て い る (参 加費3000円 ).なお, 今まで天文 学に興 味を 持たなかった 市民層に参 加してもらう こ とを 目標にしてい るため,広報は三鷹市 報等, 三鷹 市民向けの情 報提供に留 めている.

表1 アストロノミー・パブ実 施内容(例)

〇 2005年10月29日(土)

海部宣男(台長)vs青野由利(毎日新聞)

テーマ:「天文学と文学」

① 2005年11月19日(土)

観山正見 (副台長)vs 井田茂 (東工大)

テーマ:「太陽系外の惑星に生命は」

② 2005年12月27日(土)

福島登志夫 (教授)vs三島 勇 (読売新聞)

テーマ:「科学報道のうらば なし」

③ 2006年1月21日(土)

渡 部 潤 一 (広 報 室 長 )v s 大 平 貴 之 (プラネタリウム クリエータ)

テーマ:「人工の星空vs自然の星空」

④ 2006年2月18日(土)

半 田 利 弘 (東 大 )vs 伊 藤 俊 治 (C ONT A C T J apan)

テーマ:「宇宙人と出会うには?」

⑤ 2006年3月18日(土)

小 久 保 英 一 郎 (主 任 研 究員 )v s神 谷 千 尋 (沖 縄ミュージシャン)

テーマ:「ウチナーからティンジャーラへ」

⑥ 2006年4月15日(土)

桜井隆(副台長)vs矢治健太郎(立教大)

テーマ:「皆既日食と太陽研究最前線」

注 )肩 書 きは 当 時 の もの 。所 属 の 書 いてない者 の

所属はすべて国立天文台

V .双方 向コミュニケーションの評 価

1.調査の方 法

このような 市民相手の双 方向コミュニ ケー シ ョンの効果 を具体的に評 価しようとす る場 合 ,調査対象 が一期一会の 一般市民であ り, 事 後の面接調 査や,数十分 かけて複数枚 回答 し てもらうよ うな調査用紙 による調査は 実施 が 難しい.そ こで,どこで も実施可能な レベ ル での評価方 法として,通 常の市民向け 講演 会 ,サイエン ス・カフェ, アストロノミ ー・ パ ブの3つの 形態のアウト リーチ活動を ,A4 紙 1枚程度で の簡易的な事 後アンケート 調査 で 比較してみ た.3種類の アウトリーチ 活動 で ,毎回,そ れぞれの参加 者が帰る際に 用紙 を 配布しその 場で回収した .回収率を上 げる た め,アンケ ートを提出す ると簡単なお 土産 を 渡すよう工 夫した.3種 類共通の調査 項目 は , 参 加 者 の 属 性 ( 性 別 , 年 齢 , 職 業 ), 天 文 (または科 学)への興味 の程度のほか に, 評 価項目とし て5段階評定 法で,全体の 満足 度 を聞いた. また,次回, どんな内容の 話や ど んな人の話 を聞きたいか ,および,自 由意 見 の記述につ いては共通と した.その他 ,講 演 会,カフェ ,パブそれぞ れ固有の質問 を複 数 含めて,3∼ 5 分程度 で回答可能 な量に留 め た.

市民向け講 演会とアスト ロノミー・パ ブは 同 時 期(2005 年 11 月 ∼ ),同じ 三鷹 ネ ット ワ ーク大学で 実施されたも のである.講 演会 は 「天文学講 座∼理論と観 測で探る宇宙 の階 層 ∼」と題し た 5 回連続 講座(定員 70 名 事 前 申 し込 み制 ,参 加費 3000 円 )で ,毎 週金 曜 日 の 19:00-20:30 に 実 施 さ れ た . 講 師 は 国 立 天文台の著 名な研究者5名である .アンケ ー トの回答数 は236で, 同一人物が最 大5回 回 答している 可能性がある .一方,アス トロ ノ ミー ・パ ブは 11 月 から4 月ま での 毎回の 参 加 者 の う ち ア ン ケ ー ト に 回 答 し た も の は

107 名 であ った. これ らは 講演者 が一部 同じ

(4)

一 方,サイエン ス・カフェ は三鷹ネット ワ ーク 大学で実施し ていないた め,毎回のパ ブ の司 会者である著 者が,総合 研究大学院大 学 (葉 山)で実施し たサイエン ス・カフェの デ ータ を参考として 用いた.こ のカフェは「 湘 南国 際村フェステ ィバル」の 総研大主催イ ベ ント の一つとして 2006年 5 月 3 日の 午後の 時間 帯に,一般向 けの講演会 後に総研大の 食 堂に て2時間 程度実施され た(参加費 無料, 事 前 申 し 込 み な し ). 最 初 の 話 題 提 供 は , 大 学院 生3名( 遺伝学,天文 学,素粒子 )によ るそ れぞれ20分 程度のミニ 講演で,その 後, 総研 大の研究者も 交ざって活 発に質疑応答 や 討議 が行われた.

こ こでは,アス トロノミー ・パブでの経 験 に基 づき,アルコ ールこそ出 ないものの, 参 加者 と研究者が打 ち解けて会 話できるよう , 会場 内で自由に移 動可能な立 食の時間を設 け るな ど,一般的な サイエンス ・カフェより パ ブの 理念に近い形 態で行うよ う工夫した.

全 体の参加者が 主催者側の 研究者・学生 ・ 事 務職員 を含 めて 50 名 弱で あった が, 参加 した 一般市民は, アンケート に回答すると お 土産 の抽選会に参 加できたた め,ほぼ全員 が ア ン ケ ー ト に 回 答 し て お り ,32 名 分 の デ ー タが 集まった.ただし,扱った科 学の内容も, 受講 者(葉山周辺 の市民が多 い)も他の2 つ の集 団と異なるの で,結果の データの比較 に つい ては,あくま でも参考程 度に留めるこ と とす る.

2. 調査結果と考 察

カ フェやパブの 場合,主催 者側としては , 今ま で一般向け講 演会にはあ まり参加して い ない 市民層の参加 を期待して いるケースが 多 い. 参加者の属性 について, 年齢分布はカ フ ェと パブが良く一 致しており ,講演会と比 較 して ,カフェやパ ブがどの世 代にとっても 参 加し やすいイベン トであるこ とが分かる. 一 方, パブと講演会 へはカフェ と比較して女 性 の参 加者が多かっ た.これは ,葉山の場合 , 昼間 の開催時間で あったこと と,車でない と 参加 できない場所 であったこ とが影響して い ると 思われる.女 性の参加者 を増やすには , 駅よ り至近という 交通の便や ,開催時間帯 ,

さ ら に 広 報 手 段 等 が 重 要 で あ る と 推 察 さ れ る .

全体の満足 度について, (1) と ても満足(2) ほ ぼ満足(3) どちらと も言えない (4) やや 不満 (5) と て も 不 満 の 5 段 階 で 回 答 を 求 め た と こ ろ,講 演会は1.70(標 準偏差S.E.0.76,n=233), カ フェは1.76(S.E.0.71,n=33)な のに対し, パ ブは 1.49(S.E.0.59,n=107) であ った.図 4 にように大 変満足したと いう参加者が ,パ ブ では他より 多いことが分 かる.

図 2 参加者 の性別の比較

グラフ中の数字は% 黒は無回答

図 3 参加者 の年齢の比較

図 4 参加者 の満足度の比 較

満足度を5段階評定法で比較.パブ参加者の満足度

が,講演会やカフェに比べて高い.

女 性 , 39 男 性 , 56

女 性 , 24 男 性 , 67

女 性 , 42 男 性 , 57

0 % 2 0% 4 0% 60% 80% 100 %

講 演 会 カフェ

パ ブ

0% 20% 4 0% 60% 80 % 100 %

講 演 会 カフェ

パ ブ

<20 20- 29 30- 39 40- 49 50- 59 <60 無 回 答

45 42 10

39 46 15

53 41 2

0% 20 % 40 % 60% 80% 1 00%

講 演 会 カフェ

パ ブ

(5)

3. アンケート調 査からの改 善

バ ブのアンケー ト結果につ いて,改善点 と して 注目したい意 見を抽出し てみた(表2).

表2 改善に役立った意見

① 前 半 30分 の 内 容 は つまらない.とてもムダな時

間 と思 った.3000円 じゃ高 いと思 ってました.[第 2

回,40代女性]

② 時 間 と場 所 の 制 限 もあり話 題 を絞 って下 さい.

飲 食 中 心 では なく講 師 との トークを出 来 る限 り共

有 空間で.質疑 応答 を共通 する人 々と共 有する

形でやれればと思 う.[第2回,60代男性]

③ しか たない話 ですが 先 生 と直 接 話 せ る時 間 が

短いです.[1回目,40代男性]

④ 名 札 に先 生 であるマークをつけてください.[4

回目,60代男性]

① ,②の意見は ,参加者側 が描いている 内 容と 主催者側の意 図した内容 とのミスマッ チ が原 因で,①,② の回答者と も「天文学へ の 興 味 」 に つ い て ,「 と て も あ る 」 を 回 答 し て いる .つまり,通 常の講演会 のような天文 学 の内 容を期待して 来たところ ,科学報道の 話 であ ったため,不満を強く 感じたようで ある.

こ のような問題 に対して, 市報での案内 に イベ ント内容を書 くよう変更 するとともに , 第 3 回より最 初のトーク時 間を 10 分程 度延 長す る(40 ∼ 50分 程度) とともに,最 初に 質問 用紙を配布し ,トーク後 に出演者2人 に 答 え て も ら う よ う に し た ( 表 3 ). 質 問 内 容

表3 質問紙による質問例

○ 星を見 ることが人を癒す以上の意義 や意味を持

っているとしたら何だと思いますか?[3回目]

○ 「こんなプラネタリウム を作 ってみ たい」という

目標はありますか?[3回目]

○ 女性のタイプを教えてください.[3回目]

○ 日 常 生 活 の 中 で例 えば 家 族 との 会 話 の 中 で星

の話題は多く出ますか?[5回目]

には ,通常の講演 会での質疑 応答レベルの 質

問 のみならず ,表3に例を 示したような 出演 者 をより身近 に感じている 例も多く,通 常の 講 演会よりは ,対等の立場 での双方向コ ミュ ニ ケーション が成立しやす い環境である こと が 推察される .また,満足 度の高い参加 者の ア ンケート自 由記述欄には「 ざっくばら ん」, 「 気 さ く 」,「 和 ん だ 雰 囲 気 」 等 の 言 葉 が 良 か っ た 点 と し て 記 述 さ れ て い る ケ ー ス が 多 い .

なお,③の 意見に関して ,会話時間の 長さ や 会話の有無 と,参加への 満足度の間に は相 関 が見られな かった.

このように いくつか初期 段階で,参加 者の 声 を参考に改 善を加えたた め,第4回以 降は 否 定的な意見 はほとんどな くなった.し たが っ て,調査内 容に限界はあ るものの,こ のよ う なアンケー ト調査はアウ トリーチ事業 を実 施 する上で有 効な評価方法 であると推察 され る .表4には ,研究者と国 民が互いに対 話す る ことの成果 について手が かりとなる感 想を 示 す.

表 4 参加者 の感想例

○ 楽 しい時 間 を過 ごさせ て戴 きました.もっともっ

と20年 も生 きていたいと思 いました.ありが とうご

ざいました. [1回目]

○ 「ほんの5億年 前に,,」っておっしゃたのが本当

に面白かった. [1回目]

○ 毎 回 楽 しみ です.新 鮮 な話 題 で刺激 的 です.専

門 家 と会 話 できる機 会 は 普 通 は 無 いの で,とても

興味深 い限りです.[2回目 ]

○ 初 めてで一 人 で心 細か ったのですがとても和 ん

だ雰 囲 気 で最 高 でした.すば らしい企 画 だと思 い

ます .今 後 も参 加 させ ていただけたらうれ しいで

す.[3回目]

○ これか ら親 になる世 代 を引 き込む企 画 を期 待 し

ます.科学へ 目をむける親を育ててください.[3回

目]

○ 最 終的 に楽 しく過ごせました.全く知らない人の

中 に放 り込 まれて少 しどうしようか と心 細 かったの

ですが ,ありが とうございました.また参 加 したい

(6)

V. まとめ

ア ンケート調査 より分かっ たことをまと め ると 次のようにな る.

①「 アストロノミ ー・パブ」 参加者の満足 度 は一 般的な講演会 より高い.

②市 民との対話に おいて,「ざっくばらん」, 「 気 さ く 」,「 和 ん だ 雰 囲 気 」 が 大 切 と 答 え る市 民が多い.

一 般市民との対 話がどのく らい成立して お り効 果として何が あるのかの 正確な検討は こ れか らだが,併せ て研究者の 社会リテラシ ー がこ のような活動 に参加する ことでどう変 わ る か の 測 定 も 重 要 で あ り 今 後 の 課 題 と し た い. また,このよ うな活動を 継続してほし い とい う意見も多く ,継続性が 大切であると 理 解し ている.

ま た,アンケー ト結果の他 ,パブ中の会 話 から も推察される ことは,双 方向コミュニ ケ ーシ ョンの場にお いて,市民 はサイエンス の 結果 そのものより もリサーチ の過程やリサ ー チャ ーそのものに 強く関心を 抱いているの で はな いかという点 である.サ イエンス・コ ミ ュニ ケーション( =科学技術 の成果に関す る 対話 )というより ,むしろ「 リサーチ・コ ミ ュニ ケーション( =科学の過 程や科学する 人 に 関 す る 対 話 )」 の 広 が り が , 科 学 技 術 に 対 する 国民の意識向 上において 大切ではない か と推 察される.こ の点につい ては,例えば 池 内 (2005) が ,「 今 , 日 本 で は 科 学 技 術 創 造 立国 などという厳 しい旗を立 てて経済を活 性 化す るための科学 が喧伝され ているが,実 は 市民 が求めている 科学はそう いうものでは な い. 金儲けのため の科学では なく,スコッ チ を片 手に楽しむ科 学,未知の 物語を繙く科 学 を望 んでいるので はないだろ うか」と指摘 し てい る点と合致す る結果とも 言える.

科 学研究を肴に した飲み会 「サイエンス ・ パブ」が,今後多く の大学や研究 機関・企業, また は博物館・科 学館などで 主催され,科 学 が文 化として定着 する上で役 立つことを希 望 して いる.

引用 文献

Agata,H. Science as a Culture, and an Introduction to new Public Understanding of

Research(PUR)Experiments in Japan,

PCST-9,TA1-01,2006.

Grand, A. ジュニア・サ イエンスカ フェの試

み ― ― あ な た の 地 域 で , あ な た の 言 葉 で,

PCST-9 協 賛国際シ ンポジウム(2006 年 5

月23日 ) 基調講演,2006.

北 海道大学科 学技術コミュ ニケータ養成 ユニ ット編集サ イエンスコミ ュニケーショ ンワ ークショッ プin Sapporo報 告書, 2006. 池 内了 市民と科学, 市民の科学,Graphication,

No.138,2005.

文 部科学省 科学技術基本 計画,

http://www.mext.go.jp/a_menu/kagaku/kihon/0603 2816/001.htm,2006.

Semper,R. Bridging the Cultures: Towards a Networked Approach to the Public

Understanding of Research, AAAS Annual Meeting 2005.

Shang, Y. Cafe Scientifique: A Successful Model of Science Communication from West to China, PCST-9,TA1-04,2006.

参照

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