カ ー ヴ ィヤ 文 体 の 研 究
比喩 と語 合成
II
三
井
淳
司
目 次 第2章 カ ー ヴィ ヤ の比 喩 (1)カ ー ヴ ィヤ に お け る比 喩 (2)分 析 デ ー タ につ い て (イ)マ ン ダ ソー ル碑 文 (ロ)ア ー イ ホ ー レー碑 文 (ハ) 両 碑 文 と カ ー リダ ー サ の年 代 (3)分 析 の 方 法 (4)分 析 の 結 果 (5)分 析 結 果 の 比 較 付 録 (1)マ ン ダ ソー ル 碑 文 テ ク ス ト (2)マ ンダ ソー ル碑 文 和 訳 (3)ア ー イ ホ ー レー碑 文 テ ク ス ト (4)ア ー イ ホ ー レー碑 文 和訳 (5)マ ンダ ソー ル碑 文<語 合 成 の 構 造 図> (6)ア ー イ ホ ー レー碑 文<語 合成 の 構 造 図> カ ー ブ イ ヤ 文 体 の 研 究 比 喩 と 語 合 成II密 教 文 化 第2章 カ ー ヴ ィ ヤ に お け る 比 喩 (1)カ ーヴ ィヤにおける比喩 カ ー ヴ ィ ヤ(kavya)に は文 体 的特 徴 が あ る。 そ れ には、 詩 人 個 人 に 由来 す る も の と、 そ の カー ヴ ィヤ が作 られ た時 代 の風 潮 とい っ た もの に 由 来 す る場 合 とが あ る。 第1部 で は、 個 人 や 時 代 を超 えた 共通 性 を前 提 と して カ ー ヴ ィ ヤの 語 順 を分 析 した。 そ の結 果、<補 語 句 集 団 の群 形 成 の法 則>と い う文 体 的 特徴 を示 す 可 能 性 を得 た。(1)そこで、 第2部 とな る本 稿 で は、 年 代 に よる文 体 の変 化 とい う観 点 を重 視 して、 碑 文 を分 析 デ ー タ と した。 分 析 の方 法 と して は、 碑 文 カー ヴ ィヤ に用 い られ て い る比 喩 を比 較 検 討 す る こ とに した。(2) カ ー ヴ ィ ヤ にお け る比 喩 は、 修 辞技 巧 の 中 で も、詩 人 に と って 最 大 の腕 の見 せ ど こ ろで あ る。 聞 き手 に新 鮮 な驚 き を与 え、 詩 に生 き生 き と した生 命 を吹 き込 む よ うな比 喩 を編 み 出す こ とが、 詩 人 た ちに と っ て どれ ほ ど重 大 な こ とで あ った か は、 修 辞 学 者 た ち が莫 大 なエ ネ ル ギ ー を費 や して、 比 喩 の形 式 をこ と細 か く分 類 して い った 修 辞 学 論 書 の歴 史 を見 れ ば察 せ られ る で あ ろ う。そ の よ うに して、 カー ヴ ィヤ の比 喩 は とて も多 くの 亜 種 に分 類 され た が、(3)この よ うな分 類 を再 検 討 す る こ とは 本論 で は 行 な わ な い。 それ よ り も、 カ ー ヴ ィ ヤ の文 体 の年 代 的 変 化 を客観 的 に示 す 指 標 と な る分 類 基 準 を新 た に 設 け、 年 代 の 異 な る碑 文 の比 喩 に それ を適 用 した い。 (注) (1)三 井 淳 司、 「カ ー ヴ ィヤ文 体 の研 究1、 カ ー ヴ ィヤ の語 順 」、 『密 教 文 化 』、 180, 1992, pp. 122-76. (2)碑 文 を分 析 デ ー タとす るの は、 作 品 と して の 質 の高 さ よ り も年 代 の 確 実 さを 重 視す るか らで あ る。 あ る いは ま た、 そ の文 章 は碑 文 と い う形 で 公 開 され る 以 上、 そ の 時 代 の文 体 的な 特 徴 を よ り反映 す るの では な い か と考 え られ るか らで あ る。
(2) 分 析 デ ー タ に つ いて す で に 第1部 の 「第1章(2)分 析 デ ー タ の サ ン プ ル 選 定 に つ い て の 碑 文 を 用 い た 理 由 」 と い う節 に お い て、 カ ー ヴ ィ ヤ の 比 喩 の 分 析 で は、 サ ン プ ル の 年 代 の 正 確 さ が 要 求 され る た め に、 年 代 の 判 っ て い る 碑 文 を サ ン プ ル に す る こ と を述 べ た。 こ こ で は マ ン ダ ソ ー ル(Mandasor)碑 文 と ア ー イ ホ ー レー(Aihole)碑 文 と を サ ン フ ル と した。 以 下 に こ の2つ の 碑 文 の 概 略 を 述 べ て お く。 (イ) マ ンダ ソー ル碑 文 こ の 碑 文 は 中 央 イ ン ド西 マ ー ル ワ(Malwa)地 方 の マ ン ダ ソ ー ル とい う、 北 緯24度3分、 東 経75度8分 の 都 市 に あ っ た。 こ の 町 は 古 代 に は ダ シ ャ プ ラ(Daapura)と 呼 ば れ て い た。 碑 文 は 平 板 の うす 黒 い 砂 岩 に 彫 ら れ て あ り、 石 の 大 き さ は、 幅2フ ィ ー ト7イ ン チ と弘、 高 さ1フ ィ ー ト4イ ン チ と施、 文 字 サ イ ズ は 平 均 約 砥 イ ン チ で あ る と い う。 文 字 は 南 部 ア ル フ ァ ベ ッ トに 属 し、 反 舌 音 のdとdhと は 北 部 ア ル フ ァ ベ ッ トか ら借 りて き て い る も の の、5世 紀 の 西 マ ー ル ワ ア ル フ ァベ ッ トの 典 型 で あ る と言 わ れ て い る。 言 語 は サ ン ス ク リ ッ トで、1 行 目 と最 終 行 を 除 き 詩 の 形 で 書 か れ て い る。 こ の 碑 文 は、 シ ヴ ァ神 の 寺 院 の 正 面 か ら河 に 通 じ る 階 段 を 半 分 ほ ど降 り た 所 の 右 手 の 壁 に は め 込 ま れ て い た。 現 在 は グ ワ リオ ル(Gwalior)の 博 物 館 に あ る。 こ の 碑 文 に つ い て は ペ ー タ ー ソ ン(Peter Peterson)が1855年 に 初 め て 報 告 し、1888年 に は フ リー ト(J. F. Fleet)が テ ク ス ト と訳 を 発 表 し、1890 (3)比 喩 を 含 む ア ラ ンカ ー ラ(alaakara、 詩 に 美 し さを もた らす表 現形 式)は 時 代 と と もに極 め て複 雑 に 分 類 され て ゆ く。例 え ば11世 紀 のKavyaprakasa で は62種、14世 紀 のSahityadarpanaで は77種、16世 紀 末 か ら17世 紀 初 頭 の Kuvalayanandaで は125種 に もな り、 そ して、 そ れ らの種 に は数 段 階 に も わ た る亜 種 が設 定 され て ゆ くこ とが 報 告 され て い る。 小 林 信 彦、 「比 喩 表 現 に お け る 同一 性 指 示 の 方 法 」、「印 度学 仏 教 学 研 究、10. 2、 昭 和32, PP. 719-710. カ ー ヴ ィ ヤ 文 体 の 研 究 比 喩 と 語 合 成II
密 教 文 化 年 に は ビ ュ ー ラ ー(G. Biihler)も テ ク ス ト と訳 及 び 論 文 を発 表 し て い る。 ま た、 フ リー トの も の は1981年 に バ ン ダ ル カ ル(Devadatta Ramakrishna Bhandarkar)に よ っ て 批 判 的 に 再 版 さ れ て い る。(4) 内 容 を 簡 単 に ま と め て お く と、 次 の よ う に な る。 昔、 ラ ー タ(Lata)地 方 か ら、 お そ ら く戦 争 の 戦 利 品 と して 絹 織 物 の 技 術 者 集 団 が こ の ダ シ ャ プ ラ に 連 れ て 来 られ た。 彼 ら は ダ シ ャ フ。ラ の 町 に よ く根 を お ろ し、 植 民 は 成 功 し、 町 も ま た 絹 織 物 に よ っ て 栄 え た。 そ して 彼 ら は 力 を 得 て ギ ル ド を 作 る ま で に な っ た。 や が て ク マ ー ラ グ プ タ(Kumaragupta)1世 の 時 代 に な り、 ダ シ ャ プ ラ は ヴ ィ シ ュ ヴ ァ ヴ ァ ル マ ン(Visvavarman)王 が 統 治 し、 そ の 息 子 の バ ン ド ゥ ヴ ァ ル マ ン(Bandhuvarman)王 が ダ シ ャ プ ラ を 統 治 す る よ う に な っ た 時、 経 済 力 を 持 っ た こ の 絹 織 物 の ギ ル ドは、 太 陽 神 の た め の 巨 大 な 寺 院 を 建 立 した。 こ れ は マ ー ラ ヴ ァ(Malaya)暦493年、 つ ま り紀 元 437-438年 の こ と で あ る。 そ の 後、 こ の 寺 院 の 一 部 が 壊 れ た の で、 同 じ ギ ル ド に よ っ て マ ー ラ ヴ ァ 暦529年、 つ ま り紀 元473-474年 に 再 建 され た。 こ の よ うな 内 容 の こ と を、 ダ シ ャ プ ラ の 町 の 美 し い 自 然 描 写 や、 施 主 の ギ ル ドの 先 祖 た ち が い か に り っ ぱ な 一 族 で あ っ た か と い う賛 辞 や、 王 さ ま を 讃 え る 描 写 や、 建 て ら れ た 寺 院 の 描 写、 そ し て そ の 季 節 の 美 し い 情 景 を ヵー ヴ ィ ヤ 体 で 歌 っ て い る。 (ロ)ア ー イ ホ ー レー碑 文 こ の 碑 文 は(5)カ ラ ー ヂ(Kaladgi)地 方 マ ラ フ ラ バ ー(Malaprabha)河 の 右 岸、 北 緯16度1分、 東 経75度57分 の ア ー イ ホ ー レ ー一に あ っ た。 そ こ は、 A. D. 7C-8Cに 西 チ ャ ー ル ク ヤ(Chalukya)城 で あ り、 古 代 研 究 に と っ て 興 味 深 い 遺 跡 が 多 い と い う。 碑 文 は 幅4フ ィ ー ト11イ ン チ と1/2、高 さ2フ ィ ー ト2イ ン チ の 石 板 の 中 に あ り、 寺 院 の 東 側 の 壁 の 外 側 に は め 込 ま れ て い る。 こ の 寺 院 は も と も と ジ ャ イ ナ 教 の 寺 院 で あ っ た こ と が 判 っ て い る。 こ の 碑 文 は 西 チ ャ ー ル ク ヤ 王 朝 の も の で あ り、フ リケ ー シ ン(Pulikesin) 2世 の 統 治 下 で、 シ ャ カ(Saka)紀 元556年(A. D. 634-635)に、 ラ ヴ ィ キ ー
ル テ ィ(Ravikirtti)に よ っ て、 ジ ネ ー ン ドラ(Jinendra)神 の 石 の 寺 院 が 建 立 さ れ た こ と を 記 録 す る も の で あ る。 の 両 碑 文 と カー リダ ー サ の年 代 こ の 分 析 の<デ ー タ 単 位>に 選 ん だ 上 の2つ の 碑 文 は、 カ ー リダ ー サ (Kalidasa)の 年 代 の 下 限 を 定 め る 際 に 重 要 な 証i拠 と さ れ て い る の で、 そ の こ と に 簡 単 に 触 れ て お き た い。 戯 曲 『シ ャ ク ン タ ラ ー(Abhijnanasakun七ala)」 で 知 ら れ る カ ー リ ダ ー サ は、 サ ン ス ク リ ッ ト文 学 史 の 最 高 峰 に 立 つ 一 人 で あ る。 文 学 的 価 値 か ら 見 て も、 以 後 の イ ン ドの 各 時 代 の 人 々 に よ っ て 讃 え ら れ、 ま た イ ン ド人 以 外 の 読 者 の 目 か ら 見 て も、 技 巧 に 走 り過 ぎ ず、 視 覚 に 訴 え る よ うな 美 しい 描 写 は 完 成 され た 芸 術 と言 え る。 ま た、 文 学 史 的 価 値 か ら 見 て も、 イ ン ド 文 学 史 上 重 要 な 数 名 の 人 物 の 年 代 を 決 定 す る ポ イ ン ト と な っ て い る。 例 え ば、 カ ー リ ダ ー サ の 年 代 が 決 れ ば、 劇 作 家 の バ ー サ(Bhasa)、 そ し て サ ー ウ ミ ッ ラ(Saumilla)や ラ ー ミ ラ(Ramila)の 年 代 下 限 が 決 ま り、 バ ラ タ (Bharata)の 年 代 下 限 に つ い て 見 通 し が た っ て く る。 さ ら に、 バ ー マ ハ (Bhamaha)の 上 限 が 定 ま り、 そ れ を 介 して ダ ン デ ィ ン(Dandin)の 上 限 も 定 ま る。 こ れ ら の 人 物 の う ち、 バ ー サ と サ ー ウ ミ ッ ラ と ラ ー ミ ラ は、 カ ー リ ダ ー サ が そ の 戯 曲 『マ ー ラ ヴ ィ カ ー と ア グ ニ ミ ト ラ(Malavikagnimitra)』 の 冒 頭 で、 先 人 劇 作 家 と し て 名 前 を 挙 げ て い る の で よ く知 ら れ て い る。 特 に バ ー サ に つ い て は、 今 世 紀 の 初 め に 南 イ ン ドの ケ ー ラ ラ 州 で 未 知 の 戯 曲 が 13点 発 見 さ れ、 こ れ が バ ー サ の 作 品 で あ る と い う説 が 出 さ れ、大 論 争 が 起 き た。(6)バ ラ タ の 作 と伝 え られ る 『ナ ー テ ィ ヤ シ ャ ー ス トラ(Natyasastra)』 は 最 古 の 演 劇 理 論 書 で あ る。 ま た、 『カ ー ヴ ィ ヤ ー ラ ン カ ー ラ(Kavyalam-kara』 の 著 者 バ ー マ ハ とPカ ー ヴ ィ ヤー ダ ル シ ャ(Kavyadarsa)』 の 著 者 ダ ン デ ィ ン は、 ど ち ら が 古 い の か に つ い て は 論 が 分 か れ る が、 い ず れ も最 初 期 の 修 辞 学 者 で あ る。 こ の よ うに、 カ ー リダ ー サ の 年 代 が 決 ま れ ば、 そ れ を 基 点 に し て、 文 学 カ ー ヴ ィ ヤ 文 体 の 研 究 比 喩 と 語 合 成II
密 教 文 化 史 上 の重 要 人 物 の不 明 な年 代 が次 々 と定 ま って ゆ く。 それ の み な らず、 カ ー ヴ ィ ヤ とい うサ ン ス ク リッ ト文 学 の核 とな る表 現 形 態 の変 遷 史 の 上 で も、 そ の 一 つ の 完成 期 を定 め る とい う意 義 を持 って い る。 現在、 カー リダー サ の年 代 は 四 世 紀 後 半 か ら五 世 紀 前 半 と言 われ て い る。 これ は百 年 以上 に もわ た る年 代 論 研 究 の結 果 落 ち着 い て きた 年 代 で あ る。 こ こ で カ ー リダ ー サ の年 代 を限 定 して きた 様 々 な要 素 を分 類 し、評 価 して お こ う。(7)下にそ の一 覧 を示 す。 各 々の 年 代 決 定要 素 に は、A、B、 C、Dと+、-と*と の記 号 が付 けて あ る。 そ れ らの意 味 は 次 の 如 くで あ る。 A: 直 接 的 文 献 証 拠;文 献 中 に 確 実 な 引 用 が認 め られ る もの。 例 え ば、 文 献 の 中 に カー リダー サ の名 前 や カ ー リダー サ 自 身 の 文 章 が は っ き りと現 れ て い る もの。 B: 間 接 的 文 献 証 拠; 文 献 へ の 引 用 が推 定 され る も の。 直 接 的文 献 証 拠 の よ うに 明 らか で は な い が、 文 献 証 拠 と して 参 考 に な り得 る もの。 例 え ば、 カ ー リダ ー サ 自身 の 文 章 で あ る と確証 され な い が非 常 にそ の可 能 性 が 高 い と推 定 され る もの等。 C: 文 献 的 状況 証 拠; 文 献 中 の記 述 か ら推 定 され る もの。 上 の二 つ の文 献 証 拠 が カ ー リダ ー サ の名 前 や カ ー リダ ー サ 自身 が作 った文 章 に関 わ って い た の に対 し、 これ は カ ー リダ ー サ の周 辺 の状 況 を 問 題 と す る も の で あ る。 D: 伝 説; 伝 説 とみ な され る もの の 中 に も史 実 を反 映 した も の が あ る か も しれ ない が、 文 献 的 な 証 拠 とは一 線 を画 して 扱 うこ と にす る。 +: 上 限 決 定 要 素; カ ー リダ ーサ の年 代 の上 限 を示 す もの。 -: 下 限 決 定 要 素; カ ー リダ ー サ の年 代 の 下 限 を示 す もの。 *: ; 辻 直 四郎 博 士 が 「サ ン ス ク リッ ト文 学 史 」 に お い
て カ ー リダ ー サ の 年 代 を 定 め て い る 主 な 根 拠 と な っ て い る も の。(8) 「カ ー リ ダ ー サ の 年 代 決 定 要 素 」 A1(+): カ ー リ ダ ー サ に よ る『 ラ ー マ ー ヤ ナ(Ramayana)』 へ の 言 及 A2(+): カ ー リ ダ ー サ に よ る バ ー サ へ の 言 及 A3(+): カ ー リ ダ ー サ に よ る サ ウ ミ ッ ラ へ の 言 及 A4(+): カ ー リ ダ ー サ に よ る バ ラ タ へ の 言 及、 A0 D. 2-4C. A5(-): ア マ ラ シ ン ハ(A. marasimha)に よ る カ ー リ ダ ー サ の 引 用 A6(-): バ ー ナ に よ る カ ー リ ダ ー サ へ の 言 及、 A. D. 606-648 *A7(-): ア ー イ ホー レ ー 碑 文 に お け る カ ー リ ダ ー サ へ の 言 及; A. D. 634 A8(-): ヴ ァ ー ク パ テ ィ(Vakpati)に よ る カ ー リ ダ ー サ へ の 言 及; A. D. 8C. 前 半 A9(-): ア ー ナ ン ダ ヴ ァ ル ダ ナ(Anandavardhana)に よ る カ ー リ ダ ー サ へ の 言 及; A. D. 850頃 A10(-):『 ハ リハー ラ ー ヴ ァ リー (Hariharavali)』 に お け る カ ー リ ダ ー サ へ の 言 及; A. D. 1556-1605 *B1(-): マ ン ダ ソ ー ル 碑 文 に お け る カ ー リ ダ ー サ の 引 用; A. D. 473 C1(+): カ ー リダ ー サ の 文 体 と叙 事 詩 と の 技 巧 上 の 差 異 C2(+):『 ク マ ー ラ サ ン バ ヴ ァ(Kumarasabhava)』 に お け る プ ラ ー ナ 神 話 の モ チ ー フ C3(+):『 ラ グ ヴ ァ ン シ ャ(Raghuamsa)』 に お け る ラ ー マ 伝 説 の モ チ ー フ C4(+):『 シ ャ ク ン タ ラ ー 』 に お け る 「マ ハ ー バ ー ラ タ 』 や プ ラ ー ナ の 伝 説 の モ チー フ C5(+): ア シ ョー カ の 刻 文 に お け る カ ー ヴ ィ ヤ の 無 痕 跡; B. C. カ ー ヴ ィ ヤ 文 体 の 研 究 比 喩 と 語 合 成II
密 教 文 化 274-232 C6(+): カ ウ テ ィ リヤ(Kautilya)のPア ル タ シ ャ ー ス sastra)』 に お け る カ ー ヴ ィ ヤ 及 び 宮 廷 詩 人 へ の 非 言 及; B. C. 2C.-A. D. 2C. C7(+): Pク マ ー ラ サ ン バ ヴ ァ」に お け る 『カ ー マ ス ー ト sutra, の 知 識; A. D. 4C. *C8(+): カ ー リ ダ ー サ の 天 文 学 的 知 識;A. D. 4C. 半 C9(+): カ ー リ ダ ー サ に よ る ウ ッ ジ ャ イ ニ ー(Ujjayini)へ の 言 及; A. D. 409-413 C10(+):「 ラ グ ヴ ァ ン シ ャ 」 中 の 記 述 と ス カ ン ダ グ フ upta)王 の 対 フ ン ヌ 戦 争 大 勝 利 と の 関 係; A. D. 455頃 C11(+/-): ア ラ ノ・バ ト(Allahabad)石 柱 の 刻 文 に お け る カ ー ヴ ィ ヤ へ の 言 及; A. D. 345 C12(+/-): カ ー リ ダ ー サ に よ る ヴ ィ ク ラ マ ー デ ィ tya)へ の 言 及; ヴ ィ ク ラ マ ー デ ィ トヤ と は チ ャ ン ド ラ グ フ タ(Candragupta)2世(A.D. 375即 位-A.D.413没)か、 あ る い は ス カ ン ダ グ フ タ(A. D. 455即 位-A. D. 480没)を 指 す。 C13(+/-): 叙 情 詩 人 ア マ ル(Amaru)の 文 体 と カ ー リ ダ ー サ の 文 体 C14(-): カ ー リダ ー サ に 帰 せ られ る 作 品 群 C15(-): 後 代 カ ー ヴ ィ ヤ の 文 体 と カ ー リ ダ ー サ の 文 体 の 差 C16(-): カ ン ボ ー ジ ャ(Kamboja)の 刻 文 に お け る カ ー リダ ー サ の 参 照; A. D. 7C. 初 C17(-): バ ー マ ハ に よ る カ ー リダ ー サ の 参 照; A. D. 640 C18(-): バ ヴ ァ ブ ー テ ィ(Bhavabhuti)に よ る カ ー リダ ー サ の 参 照; A. D. 8C. 前 半 C19(-): ラ ー ジ ャ シ ェ ー カ ラ(Rajasekhra)に よ る カー リダ ー サ の 参 照; A. D. 9C. 末-. A. D. 10C.
C20(-): ビ ル ハ ナ(Bilhana)に よ る カ ー リ ダ ー サ の 引 用; A. D. 11 C. 末 D1(+/-): カ ー リ ダ ー サ 三 人 説; ヴ ィ ク ラ マ ー デ ィ トヤ(チ ャ ン ドラ グ プ タ2世 な ら ばA. D. 375即 位-A. D. 413没、 ス カ ン ダ グ プ タ な ら ばA. D. 455即 位-480没)の 宮 廷 と、 ボ ー ジ ャ (Bhoja)王(A. D. 11C.)の 宮 廷 と、 ア ク バ ル(Akbar)帝 (A. D. 1556-1605)の 宮 廷 と の 各 々 に カ ー リ ダ ー サ と い う 詩 人 が い た と い う伝 説。 D2(+/-): 九 宝 伝 説; ヴ ィ ク ラ マ ー デ ィ トヤ の 下 に 九 宝 と呼 ば れ た 有 名 な 人 材 が い た と い う 伝 説。 九 宝 と は、 ダ ン ヴ ァ ン タ リ (Dhanantari)、 ク シ ャ パ ナ カ(Ksapanaka)、 ア マ ラ シ ン ハ(Amarasimha)、 シ ャ ン ク(Sanku)、 ヴ ェ ー タ ー ラ バ ッ タ(Vetalabhatta)、 ガ タ カ ル パ ラ(Ghatakarpara)、 カ ー リ ダー サ、 ヴ ァ ラ ー ハ ミ ヒ ラ(Varahamihila)、 ヴ ァ ラ ル チ (Vararuci)の 九 人 で あ り、 こ の 中、 ヴ ァ ラ ー ハ ミ ヒ ラ は A. D. 6C. 前 半 と い う こ と が 判 っ て い る も の の、 他 の 年 代 は 不 明 で あ り、 こ れ ら の 九 人 が 同 一 年 代 に 存 在 し た と は 思 え な い。 D3(+/-): ス リラ ンカ に お け る カー リダー サ 伝 説; A. D. 6C. D4: カ ー リー女 神 に言 及 す る カ ー リダー サ 伝 説 以 上 の よ うな要 素 を考 慮 して、 カ ー リダー サ の 生 存 年 代 と して 最 も可 能 性 の 高 い 範 囲 は次 の よ うに な る。 そ の根 拠 を上 の年 代 決 定 要 素 の記 号 で示 した。 〔推 測 的上 限 〕A. D. 4C. か ら4C. 半; C7、C8 〔流 動 的 上 限〕A. D. 2C. か ら4C. ; A4 〔推 測 的 下 限〕A. D. 473 ; B1 〔確 定 的 下 限 〕A. D. 634 ; A7 カ ー ヴ ィ ヤ 文 体 の 研 究 比 喩 と 語 合 成II
密 教 文 化 こ の よ うに、 カー リダー サ の 年 代 で 確 実 な の は、下 限 を示 すA. D. 634の み で あ る。 これ は、 ア ー イ ホ ー レー碑 文 にお い て カー リダー サ の名 前 が挙 げ られ て い る こ とか ら確 定 的 と言 え るの で あ る。 もち ろ ん、 カー リダー サ の生 存 年 代 か ら随 分 年 月 が過 ぎ去 って か らア ー イ ホ ー レー碑 文 が作 られ た こ と も大 い にあ り得 るが、 そ の 間 隙 を埋 め る碑 文 の よ うな物 的 証 拠 は存 在 しな い た め、 確 実 に言 え る下 限 は こ こ に な るの で あ る。 A. D. 4C. 半 とい う上 限 を示 す カ ー リダ ーサ の 天文 学 の 知 識 は、 物 的 証 拠 とい うよ りも状 況 証 拠 な の で確 実 とは言 えな い が、 ギ リシ ャ の天 文 学 と の関 係 で年 代 が 出 て くる の で、 一 応 の 目安 とな って い る。 そ れ に して も こ の範 囲で は広 す ぎ る の で、 なん とか して 上 限 と下 限 を狭 め る こ とが で きな い か とい うのが 年 代 論 研 究 の 課 題 で あ った。 例 え ば、 ヴ ィ ンテ ル ニ ッ ツ (M. winerniz)は バ ラタ を用 い て上 限 を引 き下 げ よ うと した。 つ ま り、 バ ラ タ をA. D. 2C. か ら4C. と見立 て て、これ に よ っ て カ ー リダー サ をA. D. 400以 後 とす る の で あ る。(9)しか しバ ラ タの年 代 も不 安 定 で あ る。 それ は カ ー リダ ー サ の言 及 に よ って バ ラ タ の下 限 が決 って い る とい う相 互 依 存 的 な 関 係 に あ る の で、 証 拠 と して は弱 い も の とな って い る。 そ こで、 それ を補 うた め に ヴ ィ ンテ ル ニ ッッ を は じめ多 くの学 者 が、 カー リダー サ が讃 え た ヴ ィ ク ラマ ー デ ィ トヤ とい う称号 を もつ王 をA. D. 375-413に 在 位 し た チ ャ ン ドラグ プ タ2世 で あ る とす る状 況 証 拠 や、 ヴ ィ ク ラマ ー デ ィ トヤ に まつ わ る九 人 の有 名 人 を 「九 宝 」 と呼 ぶ 伝 説 を持 ち 出す こ と に よ って 補 強 して、 何 とか上 限 をA. D. 400年 に近 付 けた の で あ る。 しか し、 今 後 カ ー リダ ー サ の年 代 論 を論 じる場 合、 堂 々 回 りと混 乱 を避 け る た め に は、 カ ー リダー サ とバ ラ タの 関 係 の よ うな 相 互依 存 的 な関 係 や、 あ る い は上 で 述 べ た よ うな 状 況 証拠 や 伝 説 に過 ぎな い もの は、 物 的 証 拠 と は一 線 を 画 して 扱 うべ きで あ ろ う。そ うす る と、 今 の と ころ カ ー リダー サ の 「確 定 的 上 限 」 とい うもの は存 在 せ ず、 た だ 「推 測 的 上 限 」 と 「流動 的 上 限 」 とが存 在 す る だ け な の で あ る。 一 方、 最 初 に述 べ た 「確 定的 下 限 」 で あ るA. D. 634を も っ と引 き上 げ
る 理 由 も 探 さ れ て き た。 そ こ で 現 れ て き た の が マ ン ダ ソー ル 碑 文 で あ る。 こ れ は、 ビ ュ ー ラ ー が1890年 に、 マ ン ダ ソ ー ル 碑 文 の 中 に あ る 文 章 と カ ー リ ダ ー サ の 叙 情 詩 「リ ト ゥサ ン ハー ラ(Rtusamhara)』 と 『メ ー ガ ド ゥ ー タ(Meghadita)』 の 一 節 と の 類 似 を 指 摘 し た こ と に 始 ま る。(10)そ の 後 の 研 究 史 に お い て は、 『リ ト ゥサ ン ハ ー ラ 」 が カ ー リ ダ ー サ の 真 作 か ど うか 疑 わ しい に も か か わ らず こ の 類 似 は 言 及 さ れ 続 け て き た。 例 え ば ヴ ィ ン テ ル ニ ッ ツ は 「ビ ュ ー ラ ー の 説 が 正 し い と し た ら 」 と い う条 件 付 き で 取 り入 れ、(11)辻 博 士 は 「た と え 『リ ト ゥサ ン ハ ー ラ 』 が 真 作 で な くて も マ ン ダ ソ ー ル 碑 文 は 『メ ー ガ ド ゥー タ」 の 一 節 を予 定 し て い る」 と 述 べ て い る。(12) こ れ ら に よ っ て 下 限 がA. D. 474ま で 引 き 上 げ られ て、 カ ー リダ ー サ の 年 代 は. A. D. 400前 後 か らA. D. 474と い う約70年 ほ ど に 狭 め ら れ た の で あ る。 こ の 結 果 は、 他 の 要 素 と照、ら し合 わ せ て も ほ ぼ 満 足 の ゆ く も の で あ る が、 た だ マ ン ダ ソー ル 碑 文 と 『リ ト ゥサ ン ハ ー ラ 』 と の 類 似 を 述 べ る 際 に 主 観 的 要 素 が 強 い こ と と、 『リ ト ゥサ ン ハ ー ラ 』 が カ ー リダ ー サ の 真 作 で (注) (4)マ ンダ ソ ール 碑 文 につ いて の報 告 の経 緯 に関 して は、
Devadatta Ramakrishna Bhandarkar, "Mandasor inscription of gupta (I) and Bandhuvarman: The (krta) years 493 and 529", eological Survey of India, Corpus inscriptionum indicarum, volume 3, Inscriptions of the early Gupta kings, New Delhi, 1981, p. 322.
(5) J. F. Fleet, "Sanskrt and old-Canarese inscriptions", The Indian uary, A journal of oriental research, 8, Bombay, 1879, pp. 237-246.
(6)作 品 の 真 偽 論 や 年 代 論 は語 彙 や 引用 形 式 に 関 す る考察 に基 くも のが 多 い。 し か し、そ の よ うな 場合、 表 面 上 の 模 倣 に よ る影響 が 結 論 を混 乱 させ た り、 誤 っ た判 断 に 導 くこと も あ りう る。 そ こで、 そ の よ うな リス クを 除 くた め に、 作 品 の プ ロ ッ トそ の も の の分 析 に よ る方 法 論 を用 い てバ ー サ の戯 曲を 論 じた のが、 次 の 論 文 で あ る。 増 田良 介、「Svapnavasavadattaの 解 釈 」、『東 海 仏 教 』、35、平成2、pp. 86-40 ;「Svapnavasavadattaの プ ロ ッ ト分 析 」、「西 南 ア ジ ア研 究 』、33, 1990, PP. 69-85. カ ー ヴ ィ ヤ 文 体 の 研 究 比 喩 と 語 合 成II
密 教 文 化 あ る こ との 証 明 が不 十 分 で あ る とい う点 に お い て、 補 強 す べ き点 が残 さ れ て い る と言 え る。 以 上 が<デ ー タ単 位>と して 選 ん だ二 つ の 碑 文 が もつ文 学 史 的価 値 で あ る。 (3)分 析の方法 カー ヴ ィヤ の文 体 が年 代 と と もに どの よ うに変 化 して ゆ くか とい う大 き な テ ー マ の下 で、 比 喩 とい う一 つ の局 面 にそ の変 化 の 様 相 を見 て み よ う と い うの が この分 析 の 目的 で あ る。 しか も、比 喩 全 般 に わ た って考 察 す るの で は な く、 よ り客 観 性 を もつ 分 析 方 法 が可 能 な 部分 を抽 出 して扱 うこ と に す る。 カ ー ヴ ィ ヤ にお い て、 比 喩 と語 合成(samasa, コ ンパ ウ ン ド)と は と も に非 常 に技 巧 的 な要 素 で あ る。 比 喩 に つ い て は 言 うま で もな い が、 語 合 成 につ い て も、 詩 人 は韻 律 を と との え つ つ、 限 られ た ス ペ ー ス に た く さん の 詩 的 情 報 を盛 り込 む た め に多 用 す る よ うに な る。 そ の よ うな使 用 例 の 中 に、 語 合成 とい う形 を と りつ つ比 喩 を形 成 す る場 合 が あ る。 こ の よ うな場 合、 詩人 は語 合 成 とい うカ ー ヴ ィヤ の形 式 に関 す る意 図 的 な技 巧 と、比 喩 とい うカ ー ヴ ィヤ の 内容 に関 す る意 図 的 な技 巧 との両 者 を併 用 す る わ け で (7)こ れ らの 様 々な要 素 につ い て の 研究 論 文 は 枚 挙 に 逗が 無 い。 カー リダ ー サの Bibliographyの 類 が 多 く出版 され る所 以 で あ る。下 に挙 げ た 各 要 素 は特 に有 名 な 論 点 ばか りで あ るが、 詳 細 は、 中 野 義 照訳、 『ヴ ィ ンテ ル ニ ッツ、 イ ン ドの 純 文 学』、1966の 第1章 に 対す る註 解 を 参 照 され た い。 (8)辻 直 四 郎、 『サ ン ス ク リ ッ ト文 学 史』、1973, pp, 42-43。 (9) Ibid., pp. 5-8, p. 33. し か し、 バ ラ タ の 年 代 論 もA.D.1C. か らA. D. 7C. に わ た って い る。 例 え ば、 P. RegnaudはA.D.1C., R. PischelはA. D. 6C. か らA. D. 7C., H. Jacobiは A. D. 3C. と い う具 合 で あ る。
(10) G. Biihler, "Die indischen Inschriften and das Alter der indischen kunst poesie", Wien, 1890, pp. 24-25.
(11) Ibid., p. 41-42. (12) Ibid., p. 42.
あ る。 つ ま り、そ の 箇所 で は 詩人 の表 現 技 法 や 表 現 意 図 が よ り濃 密 にな る とい え る。 分 析 の 客 観 性 とい う点 か ら見 れ ば、 ま ず語 合 成 とい うフ ィル タ ー を通 して 文体 の 形 式 的 特 性 を漉過 し、 さ らに比 喩 とい う第二 の フ ィル タ ー を通 して そ の 詩 人 の 文 体 の表 現 的 特性 を抽 出 で き るの で は な い か と思 う の で あ る。 この よ うな二 重 の フ ィル タ ー を通 過 させ る こ と に よ って、 よ り 客観 的 な 文 体 特 性 の測 定 が可 能 に な りは しな い か とい うの が、 こ の度 の分 析 の方 法 論 確 定 の実 験 の 目的 で あ る。 ダ ンデ ィ ン の 「カー ヴ ィ ヤー ダル シ ャ』 に カル マ ダ ー ラ ヤ コン パ ウ ン ド に よる 隠 喩(ル ーパ カ)が 下 の よ うに定 義 され て い る。(13)
upamaiva tirobhutabhedd rupakam ucyate/ yathd bahulata panipadmam caranapallavah//2.66// angulyah pallavany asan kusumdni nakhareisah/ bahu late vasantasris tvam nah pratyaksaedrini//2.67// ity etad asamstakhyam samastam purvarupakam/ smitam mukhendor jyotsneti samastavyastarupakam//2.68//
「区 別 が 見 え な く な っ た ウパ マ ー(upama、 直 喩)こ そ、 ル ー パ カ (rupaka、 隠 喩)と 呼 ば れ る。 例 え ば 「蔓 草 の よ うな 腕(bahulata)、 ハ ス の よ う な 手(panipadma)、 若 枝 の よ うな 足(caranapallava)。tl『 指 は 若 枝 で あ り(angulyah pallavani)、 爪 の 輝 き は 花 で あ り(kusumani nakharcisah)、 二 つ の 腕 は 蔓 草 で あ り(bahu late)、 私 た ち の 目 の 前
で 動 い て い る あ な た は 春 の 美 で あ る。』
と い うこ の 後 者 は、asamasta(語 合 成 に な っ て い な い)、 前 者 はsama-sta(語 合 成 に な っ た)と い う名 称 を 持 つ ル ー パ カ で あ る。
『月 の よ う な 顔 の 微 笑 み は 月 光 で あ る(smitam mukhendor jyotsna)。 』 と い うの はsamastavyastarupaka(語 合 成 で あ り か つ 語 合 成 に な っ て い な い ル ー パ カ)で あ る。」 カ ー ヴ ィ ヤ 文 体 の 研 究 比 喩 と 語 合 成II
密 教 文 化 こ こ で は 【名 詞+名 詞 】 型 の カ ル マ ダ ー ラ ヤ コ ンパ ウ ン ドの ル ー パ カ と し て の比 喩 用 法 が三 つ の実 例 と と もに規 定 され て い る。 例 え ば、 「蔓 草 の よ うな腕(bahulatの 」 はsamastaと い うル ー パ カ で あ る と され て い る。 そ し て、 こ の場 合、upameya(描 写 対 象)は 前 分名 詞 の 「腕(bahu)」 で あ り、 upamana(類 似 物)は 後 分 名 詞 の 「蔓 草(lata)」 とい うこ とに な る。 この よ うに、 代 表 的 な 修 辞 学 の教 科 書 に お いて 語 合 成 に よ る比 喩 の 存 在 が 明 白 に 規 定 され て い る以上、 カー ヴ ィヤ詩 人 は記 述 の経 済 性 を追 及 す る た め、語 合成 を多用 した こ とが 予 想 され る。 ま た、 語 合成 だ け に つ い て み て も、一 般 に時 代 が後 に なれ ば な る ほ ど、 そ の使 用頻度 は 高 くな る よ うな 印象 を受 け る。 比 喩 につ い て は、 時 代 と と もに 直 喩 よ りもむ しろ よ り複 雑 な 隠喩 が好 まれ る よ うに な っ た と い う報 告 もあ る。 そ こで、161年 ほ ど時代 差 が あ るマ ン ダ ソー ル 碑 文 とアー イ ホ ー レー 碑文 との二 つ の碑 文 をく デ ー タ単 位>に して、 語 合 成 と比 喩 に か か わ る文 体 の変 化 を数 値 で表 して み た い。 そ の際、 分 析 の対 象 とす る語 合 成 の タ イ プ を列 挙 して お く。 【タ イ プ1】 カ ル マ ダ ー ラ ヤ コ ン パ ウ ン ド (前 分upameya、 後 分upamana) 【タ イ プ2】 カ ル マ ダ ー ラ ヤ コ ン パ ウ ン ド (前 分upamana、 後 分 比 喩 成 立 の 根 拠 と な る 形 容 詞)-upameya 【タ イ プ3】 パ フ ヴ リー ヒ コ ン パ ウ ン ド (前 分upamana、 後 分 類 似 を意 味 す る 語)-upamneya 【タ イ プ4】 パ フ ヴ リー ヒ コ ン パ ウ ン ド (前 分upamana、 後 分upameya)-upameyaを 内 包 す る も の
【タ イ プ5】 タ ッ ト プ ル シ ャ コ ン パ ウ ン ド (前 分upamana、 後 分 類 似 を 意 味 す る 語)-upameya こ れ ら の 語 合 成 に つ い て は、 巻 末 の 付 録 の(5)と(6)と に く 語 合 成 の 構 造 図> と して、 二 つ の 碑 文 で 用 い ら れ る す べ て の 語 合 成 の 構 造 を示 し て お い た。 <語 合 成 の 構 造 図>を 作 る こ と に よ っ て、 そ の 作 品 に ど の 程 度 の 語 合 成 が 用 い ら れ て い る の か が 視 覚 的 に 認 識 さ れ る。 そ れ ら の 見 方 に つ い て は 第1 章 で す で に 述 べ た。(14)こ の 二 つ の 碑 文 の く 語 合 成 の 構 造 図>を 見 る と、 そ れ ら の 文 体 が 語 合 成 の 使 用 と い う面 か ら は、 と も に 十 分 カ ー ヴ ィ ヤ 調 を 示 して い る こ と が わ か る の で あ る。 す な わ ち、 語 合 成 の 用 い ら れ る 頻 度 が 高 い こ と、 そ し て 複 合 型 語 合 成 が 多 用 さ れ て い る か ら で あ る。 そ れ で は、 上 に 示 し た 語 合 成 を用 い る比 喩 の 五 つ の タ イ プ に つ い て、 そ れ ぞ れ 具 体 的 に 説 明 して お く。 【タ イ プ1】 こ の タ イ プ1は カ ル マ ダ ー ラ ヤ コ ン パ ウ ン ドの 形 を と る も の で、 語 合 成 の 前 分 にupameya、 後 分 にupamanaと な る 語 が 配 置 さ れ る も の で あ る。 こ の タ イ フ に つ い て は 上 に あ げ た 『カー ヴ ィ ヤ ー ダ ル シ ャ』2.66の 例 に あ る 「蔓 草 の よ う な 腕(bahulata)」 を 見 れ ば よ く わ か る。upameya(描 写 対 象)は 「腕(bahu)」 で あ り、 語 合 成 の 前 分 に あ り、upamana(類 似 物)は 「蔓 草(lata 」 で あ り、 語 合 成 の 後 分 に あ る。 こ の タ イ プ を 【A・B】 と 記 号 化 す れ ば 「Bの よ う なA」 と 訳 さ れ、 日本 語 で は 「よ うな 」 が 現 れ る 場 合 が 多 い が、 サ ン ス ク リ ッ トの 原 文 で はivaな ど の 「よ う な 」 を 意 味 す る 比 喩 指 示 語 が 表 面 化 し な い。ivaな ど の 比 喩 指 示 語 が な い か ら 隠 喩 な の か と い う と、 そ う と も言 え な い 場 合 も あ る。(15)【A・B】 を 「Bの よ うな A」 と訳 せ る 場 合 と 「Aな るB」 と訳 せ る 場 合 が あ る か ら で あ る。 例 え ば、 (例 文1)「 私 は 【王 ・ ト ラ】 を 見 る(raja-vyaghram pasyami)」 カ ー ヴ ィ ヤ 文 体 の 研 究 比 喩 と 語 合 成II
密 教 文 化 と い う よ うな 【王 ・ ト ラ】 と い う語 合 成 を 含 む 文 で は、 「私 は ト ラ の よ うな 王 を 見 る 」(解 釈1) と、 「私 は 王 な る ト ラ を 見 る 」(解 釈2) と い う二 つ の 解 釈 が 文 脈 に よ っ て 可 能 で あ る。 と こ ろ が、 こ の 二 番 目 の 「私 は 王 な る ト ラ を 見 る 」 と い う文 は、 実 際 に 「私 」 が 見 て い る の が 「王 」 な の か 「ト ラ 」 な の か に よ っ て さ ら に 二 通 りの 解 釈 に 分 か れ る。 ま ず、 「王 」 を 見 て い る と い う文 脈 で は、 「私 は 王 と い う ト ラ を 見 る 」(解 釈2a) と い うニ ュ ア ン ス で、 王 の 暴 虐 性 に 注 目 して 「王 」 を 「ト ラ 」 と表 現 す る メ タ フ ァ ー 的 表 現 で あ る と解 釈 で き る。 次 に 「ト ラ 」 を 見 て い る と い う文 脈 で は、 「私 は 王 で あ る トラ を 見 る 」(解 釈2b) と い うニ ュ ア ン ス で、 実 際 に 「王 」 で あ る 「 トラ 」 を 見 て い る と い う、 比 喩 と は 関 係 な い 文 の 成 立 の 可 能 性 も あ る の で あ る。 こ の よ う に 【王 ・ トラ 】 とい う語 合 成 は 三 通 り の 解 釈 が 可 能 で あ る。 こ の こ と が 実 は ウパ マ ー と ル ー パ カ と の 定 義 を肝 心 の 部 分 で 混 乱 さ せ、 不 明 確 に し て い る の で あ る。 つ ま り、(解 釈1)で は(例 文1)を
「rajanam vyaghram iva pasyami」
と分 解 し て 理 解 して い る の で、ivaの 潜 在 的 存 在 を 認 め、ル ー パ カ で は な く ウ パ マ ー で あ る と す る考 え方 も あ る。 こ れ は、 「rajanam vyaghram iva」 の 部 分 が 語 合 成 とい う形 を と る こ と に よ っ てivaが 省 略 さ れ た と み な し、 本 来 的 にivaな ど の 比 喩 指 示 語 を 欠 くル ー パ カ と一 線 を 画 す る の で あ る。 こ れ に 対 し(解 釈2a)と な る場 合 に は、(例 文1)を
(注)
(13) Dan4in, Kavyadarsa, ed. S. K. Belvalkar, Poona, 1924, pp. 12-13. (14) Ibid., pp. 98-91.
rrajanam eva vyaghram pasyamij と分 解 して 理 解 して い るの で、 これ は 問題 な くル ー パ カで あ る。 こ の よ うに語 合成 を分 解 して、 も との文 に 直 して か らル ー パ カ か ウパ マ ー か を決 定 す る とい うや り, か た は、 文 脈 か ら語 合 成 の分 解 が可 能 な場 合 は 有 効 で あ る が、 そ うで な い場 合 も あ るた め、 判 断 不 可 能 とな る こ と も指 摘 され て い る。 そ こで こ の分 析 で は、 表 面 上 の 形 を重 視 す る こ とに して、 語 合 成 で タイ フ1の よ うな 形 を と る場 合 は、 そ れ が(解 釈1)で あ れ(解 釈2a)で あ れ、 ま た判 断 不 可 能 の 場 合 で あ って も、 そ れ ら をル ー パ カ とみ な す こ とに す る。 た だ し、(解 釈2b)の 揚 合 は 比 喩 とは 無 関 係 で あ る か ら、 タイ プ1 に は含 め な い。 以 上 の よ うに、 こ の分析 で は タ イ プ1に 含 まれ る も の をす べ てル ー パ カ とす る。 そ れ は な ぜ か とい うと、 これ ら はivaな どの比 喩 指 示 語 を語 合 成 とい う手段 に よ って 文 の 表 面 か ら消 し去 って い る とい う点 に注 目す れ ば、 年 代 に よ る技 巧 の複 雑 化 とい う分 析 の視 点 か ら見 て も、単 な る ウパ マ ー よ りもす で に十 分 技 巧 的 で あ り、分 析 方 法 の単 純 化 を図 るほ うが好 ま しい か らで あ る。
upameya: 腕(bahu)、 王(rata)
upamana: 蔓 草(1a七a)、 ト ラ(vyaghra)
【タ イ プ2】 こ の タ イ プ2は カ ル マ ダ ー ラ ヤ コ ン パ ウ ン ドの 形 を と る も の で、 語 合 成 の 前 分 にupamana、 後 分 に 比 喩 成 立 の 根 拠 と な る 形 容 詞 と な る 語 が 配 置 され る も の で、 そ の 語 合 成 全 体 が、 語 合 成 の 外 部 に あ るupameyaと な る 語 に か か っ て ゆ く と い う構 造 を と る も の で あ る。 こ の タ イ プ は マ ン ダ ソー ル 碑 文 の(30)に 見 ら れ る。(以 下M. 30と 略 す)
vistirnatungasikharam sikhariprakasam abhyudgatendvamalarasmi-kaldpagauram/ カ ー ヴ ィ ヤ 文 体 の 研 究 比 喩 と 語 合 成II
密
教
文
化
yad badti pascimapurasya nivistakdntacuddinanipratisaman nayana-bhiramam//30// 頂 が広 くて 高 く、山 に似 た、 昇 った 月 の汚 れ な き光 条 の 集 ま りの よ うに う す 赤 い、 美 し く取 り付 け られ た頭 に着 け る宝 石 に似 た、 目 に楽 しい、 西 の 町 のそ の 〔寺 院 〕 は、 輝 い て い ま す(30)。 こ こ で 「昇 っ た 月 の 汚 れ な き 光 条 の 集 ま り の よ うに うす 赤 い(abhyizdga-tendvamalarasmikalapagauram)」 と い うの は 上 位 語 合 成 が 【名 詞+形 容 詞 】 型 の カ ル マ ダ ー ラ ヤ コ ン パ ウ ン ドで あ る。 こ の タ イ フ の 特 徴 は、 語 合 成 の 外 に 描 写 対 象(upaneya)と な る 語 が あ る こ とで あ る。 す な わ ち、 こ の タ イ プ を 【A・B-C】 と 記 号 化 す れ ば、 「Aの よ う にB な るC」 と訳 す る こ と が で き る。A・Bが 語 合 成 で あ り、 そ れ が 語 合 成 の 外 に あ る 名 詞Cに か か っ て ゆ く の で あ る。 こ の 場 合、Aに 相 当 す る の は 「昇 っ た 月 の 汚 れ な き 光 条 の 集 ま り(abhyudgatendvamalarasmikalapa)」 で、 こ れ がupamana(類 似 物)と な っ て い る。 ま た、 Bに 相 当 す る の は 「う す 赤 い(gauram)」 で あ り、 こ れ は 共 通 属 性 で あ る。 そ して 語 合 成 の 外 部 に あ るCに 相 当 す る の が、 「そ の 〔寺 院 〕(yad〔bhavanam〕)」 で あ り、 upa皿eya(描 写 対 象)と な っ て い る。 upameya: そ の 〔寺 院 〕(yad〔bhavanam〕) upamana: 昇 っ た 月 の 汚 れ な き 光 条 の 集 ま り (abhyudgatendvamalarasmikalapa) 【タ イ プ3】 こ の タ イ プ3は パ フ ヴ リー ヒ コ ン パ ウ ン ドの 形 を と る も の で、 語 合 成 の 前 分 にupamana、 後 分 に 類: 似 を 意 味 す る語 が 配 置 され る も の で、隔そ の 語 合 成 全 体 が、 語 合 成 の 外 部 に あ るupameyaと な る 語 に か か つ て ゆ く と い う 構 造 を と る も の で あ る。 こ の タ イ プ は マ ン ダ ソ ー ル 碑 文 のM. 11に 見 ら れ る。
kailasatungasikharapratimani canyany abhanti dirghavalabhini savedikani/
gandharvasabdamukharani nivistacitrakarmani lolakadalivanasobhi-tani //11// そ して、 カ イ ラ ー サ の 高 い頂 に似 て お り、 ヴ ァラ ビー は長 く、 ヴェ ー デ ィ カー を も ち、音 楽 の声 が響 き わ た り、絵 の作 品 が描 かれ、 揺 れ る バ ナ ナ の 森 で 飾 られ た 他 の 〔家 々〕 も輝 い て い ます。(11) こ の 中、「カ イ ラ ー サ の 高 い 頂 に 似 て お り」 と い うの は 直 訳 す る と 「類 似 す る も の が カ イ ラ ー サ の 高 い 頂 で あ り(kailasatungasikharapratimani)」 と な り、「類 似 す る も の(pratima)」 を 後 分 と す る パ フ ヴ リ ー ピ コ ン パ ウ ン ド で あ る。 こ の 語 合 成 が 修 飾 し て い る 語 は 「他 の 〔家 々 〕(amyani〔grhani〕 」 で あ る が、 「家 々(grhani)」 の 語 は こ の 詩 の 前 のM. 10に あ る の で 省 略 さ れ て い る。 さ て、 こ の 句 が 比 喩 な の か ど うか で あ る が、 前 詩M. 10に お い て 同 じ よ うな 表 現 が 比 喩 と して 現 れ て い る。 そ れ は 「upamana」 と い う語 を パ フ ヴ リー ヒ コ ンパ ウ ン ドの 後 分 と し、 そ の パ フ ヴ リー ヒ コ ン パ ウ ン ドの 修 飾 す る 語 で あ る 「家 々(grhani)」 をupameyaと す る も の で あ る。
calatpatakany abaldsandthany atyarthasuklany adhikonnatdni / tadillatacitrasitabhrakutatulyopamandni grhdni yatra //10//
そ こ で は 家 々 は 旗 が 揺 れ 動 き、 女 で い っ ぱ い で、 と て も 白 く と て も 高 く、 蔓 草 の よ うな 雷 光 に よ っ て、 明 る く て 白 い 雲 の 群 れ の よ う な も の に 喩 え ら れ て い ま す。(10) M. 11の 詩 で 用 い られ て い る 「類 似(pratima)」 と い う語 は、 こ のM. 10 の 詩 の 「upamana」 と い う語 と文 体 の 上 で 等 価 で あ る。 な ぜ な ら、 と も に パ フ ヴ リー ヒ コ ン パ ウ ン ドの 後 分 で あ り、 そ の 各 々 の 修 飾 す る 語 は 「家 々 」 と 「他 の 家k」 で あ る が、 一 方 に は 「他 の 」 と あ る も の の、 こ の 二 つ は 文 カ ー ヴ ィ ヤ 文 体 の 研 究 比 喩 と 語 合 成II
密 教 文 化 脈 上 は と も に こ の 町 の 家 々 の こ と を言 っ て お り本 質 的 な 差 異 は な い。 つ ま り、 こ れ ら の パ フ ヴ リー ヒ コ ン パ ウ ン ドは 双 子 の よ う に 「家 々 」 を 修 飾 し て い る。 た だ、M. 10の 詩 で は 「の よ うな も の(tulya)」 と い う語 がivaと 同 じ よ うな 働 き を し て い る の で、 比 喩 表 現 で あ る と 判 定 しや す か っ た の で あ る。M. 11に はivaに 相 当 す る 語 が 無 い け れ ど も、 こ の よ う な 形 式 が 二 つ の 詩 に 共 通 す る も の で あ る の で、 比 喩 表 現 の 一 つ の 形 式 と して 仮 定 して お き た い。 こ の タ イ プ を 【A・B-C】 と記 号 化 す れ ば、 「類 似 物 がAで あ る よ う な C」 と 訳 す る こ とが で き る。 【タ イ プ4】 こ の タ イ プ4も パ フ ヴ リー ヒ コ ン パ ウ ン ドの 形 を と る も の で、 語 合 成 の 前 分 にupamana、 後 分 にupameyaと な る 語 が 配 置 さ れ る も の で、 そ の 語 合 成 全 体 が、 語 合 成 の 外 部 に あ るupameyaを 内 包 す る 語 に か か っ て ゆ く と い う構 造 を と る も の で あ る。 上 の タ イ プ3と 異 な る の は、 タ イ プ3が 語 合 成 の 後 分 に 類 似 を意 味 す る 語 を 配 置 し、 語 合 成 の 外 部 にupameyaを 配 置 す る の に 対 し、 こ の タ イ プ4は 語 合 成 の 後 分 にupameyaそ の も の を 配 置 し、 語 合 成 の 外 部 に そ のupameyaを 内 包 す る よ うな 語 を 配 置 して い る 点 で あ る。 で は、 こ の 「upameyaを 内 包 す る 語 」 と は ど の よ うな も の か。 こ の タ イ プ は 上 に あ げ た カ ー ヴ ィ ヤ ー ダ ル シ ャ2.61abに 見 ら れ る。 そ こ
で は、「顔(vadana)が 月(sasanka)の よ うな 女(Stri)」 と い う場 合 に、 「strih sasankavadana」 と い う語 合 成 を 用 い る こ と が示 さ れ て い る。 こ の 場 合 は、 upameya: 顔(vadana) upamana: 月(sasanka) upameyaを 内 包 す る も の: 女(sari) と な る。 そ こ で は、upameyaで あ る 「顔 」 を 内 包 す る も の は 「女 」 と な っ て い る。 つ ま り、 こ の 場 合 の 「顔 」 は こ の 「女 」 の 所 有 物 で あ る と い うニ ュ ア ン ス で あ る。
こ の タ イ プ を 【A・B-C】 と 記 号 化 す る と、 「そ のBがAで あ る よ うな C」 と訳 す こ と が で き る。 【タ イ プ5】 こ の タ イ プ5は タ ッ トプ ル シ ャ コ ン パ ウ ン ドの 形 を と る も の で、 語 合 成 の 前 分 にupamana、 後 分 に 類 似 を 意 味 す る 語 が 配 置 さ れ る も の で、 そ の 語 合 成 全 体 が、 語 合 成 の 外 部 に あ るupaneyaに か か っ て ゆ く とい う構 造 を と る も の で あ る。 こ の タ イ プ は、 上 に 挙 げ た タ イ プ3と 比 べ る と、 比 喩 を 表 現 す る 要 素 の 配 置 と 構 造 と い う点 で は ま っ た く同 一 の も の で あ る が、 使 用 さ れ る 語 合 成 の 形 式 が タ イ プ3で は パ フ ヴ リー ヒ コ ン パ ウ ン ドで あ っ た の に 対 し、 こ の タ イ プ5で は タ ッ トフ ル シ ャ コ ン パ ウ ン ドが 用 い られ る と い う点 で 異 な っ て い る。 こ の タ イ プ は 上 に も挙 げ たM. 30に も 現 れ て い る。 そ れ は、 「美 し く取 り 付 け ら れ た 頭 に 着 け る 宝 石 に 似 た(niistakantacudamanipratisaman)」 と い う句 で、 こ れ は 上 位 語 合 成 が タ ッ トプ ル シ ャ コ ン パ ウ ン ド と な っ て い る。 こ の タ イ プ は、 語 合 成 の 後 分 に 類 似 を 意 味 す る 語 が 置 か れ る が、 こ こ で の 類 似 を 意 味 す る 語 と は 「似 た(pratisaman)」 で あ る。 語 合 成 の 前 分 はupamanaと な り、 こ こ で は 「美 し く取 り付 け ら れ た 頭 に 着 け る 宝 石 (nivistakantacudaany)」 で あ る。 そ してupameyaは 語 合 成 の 外 に 置 か れ る こ と に な る。 こ こ で は 「そ の 〔寺 院 〕(yad〔bhavanam〕)」 で あ る。 upameya: そ の 〔寺 院 〕(yad〔bhavanam〕) upamana: 美 し く取 り付 け られ た 頭 に 着 け る 宝 石 (nivis takantacudamani) 類 似 を意 味 す る語: 似 た(pratisaman) この タ イ プ を 【A・B-C】 と記 号 化 す る と、「Aの よ うなC」 と訳 す こ と が で き る。 以 上 の五 つ の語 合 成 を用 い た比 喩 の タ イ プ に つ い て、 各 々 の前 分 をA、 後 分 をB、 そ れ らが か か る語 をCと して記 号 化 して 整理 して お く。 カ ー ヴ ィ ヤ 文 体 の 研 究 比 喩 と 語 合 成II
密
教
文
化
【タ イフ1】 【A・B】 「Bの よ うなA」 「Aな るB」
【タ イフ2】 【A・B-C】 「Aの よ うにBな るC」
【タ イ プ3】 【A・B-C】 「Aの よ うなC(類 似 物 がAで あ る よ う なC)」
【タ イフ4】 【A・B-C】 「そ のBがAで あ る よ う なC」
【タ イ プ5】 【A・B-C】 「Aの よ うなC(Aに 似 たC)」
(4) 分析の結果 以上 の よ うな類 型 を仮 定 して、<デ ー タ単 位>と した マ ン ダ ソー ル 碑 文 とア ー イ ホ ー レー碑 文 とに お け る比 喩 の 使用 状 況 を測 定 し、 表 に す る と次 の よ うに な る。 個 数 は両 碑 文 に現 れ る各 々 の項 目の比 喩 の 実 数 で あ る。 マ ンダ ソー ル碑 文 とア ー イ ホ ー レー 碑 文 と を並 べ て、 比 較 しや す い よ うに し て あ る。 ま た、upamaの 項 目で は、 全 体 の個 数 を 示 し た 下 に、 そ の 内 訳 を 【タ イ プ3】 と 【タ イ プ5】 とそ の 他 に分 け て それ ぞ れ示 し、 ま た、 rupakaの 項 目につ いて も、 同 様 に全 体 の 個 数 を示 した下 に、 そ の 内 訳 を 【タイ プ1】 と 【タイ プ2】 と 【タイ プ4】 とそ の他 に分 け て そ れ ぞ れ 示 した。 さ ら に、 語 合 成 を用 い た比 喩 とい う項 目に お いて も、 そ の全 体 の 個 数 を示 した 下 に、 そ の 内 訳 を、 カル マ ダ ー ラヤ コ ンパ ウン ドとパ フ ヴ リー ヒ コ ンパ ウ ン ドと タ ッ トプル シ ャ コ ンパ ウ ン ドとの三 つ に分 け て、 そ の各 々の 個 数 を示 した。 マ ン ダ ソ ー ル 碑 文 ア ー イ ホ ー レ ー 碑 文 比 喩 総 数 30個 31個 upama(直 喩) 15個 8個 【タ イ プ3】1個 0個 【タ イ プ5】3個 0個 そ の 他 11個 8個 rupaka(隠 喩) 15個 23個 【タ イ プ1】1個 10個 【タ イ プ2】4個 2個 【タ イ プ4】7個 11個
そ の 他 3個 0個 語 合 成 を 用 い た 比 喩 16個 23個 カ ル マ ダ ー ラ ヤ 5個 12個 パ フ ヴ リー ヒ 8個 11個 タ ッ トプ ル シ ャ 3個 0個 こ の 表 の 各 々 の 要 素 を、 比 喩 全 体 の 個 数 に 占 め る 割 合 で 示 す と下 の よ う に な る。 マ ン ダ ソ ー ル 碑 文 ア ー イ ホ ー レー 碑 文 比 喩 総 数 100. 0% 100. 0% upama(直 喩) 50. 0% 25. 80 【タ イ プ3】3.30 0.0% 【タ イ プ5】10.0% 0.0% そ の 他 36.70 25.8% rupaka(隠 喩) 50.0% 74.2% 【タ イ プ1】3.30 32.3% 【タ イ プ2】13.30 6.5% 【タ イ プ4】23.30 35.5% そ の 他 10.0% 0.0% 語 合 成 を 用 い た 比 喩 53.30 74 2% カ ル マ ダ ー ラ ヤ 16.70 38.7% パ フ ヴ リー ヒ 26.70 35.5% タ ッ トプ ル シ ャ 10.0% 0.0% (5)分 析結果の比較 一 般 に カ ー ヴィ ヤ の文 体 は年 代 と と もに 技 巧 的 に 複 雑 に な って ゆ くとい う印 象 が あ る。 しか し、 それ は読 ん で い る時 の主 観 的 な 印 象 で あ り、い ち い ちデ ー タ を伴 って 判 断 して い る わ け で は な か った の で、 は た して 真 実 な の か と問 われ る と、 組 織 化 され た根 拠 を述 べ る こ とが難 しか った。 ま た、 さ らに カー ヴ ィ ヤ詩 人 に よ っ て、 わ ざ と単 純 な技 巧 や表 現 が 意 図 的 に用 い カ ー ヴ ィ ヤ 文 体 の 研 究 比 喩 と 語 合 成II
密 教 文 化 ら れ る こ と に よ っ て、 古 風 な 作 風 を 生 み だ そ う と す る 試 み が な さ れ る こ と も あ る。 そ の よ うな 場 合、 「年 代 に よ る カ ー ヴ ィ ヤ 文 体 の 複 雑 化 」 と い う よ うな カ ー ヴ ィ ヤ 文 体 の 進 化 を測 る 尺 度 は 意 味 を な さ な く な る。 と こ ろ が、 上 の よ う な 分 析 を 行 う こ と に よ っ て、 わ ず か で は あ る が、 判 断 の 客 観 性 に 向 上 が 期 待 で き る。 具 体 的 に二 つ の 碑 文 の 分 析 結 果 を比 較 し な が ら、 ど の よ う な 点 で 客 観 的 な 判 断 が 可 能 に な っ た か を 示 し て み よ う。 マ ン ダ ソ ー ル 碑 文 はA. D. 473-474で あ り、 ア ー イ ホ ー レ ー 碑 文 はA. D. 634-635で あ る か ら、 二 つ の 碑 文 の 問 に は161年 の 年 月 の 差 が あ る と い う こ と に な る。 こ の 年 代 の 差 が ど の よ うに 現 れ て い る の だ ろ うか。(16) ま ず、 両 者 の 比 喩 の 総 数 は、 マ ン ダ ソー ル 碑 文 が30個、 ア ー イ ホー レー 碑 文 が31個 と ど ち ら も 同 じ ぐ ら い の 量 で あ る。 こ の 比 喩 の 中 で、 直 喩 (upama)の 占 め る 割 合 は、 マ ン ダ ソー ル 碑 文 で は50.0%、 ア ー イ ホ ー レ ー 碑 文 で は25.8%と な っ て お り、 マ ン ダ ソー ル 碑 文 の ほ う が2倍 ほ ど多 い。 と こ ろ が 隠 喩(rupaka)の 占 め る 割 合 は ど うか とい う と、 マ ン ダ ソ ー ル 碑 文 で は50.0%、 ア ー イ ホ ー レ ー 碑 文 で は74.2%と な っ て お り、 ア ー イ ホ ー レー 碑 文 の ほ うが か な り多 くな っ て い る。 し か も、 マ ン ダ ソ ー ル 碑 文 で は、 比 喩 全 体 の 中 で 直 喩 と 隠 喩 の 占 め る 割 合 が ほ ぼ 同 じ な の で あ る が、 ア ー イ ホ ー レー 碑 文 で は、 比 喩 全 体 の 中 で 隠 喩 の 占 め る 割 合 が 直 喩 の ほ ぼ3 倍 に も増 加 し て い る。 こ の よ うに、 年 代 と と も に 直 喩 よ り も 隠 喩 が ふ え て く る と い う傾 向 は、 「年 代 に よ る カ ー ヴ ィ ヤ 文 体 の 複 雑 化 」 と い う観 点 か ら 見 れ ば む し ろ 当 然 の こ と で あ る。(17) さ ら に、 語 合 成 を用 い た 比 喩 が 比 喩 全 体 の 中 で 占 め る 割 合 は、 マ ン ダ ソ ー ル 碑 文 で は53. 3%、 ア ー イ ホ ー レ ー 碑 文 で は74. 2%と な っ て お り、 こ れ も ア ー イ ホ ー レ ー 碑 文 の ほ うが 多 く な っ て お り、 「年 代 に よ る カー ヴ ィ ヤ 文 体 の 複 雑 化 」 を裏 付 け て い る。 そ し て、 詩 人 は 単 な る 比 喩 を 使 用 し て い る の で は な く、 語 合 成 を用 い て 比 喩 を表 現 し よ う と して い る わ け で あ る か ら、 技 巧 を二 重 に 用 い て い る こ と に な る。 こ の 点 は、 カ ー ヴ ィ ヤ 文 体 の 年 代 を 判 断 し よ う と して、 「年 代 に よ る カ ー ヴ ィ ヤ 文 体 の 複 雑 化 」 と い う尺
度 を用 い る場 合 に起 こ り うる、 先 に述 べ た よ うな、 カ ー ヴィ ヤ詩 人 の意 図 的 な 単 純 表 現 の使 用 とい う リス ク を排 除 す る の に効 果 的 で あ る。 ど うい う こ と か と い うと、 も し仮 に、 あ る カ ー ヴ ィ ヤ詩 人 が詩 作 を行 な う場 合、 古 風 な 印 象 を強 調 す る た め に意 図 的 に単 純 な技 巧 や 表 現 を用 い る こ とに決 め た と しよ う。彼 は韻 律 や 単 語 の 選 択 に も気 を配 り、古 風 な印 象 にふ さわ し い もの を選 ぶ だ ろ う。そ して、 語 合 成 や 複 雑 な隠 喩 な ど も使 用 を減 らす と 考 え られ る。 と こ ろが、 た とえ 彼 が 語 合成 そ の もの の 使 用 数 を減 ら した と して も、使 用 して しま った 語 合成 の 中 に 含 ま れ て い る比 喩 の 占 め る割 合 と い うもの は、 語 合 成 の使 用 数 に 関 係 無 く測 定 可 能 な の で あ る。 そ の よ うな 比 喩 の 占 め る 割 合 とい うもの は、 語 合成 の 質 的 な変 化 を示 して い る もの で あ り、 カ ー ヴ ィヤ 詩人 の意 図的 操 作 とい うもの を フ ィル ター で 漉過 して、 完 全 で は な い に して も、 よ り無 意 識 に近 い文 体 の特 性 を示 す こ とに近 づ く も の で あ る。 比 喩 全 体 の中 で、 語 合 成 を用 い た比 喩 の使 用 の 割合 を測 定す る意 義 はそ こ に あ る の で あ る。 この よ うに して二 つ の碑 文 を比 較 す る と、確 か に 「直 喩 か ら隠 喩 へ とい う比 喩 の質 的 変 化 」 と 「語 合 成 を用 い た比 喩 の増 加 」 とい う点 が数 値 の上 か ら も認 め られ る。 つ ま りそ れ に よ って、 上 で行 っ て き た よ うな分 析 方 法 (注) (16)2つ の碑 文 は161年 の年 代 差 が あ る。 これ は 文体 の差 を分 析 す る場 合、 十 分 な 時 間差 で あ る。 しか し、各 々の 碑 文 の 製 作 場所 は、 ほ ぼ920kmほ ど離 れ て い る。 しか も、 そ の 間 に は ナル マダ ー 河 が 流 れ て い る。 それ は つ ま り、 グ プ タ朝 と西 チ ャール クヤ朝 と い う文 化 背 景 の 差 を 意 味す る。 こ の こ とは、 分 析 を行 な う上 で 承 知 して おか ねば な らな い 条 件 で あ る。 た だ し、 アー イホ ー レ ー碑 文 が 作 られ た 時代 に は、 イ ン ドの 南北 の 文 化 を分 け る境 界 線 は、 ナ ル マ ダ ー河 よ りは るか に南 下 して い た と思 わ れ るの で、 分 析 結 果 の比 較 を 試 み た わ け で あ る。 (17)カ ー ヴ ィヤ に 用 い られ るupamaが 減 少 し、 そ れ に並 行 してutpreksaが 増 え て くる とい う事 実 も報 告 され て い る。 小 林 信 彦、 「Buddhacaritaに 用 い られ るupama」、 『中川 善 教 先 生頒 徳 記念 論 集 一 仏教 と文 化一 』、1983, pp. 243-254. カ ー ヴ ィ ヤ 文 体 の 研 究 比 喩 と 語 合 成II
密 教 文 化 が、 「年 代 に よ る カ ー ヴ ィ ヤ文 体 の 複 雑 化 」 とい う原 則 を確 認 す るた め に 有 効 で あ る こ とが 確 か め られ た の で あ る。 付 録(18) (1) マ ンダ ソー ル碑 文 テ クス ト siddham//
yo dhrtyartham upasyate suraganais siddhais ca siddhyarthibhir dhydnaikagraparair vidheyavisayair moksarthibhir yogibhih /
bhaktya tivratapodhanais ca munibhis sapaprasadaksamair hetur yo jagatah ksayabhyudayayoh payat sa vo badskarah. //1//
tattvajnanavido ' pi yasya na vidur brahmarsayo 'bhyudyatah krtsnam yas ca gabhastibhih pravisrtaih pusnati lokatrayam /
gandharvdmarasiddhakinnaranarais samstuyate ' bhyutthito bhaktebh-yas ca dadati yo 'bhilasitam tasmai savitre namah //2//
yah pratyaham prativibadty udayacalendravistirnatungasikharaskh-alitamsujalah /
ksivanganajanakapolatalabhitamrahh payat sa vas sukiranabharano vivas van //3//
kusumabhardnatataruvaradevakulasabhavihararamaniyat / ldtavisayan nagavrtasailaj jagati prathitasilpah //4//
to desaparthivagunapahrtah prakasam adhvddijany aviralany asukhany
(注) (18)以 下 の付 録 にお け る両 碑 文 の テ ク ス トは、J. F. FleetやD. R. Bhandarkarの 論 文 中 に掲 載 され て い る碑 文 の写 真 か ら ロー マ ナ イズ した も ので あ る。 三 井 淳 司、 「カー ヴ ィヤ文 体 の 研究1、 カ ー ヴ ィヤ の語 順 」、 『密 教 文 化 』、 180, 1992, p. 119、(注)(2)、(3)参 照。 ま た、 両 碑 文 の和 訳 は、 原 文 の文 体 の 構 造 を 読 み取 る こ とに主 眼 を お い た も の で あ る。<語 合 成 の構 造 図>の 作 り方、 略 号 につ い て は、 Ibid., pp. 98-91を 参 照 され た い。
apasya /
jatadara dasapuram prathamam manobhir anvagatas sasutabandhuja-nas sametya //5//
matt ebhagandatatavicyutadanabindusiktopalacalasahasravibhusanayah / puspavanamratarusandavatamsakaya bhumeh puran tilakabhutam idath kramena //6//
tat otthavrksacyutanaikapuspavicitratirantajalani bhanti /
praphullapadmabharanani yatra saramsi karandavasamkulani //7// vilolavicicalitaravindapatadrajahpinjaritais ca hamsaih /
svakesarodarabharavabhugnaih kvacit saramsy amburuhais ca bhanti //8//
svapuspabharavanatair nagendrair madapragalbhalikulasvanais ca / ajasragabhis ca puranganabhir vanani yasmin samalamkrtani //9// calatpatakany abalasanathany atyarthasuklany adhikonnatani / tadillatacitrasitabhrakutatulyopamanani grhani yatra //10//
kailasatungasikharapratimani eanyany abhanti dirghavalabhi. ni save-dikani /
gandharvasabdamukharani nivistacitrakarmani lolakadalivanasobhitani //11//
prasadamalabhir alamkrtani dharath vidaryeva samutthitani / vimanamalasadrsani yatra grhani purnendukaramalani //12// yad bhaty abhiramyasariddvayena capalormina samupagudham / rahasi kucasalinibhyami pritiratibhyam smarangam iva //13// sat yaks amadamasamavratasaucadhairyasvadhyayavrttavinayasthitibud-dhyupetaih /
vidyataponidhibhir asmayitais ca viprair yad bhrajate grahaganaih kham iva pradiptaih //14//
atha sametya nirantarasamgatair aharahah pravijrmbhitasauhrdah /
カ ー ヴ ィ ヤ 文 体 の 研 究 比 喩 と 語 合 成II
密
教
文
化
nrpatibhis sutavat pratimanitah pramudita nyavasanta sukham pure //15//
sravanasubhage gandharve 'nye drdham parinisthitah sucaritasatasa-ngah kecid vicitrakathavidah /
vinayanibhrtas samyagdharmaprasangaparayanah priyam aparusam pathyam canye ksama bahu bhasitum //16//
kecit svakarmany adhikas tathanyair vijnayate jyotisam atmavadbhih / adyapi canye samarapragalbhah kurvanty arinam ahitam prasahya //17//
pra jna manojnavapusah prathitoruvamsa vam. sanurupacaritabharanas tathanye /
satyavratah pranayinam upakaradaksa visrambhapurvam apare drdha-sauhrdas ca //18//
vijitavisayasathgair dharmasi. lais tathanyair mrdubhir adhikasattvair lokayatraparais ca /
svakulatilakabh-atair muktaragair udarair adhikam abhivibhati srenir evam prakaraih //19//
tarunyakantyupacito 'pi suvarnaharatambulapuspavidhina sam. alamkr-to 'pi /
nari janah sriyam upaiti na tavad agryam yavan na pattamayavastra-yugani dhatte //20//
sparsavata varnantaravibhagacitrena netrasubhagena / yais sakalam idam ksititalam alam. krtam pattavastrena //21// vidyadharirucirapallavakarnapuravateritasthirataram pravicintya lokam/
manusyam arthanicayams ca tatha visalan tesam. subhe matir abhud acala tatas taih //22//
vanantavantasphutapuspahasinim kumaragupte prthivim prasasati //23//
samanadhis sukrabrhaspatibhyam lalamabhuto bhuvi parthivanam / ranesu yah parthasamanakarma babhuva gopta nrpavisvavarma //24// dinanukampanaparah krpanartavargasantvaprado ' dhikadayalur ana-thanathah /
kalpadrumah pranayinam abhayam pradas ca bhitasya yo janapadasya ca bandhur asst //25//
tasyatmajah sthairyanayopapanno bandhupriyo bandhur iva prajanam / bandhvartiharta nrpabandhuvarma dviddrptapaksaksapanaikadaksah //26//
kanto yuva ranapatur vinayanvitas ca rajapi saran upasrto na madaih smayadyaih /
srngaramurtir abhibhaty analamkrto 'pi rupena yah kusumacapa iva dvitiyah //27//
vaidhavyativravyasanaksatanam smrtva yam adyapy arisundarinam / bhayad bhavaty ayatalocananam ghanastanayasakarah prakampah //28//
tasminn eva ksitipativrse bandhuvarmany udare samyaksphitam dasapuram idam palayaty unnatamse /
silpavaptair dhanasamudayaih pattavayair udaram srei bhutair bhavanam atulam karitam diptarasmeh //29//
vistirnatungasikharam sikhariprakasam abhyudgatendvamalarasmi-kalapagauram /
yad bhati pascimapurasya nivistakantacudamanipratisaman nayana-bhiramam //30// ramasanathabhavanodarabhaskaramsuvahnipratapasubhage jalalinamine / カ ー ヴ ィ ヤ 文 体 の 研 究 比 喩 と 語 合 成II
密 教 文 化 candramsuharmyatalacandanatalavrntaharopabhogarahite himadagdha-padme //31// rodhrapriyaiigutarukundalatavikosapuspasavapramuditalikalabhirame / kale tusarakanakarkasasitavatavegapranrttalavalinaganaikasakhe//32// smaravasagatarunajanavallabhainganavipulakantapinorustanajaghanagh-analingananirbhartsitatuhinahimapate //33//
malavanam ganasitya yate satacatustaye /
trinavatyadhike 'bdanamrtau sevyaghanastane //34// sahasyamasasuklasya prasaste 'hni trayodase / mail galacaravidhina prasado 'yam nivesitah //35// bahuna samatitena kalenanyais ca parthivaih/
vyasiryataikadeso 'sya bhavanasya tato 'dhuna //36// svayasovrddhaye sarvam atyudaram udaraya /
samskaritam idam bhuyah srenya bhanumato grham //37//
atyunnatam avadatam nabhah sprsann iva manoharaih sikharaih / sasibhanvor abhyudayesv amalamayukhayatanabhutam //38// vatsarasatesu pancasu vimsatyadhikesu navasu eabdesu / yatesv abhiramyatapasyamasasukladvitiyayam //39//
spastair asokataruketakasimduvaralolatimuktakalatamadayantikanam / puspodgamair abhinavair adhigamya nunam aikyam vijrmbhitasare haraputadehe //40//
madhupanamuditamadhukarakulopagitanaganaikaprthusakhe / kale navakusumodgamadanturakantapracurarodhre //41// sasineva nabho vimalam kaustubhamanineva sarngino vaksah / bhavanavarena tathedam puram akhilam alarnkrtam udaram //42// amalinasasilekhadanturam pingalanam parivahati samuham yavad iso jatanam/
sasvatam tavad astu //43//
srenyadesena bhaktyd ca karitam bhavanam raveh / purvd ceyarh prayatnena racita vatsabhattind //44// svasti kartrlekhakavdcakasrotrbhyah //siddhir astu //
(2)マ ンダソール碑文和訳 シ ツ ダ ム! 維 持 の た め に、 神 の群 れ や、 シ ッデ ィを 目的 とす る シ ッダ た ちや、 瞑 想 に よる 集 中 を持 ち、 感 官 の対 象 を制 御 し、解 放 を 目 的 とす る ヨー ギ ン た ち や、 バ クテ ィ の故 に、 富 が 厳 格 な タパ ス で あ り、呪 いや 祝 福 ので き る ム ニ た ち に よ って 仕 え られ て い る と こ ろの、 世 界 の破 滅 や 生 成 の 原 因 で あ る太 陽 が あ な た た ち を守護 しま す よ うに。(1) 努 力 した バ ラモ ンに して聖 者 な る者 た ちは、 真 実 に つ い て の知 識 を知 って い る けれ ど、 そ れ(太 陽)の こ とをす べ て は知 らな い の だ。 そ して、 そ れ (太 陽)は 広 が っ た太 陽 光 線 に よ って 三 世 界 を 育 む の だ。 ガ ンダ ル ヴ ァや ア マ ラや シ ッ ダや キ ン ナ ラや ナ ラ た ち に よ っ て、 昇 った 〔太 陽 は〕 讃 え られ る。 そ して 崇 拝 者 た ちの た め に、 そ れ(太 陽)は 望 み の も の を与 え る の だ。 こ の よ うな 太 陽 に礼 拝 しま す。(2) 日出 つ る 山 の 王 の 広 くて 高 い 頂 上 に、 そ れ(太 陽)は 光 線 の網 を投 げ か けて 毎 日現 わ れ る。 酔 った女 の人 の 頬 の よ うに 真 っ赤 で、 美 しい 光 線 を装 飾 品 とす る、 そ の太 陽 が あ な た た ち を 守護 しま す よ うに。(3) 花 の重 さに よ って お辞 儀 した立 派 な木 や、 寺 院 や、 集会 堂 や、 庭 園 に よ っ て 美 しい、 山 が木 で覆 われ た ラ ー タ地 方 か ら、世 界 に お い て 〔彼 らの 〕 工 芸 技 術 が知 られ た 〔者 た ち〕 は、(4) 国 王 の グナ に よ って 公 式 に連 れ 去 られ て 来 た彼 らは、 旅 等 に よ っ て生 じる 大 きな 苦 痛 を問 題 に しな い で、 尊 敬 の念 が生 じ、心 を伴 っ て1)、 子 供 や親 族 を連 れ て、 最 上 な る ダ シ ャ プ ラ にや って 来 て、(5) 1)直 訳 は 「心 に従われた」である。征服者の徳によ り、被征服者が 自由意思を 失 わず に、尊重 されていたことを述べてい るのか? カ ー ヴ ィ ヤ 文 体 の 研 究 比 喩 と 語 合 成II
密 教 文 化 発 情 したレ ウの こ め か み の傾 斜 か ら流 れ 落 ちた マ ダ液 の滴 に よ って 岩 が濡 ら され た千 も の山 が 装 飾 品 で あ り、花 に よ って うな だれ た木 の群 れ が 耳 飾 りで あ る よ うな この 町 は、 徐 々に大 地 の テ ィ ラカ1)とな りま した。(6) 1)額 につけ られ るマー ク。 そ こで は、 岸 に生 え て い る木 か ら落 ち た多 くの花 に よ って 岸 辺 の水 が 彩 ら れ、 満 開 の ハ ス を飾 りとす る カ ー ラ ンダ ヴ ァ1)で い っ ぱい の 湖 が輝 い て い ま す。(7) 1)カ モの一種。 揺 れ る波 に よ って揺 ら され たハ ス か ら落 ち る花 粉 に よ って 黄 色 くな った 白 鳥 た ちに よ って、 自 らの花 糸 の大 き な重 さ に よ って うな だ れ た ハ ス た ち に よ って、 あ る場 所 で の湖 は輝 い て い ます。(8) 自 らの花 の重 さに よ って お辞 儀 した ク タ ジ ャの 木 に よ って、 マ ダ に よ っ て 大 胆 に な っ た ハ チ の群 れ の音 に よ って、 疲 れ る こ とな く働 い て い る町 の女 た ち に よ って、 そ こ で は森 は飾 られ て い ます。(9) そ こ で は家 々 は旗 が揺 れ 動 き、 女 で い っ ぱい で、 とて も白 く とて も高 く、 蔓 草 の よ うな 雷光 に よ っ て、 明 る くて 白 い 雲 の群 れ の よ うな もの に 喩 え ら れ て い ます。(10) そ して、 カ イ ラ ー サ の高 い頂 に似 て お り、 ヴ ァ ラ ビーPは 長 く、 ヴ ェ ー デ ィ カー2)を も ち、歌 手 の声 が 響 きわ た り、絵 の作 品 が描 か れ、 揺 れ るバ ナ ナ の森 で 飾 られ た 他 の 〔家 々〕 も輝 い て い ま す。(11) 1)傾 斜 した屋根or最 上部 2)亭orあ づ まやorバ ル コニー そ こ で は、 家 々 は テ ラス の列 に よ っ て飾 られ、 地 面 を引 き裂 いて 建 った か の よ うで、 ヴ ィマ ー ナ1)の 列 に 似 て お り、満 月 の光 の よ うに汚 れ の な い も の で す。(12) 1)天 の車or七 層 の宮殿 波 が揺 れ て い る、 美 しい河 の一 対 に よ って 抱 かれ た そ 〔の 町 〕 は、 輝 い て い ま す。 胸 の豊 か な プ リー テ ィ とラ テ ィ との二 人 に よ って、 秘 め 事 の 際 に